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犯罪被害者等施策
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経済的支援に関する検討会(第11回)議事要旨


(開催要領)

日時:平成19年1月19日(金)15:00~17:30
場所:合同庁舎4号館共用第4特別会議室
出席者:
座長國松 孝次(財)犯罪被害救済基金常務理事
座長代理瀬川 晃同志社大学法学部教授
構成員飛鳥井 望(財)東京都医学研究機構東京都精神医学総合研究所参事研究員
大久保 恵美子(社)被害者支援都民センター理事兼事務局長
白井 孝一弁護士
高橋 シズヱ地下鉄サリン事件被害者の会代表世話人
平井 紀夫元オムロン(株)特別顧問
荒木 二郎内閣府犯罪被害者等施策推進室長
巽 高英警察庁長官官房総括審議官
三浦 守法務省大臣官房審議官
代理出席振角 秀行金融庁総務企画局参事官
中野 雅之厚生労働省政策評価審議官
安井 正也経済産業省商務情報政策局消費経済政策課長

(議事次第)


1.開会

2.第13回検討会の日程調整

3.経済的支援制度のあるべき姿についての検討(6)

4.その他

5.閉会


(配布資料)

資料1論点対応叩き台資料  [PDF形式:29KB]
資料2國松構成員資料  [PDF形式:114KB]
資料3白井構成員資料  [PDF形式:71KB]
資料4内閣府資料  [PDF形式:19KB]



飛鳥井構成員資料  [PDF形式:32KB]


(議事内容)

○経済的支援制度のあるべき姿の検討について
概略以下のとおり議論が行われた。
(事務局)まず、資料の1であるが、これは前回の検討会でも配付した論点対応の叩き台である。
 資料の2については、事前に配付をしているが、シミュレーションということで、構成員より提出された資料である。これは構成員の叩き台に沿って、事務局においてシミュレーションしたものである。
 若干ご説明を申し上げる。資料2をお開きいただきたい。
 まず、試算の前提であるが、まだまだ議論が詰まっていないので、試算の前提としては一応17年度の犯罪被害者等給付金の実績、被害者数等をもとにして試算をするということで考えた。
 それから、現在の犯罪被害者給付制度以外に具体的に参考とするものはないので、これを前提として給付額を引き上げるということで試算をさせていただいた。遺族と障害と重傷病給付という3つに分けてシミュレーションしている。
 まず、遺族給付金についてであるが、17年度に遺族給付金の支給を受けたのは209人、そのうち扶養関係があると認められたのが60人ということであった。全体の額が約9億5,000万円で、1人平均が454万円という実績がある。今、最高限度額が1,573万円であるが、これを約3,000万円に上げるということにした。しかしながら全員が1,500万円もらっているわけではないので、平均額454万円ということであるから、大体3分の1ぐらいとして、1,000万円が扶養関係にある60人について給付されるということを仮定をいした。1,000万円掛ける60人ということで、約6億円ほど必要ではないかということである。
 それから、それ以外の扶養関係のない遺族149人については、この平均額がそのまま給付されるということにして、454万円掛ける149人で、約6億8,000万円ほどとなった。合わせて12億8,000万円近くになる。17年度に支給裁定されたのが9億5,000万円であるから、これを引くと約3億3,000万円近くの追加の財源が必要となるというシミュレーションである。
 それから、1枚めくっていただいて、障害給付金の給付を現在より手厚くするということで、17年度、障害給付金を71人がもらっていて、その総額は1億7,000万円ほどであり、被害者1人当たり約235万円ということになっている。シミュレーションでは、まず1級から3級のいわゆる重度障害者については、それぞれの自賠責の限度額全額を給付するものとして計算した。そうすると、第1級は4,000万円で、これを受けた方が10人で4億円、それから2級が3,000万円で3人ということで9,000万円、3級が約2,200万円で2人ということで4,400万円で、トータル5億3,500万円ほどが必要になる。それから、4級から14級については、被害者1人当たりの平均額235万円がおおむね倍になるということで、これも仮定であるが、約470万円支給するということで56人を掛けて、約2億6,000万円ほど必要になる。合わせると、約8億円のお金が必要になる。それから17年度支給された1億7,000万円を引いて、追加で必要となるお金が約6億3,000万円というふうに試算をしている。
 次に、1ページめくっていただきいて、第3の重傷病給付金であるが、これについて、医療費とは別に新たに休業損害を考慮した給付を行うということが私案で示されているので、これについてシミュレーションした。
 平成17年度、支給されたのが114人、総額が1,653万人ということになっている。この重傷病給付金はご案内のように去年の4月からかなり対象が拡大されて、人数も本当はもっと増えると思う。しかしながら、なかなか予測がつかないので、人数はそのままにして、あとは自賠責の保険金の休業損害と慰謝料を合わせての支払い限度額が120万円ということになっているので、そこから重傷病給付金が既に出ているから、その支給裁定額を引いて、約105万円が休業損害ということで一応仮定をして、その105万円掛ける人数は114人のままということで一応算定した。これは新たに今の犯罪被害者給付制度にないものをつくるわけであるから、約1億2,000万円が追加で必要になる。この遺族、障害、それから重傷病給付の3つを合わせて、トータルで約10億8,000万円ぐらい増加になる。支給裁定総額が17年度11億3,000万円ですから、おおむね倍増というシミュレーションをしたところである。
 全くのあらあらであるので、ご参考にしていただければと思う。
 それから、資料の3であるが、構成員より提出された犯罪被害補償制度の要綱、想定予算額等の4種類の資料がある。
 それから、資料の4であるが、これも事前に配付しているが、財源のモデルを示せないかという話があったので、事務局で作成した資料である。諸外国の例を見ながら、一般財源型が、イギリス、ドイツ、日本のそれぞれの金額、それから罰金型が、アメリカで、罰金、あるいは課徴金等を財源として給付を行っているので、アメリカの状況と我が国における罰金の額とか起訴の人員だとか、反則金の納付額等を全くの参考で掲げさせていただいている。それから、保険徴収型が、フランスで、1つの保険契約について3.3ユーロを徴収しており、これについての状況をご説明をさせていただいている。
 備考として、総額等で日本と諸外国は大きな開きがあるが、これは給付金の対象となるいわゆる凶悪犯、性犯罪等の発生がおおむね5倍から10倍諸外国の方が多いということ、また、支給件数もかなり諸外国は多いが、これにはほとんどの国で我が国よりももっと軽い障害についても支給がなされていることを掲げさせていただいた。議論の参考としていただければと思う。
 それから、本日構成員より、いわゆるカウンセリングの費用負担についてご意見をいただいた。また構成員より別途補償額における諸外国との比較表も出ているので、これもお配りをさせていただいている。
 また、前回の検討会で財務省の出席についてご要望があったが、財務省に伝えたところ、検討の段階で意見を述べることはなかなか難しいということで、出席は難しいという返事であった。
 私からは以上である。
(構成員)それでは、資料のご説明を若干補足的にしていただいた方がいいと思いうが、構成員はすぐ後でカウンセリングの話が入っている。そこでご説明いただくということでよろしいか。
 それでは、構成員提出の資料は、本日の議事の中に一体のものとして入れるが、何か補足的にご説明いただくことはあるか。
(構成員) 本日提出した資料についてご説明させていただく。
 まず、全国犯罪被害者の会でつくった犯罪被害者等補償制度(案)要綱は、新しくできる補償制度はこういう内容にしてほしいということである。
 次の想定予算額という資料は、もしあすの会の犯罪被害者補償制度(案)要綱に則して、おおよそのシミュレーションをした場合にどれぐらいの予算がかかるのかということを出してある。対象人員は、基本的には現在の犯給法で支給が裁定されている裁定実績の件数等を参考にしながらも、性被害の方々とか、それに漏れている方々を多少修正しながらシミュレーションしたものである。
 それだけでは自賠責の政府保障事業並みという前回の議論とかみ合わないので、一番最後のページに、もし仮に政府保障事業と同じ補償内容でシミュレーションした場合に、どれぐらいの予算がかかるかということを想定している。それは資料の3ページに書いてある。
 そして、次の資料は犯罪の処罰によって国が得ている収入と加害者の処罰に支出している予算の現状をこの検討会に提出された資料に従って整理したものである。もちろん処罰による収入は国の一般財源に入り、反則金は使途が特定されているわけであるが、数字的に見るとそのような形になっている。約2,000億円に対して被害者への支出の割合は約12億円程度という資料である。
 それから、もう一つの資料は、現在の犯給法に基づく給付金の倍ぐらいということに基づいた座長私案の金額と自賠責保険の政府保障事業に基づく方式で計算したものと、さらに実際の加害者に対する損害賠償として算定する場合で、特にこれは慰謝料を除いた逸失利益のみを算定している。これは20歳の学生という想定と45歳で家族もいる場合の想定をして比較している。その比較の計算の説明等もつけている。
 最後に、本日提出させていただいた資料は、補償額の各国比較は出されたが、単純に総額だけを比較しても意味がないので、もしこれを人口比に直した場合どうなるかという比較をしたものである。
 日本の人口比にならって各国を修正すると、およそ各国の金額はそれぐらいの金額になる。各国の国民1人当たりの犯罪被害者の補償金のための予算の負担額であるが、支給総額を単純に人口で割って出したもので、そこにあるように日本は8円71銭で、ほかの国と比べると、国民1人当たりの負担額というのがものすごく少ないという資料である。
(構成員)この想定額の数字の突き合わせというのは、あわせてやらないといけないと思うが、ここで一つ一つやっていくと、そのことで時間ばかり食ってしまう。ところで、これは構成員の案であるか、それとも被害者の会の案であるか。
(構成員)被害者の会で検討したものである。
(構成員)その案の一つ一つ、例えば95億円の根拠になる数字のところは事務局の方で突き合わさせていただいてやればいいと思う。
(構成員)大枠の一番根本的に違うところを……。
(構成員)だから、その基本的な考え方を言っていただいて、数字が幾らといって今やっても、時間ばかりかかってしまう。それは後で事務局で整理して、私のつくったシミュレーションの案とも大分額が違うので、一回突き合わせるという作業は後刻やったらいいのではないかと思う。次回までの間で、構成員との間である程度突合した上で、次回各構成員にはご報告をするという形にした方がいいのではないか。議論をする話ではないと思う。だから、基本的な考え方で、こういう考え方であるというところがあれば、補足的にお願いする。
(構成員)基本的に、このあすの会の案というのは、被害者の方々の実情に合わせて、本当に大変な被害者の方々にどんな援助が必要なのかについて、各費目ごとにどういうことがどれだけ必要なのかという形で構成している。この補償制度要綱案でも基本的な補償の内容というものを決めている。だから、それに従ってどれくらいの金額がかかるのかということを試算しているわけであるが、この構成員私案に基づくシミュレーションとどこが一番大きく違うかというと、構成員私案の場合にはあくまで現在の犯給法の支給算定システムをほとんど変えることなく若干の修正をするという形で恐らく試算していると思う。だから、平均支給額四百何万というものに対しておおよそ倍額をするとどうなるかというシミュレーションの仕方をしている。そうすると、前回私が言ったように、例えば20歳ぐらいの方で損害賠償金で計算すると、それこそ1億円を超えるような方であるにもかかわらず、実際に現在の犯給法では400万円ちょっとしか支給されない。それを倍額しても九百何万にしかならない。特に1級、2級の重症の方については、満額が支給できるようにするということだが、その他の方はシステムそのものは変えないまま、それを倍額するに過ぎない。
 それで、今回シミュレーションで休業補償というものを別に105万円の平均金額として見た。これは恐らく自賠責の政府保障事業に合わせた金額であるとは思うが、実際に後遺障害の認定になるまでは、事件から入院中、なかなか治るのか治らないかわからない、家族が心配する時期がずっと経過していくわけであるが、その間の休業補償とか、あるいは医療費とか介護費とかカウンセリング費用というものをどのように構成するかということについて、このシミュレーションだと、確かに休業補償だけは120万円の範囲内で一定限度重傷病に合わせて別途支給する形になっているが、カウンセリングにしても介護にしても、そのほかのものは全部一時金の中で算定する形になっている。つまり、基本的には現在の犯給法の仕組みを大きく変えないままやるという考え方である。
 ところが、このあすの会の方のやり方は、あくまで一時金は一時金としてそれを満額支給できるようにする。それは死亡の場合の一時金、それから後遺障害が認定された場合の一時金は、これは自賠責の政府保障事業と同じように、できる限り満額が支給できるようにするということを前提としながら、さらに後遺障害が認定されるまでの間の入通院の間の医療費だとか介護費だとかカウンセリング費用というものは別にきちっと被害者の実情に合った形で手当てができるような仕組みにしてある。だから、そこのところが根本的に違うところだと思う。それで金額が違ってくるのだろうと思う。
 この私どもの推定予算額、それから補償制度の要綱等を先日、22日に行われました自民党の委員会の方にも提出させていただいたが、その際国会議員の先生方からも、ほかの国と比較をしてみても、日本の被害者に対する補償額というものは予算の総額がゼロが1桁が違うのではないかというようなご意見まで出て、これは相当の検討を要するので、ぜひ検討会の方でもこのあすの会の案も含めた形できちっと検討してほしいというお話もいただいたので、ぜひ被害者の実情に合った中身を検討しながら、どれぐらいの予算がかかるものなのかということも考えていただきたいと思う。
(構成員) 私の出した案というのは、確かに通院費といったようなものは一時金の算定のときに考慮に入れればいいではないかという形で一応整理はしてあるが、そのことはまだ審議されていないことである。私の出した案の性格をよくご理解をいただきたいが、この検討会が出す中間報告案の内容を書いたものではない。あくまでそれはこれから書くことで、その議論はこれからして、まさに給付の内容についてはご意見はまだ十分出ていない段階だと思う。だから、これから議論していく方向性を示したものであり、こういう項目について、大体こういうことを考えているけれども、これでいかがかということであるから、これがそっくりそのまま既定事実として一つの報告案として出てくるというつもりで考えているものではないわけである。ペーパーの性格をひとつよくご理解いただきたい。
 それから、こちらの95億円の想定予算額の案ですか、これはまさにこれから議論する医療費、あるいはその他いろいろなカウンセリングの費用であるとか、それから休業補償とか葬祭費とか慰謝料ということについて、一時金の中に含んであるのか、外に出すのかと、議論していこうというものであるから、基本的には一時金の中に入れるかどうかは、一つ一つ検討して、これはとにかく中に入れてもらっちゃ困る、例えば介護手当なら介護手当費用というのは外に出した方がいいのではないかとか、そういうご意見はこれからやっていただく話だろうと思う。したがって、いわゆる給付水準について、大体自賠責並みでいこうといったことだけからいろいろなことを全部決めつけて言われましても、こちらも困る。特にご意見の中でちょっとあいまいだということがあるが、あいまいなのは初めからわかっているので、その点を補っていただくために、これから皆さんのご意見を聞いていこうという性格のものではないだろうか。そのことについてのあすの会の案は分かったが、数字そのものについては事務局において突き合わさせていただくことにしたい。
 ただ、もう一つ言っておくと、算定のやり方が被害者の実情に合った形になっていないとおっしゃったが、それはどうやって合わせたらいいかというご意見を言っていただいたらどうだろうか。私の案が今まで言っているのは、今は低過ぎるので、自賠責並み、倍額にしたようなところで上読みして、それで給付水準として考えてはどうだろうかということを言っているわけである。それに従って進めていくのは、当然最低額のところも上がっていくんだろうと思う。それから、算定の仕方も今までどおりでいいのか、悪いのかというのは、まさにそれは実情に合ってない算定の仕方なのであれば、少し変えていくということはそういう必要があるのであれば当然言っていただければいいということだと思う。
 だから、報告の中身を書くときにご議論いただくことを今の段階で言っていただいても、困るのではないかという感じがする。
(構成員)基本的にこれから中身を決めていくということについては、そのとおりだと思う。ただ、今の資料の説明の際に、本当は細かく中身を説明すればいいが、そんなことをやっていると時間がかかるので、大枠だけを今説明させていただいた。
(構成員)それでは、大枠だけで議論してはいかがか。それで細かな数字の例えば医療費がどうとか……。
(構成員) それで、数字の前にぜひともやっていただきたいのは、補償のやり方というか、医療費とかカウンセリングとか、今まで議論してきたのがある。ずっと10回の検討会の中で、これはどういうふうにしたらいいか、ああいうふうにしたらいいかと議論してきたわけである。そのことが非常に大事だと思う。先にお金がありきではなくて、先にどういう援助が必要なのかということをもう少し細かく議論していただいて、構成員がおっしゃるように、そういうことを細かくやりながら、最終的に数字というものを考えていくという形の方が実情に合うと思う。だから、こちらの方の要綱の説明もそれぞれの項目のところでどういうふうにしたらいいかという議論をしていただけるのであれば、それぞれの項目のところで私も今日提出した資料をさらに細かく説明させていただきたいと思う。
(構成員)これから給付の内容に入るので、そこで議論していただきたいと思うが、今でも既に医療費をどう扱うとか、カウンセリング費用をどうするかということについては、大体の話は出ている。それを踏まえてある程度書いたものであるから、必ずしもあすの会のおっしゃるようなことになるかどうかは別として、それぞれの項目のときに、ここは考え方はこうであるというご発言をいただければいいのではないか。額の方は事務的に詰めてやらないと、かけ違った数字が出ているから、ある程度事務的な突き合わせがむしろ必要であろうと思う。よろしいか。
 それでは、前に進みたいと思う。
 前回の検討会では、(3)の財源を何に求めるべきかということについての検討は途中で終わっていた。今回、さらに詰めようということである。そのときに、叩き台のペーパーにお示しした、有罪判決を受けた者から一定の金額を徴収する制度というものをつくったらいかがかという案について、先般構成員からご発言があるということだが、時間がなかったので、今回に先延ばしした経緯がある。構成員からこの点に関するご発言をお願いする。
(構成員)基金の財源として、有罪判決を受けた者から一定の金額を徴収する制度の導入ということが掲げられているので、その点について若干申し上げさせていただく。
 ここに書かれているのは一つの考え方であろうと思うので、その詳細が出ているわけではないし、またもともとこの基金でどういうことをするのか、あるいはそこでどれだけの財源が必要になるかということと、いずれにしても制度の内容は関連するわけであるので、その点は留保せざるを得ないが、そういった被害者の支援、救済のための基金を考えるとして、それにこのようなものを財源とすることはどうだろうかということで、あくまでも一般的なものとして考えてみたらどうなるかということである。
 1つは理屈の問題になるが、こういった徴収金をどういう法的性質のものととらえるかということについては、恐らくいろいろな議論があり得ると思う。1つは、我が国の刑罰は、現在刑法で死刑から懲役、禁錮、罰金、拘留、過料といった形で法定されていて、また今回のこの徴収金というものが、恐らく行われた犯罪の責任に応じて金額が算定されるというものではないのだろうと考えられることからすると、この徴収金は刑罰ではなくて、むしろ基金の財源を確保するという行政目的に基づく財産上の負担ということではないかと考えられる。
 前回、構成員がこの点について、独禁法とか、あるいは証取法のいわゆる課徴金とはやや性格が違うもので、目的税的なものではないかというふうに言われたが、恐らくその趣旨も今私が申し上げたような説明と同じことではないかと考えられる。ただ、そういう性質のものであるとすると、犯罪被害者の支援、救済のための基金の財源を負担する理由として、有罪判決を受けたということが果たして合理的な理由になるのだろうかという問題がある。有罪判決の大半は、いわゆる犯罪被害者を生まない特別法違反の犯罪であるということから、犯罪被害という問題に関しては、まさに原因者でも、あるいは受益者でもない人間にであって、そういう人がそのような一定の行政目的のために特別の負担を負うということに合理性があるかというと、かなり疑問があると言わざるを得ない。
 こういう理屈の問題のほかに、実際上の問題としてかなり大きな問題があるという点をご説明する。
 罰金刑、あるいは独禁法、証取法等の課徴金は、性質としては制裁として課されるものであるので、その制裁を実現することにまさに意味がある。だから、その実現のために一定の行政コストをかけるということも正当化できると考えられる。ところが、この提案されている徴収金というのは、財源の確保が目的であるので、その徴収自体にあまり行政コストをかけられないという問題がある。課された人が任意に徴収金を支払えば、もちろんコストはあまりかからないが、徴収金を支払わないと何か不利益が生ずるかというと、例えばそれによって身柄が拘束されたり、あるいは何らかの別の行政処分が行われるということになれば、一つの任意に支払う担保になり得るが、今回の場合、そういう制度がなかなか想定できない。並べるのがいいのかどうかわからないが、罰金の場合にはその不納付に対して労役場留置という処分があって、身柄が拘束されるという制度がある。そういう制度が存在すること自体によって、任意の支払いが促進され、確保されている面があるが、徴収金についてそのような制度というのはなかなか想定しにくい。
 任意の支払いを担保する措置がない場合には、最終的には強制執行を行うほかないが、具体的にどういうふうに行うかというと、徴収機関において、相手の所在を捜査、調査したり、資産を調査した上で、手続的には法務局に依頼をして、裁判所に強制執行の申し立てをするということになる。恐らく少額の金額を徴収するために、こういった形で行政コストをかけるというのは、現実にはできないことではないか。
 結局、こういった制度を設けても、その徴収の実現にはかなり大きな困難があって、結果としていわゆる逃げ得を許さざるを得ないという問題があると考えられる。要するに、私どもとしては、こういった制度であると、なかなか実現は困難と言わざるを得ないのではないかと考えている。
(構成員)今、構成員からお話のあったことについて、何かご意見はあるか。
 一つ質問であるが、有罪を受けた者がここで言う課徴金と言われているものを負担するというのは、要するにつながりがないということか。有罪を受ける者というのは、ほとんどが特別法犯であるとか、そういうものなので、被害に結びつかないということであるか。これはアメリカの場合でも、話はそう違わないにもかかわらずやっているところもあるわけで、その辺の踏み切りというのは理屈の問題というよりも、むしろ政策判断の問題と言うべきではないのかという気もするが、その点はいかがか。本当に純粋な理屈の上では、絶対理屈が立ちませんという話でもないのではないか。
(構成員)確かに、本日の資料にも一部書かれているが、アメリカの州などでそういう徴収金の制度があるということであるが、私どもの承知している限りでは、アメリカでそのように行われている制度というのは、アメリカの位置づけとしては、それは刑罰であると考えられていて、その限りで言うと、先ほど申し上げた理屈の問題のところで申し上げた財源確保という行政目的との関連で合理性があるかというような問題は、その限りではやや引っ込む問題である。ただ、逆に言うと、なぜそのような刑罰が認められるのかということがむしろ問題で、この点は私どもは断定的に申し上げることは難しいが、あくまでも一般的に申すと、アメリカの裁判所というのは非常に幅広い権限を持っていて、刑罰の種類も先ほど申し上げたような日本の刑罰の種類にとどまらず、いわゆる社会奉仕命令であるとか、損害賠償命令であるとか、非常にさまざまなものが認められていて、ある意味ではそういった刑罰とか司法というものについての考え方において、日本とアメリカでは基本的な考え方の違いが相当あるということではないかと思う。
 それから、もう一つはアメリカで徴収が実際どの程度、どういうふうに行われているかというのは、正確にわからない部分があるが、一般的に申すと、アメリカの場合は裁判所の命令に対する拒否というのは、身柄拘束を伴う制裁が課されるので、こういう徴収金の支払いを担保する一定の仕組みがあると考えられる。
 それから、アメリカの場合にはご承知のように司法取引が非常に広く行われているので、有罪を認めて刑に服するということを条件にして起訴の数を減らしたり、あるいは量刑を軽くするというやり方があり、そういったものを通じて支払いを確保するということも考えられる。私どもとしてはアメリカや、その他の国で行われている制度であるといっても、前提となる法制度がさまざま異なる場合には、なかなか同様のものをつくるといっても容易ではないということをご理解いただければと思う。
(構成員)理屈の立て方が非常に難しいというのは分かった。この議論をあまりしていても時間ばかりかかる。私が考えたのは、罰金を財源にして被害者対策をやったらどうかということをいろいろ言うが、結局既存のパイの取り合いの形にしかならない。そうすると、結構額を上げなければならないときに限界があるので、何らかの形で一つの政策判断でいけるものがあれば、新たな今までにない財源を確保することによって、話がうまくいくのではないかという考えがあるので、こういう形はどうだろうかということを言ったまでである。前回も財源の問題としては、一つだけではなくて幾つか考えてみて、その選択ができるようなところを検討会の意見として出していったらどうだということもあるので、、必ずしもまだあきらめているわけではないが、難しいというのはわかったと。ただ、今後は次に何かその辺のところでうまい理屈が立って、財源問題はこれでいいということになれば、大変やりやすいことにもなるので、もう少しこれは検討させていただきたいと思う。今の構成員のご意見はよく分かった。
 構成員、何かあるか。
(構成員)これは参考であるが、今の課徴金の問題ではないが、私どもは基本的には一般財源できちっと手当てをしていただくということが一番いいと考えている。最新の日本経済新聞に掲載されたニュースで、裁判員制度のために新たに予算をとった金額が載っていて、それを見ると広報啓発活動に17億円、裁判所の裁判員用の改修の費用のために220億円もの新たな予算を獲得している。そのほかに、これは日弁連でずっとお願いしていたが、被疑者の国選弁護の費用も約20億円近くのお金が新たな予算として獲得されているので、本当に国民のためにいいものを制度設計してつくるということであれば、一般財源の中できちっと確保をしていただくというのが基本ではないかと思う。
(構成員)もちろん一般財源でやれればいいとは思うが、一般財源というのは本当に難しい。だから、一般財源の外で何か泳げないかということは、もうちょっと考えてみる必要があるように思う。
 ほかに何か。
(構成員)構成員のご意見に関連して、今日のいわゆる財源のモデルには書かれていないが、イギリスでは、先ほど触れられた刑罰課徴金に基づいて、新たに被害者基金というもので、いわゆる性犯罪への対応ということでなされているケースがある。先ほどはアメリカの例だったが、このあたりはどう理解すればいいか。
(構成員)正確に制度の中身を伺わないと何とも申し上げられないが、もともと裁判所に権限を非常に幅広く認めるというのは、アメリカもイギリスも共通する法制であるので、その辺の発想が前提にある可能性はあるかと思う。詳細はその制度の中身をもう少し伺った上で、何かあればまたご説明させていただきたいと思う。
(構成員)構成員の今のお話というのは、この間ご発言になった海外調査に関する調査結果概要というのがあるが、あの中で触れておられた別枠で出てくるという部分であるか。
(構成員)そういう意味である。
(構成員)内務省の犯罪被害補償審議会でやっていくのがあって、それとは別枠で出る。
(構成員)別枠で新しく、たしか構成員からご質問があって、私はお答えしたと思うが、これはイギリスのケースについて、ヒアリングで奥村教授からご説明があったが、そこにそういう趣旨があって、そういう意味で記憶にあったので、全く同じようなケースなので、ご質問した。
(構成員)分かった。不正確なメモしかないが、私も調べてみて、私の案をサポートするような材料になっていただくとありがたい。構成員に再チャレンジをしてみようと思うが、今日はこの辺はあまり議論している時間もないと思う。次回またもう一回財源はどのみちぶり返すと思うので、そのときに一つのやり方としては、もう少し継続して検討してみたいというのが私の考えである。
 これは非常に大きな問題でもあるので、ひとまずここでの議論はこの程度にして、後でまた財源について議論をぶり返してみたいと思う。
 次に進む。
  (1)経済的支援の内容はいかにあるべきかという項の検討に入る。
 まず、(1)の医療費についてであるが、1年を超える医療費の自己負担分についても国が負担するべきかどうかというご意見もあった。これについて、私の一つのあくまでこれは議論の方向の整理ということであるが、これは今3カ月から1年間というところに延ばしたばかりであるので、当面はその運用を見るべきではないかということで、次の答申の中身を考えていったらいかがということである。この点について、そういうことでは困るというご意見も含めてご自由にご議論をいただきたいと思う。これについてのご意見をお伺いしたいと思う。
(構成員)私が提出した想定予算額では、医療費については、高額医療の補償から外される分の8万円に12カ月を掛けて算定した。ですから、1年という意味でいけば、構成員のお考えと期間的には一致はするが、一番最初のころに私がここの検討会で出させていただいたように、Aさんのように、火傷の手術を何年にもわたって何回も繰り返さなければならないという被害者の方もいらっしゃるし、背骨から首にかけて100発も猟銃の弾が入ったまま医者にずっとかからなければならないという方もいる。
 それで、基本的に1年というある程度限界は必要かもしれないが、どうしても必要な方にはその必要に応じて援助ができるように、特にそういう必要が認められる場合は1年という原則はあるけれども、例外も認められるような定め方をしていただくことはできないか。
(構成員)その点はまた後ほどご議論いただければいいと思う。私の案でも例外的な場合の救済措置ということで触れているが、制度設計というものを考えた場合、確かに被害者の実情を見れば見るほど、いろいろなケースがあると思うが、どうしてもある程度標準的なところを捉えて、それに対してどういう措置をするのかというところを中心に考えないと、あまり例外的なところばかりついていくと、どうしてもうまくいかないということが出てくると思う。ただ、しかしセービングクローズというものは必要である。例外的な場合については、何らかの形の手が打てなければいけない。これで原則だけで終わるというのではない何か措置が必要であろうと思う。
 私の頭の中にあるのは、そういう場合にはまた別のところとの絡みもいろいろ出てくるが、支援基金であるとか支援機構というようなものがある程度いろいろなところから財源を集めてできるようになるのであれば、そこにきちっとした審査をする機関を設けて、これは1年ではうまくいかないというような例外的なケースがあったら、それはその基金なり機構なりで救済をしていくという仕組みというのは必要なのではないか。ただ、公的資金を使ってやっていく場合の原則論の立て方というのは、標準的なケースでは大体この程度で、1年なら1年で切るという一つの区切りをつけるというのは必要なのではないか。それにはまらない場合は駄目というのではなくて、別の形でいろいろな形で見ていくという仕組みの方がいいのではないか。その点については、私は恐らく構成員と同じような考え方で言っているんだと思う。ただ、同じ公的な資金、特に一般財源でやるというようなことになると、そこのところはあまり例外にわたって何年もやるということをきちっとあまりにも書き過ぎると、そこの部分だけが非常に膨大になってきてしまい、仕組みがゆがむ形になるのではないかという感じがする。
(構成員)確かに、おっしゃるように原則というものはきちっとしておかなければいけないとは思うけれども、新しい補償制度ということできちっとやる場合には、本当に必要な人に対しては必要なものが補償されるんだということを明文できちっとさせるべきだと思う。それを定めたからといって、対象になる方の人数というのはそんなに多くなるわけでもないし、また回復が少しずつでもしていけば、医療費にかかってくる金額もかなり減ってくるので、それを定めたからといって予算額がそんなにふえてしまうようなことにはならないと思う。だから、被害者の方にきちっとこういう場合にはこういうふうに医療はすべて無料で受けると、ここからこっちは保険で、ここからここまでは犯罪被害者給付制度で、ここからここまでは基金でというようなことをいちいちやるのでは、被害者の方も安心できないと思う。
 それで、特に医療費というのは事件直後から一番最初にかかってくる。被害を受けて、1カ月後には病院から何十万円も、時には100万円を超えるような請求を受けなければならないというようなことがあって、それが入院するときからこういうことであなたの場合には負担しなくてもいいということがわかるのとわからないのとでは、全然違うと思う。だから、仮にもし1年を原則にするということは、それはそれで定める必要はあるのかもしれないが、どうしても必要と認められるような場合には、それも補償するということもその例外の規定を設けること自体はそんなに難しいことではないんではないかと、私は思う。
(構成員)例外規定の書き方の問題にもなると思う。この点ほかの方はどうか。
(構成員)具体的に書かれるときに、それは専門家の方だけが見るわけではなくて、被害者本人も見るし、支援者の人、ボランティアの人も見て、そして被害者に優しい制度が提供されているということが示されているということが大事だと思う。そのときに、法律とか今までのいろいろな補償制度の書き方のように、クローズドされてしまうのではなくて、こういう場合にもまだあなたには支援の手が差し伸べられますというような雰囲気が出るような表現の仕方が必要だと思う。だから、原則として1年ということは、それはいいと思うけれども、ただ例外的に再審査も認められるというようなこととか、まだ必要という人には何らかの手が差し伸べられるというようなこともそこに一言添えられているといいと思う。
(構成員)ほかにいかがか。
(構成員)この検討会は、現状よりも犯罪被害者への経済的支援を手厚くするという形での検討会であり、これは構成員の案で、今実際に犯罪被害者の方に直接支給されるものとしては、犯罪被害者等給付金しかないので、それが土台になるということは十分分かる。それを分かりつつ、これを読んでいると、どうしても現状の基金、犯罪被害給付金制度を拡大するというあたりに視点が行き過ぎて、新たな制度を入れるというあたりがどうも弱いような気がするので、またこれからの討論の中では、新たな制度としてどうあるのかというあたりをどんどん積み重ねていっていただきたいと思う。
(構成員)ご趣旨はよく分かった。私とそう違わないのではないのかと思うが、そういう被害者の実態に応じて、ある程度非常にはっきりした状況があるのであれば、それに対しては1年を超えて出していくこともあり得るということを制度的に確立するために、この支援基金であるとか支援機構というのをつくるのがいいのではないかと思うわけで、支援機構なり支援基金ができたときには、そういう原則論から落ちてくるようなものは、こちらの方でいろいろと手を差し伸べるということがはっきりしたような形にすれば、おっしゃったような趣旨は出るのではないか。出るお金というのは、どこから出るかということで別に変わってくるわけではないと思う。構成員がおっしゃったように、それは気の毒というケースというのは、そう年間何百件も何千件もあるわけではないから、金額的にものすごい額になるわけではないと思う。だから、そういうものはきちっと手を打つということが私どもの答申案の中にはっきりすれば、それはそれでいいのではないかと思って、あまり違わないのではないと思っている。
 だから、今日のご趣旨を踏まえて、また答申案の内容というのは結論的には事務局の方である程度あらあらのところは書いてもらわないとどうしようもないと思うが、その中には今日のようなご意見は当然踏まえて、表現の仕方は配慮した書き方にするということにはしなければならない。今日のご意見はそういうご趣旨であろうと思う。
(構成員)私もそれで結構だと思う。特に圧倒的多数は恐らく1年以内でおさまるというのが通常だろうと思う。そういう意味で、これを1年にしているからといって、何か大きな弊害がどんどん出ているというわけではないので、ここで挙げられているのは当面運用を見守るということなので、私はこれでいいと思う。
 それから、もう一つ。1年以上長くかかるということは、むしろ過剰な医療というリスクを持っているので、限られた財源の中で公平な負担をするという意味では、被害者の方というよりも医療側の問題がたくさんあるわけで、厚生労働省の管轄になるかもしれないが、この点は、1年ということで区切ってもそれほど弊害は出ないし、むしろどんどん広げていけばいくほど、弊害は出るのではないかという可能性もある。私は先ほどから構成員が、そういう抜け落ちた部分については後で補填する方策をとると言われているから、この点はこの辺でという感じがする。
(構成員)今日出たようなご意見を踏まえて、報告案を書く場合には、その表現について構成員として十分に配慮していくということでここはよろしいか。その案をまた見ていただき、そのときにまた言っていただければいいと思う。
 医療費については、原則的には1年で、書き方については十分配慮しなければならないというのは分かった。
 次は、医療に関する費用のうち、保険外診療費、介護費、通院費等に関するところの(2)の方に入る。早期支援後の心理的外傷による精神的被害に対する保険外心理療法(カウンセリング等)の費用を国が負担すべきかどうかという項目であるが、私の一つの整理の仕方として、ここで3つほど書いている。
 精神的被害に対する先進医療が保険内診療となるよう、その拡大に努めるということが1点、それから医師による保険外診療費については、必要性及び効果が認められる場合に限り、医療費給付の一環として全額を負担することという形でいかがか。それから、3番目として、臨床心理士等の行うカウンセリングについては、民間団体援助に関する検討会がありますので、そちらと歩調を合わせて、早期援助団体等の民間団体から支援を受けられる、あるいは既に実施されている支援が拡充されるような仕組みを検討するという形で書いた。
 私としては、以前の検討会の席上、構成員からお話があったところを踏まえてある程度書いたつもりであるが、専門的知識に欠けるので、これで間尺に合っているのかどうか、自信がない。この点については、資料の提出があるので、構成員から具体的な提言を含めてご発言いただいたら大変ありがたい。よろしくお願いする。
(構成員)今、構成員からご指摘があった3点であるが、これは本当に私の考えと全く同じで、全く異論はない。大筋として本当にこの3つが実現すれば大変すばらしいことだと思う。
 急ごしらえで本日になってしまったが、構成員私案を少し肉づけするような形で追加の意見を述べさせていただきたい。
 お手元の資料を見ていただければと思う。最初のところで幾つか背景となることを書いている。この前もご説明したけれども、精神的被害に対する回復ということは、各国でも大きなテーマになっている。被害者支援の一つの柱になっているということは事実で、日本でもそういう柱を打ち立てるということは支援策の目玉の一つになるということはご理解いただいていると思う。実際、精神医学、あるいは臨床心理学の立場からの治療ガイドラインというものが幾つか出されているが、そこでも心理療法というものが強く推奨されている。日本でも基本法の中で調査研究といったような項目があって、私も関わっているが、まだまだ十分ではないが、多少データもそろってきて、恐らく日本人のこういう犯罪被害者の心理的外傷に対しても時間をかけた心理療法がかなり有効性が高いということは、十分期待できると考えている。
 しかし、一方実際の今の被害者の方がこういう心理療法を受けようと思うと、自腹を切らざるを得ない。というのは、もちろん保険内で通院、精神療法を初め、幾つか保険からカバーされる、カウンセリングに類したものがあるけれども、それだけではこういう医療機関側としては手厚い心理療法をしたときにぺイしないということがあるので、結局それではできない。そうすると、自費診療で払うということで、被害者の方にとってはご自分が被害を受けたのに自腹を切らないと有効かつ十分な心理療法が受けられないという問題がある。納得いかなくても自腹を切って払っている方も、おられるし、納得いかないから、あるいは現実にそこまでの負担はできないからということで、渋々そういう治療を受けることをあきらめるという方も多くおられる。
 そこで、構成員の私案にもあるように、そういった治療が保険内診療となってくれれば、これは一番いいわけで、形としてもすっきりする。何の矛盾もないが、前回いろいろとここでお話しいただいたときにも議論になったけれども、これはなかなか難しい問題があって、被害者支援の枠の中で犯罪被害の精神的被害に対する、例えばPTSDなどに特化して一つの療法に保険を適用してくれといったようなことは、昨今の医療、経済の状況から見ても難しいし、制度的にもここの検討会の中では大いによしとされても、この検討会から一歩出ればいろいろな意見が出てくることはわかっている。したがって、その議論をさらに進展して、それからそれを実現化していくためには、まだかなりの社会の理解なり、あるいは医療界の理解なりといったものが必要で、時間がかかるだろうと思う。それまで待つというのも、今本当に現状が逼迫しているので、余裕はないと思う。
 それは筋としてあくまでも目指すとして、何とかそこに至るまで補完できるような制度はないかということで苦慮をしていて、私としても実がとれればいいということで、言葉の問題、名目の問題はある意味ではそんなにこだわらない。実をとって、実際に精神的な被害を受けている方がこういう手厚い心理療法を自腹を切らずに受けることができればそれでよしとするものである。
 そこで、保険外心理療法という厄介な言葉を出させていただいたが、これに対して公的給付対象とするような道がないのかどうか。保険外と公的という言葉はなじまない言葉であるが、しかし一方で自賠責ではあまりそこら辺の議論はクリアにしておらず、保険外のカウンセリングであっても医師が必要と認めた場合については給付をしている。もちろんこれは国の給付ということではなくて、あくまでも自賠責という保険制度の中でやっていることなので、制度的に柔軟な対応ができると思う。国が直接負担するとなると、そう簡単にはいかないということもあるが、しかし一方でこういう議論をせずに、保険外のカウンセリングについても全額支払い対象として認めるという前提があるわけで、何とかそれに近づけるようなロジックというものがこの検討会で見つけ出していっていただけないかというところである。
 提案に入る。これもおおむね構成員の私案に沿った形のものである。
 1つは、医療機関等にて実施される保険外心理療法に公的給付を行う。その給付の条件としては、重傷病給付金を少し下敷きにしたような考えになっているが、犯罪被害による心理的外傷を原因とした精神的被害を対象とする。これに限定するということである。
 それから、傷病発生後1年以内を限度とする。
 それから、医師による指示を必要とする。
 それから、前回のときにも議論が出たけれども、有効性のある程度のエビデンスというものがきちんとあったようなものを対象とする。何でもいいというわけではないということである。エビデンスが上がってきたものがあれば、それは追加で認めていく。
 それから、医療費、治療関係費という言葉でもいいが、給付の一環として国が全額を負担する。
 ただし、社会一般の診療水準に比して著しく高額で相当性がない場合は対象としない。常識の範囲内での金額については、国が負担するというような提案である。こういうものが何らかの形で制度的に実現しないかというものが提案である。
 それから、もう1段階として、これも構成員私案にあるけれども、早期支援後の臨床心理士等による継続のカウンセリング、もちろん警察の早期支援のカウンセリングというものはこの前も資料をご提示いただいたが、それぞれの自治体で行われている。しかし、その後、早期支援から継続して行うカウンセリングサービスの拡充が図られるような何らかの経済的措置をしていただければいいのではないかと思う。窓口は各自治体での被害者支援にかかわる民間団体がサービスを運用する。
 対象が被害者本人、遺族、現場目撃者と書いてあるが、提案の1の方は重傷病給付金なので、これは被害者本人である。遺族は含まれていない。あくまでもご本人が傷病を負ったということ、その精神的被害に対する心理療法であるが、提案の2番目の方は直接の被害者だけではなくて間接被害者としての遺族も含む。それから、人数は多くないけれども、もう一つ間接被害者としてあるのが現場の目撃者で、目撃者というのは別にただ単に現場を傍観をしていたという人ではなく、現場に飛び込んでいって死傷者の救護に当たったような方たち、大変生々しい思いをして、そういう方たちからもPTSDが実際に出ている。私も、最近でも二、三人そういう方を診て、飛び込んでいって、その人たちを救護して、その後、あまりの生々しさに衝撃を受けて、もう外に出られなくなってしまったり、ずっとフラッシュバックや悪夢に悩まされているという方がいる。そういう方たちには、やはりちゃんとカウンセリングサービスを提供してあげたいという気持ちがあるので、明らかにこの人は間接被害者であるという方も含むということになるかと思う。
 カウンセリングの内容については、あまり方法論についていろいろな縛りをかけるということではなく、現在の段階で、概ね専門家が見たらこれは妥当な内容であるというものであれば、給付の対象とするというぐらいでよいのではないかと思う。
 それから、これも構成員のご指摘にあったが、民間団体援助に関する検討会でも並行して議論が行われているので、そちらの議論とのすり合わせが必要であるし、それから、現行の警察の早期支援によるカウンセリングというものが各自治体で行われているので、それとの連携と調整、また、自治体によっていろいろ運用の多様性があるので、個々の自治体レベルでの連携調整というものを図りながら、制度を検討していってはどうかと考えている。
 それから、2番目の方の大きな問題は、各自治体の財政事情が大分違うということである。つまり、国の方で太鼓をたたいて歌を歌っても、各自治体の方は、ない袖は振れないという制度がほかのものでもあったと思う。そうすると、ここのところの格差を少なくして、それから人的資源というものが大分違う。精神科医の数、あるいは臨床心理士の数でも、人的資源というものが各自治体によって大分違うので、こういう格差を少しでも少なくするといった工夫が必要かと思う。財政事情の面でいえば、やはり何らかの最低基準のようなものを設けて、早期支援の後も継続のカウンセリングが必要な人についてはこれぐらいはサービスを提供してほしい。例えば、少なくとも半年間、回数としても10回ぐらいについては、給付の対象としてくれないかといったようなものを設けてはどうかと考えた。
 表は、文部科学省の助成を受けている研究ユニットでの、まだ予備的な段階でのデータである。
 以上である。
(構成員)このカウンセリングのことについて、何かご意見があればどうぞ。
(構成員)基本的には、構成員のご意見に賛成である。質問したいが、構成員の提案1には、保険外診療の公的給付の対象になる人の中に、遺族や家族は含まれるという考えでいいのか。
(構成員)1の方には、遺族は含んでいない。というのは、先ほど言ったように、重傷病給付金を下敷きをしているので、含まなかった。遺族については、やはり2の方で広く含んではどうかと思う。
 というのは、遺族を1の方に含むということについては、定義が非常に難しいという問題があって、私のところでも、直接同居されていたご両親であったり、あるいはお子さんであったり、おじいさん、おばあさんであったり、ご兄弟の方であったりというのがあるし、それから逆に内縁関係の方、パートナーとして暮らしている方もおられたし、本当に被害を受けている遺族というものを言葉で定義するのは、なかなか難しいものがある。遠く離れた直系の親族よりも、一緒に同居しているパートナーの人の方がよっぽどひどい被害を受けていて、そういう人こそ本当に治療を受けたいというようなこともある。広い意味では、遺族なわけである。そうすると、この1番の方は、どうしても公的給付ということになると、言葉で対象を定義するということになるので、その難しさがある。
 それから、もう一つ難しいのは、期間の問題があって、私自身も、今、遺族に対する認知行動療法の研究も並行して進めているが、早い方で、被害を受けて2カ月で来られている。長い方は、5年、6年たって来られている。その間、訴訟の問題があり、保険会社との交渉があり、生活再建の問題があり、そこで走り回っていて、ちょっとそれが落ち着いた段階で、初めて精神的なダメージと向き合うということになって、何年かかかって初めてこられるという方がいる。その段階でも、いろいろなPTSDの症状があり、したがって、この期間の限定というものが難しくなるので、これはよりフレキシブルな形で提供できるサービスの中で、遺族の方は対象とした方がよろしいのではないかと考えた次第である。
(構成員)1つは、どの範囲を補償の対象にするかという認定上の問題であるか。
(構成員) はい。
(構成員)それで、そういう認定上の困難性というのはあるのかもしれないが、例えば東京で起きた事件で、ご存じかもしれないが、自宅で加害者が刃物を持って襲いかかってきて、お母さんが殺されそうになったところを、お風呂に入っていた息子さんが飛び出して、息子さんが刺し殺された。同時に、お母さんも大けがをしたという事件で、お母さんは現在も非常に重篤なPTSDという状態にあるが、同時に、その場にはいなかったが、帰ってきたご主人が、やはり非常に精神的なショックで、もうご商売ができなくなってしまって、閉鎖してしまい、そこに住んでいられなくなって、東京都にお願いして、別の住宅の手当てをしていただかなければならないような方の場合に、もしそのご主人の心理的な被害をこれから外してしまうということになるのは、やはり直接の被害者と同じように、本来の1の方の対象にすべきではないか。
 だから、もちろん2の方の対象の方もあるとは思うが、実際に刑事司法手続の中で警察に協力したり、あるいは裁判に協力したりするのは、その残された遺族の方だと思う。そういう方が、自分の心理的な被害を抱えながら、かつ、捜査機関や司法機関に協力していかなければならないということをやっていくわけなので、認定上云々という問題はあるかもしれないけれども、やはりそれは制度の対象の範囲の定め方の問題だと思うので、そういう場合も構成員の提案1の方で、ちゃんとした公的給付が受けられるようにすべきだと私は思う。
(構成員)構成員に少し質問という形になるかと思うが、例えば2の場合、遺族が対象となっているけれども、この場合、カウンセリングというような形で、認知行動療法というような実際の治療というものが中に含まれないという形になると、今、構成員がおっしゃったような問題も出てくるかと思う。
 それと、もう一つ。民間団体との連携ということが大きな一つのポイントになるということも書かれているけれども、例えばPTCUで治療だけをしている方の回復度と、あるいは民間支援団体が関わって、また別のサポートをしている被害者及び遺族の方での回復度の違いなどがわかりましたら教えていただきたい。
(構成員) 専門の治療を受けている方と、それからセルフヘルプグループの方との……。
(構成員)必ずしも自助グループとは限らないが、民間支援団体がきちっとサポートしていて、なおかつ専門治療を受けている方の回復と、専門治療だけを受けている方の回復度では、その回復度に違いがあるかどうか。つまり、民間支援団体の役割というものは、かなりのものがあるのか、さほどでないのかということである。もし現段階でおわかりになれば、教えていただきたいと思う。
(構成員)恐らく、データとしては何もないので、データがない以上は何も言えないので、何とも言えないと思う。
 ただ、私のところにも、実際は都民センターからほとんど遺族の方は紹介を受けているので、自助グループに入って私のところに来られたり、あるいは治療が終わって、また自助グループに参加されたりということがあるので、どちらも必要だと思う。回復された後も、やはりそういう仲間の中で定期的な交流もしたいという方もおられるので、どちらが回復がいいのかどうかというのはわからない。あまりそういったような会合に参加しなくてもいいという方もおられるので、そんなに比較はしなくていもいいと思う。利用できるものは、何でも利用できればいいと思う。
 ただし、遺族に対する専門治療というのは、本当に世界的にも新しい領域であって、私のところも含めて、恐らくまだ世界でも指折り数えるほどしかしていないと思う。大変効果的であるといったような手ごたえは得ている。来年度ぐらいになると、少しまとまったデータが出せるけれども、これまでの通常の遺族カウンセリングだけではもうひとつだった方についても、もう1段階の回復を推し進めるようなお手伝いができるのではないかといったように考えていて、本当のことを言えば、確かにこれについても公的給付は欲しい。被害者ご本人のPTSD以上に、もう少しまた手厚いことをしなければいけないので、経費はちょっとかかる。1.5倍ぐらいかかるかと思うので、構成員がおっしゃった前半のことは、私と全く同意見で、その治療の必要性というものは本当にあるが、ただ、制度的にすり合わせるのがちょっと難しいと思い、2の方に含めた。それよりも、むしろ無理やり医療制度の中に組み込むよりは、例えば給付金の方を、少しそのことも含めて上乗せしていただいて、遺族については精神的被害からの回復にかかわる経費ということも、もう給付の中に含めていただいて、そこから少し手当てしていただくといったことの方が、あまりいろいろ頭を悩まさなくても済むというように感じた次第である。
(構成員)私の方から、今、構成員からご提案がありました点の、2の方は医療制度の枠外での話であれば、恐らく特段の問題はないと思うが、1について、医療保険制度上の技術的な観点から、2点ほど述べさせていただきたいと思う。
 まず、構成員が、保険外診療という意味が、保険ではペイしないから、実態として自由診療が行われているというふうにおっしゃったように、現在の医療保険制度上、こういう通院精神療法等については治療方法が特定されていないので、医師が適切だと判断すれば、ここで掲げられております認知行動療法でも、制度上、対象となり得るということで、問題は、おっしゃったように点数が低いということが課題であろうと思うが、そういう意味で、保険外診療、保険外となっているという意味合いにおいて、制度上はなり得るものだということを前提にご議論していただく必要があるのではないかと思う。
 それからもう1点は、1のような形で保険外診療について公的給付を行うということにした場合、保険診療と自由診療の組み合わせということになる可能性、これはもう昨年10月のときにご議論いただいたが、いわゆる混合診療の問題がある。そういう問題があるので、全体としては、全額保険の適用外になる可能性があるので、それをクリアする道として、先般、担当の者が申し上げたように、1つは先進医療という位置づけによって、その上乗せ部分だけで、基礎となる通常の保険診療、いわゆる組み合わせが可能となり得る制度はある。
 ただ、その際も、いずれにせよ一般的な医療制度の枠組みの中で有効性なり、そういうことを判断していくというご説明を申し上げたと思うので、構成員のご提案の趣旨、それから構成員の私案の方向の趣旨は分かるが、制度の技術上の問題点ということがあるので、その辺は我々もまた、今後よく詰めて議論していく必要があると思う。
(構成員)私は、先ほど言ったように実をとることが目的で、こうあらねばならないということではなく、こんなふうに考えれば、かなり実利としても十分なものが得られるのではないかといったような、むしろ私どもがご意見を伺えれば、大変助かるかと思う。
(構成員)私も構成員と同じであるけれども、保険の内、外をあまりきちっと分けると、かえってやりにくくなるところがあるので、まさに実をとってやっていった方がいい。そちらの仕組みとしては、それでは困るということはあるのか。先進医療という、先進性があり、有効性、安全性等が確保されたものがある。このためには、先進医療専門家会議というので決めていかねばいかぬわけであるか。
(構成員)そういうことである。
(構成員)それは、ある程度早く結論が出ることになるだろうが……
(構成員)3カ月。
(構成員)3カ月であるか。そこでやっているよりも、もう犯罪被害者の本人あるいは遺族については、経済的に措置するというのは、公的資金が無理であれば、結局先ほど言ったような支援機構とか、そういうところでやっていくという形になってくるんだろうと思うけれども、そうなるとよろしくないか。
(構成員)問題点は、そのときに、通常の保険診療との組み合わせになるかどうか。今日見たばかりなので、自賠責の制度はよく分からないが、恐らく自賠責は、根っこからすべてが自賠責の制度で見ておるのではないかと思う。医療保険は医療保険の制度があるから、この犯罪被害者の給付金体系は、それを前提とした上での制度なので、その辺の違いも制度的にはあるのではないかと思う。
 したがって、技術的によく詰めないと、あくまでも技術的な問題ではあるけれども、医療保険制度の制度上の問題とかかわる問題があり得ると思っている。
(構成員)それは、実際に書く段階で、またいろいろと技術的なことは言っていただいてもいいと思うが、構成員は、その点はもう公的に犯罪被害者に対する給付金としてやっていけばそれでいいとおっしゃるわけであるか。
(構成員)そうである。何らかのものが得られれば、それは言ってしまえば国からの直接給付ではなくても、あるいは基金からのものでも何でもいいわけである。
 それからもう一つは、構成員だけではなく構成員の方にも、いわゆる自賠責でのカウンセリングの費用を給付しているという実績があるので、先ほど言われたように根幹制度が違うので、すぐ右に倣えはできないかと思うが、何とかそれに少しでもなぞらえたような形で、いわゆる医療保険の外のカウンセリングについても、医師が必要としているといったようなことでその必要性、相当性があるものについては、重傷病給付金の中でも給付対象とできないかどうかといったようなことも、ご検討いただければと思う。
(構成員)それはまた、いわゆる混合診療の問題とも絡んでまいるので、そこは今後よく詰めないといけないと思う。
 私自身がわかっていないのでわかりにい書き方しかできないのであるが、構成員がおっしゃったような2つの提言にまとめた形、これも私は基本的には同じことだと思うが、構成員の今日のご提案のような形の方がわかりやすいと思うけれども、この点について、何かご意見があれば。
(構成員)もう1点だけ、質問であるが、性被害の方々で、静岡県でもB先生が、ずっと犯罪被害者支援センターの理事として大勢の方々を見ていただいているが、被害を受けてから相当たってから、もう一度、先生のところに見えられる方も結構おられると聞いている。一応、警察に事件を届け出て、その方が犯罪被害による強姦であるということがちゃんと分かって、その当時、事件直後にずっと精神科の先生に診ていただいて、よくなったと思ってしばらくたったけれども、また悪くなったという方の場合は、やはり引き続き給付の対象というふうにすべきだと思うが、その辺はどういうふうにお考えか。
(構成員)これも、先ほど出た議論と同じで、非常に難しい問題がある。1つは、遅延性の発症といって、特に性暴力被害の方などは、最初のうちはいわゆる感情麻痺のような状態があって、あまり症状がはっきりしていない。しばらくしてから出てくるということがあって、そこから治療を受けると、犯給法の1年にはすぐ引っかかってしまうという問題があるが、しかし、これは警察庁の方にお伺いしたら、あくまでも傷病発生からの1年ということなので、それまでは割と小康状態だったのが、例えば被害を受けてから何カ月後くらいにはっきりPTSD症状が出たという場合は、そこから1年ということなので、カバーはできるのではないかと思う。
 ただ、再発の問題については、これは性被害のPTSDだけではなくて、恐らくあらゆる疾病障害で再発・再燃の問題があるので、どこで線引きするか、先ほどの議論と同じになると思う。しかし、これも有限にしないと、主として医療機関側のモラルハザードが出てきたりとか、難しい問題がある。構成員からも提案のあった、別枠で例えば労災のようにアフターケアといったような形については、制限された範囲で認めるとか、幾つか工夫する方法はあると思う。明らかに被害と関連している障害が長期に続いているといった場合に、どの程度のサービスをどこからするかということについては、恐らくまた別途、議論が必要かと思う。
(構成員)構成員のお話しされたものの追加みたいな質問になってしまうが、2番の方の対象は家族が入っていないというのが、例えばDVとか虐待の、特に子供などは、やはりかなり後から精神的障害が出てくるということもあるのではないかと思う。私は、専門的にはよくわからないけれども、やはりこういうカウンセリングサービスが必要なのではないかと思うが、家族についてはいかがか。
(構成員)家族は含むのではないか。遺族と書いてあるから。
(構成員)そうである。遺族ではない家族もである。
(構成員)遺族ではない家族も含むということだと思う。遺族というのは、本人が死んでしまった場合だけということ。構成員がここでおっしゃっているのはそうではないのではないか。
(構成員)そうである。要するに、現場目撃者に近いところになるかと思うが、巻き込まれた方である。
(構成員)遺族及び家族ということはそれでよろしいか。家族も当然含む。遺族という言い方でなくて、遺族及び家族というラインで整理はしていったらいかがかと思う。
 ほかに、いかがか。この項はよろしいか。
 次は、まとめ方としては、恐らく十把一からげで何だというおしかりを受けるかもしれないが、介護費、通院費等、それから補装具費、環境整備費、それから逸失利益、休業補償、それから葬儀費、慰謝料等、これらについては、一時金の水準の決定に当たって、こういう要素も考慮してその額を決めていくという整理の仕方でいかがかということであるが、この点については、構成員、どうぞお願いする。
(構成員)この介護は、家族の方がずっと付き添うのと同時に、専門の介護をされる方に料金を払ってお願いしなければならないような場合から、いろいろあると思う。交通事故の損害賠償の算定に当たっては、介護の費用、これが近親者の付き添いの場合も含めて別途計算されるわけである。それで、自動車の損害賠償の保険の場合にも、もし近親者が付き添った場合でも1日幾らというふうに、一時金とは別に算定していく。だから、この介護の費用というのは、相当の金額、場合によると1カ月に20万円も30万円もかかるような介護が必要な場合もあり、あすの会の会員さんの中にはそういう体験をした方もいらっしゃるので、できればこの一時金とは別に、特に重い方には計算していただきたいということである。
 ただ、我々の方のシミュレーションでは、介護については、将来の介護費用として、一応、10年間だけ見た場合にどうなるかということをシミュレーションしてある。10万円というのはどこから持ってきたかというと、被爆者援護法である。ここの検討会で報告された被爆者に対する援護では、重症者に10万円の介護手当、被爆者の援護については、そのほかに毎月3万円以上の健康管理手当が出され、そのほかに介護手当として、10万円、十何万円ということが物価スライドつきで定められている。それを参考にして計算すると、仮に10年を見た場合にそうなるということであるが、これは10年間の累積した場合の金額であるので、件数を20件というふうに想定したわけであるが、これは級の上の方を想定しているので、20件ぐらいと見た場合でも、大体1年間にその10分の1という程度のものである。だから、この将来の介護費も含めて考えていただきたいということである。
(構成員)ここで、将来の介護費用の算定の基礎として、原爆被爆者の例を持ってくるのが果たしてどうなのかという議論は当然出てくると思うが、要するに介護費用というのは、やはりどうしても別個にやらなければならないというご意見だろうと思う。ほかの点はどうか。葬儀費とか、想定予算額の案だと全部外へ出している。全部外に出してこういうものを計算した上で、さらに一時金は倍にしろというご意見であるか。
(構成員)実は、この介護費の問題については、一時金、つまり将来の介護費ではなくて、事件直後からの病院に付き添う等の付添費をどうするかという問題がある。それで、我々の方でそれをどういうふうにシミュレーションするかということをずっと検討しているが、障害者自立支援法と介護保険法があって、公的な介護がどのようにしていただけるのかというのが、非常にこれは複雑な面がある。それで、私が例にいつも出しているC君のような若い人の例だと、介護保険法が適用にならない。そうすると、現時点だと障害者自立支援法ということになる。その障害者自立支援法では一体どういう程度のことがどのようにやっていただけるのかということが、シミュレーションしようとしても、各地方自治体ごとに皆プランニングが遅れているということがあって、想定しにくいわけである。それで、やむを得ず、現段階である程度わかっているものとして、金額で出したら幾らになるのかということで、何万円かかろうとも、一応、公的給付として今現在、介護手当としてはっきり法的に定められている被爆者援護法のものを参考にしたわけである。
 だから、相当の重症な方でも、障害者自立支援法でうまいぐあいに介護がやっていただけるような方であれば、それはその公的な給付の範囲内で、仮に自己負担額が1万5,000円なり3万円なりあったとしても、その範囲内で済む。しかし、そうではなくて、家族も仕事をやめてずっと付き添っていなければならない、自宅でも付き添っていなければならないなどというような方の場合には、やはりその分をきちっとお金で補償していかないと、生活に相当響いてくる。公的な介護だけではとても賄い切れないということになって、介護の分の補償をしないといけない。そういうことで、一応これは別に出していただきたいということである。
(構成員)今、構成員からもちょっとお話が出たけれども、介護費用、リハビリ費用、あるいは補装具、こういったものについてどうするか、あるいは休業補償についてどうするかということについて、1つは、やはり今おっしゃった介護費用等については、被害者自立支援法という枠組みがあって、また介護保険法という法律もあって、公的な給付がなされているわけであるし、それからまた休業補償という点で申し上げると、健康保険法とか国民健康保険法といったもので、一応、これは標準報酬日額の60%を給付するという制度がもうできているわけである。
 この被害者の方への支援を考えるときに、犯罪被害者等基本計画においても、「社会保障、社会福祉制度全体の中における犯罪被害者等への経済的支援のあるべき姿やその財源を検討する」というふうに書いているわけであって、全体の社会保障、社会福祉の枠、そういった今まであるいろいろな制度の中で、足りないところがあれば、そういった足りない点を指摘する、そして改善するといった形で、幅広く全体的に大きな枠の中で考えていくというのが一つの方法ではないかと考えているわけで、単に犯罪被害給付制度だけではなくて、今申し上げたような枠の中で考えるということが、結果的には被害者の方への支援の充実につながるのではないかと考えているところであるので、そういった観点からご議論をいただければありがたいと思う。
(構成員)ほかにこの件について、一つ一つのご意見で結構であるので、何かあるか。
(構成員)今、ご説明があったとおりだと思うが、一方では、この基本計画の基本方針のところで、個々の事情に応じて適切に行われることということがある。もう一つは、構成員の提案で、一時金の水準については、働く能力の減退の程度に応じてということがある。それからもう一つは、今おっしゃった福祉の関連諸制度、これとの中で検討するということであるので、基本的にはそういう視点で、私はこの項目を見ていくべきではないかと思う。
 したがって、構成員提案では、すべて一時金の中にということであるけれども、この中身を見てみると、いわゆる犯罪被害者全体に共通する項目と、重度の被害者に共通する項目と、そしてもう1点は、それでは整理し得ないという内容もあると思う。だから、これはすべてがすべて個別的にというのは、なかなか困難なことも十分分かるので、そういう意味での各項目についての整理の上で、いわゆる実費補償的に補償するものと、そして一時金の中で給付されるものというものを、ある程度、私は整理できるのではないかと思う。先ほど言ったように、すべてが全額ではなくて、介護保険法であるとか、あるいは自立支援法で、それぞれ10%の負担と。あるいは、生活用具についても、ここにはないけれども、貸与というものもあるわけであるから、そういうことも全部整理すれば、ある程度コンセプトが、私自身は整理できるのではないかと思う。
(構成員)私も、実は同じことを考えているが、考えた末に、とにかく全部一時金の方へ入れてしまうという非常にラフな話になっている。今のご意見で、ではこの中でどれを個別にきちっと我々の提言の方で書くべきなのか、その項目は何なのかという点については何か。今、私の場合、一時金のところへ全部入れてしまっているけれども、どれがいいか。
(構成員)その点に関しては、公害であるとか医薬品であるとか、あるいは原爆の被害者があるが、その他の制度で共通して、あるいは全部が共通しないにしても補償されている項目があるので、そういうものを参考にしていけばよいのではないかと考えた。
(構成員)それぞれ、大分違う。趣旨が違うものであるから、犯罪被害者の場合にどれを個別に見るべきかというところがなかなか難しい。一時金の算定のときにやればいいのではないかという形で整理はしてしまっているけれども、ラフ過ぎるのであれば、これだけはやはり個別に出さないとまずいのではないかというのは、何かあるか。例えば、この中でも補装具費などのようなものは、これはある程度、保険でも適用されるし、これを個別に書いて、補装具費を幾ら出すというような言い方は細か過ぎる。そういうものはもう一時金の中でやればいいのではないかというのはあると思う。ただ、被害者の実情に応じて考えた場合に、これは一時金の中では絶対に困るというのは何があるのかということは、いろいろおっしゃっていただくとありがたい。
(構成員)私は、最低限、介護費と、それから通院費は、先ほどの基本的な考え方からすると、それも中へというのは非常に矛盾するのではないかと思う。通院費の場合は、通常の公共交通機関は入るとしても、非常に遠隔地であるとか、公共交通機関が使えない、そういう通院をせねばならないという方もいらっしゃるので、それは被害の程度とは関係ないと思う。そういった項目については、私はそう考えている。
(事務局) 今の構成員の私案によると、全体の水準をとにかく自賠責の水準にできるだけ近づけようではないかということで来ていると思う。そういう中で、給付水準を上げるという話で、今、進んでいるけれども、今お話が出ているように、例えば現にあるいろいろな介護費用にしてもリハビリにしても、それぞれの保険とか、そういうもので出るわけで、それを横に出してプラスアルファでというふうにしても、結局は全体の自賠責の水準をはみ出てこれを支援するということになると、多分、私は国民の理解がなかなか得られないのではないかと思う。要は、全体の水準を自賠責並みに引き上げるという、その中でやはり物事を検討しているわけなので、そうすると、申しわけないけれども、介護保険費用などについても、一定のところはもう既に福祉の制度で出るわけなので、それにプラスアルファで必要なこともあると思うが、その額はそんなに大きくはないのではないか。そういうものについては、申しわけないけれども、ある程度、制度として運用するためには、一定のこういう一時金の中で、一時金を2倍にするというのも簡単な話ではないので、そういう中で全体として自賠責の水準に近づけるということで、大方、コンセンサスはできていると思うが、その中で見ていくというのが一番適切なのではないか。要は、外に出しても、では自賠責の水準を超えられるかというと、やはりそこはなかなか難しいのではないか。そこまでやれとおっしゃるのであれば、この私案自体がもう少し全体の構成を考えなければいけないという感じではないかと思う。
 だから、申し上げたいのは、個別に切り出すのが極めて困難であるということと、個々の事情はもちろん大事で、被害者に優しい制度をつくらなくてはいけないと思うけれども、そこの本当にはみ出る部分は、先ほどから出ている重度の人の1年以上のものもそうで、そこは多分、後で出てくるが基金とか、そういう本当の例外的な、これはやはりひどいではないか、介護費用が例外的に何百万もかかっているではないかという人もおられると思う。そういう場合は、例外的にそういった基金の方からフレキシブルに支援できるようなバスケットクローズを置いておくというのが制度としての限界ではないかと私は思う。
(構成員)確かに、自賠責の水準並みにと言っていただけるのは、非常にそれはそれでありがたいが、何度も申し上げるように、現在の犯給制度の計算の仕方と根本的に違っていて、もし介護費などを自賠責のようにその枠内でおさめるという考え方をとるのならば、やはりきちっと逸失利益なら逸失利益、そういうものも積算する。そういう方式で、その積算をした上できちっと自賠責の範囲内におさめるというようなやり方をすれば、付添介護費も、それでは近親者の場合なら幾ら、そうでない場合、専門家の付き添いを行った場合は専門家の付添費が幾らというふうにして積算して、それで、その中できちっと逸失利益も、自賠責の場合は慰謝料も含まれているけれども、そういうものをやって、年齢の低い方にもきちっと自賠責の最高額が支給されるような仕組みに変えていただく。そういう中で、今、構成員におっしゃっていただいたように、自賠責の範囲内ではみ出るというものはまた別に考えるという考え方をとるのであれば、ある程度、やむを得ない面があると思うけれども、今のままの犯給制度の計算の仕方を前提にして、介護費などはその範囲内でというふうにされてしまうと、これはもう全然補償が厚いことにはならない。これは、前回、私がCさんのような若い人の例を挙げて計算を出したとおりだと思う。
(事務局)構成員のシミュレーションなどを見て思ったのであるが、自賠責でも必ずしも全部最高限度額を支給するなどということはない。それは、十分ご存じのことだと思うけれども、したがって、死亡した場合でも、平均支給額は2,200万円ぐらいしかない。だから、そこをよく考えていただきたい。
 要するに、我々は何とか厚くしたい。おっしゃったように、ちょっと誤解もあると思うけれども、別に低所得者の人を今のままの計算方式で、今のままただ倍にするだけだとか、そんなことはちっとも考えていない。その辺のご意見は言っていただいても結構であるが、しかし、全体として自賠責の水準に上げるという、そのコンセプトの中に、全員に3,000万円与えるというような考えは、私はもう全く国民の理解は得られないという感じがしていて、もしそういうことでいきたいとおっしゃるのであれば、せっかくの検討会であるから、もう少し説得力のある、根拠のある議論をしていただかないといけないのではないかと考えている。
(構成員)おっしゃるとおり、自動車保険の概況という資料があって、確かにこの資料によれば、平均の支給額というものは二千何百万円であるということである。
 しかし、私どもの言っているのは、1つは死亡の場合、ご遺族への補償というのは、逸失利益を計算しただけでも大体どのくらいになるかというのは、はるかにこの3,000万円を超える金額にほとんどなる。もう本当に高齢の70歳ぐらいの人とか、そういう高齢の人が亡くなった場合は逸失利益というのは非常に少ないので、この3,000万円よりも下になる。しかし、そうではない大体60歳ぐらいまでの方を計算すれば、逸失利益だけでももうこの3,000万円の金額を超えていく。それで、私どもの方のシミュレーションで出した。だから、もちろんある程度、予算の計算なので、どの程度支給されるかということを計算する場合に、死亡の場合3,000万円というふうに出しているのはそういう意味である。だから、全員に何が何でも、どんな場合でも3,000万円出せということではなく、制度の設計上は、それは自賠責と同じように設計すればいいわけである。そうすれば、平均支給額は二千何百万円になるかもしれない。
 それから、障害の場合も、1級とか2級とか、そういう金額になると、本当はその介護手当も相当高額な金額である。だから、もう1級、2級の方の損害賠償を計算すると、大体いつも1億円から2億円ぐらいの金額になってしまう。だから、仮にもしその場合に3,000万円なり4,000万円ということを想定したとしても、重症の方の場合にはそういう金額が出てくる。それで、こちらの方としても、もし1級の重症の方に4,000万円というシミュレーションをする場合も、では、そのうちの3,000万円までは逸失利益というふうに考えたとしても、あとの1,000万円は将来の介護費というふうに考えることもできるのではないかということも、我々の方では検討した。
 だから、確かに構成員のおっしゃるように、平均の支給額でいけば二千何百万円ということは、この資料に出ている。それは、私どもも別に、もし犯給制度も自賠責と同じ制度を組んでいただけるのであれば、あるいは平均支給額は3,000万円よりも低くなるかもしれない。
(構成員)おっしゃるご趣旨は、一時金のところで自賠責並みにする。その算定根拠という言い方はおかしいのかもしれないが、どういう項目を立てていってそうなっていくのかということは、当然、ある程度、説明をせぬといかぬことになると思う。その中で、今、私の考えているのは、そういうことを考えるときに、今このいろいろ出ているものは全部加味していく。それは、今までの犯給法の支給の中には入っていない項目も、いろいろ入ってくる。また、逆に言うと、そういう項目を入れていかないと、理屈として倍にするという理屈は出てこない。ただ倍にするというわけにはいかないので、どういう項目を入れていくと大体上がっていくというようなことも考えないといけないと思う。算定基準がどうなるかということは、私も今の段階では分からないけれども、とにかく今の犯給法のままいくということはあり得ないのではないか。やはり、それなりに別に新しいやり方、仕組みで考えていって、上が倍になったら、当然、最低額も全部上がっていかないといけないと思う。今日出ている構成員のペーパーの中にもあるけれども、最低額のことが何も書いていないではないかと言うけれども、上を上げれば、下は当然上がる。ということは、算定の仕方そのものが変わっていくということなので、もしその点についてあまりはっきりしない、何かよくわからぬというのであれば、実際に案を書くときに、こういうこともちゃんと入れて上に上げていくべきではないのか、算定もすべきではないのか、介護費用の分も当然含めて考えるべきではないのかということを、我々の答申案の中に書いていったらどうか。つまり、それはあくまで書き方の問題になってくるのであるが、私のこの案は、そういうことは一時金の中で考えたらどうだろうというのが案であって、ただ、これはご議論の結果、どうしても一時金の中ではとてもおさまり切るものではないというものは、一体何があるのかということである。若干ラフな考え方かもしれないが、ここに書いてあるようなものは、中で書いていいのではないか。休業補償は、実はちょっと違うので、先ほど既に入れてあるけれども、その点、そういう整理の仕方というのはいかがかということである。
(構成員)基本的な考え方が、大分、構成員と違う面があるのではないかと思う。それはそれとして、介護手当の問題を考える場合に、やはり後遺障害として認定されて、その障害保障給付の中、一時金の中で考えていくという、それも一つの案だと思う。
 ところが、その認定される前の段階、つまり、被害を受けてずっと治療中の段階がある。その治療中の段階に、付添看護費用とか、そういうものをどうするかという問題がある。自賠責保険などは、後遺障害の補償と、後遺障害に認定される前の入通院中の補償については全く制度が違って、計算方法も違う方式をとっている。それで、現在の犯給制度では、一応、通院中のものは重傷病という形で設けていただいてある。今、介護保険、介護の問題、手当の問題について、障害保障給付とは別に、やはり入通院中にご家族に手当てが必要になった場合どうするかということであれば、一時金に含ませるのは無理だと思う。そもそも、後遺障害になる前の話、認定される前のことなので。
 だから、そこのところは、先ほどほかの先生方もおっしゃっていただいているように、自立支援法を使って介護していただくということが、入通院中ですから、当然、考えられる。そのような場合に、もし、それではとても賄い切れないという状態が出た方のような場合を、おっしゃるように、基本となる補償制度の中でやるのではなくて、もうそういうふうに公的給付からはみ出たものは基金の方でやってもらえばいいではないかというのも、確かに一つの考えではあると思う。ただ、いずれにしても、入通院中に介護が必要になった方、それから後遺障害として認定された場合に将来の介護が必要な方と、2つの問題をどのように制度設計するかということだと思う。
(構成員)それは、おっしゃるご趣旨は分かるが、やはり認定される前のところというのは、自立支援法とか保険法というのがあるわけですから、そちらでやっていくし、それでもだめというような場合を、私どものこれから書く答申案の中にきちっと書かなければいけないものであるか。そこのところは、ある程度、先ほど言ったセービングクローズのところでやっていけばいいのではないかという感じがするが、しかし、そういうものが実際に出てくるのだろうか。
(構成員)では、ちょっと構成員に質問であるが、例えばお医者さんが、この人は命が危ういかどうか、要するに回復できるかどうかわからないといって、非常に重篤な状態で入院しているというような場合に、障害者自立支援法で付添看護のようなものもやってもらえるのか。
(構成員)それは、結局、それぞれ市町村が判断することになるので、必要性は総合的に判断するということになると思う。
(構成員)それは、この報告書の中できちんと書くべきであるというご趣旨ですが、その点、ほかの皆さんはいかがか。今のような付添介護費は、やはり書くべきだというのがご意見ですか。
(構成員)ほかの公的な給付が受けられればそれでいいが、ほかの公的給付でどうしても不足するような場合には、この被害者補償制度で補償するというような、うまい文句の書き方は、ちょっと今思いつかないが、そういうことを書いていただくわけにはいかないか。
(構成員)分かった。それは、検討する。私の頭の中にある立て方は、そういうものを含めて一時金の中で何とかやってしまって、ある程度そこから出てくるもの、カバーできないものというのは、支援基金なり支援機構というところで、要するに、公的資金ではできにくいというようなものは、救済していくという仕組みの方が、制度として国民の皆さんに提示した場合にわかりやすいのではないか。あれもこれもいろいろと必要、こういうケースがある、だからこれが要るんだということでどんどん入れていくと、早い話がいろいろでこぼこしたようなものができるので、それではこっちも要るだろう、なぜこっちは外したんだというような議論にもなっていくし、制度としてすっきりさせるために、本当は入れるべきものも全部外してしまったというのはあってはならないことかもしれないが、その辺の整理は、もう少し考えさせていただきたいと思うす。また、実際に、我々として考えるべきことだと思う。
(構成員)犯罪被害給付制度との兼ね合いの問題であるけれども、自賠責の水準にできるだけ近づけるということは、もちろんそれで必要なことだし、そのように今までもやってきたし、今回のたたき台でも実質的に自賠責並みの水準に近づけるということであるけれども、自賠責というのはあくまでも保険料による損害賠償制度ということであるのに対し、犯罪被害給付というのは全額国費による給付制度というように、もう制度がそもそも全然違うので、そういう意味で、自賠責と同じような算定方法をとるべきだという点については、これはちょっと違うのではないかと思っている。この点、ぜひご理解いただきたいと思う。
(構成員)今までの議論を聞いて、非常に分かるところもあるが、保険制度とか、いろいろなほかの制度、最近の法律の改正とかにすごく絡んでいるので、先ほど構成員がおっしゃったように、事務局ですり合わせるということをもう少ししていただいたらどうかと思う。大ざっぱな議論をしても、お互いが意地を張り合って議論しているような感じで、構成員はあすの会を背負っているという気持ちでやられますし、構成員も譲れないところは譲れないと思うので、むしろあまりこの議論をしても、何か余計に気まずい感じになってしまうので、私は、今の議論の中で非常にいろいろなことがよくわかった面もあるけれども、今回の我々の議論の中で一体何が射程距離にあるのかということを、やはりはっきりしないといけないのではないかという気がする。
 したがって、先ほど自賠責並みということで少しミスリードがあって、自賠責並みに引き上げるということは、自賠責のような同じようなシステムでやるという意味では全くないので、自賠責ということに引き上げて、我々の検討会での、先ほどから議論があるように被害者に役立てていただけるような、優しいということを言われたけれども、そういう議論をすべきなので、しかも、それは犯罪被害者に限って要りますし、また同時に、法体系としては、被害者というのはいろいろな被害者の方がおられるわけですから、我々だけが突出して、公平な負担を踏み外してまでいろいろな議論はできないということは原則としてあるわけなので、そういう意味で、少し今までの議論を聞くと、事務局とあすの会、あるいは複数出られてもいいかと思うが、我々も今日原案を見たところなので、特に意見をどんどん述べるということはできないので、少し具体的にすり合わせていただいて、食い違いがあるところは食い違いがあるという形で出していただくのも結構だと思うけれども、そういう議論をしていただけないかという気がする。
 それからもう一つ、私の考えであるけれども、今回の場合は、これまでの犯給法の流れからいくとという限定つきであるが、制度というのはつくるときに複雑につくってしまうと、後で余計いろいろなことが出てくるので、制度をつくり上げるときは、できるだけ簡潔に、国民の理解を得やすいようにつくっておかないと、かえって制度自体が危ういことになるので、そういう意味で、犯給法の精神を生かしながら、そういう形で一時金を自賠責並みにつくり上げて、そこで抜け落ちる部分については、恐らく、構成員は自分で「荒っぽい」とおっしゃっているけれども、実はこれは理由があってこういう形でつくられているわけで、しかも、この構成員の私案には、例外的な場合の救済制度ということが出ていて、ここが実は大きな問題があるのではないか。つまり、制度設計するときはシンプルにつくって、しかも、そこから抜け落ちる部分については、個々の本当にお気の毒な被害者に優しい制度設計をつくるということが望ましいのではないか。
 そういう意味で、先ほどの構成員のおっしゃっていることは、この部分でかなりいける部分があるので、構成員は制度設計の中にそれを入れろとおっしゃるけれども、恐らくほかの法律とか、あるいは保険制度との関係で無理であれば、この中でまた実質的な、そういう例外的な措置をつくり上げるべきだと思う。恐らくこの例外的措置というのは、むしろここで大事なことがいっぱいあるのではないかという気がしている。
(構成員)「慰謝料を除く」というところが、どうして慰謝料を除くのか。確かに、心の痛みというのは金額にしにくいものであるが、犯罪被害者にとっては、これは絶対切り離せないものだと思っているけれども、一時金の水準の決定に当たって除くということになっているが、教えていただきたい。
(構成員)これは、慰謝料というものを経済的支援の一つの中身に入れると、慰謝料というのはあくまで損害賠償というような問題になったときに、そこで出てくる概念であって、経済的支援を行う場合には、国が公費で出すわけで、それは何も慰謝ではないのであって、社会的連帯に基づく給付というような言い方だったらいいのかもしれないが、そういう要素が当然、今度の一時金の中には入ってくるわけである。これはあくまで私の考えですけれども、慰謝料という項目を給付の内容に入れるというのは、ちょっとなじまないのではないかと思ったので、慰謝料は落としてある。それは、やはり慰謝料という以上は加害者との間でやっていく話であって、その慰謝料に当たるべき部分は、精神的な苦痛に対する社会的連帯、気の毒な目に遭ったということに対する給付であるというような形に言いかえてやっていくべきものではないのかなと思うので、慰謝料という言葉は給付の内容には入ってこない方が、一つの給付金の性格を考える場合にいいのではないか。だから、精神的な苦痛とか、そういうものに対して、本当にお気の毒な目に遭った、どうか立ち上がってくださいという趣旨が入っていないという意味ではない。慰謝料という言葉であらわされる金員というものを、この経済的支援の給付金で賄うという立て方は、ちょっととれないのではないかというのが、私の考えである。精神的なものに対する気持ちというものが、全然ないというわけではない。当然それは入っているということだと思いますけれども、社会連帯に基づく見舞金という言い方からして、それはどうもよくないという話が、今、ずっと出ていますけれども、ある意味ではお見舞金的な趣旨というのは、当然この犯罪被害給付金の中には入ってくるんだと思う。ただ、今の給付金の場合は、見舞金の域を確実に出て、もっと別の要素が全部入ってきているわけであるが、やはり見舞金という要素もある。その見舞金という要素は、よく見てみれば、加害者との関係では慰謝料と言われる性質のものが、それにかわって入っているのではないかと私は考えている。
(構成員)犯罪被害者でこの対象になる人たちというのは、ほとんどが何の落ち度もない被害者だと思う。そうすると、慰謝料という言葉を使うと加害者との関係が出てくるわけであるが、そうしたら、その何の落ち度もなく被害に遭ったという心の痛みの部分に関しては、言葉をかえて何らかのものがまた制定されるのか。
(構成員)犯罪被害者等給付金の一番の原点のところにあるのは、社会連帯に基づくお見舞いをするという発想があって、ある程度、出ているわけである。ただ、その後、何遍かの改正を重ねるごとに、今はもう見舞金という性格が完全に変わって、休業補償的なものもある程度入っているし、ということで、今の給付金の性格は変わってきているけれども、原点となるところには、それは今でもあるのではないだろうか。本当にお気の毒という、その社会連帯の気持ちのあらわれの一環としてお見舞いするという性格のお金というのは、当然入っているんだろうと思う。
 だから、それを慰謝料と言うか言わないかという話になるのかもしれないけれども、慰謝料という言葉は、加害者が被害者に対して何かやって、それに対して精神的な償いをしなければならない場合に出てくる言葉ではないか。そうであれば、ちょっとその慰謝料というのは入らない方がいいのではないかというように考えたが、これは恐らくまた別の意見の方もおられるのかもしれない。
(構成員)構成員がおっしゃっている意味というのは、すごく大きな意味があると思うし、私も何とか精神的な損害についても、何らかの措置というのは必要だというふうに考える。しかし、法律家としてはという言い方で申しわけないけれども、犯給法の制定当時、1980年、昭和55年前後の議論を見ても、慰謝料を入れるかどうかというのはやはり大きな議論で、重要な問題だったようで、1個の重要な問題だと思う。しかし、結局は入れられなかったという経過があった。
 それからもう一つ、諸外国を見ても、慰謝料という形で入れておる国があるのかどうかということであるが、これは全くないわけではないかもしれないが、大勢ではないと思う。
 それはなぜなのかということであるが、2つ理由があると思う。1つは、慰謝料という場合は、やはり国が被害者にやるというよりは、加害者が被害者に払うというのが、法律の大前提だったと思う。そういう点で、国が被害者にやるという成り立ちがないのではないかということが1つと、それからもう一つは、国が犯罪被害者の方に慰謝料を払うという場合に、ではどういう算定の基準があるのかということについては、極めて難しいところがある。
 そういう意味では、今の犯給法自体がもっと自賠責並みになるという意味は、やはりそういう精神的な損害についても、国が何らかの補償をしましょうという、小さい部分かもしれないけれども、含まれていると思う。したがって、精神的な損害に対してということについては、特にテロの場合、それは本当におっしゃるとおりだと思うけれども、なかなか制度設計は、各国でもできていないし、我が国でもしにくいのではないかというふうに思う。
 以上である。
(構成員)私たちの方でも、一応、慰謝料は除いて、逸失利益を中心にして考えている。
 ただ、その場合に、やはり現在の逸失利益の計算の仕方が、将来の被害を受けた方の就労可能年数と、それに伴うライプニッツ係数、そういうものを基本にして、そして平均的な賃金というものを基本にして計算するという方法をとっている。交通事故の政府保障事業の保障の仕方もそういう方法でやっていて、今後の新しい一時金の補償の仕方として、やはりそのような稼働期間と平均賃金といいますか、そういうものをもとにした一時金の算定方法、そういう方法をとっていただきたいというのがこちらの案である。
 それで、自賠責保険であるが、自賠責保険そのものの計算の仕方と政府保障事業の計算の仕方が違っていて、政府保障事業の場合には、ほかの給付があった場合にはそれを差し引くという条文になっているので、そういう点では、ちょっと後の併給調整のところと関連するとは思うけれども、それは当然、併給調整は考えなければならないだろうと思うが、一時金の仕組みは今言ったような形にしていただきたい。
(構成員)これは、先ほど構成員からもお話がちょっと出たけれども、死亡の場合の逸失利益は3,000万円出すとか、そういうところの数字の算定の突き合わせは、もう少し事務方と詰めた上で、ここでやらずに、もうちょっと構成員との間で話を詰めたいと思う。この点、一番の問題は、今言ったどの項目を入れるのか入れないのかという話と、その額をどうするのかということである。これは、先ほど申しましたように数字に関することであるから、ここでやるよりも、別途やってまいりたいと思う。
 ほかに何かあるか。
 税制上の優遇措置については、前回も異論があったのであるけれども、この場合は、財務省の方からの資料にあったように、税制上の優遇措置を設けることは、なかなか困難ではないかという認識を私は持っているので、この点についてはこういうことで整理させていただいてよろしいか。税制問題については、これは構成員から出た話であるが、強いサポート、どうしてもやらなければならないという議論は、この会ではちょっと出なかったと思うので、一応、整理項目の中に入っているが、これは困難であるという形で整理させていただきたいと思う。
 あと、例外的な場合の救済措置というものについては、これは今までも何度も出ているし、構成員からこの項目の意味というのもお話があったが、私も制度設計を1つした上で、ちょっと抜け落ちてくる部分をどうするかというのは、こういう拾い方をしてやっていく手法というのが、ある意味では一番わかりやすいのではないかと思う。これは中に入れて、あれは入る、これは入らないというようなことをやっても、制度自体がごちゃごちゃしてしまうということもあるので、どこまでやるかということはこれから議論があるが、私は、こういう形で支援機構であるとか支援基金というようなものを設けて、その基金なり支援機構なりの運用として必要な給付をして、先ほどから出ているお言葉であれば、被害者に温かい感じを持たせる給付というのは、むしろこちらの方でいろいろやっていくというところがあっていいのではないのかなということであるが、これをどういう形でつくっていくのか、何も書かなくては、どういうことをやるのかわからないというようなことでも困るので、ある程度、この点については必要な支援機構あるいは支援基金の構成なり任務なり、あるいはその活動なりというようなものはきちんと書かなければならないと思う。これは先般来お話も出ているように、ほかの検討会との関連もあるし、ある意味ではすぐれて政策判断を要する問題でもあるので、また自民党なり、そういう先生方ともお話をしながら成案を得たいというふうに考えているところであるが、ここではこういう公的資金に基づく救済からなかなか入りにくいようなものは、こちらで救済していこうという仕組みとしてこういうものをつくるということについては、大体ご同意いただけるということで進めていってよろしいか。
(構成員)それで、今日、構成員から出された資料2の中のやり方としては、これは重症病給付金を、もし120万円と想定したら、105万円分ぐらいは休業補償で一時金とは別に見たらどうだろうかという新たな提案をしてくださっているわけで……
(構成員)これは、医療費である。こういうものとは別にということである。
(構成員)そうであるか。だから、そういう一時金とは別の形で、休業補償の点については設けていただけるということか。
(構成員)いや、私の案としては、重症病給付金対象者というものについては、治療期間が大変長期にわたるというようなことがあった場合には、医療費の問題とは別に、新たに休業損害を考慮して一定の支給を行う。この金は、当然、公的資金といいますか、中で見るというつもりであるけれども、それでもまだちょっと落ちてくるようなものがあった場合には、基金の方に回っていく、こういう整理をしているつもりであるが。
(構成員)今、構成員から、休業補償の話が出たけれども、休業補償については、さっき私も申し上げたが、基本的に健康保険とか国民健康保険で、一応、制度としてはあって、業務外の事由による傷病のために休業した場合には、休業の4日目から最大1年6カ月間、標準報酬日額の60%の休業補償が出る―傷病手当金と呼ぶようであるけれども―というふうになっているわけで、新たに休業補償の制度を犯給の制度に関連してつくる場合に、今申し上げたような制度との関連、位置づけ、整理、こういったものが必要になるだろうというふうに思っているので、そういう点についてもご議論いただければ非常にありがたいと思う。
(構成員)今までのところで、2のところまでが終わるわけであるが、何かこの際、ご発言いただくということはあるか。経済的支援の手続、給付方法等については、今日はちょっと進めなかったので次回にしたいと思うが、今までのところで何かあれば、どうぞ。
(構成員)話を蒸し返すようで申しわけないけれども、税制上の優遇措置には、物を盗まれたりしたとき、物損控除というのがある。しかし、体を痛めつけられて収入が減ったというときには、例えば障害逸失利益みたいな感じになって、その年の控除額を10万円とか20万円と設定するという、私がこの前お話ししたのは、翌年のということだったが、実際言いたいことはそうではなく、働けなくなったがために、全体の課税対象額から控除額を例えば10万円とか20万円とか、そういう枠をつくるということはできないかということである。
(構成員)そういう場合は所得から控除されるのではないか。
(構成員)そのときのその対象額である。それから控除されるというのはないか。
(構成員)今の点は、どうだろうか。そういう場合にはいろいろと、収入が減るわけであるが。
(構成員)収入が減ったことに対してではなくて、課税対象額は減るけれども、その課税対象額の中に、控除枠というのができないかということである。例えば扶養控除とか、控除の対象がいろいろあって、その中に、犯罪被害によって身体を傷つけられたという、その犯罪被害に遭ったということの控除枠である。
(構成員)収入が減ったら当然、その年の収入は減っている。減った収入に対して税金はかかってくるから、その減ったという差額は、当然その分は税金がかからない。
(構成員)差額ではなくて、例えばその人が年収100万円だとして、被害に遭ったがために80万円になったとする。その80万円に対しても、課税される。その課税される80万円の課税対象額に対しても、控除枠を設けてほしい。
(構成員)それは、幾ら引くのか。
(構成員)そんなものはないわけなので、そういうことはできないだろうか。
(事務局)けがを負われた場合は、当然、医療費の控除というのがあるから、その限度で控除がなされる。
(構成員)所得の問題を言っているのだろう。
(事務局)所得税を課税する場合に、医療費が控除されるという制度は既にある。
(構成員)それは当たり前の話である。
(事務局)当たり前であるが、それ以上に、今おっしゃったように何らかの収入の減少だとか、そういう控除に値する本当の資産の減少とか、そういうものがない限りはなかなか難しいのではないかというのが、今までのところの話し合いだと思う。
(構成員)構成員の言うのは、犯罪被害控除枠というのはないのかということである。
(構成員)実際には、物を盗まれたという以上に、体に障害を負わされた方が、もっとダメージは大きいと思うけれども。
(構成員)被害控除といっても、物損控除とか、そういうものもいろいろある。損害があれば、その分だけいろいろ減るし、これは当然、税金にはね返ってくる。それで物損にはね返ってきて、当然、支払い税金は減っている。さらに、控除枠というのをつくる。
(構成員)こういうことではないかと思うけれども、要するに、収入が減るということはいいが、出ていくお金が医療費以外にもたくさんある。例えば、さっき言った交通費だとか何とかと、そういう被害を受けたがために出ていくお金、あるいは体が障害になってしまったためにかからなければならないお金とか、いろいろ目に見えない出ていくお金がたくさんある。そうすると、そういうふだんだったら使わないようなお金を使う。しかし、それを全部、国の補償にお願いしますというわけにはいかない。そうすると、自己負担分というのが相当残っている。だから、犯罪によって、実際にはそういう生活経費が、ふだんの経費よりもたくさんかかってしまっている。だから、そういうものを税金の控除対象にということなのではないか。
(構成員)そうである。
(構成員)分かった。ということで、1回、国税庁の方にそういう仕組みというのが可能であるかというのは聞いてみる。難しいのではないのかというのはあるけれども、医療費は控除するし、いろいろあるわけであるから、それを被害者控除でやれということであるか。被害者控除枠というのをつくれということであろう。
(構成員)そうである。物損だけではおかしいのではないかと思うわけである。
(構成員)分かった。それは聞き合わせてみるが、難しいという感じはする。何らかの形でもう少し控除の中に入れられるものが、犯罪被害の中に何かあるのかどうかということであるか。だから、犯罪被害者控除枠というのをつくるというのは、難しいというのはあるかもしれないが、実質的に、今、医療費が控除されるとか、当然、犯罪被害に遭ったから医療費がかかる。それは控除するというのはある。だから、それ以外に構成員がおっしゃるような精神的なことで、やっていたものを控除する。実質的にそういうものが何か項目としてあるのかどうか、聞き合わせてみたいと思う。
 それでは、大分時間も超過したので、2のところまで終わったということで、次には3の経済的支援の手続、給付方法等に入るということにして、本日の討議はこの程度にしたいと思う。



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