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犯罪被害者等施策
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警察庁ホーム > 犯罪被害者等施策 > もっと詳しく知りたい:犯罪被害者等施策推進会議等 > 各検討会の開催状況 > 経済的支援に関する検討会 > 第4回議事要旨

経済的支援に関する検討会(第4回)・支援のための連携に関する検討会(第3回)・民間団体への援助に関する検討会(第3回)合同会議


(開催要領)
日時: 平成18年6月30日(金) 15時01分~18時58分
場所:中央合同庁舎第4号館共用第2特別会議室
出席者:
[経済的支援に関する検討会]
座長國松 孝次(財)犯罪被害救済基金理事長代行・常務理事
座長代理瀬川 晃同志社大学法学部教授
構成員飛鳥井 望(財)東京都医学研究機構東京都精神医学総合研究所参事研究員
大久保 恵美子(社)被害者支援都民センター理事兼事務局長
佐々木 知子帝京大学法学部教授・弁護士
白井 孝一弁護士
高橋 シズヱ地下鉄サリン事件被害者の会代表世話人
平井 紀夫オムロン(株)特別顧問
荒木 二郎内閣府犯罪被害者等施策推進室長
中江 公人金融庁総務企画局総括審議官
片桐 裕警察庁長官官房総括審議官
三浦 守法務省大臣官房審議官
代理出席村木 厚子厚生労働省政策評価審議官
谷 みどり経済産業省商務情報政策局消費経済部長

[支援のための連携に関する検討会]
座長長井 進常磐大学大学院被害者学研究科教授
座長代理小西 聖子武蔵野大学人間関係学部教授
構成員奥村 正雄同志社大学大学院司法研究科教授
高井 康行弁護士
本村 洋全国犯罪被害者の会幹事
山上 皓東京医科歯科大学難治疾患研究所教授
荒木 二郎内閣府犯罪被害者等施策推進室長
廣田 耕一警察庁犯罪被害者対策室長
下河内 司総務省自治行政局自治政策課長
井上 宏法務省大臣官房司法法制部司法法制課長
坪田 眞明文部科学省初等中等教育局児童生徒課長
依田 晶男国土交通省住宅局住宅政策課長
代理出席矢田 真司厚生労働省参事官(社会保障担当参事官室長併任)

[民間団体への援助に関する検討会]
座長冨田 信穂常磐大学大学院被害者学研究科教授
座長代理中島 聡美国立精神・神経センター精神保健研究所成人精神保健部成人精神保健研究室長
構成員林 良平全国犯罪被害者の会幹事
番 敦子弁護士
荒木 二郎内閣府犯罪被害者等施策推進室長
廣田 耕一警察庁犯罪被害者対策室長
下河内 司総務省自治行政局自治政策課長
辻 裕教法務省刑事局参事官
代理出席矢田 真司厚生労働省参事官(社会保障担当参事官室長併任



説明者奥村 正雄(上記構成員欄参照)
冨田 信穂(上記構成員欄参照)
安部 哲夫獨協大学法学部教授
小木曽 綾中央大学法科大学院教授

※各構成員のいずれの発言についても、便宜上、「構成員」と表記した。


(議事次第)

1.開会

2.海外の実情に関する有識者からのヒアリングについて

  ・イギリス(同志社大学大学院司法研究科教授 奥村 正雄 氏)

  ・アメリカ(常磐大学大学院被害者学研究科教授 冨田 信穂 氏)

  ・ドイツ(獨協大学法学部教授 安部 哲夫 氏)

  ・フランス(中央大学法科大学院教授 小木曽 綾 氏)

3.海外調査について

4.閉会


(配布資料)

  資料1  奥村構成員資料[PDF形式:352KB]
  資料2  冨田構成員資料[PDF形式:47KB]
  資料3  安部教授資料 [1][PDF形式:25KB]  [2][PDF形式:148KB]
  資料4  小木曽教授資料[PDF形式:195KB]


(議事内容)

○海外の事情に関する有識者からのヒアリング

 3検討会における検討事項に関連した海外の支援制度・体制等について、奥村構成員(イギリス・資料1)、冨田構成員(アメリカ・資料2)、安部教授(ドイツ・資料3)、小木曽教授(資料4)からそれぞれ資料に基づき説明がなされ、質疑応答がなされた。概略以下のとおり。

《イギリス》

●有識者構成員からの説明

(構成員)総論的な話であるが、イギリスにおける犯罪被害者対策は第2次大戦後に始まっていくわけだが、広い意味ではご案内のようなイギリスの第2次大戦後の綿々と続いてきている「ゆりかごから墓場まで」という社会福祉政策の一環だととらえることが可能かと思う。
 それから、狭い意味というか刑事政策との絡みで申し上げると、まず4つの段階に分けることが可能かと思う。まず第1は、1964年に始まった犯罪被害者補償制度による経済的な支援。そして第2段階は、1974年に始まった民間ボランティア支援組織による犯罪被害者支援の段階である。これらの2つの段階では少なくとも、目的は最初は受刑者の社会復帰施策との脈絡で発展していく。
 そして、第3段階に入ると、1980年代に二次被害防止、これは世界的な動きとしてあるわけで、二次被害防止など刑事手続における被害者の保護の問題がクローズアップされてきた。70年代からのイギリス経済の疲弊による犯罪増加とか検挙率低下に対抗するために、サッチャーのいわゆる法と秩序政策に基づく被害者市民の捜査への協力体制の必要性とか、あるいは1985年の国連の被害者宣言とか、87年のヨーロッパ協議会の勧告を受けて、被害者対策を大々的に展開していく。そして、それが第4段階で90年代に入り、90年に被害者憲章を発表して、経済的支援とか民間ボランティア組織、特にビクティムサポートという組織による支援、さらに刑事手続上の被害者保護施策を充実すべく、特に刑事司法機関に被害者支援の努力義務を課してきた。そして、そのほか、ストーカー対策法とか性犯罪者法などの被害類型に応じた被害者関係の刑事立法を整備している。
 その結実とも言えるものとして、2004年に「DV、犯罪及び被害者法」という法律ができた。これはDV対策の問題も、必ずしも1つの性格だけではないが、そこに列挙しているような幾つかの性格を持つ法律ができた。特にここでの報告との関係では、被害者憲章が96年に新バージョンになっていたわけだが、これまではこれらはあくまでも憲章であり、法的義務ではなかったために努力目標という形であった。それがこの2004年法の中に犯罪被害者のための実務規範として結実して、法的義務として課せられるということになる。
 それから、この中には若干申し上げておくと、その被害者諮問委員会という、被害者の代表を入れた政府の委員とかビクティムサポートの委員とかを入れた委員会を組織して、被害者と刑事手法との関係についていろいろな意見表明をする組織を立ち上げた。それが法制度化されたということである。
 ここでの最初の検討課題である、犯罪被害者補償制度、経済的支援のところからお話を申し上げたいと思う。
 イギリスの現行制度は1995年、犯罪被害者補償法に基づいて96年4月1日より施行されている、もともと旧制度は先ほど冒頭で申し上げたように、1964年8月1日より、最初は法律ではなくてスキームとして施行された。そして、性格も国が与える恩恵としての性格づけがあった。このイギリスの制度の当初の特徴は、算定基準が損害賠償型である。犯人の肩代わりをするような形であった。そして、財源は国の一般会計に求めていた。これは被害者側にとっての利点としては相当高額の補償裁定が行われて、日本円で1億円を超す場合も毎年10数件見られるところであった。
 しかし、欠点としては民事訴訟と同じようなことになるので、被疑者被告人の故意とか過失の認定が困難で必ずしも容易ではないというところから被害補償の裁定とか給付が遅延化する結果となった。それから、毎年1億円を超すようなケースを10数件とか出しており、莫大な補償費用によって国家財政が負担になっていったということもあり、94年から損害賠償型を原則廃止し、障害等級表というタリフスキームという1級から25等級の障害の段階に応じた、けがの程度に応じた補償という形で、全国一律支給の形態をとるようになった。
 そういうことで、何度かの改正により、現行制度は今申し上げたように、95年法に基づき施行されている。障害等級を一度改正された後に、現在は2001年の制度を現行制度として施行されている。一方、今申し上げた障害等級というこの傷についてはいくらと一律決まっているわけだが、それにプラス損害賠償型の性格も残しているところがイギリスの被害者補償制度の特徴である。
 その特徴として4点ほど挙げている。障害等級表に基づく25段階の障害の程度に応じて1,000ポンドから25万ポンドの支給という形になっている。1,000ポンドというとちょっと、暴行を受けて前歯が折れたという程度らしい、そういう程度からもう本当の一生涯の障害を負うような25万ポンドの支給まである。
 それから、第2番目が先ほど申し上げた損害賠償型の性格を残しているという点で、就業者に対する28週間を超える逸失利益の補償をしている。ただし、これは経済的な格差が当然あるわけで、国民の平均賃金の1.5倍の限度内ということになっている。その28週以内については法定疾病給与制度により1週に約56ポンド給付がなされていると言われている。ただし、これは公務員とか民間企業に勤めている有職者に限るということで、それ以外の有職者でない方にはこれは適用されない。
 それから、3つ目で、これもイギリスの特徴かと思うが、特別の医療費給付として、イギリスはご案内のようにNHSで国民の病気の治療は基本的には無料であるが、高度医療には大変なお金がかかる。そういった特別の医療経費とか、それから手足の障害により住居の改造が余儀なくされた場合とか、それから介護サービスなどの費用も負担してくれることになっている。
 それから、4番目に、遺族給付ということで、葬儀費用、それから被扶養関係にあった配偶者、親権者・子どもに対する遺族給付が行われる。子どもに対しては18歳、成人に達するまでということになっている。そして、この遺族給付については、どちらかというとイギリスでは亡くなった方よりも生存している方の補償を重視する傾向が見られる。
 この(1)から(4)の合計で、損害賠償型の逸失利益の分も含めて、すべて含めて最高50万ポンド以内ということになっている。約1億円かと思う。若干毎年1、2件出ていると言われている。
 制度の概要であるが、まず制度の趣旨、今申し上げたような特徴を持つイギリスの被害者補償制度の趣旨、これもいろいろな意見があり、国が犯罪の被害を防止できなかったことに対する不履行責任として国家が被害補償する責任があり、だから給付すると考える学説・見解もあるけれども、イギリスの政府は一貫して、そういう旧制度では恩恵として位置付けていたし、現行制度もそこに書いたように、政府が国民を代表して同情と社会の連帯共助の精神から給付すると。市民間で生じた犯罪の被害についてはその責任は基本的にはその個人にあって国にあるのではないというスタンスをとっている。
 財源は旧制度と同じように国の一般会計である。
 次に、受給資格の点であるが、イギリスの場合は法制度のところがややこしいところがあるが、被害者補償制度についてはイングランド、スコットランド、ウェールズということでグレート・ブリテンを対象にして、暴力犯罪による被害を受けたことということで、北アイルランドは別制度になっている。この3つのところ、イングランド、スコットランド、ウェールズで暴力犯罪による被害を受けたことが1つの理由である。外国人被害者も含まれる。イギリス人が海外で受けた被害は適用外ということになる。ただし、現在はEU諸国で受けた被害については、その国の犯罪被害者補償制度の申請手続を補助するサービスをこのイギリスの被害者補償制度の後で申し上げる組織が行っている。
 それから、次に第2点の性格は、暴力犯罪の被害者と刑事補償の対象者ということになっており、この暴力犯罪というのは実は定義がない。CICAと書いてあるけれども、これが犯罪被害者補償制度の審査会であり、この裁量により個別事案ごとに判断しており、殺人とか傷害等のほか、強姦とか放火、DV、汽車転覆等の罪、それから被疑者の逮捕に協力してその結果障害を負ってしまったというような形の刑事補償の対象者が入ってくる。財産犯、交通事故被害者など過失犯は含まれない。財産犯については莫大な額になるからというのがその理由で、交通事故被害の過失犯については過失の認定というのは非常に困難だということで、故意犯に限定している。故意犯の生命身体犯ということである。
 それから、3番目の特徴としては、被害の結果、肉体的及び心理的影響を受けたことで、いわゆるPTSDなども対象になっている。ただし、これは非常に認定が難しいとCICAでは言っている。
 それから、障害等級表の最低基準1の1,000ポンドを受ける程度の障害を受けた者ということになっている。事件後速やかに警察に通報して協力しなければいけないということと、協力義務が課せられており、事件後2年以内の申請ということが原則となっている。
 支給の現状は、これはCICAのアニュアルレポートを当局に問い合わせたが、最新版の返事がない、ネットで公開されているのは2002年度しかない。
 別表1を参照いただきたい。障害等級に基づく支給が別表1で、1億3,201万7,000ポンド、約25万ポンドの最高額が支払われたのが3件あった。障害の程度によって支払が決まってくるので平均というのはとりにくい。50%を超えるものが1,000ポンドから2,000ポンドの間ということである。
 それから、逸失利益等の補償も含め、現行制度では総額が2億747万4,000ポンドということで、日本円で215円ぐらいで換算すると、約436億円の支給が行われている。
 支給の具体例で、暴行事件による両足大腿骨の骨折で12か月、1年間休職したとする。その被害者が、イギリスはご案内のように週給制をとっているが、基本的に週給として週に400ポンドの収入があったと。休職中に週に約100ポンドの社会保障給付を受給していたとする。そして、後ほど申し上げる損害賠償命令が出たとして、500ポンド支払命令が出ていたとする。その補償裁定時に200ポンド受け取ったと仮にする。大腿骨骨折レベル10ということで5,500ポンドとなる。逸失利益が29週を超えた分であり、1年間で52週と、差し引き24週、週に400ポンド掛けると9,600ポンドになる。社会保障給付費、これは今の逸失利益がプラスであるが、そこから公的給付の二重支給は認められないということで、社会保障給付について24週の100ポンド掛けたら2,400ポンドが引かれる。さらに損害賠償命令、これについての200ポンドがマイナスされ、実際は500であるが、残額300ポンドまだあるわけだが、これは犯罪被害者補償審査会の方にいくことになっている。したがって、これについてはもらえない、引かれた分、200ポンドもらった分は差し引かれる。その差し引きで裁定額が1万2,500ポンドという計算になっている。
 支給方法であるが、一括方式が原則で、被害者の希望によっては年金方式も可能であるが、基本的には一括方式ということである。
 仮給付だが、これは基本的には行われない。なぜかと言うと、裁定に関する医学的な検査、調査とか認定に時間がかかるということである。ただ、昨年の7月7日のロンドン爆弾テロ被害については迅速な対応が必要だという例外的扱いをしているようである。
 他の公的給付との関係で、公的給付の二重支給は認められない。他の社会保障給付とか年金等の当然調整、減額が行われる。
 それから、不支給事由だが、1,000ポンド以下の被害については支払われない。通報とか警察の捜査協力を怠った場合とか出ない。それから、暴力犯罪の被害から生じたものでない場合、被害者側に落ち度とか前科がある場合も不支給または減額される。同居親族間の犯罪も基本的にはだめ。しかし、既に加害者が訴追されたか、親族関係が破綻して同居をやめて再び同居の可能性がない場合は補償対象となっている。
 裁定と不服申立であるが、先ほど申し上げた審査をする機関が内務省から独立の官庁として犯罪被害補償審査会というものをつくって、そこで組織化し判断している。これはロンドンとグラスゴーに本部があり、ほとんどが内務省の出向者である。申請受理後1年以内で平均8か月以内の申請処理をしている。
 これについて、被害者側に不服がある場合は不服申立ができるということである。それについても再度CICAが申立を却下した場合は、さらに上訴としてCICAPという犯罪被害補償上訴委員会というまた別の組織であり、弁護士とか医師とか一般人からなる内務大臣が任命した3人の委員によりヒアリングが行われて、そこで再度判断されるという二重の仕組みになっている。
 それから、求償であるが、有罪被告人からの犯罪被害者補償支給金の求償を明確に2004年法で入れた。被告人は被害者補償の一部または全部についてCICAの求償に応じる義務があるということである。
 それから、新しい制度として、アメリカやヨーロッパの幾つかの国でも既にできているものであるが、イギリスでも被害者基金というものができた。2004年4月より実施しており、当初は犯罪収益から剥奪した約400万ポンドを原資とし、犯罪被害者に対する支援のための基金とした。現在は性犯罪被害者の支援活動をしている組織に補助金を出している。
 2004年法の中にもう立法化されたわけだが、刑罰賦課金、サーチャージというのをいずれは原資としていきたいということである。2004年法の14条によって新設された。これは、裁判所がいわば犯罪行為への課税、一種のタックスという形で行うという性格を持って、反社会的行為を行った者に社会への償いの一部として被害者支援に貢献させるということで、犯罪行為を行ったことに対する課税という性格を持っている。必ずしもこれは被害者のない薬物事犯とかも入り、常習的な交通違反者に対する反則金も入るので、必ずしも被害者がいる犯罪とは限らないわけである。5ポンドから30ポンドぐらいの賦課金を課すということで、それを原資として被害者支援活動とか被害者補償制度の原資としていこうと、こういう動きがある。
 もう1つ被害回復制度としてイギリスには損害賠償命令というのがある。被害者自身について刑事事件には裁判において有罪被告人に一定の賠償額の支払を命令し、被害者への迅速な被害回復の実現と被害感情の緩和ということを行っている。これは刑事制裁として科せられ、刑の減軽とかとは一切リンクしない。そういうことで、生命・身体犯・財産犯による損害のケースについて言渡しを行い、簡易迅速な被害回復を図ろうとしている。2004年度では、治安判事裁判所というところでは平均142ポンド、15%ほどの言渡しである。刑事裁判所ではわずか7%の言渡しで平均609ポンドということで、理由は犯人が資力不足だということなどが原因である。被害回復には不十分な現状ではあるが、ともかく有罪被告人に簡易迅速な被害回復をさせることによって若干の被害回復と、それから被害感情の緩和ということをねらっている。
 次に、犯罪被害者支援に係る機関・団体ということである。先ほど申し上げたように、2004年法の中に犯罪被害者に対する実務規範というのが制定された。その中身は実務規範というのが2004年4月3日から始まっている。刑事司法機関による支援を初めて法律により義務付けることになった。別表3では、そこにフローチャート的に警察による支援とか、検察による支援、あるいは警察と検察のワンストップショップのような証人保護部というのが設けられたが、そういうところによる支援など、裁判所とか保護観察とか刑務所とか、そういったところの刑事司法機関による被害者の支援のことが義務付けられて、主に情報提供である。そういうネットワークがなされている。
 それから、珍しいところでは、犯罪事件再審査委員会というのが、これは97年にできたが、有罪判決か量刑について再審査し、再審請求に向けて行う控訴裁判所・刑事裁判所への付託決定に関する情報提供ということである。要するに有罪判決とか量刑について問題がある場合に、さらに再審を請求するというそういう組織であり、それとこの情報提供というものある。
 こういった刑事司法機関の不服申立であるが、書面による不服申立はできるが、この結果について不履行については、刑事上、民事上の責任を負わないということになっている。
 それから、ネットワークとしてのいわば1つの性格としてのワンストップショップのような性格でもっているのが性暴力付託センターと言われるものであり、86年から実施されており、内務省、厚生省の連携により全国に14か所、主に病院内である。先ほど申し上げた被害者基金を利用して、現在は行われている。それは強姦とかその他の重大な性暴力被害の被害者が医療とかカウンセリングを受けることとか、あるいは検証のための身体検査とか証拠採取を含む警察の捜査を援助するという組織であり、医師・看護師・危機ワーカーと言われる人たちが活躍していると言われている。
 それから、4つ目に、民間被害者支援団体の活動についてである。援助団体犯罪類型別、そこに幾つか列挙しているように、総合的なものとしてはビクティムサポートがある。それ以外のものとしては児童とかDVとか交通事故とか性暴力とかに分けている。この財源は政府の委員会とかあるいは地方自治体、警察などから補助金の財政的援助を受けている団体もある。一部であるが、主として個人や企業からの寄付金、資金調達のためのイベント主催とか出版活動などによって財政を確保している。ボランティアについては新聞・インターネット等で募集している。
 その中でも特に注目されるのが、世界的にも有名なこのビクティムサポートという組織である。1974年に誕生して、79年に全国組織として慈善団体となった。80年には有給スタッフを採用し、警察などと連携した支援活動を主に行う準公的性格を持った組織であり、ロンドンに本部がある。全国300か所以上の支部と、刑事裁判所、治安判事裁判所に証人サービスという付添いサービスなどを行う事務所を置いている。
 スタッフで約1万5,000人、これは特に資料によって若干の差が出てくるが、約1万5,000人、約1,500人の事務職員であり、事務職員の方はボランティアの方もいるが、多くが有給スタッフと言われている。ネットで見ると、大体安い人で日本円で350万円から650万円ぐらいの待遇を与えている。全体で93%がボランティアの方だということである。
 それから、各VSの構成だが、そこに挙げてあるのはシニア・コーディネーターとかボランティアとかいるわけで、これは各基本であり、実際には支部でも地方でもかなりそれを統括する場所にはもっとほかの職員、マネージャー、事務局マネージャーとかその補佐とか有給のスタッフがいる。それから最近では特に専門的な支援が必要だということで、証人保護部というところに専門的能力を持った有給スタッフがあるいはケースワーカーなどが置かれている。
 活動資金としては、内務省から2,907万ポンドもらって、合計で約2,919万ポンド、日本円で約61億8,000万円の補助金をもらって活動している。それについては別表4をご覧いただくとおわかりになると思う。約96%が2004年度では内務省の補助金だった。各支部は内務省のVS本部から60%があり、その他自治体の補助金とか個人や企業からの寄付金などである。
 それから、相談員はVS本部が作成した訓練マニュアルに従い、犯罪類型別の訓練を受けて、相談員の能力に応じて比較的軽微な犯罪被害から重い犯罪被害へと能力に応じて活動しているようである。
 活動内容は、情報提供とかそこに列挙している危機介入の段階から短期、中長期の支援を行っている。それから、証人サービスという裁判所での付添いサービスなどを行っている。
 基本的には素人の方で、特別の訓練を受けた一般人から募集した方であり、それを新聞とかインターネットなどで募集している。しかし、最近はペイドスタッフの非常に専門的な能力を持った人も雇っているようである。
 最後に、このように犯罪被害者補償制度については支給対象の範囲が葬儀費用とか特別の医療費とかを払っているという点とか、不服申立の審理方法があるということとか、被害回復の制度で損害賠償命令が置かれているということである。それから、最近被害者基金制度が制度化されたことで、我が国にはない制度がその点である。
 被害者支援のネットワークであるが、実はこれ今刑事司法機関のネットワークがあると申し上げたけれども、しかし、これはいわゆる継目のない、ビクティムサポートが紹介サービスなどを行っているけれども、いわば継目のない、端から端までの支援体制の構築というのはこれからのイギリスでも課題であり、それが自覚されており、イギリスでは労働党のマニフェストの中に被害者ケアユニットというものを立ち上げて継目のない支援体制を構築すべきだということで、イギリスでも課題である。
 それから最後に、民間団体の援助については、ビクティムサポートのような援助団体が政府内務省から巨額の財政資金を受けている。なぜイギリスの場合ビクティムサポートだけなのかということであるが、ビクティムサポートというのは1つ法的根拠としてはチャリティー財団である。チャリティー財団に対しては補助金が出せるということである、ほかの組織はどうなのかというと、ほかの組織もチャリティー財団がほとんどである。なぜビクティムサポートだけなのかということであるが、立ち上げのときからの性格であり、もともと立ち上げたときがナクロの関係者が当たったということである。ナクロというのは犯罪者の社会復帰を検討する組織であり、いわゆる保護観察の人たちとか、あるいは地元の警察とか、そういった自治体との絡みで、民間ボランティア組織であったが、警察とか保護観察とかいったところと密接に関連した組織であったということで、政府としても援助している。
 そして、犯罪被害者については先ほど申し上げなかったが、ほとんどが警察から情報提供が、被害者の情報提供がビクティムサポートにリファーされ、それによってビクティムサポートが動くというシステムをとっている。
 そういうことで、準公的な性格を持っているということもあり、政府内務省としてはある意味ではこれは安上がりの対策だということで、ボランティアの働きだけ見ると、お金に換算すると約年間270万ポンドぐらい匹敵するらしい、それをビクティムサポートはほぼ、有給のスタッフもいるが、基本的には相談員はボランティアで、いわば安上がりになっている点がある。それも検討の課題かなということである。

●質疑応答

(構成員)被害者の権利といった場合にイギリスではどういうことを意味するのか。
 2004年11月の法改正によって何らかの大きな変更がもたらされるのか。

(構成員)被害者の権利、90年の被害者憲章のときもビクティムズライツという形でライツという言葉を使っていた。直訳すれば、諸権利という言葉。しかし、これは先ほど申し上げたように、法的な権利としては認めないということである。これが2004年法になって初めて法的権利として認められることになったということである。

(構成員)具体例で両足大腿骨骨折で12か月休職ということで、最終的には治って12か月で、13か月目からは職場に復帰したということを前提の算定だと思う。それで、タリフスキームの25段階を見ると、ずっと重い方があると思う。その重い方で後遺障害が残って、そして例えば仮に片足1本切断してしまったというようなケースで、将来にわたって逸失利益が生じているような場合、そういう場合はタリフスキームで支給されるお金以外に、将来の逸失利益も支給されるということがあるのか。

(構成員)そういう後遺障害が残るような重障害を負ったと、それはタリススキームに当たるかどうかで判断せざるを得ないわけである。それが最高25万ポンドの範囲内で支払われる。
 さらにあと29週を超える部分の逸失利益が出るようなものについては、その部分について有職者で逸失利益の判断をして、その部分をプラスして、最高50万ポンド以内で支給ということであるので、当然支払われるものと判断する。

(構成員)遺族給付の点。被扶養者の数によって支給されることになるが、5,500ポンドオンリーということなのか、それともずっともし働けないような寡婦になった奥さんがいた場合、ある程度そういう逸失利益も見込んでこの5,500ポンド以上のものが支給されることになるのか。

(構成員)この被害者補償制度のスキームの中では原則これになっているわけである。

(構成員)枠組みとしては、補償として上限が1億円ということであるが、平均すると1件当たりの支給額は55万円ぐらいになる。先ほどの具体的ケースでは、社会保障給付と損害賠償命令などと相殺があるいうことだが、それだけではなかなかそんなに相殺額が大きくなると思えない。例えばそれ以外の損害賠償の相殺というか、何か大きな要因があってこの少額のところに集中していると言えるのか、あるいは逆に実態的にこういう形で少額の被害者給付になっているのか。

(構成員)この別表はあくまでもタリフスキーム(障害等級)に従ったもの。したがって、その逸失利益の分は含んでない。その逸失利益を含んだもの総額は先ほど申し上げたように出ているが、具体的に逸失利益が出た分、当該個々のケースについていくら出したか、いくら算定したかという資料は公表されてない。実際はほとんどが1,000ポンドから2,000ポンドぐらいの中で実際行われている。中に最高50万ポンドまで支払われるような特異というか幾つかのケースがある。

(構成員)支給の現状というところに、2002年度は7万9,248件の申請を解決と記載している。2002年度では申請不適格約3万9,000件とあるが、これは7万9,248件のうち3万9,000件が不適格と判断されたということか。

(構成員)これは次年度へ越しているものもあり、申請は約1年ということで、それを越えるものもあり、必ずしも8万件ぐらいのものの中でということではない。毎年大体これぐらいで、そのうち半数近くが申請不適格、2002年度で言えば3万9,000件あったということ。

(構成員)損害賠償命令。これは被害者の賠償の意思ありなし関係なしに裁判所が独自の判断で下すと考えてよろしいか。

(構成員)そうである。有罪被告人に対して必ず法によって決められ、損害賠償命令を検討しなければいけないということ。

(構成員)ビクティムサポートの活動のほとんどが警察からの付託制度を利用した情報提供に基づくと記載している。付託制度というのは何か法制度があるのか。

(構成員)法制度ではなくて運用で行っている。

(構成員)ロンドン爆弾テロの被害者に適用可能となっているが、実際にはこれは適用されたのか。

(構成員)情報は持ち合わせていない。

《アメリカ》

●有識者構成員からの説明

(構成員)アメリカ合衆国における犯罪被害者支援について、資料2に従い説明する。
 まず、その背景であるが、アメリカ合衆国の犯罪被害者支援の全体像を得るということは、非常に難しい。その理由は、比較的長い歴史があるということ。それから、多様な被害者を対象としていること。それから、何よりも連邦と州の二重構造の問題があるということ。
 その歴史であるが、最初に、制度的には1965年のカリフォルニア州の被害者補償制度だと言われている。先ほどイギリスの制度が64年、そのすぐ前のニュージーランドの制度が64年なので、その翌年には制定されているということでかなり早い時期から始まっていると言える。
 1970年代にはLEAA(ローエンフォースメントアシスタンスアドミニストレーション)という法執行援助政策、主として警察等の法執行機関の改善のため補助金が出され、それを用いていくつかの被害者支援プログラムが始まっていると言われている。特にフロリダで始まったビクティムオンブズマン制度がそのうち早いものだと言われている。このころにNOVAなどの民間団体も設立された。
 それから、もう1つは、特にフェミニズムなどを背景として性犯罪の被害者、それからDV被害者などの様々な被害者グループが結成されて、それが自助グループ的な活動をすると同時に、法改正を求めるというような一種アドボカシーの活動もこの頃から始まっている。
 ただ、アメリカ全体を見たときに、被害者支援をめぐる状況で一番大きい転換点は1982年で、この年の4月に当時のレーガン大統領が被害者支援の必要性というのを強調され、すぐその後「犯罪被害者に関する大統領特別委員会」が設置されて、これが大規模なヒアリングを行った。その12月、1年もたたないうちに報告書、ファイナルレポートというものが出された。
 これは、警察や検察や裁判所や行政や社会全体に対して68のレコメンデーション(勧告)を含んでおり、アメリカ合衆国の被害者支援、ここでは具体的にこの機関はこういうことをやらねばならないと具体的に書いており、これがかなり強く方向づけたと言われている。
 この年に、オフィスファービクティムズオブクライム、犯罪被害者対策室と仮に訳しておくが、設置された。正式には88年。1984年に連邦の犯罪被害者法、VOCA(ビクティムオブクライムアクト)が制定され、犯罪被害者基金(クライムビクティムファンド)が設立された。
 その後に、この刑事手続における、1960年代からナショナルクライムサーベイなどの被害者調査が広く行われることによって被害の実態が明らかになってきた。いわゆる二次被害のことも明らかになり、その刑事手続における犯罪被害者の法的地位の向上というようなことを目指して様々な立法がなされた。
 特にビクティムビルオブライツと呼ばれる権利宣言というものが、立法の形式は様々であるが、各州で制定された。現在、合衆国では33の州に州の憲法の中には被害者に関する条項がある。90年代では連邦の法律が矢継ぎ早にあり、女性に対する暴力法だとか反テロリズムとか権利明確化法とかがある。それが2004年にジャスティスフォーオールアクトというのができ、これは実は連邦憲法の中に被害者の権利に関する条項を入れるという動きもあったが、最終的にそれができなくて、半ば一種妥協のような形で連邦の被害者権利法、もっと明確な形で出されたということである。最近では、特に同時多発テロ以降では、テロリズム被害者に対する支援というのが強調されている。
 次に、経済的支援であるが、アメリカにおける経済的な被害者が被った経済的損失を回復するための制度としては、コンペンセーション、被害者補償制度、それから損害賠償命令、レスティテューションオーダー、それからもちろん民事訴訟、賠償請求というのがある。このうち、国による経済的支援と言えるのはコンペンセーションで、以下そのコンペンセーションを中心にお話をしたい。
 そのほかに公的給付制度は余り充実していないし、それからもちろん民間の保険制度もあるが、犯罪被害者の被った被害回復という視点では余り大きな役割を果たしていないと言える。
 アメリカの被害者補償の基本的な性格は、暴力犯罪の被害者に対して、そのほかのいかなる手段、ここ特に特徴的なのは、自分の掛けている民間の保険も含めてどんな手段を用いても回復できないときに、いわば最後の手段として用いられるというもの。ただ、アメリカでは健康保険というのもほとんどが民間保険であり、それからまた、一部低所得者向け、高齢者向けの公的な医療保険制度というのはあるが、そういういわゆる低所得者層はそういう保険にも入っていないので、そういう人にとってはこの犯罪被害者補償というのは最初に利用する手段というか、それしか利用できないということが言える。
 現在合衆国では、先ほど64年に法律ができたということで、65年から制度が動いているが、カリフォルニア州が始めて、すべての州にある。そのほかDCにもあり、そのほかのそこに書いてあるような領土にも制度がある。
 その支給の対象は、これは州によって異なるわけで、基本的には州内において発生した暴力犯罪の被害者及び殺人事件の遺族であり、財産犯の被害は除外されている。
 それから、これは後でも実際に支払の例を見てもわかるように、アメリカのかなりの特徴は、DV被害者と性犯罪、そして飲酒運転の被害者がかなり重視されている。最近では、外国でテロリズムの被害となった州民にも、それぞれの州の制度が適用される。
 支払われる内容が、それぞれの被った損害について、この申請書を出し、もちろんそれぞれの州で定めている額の範囲内で支給がなされる。
 ただ、暴力犯罪であっても、それによって被ったものについては支給の対象にならないが、認められているものもある。ニューヨークでは500ドルを限度としてとかいうのもある。慰謝料は認められてないが、ただ性犯罪関係では認めている州もある。
 支給金の最高額というのはかなりそれほど高くなく、1万5,000ドルから2万5,000ドル。ただ、カリフォルニア、これは最大の被害者補償制度を持っている州で、ここでは7万ドルぐらいである。それから、ニューヨーク州では医療費上限がないということである。
 損失給与補償関係は概して州によって違うが、概して低くて、例えば26週以内だとか52週以内だとか、1週当たり200ドルとか、その額は高くはない。
 具体的な支給の実績だが、2002年度では4億4,800万ドル、500億円ぐらいが出ていて、支給件数が約16万件となっている。アメリカの場合、件数は多いが、1件当たりの支給額というのは低く、この2002年で2,800ドルほど、それから2004年度の統計を見ても似たようなもので17万件、平均2,400ドルということで非常に低い。
 どんな事件に支給されているのかというと、連邦全体の統計が見当たらなかったので、カリフォルニアの統計を見た。カリフォルニアは約5万人の申請者があり、申請が認められるのが88%。それから、一般の暴行傷害も多いが、児童虐待に対する支給が非常に高いということが言える。
 それから、属性だが、被害関係者でいうと被害者本人が多い。DVだとか児童虐待だとかになると本人の比率が当然高くなってくる。それから、女性が非常に高い。性被害、DVということで反映されている。成年、未成年の比率は60%、40%で、DV関係が26%。
 何に使われているかというと、医療費、これは歯科も含むが、35%、精神保健関係も、カウンセリング費用等も認められていることもあり、かなり高くなっている。賃金関係はそれほど高くはない。
 不支給・減額事由は、一般的なものである。まず、親族関係、これは州によって違うが、親族関係があるということで一律に出ないということではない。これはDVを逆に言うと重視するためにそういう形になっているという言い方もできる。
 それから、被害者の有責性、これも減額・不支給の理由となるということである。
 直接その被害とは関係ない別の事件での前科前歴というようなものを理由として支払われないということも州によってはある。
 それから、迅速な通報だとか捜査への協力だとか、申請を速やかに行わなくてはならないというようなこともある。
 他の給付との関係で、そのほかの手段はすべて考慮される、ここには民間の保険、それからレスティテューションオーダーも入るということ。
 公的な補償制度が充実してないので、低所得者層にとっては犯罪被害者補償制度というのは極めて意味が大きいといえる。
 どこが運営しているのかというと、州によって違うわけで、パブリックセーフティ、公安部であるとかクリミナルジャスティスというところが多い。あとはアターニージェネラルのところもある。そのほか、数は少ないが、社会保険関係、福祉関係というところもある。
 財源が、アメリカの場合は特色があるかと思う。州レベルで見ると、犯人が支払う財源、それから一般財源、ほとんど犯人が払う罰金であるだとか没収された保釈金であるとか、そういうものを財源とするものが多い。ただ、州の場合はかなり多様な財源を使っている。
 極めて特徴的なのは、連邦から州に対する補助で、1984年の犯罪被害者法に基づいてクライムビクティムファンド(犯罪被害者基金)ができたことである。このお金は、各州が前年に被害者補償のために支出した金額に対して支給されるということで実績主義であるが、現在は前年に被害者補償に対して支給したお金の60%が翌年度に支給される。これが2004年度だと1億8,600万ドル、200億円ぐらいでのお金である。5%を限度として運営費に充当できることになっている。
 後の被害者支援に関する補助にも関係してくることで、この犯罪被害者基金について説明しておくと、これを運営しているのは連邦の司法省の司法プログラム局犯罪被害者対策室(OVC)である。このOVCは被害者補償だけをしているわけではなく、合衆国の被害者支援を考える上で極めて重要な役割を果たしている機関である。補助金のほか、独自の被害者支援プログラムの開発も行っている。
 財源は、連邦法違反の罰金、それから保釈保証金が没収されたもの。それから、スペシャルアセスメントという特別賦課金と訳しておいたが、これは犯人から犯罪の軽重に応じて徴集されるもので、具体的な額は、そこにミスディミーナー(軽罪)の中でもランクがあり、個人5ドル、法人25ドルぐらいのところから、フェロニー(重罪)では法人400ドルというようなことになっている。ただ、全体に占める割合ではこの特別賦課金というのはそれほど大きくなく、大きな連邦法違反の没収財産が大きくて、かなり少ない事件の没収されたお金というのがかなり基金の中心になっている。
 テロ関係のことを先ほど申し上げたが、新しい法律ができて寄付や遺産等も組み込むことができるようになったということである。
 キャップと呼ばれている上限があり、実際の額で言うと、2003年度で5億ドル以上、上限として6億ドル、その時点であったお金が13億ドルということである。2005年度では、8億ドル入っており、使える上限が6億ドルというぐらいである。
 この基金の使い道は法律で規定されており、優先順位が決まっている。まず、児童虐待関係の事件の捜査関係に使う。これが200万ドルで、これが合衆国の厚生省関係と司法省関係とで分けられる。それから、あとはインディアンのレザベーションというのは連邦の管轄であるが、ここでの児童虐待事件にも使うということになっている。
 それから次に、連邦の刑事司法制度の改善のためで、特に被害者通知システムがある。連邦では、今我が国でも被害者通知制度が行われているが、コンピュータ化された被害者通知制度、被害者にID、パスワードが与えられ、アクセスすれば自分の事件についての情報が分かるというようなもの、今この整備がかなり進んでいると思う。それから、そのほかの研修にも使う。反テロ関係に5,000万ドルまで使う。
 残額の47.5%を州の被害者補償制度に補助金を出す。州の被害者支援プログラムに47.5%を上限として出せるということである。それから、5%を上限としてOVCが裁量的に使うことができるということである。
 重複するが、2004年度で見ると、手持ちのお金が約11億ドルで、出していいお金が6億7,000万ドル、実際に使ったのがそこに書いてあるような額ということになる。一番多いのは各州では民間公的機関が行う被害者支援活動に州が出すお金に対する補助金で、これに一番多く使われてきている。
 支援関係が、連邦で被害者支援に携わっている機関の中心は、OVCである。OVCの責務というのは、国家的な立場から支援策を考える。4月には被害者権利週間であるとかいうのを主催しているし、助成等もしている。
 この組織、最近というか2、3年前に変わり、現在5部門に分かれ、連邦の援助部門、それから様々な被害者支援プログラム等考えるプログラムディベロプメントの部門、州に対する補助金関係の部門、訓練及び情報普及部門、そして、テロ国際被害者部門という、これは新しくできた部門である。
 州の被害者支援担当部局というのは様々で、アターニージェネラル(司法長官)のところが多いと思う。カウンティー(郡)の検察官関係、それから市の警察部等々いろいろなところが被害者支援に携わっているということである。
 1つ大きな課題であるが、民間団体への援助関係、アメリカで民間団体あるいは民間と考えるときになかなか事情が違うというかわかりにくいところは、1つは、独立してあるいは主として地方の刑事手法機関と協力して行う活動、コミュニティベースドオーガナイゼーション、地域ベースの活動と、それからアンブレラオーガナイゼーションと呼ばれているものがあるということである。ただ、アンブレラオーガナイゼーション、例えばNOVAは別に民間団体だけが会員ではないわけで、そこがちょっとわかりにくい。それから、公的機関も、例えば警察が直接民間ボランティアを使っているということがあり、民間と公的機関のすみ分けというのか実はよくわからないというかはっきりしていないと言える。
 それから、公的機関を会員とする民間機関もある。これは先ほど被害者補償は州が行うということを申したが、その州の被害者補償を裁定する委員会、コンペンセーションボードという、そこを会員とするナショナルアソシエーションオブクライムビクティムコンペンセーションボードという団体もあるし、それから州の被害者支援補助金を担当する州の機関を会員とするナショナルアソシエーションオブヴォカアシスタンスアドミニストレーターズというようなものもある。
 そこで、民間団体の活動は、10ページに書かれているようなかなり広範囲な活動をしている。
 民間機関の種類というのも多様で、公的機関でも民間人を使っているし、それからいわゆるアンブレラオーガナイゼーションはどちらかというとアドボカシー活動なんかも中心にしているが、それは連邦も行っていて、余りすみ分けというのが余りはっきりしているようには思えない。人材の確保という項目では、これはそれぞれの機関が行っていると同時に、特にNOVAの研修会であるとか、例えばMADDの研修会だとか、非常に大きい規模で行われるので、そういうところも非常に大きな訓練の機会になっている。それから、OVCのTIDも非常に大きな役割を果たしている。
 この民間機関には限らないが、民間機関の財源というのは様々なところを利用しているが、かなり重要な位置を占めているのが先ほどからご説明している犯罪被害者基金からの補助金である。この連邦から州に補助金があるが、どういうふうに出されるかというと、各州に対して基礎額がある。これが50州とそこに書いてあるDCだとかプエルトリコみたいなところは50万ドル、そのほかのところは20万ドルと基礎額が与えられ、あとその人口に応じた額が支給されるということである。
 この額だが、約3億5,000万ドル。これも連邦から州に出すときに優先的に配分する部分があって、このプライオリティエアリアズと呼ばれているところで児童虐待、DV、性的暴行、このプログラムに優先的にお金を支給するということで、40%はこちらに使うということである。それから、アンダーサーブドビクティムエリアというのがあって、ここにも優先的に使う。これはかなり州の裁量が働くようで、飲酒運転、暴行・傷害、それから高齢者虐待というようなところである。
 どんなプログラムを出しているかというのはそこにプログラムの数と比率を示してあるが、今ご説明したことが反映されているかと思う。
 では、どんなところがお金をもらっているかというと、これも先ほどから説明しているが、この連邦の支援金というのは民間団体というわけではないので、市の警察部が行ったり、保安官事務所が行ったりする被害者支援プログラムにも出されるわけである。公的機関の数は、全体の28.7%である。その内訳だが、検察ベースが一番多い。半分ぐらい検察ベースで、次が警察というか警察・保安官である。それから、公的機関以外は余り多くないが、病院ベースだとか精神保健関係だとか、これが4%。それから、非営利の民間団体、これが我々のイメージする民間機関だが、これが66%である。この中でその他というのがよくわからないが、いわゆる様々な活動をしている民間団体ということになる。あと、ネイティブ・アメリカン関係もある。
 それから、この補助金は具体的に、今お話ししたことから大体イメージが得られるかと思うが、どんな活動に用いられているかというのが14ページの表である。情報提供だとか、とりたてて珍しいものはない。ほぼ民間機関等が行っている被害者支援を代弁していると、代表しているというふうに考えられる。

●質疑応答

(構成員)アメリカの被害者の権利というのは何を意味するのか。レジュメの2ページに2004年に「全ての者に対する正義法」が成立し、犯罪被害者の権利がさらに明確化されているというふうに書かれているが、この具体的に中身というか内容を教えていただきたい。

(構成員)アメリカの被害者の権利については、州の憲法などに書いてあるのはごく一般的。例えば損害賠償命令を受ける権利だとか、被害者にとって刑事手続が迅速に進むようにされる権利であるとか、そんなようなことが書いてある。連邦の方でも、1982年以来、制定された様々な法律の中で被害者の権利が書かれているが、この2004年の法律では、訴追を受けている者から合理的、適切に守られる権利であるとか、それから訴訟の手続について正確に、そして時宜を得て知らされる権利であるとか、それからこの刑事司法の各段階について情報提供される権利だとか、それぞれの段階で意見を陳述する権利であるとか、ごく一般的に言われているような被害者の権利が書かれている。

(構成員)そこで意味する権利だが、いわゆる法的な権利を意味しているのか、いわゆるあいまいなというか抽象的な権利を意味しているのか、これはどちらなのか。

(構成員)一般的にはコーズオブアクションなるものではないというようなことが書かれいる。そういう意味では訓示的な規定だと一般的には言える。

(構成員)各プログラムに対する被害者支援補助金の使用目的に関して、例えば日本では人件費とか家賃に対しては使用できないような規制とかあるが、アメリカにおいてはどういった範囲の内容について支給されるのか、あるいはその制限等があるのか。

(構成員)プログラムの本体の運営に用いるのが原則で、人件費等は5%以内という原則があったかと思う。

(構成員)犯罪被害者基金の財源と助成方法についてお聞きしたい。財源の方では特別賦課金とかいろいろ工夫をして犯罪者の関係のところからお金を入れているようだが、それはどういうプロセスを経てこういう基金の財源を確保したのか、そういう何かそういう規定をつくっていったプロセスがあるのか。
 また、助成する際に、州で給付している支援活動の何%と決めて助成しているが、そうすると、州単位でそれぞれの支援プログラムを選別して支給を決めているのだと思うが、州のレベルでは一体どういうところがその支援活動の給付の判断をしてどういう基準を持ってしているのか。

(構成員)配分する額は決まっている。州で担当する部局は様々ですが、その連邦からの補助金を担当する部局がある。優先エリアだということも示して募集をかける。その後の判断はいわゆる競争的基金で、いいプログラムに対して支給するというのが原則。競争的な基金ということになっている。

(構成員)損害賠償命令というのはいわゆる刑事裁判の中で陪審員が有罪と認めた場合に裁判官が命令するものか。

(構成員)これは刑罰としての損害賠償命令で有罪となった被告人に対して裁判官が命じる損害賠償命令。これはすべての州にこの制度がある。

(構成員)連邦の被害者通知システム、この具体的な中身がわかれば教えていただきたい。

《ドイツ》

●有識者からの説明

(有識者)レジュメに沿ってお話をさせていただく。今日のお話のポイントとしまして、4つのことをお話しする。第1番目、簡単に被害者支援の発展の経緯ということで見てみたい。
 そして、2番目には、これがここでの重要課題というふうにお聞きしているが、被害者補償の現状ということ。法制度とその運用の現状、これについてお話をさせていただく。
 それから、3番目には、被害者支援のネットワークあるいは支援の民間活動といったことについてお話をさせていただく。さらに被害者支援の方から見て、ドイツは例の訴訟参加の制度とか被害者付添人制度とかさまざまに法的な制度改革が進められている。そういう発展が被害者支援の団体から見てどう受けとめられているのかという視点で少しお話をさせていただく。
 最初のところで、被害者支援の発展をほぼ4つの段階で見ることができるのではないかとは思う。これは先ほどイギリスの方でもアメリカの方でも大体70年代に体制が固まってきたというお話があったが、ドイツでも1976年に国の法律と、それから民間の支援団体の設立、この2つの動きが同時にスタートした。もちろんその前提としては、そこまでに至る目に見えないいろいろな活動があったと思うが、表に出てきたところで見ると、76年の暴力犯罪被害者補償法が制定され、これに基づいて被害者補償が進められていっている。
 そして、同じ年にバイサーリンク「白い環」という、世界的にも有名な支援団体であるが、この活動が始まったということである。ちょうど今年で30年、この「白い環」のホームページを開くと、30年の歴史を振り返るというようなところあり、かなり支援活動等についての現状も公開されている。
 その後第二次的な被害に対して対応を急がなければということも同様にドイツでも問題になってきた。1984年にドイツ法曹大会(ユリステン・ターク)というのがあり、その大会の刑事法における重要課題がその被害者の地位の確立と改善といった問題であった。その刑事裁判の流れの中で、被害者証人が劣悪な地位に置かれているのではないかということでこの問題を核にして、被害者保護法という法律が整備されていったわけである。
 したがって、現在もそうだが、ドイツにおける刑事裁判の中で被害者の保護という点はかなり進められている状況にあると私は評価している。
 そして、さらに90年代に入ると、実体法上、つまり刑法典の中に被害者の最大関心事ともいうべき被害回復の問題、これを刑法の中に導入したらどうだろうということで、1994年の犯罪対策法によって刑法一部改正が行われ、46a条が導入された。
 その主眼は、加害者と被害者とのバランスをとる、アウスグライヒだからこれは平衡にするということで、平均台のはかりをバランスよくするということがアウスグライヘンということになるが、加害者と被害者との和解を進めるというそのことの努力を加害者がすれば、刑の減免措置を行おうというもの。実際これは90年のときに既に少年裁判所法によって少年については法制化されている。そして、それ以前にも法律上の根拠はないが、少年犯罪あるいは成人犯罪のダイバージョンのプログラムとして一部モデル事業等が行われていたところである。これが94年に1つの確立期に至ったというところが第3の発展期なのかなというふうに思う。これによって被害者の損害回復が進められればそれに越したことはないということである。
 そして、4番目には、これは最近の動きということで、やはり2番目のところで被害者の刑事司法上の地位というのは高まったけれども、それでもまだまだ十分ではないということで、被害者弁護人制度、付添人、これをより強化しようということで、2004年の改正において被害者本人だけではなくて、遺族の方が証人として出廷する場合、その遺族に国の費用で付添人、被害者弁護人をつけるという制度を今回実現しようということになったわけである。
 そういうふうに徐々にではあるが、被害者の司法における地位改善ということもドイツでは大きな発展が見られているというふうに言える。
 さて、本日の報告の第1のポイントである被害者補償の領域であるが、レジュメの2-1というところである。これは性格としてはアメリカやイギリス、イギリスとは少し似ているところがあるが、アメリカとは明らかに違う部分があり、社会補償制度の枠の中での実現ということである。そして、その根拠として、国家というものの位置付けが社会国家主義的な理念を持って経済的な支援を弱者について行っていくのは当然の責務である。そして、国の制度が不十分であるがゆえに一定の被害を被ったりするわけで、これは社会的な連帯と国家的な責任という名でもって補償をしていこうという考え方である。
 ただし、これは被害者補償法独自にやるということではなく、社会補償制度の枠組みの中でということである。この準拠法というのが連邦戦争被害者給付法である。戦争被害者と同じように扱うということはどうなのかというご指摘もあるかもしれない。戦争の被害も、他国において被害を受けたということだけではなくて、自国の軍隊が被害を与えたという場合ももちろん含むわけである。そういう戦争被害の被害者に対して一定の給付金を支給するという法律があり、この法律に従って給付基準を決めているということである。
 そして、特色として申し上げると、これらの支給は大部分は年金として支払うという考え方である。戦争被害者、傷病者への経済的補償と同等の補償をするという姿勢で進められている。
 これを扱う部署は、事務管轄は厚生労働省のようなところであり、連邦健康社会保健省というところがずっとやってきた。今年からホームページを見るとこれが分かれ、健康省が厚生省として独立をしている。労働部門を全面に出して連邦労働社会福祉省という名でもってこれを所管しているという現状である。
 そして、具体的には、年金給付局、これは各州に統括窓口になるようなものがたくさんあるが、州によっては例えばザールラントのように小さな人口も余りいないところは1か所しかない、例えばバーデンヴュルテンベルク州になると、これは40か所ほどもこういう統括窓口を引き受けているような部局がある。
 それから、この被害者補償を受けている年金受給者は、これはトータルで、2005年6月、ちょうど1年ほど前の時点で、約1万4,300人という数字があがっている。
 受給資格は、これは補償法の中にきちんと明記されているのが、当然暴力犯罪の被害であり、まずドイツ国域内であるという属地主義の原則がとられている。もちろん航空機・艦船も含まれる。したがって、逆にドイツ人が国域外で、つまり外国で被害を受けた場合には対象から外されるというか、そういう補償の対象にはなっていない。その国固有の補償制度によるべきだということである。
 そして、外国人については、この2-4の次の受給資格者bのところにあるが、EU加盟国、そして相互主義下の国民、これも当然その資格を持っているということである。さらにEU加盟国でなくても、例えば日本人である私がこういう受給申請できるかという質問をすると、あなたが3年以上、確かに法律にはそう書いてあるわけで、3年以上合法的に居住をし続けていれば当然資格を持ちますよという説明もあった。正確に言うと、6か月以上から3年までの間で減額されるが、ドイツ人と同じ資格を有するのは3年以上というような規定になっている。
 そして、暴力的な攻撃という概念についても定義規定はある。この中で注目すべきところは、毒物による犯罪被害もこれに含まれている。必ずしも有形力の行使といったような攻撃ではなくても、毒物による被害というようなことも含まれている。
 給付内容で、(1)の方は、被害者が亡くなられた場合である。残された人に対してどういう給付がなされるかということだが、葬祭料・葬儀料がある。これも支給される。ただし、金額はさほど大きなものではない。その方が生存して一定の年金を受けると被害者補償制度の枠の中での年金を受けるということになったときに受けられるであろう金額を掛けることの3倍の葬祭料が出るという規定になっており、実際これを計算するとせいぜい30万円か40万円ぐらいの金額にしかならない。
 そして、その配偶者については、これは年金となるが、基礎年金として月額372ユーロが規定化されている。子どもについても、一人についてということになるが、ほかの児童手当であるとか社会保障上の社会福祉的な手当との関係があり、調整年金という形になり、片親というか、例えば母子家庭になったといったような場合には184ユーロ、そして両親ともに失ってしまったとか、前々から片方がいなくて今回片方の親が亡くなったといった場合、この場合には256ユーロと規定も整備されている。
 被害者自身については、生存している場合で、一時金として医療費、交通費、リハビリ費用、休業補償、そして生活雑費、介護費等々が支払の対象になる。
 そして、終身年金として一定の金額が月々支払われるということになるが、実際のところ金額はそんなに多くはない。ただ、これはバイサーリンクの方も強調していたように、終身、死ぬまでこの金額は支払われるというところが利点として挙げられよう。寝たきりというかベッドでの生活をせざるを得ない、一切仕事ができないといったような場合には100%ということになるが、この場合には約10万円の給付金が支給されるということである。
 さらに高齢者の場合には一定額が上乗せされる。高齢者の場合には、高齢者福祉的な視点が加味される。最大37ユーロで、これも5,000円ぐらいの金額である。
 統計から見た申請状況であるが、これは警察統計年報から、警察が把握している暴力犯罪の数字を見ると、21万件の暴力事犯が認められる。しかし、実際に申請されているケースというのは2万件ほどで、約10%。ほとんど70年代からこの割合は変わっていない。申請適格などの問題があるのかもしれないが、ほとんど10%ぐらいの申請ということになっている。
 では、2万件申請されて100%申請が認められるのかというと、これもそうではなく、50%ぐらいというような形で申請が認められている。これは年度での話で、2万864件分の8,256件ということではない。しかし、各年度大体似たような数字になっている。
 この申請が認められた8,256件の中で、一時金として支給されるものの方が認められやすいという形になっており、その件数の方が多くなっている。年金として支給されるのが1,725件、被害者本人が1,395件というような状況である。
 お手元にドイツ16州の申請状況あるいは支給状況についてグラフ化したものがあるが、ここで一番申請した人の数が多いところで言うと、このページでは、バーデルヴュルテンベルク州が一番多くなっている。大体2,200ぐらいの数字が申請である。この中で、支給決定がなされているのは846件である。そして、年金支給を受けているのが152件ということである。大体各州どこもこの比率でほとんど実施されているという状況である。
 州の中でノルトライン・ウエストファーレン州(デュッセルドルフとかケルンなど、ライン川の下流域の州であるが)のように、人口が非常に密集しているところでは、当然申請する数字、それから年金支給者も多くなっている。
 もう1つのテーマ、「白い環」の主要な活動ということでお話をさせていただく。「白い環」そのものは、76年9月に発足した。当時、BKAというこれは日本の警察庁と科学警察研究所が合体したような組織であるが、そこの長官であるとか、被害者学の権威でシュナイダー教授、刑事政策の権威でアレキサンダー・ベーム教授、こういう方々が当初組織委員会に名を連ねている。ある意味では連邦や州の肝入りで発足したところがある。
 現会長は3代目に当たるが、バンベルク上級裁判所の長官をされたラインハルト・ベッチャーさんである。現組織委員会には、刑法・刑事政策・少年法のハンス・シェヒ教授、シュヴィント教授などが名を連ねている。
 具体的な活動としては被害者への直接的な支援を進めるというところ、これが一番大きな役割ということになる。そのほか被害防止活動、防犯活動、警察がやはりバックにあるということもあり、防犯キャンペーンの試みをしている。さらに、被害者理解を深めるための広報活動や地域活動、そして募金活動、それからボランティアの方によって支えられているから、このボランティアの方々の研修などもしている。
 そして、もう1つ特色的なのは、法政策集団への働きかけ、ロビー活動とでもいうか、そういうことをかなり熱心にやっている。各州の司法大臣であるとか、連邦の政策責任者等との懇談や働きかけというのが、ホームページを見ると熱心にされている。
 被害者に直接的にかかわる支援の中身であるが、その中で一番大きなのはやはり精神的な支援ということで寄り添い、相談、助言といったような活動である。そのほか、具体的な障害、被害を受けているという場合には医療的な支援、治療、看護、介護といったことも行う。そのほか、重大な問題を抱える場合には医療施設など他機関との協力・協働を進める体制になっている。さらに、警察への付添い、裁判所への付添い・助言といったようなこともしている。その場合、専門的な知見が必要であれば弁護士が付き添うというようなことにもある。そういった弁護士費用等も、「白い環」が出している。そのほか、医療費、生活雑費、法的手続、申請手続等にかかる諸費用、これらもすべて支援をしていくという姿勢である。さらに、被害者家族への癒し的なプログラム、レクリエーションといったようなこともプログラムの中にある。
 こうした活動を「白い環」がどんなふうにやっているのか、ドイツ全域に約400か所被害者支援センターがあり、本部はマインツにあり、ラントにも支部が置かれている。
 この400か所の支援センターにはほとんどがボランティアの方でカバー。本部か、ラントの支部などには常勤の有給のスタッフもいるが、約2,700人のボランティアの支援活動ということになっている。
 私も電話をかけたが、全国どこからでも1分9セントで(9セントというと大体15円ぐらい、一応お金は払わなければいけない)、直接マインツの本部に電話が入ってきて、その後どこの場所かということもわかるので、地域センターへ配信をして、相談あるいは駆けつけるといったようなこともやっている。
 この「白い環」の活動がどんなふうに支えられているかについて、特に金銭的な面で申し上げたい。現在会員数は約6万人。これはだれでも会員になれるが、月額2.5ユーロ、年間に直すと30ユーロになるから4,500円、これを支払う形で支援活動の輪に入るということになる。
 「白い環」の活動費は、2004年度の会計報告書を見ると、約1,000万ユーロほどのお金があるわけだが、半分は寄付金だということである。これはいろいろな財団であるとか、それから有力なところところで言いますと、ドイチェ・バーンという、日本のJRにあたる組織が、毎年大口の支援をしているというような事実もある。
 大体毎年同じ寄付団体があるわけで、この510万ユーロというのは寄付によってまかなわれている。一般の市民の会費収入というのは160万ユーロほどである。
 それから、もう1つ特色的なのは罰金の引当というのがあり、これはただし刑罰としての罰金ではない。行政罰としての過料金のようなもの、交通事犯といったような区裁判所で処理するような事案、これについては行政的な処理として引当られているようである。これについてはきちんとした刑罰制度との連携をするべきだという「白い環」の主張が今でもある。
 支出の方であるが、これもやはり具体的に被害者支援、直接的な支援に500万ユーロ、さきほどの寄付金の部分がそっくり使われているということになる。そのほか事務管理等のお金もかかる。
 この活動実績として、2001年までの25年間のうちに大体14万件の被害者に対して直接的な支援を行っている。その被害者の内訳では36%が性犯罪の被害者である。
 そして、この「白い環」の活動がどんどん広がってきており、1984年にスイスに「白い環」が発足している。ホームページも持っている。ただ、これらのドイツに近い近隣の国の「白い環」は全く独自の「白い環」であり、名前は同じでだが、組織は全く違うというもの。ただ、連携はもちろんしている。そしてまた、ヨーロッパフォーラムとか欧州評議会への働きかけなども積極的に行って広がりをヨーロッパ全域にもたらしてきている。
 最後に、刑事手続での被害者の地位に関連したお話を少しさせていただきたい。86年の被害者保護法によって刑事司法上、とりわけ刑事裁判上の被害者の地位というものはかなり飛躍的に伸長したと思う。その中で特色的なのは、被害者が訴訟に直接参加をするという刑事訴訟法の395条の規定が置かれていることである。犯罪概念が限定されているが、性犯罪、重大な暴力犯罪被害者については直接参加をして、裁判官を忌避する権限も認められている。鑑定人を忌避する権限も認められている。異議申立も認められる。意見陳述ももちろん認められる。さらに、弁護士が付き添うということも明記されている。
 それから、損害賠償等が実効性を持たせるためには、犯人、加害者に罰金刑を科すということもあり、その罰金を科すことのゆえに被害弁償ができないということもあるので、そういった場合には賠償優先ということが条文上明記されている。そういうところに配慮しなければいけない。
 さらに、地位の改善に関しては、証人保護法によっていわゆるビデオリンク方式というものがきちんと成文化され、最近の権利改善法という法律では証人の権利保障規定がきちんと条文の中に盛り込まれるということになっている。遺族にも国選の被害者弁護人をつけるというようなところまで発展をしてきている。
 そして、この「白い環」の視点から申し上げると、30年来言い続けていることは、国費による被害者支援を進めるべきだということである。被害者補償制度というのは当然国費でやっているわけだが、これはまだまだ不十分である。看護、介助、付添いも国費でやるというところまで、一部できているところもあるが、まだ十分ではない。それを支援団体「白い環」が支えているということであるが、国がきちんとそれをやはりやるべきだと。
 そして、最近のテーマで、被害者のプライバシーあるいは被害者から得ているデータ、これはビデオリンクで証言内容等も録画されるわけだが、これの利用の仕方であるとかそういうことについてもやはりデータ保護との関係で「白い環」がかなり慎重な対応をすべきだという主張をし続けている。
 そして、基本的には司法手続においては被告人と同じ権利保障をきちんとすべきだと、法律の中にも書き込むべきだと。そして、被害者個人に対しては、「あなたはひとりではない」というメッセージを常に直接的に出しているという動き方をしている。
 その背景には、4-4、被害者保護の根本理念と書いておいたが、やはり基本法第1条の最初に出てくる文言で、「人間の尊厳は不可侵である。なんびとも侵すことはできない」というところから出発している。そして、これはペーター・リースの言葉を借りれば、「国家は被告人と同様に、被害者の人間性を重んじるように法の整備を進めなければならない」ということで例の86年法が整備されたわけである。
 しかし、ペーター・リースはそのときにもう1つ課題を出しており、そのことで加害者の人権というか、権利が後退してしまっては元も子もない。だから、それは謙抑主義という視点もやはり近代刑法の遺産であるので、これも尊重し続ける。したがって、刑法典の中ではこの「処罰から和解へ」といったメッセージを出していくことも1つのテーマになるのではないかというふうに展開されていくわけである。それが冒頭でお話ししたTOA、加害者と被害者との関係調整をしていくという法制度の整備につながっていくわけである。
 このTOAの実施状況を最後にちょっとだけ説明しておく。大体毎年5,000件ぐらいの処理が行われている。加害者、被害者との関係調整で進められてきている。発足当時は1,652件という数字があるので、現在増加してきているということになる。司法前処理としてのTOAが圧倒的に多く運用されている。つまり、警察段階で、それから検察の起訴猶予的な裁量でもってTOAが進められるということである。
 罪名では傷害事件が一番多い。財産犯は比較的少ない数字になっている。対象となる加害者の年齢はやはり若年層と、ドイツでは18歳未満が未成年で、18歳未満及び若年成人、若年者で大体半分を占めている。
 注目すべきところは、このTOAでどんな結果が出てきているかということであるが、謝罪が中心である。謝罪にプラス賠償をする、損害賠償をするあるいは慰謝料を払うといったような措置がつくのは25%ということである。しかもその損害賠償額は極めて低い金額に集中している。200ユーロ以下であるので、3万円以下である。これは未成年者などが大半であるので、そういう金額で謝意を示す、謝罪の意図を示すということになるのであろう。慰謝料も別途支払われているようであるが、4,001ユーロ以上というのは非常に少ない数字である。
 しかも、この処理にかかる時間が大体平均すると20週、21週ということであるから、事件発生から半年ぐらい時間がかかって、こういう形での処理になっている。
 したがって、そういう現状を踏まえて、「白い環」は正直申し上げてこのTOAに余り期待をかけていない。やはり被害者にとって損害回復、被害回復が何よりも重要である。被害者よりも加害者の社会復帰を強調しすぎるようなTOAの制度は余り評価をしていない。TOAは本当の意味で被害者の損害回復に役立っているのだろうかというような指摘もある。

●質疑応答

(構成員)「白い環」の活動を以前に見たことがある。常勤のスタッフが全国で数十人で、それがほとんどマインツの本部に集中し、地域ではボランティアの方が補償金などの交付の説明とかそういうものを中心にしていると聞いたが、そういう活動とか職員の構成がかなり変わってきたか。
 また、「白い環」以外の支援活動というのをご存じであったら教えていただきたい。

(有識者)職員構成に関してはほとんど変わっていない。大部分が無給のボランティアで8割方が女性である。その中で大体2割ぐらいの方が常勤であると聞いている。
 それから、「白い環」以外に専門的な支援団体があるのかということあるが、この「白い環」が専門家を抱え込むというか、いろいろな病院であるとか、性犯罪被害者への心理的なサポートをするといったようなことも含めて、そういう方々のリストを「白い環」が全部持っている。そういうところと連携している。この「白い環」が全ドイツを広範にカバーする唯一の機関と言っていいほど大きな組織になっているということである。

(構成員)ドイツで1986年に被害者保護法ができ、さらに2004年に被害者の権利改善法ができた。かなり被害者の権利というのは明確化されていると思うが、ドイツで権利と言った場合にどういう理解というか、一般的にどういうふうに理解されているのか。
 英米の動きというのはどういう印象を持たれたのか。

(有識者)ドイツの場合は、何かあればマインツに行けば大体資料が収集できるという状況にある。それに比べると、アメリカなどは州独自がいろいろな活動をしているので、州の中でまさにいろいろな地域のボランティア団体の活動がある。イギリスでも類似のところがあると思う。その意味で、ネットワーク化という点では、ドイツは優れているというふうに判断している。
 それから、権利に関してだが、特に被害者の権利に関して定義規定を置くとかどこかの法典をつくって、被害者基本法をつくるといったようなことはドイツはやっていない。あくまでも刑事訴訟法典の中で具体的な個々の尋問権であるとか異議申立権であるとか、これははっきりとこういう権限があるというふうに明記されているから、まさしく権利ということでよろしいかと思う。

(構成員)日本の被害者でどうしても年金が必要だという被害者の方々が大勢いるので、ドイツでは年金方式で補償がなされているということで調べたこともある。私たちの方で調査したときには、犯罪被害者の補償の年金については、その被害に遭う前に得ていた所得と被害後、労働能力が喪失して所得がなくなったその喪失した所得の差の42.5%をまず計算して、それを補償すると。
 それで、まず基礎年金で先生がご指摘していただいている基礎年金でそれを補償して、それに足りない部分は所得調整年金という形でさらに上乗せして補償するという2段階で終生補償されるということだったが、その辺はどうなるか。

(有識者)45%という数字、私は具体的には何を根拠に出てきているかがよくわからない。おそらく算定方法というのが個別にあるのだろうと思う。それを前提にして連邦給付法の31条に明記された基準ができていると思う。これはあくまでも基礎年金に関するところである。もちろんこれで十分な生活ができないという場合には、ちょうど日本で言う生活保護的な形の支給、社会保障の枠の中であるからこれで十分な社会保障が達成できない、生存権保障ができないということになると、当然上乗せ額といったようなことも別のシステムで考えていく。ただ、これはあくまでも犯罪被害を受けたということを前提にして計算される基礎年金であるということでご了解いただければと思う。

(構成員)ドイツも個人情報保護は非常に厳格な国だと承知している。警察と「白い環」のような団体との被害者の情報に関する受け渡しについてはどんなシステムとかどんな法的な根拠を持って運用しているのか。

(有識者)公的な機関との連携も非常にパイプは太いということはある。ただ、個別の事案に関して具体的に警察から「白い環」のセンターの方に話が来るかというと、そういうシステムにはなっていない。あくまでも被害者本人が先ほど申し上げた電話番号のところにまずはコンタクトをとっていくようなシステムになっている。もちろんEメールで悩み相談のような形でアクセスしてくるという場合もあるかと思う。

《フランス》

●有識者からの説明

(有識者)レジュメに従ってお話しする。3つ柱がある。1つは、行為者からの迅速な賠償ということで、フランスには伝統的に附帯私訴という制度がある。そこに1970年代後半からというふうに書いてあるが、これはその附帯私訴というのは伝統的にはあったのだが、政策として一貫性のある施策が用いられるようになったのは1970年代後半からという意味である。
 それから、特徴のある国家補償制度がある。それから、全土にアソシアシオンというふうに言っているが、民間団体というか、もしかすると公益法人というふうに言った方がいいのかもしれないが、団体が全土にある。それを束ねる機関がINAVEMである。 その3つがおそらくフランスの被害者支援の特徴であろうと考える。
 もう1点申し上げておかなければならないのは、後ほど附帯私訴のところで申し上げるが、フランスの刑事手続というのは日本のそれとは違って、いわゆる職権主義という考え方がとられている。これは一言で言うと刑事手続、刑事裁判というのは裁判所による真実発見の手続であるというふうに考える。英米、それをモデルにした日本の現在の刑事裁判では、国と被告人の間の主張、立証、攻撃防御を想定するという当事者主義と言われる刑事裁判のあり方とは、随分異なった手続を用いている。
 その刑事手続に附帯私訴ということで犯罪の被害者が参加することができる。これは刑事裁判と同時の損害賠償請求をすることができる制度である。
 先ほどからご質問が出ているのを1点補足すると、権利の形式であるが、フランスには抽象的に被害者の権利をうたった基本法といった法律はない。憲法レベルでも法律のレベルでもない。被害者の権利はもっぱら個別具体的な施策を定めた個別の立法及びそれが組み入れられた主に刑事訴訟法に定められている。したがって、それに組み入れられているものについては法的な拘束力があるということである。
 それでは、経済的支援の部分に入る。今日の焦点が附帯私訴ではないだろうと思ったので、ごく簡単にしか書いていない。先ほど申したように、これは犯罪の被害者が当事者として訴訟に参加する制度であるが、これはあくまでも刑事裁判所で損害賠償請求訴訟を同時にするものである。直接的には犯罪被害者に刑事訴訟への参加権を保証したものではないという建前をとっている。しかし、実際には犯罪被害者が私訴原告、附帯私訴原告として当事者となることで一件書類の閲覧権や裁判所を通じた証人尋問権、証拠調べの請求権あるいは上訴権もあるが、得られることを通じて、犯罪の実態解明への事実上の参加権を得ることができるのだという機能が重視されているように思う。
 先ほど申したように、このような制度が許されるというのは概念的にはいわゆる職権主義という裁判であり、これは裁判所の責任による真実解明が目的であるので、当事者の中に被害者が参加していても、裁判所の知恵と責任で真実が明らかになる。同時に、民事の手続も終ってしまえばこんなにいいことはないというふうに説明されるわけである。この点が日本、それから英米の刑事手続の構造と違う点であろうと思う。
 被害者にとっては極めて容易に、極めてと言うか、民事裁判を別に起こすのと比べて容易に損害賠償請求訴訟ができる。同時に手続参加ができるというメリットがある。
 ただし、本来の目的としておる損害賠償、損害補てん手段としての実効性が高いかというと、これはさほど高いわけではない。そこで、国家補償制度が充実しなければいけないということである。
 フランスでは1977年に初めて身体犯の国家補償制度ができた。このときの対象は身体犯だけであり、財源は国庫の一般財源から出していた。その後、犯罪の対象を財産犯、それから性犯罪に拡大して、それが1980年代のことで、拡大をしてきた。フランスでは1980年代の初めにテロが頻発したということがあり、その事態を受けて一般犯罪の補償制度とは別にテロ被害者への国家補償制度というのを創設した。これが1986年のことである。
 この2本立てで被害補償をしてきたが、1990年になり、テロ及び犯罪被害補償基金というこの基金に制度を統一したという経緯がある。一般犯罪についてはまず国庫から補償をしていたが、テロのように、迅速に何とかより十分な補償をしなければいけないというので何か方策はないかと考えだされたのが補償基金というものであり、これが現在では一般犯罪にも補償をしているということである。
 その理念だが、国民の「連帯」の印としての国家補償制度であるというふうに説明されている。この理念と、それから財源、受給資格というのはリンクしていなければいけないはずだが、余りリンクはフランスの制度については明らかではない。
 レジュメの一番後にグラフをつけておいたが、その上の折れ線グラフと青い線のグラフ、これが2005年の補償の実績を示したグラフであり、青い棒線が請求件数である。こう見ると1万7,000件くらいの請求があったということになる。2005年の数字である。折れ線グラフが支給額であり、この単位は100万ユーロで、2005年の数字を見ますと約2億4,000万ユーロくらいが総額で支払われているということになる。
 平均すると、これはただ割っただけだが、1万4,000ユーロくらい、145円で計算して、200万円くらいになるのではないかと思う。そういう支給の実績になる。
 それから、そのグラフの下のグラフだが、これは基金が支払った場合に犯罪者に対して求償権を行使することができるようになる。その場合に、犯罪者が弁済をしたのがそのグラフであり、2005年だと4,180万ユーロくらいになる。
 この財源だが、これは先ほど申したテロ及び犯罪被害補償基金というのが管理をしており、財源は損害保険に課す目的税である。1契約当たり、2005年には3.3ユーロ、恐らく480円か500円かくらいだと思うが、1契約当たりに課されて、これを保険会社を通じて基金がプールをするという仕組みになっている。それにプラス先ほど申しました行為者からの弁済と併せて財源としているというわけである。これがおそらくフランスの制度の特徴だろうと思う。
 一体何でこの財源なのかということだが、これはよくわからない。テロの被害、できるだけ迅速に十分に補償する必要があるということでつくられた制度、1986年につくられた制度に現在は一般犯罪の被害についての補償ものっかっているということで、一番効率よく広く浅くとることのできる制度なのだろうと思われる。
 受給資格であるが、一般犯罪については、まずフランス国籍を有する者で、これには国外で犯罪の被害に遭った者も含むことにされている。
 それから、それ以外の国籍の者については、国内犯、フランスの領土内の犯罪であって、かつEU加盟国の国籍保有者であるか、または適法に滞在している者とされる。この滞在というのがどの程度の滞在を言うのかについて把握していない。
 それから、過失相殺はあり、その場合は減額の対象になる。それから、社会保険であるとか生命保険などの受給があった場合にはその額を減額するないしは勘案するという制度である。したがって、この補償制度は補充的な性格のものである。
 対象犯罪であるが、これはまず過失を含む。2種類あり、補償限度額が設けられていない対象犯罪と、限度額が設けられている対象犯罪とがある。補償の限度額が設けられていないのは被害者が死亡した場合、または1か月以上働くことができなくなったような障害を受けた場合。それから、性犯罪と、この2つについては補償の限度額が設けられていない。
 限度額があるのは、それよりも短い期間の就労不能になったような障害、それから窃盗、詐欺など一定(確か7種類に限定されていたと思う)の財産犯である。これには厳しい制限がついており、被害者の月収が2006年の数字で1,288ユーロ以下、ただし扶養者の数に応じてこの1,288ユーロに、例えば90ユーロとか80ユーロとかというのが加算されて月収がそれ以下という条件がついている。
 行為者が不明であって資力がないこと。他の損害補てん手段がないこと。経済的困窮状態にあること。という条件がついており、補償の限度額は2006年に3,864ユーロということになっている。
 支給内容とか範囲ということであるが、どのような具体的なケースでどのような補償がされるのかということであるが、これはどうも個別判断で種々ばらばらである。ケースバイケースであり、全国で統一されているわけではなく、地域差も大きくある。パリは高い、よそへ行くと低いというようなことがある。何でそれでいいのだということを一度私は聞いたことがあるが、自分たちの裁量だからいいんだという答えであった。何度聞いてもそういう答えしか返ってこない。全国統一して同じ基準でやらなきゃいけないというふうには考えていないようである。
 ただ、そういうふうにやってきたので、あるケースでは補償され、あるケースでは補償されないということが不満として出てきて、2005年にこの基準を制定するための委員会を設置したという情報があった。これはその後どうなったかは把握していない。
 ただ、枠として決まっているのは、被害者本人については、例えば経済的な損害、精神的被害、逸失利益等々が当然ある。
 それから、相続人については、これは破棄院の判断で被害者本人の請求権を相続するわけではないというふうに言われている。相続人については被害者の死亡による相続人自身の損害を補償するんだということで、例えば葬儀費用であるとか病院の行き帰りの交通費であるとか宿泊費であるとか精神的被害である。当然これには収入が減った場合の収入も入ってくることになるわけである。しかし、それは補償委員会の判断に委ねられているということである。
 手続は、基金がするわけではなく、全国の、CIVIと書いてあるが、これは大審裁判所、日本で言うと地方裁判所を大体イメージしていただけるとよろしいと思うが、そこに補償委員会というのが設けられている。構成主体は裁判官。そこに宛てて被害者が請求をする。損害を示す資料を提出する。それがそのまま補償基金の方に送付され、補償基金がそれを見て補償額をまず被害者に提示するということになっていて、被害者がその額で満足してそれを承認すれば形式的に補償委員会の委員長がそれを承認して、補償基金から支払われるという仕組みになっている。もし提出された資料を基金が見て支払う必要がないと考える、あるいはもっと低い額でいいはずだと考えるとか、あるいは基金が提案した額が被害者には納得できないといった場合には、今度は補償委員会が審査を行う。裁判官が審査をすることになる。これは裁判手続と同じような手続になる。裁定と書いてあるが、裁判と言ってもいいかもしれない。当事者の言い分を聞いて資料の提出を受けて額を決める。それにさらに不服がある場合は上訴ができる。したがって、そのような意味で被害者に権利があるというふうに言ってもよい。
 それから、支援のための連携ということであるが、1999年に閣僚というか政府のレベルで被害者政策協議会というものができた。法務大臣が主宰して、関係省庁から代表者が来る。それから、後に述べるINAVEMから代表者が来る。研究者などを含めて政策全般について評価、立案するという機関ができた。
 つい最近、実態は正確には把握してないが、日本でも法テラスというのができたけれども、それに似た、要するに身近な法律相談を受ける窓口というのを全国に配置しており、その役割の1つがやはり犯罪被害者の受け入れということである。それから、警察署に犯罪被害者の受け入れ窓口を設けるための話し合いが進んでいるというふうに聞いている。
 それから、民間団体への援助。これは主にINAVEMという機関が担当するわけで、INAVEMというのは全国の支援組織の連絡調整、代表、それから教育機関として、1986年から活動している被害者支援連盟のような組織である。
 役割としては、政府との連絡、連携を進める。支援団体職員の教育である。この教育の中には例えば被害者との接し方であるとか、悲しみのコントロールとか、刑事訴訟法の知識などを習得するための短期集中講座のようなものを随時開催するということである。いろいろな大会やコンフェランス等の開催もする。電話相談も受け付けている。2004年に1万9,000件の電話があった。
 それから、被害者、加害者仲裁のための活動も、INAVEM自身がするわけではなく、その加盟している支援組織が仲裁をする場合にはそれの行為規範というか基準づくりということをする。警察とか判・検事の養成校などに出向いて被害者に係る教育、授業担当といったこともしているようである。
 最近、例えば電車の事故とかあるいはモンブランのトンネルで事故があったような大きな事故、それによる被害者がたくさん出るわけだが、それについても支援をするという活動をしているようである。
 このINAVEMというのに全国の支援組織が加盟するということになっており、全土に150加盟機関がある。このほかにも幾つか加盟していない支援機関というのはあるようだが、INAVEMが組織しているのは150だそうである。
 もともと1986年にINAVEMというのは発足しているが、そのときに既に全国にあった50余りの支援機関、これを統括するというか連絡調整する機関としてINAVEMというのが発足した。現在では全土に約650の受け入れ、事務所と書いてあるが、窓口がある。2004年には全体で19万3,000人の犯罪被害者を受け入れている。この窓口に来る人々の中には厳密に言うと、犯罪被害者だというわけではない人々も相談に来るようである。
 それから、予算であるが、このINAVEMという組織本体の予算、2005年の報告書を見ると、予算は185万9,000ユーロ、ほぼ半額が法務省からの補助金、そのほかは寄付であるとかそれ以外の省庁からの補助金などである。それから、短期集中講座などやると、その参加費などが収入としては計上されることになる。支出が194万8,000ユーロである。この中には人件費などが入っている。
 被害者支援活動全体については、2004年に1760万ユーロが支出されたということである。これは政府それから地方自治体が分担をしているということである。
 INAVEMに加入する被害者支援組織、全土で約1,500人、常勤・非常勤含めて勤務しているということである。どのような人々がそこで働いているのかということだが、人材募集広告を見ると、弁護士、それから心理学者と書いてあるのは厳密に心理学者ではないかもしれない。要するに心理学のトレーニングを受けた人という程度に理解しておいた方がいいかもしれない。それから、事務の担当者。それから、事務所長としてリクルートをするということもある。それ自体が1つの事務所というか組織というか、としてその支援組織の運営を専門にする人、つまり被害者支援の専門家ではない人たちもその事務所を構成しているということである。
 それから、例えば2004年にはその全土の被害者支援組織で受け入れた被害者の罪種であるが、身体犯が約60%、財産犯が約25%、日本で言うところの交通関係業過、交通事故の被害者が11%だそうである。身体犯が60%、財産犯が25%、交通事故が11%というような内訳になっているようだ。
 具体的な支援活動としては、情報を提供すると、それから裁判所であるとか警察あるいは病院を紹介して、そこに同道するという活動がほぼ8割を占めるということだそうである。
 それから、心理学的なカウンセリングが10%ちょっと。それから、緊急に必要になる金銭的な支援というのはごくごくわずかであり、0.2%程度だという資料がある。というのを各支援窓口で行っているということである。
 すぐにインターネットで見つかった窓口を1つ取り上げると、オルレアンである。そこでは支援組織を構成するのは、代表者を出している機関はということだが、このアソシアシオンというのを構成するのが市役所からの代表者、県議会議員、裁判所からの代表者、弁護士、社会保険事務所、それから警察、女性保護団体などなどから代表者が出てアソシアシオンというのを構成して、その監督の下に具体的な受け入れ窓口があり、これはオルレアンのそこでは4、5人のようだが、その構成は弁護士、それから心理学の専門家のほかに事務職員、事務職員としては自治体から派遣されている職員というのも含まれるようである、というような人々で実際の現場の窓口は構成されているということのようである。

●質疑応答

(構成員)テロ及び犯罪被害補償基金のことに関連するが、国家補償であるとか政府がお金を出すとかあるいは主に法務省が出すというのと、この犯罪被害補償基金というのはどういう関係にあるか、国が出すものはすべてこれから出るということなのか、それともこの基金とは別に政府がお金を出す部分があるのか。

(有識者)経済的な補償については補償基金が支払うということでその財源が目的税であるということである。それ以外の支援機関の活動やそれに係る人件費などは政府や自治体が支出するということである。

(構成員)補償限度額なしの例で、一番高額の金額でどれくらいが補償されているのか。

(有識者)結論から申し上げるとわからない。この補償委員会、一度私訪ねたことがあり、やはり同じ質問をしたが、ケースがいろいろで答えられないということだった。

(構成員)附帯私訴のことで、損害補てん手段としての実効性は高くないということから余り意味がないというふうに評価されているのか、制度としては続ける意味があると考えてよいのか。

(有識者)意味があると考えているようだ。というのは、この訴え提起の方法が年々簡易になっているからである。それから、実際損害賠償を言い渡されても資力がなければ払えないという意味で実行性がないということだが、民事の訴訟を別にやらなくてもいいわけで、そういう意味では被害者にとっては手間がかからないという意味のメリットはある。それから、ほぼ重大な犯罪については必ず私訴原告というのがおり、それに弁護士がついて法廷の中にいる。弁論の権利がある。これが非常に重要なようである。そういう意味では参加権というのを重視している、そういう機能も同時に果たしているという点が重視されているように見える。ただ、もちろんこれについては乱訴の危険があるとかいう批判はかつてからあったが、しかし、体制としてというか政策として附帯私訴制度を意味のないものだというふうに評価しているということは決して言えないと思う。

(構成員)基金についての質問。受給資格が国内外ということで、国外の被害者も対象にされている点について、多くの国では国外での犯罪被害は対象外だが、この基本理念からすれば一応理解できる。国外での犯罪被害者を対象にしている特段の理由があれば教えてほしい。

(有識者)フランス国籍の者が国外で被害に遭った場合、これはフランス人だからというので連帯だという、どうもそういうことらしい。もちろん77年に国家補償制度をつくる、それから86年にテロのための補償制度をつくるときに、当然その理念をどうするかという議論はあったらしい。国がやはり犯罪の起こるのを防止しなければいけない責任を負っているのにそれに反したから国が補償しなければいけないという責任を負うのかとか、あるいは社会保障制度、公的扶助ないしは社会保険的なものを考えるのかということの議論はあったようだが、1件1件起こる犯罪についてそれをすべて防止する義務が国にあるということはとても言えないというので、国家賠償的な発想は捨てられた。ただ、あとはできるだけ十分に賠償できるための手段は何かということを考えた結果だろうと思う。
 そのときに連帯という言葉で、何でも入る革袋のようなものであるが、十分にそこのところは詰めきれていないのではないかと思う。しかし、同じフランス人なんだから国外で被害に遭った場合はという発想だろうと思う。

(構成員)INAVEMというフランスの一番大きな支援の予算であるが、ほぼ半額は法務省からの補助金で、その他は他の公的機関等からの補助金ということだったが。ここに働かれている方というのは基本的にはボランティアの方が多いのか、職員の方が多いのか。
 それともう1つは、このINAVEMにひもついている150の加盟支援機関というところの運営の資金もこのINAVEMというところが国からいただいた補助金を配布しているのか、この150の加盟の支援機関は独立でそういった資金を持っているのか。

(有識者)1999年4月の話であるが、全体で457人の専任職員がいて、805人のボランティアがいたらしい。ボランティアの方が多い。ただ、一番最近の資料では専任の職員の方が多かったような記憶がある。
 予算であるが、各地の支援団体にはこのINAVEMから補助金がまず行く。それから、それぞれの自治体でさらに補助金。寄付などもあるようである。

(構成員)死亡、重障害については補償限度額を設けていなくて、それから過失相殺ありということで、イギリスの旧給付制度とちょっと似ているところがあるかなと思ったが、一定のタリフスキームのようなもの、あるいは日本で言う障害等級のようなものの考えは導入されていないのか。また調査から裁定までの時間の長期化や不服申し立ての増大など運用上の 非効率は問題となっていないか。

(有識者)個別の補償委員会で、例えば極めて軽度、軽度、軽中度、中度というようなタリフスキームはやはり設けているようである。それに従って判断をしているようである。ただ、統一的なのを用いているのかどうかということは把握していない。
 上訴ができるで、それを争うと時間がかかるといことはあるだろうが、私がかつてこの補償委員会に行って話を聞いたときには、それで時間がかかってしかたないとは言っていなかったが、そういうなこともあるのかもしれない。

○各有識者からの説明・質疑応答が行われた後、全体を通して、質疑応答が行われた。概略以下のとおり。

(構成員)アメリカの支給対象に、外国でテロリズムによる被害者となった州民にもそれぞれの州のものが適用されるというふうにお聞きした。この外国でというのが例えばフランスとかドイツ、イギリスでも、テロで巻き込まれたアメリカ人がそこの国で補償されて、またアメリカの州でも補償されるのかどうか。

(構成員)州民、基本的にはアメリカの被害者補償制度は州の制度なので、自分の州の州民が国外でテロリズムの被害に遭ったときにはその州の被害者補償の項目に従って必要な補償がなされる。外国人に対する補償がある国との関係ですが、推測だけれども、その国外、例えばイギリスならイギリスでそこで支給になれば、当然州の方ではその額は減額の対象になるのがほかの原則から考えれば出てくることだと思う。

(構成員)イギリスは国外で受けたものについては適用対象外で、EU諸国で受けた場合はEU諸国の中の被害者補償を受ける場合には申請手続については補助をするということだけで、あくまでもイギリス国内ということに限定されている。だから、イギリス人が外国でテロリズムに遭っても、EU諸国で受けられる場合以外は補償にならない。もし受けられればこちらでは補償しないだろうと思うが、イギリスの補償制度の対象にはならないということだと思う。

(有識者)ドイツもイギリスと同じように国外での被害については補償しないと、ドイツ人についてはである。

(有識者)フランスも二重の補償はないと思う。

(構成員)日本人がイギリスで被害に遭ったら補償されるのか。

(構成員)外国人はイギリスの制度の中の適用除外要件にはなっていない。先ほど3年以上滞在しているとかそういう条件がドイツの場合は必要だということだったが、そういう条件は全くない。ただ、それは条文には書いてないことなので、実際どの程度具体的にいるのか、それから現実にそういう旅行者が被害に遭った場合に補償制度が適用されているのかという点については定かではない。

(構成員)アメリカとイギリスなんかで補償支払いの要件がぶつかった場合、アメリカ人がイギリスで例えばテロの被害を受けた場合、どちらも支払わなければいけないという場合、多分二重には支払われないと思うのだが、どちらの国の補償制度を優先するのか。

(有識者)例えばEUの中で、ドイツ人がオランダで被害に遭ったという場合、当然病院に担ぎ込まれたりするわけで、当然オランダ側のシステムで一定の一時的な支払を受けたりするようなことがあろうかと思う。それを完全に治癒してドイツに帰って来て改めて補償請求というようなことになるわけであるが、それは当然いわゆる先ほど申し上げたような社会保障の枠の中で支払える限度額というものがあるから、その限りではそれは受けられるということになる。

(構成員)医療費について、お伺いしたい。いずれの国でも補償として医療の補償というのがあると思うが、保険制度がそれぞれ違うから、例えば日本だと医療保険を普通に適用すると3割の自己負担とか高度医療に関する限度額とかそういうものか適用になって一定の負担がある。例えばアメリカのように皆保険ではないところでの負担というのが何割というのはわからないが、要するに保険と重ならないで出す場合、あるいは医療費を補償する場合に、大体どのくらいが補償されるかということがわかるのか。例えば100%補償するのか、限度があってするのか。

(構成員)イギリスは医療については基本的に国民健康保険で全部無料、ナショナルヘルスサービスで無料になっている。ただ、どうしても特別な医療が必要だと、高度の医療的な措置が必要だというような場合については、それは補償の対象になっている。基本的に一般的な医療についてはもうすべて無料というのが、これは別に犯罪被害者だからということではなくて、国民一般の医療制度だということである。

(構成員)アメリカの場合にはもう基本的には、公的な医療保険はなくて、メディケアという高齢者に対する保険制度だとかメディケートという低所得者向けのものがあるように聞いているが、基本的にはそちらはでない。それで、全く健康保険制度の適用を受けない者が大体アメリカでは15、6%いるというようなことを言われていて、その人たちにとっては被害者補償が最初に、そこからしか補償を受けられないということになるということである。

(有識者)ドイツは、イギリスみたいにしっかりしたものではない。医療保険制度はもちろんある。ただ、医療保険がどんなふうに支払われているのかということを了解してないので、被害を受けた人が国からあるいは社会的なシステムの中で医療的なサービスを受ける限度がどの程度なのかということについては了解していない。ただ、足りない部分については「白い環」の方から当面お金は出してもらえるというふうに伺っている。

(有識者)フランスは、少なくとも限度額のない補償を受けられる種類の犯罪については自己負担分が補償されるということだろうと思う。

(構成員)イギリス、アメリカ、ドイツについて少しお伺いしたい。フランスには日本司法支援センターのような組織があるということをお伺いしたが、そのほかの3つの国についてはそのような組織があるのかないのか、もしあるとすればその中で被害者支援に対してどのような役割を果たしているのか。

(構成員)イギリスでは、日本の法テラスのような形のところはまだないと思う。イギリスの場合は、刑事司法機関それぞれが情報提供するという形、あるいはビクティムサポートがするという形になっているが、ただシームレスになっていないわけである。継目があるわけである。そこで継目のないものが必要だということでそういう情報提供も含めてする被害者支援組織が、今度労働党のマニフェストの中でうたわれて、これは今後の課題だと思う。

(構成員)弁護士との関わりだが、アメリカで被害者支援の活動をしている弁護士団体があるが、具体的にどういう活動をしているのかというとわからない。
 それから、もう1つは、この被害者補償の申請等に対して具体的に被害者を支援している弁護士の活動というものはあることはある。

(有識者)ドイツは国の法律でもってきちんと法律家が支援しなければいけないというようなシステムに変わってきているから、「白い環」が弁護士を紹介する、具体的にそういうリストが個々の被害者支援センターにはあるということである。そのほかにいくつかの団体の中で扶助協会的なものもつくってやっていると聞いている。ただ、大体は「白い環」が把握したものについては「白い環」の弁護士が、「白い環」所属というわけではもちろんないが、そちらを通して無償で弁護士さんが活動する。そして、そのうちのいくらかについては国が費用を出すというような仕組みになっている。

○海外調査について

 事務局より概略以下のとおり説明がなされ、構成員からは特に意見はなく、了承された。

(事務局)海外調査を本日ご説明いただいた4か国を対象に、9月ごろに行いたいと考えている。アメリカに有識者の構成員の方1名と事務局1名の2名程度。それから、イギリス、ドイツ、フランスに同じく有識者の構成員の方2名と事務局職員1名で派遣する方向で現在事務局において会計面の調整と、それから人選を進めているところ。
 具体的な調査事項、訪問先等については、本日の質問等を踏まえ、またそれぞれの検討会の次回会合にて構成員からご意見を賜って、調整をして決定していきたい。

○その他

 次回の検討会開催予定
 ・経済的支援に関する検討会(第5回)7月26日
 ・支援のための連携に関する検討会(第4回)7月24日
 ・民間団体への援助に対する検討会(第4回)7月13日

(以上)


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