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犯罪被害者等施策
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経済的支援に関する検討会(第2回)議事要旨

(開催要領)
日時: 平成18年5月17日(水) 15時~17時10分
場所:中央合同庁舎第4号館4階共用第4特別会議室
出席者:
座長國松 孝次(財)犯罪被害救済基金理事長代行・常務理事
座長代理瀬川 晃同志社大学法学部教授
構成員飛鳥井 望(財)東京都医学研究機構東京都精神医学総合研究所参事研究員
大久保 恵美子(社)被害者支援都民センター理事兼事務局長
佐々木 知子帝京大学法学部教授・弁護士
白井 孝一弁護士
高橋 シズヱ地下鉄サリン事件被害者の会代表世話人
平井 紀夫オムロン(株)特別顧問
荒木 二郎内閣府犯罪被害者等施策推進室長
片桐 裕警察庁長官官房総括審議官
中江 公人金融庁総務企画局総括審議官
代理出席大谷 晃大法務省刑事局刑事法制管理官
森山 寛厚生労働省労働基準局労災補償部長
谷 みどり経済産業省商務情報政策局消費経済部長



説明者片桐 裕(上記参照)
廣田 耕一警察庁長官官房給与厚生課犯罪被害者対策室長
森山 寛(上記参照)
瀧本 峰男国土交通省自動車交通局保障課長

※ 各構成員のいずれの発言についても、便宜上、「構成員」と表記した。


(議事次第)

1.開会

2.検討の進め方等について

  • 検討の進め方
  • 当面の検討スケジュール

3.我が国の経済的支援について

  • 犯罪被害給付制度
  • 自動車損害賠償保障制度(政府保障事業)
  • 労働者災害補償保険制度

4.自由討議

5.その他

  • 日程調整の方法について

6.閉会


(配布資料)

  資料1  内閣府資料 [PDF形式:24KB]
  資料2  警察庁資料 [PDF形式:108KB]
  資料3  国土交通省資料 [PDF形式:290KB]
  資料4  厚生労働省資料 [PDF形式:45KB]
  資料5  白井構成員資料 [PDF形式:35KB]



(議事内容)

○ 検討の進め方等について
 検討の進め方について、概略以下のとおり事務局より提案がなされ、構成員による議論の後、事務局案のとおりとすることとされた。

(事務局)検討の進め方について2点ほどお諮りしたい。1つ目は、検討の順番である。犯罪被害者等の基本計画によると、この検討会では経済的支援の制度のあるべき姿及び財源について検討を行うとともに、長期療養を必要とする被害者のための施策など、5項目についても合わせて検討を行うということになっている。事務局からの提案であるが、まずこの検討会の最も大きな使命である「経済的支援を手厚くするための制度のあるべき姿及び財源」について検討を進め、その後他の検討事項について検討することとしてはどうか。基本計画検討会の検討過程において、この検討会で検討をしてほしいとされた事項については、関連する項目の中で適宜取り上げてはどうか。
  2つ目は検討の方法である。具体的にどのように検討していくかについては、既存の制度の課題を踏まえた上で現行制度の限界や問題点などの論点をまず整理し、これらを新たな視点で検討する方法が最も適切ではないか。本日も関連する制度について関係省庁に説明を依頼している。ほかに、例えば被害者に対する経済的支援の理念をまず検討した上で理念に基づいて支援の対象、程度をこうしたらどうかと検討する仕方もあると思うが、どうしても入口のところで抽象論に流れてしまうのではないかという危惧がある。また逆に、個別の被害者の意見・要望を取り上げて検討するやり方もあり得るとは思うが、断片的な話になってしまうのではないか。既存の制度から見て何が問題かをしっかりと掌握をして、論点を絞った上で議論していくことがこの検討会の検討の仕方としてよいのではないかと考える。
  以上、2点ほど、まず中核である経済的支援制度のあるべき姿、財源を検討の俎上に乗せること、既存の制度について説明を聴取して論点整理を行い、議論を深めることについてご意見を賜りたい。

(構成員)ただいま事務局から検討の進め方ということで提案があった。これ自体一つの手続に関するものであるが、今後の議論を大きく左右する重要な事項でもあるので、進め方について各構成員の御意見をいかがいたいと思う。どなたからでも結構であるので、御自由に御発言をお願いする。

(構成員)あるべき姿と財源というふうにおっしゃったが、双方に関連するという問題でもあると思う。最初にあるべき姿というフレームを作って、それから財源というものを考えるという意味か、それともあるべき姿を考えつつ、財源も考えつつという趣旨なのか、どちらか。

(事務局)不可分のものであるので、どちらかといえばこういう制度がいるということをまず先行させるような形にはなると思うが、御発言のように、こういう財源だからこういう制度もあり得るというところもあるので、多少財源の方が遅れてついてくるというイメージかと思っている。

(構成員)その際に注意しておかなければならないことがある。まずあるべき姿を描き、できあがってしまってから、いや、財源がないという形での議論では非常に皆がシュリンクすると思う。事務局でも、財源についても研究というか調査を始めていただきたいと考える。

(事務局)了解した。財源について事務局でも研究を進めてまいりたいと考えている。

(構成員)質問であるが、あるべき姿についての検討はおおよそどれくらいの回数というか、検討のボリュームを考えているのか。

(事務局)後ほどスケジュールのときにお話ししようと思っていたのだが、大体1月に1回程度と考えると、全部で20回程度の検討会になろうかと考えている。おおむね1年後ぐらいのところで、多分中間案のとりまとめみたいなことに入ると思う。その前に、先ほど申した併せて検討するとされたが結構たくさんあるので、その辺の検討に4~5回必要であることから、経済的支援制度のこの部分を検討するのは3回ぐらいかと考えている。そこは、検討の状況にもよるので、おおむね今年の秋ごろが一番ピークかなというイメージである。ただ、これは検討次第であるので、一応事務的なスケジュールとしてはそういうイメージである。

(構成員)今の構成員のご発言は、実際我々がこれからどの程度のことをやるのかということに直接絡んでくる問題であるが、今提案があるは、1つの検討方法として、とりあえず現行のシステムについて関係省庁からいろいろ話を聞いた上で実質的な議論を進めていこうではないか。各省庁からの制度説明が1~2回、そのほか学識経験を持っておられる方からも外国の制度などについても聞かなければならない。現行制度といっても国内及び国外に及ぶので、それをひととおり聞いてからというと、今回と次とその次ぐらいが終わった後くらいから実質的な討論が始まってくるのかな、と。討論はどういう議論をするかによって長短が決まると思うが、ある意味ではやってみないとちょっとわからないということもあるのではないかと思う。とりあえず今日のところは今事務局から説明があった検討方法として、現行の既存の制度の課題を踏まえて経済的支援制度のあるべき姿について検討をする、本日については関係省庁に既存の制度について説明を依頼しているので、それについての説明を聴取してはいかがかというのが事務局の提案になるわけであるが、この点についてのご意見は他に何かあるだろうか。

(構成員)私も基本的にはこのご提案内容で進めていくのが非常に現実的ではないかと思う。ただ、現在の諸制度についてできるだけ間口を閉ざさずに説明いただきたいと思う。1つは、今日の事務局案のスケジュールで見てみると、給付金ができたときの検討状況から考えれば、例えば警察官などに対して協力して人身災害を受けた場合の救済制度や、証人等の被害について給付金を支援する制度、あるいは公害関係の健康被害の補償制度などについて、最初にできたときにいろいろ検討したとうかがっている。したがって、このような諸制度もできるだけ間口を広げて説明いただき、現状を理解していくのが良いのではないか。
  もう1つは、この制度を検討したときに刑事司法制度上の不均衡があるということが指摘されておりました。つまり、犯人の保護内容と被害者の保護内容との間に非常に不均衡があるということであって、基本計画検討会の議事録を読む限りは、トータルな、いわゆるこれだけのお金を使っているという点については少し触れられているが、個別的というか、具体的にどういう内容で不均衡があるのかという点については基本計画のところでも議論がないように思ったので、できればこの場で、犯人と被害者の不均衡の内容をできるだけ具体的に説明いただきたいと思います。
  それから、もう1つは、いろいろ諸外国の支援の諸制度もぜひ勉強したいと思います。諸外国ではいくつかの保障の形があるようであるが、例えば事故保障型の国についてはここでの説明対象にされていないように思う。少し現実的にどうかという点もあるかもしれないが、世界の現状どうなのかということを理解するときに、いわゆる見舞金型とかあるいは労災補償型であるとか損害賠償型であるとかいろいろな国がありますが、どの国もそういうところからスタートしながらもう少し広い範囲で国の責任ということで、事故保障型という国も出てきているようであるので、できれば少しこういった点も説明いただき、現状を広く理解した上で具体的なあるべき姿の検討に入る方がより望ましいのではないかと思う。

(事務局)この後の検討スケジュールとも関係するが、最初に言われた間口を広げるということに関しては、後ほど申し上げるが、関連すると思われる、あるいは参考になると思われる制度の幾つか説明を聞こうということで一応のスケジュールには入れている。他にも聞いたらいいという制度があれば取り入れていきたいと思っている。
  それから、もう一つ、犯人と被害者でどのくらい差があるのかという点については、調べてこの場に提出をしていきたいと考えている。
  3点目の諸外国の例ということであるが、これも6月に4ヶ国について聞こうということで前回もお話し申し上げたが、これ以外にもこういう国が必要ではないかということがあれば対応してまいりたいと考えている。

(構成員)具体的にどういう制度について聞きたいと言うことがあれば、事務局に申し出ていただければいいのではないかと思う。

(構成員)先ほど事務局から、例えば既存の制度の説明の中ではその問題点あるいは論点を整理してそれを議論するという提案があったが、それには賛成である。今まで、今回出された資料を見ると、現状のみになっているように感じるので、できればなるべく犯罪被害者等基本法を踏まえて、これから各関係省庁が考えられる施策も合わせて出していただけると議論を深めることができるのではないかと思うので、その点もよろしくお願いする。

(構成員)その点は心得て関係省庁にまた付加的にお願いしたいと思う。他に何かあるだろうか。
  特にないようであれば、ただ今若干の御意見も出たので、そういうことを踏まえながら、基本的には事務局から提案のあった方法に沿って、今後いろいろと議論を進めてまいりたいと思う。

 当面の検討スケジュールについて、事務局より資料1のとおり提案がなされ、構成員による議論の後、事務局案のとおりとすることとされた。

(事務局)お手元の内閣府資料というのをご覧いただいて、一枚めくっていただくと、当面の検討スケジュールの事務局案というのがあるので、ご参照いただきたい。既に開催日を決めている第6回までの検討スケジュールについて事務局案をご説明申し上げる。
 本日は、先ほど申し上げたとおり、犯罪被害者と関わりの深い現行制度について説明を受けることとし、自由討議を行うこととしている。
  第3回、6月21日であるが、これはやはり犯罪被害者とも関係の深い現行の社会保障・福祉制度として医療保険、公的年金、介護・障害者福祉について厚生労働省の方から説明を受け、その後自由討議をしてはどうかと考えている。
  その次の6月30日は、前回申し上げているように、諸外国の制度について有識者から合同でヒアリングを受けたいと考えている。
  第5回、7月26日であるが、これは先ほど構成員からもあったが、何か参考となる制度はないかということで、まず社会保障・福祉制度全般の考え方について有識者、学識経験者の方に説明をしていただく。実は今日ご欠席であるが、岩村先生ではどうだろうかと考えている。そういうことで説明をしていただき、その後、何らかの形で原因者がいるということで、そういう意味で犯罪被害とある程度似ているところのある公害健康被害補償と原子爆弾の援護の関係と、それから医薬品の副作用の被害救済制度の3つの制度について説明を聞いてみてはどうか。それで何か参考になることはないだろうかということで第5回は考えている。
  その上で、時間があるかわからないが、この回からできれば経済的支援制度のあるべき姿ということで、ある程度論点を絞って議論をしていければと考えている。
  それから、8月については、まだ必要なヒアリングがあればまだやるということで、経済的支援制度を厚くするという前提での検討を行っていきたいと考えている。
  9月以降の検討については、またご意見を伺いながらと考えているが、いずれにしても当面の第6回までについてご意見を伺えればと考えている。

(構成員)質問であるが、第5回のときの公害は、原子爆弾被爆者に対する援護が厚生労働省からとあるが、同じセクションからの説明になるのか、それとも。

(事務局)公害は、環境省になると思う。一応、例示として原爆と医薬品副作用を挙げている。

(構成員)4項目になるということか。

(事務局)今のところ事務局としては、やはり公害も参考になるのではないかと考えている。資料には載っていないけれども。

(構成員)そうすると、それは説明部局が異なるのか。

(事務局)これは多分、環境省の所管の方に。

(構成員)では、それはひとつお願いする。

(構成員)ただいまあった当面の検討スケジュールについて、既にもうあったわけだが、追加的にご意見等があれば、ご自由にお願いする。

(構成員)1点よいか。今後の検討スケジュールにも関連するので、ちょっと問題意識をここで述べさせていただきたいと思う。
  最近、ヤミ金融や振り込め詐欺、偽造盗難カードなど、非常に多様な金融経済犯罪が発生をしており、その被害者の損害回復もなかなか困難なものがあると思っている。この点に関しては、例の五菱会の事件をきっかけとして、財産犯に係る犯罪被害財産の没収、追徴と、その財産の被害者への給付を可能とする法整備が法務省において行われおり、今、国会で審議をされているということで。これは大変大きな前進があったと考えているところである。それで、今後より一層こうした金融経済犯罪被害者の権利利益の保護を図る観点から、司法のみならず何か行政レベルでどのような取り組みが行われるかということについて検討していく必要があるのではないかと考えている次第である。アメリカなどでは行政が違法行為者から不当利益を剥奪して、これによって基金を形成して被害者に分配をするという仕組みがあると聞いているので、こういった諸外国の事例なども参考にしながら、こういった金融経済犯罪被害者へどのような経済的支援を行っていくかといった点についても今後こういう場で議論をさせていただければと思っている。

(構成員)そういう財産犯というか、金融犯罪の被害者の取扱いというのは、ここでどのように今後取り扱うかということはまた新しい問題であり、いろいろ構成員の意見を聞きながら決めていきたいと思う。土俵をどこまで広くするかということもある。この点は、今日のところは今のご意見をお伺いするという程度にとどめておいてよいか。

(構成員)先ほど財源の話がちょっと出ていたが、没収、追徴されたお金のうちから、その当該の犯罪被害者に配分したそれ以外の没収されたものについて、人身被害の方の補償の財源の一部になり得るのか、なり得ないのかという意味であれば、かなり関係するのではないかなとは思う。そういうことも耳にはさんでいたので。

(事務局)金融経済犯罪の被害者も含め、被害者には交通事故の被害者もいらっしゃるし、あるいは少年犯罪の被害者の方もいらっしゃる。被害者にいろいろ種別というか、いろいろあるので、そういう個別の問題も当然取り上げて、後半戦では議論することになるのではないか。その前にやはり全体に今、中核となっている全般的な制度の問題点なり何なりをまず詰めて、その後で当然そうした経済犯罪についても議論することがあると考えている。個別の問題を論点としてそれぞれまた議論することもあり得るという整理だと思う。

(構成員)先ほど当面の検討スケジュールということがあったが、大体第6回以降の議論になったときに、制度の在り方と裏腹の問題として財源をどうするのかという話は当然出てくると思うので、その辺でご提案のあったような話も折り込みながら、ここでも議論していくということになるのではないか。ご意見は本日のところは承るということだけにとどめたいと思う。他に御意見があればお願いする。
  それでは、大体そういうスケジュールで進んでいくということを前提にして、今後はやってまいりたいと思う。

○ 我が国の経済的支援制度について
 犯罪被害給付制度については、警察庁資料(資料2)に基づき、警察庁から概略以下のとおり説明がなされ、その後質疑応答が行われた。

(警察庁)資料1枚目をごらんいただきたい。犯罪被害給付制度の沿革という資料である。まず沿革についてであるが、皆様既にご承知のとおり、犯罪被害者の補償制度については昭和42年ごろから、ある犯罪被害者のご遺族によってその実現に向けた運動が展開されたが、こうした運動が大きな関心を呼ぶこととなったのは、昭和49年8月30日の三菱重工ビル爆破事件以降である。ここでは本当に何の罪科もない方々が大変大きな被害を被ったが、この中で、一方で労災等の公的給付を受けられる方と、全くそういった給付が受けられない方の不均衡が強く意識された。加えて、1960年代から70年代にかけて世界各国で犯罪被害者に対する公的救済制度が新設されるという動きがあったことから、我が国でも犯罪被害者救済制度の必要性に関する声が高まった。
  こうした声を受けて、我が国政府としても本格的な検討に入り、その結果、昭和55年5月1日に警察庁所管の法律として「犯罪被害者等給付金支給法」が成立した。そして、その法律が翌年1月1日から施行されるということになったわけである。
  立法当初、給付金の支給対象は死亡または死亡と同等の評価を受ける重度の障害を受けた方に限られていた。しかしながら、その後平成7年3月20日に発生した地下鉄サリン事件を契機として、犯罪被害給付制度の拡充と、被害者に対する総合的支援を求める要望が大変に高まった。こうした声を受けて、警察庁としては、平成9年に、若干であるが、障害給付金の支給対象の拡大を図ったが、その後さらに検討を加えて、平成13年7月1日に「犯罪被害者等給付金支給法」の大幅な改正を行ったところである。
  その中身であるが、そこに書いているように、1つは、障害給付金の支給対象である障害等級を従来1級から4級までであったものを1級から14級までに大幅に拡大をしたということがある。2つ目には、重傷病給付金という制度を新設したということである。これはまた後ほどご説明を申し上げる。3つ目は、そこに書いてないが、給付水準の大幅な引き上げをここで行っている。これによって、例えば遺族給付金であるが、最高額が1,573万円にまで引き上げられている。また、障害給付金の最高限度額が1,849万円にまで引き上げられており、これを制定当時、昭和56年当時と比べると約2倍近くの水準にまで引き上げられたということになるわけである。
  この法律改正のときに国会でさまざまなご議論があったわけであるが、その中で、今構成員からもご指摘があった問題意識にもかかわるのであるが、親族間の犯罪に係る支給制限について深刻化するDV等の現状及び世論の動向を踏まえて検討を行うことという指摘がなされており、これは後ほど申し上げるが、今回、今年の3月に規則を改正して一部手当をしているけれども、そういった御指摘があった。また、これに加えて、外国における邦人間、日本人の間同士による犯罪の被害とか、過失犯による被害についてもこの本制度を適用するか否かについて今後とも注視をしてほしい、注目をしてほしいという附帯決議がついたところである。
  こういった改正を行ったが、その後になって、既にご承知のとおり、平成16年12月に「犯罪被害者等基本法」が制定され、昨年4月1日に「犯罪被害者等基本法」は施行された。そして、この法律に基づいて「犯罪被害者等基本計画」について検討が行われ、昨年12月に基本計画が決定をされたところである。
  この基本計画の中で犯罪被害者等給付金の支給対象の拡大を行え、ということが盛り込まれていたわけであるが、それを受けて、既に今年3月の政令とか規則の改正によって重傷病給付金の支給対象の拡大であるとか、また支給期間の拡大、延長であるとか、また今ちょっと申し上げた、親族間犯罪における支給制限の緩和とかといった措置を既に講じたところである。詳しくは後ほどご説明を申し上げたいと思う。以上が沿革である。
  2枚目であるが、犯罪被害給付制度の理念ということである。どういった考え方でこういった制度が組み立てられたのかということであるが、昭和55年のこの法律の制定当時、この給付金の性格として3つの点が挙げられている。1つは、そこにあるように、不法行為制度の補完ということが言われており、これはどういうことかというと、加害者側に資力がないなど、事実上損害賠償制度では救済されない被害者が多いという現実にかんがみて、実質的に国がこれに代わって一定の給付を行おうとするものであるという説明が行われている。2つ目には、補償制度間における救済上の不均衡の是正ということが言われており、すなわち、労災であるとか自賠責であるとか、さまざまな補償制度が法制化された一方で、犯罪被害者に着目をしてこれを救済するという制度が全くなかったということで、その結果、同じような被害を被った方にあっては、一方で他の制度で救済される方と、また一方で他の制度では救済されない、悲惨な状態で放置されているという被害者もあったということから、こういった不均衡を是正しようということで、この制度により他の制度によって救済されない犯罪被害者の方々の救済を図ろうという趣旨であるということが2点目に挙げられたところである。3点目には、刑事政策上の不均衡の是正ということで、今ちょっとお話があったように、加害者については矯正処分の改善等が図られるなど、国による処遇の充実が図られている反面、被害者については国の救済の手は差し伸べられていない。その結果、両者の間で不均衡が生じているということから、このバランスをとるべきであろう、不均衡を解消すべきであろうという趣旨から給付するものであるという説明が行われている。こういったように、この制度は単一の理由で設けられたものではなく、主にこの3つの理由からこの制度が成り立っているという説明が行われているところであり、この考え方によって、そこにあるように、他の何らかの救済の手段のない犯罪被害者に対して社会連帯共助の精神に基づく被害者の精神的・経済的被害からの早期の回復、言いかえれば、被害からの早期の立ち直りの支援を国民全体の負担において行うとするものである。
  財源については、例えば原因者負担による責任保険はこういった犯罪行為についてはなかなかなじまないであろう、また、被害者の社会保険制度を創設することも事実上不可能であろうということから、社会全体でこの負担を負おうということで、国が一般財源によって支給を行うということにしたわけであり、言いかえれば、社会全体によって犯罪発生のリスクとかコストを分散して負担しようという趣旨によるものであるという説明が行われているところである。
  以下、この制度の詳細について御説明申し上げたい。
  3枚目の方からご説明させていただきたい。犯罪被害給付制度の概要である。まず、犯罪被害者等給付金の種類であるが、全部で3種類ある。遺族給付金と障害給付金、重傷病給付金ということで、いずれも一時金である。一番左の重傷病給付金については、先ほど説明があったように、平成13年の制度改正、法律改正によって新設された給付金である。
  一番右の遺族給付金の方からご説明させていただく。これは被害者の方が亡くなった場合に、その遺族の方にお支払いされるというものである。この金額は最低額320万円から1,573万円となっている。これは被害者の方が被害に遭う前に得ていた収入、これは3ヶ月分を日額で計算して、それを基に給付の基礎額というものが決まってくる。この給付基礎額については、年齢に応じて最低額と最高額が定められていて、最高額を越える場合は最高額で計算する、最低額に満たない場合は最低額で計算させてもらうというものである。その給付基礎額に遺族と被害者の方の間に生計維持関係があったか、なかったかで違った倍数をかけるわけであるが、生計維持関係があった場合には1,300倍を、なかった場合は1,000倍をかけるということである。そういう形で得られた額の最低が320万円、最高が1,573万円ということである。なお、※印で被害者が死亡前に療養を要した場合、療養についての被害者負担額も支給となっている。これは平成13年の改正によって、被害者の方が亡くなった場合、その亡くなる前に何らかの治療をされていたけれども、そのかいなく亡くなったということがあるわけであるが、療養を受けていた場合にその療養費、保険診療にかかる自己負担相当額ということであるけれども、それも合わせて支給するということになっている。
  それから、真ん中の障害給付金である。これは被害者に後遺障害が残った場合に支給されるというものである。先ほど、説明があったように、制度創設当時は非常に重い後遺障害、1級から3級までに支給されると、途中で4級まで拡大されたが、いうものであったが、13年の改正以降、1級から14級までの最も軽い後遺障害を受けた方にも支給されるということになっている。最低額18万円から最高額が1,849.2万円ということである。この額の計算であるが、これも先ほどちょっと申し上げたのと同じような考え方で給付基礎額というものが決まる。これも最低額と最高額が定められているが、遺族給付より10%ほど高くなるように規定がされている。この給付基礎額に障害等級に応じた倍率が掛けられてこの額が得られるということである。具体的には最低の14級であれば50倍、最高の1級であれば1,340倍という倍率が給付基礎額に掛けられてこの額が得られるというものである。
  一番左の重傷病給付金であるが、これは犯罪被害によって重傷病になったという場合にも支払われるものである。これはいわゆる医療費の自己負担相当額を補充する、補てんするというものであって、この場合の医療費というのは保険診療に限られている。制度創設当時はこの自己負担相当額を、3ヶ月を限度として支給しておったわけだが、今年の春の改正、平成18年4月1日の改正によって1年を限度として支給されることになっている。また、重傷病の要件についても緩和がされており、制度創設時には加療1ヶ月以上かつ14日以上の入院を要するということであったけれども、今回の改正によって加療1ヶ月以上、かつ3日以上の入院というふうに緩和されている。併せて精神疾患についてはこの入院要件を課すのではなくて、今までは精神疾患であってもなくても疾患の身体か精神かにかかわらず、14日以上の入院という要件を課されていたのであるが、今回の改正によって、精神疾患については入院要件ではなく、3日以上労務に服することができない程度の症状であったということを要件として支給されるということになっている。
  1枚めくっていただいて、次は支給対象者等である。まず、対象となる犯罪被害、これは日本国内または国外にある日本船舶もしくは日本航空機内において行われた人の生命または身体を害する罪に当たる行為ということである。それから、支給が受けられる被害者または遺族の資格であるが、日本国籍を有するか、あるいは日本国内に住所を有するということである。したがって、この原因となった犯罪行為が行われた時点で日本国内に住所を有していた外国の方も対象となる。支給を受けられる人についてもう少し、特に遺族給付金について少し詳しく説明したのが一番右側の方である。遺族給付金については亡くなられた被害者の第一順位遺族の方に支払われるというものである。その順位であるが、その下にあるように、まず配偶者、それから被害者の収入によって生計を維持していた被害者の子・父母等、それからそれらに該当しない被害者の子・父母等ということで、(1)から(11)の順番で順位が定まっている。したがって、子であるとか父母のように第一順位遺族の方が複数出てくるというケースがある。そういう場合にはこの給付金の額をその額で按分して、割った数で給付されるということである。重傷病給付金と障害給付金については被害者ご本人に支払われるというものである。
  こういった支給を受けられる人は住所地を管轄する都道府県公安委員会に申請をするということである。ただ、この申請については犯罪行為の発生を知った日から2年、あるいは犯罪が発生した日から7年を経過したときにはすることができないという申請の除斥期間が定められている。
  裁定については、この申請を受けた都道府県公安委員会がこれを行うということである。この裁定の結果に不服がある場合には、国家公安委員会に審査請求の道が開かれている。
  次に、1枚めくっていただければと思う。他法令による給付等との調整ということである。これは犯罪被害給付制度が、先ほどの説明にもあったように、不法行為制度の補完、他に救済手段のない被害者の方々への救済という、そういう経緯、性格を有しているという関係上、他に公的給付がある場合だとか、損害賠償が行われた際には調整がされるということになっている。まず、公的給付との調整であるが、一番左上であるけれども、遺族給付金と障害給付金についてはそれぞれ死亡や障害を原因として被害者、遺族に労災保険法その他の法令による給付で、政令で定めるものが行われるべき場合には、その給付の限度において支給しないということである。限度において支給しないというのは、他の公的給付の方が犯罪被害等給付金を上回れば犯罪被害者等給付金は支給されない、下回れば、その差額が給付されるということである。調整対象となる災害給付の種類は、その右側に矢印の方で書いている労災補償保険法等27の法律が今政令で定められている。基本的には労災関係の法律、あるいは公務に何らかの形で協力援助した場合に被災した方々への補償に関する法律、あるいは損害賠償責任に基づいて原因者負担によって何らかの給付が行われるような法律、すべてひっくるめていわゆる災害給付が調整の対象となっている。
  他方、右側に紫の色囲いで国民年金保険法、厚生年金保険法等を書いているが、こういった法律による年金などについては調整対象外である。これらの年金というのは本来的に所得保障としての機能を有するということで、いわゆる災害給付とは性質を異にするということで、こういったものによる給付とは調整はされないことになっている。
  次に、公的給付の2番目であるけれども、この重傷病給付金についても法令の規定によって療養に関する給付が行われるべき場合には、その給付の限度において支給しないということになっている。
  調整対象となる療養給付の種類については、健康保険法等以外の法令の規定によって行われるべき療養に関する給付、条例を含むということで、おおよそ何らかの形で療養給付が行われればそれとは調整されるということである。
  最後に、損害賠償との調整である。犯罪被害の原因として被害者または遺族が損害賠償を受けたときはその価額の限度において給付金を支給しないということである。これは被害者が加害者側から実際に損害賠償を受けている場合には、国として給付金を支給する必要はないと、そういう考え方に基づくものである。
  次に、1枚めくっていただいて、こういった犯給制度の運用実績である。昭和56年1月1日施行から現在まで25年余り経過しているわけであるが、それまでの申請の状況であるが、被害者数でいうと5,568人、申請者数でいうと8,346人である。申請者数の方が多くなっているのは、先ほど申し上げたように、例えば第一順位遺族の方が複数いる場合、それぞれの方から申請がなされるので、申請者数の方が多くなっている。それから、次に支給被害者、実際に支給がなされた被害者数、裁定・決定者数の数が異なっているけれども、これも同じ事情によるものである。
  これまでに支給・裁定がなされた額、それから決定とあるが、これは仮給付という仕組みがあって、裁定までに非常に長時間要する場合には仮給付ということを公安委員会がその権限でできるのであるが、裁定に至らないけれども決定はなされたというものもあるので、それを含めて3月末現在までに約169億7,100万円が裁定・決定されているということである。
  一番直近に支給額が引き上げられた平成13年の改正以来の1被害者当たりの平均支給額を見ると、そこにあるように、遺族給付金については約475万円。重傷病給付金については、これはいわゆる保険診療の自己負担相当分をお支払いするということで、約15万円というそれほど大きい額にはなっていない。それから、障害給付金、これは、現在は1級から14級まで支払われるということで、その平均をとるとこれだけの額になるということである。
  もう1枚めくっていただいて、そういった犯給金のこれまでの申請と裁定の推移である。ごらんいただくとおわかりのように、平成12年までは裁定件数100件台で推移している。それが13年に大幅な制度拡充を行った関係上、400件台で推移しているということである。
  もう1枚めくっていただきたい。次の資料である。犯給制度の変遷ということで、これまでも拡大、拡充の経緯を表にまとめたものである。これまで合計6回ほど犯給制度の中身、制度の拡充ということで行っている。
  その前に、昭和56年1月1日の制度制定時のところ、一番右側の方に改正の趣旨、経緯の欄をごらんいただきたい。給付額の考え方としてなのであるが、制度創設時の考え方としては、損害賠償責任を根底に置いた原因者負担であるほかの公的給付制度を上回ること、あるいは積極的に社会貢献のために尽力した結果被害を受けた場合の警察官の職務に協力援助した者の災害給付を上回るということは均衡上適当ではないのではないか、また、損害賠償そのものである自動車損害賠責任保険とも比較することはできないのではないかという考え方に基づいて給付水準が決定されているということである。
  改正の経緯であるが、まず2番目の欄になる。昭和57年、それから62年、平成6年、3回にわたり給付基礎額の増額、これは政令改正であるけれども、改正が行われている。これは他の制度との均衡も参酌しつつ、物価水準の上昇に伴う給付価値の減少を是正するために行われたものであり、最高額の方の改正も行われている。最低額について引き上げ措置は講じられていない。この結果、遺族給付金につきましては最高額が1,000万円を越える、障害給付金については1,200万円を越える水準となっている。
  次に、平成9年の改正である。これは障害等級1級から3級を1級から4級に拡大したというものである。これは4級の障害等級に該当する方についても、労働能力の喪失率が92%ということで、1級から3級が100%なわけだけれども、それに準ずる、亡くなるということに匹敵するような非常に重大な犯罪被害であるということで1級から4級まで拡大されている。それから、併せて神経系統、精神の障害に関する規定も4級に新たに置いている。これはいわゆる地下鉄サリン事件も含めて、神経系統あるいは精神に障害が残ってしまう犯罪被害者の方が少なからずいたということを踏まえて、こういった方々を救済するために置かれたものである。
  次に、平成13年7月1日に大きな改正がされている。犯給制度については、そこにあるように、1つ重傷病給付金の創設というのが行われている。それから、障害給付金については1級から4級を14級まで拡大をしている。それから、給付基礎額を大きく引き上げている。これは一番右側の改正の趣旨をごらんいただくと、法施行後20年が経過して、ほかの公的給付の水準と比較して非常に大きな隔たりが生じたという現状を踏まえて、賃金センサスを基準として給付基礎額の見直しを行っている。最低額についても物価上昇率を考慮して大きく引き上げをみている。この結果、遺族給付金については最低額が320万円、最高額が1,573万円、障害給付金については最高額が1,849万円ということになっている。おおむね1.5倍に給付額が引き上げられたということである。
  最後、6番目、平成18年4月、この4月の改正である。先ほどちょっと申し上げたように、重傷病給付金の支給範囲等の緩和を行っている。内容としては先ほど申し上げたように、入院要件を緩和したということ、支給期間を3月から1年に大きく延長したということである。それから、親族間犯罪の支給制限についても緩和を図っている。これは、非常に今まで広い範囲の親族の間の犯罪において原則として不支給となっていたわけであるけれども、これを狭める改正をしている。具体的には原則不支給の親族範囲を夫婦と直系血族と兄弟・姉妹に限ることとしている。これまでは三親等内の親族、それから同居の親族まで不支給だったところを狭めている。さらにDV犯罪による被害の救済という観点から、DVによる夫婦間犯罪については特例として、今までも特段の事情が認められる場合には、原則不支給であるけれども規定額の3分の1まで支給できるという規定があったのであるけれども、さらにそれを弾力的な運用が可能なようにと3分の2まで、非常に特別な事情が認められないようなケースについては3分の2まで支給できるようにしたということである。
  ということで、これについては、先ほども説明があったけれども、犯罪被害者等基本計画において私どもに対して求められていた施策であるが、可及的速やかに措置を講じたというふうに考えている。
  それから、次である。これは平成18年度の私ども警察庁の予算、犯罪被害者対策関連を抜粋したものである。これは被害者の経済的な負担の軽減方策として、必ずしも犯罪被害給付制度だけではなく、さまざまな観点から負担の軽減を図っているということでご紹介をしたいところである。(1)のアについては犯罪被害者給付金の関係である。イは、性犯罪被害者に対する緊急避妊等に要する経費、これは都道府県警察に要する経費に対する国庫補助金ということで措置をしている。2分の1は国が出して、2分の1は都道府県が支出するというものである。中身は、性犯罪被害者の緊急避妊等に要する経費ということで、初診料や診断書料、それから性病等にかかっていないかの検査費用、それから中絶費用も含むものであるが、それを公費で負担するということである。対象となっている犯罪被害は性犯罪ということであるけれども、強姦と強制わいせつということで、中絶費用と緊急避妊については強姦の被害者に限られている。それから、ウであるが、そういった性犯罪以外の身体犯被害に遭われた方についても負担軽減をするということで、初診料や診断書料、それから埋葬許可に必要な死体検案書料、こういった費用を公費で負担するという仕組みもこれまた補助金で平成18年度から措置している。エとオであるが、これはそれぞれ15年度、それから16年度から既に実施しているものであるけれども、司法解剖後の遺体修復費、司法解剖した後、傷跡を目立たなくさせるような修復措置、これに要するに費用を公費で負担するということ。それから、司法解剖後の遺体搬送費、司法解剖した後、そのご遺体をご家族のもとまで運ぶのに要する経費、これをそれぞれ公費で負担するということで、これもいずれも補助金であるが、それぞれそこに記載の額を措置している。
  最後に1枚めくっていただき、これは警察が国としてやっている仕組みではないが、非常に関連が深いということでご紹介させていただきたい。財団法人犯罪被害救援基金が行っている奨学金事業についてご説明させていただきたいと思う。これについて、座長の國松様が今この犯罪被害救援基金の常務理事・理事長代行をなされているので、ちょっと僣越であるけれども、私の方からご紹介させていただく。この犯罪被害救援基金の発足の経緯であるが、犯罪被害者等給付金支給法、いわゆる犯給法が昭和55年に成立する際に附帯決議がなされている。そこに※印で書いているが、本法施行前に犯罪被害を受けた者及びその遺族の救済については別途被害者の扶養にかかる児童・生徒に対する奨学金制度の実現などにつき検討することとなっている。これは犯罪被害給付制度創設時にこの制度創設前、法施行前に犯罪被害に遭われた方の救済をどうするんだと、遡及適用はしないのかということが1つの論点になった。しかし、なかなか法律の原則として遡及適用することは難しいと、それからどこまで遡及適用をするのか、どこかで線引きしたところにやはり不公平の問題が生じるといったようなことがあって、それはやはり法律的には難しいということがあった。そこで、代わりにというわけではないが、しかし、法施行前に遭った方も何らかの形で救済しなくちゃいけないということでこういう附帯決議がなされ、その附帯決議を受けてこの救援基金が設立されたというものである。
  事業の概要については、犯罪被害遺児等に対する奨学金等を給与する、これは差し上げるということである。それから、犯罪被害者等早期援助団体の育成強化という、こういう事業を主な事業としてやっていただいている。奨学金の今までの給与実績は3であるが、昭和56年にこの基金が創設されて以来、1,652人の小学生の方に16億円余りの奨学金が給与されているという状況である。
  この奨学金制度については、右側の方に若干、詳しめに書いている。犯罪被害者の子、孫、弟妹等であるということであり、故意の犯罪行為によって不慮の死を遂げた方あるいは重障害、障害等級1級から4級を受けた方の子弟ということである。それから、主に被害者の収入によって生計を維持していたこと、学費の支弁が困難と認められることといったことを要件としている。奨学金として給与される月額についてはそこにあるように、小、中、高校、大学生ということで、ここに書かれているような額が給与されることになっている。モデルケースとして、仮に小学校在学中に6年間給付を受けるとするとこうなる、あるいは中学校在学中はこうなる、私立であればこうなるということで、総額としてこれぐらいになるということを参考までに記載している。
  ちょっと端折った説明になったけれども、以上で終わらせていただく。

(構成員)犯罪被害者が経済的に切迫したりしているとお金を親から借りたりとか、中にはサラ金から借りたりするような人もいると思うのだが、申請から実際に支給されるまでどれくらいの期間があるのかちょっと教えていただきたい。
  あともう1つ、支給される対象、遺族給付金の対象で3番の、2に該当しない被害者の子とか父母、孫、祖父母とかずっと書いてあるけれども、これは一緒に生計を共にしていなくてもということなのだろうが、例えば父母の場合に、離婚していて片方が生活の面倒を見ていない、そういう人にも、このお金がいくのかどうか、そこをお伺いしたい。

(警察庁)まず、申請から実際に給付の裁定が行われるまでにどれくらいの期間がかかっているかということであるが、平均的にいうと7ヶ月ほど期間がかかっている。それから、先ほど第一順位遺族、支給を受けられる人についての順位の説明をした際に、これ以外の方についてはどうなのかということであるが、これ以外の方については給付金は受けられないということになっている。

(構成員)離婚した場合、だめということか。

(警察庁)お子さんが亡くなった場合ということでよいか。その場合は婚姻関係にかかわりなく、父としてあるいは母として支給される。

(構成員)質問であるが、調整対象となる法律が27あるということであるけれども、例えば労災が支給されるであろうから支給決定をしないとか、あるいは支給決定した後に労災が例えば払われたから返してくれとか、何かそういうような形になるのか。

(警察庁)他の公的給付が見込まれるということであれば犯給金は支給しないということで、基本的にはその辺の状況を踏まえつつ支給の裁定を行っているというのが実態である。だから、基本的には犯給金が支給された後に他の公的給付が行われるということはあまり実態としてはないと思っている。

(構成員)犯罪で検挙された件数とか犯罪白書にずっと載っているわけであるが、この支給実績を見ると、一番新しい平成17年でも障害が81名で遺族の方が258名ということで、最終的に後遺症が残る被害者の方の数が実際の検挙件数とはうんと少なくなるとは思うが、そういう1つは罪種別の申請件数とか、それから検挙件数と申請件数、申請に対する支給決定と不支給決定のような統計みたいなものは出るか。

(警察庁)罪種別にはちょっと統計はとっていない。例えば遺族給付金で考えると、大体年間交通事故を除き、犯罪被害でお亡くなりになる方、殺人とか傷害致死とか強盗、強姦致死とか、そういう方が千二、三百とかそういうオーダーである。それと比べてこの裁定なり申請が多いのか少ないのかというのは、なかなかちょっと判断はしかねるけれども、そういう比較は可能である。

(構成員)実際にはその事件が、刑事手続が行われている間に障害が確定、症状固定になるという方があったり、なかったりと数字的にはいろいろなるとは思うが、その辺の統計というか、実際には例えば障害等級が残られた被害者の方がこれくらいいるのだけれども、申請があったのはこれくらいで、そのうち支給されたのがこのくらいでとかというような統計はないか。そこまでは追っかけてないという。

(警察庁)今おっしゃったのは、障害が固定されてからどれくらいかとかいうことか。

(構成員)いいえ。申請された方が何等級に属するかとかいうのはわかるが、そうではなく、実際に例えば傷害事件でいえば大体年間4万件くらい起きていて、警察の統計でいけば重傷というのは全治30日以上で統計とっている。しかし、実際の被害で全治30日といったらたいしたことない被害なわけで、ほとんど後遺障害なんか残る人が少ないので、4万人のうち、実際には重傷といわれてもずっと減ってくるとは思う。また、加害者側から示談金が支払われる例もあるので、その申請のところまで行き着く方は少なくなるとは思う。実は申請しても無駄というか、親切で言っているとは思うが、事前に申請が制限されてしまって、制限しているわけではないとは思うけれども、実際に補償が必要な方であるが、申請されていないという方がかなりいるのではないかと思うのだけれども、その辺はわからないか。

(警察庁)いろいろ我々犯罪被害者の方への支援をしているけれども、そこまで突っ込んでというか、踏み込んで実際に障害があるけれども、申請されない方がどれくらいいるのかとか、なぜしないのかということまでなかなか調査が行き届いていないということはある。ただ、他方で、被害者を支援する段階でこういう制度があるという教示は積極的にやらせているので、なるべく使ってくださいということは被害を受けた方にはお伝えをするという努力はしているつもりである。

(構成員)もうちょっといいか。他の方があれば。

(構成員)どうぞ、いいのだが、その辺のところは結局あとの財政的支援の在り方の本論に入ってくるので、本日のところは軽いジャブ程度のところでやっておいていただいて。このままいくとエンドレスになるので。もうしばらくジャブの範囲内であれば、どうぞご質問を続けてください。

(構成員)では、不支給になった方で不服申し立てられた方がどれくらいあるかというような(統計はあるか)、その不服申立の理由というか、それは、今日はわからなければ別にいいけれども。それから、実際にはストレートに支給で計算すればこれくらいの金額になるが、加害者側から多少の見舞金が入ったために調整されて、実際に支給された金額はそれよりも減ってしまったとかというような統計はあるか。

(警察庁)今、審査請求の件数については今手元にはないが、それはお出しすることはできる。大体大ざっぱに言って年間1件から2件というそういう感じである。内容については、今お話しされたように、不支給について不服がある、あるいは減額されたことについて不服がある、あるいは調整されたことについて不服がある、そういったことで様々である。

(構成員)それと、ジャブ程度ということで。障害等級別の支給数というのか、統計とかというのは出るか。

(警察庁)出る。

(構成員)では、今、構成員からあった話のうち、出せる統計数字は、次回まで(に出すこと)でよろしいか。次回までにご用意いただけるか。

(構成員)昭和55年にできて既に25年経ったが、御報告で最近の発展がよくわかったと思う。この構成員自体に理解のアンバランスがあったらいけないと思うので、共通の認識としておきたいが、日本の犯給制度の特色というのは一体何だというふうに現在時点でお考えだろうか。諸外国をモデルにしてできたわけだが、我が国の犯給制度の特徴を簡単で結構なので、お答え願えればと思う。

(警察庁)なかなか一口には難しい部分があるけれども、社会の連帯共助の精神に基づく支給という意味では各国幾つか同じような例はある。だから、これは特に我が国についての特色ではないと思っている。ただ、他の国でいうと、犯罪被害者に対する救済の支給をする対象範囲というものが相当我が国より広いケースが多い。だから、我が国の場合にはちょっとその幅が狭いということはあると思われる。ただ、支給額の平均からするとさほど他の国よりは、他の国が非常に軽い被害まで救済しているから、他の国に比べれば1件当たりの支給額は比較的高いのかなということは言えようかと思う。
  あともう1つ特徴的なのは、我が国では支給の実態を見てみると、遺族給付が大変に多いということで、ほかの国は遺族給付よりはむしろ障害を負った方に対してどう救済するのかという観点が大変強いけれども、我が国の場合には支給の実態から見る限りの話であるが、遺族に対する支給の比率が高いということは言えようかと思っている。
  あと、財源の問題では、これは恐らく後に有識者の方からいろいろとお話があるだろうけれども、一般財源で措置するというのは他の大体の国も同じような形になっている。ただ、特定の国では罰金を財源にしているとかいうところもあるし、また、特定の例えば損害保険に税金をかけてそれを特定財源にするとかいう国もあるけれども、大体一般財源で措置をするという点では他の国と比べて同様の形かなというふうには思っている。ちょっとまとまった話はできかねたが、私が今手元に持っている資料を見る限りではそんな感じかなというところである。

 自動車損害賠償保障制度について、国土交通省資料(資料3)に基づき、国土交通省から概略以下のとおり説明がなされ、その後質疑応答が行われた。

(国土交通省)資料3に国土交通省の資料として、自賠責保険の制度の概要等を示している。 沿革等の資料について十分に付けていないが、車の損害賠償の保障を少し口頭で申し上げると、車自体は、まさに戦前も相当あったわけであって、その当時は任意の保険制度がどうもあったようである。それで、戦後間もなくであるが、そのころから当時やはりああいう時代であったから車がふえてきた。昭和30年ごろには150万台の車があったと言われており、現在それが8,000万台になっている。これは登録をしている車の数であるけれども、自賠責の対象となるいわゆる原付バイクも含んでおるから、それらを含めると9,000万台ぐらいが自賠責の補償の対象になっている。
  いずれにしても、昭和30年にこの制度ができ上がり、戦後の昭和20年代に、旧運輸省において、道路運送法というのが昭和26年、それから道路運送車両法といういわゆるバス、タクシー、トラック等の運送事業、それから車の車両の安全という観点の法律が昭和26年に同時にできた。そのすぐ昭和28年の改正で、この道路運送法93条にこの自動車損害賠償保障制度を確立すべきだと、こういう条文の改正をして検討を進め、昭和30年にこの法律ができたということである。最終的に昭和31年2月21日に全体的に公布されているものであるから、まさにこの制度は50年の歴史を持っているということである。
  途中、昭和37年であるが、自賠責制度のちょうど世界との関係の特徴ということを申せば、非常に車との、車検とのリンクをきちっとしているものであることから、車検、車を買ったとき、あるいは改めて検査をするとき、そのときに自賠責保険に入っているか否かというものを国土交通省の運輸支局という職員がチェックをする。いろいろ車の登録を、ナンバープレートを出すときに確実にこれが入っているかどうかをチェックする。そのほか、いろいろな税金が払われているかということも職員がチェックする。そういうものをきちっとリンクされているという制度を昭和37年に車検のリンクを開始したということもある。そのほか、先ほど申したように、いわゆる原付バイクにもこの自賠責保険制度を適用していくというふうなことが経緯であって、現在に至っているということである。
  この自賠責保険という自賠責という責任保険の分野であるけれども、これはほかの健康保険、労災と違って、国みずからこの事業をやっているわけではない。まさしく皆さん方が保険会社、いわゆる損保の保険会社と契約をするということになっている。平成13年以前、この資料の1枚目であるが、それまでは政府再保険制度という制度があって、国土交通省において保険金の6割を国が再保険するという仕組みをとっていた。そういうわけで、その保険料の6割分が特別会計の中に入り、それで支払の不適正な現金支払がないかどうか、いわば1つ1つチェックしていたような体制があったわけであるが、規制緩和でもってこういう制度はやめて、現在は事後的なチェックをしているということである。
  そのほか、こちらの資料にあるが、国みずから行っている事業というのがこの自賠責保険という保険にきちんと入っていただく人は結構であるが、どうしても無保険車がいる。それから、ひき逃げとか盗難というのがあって、そういう場合についてはこの自賠責保険では保障されないことから、みずから政府が保障事業と称しているが、これをやっている。これは14年の制度改正のときにも引き続きこれは保持するということであって、現在マイカーで2年の自賠責の保険料が3万円ぐらいあるが、そのうち70円分が政府保障事業に係る賦課金である。この財源をもとにしてこういったひき逃げ・無保険車の事故被害者に対して政府みずから保障をしているということである。数として、ひき逃げが4,000人、無保険が1,000人ぐらいの5,000人ぐらい、大体50億円ぐらいを支出しているということである。この自賠責保険自体が大体100万人以上の方の事故により死傷しており、それに対して保険と同じような形で払っているということである。
  また全体の資料にあるように、事後的なチェックをする意味で、保険金の支払トラブルがあると新しい制度でもって指定紛争処理機関というのができて、ここの方に調停にもっていくという仕組みを作っている。
  そのほか、保険契約をする際の特徴として、多くの保険会社、どこでもよいわけで、さらに強制保険ということで締結義務を課しているわけであるが、保険会社がこの損害の調査を損害保険料率算出機構(昔は自算会といっていた。)に損害調査を委託して、一律的に自賠責の分であるが、損害調査をしている。あるいは、各種こういった自賠責保険の支払件数等の把握についてはここがやっているところである。そのほか、この損害保険会社のほかに、共済組合があって、例えば農協のJAというそういう共済の形も参入しているということである。
  犯罪被害者の関係ということで、この交通事故被害者の救済措置として、自賠責制度、政府保障事業のほかに自動車事故対策事業というのをやっておって、これについては政府再保険をしていたときに財源が幾らかたまった。保険料が収入として入って、さらに保険金の支出をするまでの間にいくらかのタームがあることから、運用益が発生した。その運用益を活用したり、あるいは運用益そのものを取り崩すこともあるわけだが、被害者救済対策として重度後遺障害の方たちに介護料を支給したり、遷延性意識障害といった脳外傷、交通事故によってそういうような状態になった方たちに対しては自賠責制度の中で介護料を支給したり療護センターの運営をしていると、こういうようなことをやっているということである。
  次のページであるが、この自賠責保険の仕組みである。まさに保険契約を保険会社として、保険金、保険料を支払って、保険料をいただくというふうな保険制度であるけれども、この辺の締結義務があるということが1つ。それから、自賠責の特徴として、通常は加害者である保険契約者が保険会社に保険料を請求するわけであるが、被害者みずから加害者との関係がうまくいかないということもあるわけであるが、直接請求を加害者が持っている保険会社に請求をすることができると、こういう特徴があるわけである。
  こちらの方に免責の三要件というのがあるけれども、加害者側に免責の立証責任を課すことにより、事実上の賠償責任が明確化されているということであって、加害者の側であるが、自己より運転者が自動車の運行に関し注意を足らなかったこと、それから被害者または運転者以外の第三者に故意または過失があったこと、自動車の構造上の欠陥または機能の障害がなかったこと、こういうときであれば自賠責保険が払われないことがあるということである。典型的には、いわゆる赤信号で被害者の方が突っ込んでしまったと、加害者の方からすればその場合は過失がない、あるいはセンターラインをオーバーしてしまって、そこでオーバーした方が亡くなられて被害者になるわけであるが、その場合は加害者とされる方には過失がない。こういうときで有責、無責というような議論がされるが、そこで一度判断をしたときに、それでもいかがなものかということでよくこれは実際に自賠責保険の額等について議論が出ることがある。それについては、先ほど前のページにある損害保険料率算出機構の再審査会というのにかけたり、さらにそれでもうまくいかない場合には、この指定紛争処理機関に持っていく。あるいはそれでもそうではないときは裁判に行くと、こういうような民事の方法等も行っているということである。
  支払件数はこちらに書いてあるけれども、120万件以上の支払があって、1兆円近い額が支払われているということである。
  次に、自賠責保険料の構造ということで、先ほど申し上げたけれども、現在平成14年から6年間の措置であるが、この制度改正により保険料と充当交付金制度というのが6年間だけやっている。平成17年度については1,050円、本来保険料の3万2,000円弱になるところを1,050円だけ低くしているということである。この保険料の内訳であるけれども、純保険料の部分、それから付加保険料ということで損害調査費、営業費、代理店手数料、というのが内訳としてある。そのほか、政府保障事業に相当する純賦課金、それからその手数料である付加賦課金と、こういったものの内訳になっているということである。これらがそれぞれの車種ごとに決まっているが、ここには書いてないが、基本的には全国一律であるが、沖縄と離島、こういったものについては別の料金になっているということである。
  それから、保険金限度額の推移ということで、昭和30年からの推移を書いている。死亡と死亡に至るまでの傷害、それから傷害、それから後遺障害というのがあって、発足当時は傷害については重傷、軽傷というような分けがあったけれども、現在はこれがなくなり、後遺障害も昭和42年から1級から14級という区分があった。それから、平成14年の改正でもって、この後遺障害を別表1と2に分けて、意識障害の常時介護する方、それから随時介護する方、こういうより症状の重い方については別表を設けて、死亡が今現在3,000万であることから、さらに上乗せをして4,000万という保険限度をあくまでやっているということである。この額であるが、任意保険との関係があって、自賠責保険というのは全体の保険に関する、当初は最低の保障というかそういう小さい保障を考えていた。その後はだんだん基本保障というような考え方になって、それなりの保障をしていくと(いうことになった)。いわゆる国民がほとんど車を持っている方は基本的に自賠責に入ってきているという状態で、比較的こういう3万円ぐらいの保険料でもって3,000万、4,000万の保障が得られると、まさにこういうことは欧米と比較しても日本の特徴だと思っている。
  それから、次のページであるが、後遺障害、これは今申したように、別表1と2ということで、神経系統の機能、精神関係、そういうことで別表を、介護を要する後遺障害というのを設けており、別表1と別表2に1級から3級までをよく重度後遺障害と言っておるけれども、基本的には労災に倣って、日数ではなくて金額でもって限度額を決めているということである。全体100万件ぐらいの支払のうち、重度後遺障害の支払は自賠責については資料にあるとおりである。死亡については書いてないけれども、現在政府の取り組みによって死亡は減っておって、大体今6,700人というのが24時間以内の死者の数であるが、自賠責の場合、当然その後随分たってから亡くなられる方もいることから、そうすると7,000人等の方が死亡ということである。
  次のページがその支払基準であって、これは従来内部的な基準であったが、法改正のときに法律に基づいて金融庁と国土交通省、つまり内閣総理大臣と国土交通大臣が定めて告示されているところである。詳しくは書いてないが、死亡、傷害、後遺障害ということで、傷害について申すと、まず積極損害ということで、治療関係費、それぞれこういう項目があって、必要かつ妥当な範囲というふうな言い方をしている。例えば自賠責の場合に、具体的に診療費はどうなのかというのが気になる。これはご承知かと思うが、健康保険を使えば健康保険の点数になるわけであるし、労災は労災の基準があるが、自賠責の場合はそういったものを使わなければ自由診療というか、言葉がちょっと正確ではないけれども、各病院で決めているものである。一方診療報酬基準案というのが医師会と損保協会や損保料率機構の間で決められているというのがあって、それに則って診療報酬を定めていることもある。傷害についてはどうしても120万が限度であって、それを超えることがままある。通常の支払は五、六十万で大体傷害は終わっているけれども、平均的にはそうであるが、それを超える方がいて、そこで超える分は、次に説明するように、任意保険でもってされればよろしいのだが、任意保険と申すのは、多くの人はほぼ入っているけれども、一部やはり入ってらっしゃらない方がいて、その辺で自賠責との給付の違いが問題になってくるということである。
  後遺障害についても、逸失利益、慰謝料、それから死亡についても葬儀費も入ったものが支払基準である。これについては、よく議論になるのは、今現在ライプニッツ方式ということで、中間控除というのを5%で計算をしておって、損害額を計算する際に、そのときの収入をもとに67歳までその辺の労働の損失というかそういうものを勘案しながら決めていくわけであるが、やはりそういったときにそこで一時金で支払うものであることから、その辺の割引率についていろいろ議論があった。ただ、これについては今年の3月、最高裁判決があって、そこは5%ということで一応決着を見ているところである。支払金額については以上のようなことである。
  それと、こちらにも十分書いてないけれども、1つ自賠責保険の特徴として、被害者に支給をするというような普通の単なる保険ではないと、被害者重視ということがあって、先ほどの過失割合についても、通常の不法行為であるとまさに加害者以外にこちらの過失割合があるかということであるが、被害者の過失がたとえ7割あっても、減額の分を2割にとどめている。本来であれば被害者が7割悪ければ7割減るわけであるが、自賠責保険の場合は2割で止めていると。99%悪い場合でも半分、5割は被害者に支払うと、こういうことを先ほどの限度額、死亡の場合ですと3.5倍であるが、被害者がたとえ悪くても、100:ゼロでない限りは最低50%払う、そういうような措置もやっている。
  それから、次であるが、自賠責保険と任意保険ということである。任意保険は自賠責保険に対して上積み保険という性格を持ってきておるわけである。これについては、日本の自賠責制度自体が、特にドイツあたりをもとに作られたが、よくヨーロッパなんかでは一緒の保険になっていて、政府が最低の保障の額を決めて、いろいろな額の保険があるようであるが、日本の場合は車検制度ときちっとリンクをして、いわゆる二階建て構造になっていると、こういうのが特徴である。それで、任意保険の部分については、今もう、保険が自由化になっているけれども、損保会社あるいは共済の自由な発想でいろいろな商品が出されているということである。
  最初に特に申し上げなかったけれども、自賠責自体は、ご承知のように、対人賠償であって、物損については関係ない。外国の事例だと物損を対象にしている場合もあるが、日本の場合は対人のみ。そういう意味で対物賠償保険あるいは車両保険、あるいは相手の加害の部分があるから、家族の場合、家族の同乗者の傷害あるいは人身傷害保障とかそういうこと。あるいは自損事故、これも先ほどの加害の条件の中で自賠責では自損事故の場合には対象にならないことから、そういう場合もカバーするような保険商品が出てきているということである。
  それから、次に、政府保障事業であるけれども、これは私ども保障課の職員がこの事業をやっている。私どもがやるところは、てん補額の決定をするところが国の役割である。被害者の方からは、これはどこの保険会社にでもよいのだが、受付を請求して、調査依頼、先ほど申した損害保険料率算出機構に行って、そこが被害者からといろいろ連絡をしたりして照会して書類をつくって、保険会社に調査結果を報告する。それを一件書類と称しているが、私どもの方にまいって、これを私どもなりにチェックをする。ひき逃げのような事案であることから、あるいは亡くなっているケースだと、相続人がだれかというようなことも、今個人情報の関係で厳しいところはあるけれども、できる限り役所の力でもって調べることは調べて、額を決定して、それを保険会社に通知する。それで、被害者の方に払うわけである。被害者に対して保障金を支払うというのは国の義務であり、被害者が有する損害賠償請求権を代位取得して国の債権になることから、これを加害者の方に求償すると、こういう仕事をしている。ひき逃げの場合は相手がわからないのでこういうことができないけれども、無保険車、本来国民の99.9%という方がちゃんと自賠責保険に入って車検も受けて運行しているわけだが、そうじゃない方がやはりいるわけであるが、そういう方たちの求償の処理に苦労している。こういうことで、件数的には5,000件程度であるが、こういうことでやっているということである。
  それから、最後に、被害者支援に係る主な事業ということで、この再保険による運用益を活用して、重度後遺障害者の介護料支給、短期入院費の助成、それから療護施設の運営ということを独立行政法人の自動車事故対策機構というところが実際そういうことをやっている。
  それから、交通遺児の方には生活資金の貸付をしたり、交通遺児の育成基金運営ということで、これは任意も含めて賠償金が入ってくる。そのときに遺児の方のために基金として財団の方に預けていただき、国の補助もしながらであるが、運営をして給付していくと、こういう仕組みである。それから、高校生の交通遺児の授業料の減免もしているということである。
  さらに、日弁連交通事故相談センターというところで、全国百数十ヶ所であるが、無料法律相談あるいは示談の斡旋などもしているということである。それから、紛争処理機構に対する支援もしている。
  また、救急病院に対する医療設備整備、それから救急知識の普及といったようなこともやっている。
  保険の制度以外にもこういった保障制度あるいは自動車事故の被害者相談といったことをやってきているということである。
  ご要望のあったことに十分応えているわけではないけれども、これらについては質問に答えられるものは答えていきたいと思う。
  以上である。

(構成員)1点だけだが。ご説明の中で、被害者にかなりの過失割合があった場合でも給付の減額はごく一部にとどめるといったように示されたが、その背景にある理念というか、考え方というのをご説明いただけるか。 (国土交通省)それはさっき申したが、自賠責制度自体がいわゆる責任保険という、まさに保険制度でみる部分と、やはり被害者の保護というのが重要だということで、社会保障的な発想もあって、その2つの考え方から、これは運用でやっているところであるが、その支払基準が今現在位置づけられている。そういうことで、法律上そういうことをやるということを明確に書いているわけではないので、そういう理念を基に運用としてできているということである。

(構成員)最初のページの政府事業の緑色のところを見ると、1,168億円というので一般会計繰入490億円というふうになっているが、これはどういう。一番後ろの方から2枚のあれだと、平成16年の支払件数が4,754で、支払額55億円となっているが、それはどういうあれか。

(国土交通省)今のお話は、一般会計の繰入の話か。

(構成員)支払額が55億円だと、政府事業で支払額55億円だと、その金額と最初のページの金額との関係というか、これはどういう関係になるのか。

(国土交通省)まず、一般会計繰入のことはちょっと別件であって、政府の財政事情が非常に悪くて、平成6年、7年に2度にわたり自賠特会から一般会計の方にいわばお貸ししているお金がこれだけあると。それで、その後何年かにわたって入ってきているが、まだいまだにこれだけの490億円と5,100億円という額がまだ一般会計の方にお貸ししているという状態であるということである。それから、保障勘定で1,200億円が今1,168億円になっているけれども、この賦課金が、今は70円だが、少し前はもう少し値段が高かったけれども、そういったことで、これも運用益が発生しており、その中でお支払いが、むしろ今50数億円支払っている額の方が保障事業で見ると多い。現実に毎年フローとして入って来る額以上に払っている。それはかつてのそういう運用があるからということである。

(構成員)累積額がここに書かれている。

(国土交通省)そうである。

(構成員)1つだけお願いする。次回までで結構なので、一番最後の資料にある被害者救済対策の中で支給者の人数は書かれていますが、支給額は書かれていないので、一人当たりの支給額と総額を教えていただきたい。

(国土交通省)わかった。

(構成員)1つは、保険金の限度額の改定についてであるが、改定の理由は物価上昇率などと書いているけれども、改定を過去4、5度しているが、改定金額の目安というか、改定金額の最終的な判断基準があればご説明いただきたい。もう一つは、3,000万円とか4,000万円の上限があるが、これらの金額の最終的な目安、つまり最終的二そのように決められる判断基準があれば説明いただきたい。

(国土交通省)消費者物価指数や賃金上昇率をある年の改定前の状態から、例えば今回検証するとすると、平成14年4月から現在までどのくらい上がったかと、そういうものを検証して水準を改めるべきか、ということを議論して、金融庁と一緒になって審議会にかけて検討するわけである。そもそもその額にどうしてしたかと申すと、任意保険との関係のカバー率というような概念を持っておって、大体このぐらいの額でおおむねカバーできていればと考えておるわけである。しかし実際、後遺障害等級ごとに見ると非常にカバー率が低いのもあるし。今、死亡自体もこれが限度額であるから、例えばお年寄りの場合だとここまでいかないケースもある。そういうようなこともあって、大体限度額としてはこのくらいでよかろうというような考え方できていると。それがあってさらに介護費用等の動向を見ながら考えていくと、こういうことである。

 労働災害補償保険制度について、厚生労働省資料(資料4)に基づき、厚生労働省から概略以下のとおり説明がなされ、その後質疑応答が行われた。

(厚生労働省)資料4をごらんいただきたいと思う。  まず、理念・目的であるが、そこに書いてあるように、労災保険制度、これは昭和22年に労働基準法の制定と同時に発足した。基本的にはその後改正を行っているが、まさに労働基準法に基づく使用者の災害補償責任、これを保険によって担保しているというものである。
  最後のページを参考というのをごらんいただきたい。ここに沿革が書いてあって、昭和22年に基準法と同時につくった。これは基本的に基準法、これに基づく罰則付きで災害補償をやっているけれども、それを保険という形でやることとした。その後、40年に給付の年金化、そしてまた47年に全面適用、48年に通勤災害に対する給付、それから介護(補償)給付、二次健康診断等給付という形で拡大をしてきたというものである。
  最初の1ページに戻っていただきたい。目的はそこに書いてあるように、業務災害、通勤災害に対して保険給付を行う、そして併せて、社会復帰の促進等の事業を行っている。
  適用であるが、原則としてすべての事業に強制的に適用となる。それから、労働者について、職種の種類を問わず、労働者に賃金を支払われるものに対して適用しているというものである。国家公務員、地方公務員、船員は適用除外となっている。事業場数は、263万事業場、4,855万人が今対象となっている。
  保険給付の内容であるが、4ページをごらんいただきたいと思う。右の方に保険給付と書いてあって、まず療養のために休業する場合ということで、これ療養給付、これが全額療養費の全額が出る。補償と書いてあるのは、業務災害の場合が療養補償給付であって、通勤災害は療養給付と呼んでいる。休業補償給付、これは4日目から60%、給付基礎日額というのはその平均賃金である。これで60%出していくと。ちなみに、3日目までは労働基準法で出すようになっている。
  傷病補償年金、これは1年6ヶ月を経過して治らない、症状が重いという場合、そこに書いてあるように、年金という形で313日から245日分の年金を出していくというものである。
  それから、障害が残った場合、これは年金、重い場合は1級から7級が年金であって、これも程度に応じまして313日分から131日分が出される。それから、それ以下の場合、8級から14級の場合一時金であって、503日分から56日分が出る。
  亡くなった場合、これは遺族補償給付であって、これも遺族の数に応じて年金の場合、これは153日分から245日分の年金が出る。それから、遺族補償年金の受給者でない場合、これは1,000日分の一時金が出る。ちなみに、7ページをごらんいただきたいと思う。7ページで年金と一時金の対象者が書いてあって、年金の場合は事業上の事由により死亡した場合に労働者の収入によって生計を維持されていた次の方ということであって、妻とか夫とか子どもとか父母、それから孫、祖父母、兄弟・姉妹とあるが、年齢等によってこの遺族年金をもらえるか、それ以外の形として一時金という形でもらえるかが決まっている。4ページにお戻りいただきたい。ただいま申し上げた遺族補償給付、これは年金の場合と一時金の場合がある。葬祭料、これについては31万5,000円足す給付日額の30日分ということで、60日分を最低補償額にしている。
  介護を要する場合、これについて、そこに書いているように、常時介護の場合は10万4,590円、随時介護の場合は5万2,300円を上限として支給をしている。
  それから、最近残念ながら増えている脳心臓疾患、これに関する異常所見を見るということで、二次健康診断等給付ということで、脳血管とか心臓の状態を把握するための二次健康診断、それからまた医師等による特定保健指導というものを行っている。
  これらが全体で保険給付である。
  それに加えて、下の方であるけれども、労働福祉事業として4つの事業を行っていて、例えば義肢等の支給、あるいはアフターケア、あるいは労災の就学等援護費の支給、それからいろいろな各種の労働災害の防止、こういう事業等を行っている。それから、また未払賃金の立替払事業、これも労働福祉事業として行っているところである。
  その左側の方で全体の額等書いてある。併せてご説明したいと思う。このページは18年度予算が書いてあって、全体として保険料収入、1兆318億円である。財源は、基本的には全額事業主負担である。一部国庫負担と書いてあるが、これは大体13億円ぐらいであって、基本的にはこれは全額事業主負担でやっているという状況である。
  これは、労災はそれぞれの事業の種類により災害率が異なるので、そこに書いてあるように、1,000分の4.5から1,000分の118までの各種業種の開きがある。ちなみに、1,000分の118というのがずい道事業、こういうものは1,000分の118事業であって、1,000分の4.5は普通の金融業とかそういう事務職的なのは1,000分の4.5というような形になっている。
  1ページをもう一度ごらんいただきたいと思う。1ページの3番目の別紙のとおりが先ほどご説明したとおりであって、※印で書いてあるが、業務中あるいは通勤中において、犯罪被害に遭って負傷した場合、これも業務の事由又は通勤によるものと認められる場合は労災保険の対象となるということである。抽象的に書いてあるが。例えば今まで認められたのは、建設部長が現場なんかで作業の手抜きなんかを指摘して、部下の大工から例えば殴られたとかそういうことで負傷したというような場合は、これは業務、注意をしたことによって殴られたというような形で被災した。あるいは警備員が暴漢に襲われて被災したというような場合、こういうものは業務との因果関係があるということである。個別事例でまた違うけれども、基本的に私怨あるいは私的関係によってそういう暴行を受けたものではないと、業務との因果関係があるというようなものについては、これは業務災害という形で労災の適用になっている。通勤災害の場合も、例えば通勤途上で暗いところにあって、例えば暴漢に襲われて被災したというような場合も通勤途上、通勤災害という形で適用しているわけである。だから、けんかとか私的関係があった場合、個別事案によって違うが、そういうものでない限りは、つまり業務や通勤と因果関係が認められた場合には業務災害、通勤災害として認めているということである。
  それから、2ページであるけれども、他の給付との調整であるが、これも基本的に同一の事由について併給が行われる場合、例えばそこに書いているような労災年金のいろいろな障害とか遺族とかあるけれども、例えば厚生年金保険等にも障害の厚生年金とかいうのがある。同一事由について併給される場合には、この併給の方法は年金の種類によって違うけれども、労災の方を一定の率で減額していく。例えば典型的には、障害厚生年金と障害補償年金なんかの場合、労災の障害補償年金と厚生年金の障害年金なんかの場合は、労災の方を0.83掛けして、減額をして出している。厚生年金の方は全額出しているという調整になっている。休業補償給付と厚生年金保険の年金とも同じような考え方で調整をしている。それから、5番目であるが、労災保険と民事損害賠償との調整。これも調整を行っておって、労災事故についていろいろな民事損害の調整、損害賠償請求があるけれども、その調整については両方の間で調整を行っている。第三者行為災害によった場合、これについても基本的に、そこに書いてあるように、損害賠償が保険給付より先に行われた場合には損害賠償の額の限度で保険給付が減額をしている。また、保険給付が損害賠償より先に行われた場合にはいわゆる求償権を取得して求償しているという状況である。
  それから、労働福祉事業をやっているということである。
  費用負担は先ほどご説明した、全額事業主負担ということである。この保険料率は3年に一度見直しをしているという状況である。
  実績であるが、次の3ページである。新規の受給者、16年度60万人であった。保険給付の支払額合計で7,772億円強である。これが16年度の実績である。以上、大体概要である。
  最近の動きとして、つい一番最近の国会での改正であるけれども、複数事業所間の移動での災害、あるいは単身赴任者の方の赴任先住居と帰省先住居間の移動、これについて通勤災害に加えるという拡大の改正を行ったところである。
  以上、資料のご説明であった。よろしくお願いする。

(構成員)今ご説明にはなかったが、5ページで特別支給金というのがある。この趣旨というか、少し補足説明をいただきたい。

(厚生労働省)労災補償の給付水準に関してはILO条約とILO勧告がある。例えば休業補償給付でやるならば60%というのはILO条約であるけれども、さらにそれを上回るものが望ましいというような形でILO勧告が出ている。それに基づいて、例えば休業であれば60%のものについて20%を出していくとか、そういうことを行っている。これは基本的に労働福祉事業として行っているものである。だから、こちらの特別支給金の方は。本体給付の保険給付と合わせて、例えば休業した場合には80%のものを出しているということになる。

(構成員)最後の方の8ページ目のところで、新規受給者数が60万人ということになっているが、5ページ目の給付の一覧によると、特別支給金の方で一時金をもらって給付の方で年金もらうというようなことで、一時金と年金もらっている方を合わせてもらうわけか。

(厚生労働省)そうである。

(構成員)それからまた年金だけの方と。

(厚生労働省)ええ。

(構成員)そうすると、年々年金もらっている方が累積していくわけか。

(厚生労働省)そうである。

(構成員)そういう累積の変化の状況とかいうのはわかるのか。その人数というか、どういうふうに。今まで年々年金をもらう人は累積していくわけか。

(厚生労働省)大体新規年金は、ここ数年労働災害が少なくなっているので、減ってきているが、例えば平成7年でいくと、8,000人が新規年金受給者であった。経緯的に見ると、平成16年でいくとそれが6,600人であって、大体大ざっぱであるが、直線的に大体減ってきているという状況である。
 年金受給者は、当然先生おっしゃいたように、累積になっていて、平成7年度は20万9,000人であった成16年度は22万1,500人ということである。

○ 自由討議
 時間の関係上、本日の検討課題である検討の進め方と当面の検討スケジュールに限定して発言を求めたところ、構成員から特段の発言はなかった。

○ その他
 9月以降の検討会の日程調整について、調整を要する検討会の前々回の検討会で調整することが提案され、了承された。

※ 次回の検討会は、平成18年6月21日に開催予定。

(以上)


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