第17回基本計画策定・推進専門委員等会議 議事録

開催要領

日時:平成27年4月28日(月)午後2時00分~午後4時30分
場所:中央合同庁舎8号館8階 特別大会議室

出席者

「基本計画策定・推進専門委員等会議」
議長 椎橋 隆幸 中央大学大学院法務研究科教授
  瀬川 晃 同志社大学法学部教授
  小西 聖子 武蔵野大学人間科学部教授
  中曽根 えり子 (公益社団)にいがた被害者支援センター理事・支援局長
  森山 博 弁護士
  川出 敏裕 東京大学大学院法学政治学研究科教授
  中島 聡美 (国立研究開発法人)国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所
成人精神保健研究部犯罪被害者等支援研究室長
  渡邉 保 犯罪被害者遺族
  安田 貴彦 内閣府犯罪被害者等施策推進室長
  及川 京子 内閣府犯罪被害者等施策推進室参事官
  沖田 芳樹 警察庁長官官房総括審議官
  野川 明輝 警察庁長官官房給与厚生課犯罪被害者支援室長
  羽田 翔 総務省大臣官房企画課課長補佐
  福原 道雄 法務省大臣官房秘書課政策評価企画室長
  徳久 治彦 文部科学省大臣官房総括審議官
  坂本 裕一 厚生労働省政策統括官付社会保障担当参事官室室長
  舟本 浩 国土交通省総合政策局政策課政策企画官

議事次第

  1. 開会
  2. 犯罪被害者の精神的被害の回復に資する施策に関する報告書について
  3. 論点についての検討②
    • 被害が潜在化しやすい犯罪被害者等への支援
    • 被害児童に対する国費による専門的治療等
    • 犯罪被害者等に対する中長期的支援
  4. その他
  5. 閉会

配布資料

資料1-1 犯罪被害者の精神的被害の回復に資する施策に関する報告書について
1-2 犯罪被害者の精神的被害の回復に資する施策に関する報告書 概要
1-3 犯罪被害者の精神的被害の回復に資する施策に関する報告書
資料2 被害が潜在化しやすい類型について(内閣府)
資料3 「被害が潜在化しやすい犯罪被害」への警察の取組状況と今後の方針について(警察庁)
資料4-1 日本司法支援センター(法テラス)の犯罪被害者支援業務(法務省)
4-2 総合法律支援法の一部を改正する法律案の概要(法務省)
4-3 法務省の人権擁護機関が行っている人権相談(法務省)
資料5 「被害が潜在化しやすい犯罪被害者等への支援」への取組状況及び今後の方針(文部科学省)
資料6 「被害が潜在化しやすい犯罪被害者等への支援」の取組状況及び今後の方針(厚生労働省))
資料7 「被害児童に対する国費による専門的治療等」への取組状況及び今後の方針(文部科学省)
資料8 「被害児童に対する国費による専門的治療等」の取組状況及び今後の方針(厚生労働省)
資料9 平成21年度 犯罪被害類型別継続調査 調査結果報告書(抜粋)(内閣府)
資料10 「犯罪被害者等早期援助団体における中長期的な支援」の充実のための警察の取組状況と今後の方針について(警察庁)
資料11 「犯罪被害者等に対する中長期的支援」への取組状況及び今後の方針(文部科学省)
資料12 「犯罪被害者等に対する中長期的支援」の取組状況及び今後の方針(厚生労働省)
資料13 有識者構成員からの質問・意見
13-1 中島構成員からの質問・意見
13-2 性暴力被害者のための支援情報ハンドブック「一人じゃないよ」Webダウンロードのご案内(中島構成員)
13-3 一人じゃないよ あなたのこれからのための支援情報ハンドブック(中島構成員)
13-4 森山構成員からの質問・意見
資料14 渡邉構成員提出資料
資料15 小西構成員提出資料
参考資料 男女間における暴力に関する調査報告書(概要版)

議事内容

  • 椎橋議長 本日は、お忙しいところを、また大変暑い中を御参集いただきまして、ありがとうございました。
     ただ今から第17回「基本計画策定・推進専門委員等会議」を開催いたします。
     まず、本日の議事及び配付資料について、事務局から説明をお願いします。
  • 内閣府犯罪被害者等施策推進室参事官 事務局でございます。
     それでは、お手元の議事次第を御覧下さい。
     本日の議事は大きく2点ございます。
     まず、1点目は「犯罪被害者の精神的被害の回復に資する施策に関する報告書について」でございます。これに関する資料を資料1-1~1-3としてお配りしております。
     議題の2点目は「論点についての検討②」でございます。本日は「被害が潜在化しやすい犯罪被害者等への支援」「被害児童に対する国費による専門的治療等」及び「犯罪被害者等に対する中長期的支援」の3点について御議論いただくこととしております。  「被害が潜在化しやすい犯罪被害者等への支援」に関する省庁側の資料として資料2~6、「被害児童に対する国費による専門的治療等」に関する省庁側からの資料として資料7及び8、「犯罪被害者等に対する中長期的支援」に関する省庁側の資料として資料9~12をそれぞれお配りしております。
     これらの論点につきまして、中島構成員及び森山構成員から事前に御質問、御意見をいただいておりまして、これらを資料13-1~13-4としてお配りしております。
     また、渡邉構成員から御提出のありました資料を資料14としてお配りしております。こちらにつきましては、論点の検討の後に渡邉構成員から御説明をいただきたいと思っております。
     さらに、本日の会議への御出席を最後に委員を御退任されます小西構成員から、今後の犯罪被害者支援に望むこととして全般的な御意見をいただいておりまして、これを資料15としてお配りしております。
     最後に、参考資料として、男女間における暴力に関する調査報告書の概要版をお配りしております。
     事務局からは以上でございます。
  • 椎橋議長 ありがとうございました。
     それでは、早速、議題の「犯罪被害者の精神的被害の回復に資する施策に関する報告書について」に入りたいと思います。
     まず、私のほうから、簡単に今までの経緯について説明させていただきたいと思います。
     第2次犯罪被害者等基本計画におきまして、カウンセリング等心理療法の費用の公費負担についての検討という項目が盛り込まれまして、これに基づいて平成23年6月から平成25年1月までの間、犯罪被害者等に対する心理療法の費用の公費負担に関する検討会において検討がなされました。そして、平成25年1月に検討会において取りまとめが行われました。その中で、心理療法等に係る犯罪被害者等の自己負担を軽減する上で公費負担制度の整備の必要性を認めつつ、その法制度整備に当たり、制度の対象として相当と認められる心理療法等の範囲を明らかにすることが不可欠であるとされまして、研究会の設置が提言され、推進会議に報告されたところでございます。
     これを受けまして、警察庁において、平成26年3月、犯罪被害者の精神的被害の回復に資する施策に関する研究会が立ち上げられて検討が重ねられました。そして、このたび研究会における報告書が取りまとめられましたことから、その概要について事務局の警察庁から御説明をいただきたいと思います。
     それでは、警察庁のほうからよろしくお願いいたします。
  • 警察庁長官官房給与厚生課犯罪被害者支援室長 警察庁犯罪被害者支援室の野川と申します。  ただいま御紹介にありました犯罪被害者の精神的被害の回復に資する施策に関する報告書につきまして御説明いたします。資料1-1を御覧下さい。
     当庁におきまして、この1番に記載しております経緯によりまして、昨年3月から研究会を開催してまいりましたが、今月2日にその検討結果が報告書として取りまとめられました。
     資料1-2を御覧下さい。
     この2段目になりますけれども、議論の前提といたしまして、精神的被害を受けた犯罪被害者等が利用できる既存の各種制度について確認するという流れになっておりまして、資料に記載の事項が掲げられております。
     続きまして、犯罪被害者に対する心理療法の現状といたしまして、医師や臨床心理士等の心理職を対象として、昨年夏に実施したアンケート調査の結果が示されております。調査結果からは、医師による心理療法等は保険診療が大半であるが、臨床心理士等の心理職による心理療法等の経済的負担が高額となっていること、経済的負担がネックとなり通院を止めるなどとした犯罪被害者等が見られること、大都市圏で診療等を行っている医師、臨床心理士等が多く、地域間格差が顕著であること等の実態が明らかとなった旨が述べられております。
     最後に、犯罪被害者等の精神的被害の回復に資する施策の在り方として、以上を踏まえました研究会の提言が示されております。ここでは犯罪被害者等が心理療法等をより受けやすくするため、現在の各種制度の拡充が必要であることを確認し、犯罪被害者等の自己負担の各種軽減方策を検討した上で、具体的には、一部の都県警察で運用されているカウンセリング費用の公費負担制度は犯罪被害者にとって利用しやすいものであり、警察庁の支援と関与の下でこれを全国展開していくことが望ましく、また、同制度の周知や、心理療法等の実施者の養成を強化することを期待するといった内容の提言が出されました。報告書の全体版は次のページの1-3以降になっております。
     本件の説明は以上でございます。
  • 椎橋議長 ありがとうございました。
     座長を務められた中島構成員がお見えになりましたので、今の御報告は多分全部把握しておられるのではないかと思いますので、補足がございましたらお願いしたいと思いますが、いかがでございましょうか。
  • 中島構成員 遅れまして大変申し訳ございません。
     今お話しいただいたように、犯罪被害者の精神的回復に関する公費負担についての要望は非常に強いものがありました。ただ、いろいろな背景がある中で一番被害者の方にとって利用しやすい近くの例えば医療機関であるとかカウンセリング機関に行ける体制としては、既に行われている都道府県でのカウンセリング費用の負担が一番利用しやすいのではないかということになりました。これについては、まだ現状ではそんなに拡充されていないので、これを全国展開していくというところで、まず第一歩として踏み出せたらよいよいのではと議論がまとまったと理解しております。
     以上です。
  • 椎橋議長 ありがとうございました。
     警察庁の方からの説明と、座長を務められた中島構成員からの補足説明がございました。ただ今の御説明につきまして、御質問等がありましたらお願いしたいと思います。
     小西構成員、どうぞ。
  • 小西構成員 1つ質問。制度を拡充していくことということですが、何か具体的にどういうようにしていくか。今、全都道府県にとおっしゃいましたけれども、ほかにも何か具体的な拡充のプランがあったら少し教えていただきたいと思います。
  • 椎橋議長 いかがでしょうか。検討の過程でほかの方法等があったらということでしたけれども、どちらにお伺いしたらよろしいでしょうか。警察庁はいかがでしょうか。
  • 警察庁長官官房給与厚生課犯罪被害者支援室長 警察庁では、先ほど報告書の中で示された方向性で検討を進めている段階で、現段階では、報告書の範囲で考えているところでございます。
  • 椎橋議長 小西構成員、よろしいですか。
  • 小西構成員 はい。なるべく早くその方向で考えていただければと思います。
  • 椎橋議長 続きまして、森山構成員、どうぞ。
  • 森山構成員 臨床心理士の各都道府県警察における採用状況について今後の予定というか、現在の動向というか。宮城県においては、今回の入学式に臨床心理士が入学するということで極めて珍しいのですけれども、こういう傾向が今後も続くのかなという期待があるのですが、どういうことがあるでしょうか。
  • 椎橋議長 今の点はいかがでしょう。臨床心理士の採用の拡大という問題でしょうか。
  • 警察庁長官官房給与厚生課犯罪被害者支援室長 申し訳ありません。今年度の状況は調査が未了でございまして、昨年ベースの数字しか今手元にございませんので、また確認をさせていただきます。
  • 椎橋議長 わかりました時点で御報告をお願いしたいと思います。
     ほかにいかがでしょうか。
     まだまだ犯罪被害者が心理療法を受ける上では経済的負担が大きいということで、実態調査も行った上で、こういう言い方をしたら大変失礼なのですけれども、現在行っている警察等によるカウンセリング費用の公的負担制度、これは効果もあるし、ある意味でやりやすい。これを拡充していこうと、全国展開しようということだと思うのです。特に、これ以上御質問とかございませんか。  それでは、カウンセリング費用の公的負担制度とその全国的展開は大変結構なことだと思いますので、今後、警察庁を始めとして関係各省庁が連携して早期にその実現を図っていただきたいと思います。この最初の論点については、このくらいにさせていただきたいと思います。
     続きまして「被害が潜在化しやすい犯罪被害者等への支援」ということに移りたいと思います。
     これにつきましては、内閣府、警察庁、法務省、文部科学省、厚生労働省から、それぞれ御説明をいただきたいと思います。
     まず、内閣府から、この論点の検討の前提となる被害が潜在化しやすい類型について御説明をいただきたいと思います。
  • 内閣府犯罪被害者等施策推進室参事官 内閣府でございます。
     資料2の「被害が潜在化しやすい類型について」を御覧下さい。この資料は、本論点の検討の前提としまして、被害が潜在化しやすい類型について、ある程度共通認識を持っていただければと思いまして、小西構成員や中島構成員からもアドバイスを受けつつ、内閣府において作成したものでございます。
     被害が潜在化しやすい類型について、犯罪被害者の属性、犯罪類型、加害者と被害者の関係や被害者を取り巻く状況等から被害が潜在化しやすいと思われる類型及びその他に分類した上で、幾つかの具体例を挙げるとともに、これらが潜在化しやすい理由を簡記させていただいております。
     被害が潜在化しやすい犯罪被害者の属性の例としまして、子供、女性、障害者、高齢者、性的マイノリティ、外国人の6つを挙げております。
     また、被害が潜在化しやすい犯罪類型の例といたしまして、性犯罪・性暴力、DV、ストーカー・つきまとい、児童虐待、児童買春・児童ポルノ、人身取引の6つを挙げております。
     また、加害者と被害者の関係や被害者を取り巻く状況等から被害が潜在化しやすいと思われる類型の例としまして、職場関係や学校関係、家庭、交際相手等を挙げております。また、その他として、被害を潜在化させやすくする要因を挙げているところでございます。
     なお、本日参考資料としてお配りしております、平成26年度に内閣府男女共同参画局が実施いたしました男女間における暴力に関する調査報告書の概要版について若干説明させていただきます。この調査では、男女間における暴力ということで、暴力等について非常に広く捉えているところでございますが、調査結果といたしまして、配偶者や交際相手からの暴力、異性から無理やりに性交された場合等には被害を相談しなかった割合が高くなっているというところでございます。
     内閣府からは以上でございます。
  • 椎橋議長 ありがとうございました。
     ただ今の内閣府からの説明を念頭に置きつつ、引き続き関係省庁から御説明をいただきたいと思います。
     まず、警察庁の方からお願いいたします。
  • 警察庁長官官房給与厚生課犯罪被害者支援室長 警察における、被害が潜在化しやすい犯罪被害への取組状況と今後の方針について、概要を説明いたします。
     資料3をお願いいたします。
     警察では、被害が潜在化しやすい犯罪被害への取組として、まず、資料の1(1)に記載のとおり、被害者の特性に応じた相談窓口として、ストーカー・DV事案被害者、被害少年、人身取引被害者、性犯罪被害者等のための相談窓口・体制を設け、被害者が相談しやすい環境等の整備に努めているところでございます。
     2枚目の(2)に記載のとおり、警察の総合的な相談窓口といたしまして、全国の警察本部及び警察署の相談窓口や、全国統一番号の警察相談専用電話である「♯9110」番を運用しております。さらに、面接や電話での相談が困難な方に対応するため、メールやファックスでの相談も受け付けているところでございます。
     警察では、こうした相談窓口の整備のほか、同じページの2の(1)に記載のとおり、被害者の手引を配付するなどして犯罪被害者への情報提供に努めております。犯罪被害者の中には、警察に被害申告をしてもその後の手続等に対する不安から、刑事手続上の届出をためらう方もいらっしゃるということが想定されますが、こうした情報提供を実施することによって、犯罪被害者の不安感を少しでも和らげることにつながり、警察への刑事手続上の届出を促すことが可能となるなど、犯罪被害の潜在化の防止にも効果があるものと考えております。このほか、警察では(2)(3)に記載した取組も実施しているところでございます。
     また、その被害の潜在化を防ぐためには、被害を認知する立場にある関係機関との連携も重要だと認識しております。この観点から、(4)に記載しておりますとおり、ストーカー、DV事案、次のページにまいりまして、児童虐待等の虐待対策、いじめ対策、悪質商法、振り込め詐欺対策、人身取引対策、性犯罪対策等の各種対策において、関係機関・団体との連携等の取組を推進しているところでございます。警察では、今後も引き続き以上の取組を推進してまいりたいと考えておりますけれども、資料に記載した各種の新たな取組の実施により、犯罪被害の潜在化の防止に一定の効果が期待できるものと考えております。
     以上でございます。
  • 椎橋議長 どうもありがとうございました。
     続きまして、法務省の方からお願いいたします。
  • 法務省大臣官房秘書課政策評価企画室長 法務省大臣官房秘書課政策評価企画室長の福原でございます。本来であれば、専門委員である官房審議官から御説明をすべきところですけれども、国会対応につきまして、私から御説明をさせていただきます。
     法務省からは、日本司法支援センター、通称法テラス及び人権擁護機関における取組状況について御説明いたします。
     まず、右上に資料4-1と書かれた資料を御覧下さい。
     被害が潜在化しやすい類型を含めた被害者に対し、法テラスにおいては様々な業務を行っております。被害者からサポートダイヤルや法テラスの地方事務所等に問い合わせがありますと、法テラスは刑事手続や損害賠償等の法制度を紹介したり、被害者支援を行っている機関・団体の相談窓口を案内するといった情報提供を行うほか、弁護士による相談や支援が必要な場合には、被害者支援の経験や理解のある弁護士の紹介を行っております。
     また、さらに進んで、弁護士による支援の段階においても、経済的に余裕のない被害者に対しては弁護士費用等に関する援助制度が設けられております。刑事裁判については、裁判所から刑事裁判への参加を許可された被害者参加人に対し、弁護士費用等を国で負担する国選弁護制度があり、法テラスはその弁護士費用等の支払いや、被害者参加人が公判等に出席した際の旅費や日当等の支給を業務として行っております。
     民事手続についてですが、法テラスは経済的に余裕のない方一般を対象として民事法律扶助制度を利用した無料法律相談や弁護士費用等の立替えを行っているほか、刑事手続や行政手続においても日弁連からの委託により行っている犯罪被害者法律援助制度により経済的な支援を行っています。
     次に、資料を2枚おめくりいただきまして、資料4-2と書かれている資料を御覧下さい。法テラスの根拠法である総合法律支援法の改正案を今国会に提出しております。まさに、被害が潜在化しやすい類型に当たるストーカー、DV、児童虐待の被害者を対象に、資力を問わずに被害の防止に関して必要な法律相談を受けていただけるようにすることを予定しております。
     続きまして、人権擁護機関の取組を御説明いたします。
     資料は横になりますが、資料4-3と書いてある資料を御覧下さい。法務省の人権擁護機関では犯罪被害者からの相談を含め、あらゆる人権問題に関する相談を様々な窓口を通じてお受けしています。特に、被害が潜在化しやすい社会的弱者と言われる方々につきましては、専用の相談電話等を設けるなどして相談に応じております。例えば子供につきましてはフリーダイヤルの専用相談電話である「子どもの人権110番」を設けているほか、「子どもの人権SOSミニレター」という料金受取人払いの便箋兼封筒を全国の小中学生全員に配布して気軽に相談できるような取組を行っています。なお、森山構成員から、犯罪被害についての人権相談に関し事前に御質問いただいておりますのでお答えいたします。
     人権相談は、全体で年間約25万件をお受けしていますが、人権相談の統計では、例えば夫の妻に対する暴行虐待、親の子に対する暴行虐待、ストーカー被害など、相談の内容別の件数を集計しており、その中には犯罪被害と考えられる相談も含まれているものと考えられますが、犯罪被害自体についての相談件数の統計は取っておりません。
     相談後の対応ですが、人権相談等で人権侵害の疑いのある事案を認知した場合には、人権侵犯事件として調査を行い、事案に応じた適切な措置を講じることとしています。この件数も種類別の統計を取っていますが、犯罪被害に関する相談を受けて人権侵犯事件として調査を行った事件の統計は取っておりません。
     潜在化を防ぐことのできた事例に関する統計はございませんが、具体的事例として例えば平成25年に人権擁護機関が救済措置を講じたものの中には、中学生から、母親の再婚相手から性的虐待を受けているとの内容の「子どもの人権SOSミニレター」が法務局に送付され、法務局では直ちに児童相談所に通告し、学校、児童相談所と対応を協議した後、当該生徒は当日中に児童相談所に一時保護されたという事案等がございました。法務省の人権擁護機関においては、犯罪被害を含め、人権侵害が潜在化しやすい方々の声を聞き取るため、今後とも相談窓口の周知広報等に努めてまいりたいと考えております。
     法務省からは以上です。
  • 椎橋議長 ありがとうございました。
     続いて、文部科学省の方からお願いいたします。
  • 文部科学省大臣官房総括審議官 文部科学省でございます。
     資料5でございます。被害が潜在化しやすい犯罪被害者等への支援の取組なり今後の方針につきまして御説明をさせていただきます。
     「1 取組状況」につきましては、そこの資料にございますように(1)で施策番号が3つあります。165、166、188という形で、関係機関との連携をしっかりするというようなこと。(2)で、学校でいうと道徳教育に相当するものでございますが、214で生命のかけがえのなさに関する教育を推進する。また(3)でございますが、215という形で犯罪被害者等の人権問題も含めた人権教育の推進、この3点で対応いたしていくということでございます。
     青い枠の中でございますけれども、まず(1)でございます。学校にスクールカウンセラーという形で、臨床心理士さんを始めとする臨床の専門家の方に入っていただいて、学校の教員とチームを組んで子供たちの教育相談に当たる。そういう中で、こういう犯罪被害のことにつきましても相談内容の中に入ってくるということでございましてスクールカウンセラーを配置しているところでありますが、後ろのページを御覧いただければと思います。
     スクールカウンセラーの配置状況という形で、平成7年からスクールカウンセラーを国費、国の経費でもちまして各学校に配置するという事業を始めておりますけれども、平成25年度のところでございますが、数字が見にくくて恐縮でございます。一番下が小学校のところでございますが、小学校の配置校数が1万246、中学校が8,404、その上、高等学校が1,454、上に特別支援学校等々が数十校という形に配置されているということで、文部科学省としては、子供の相談に第三者的な立場で応じるスクールカウンセラーさんをできるだけ多くの学校に配置いたしたいと思っているところでございますけれども、もちろん国費なり地方公共団体の経費でもって配置を進めているわけでございますけれども、いろいろ昨今の財政事情等ございまして、そういう中でできるだけ多くの職員を配置するということを進めていきたいと思っているところでございまして、毎年の数字でございますが、この配置率も向上してきているということでございます。
     (2)でございますけれども、先ほど言いました、学校における生命のかけがえのなさに関する教育の推進、これは学校でいいますと小学校、中学校で道徳教育、道徳の時間というのが週1時間ありますけれども、そういう中で生命の尊さについて教える。昨今、いじめによって子供が自殺するという痛ましい事件もございましたけれども、そういう中で子供たちが生命を尊重する、そういうことをきちっと学校教育の中でやっていこうということで取り組んでいるところでございまして、それに関しまして啓発教材を内閣府で作成していただいておりますけれども、その内容とか、道徳教育の指導につきましては、学校の先生方が使うような指導資料を文科省においても作成いたしまして、それを各学校に配付しているところでございます。
     (3)人権教育の推進ということでございますが、そこに文章で書かせていただいていますように、人権教育・啓発に関する基本計画というのを国が定めることになっておりますけれども、それに基づきまして人権教育の推進事業であるとか、研修事業であるとか、指導方法の改善につきましての取組を推進してきているということでございます。
     裏面でございますが、今後の方針ということでございます。これもスクールカウンセラーなり道徳教育、人権教育につきましては、引き続きその配置等を推進いたしたいと考えているところでございます。
     以上でございます。
  • 椎橋議長 ありがとうございました。
     それでは、最後になりましたが厚生労働省の方、お願いいたします。
  • 厚生労働省政策統括官付社会保障担当参事官室室長補佐 厚生労働省でございます。
     被害が潜在化しやすい犯罪被害者等への支援ということで、資料6でございます。
     施策といたしましては(1)~(3)までの3点を挙げさせていただきまして、(1)については児童虐待の早期発見・早期対応、(2)につきましてはDV被害を受けた女性に対する保護と支援、(3)につきましては職場でのセクシュアルハラスメントの防止対策ということで挙げさせていただいております。
     現状の取組状況ですけれども、まず(1)の児童虐待につきましては、児童虐待の潜在化を防ぐため、虐待を受けたと思われるお子さんを発見した場合には、ためらわずに児童相談所へ電話で相談していただけるよう全国共通のダイヤルというものを今設けていまして、そうしたものの周知徹底を図っております。また、市町村におきましても、その全ての乳児家庭を訪問したりですとか、予防接種ですとか健診等の機会を通じて、虐待のリスクが高いお子さんの発見に努めることとしております。
     続いて、(2)のDV被害の関係ですけれども、こちらは何よりも被害に遭われた方には、関係機関間の相互の共通認識ですとか総合調整といったものが必要となってきますので、具体的には、そちらの(2)の箱の3行目に記載しておりますけれども、婦人相談所において警察や福祉事務所等の関係機関との連携を図るために連絡会議を開催したりですとか、または事例の検討会議を開催するとともに、そうした事例集等を作成して関係機関に配布させていただいております。
     (3)の職場でのセクシュアルハラスメントの防止対策でございますが、男女雇用機会均等法におきまして、事業主に対して職場におけるセクシュアルハラスメントの防止のための措置といったものが義務付けられております。また、残念ながら、そうした被害が発生してしまったときには、都道府県労働局に雇用均等室という専門の相談のセクションを設けておりますので、そちらで相談の受付ですとか事業主に対する指導ないし紛争の援助というものを行っております。
     資料6の裏面でございます。それら3つの取組につきまして、今後の方針について記載しております。
     まず、(1)の児童虐待の関係でございますが、こちらは先ほど全国の共通の相談ダイヤルを設けているという話をしましたけれども、現在、非常にダイヤルの桁数が多い状況でして、なかなか番号が覚えられないといった御意見も頂戴しているところでございます。このため、番号を3桁の「いち早く」という意味で「189」という番号に変更いたしまして、今年の7月から運用を開始する予定でございます。
     また、虐待の予防とか早期発見のために、乳児家庭全戸訪問事業というものも市町村で実施していただいておりますので、そうした取組を通じて早期に虐待の発見に努めてまいりたいというように考えております。
     (2)のDV被害でございますが、こちらにつきましては、被害に遭われた方の自立支援について、現在、モデル事業というものを実施しておりますので、その取組の効果について丁寧に検証していきたいと考えております。
     (3)につきましては、セクシュアルハラスメントの防止対策ということで、先ほど申し上げた男女雇用機会均等法に基づく措置について事業主に対して周知啓発を行うなど、必要な対応をとってまいりたいと思います。
     この関係で、事前に森山構成員のほうから御質問を頂戴しておりまして、資料といたしましては、資料13-4というところに記載いただいております。都合4つほど御質問をいただいていまして、御説明が長くなって恐縮ですが、まず1点目の保健婦が潜在化を防いでいる事例についてどの程度あるのかという御質問でございます。
     こちらは大変恐縮なのですけれども、被害が潜在化するのを防いでいるということは結果的に被害が生じていないということですので、厳密にはそうした事例の件数については把握していないという状況です。ただ一方で、そうした保健師の養成所の運営に関するガイドラインというものを局長通知で出しておりまして、その中におきましては、保健師の卒業時の到達目標として、例えば虐待とかDV等といった健康危機に迅速に対応するというものを目標として掲げております。また、保健師の配置についてですが、保健所だけではなく市町村の本庁ですとか病院等ですとか、様々なところで就労いただいていますので、そうした場面においての御活躍というのが期待できるのではないかと思っております。
     2番の医療機関からの情報収集で被害を顕在化する方法が考えられるのかどうかという点ですが、こちらにつきましては、例えば児童虐待ですとか、配偶者からの暴力につきましては、法律におきまして病院とか医師の方がそうした事案を発見したときには、その旨を児童相談所に通告していただいたりですとか、配偶者暴力相談支援センターのほうに通報するというようなことが法律上規定されておりますので、そうした規定を活用しまして連携を図ることによって対応できるのではないかと思っております。
     もう2つでございますが、3番の予防接種を受けられない児童の数と、また、そうした児童が児童虐待を受けているとして対応することが可能なのかということですが、こちらも大変恐縮なのですが、予防接種を受けていない数というものについては正式な統計はこちらでも把握していないのですが、一方で、例えば乳幼児健診、1歳6カ月とか3歳で実施しますが、その際に予防接種を受けているかどうかというものも確認することになっておりますので、もし、そうしたところで合理的理由がなくて受けていないという方がいらっしゃいましたら、勧奨を進めていくという取組を進めていただいております。また、そうした乳児健診等の際に虐待を受けている疑いが発生した場合には、市町村の中で虐待担当のほうに情報提供いただいて連携して対応しているという状況です。
     最後に、乳児家庭全戸訪問事業の状況についてですが、こちらは平成25年4月1日時点におきまして95.3%の市町村で実施しております。この事業につきましては、生後4カ月までの乳児のいる全ての家庭を対象としておりますので、御質問にもありますが、母子家庭と共働き家庭といった家庭も対象となっております。そうした家庭につきましては、お仕事の都合等でなかなか日程がとれないという場合もありますので、事前に日程を調整させていただいて、例えば夕刻ですとか休日に訪問するなどの工夫を市町村ごとにしていただいているという状況でございます。
     以上でございます。
  • 椎橋議長 ただいま各省庁から御説明をいただきました。これからの検討におきましては、御説明をいただいた省庁だけでなく、他省庁が行っている取組に対する御質問や御意見、現行施策の問題点や改善点、さらには新たな基本計画に盛り込むべき具体的施策の提案等について幅広く検討してまいりたいと思います。
     また、事前に中島構成員と森山構成員から関係省庁に質問がなされております。今の御説明の中でかなりの部分について御対応いただいているということがございます。これらについてさらに御質問したいという、あるいは御意見があればお伺いします。もちろん、それ以外の構成員の皆様方にも御質問、御意見がありましたらお伺いしたいと思います。どなたからでも結構ですのでお願いいたします。
     中島構成員、どうぞ。
  • 中島構成員 文部科学省のほうに御質問の書類を出させていただいたのですが、具体的にはお答えをいただいていないと思いますので、お答えいただければと思います。お願いします。
  • 文部科学省大臣官房総括審議官 それでは、御質問事項につきまして御説明させていただきます。
     まず、最初のスクールカウンセラーの配置の状況でございますが、すみません、先ほど御説明し忘れまして、誠に御無礼申し上げました。資料5の裏面でございますが、25年度の配置数でございます。小学校が1万246と申しましたけれども、小学校の学校数が全国で2万836校ございます。したがいまして、全学校数における配置校数は49.2%、半分弱ぐらいのところに置かれている。中学校は先ほど言いました8,404でございましたけれども、中学校全体の学校数は9,784でございましたので85.9%、9割弱ぐらい。高等学校は配置校数が1,454でございましたけれども、全体の学校数が3,715でございましたので、配置率が39.1%、こういうようなことで、御案内のようにスクールカウンセラー、最初はそういう臨床関係の相談は中学校が中心だったので中学校から置かれ始めたというのがございます。臨床心理士さんの配置状況を見ながら、中学校を重点的に置いてきたということがありましたけれども、大体中学校が全配置に近づいてきたということもあって、小学校とか他の学校種のほうにも幅広く配置をしているという状況でございます。
     2つ目のお問い合わせ、お問いかけで、犯罪被害が発生した場合、どのような児童に対してどのような経過で支援を行うかということについてでございますけれども、御案内のように、学校において子供が被害に遭うような件数は被害の内容も多種多様でございますし、子供なり、場合によっては学校の担任の先生、スクールカウンセラーも含めていろんな状況に置かれているというところでございますので、こういうような段階でこういうような支援を行うという画一的なものはなかなかつくりにくい現状がございます。  もちろん、臨床心理士会とかそういうようなところでいろんなケース相談みたいな形を積み重ねることによって、いろんな類型に多様に対応するということを進めていただいているところでございますけれども、ただ、そういうところだけでもいけないということで、昨今でいいますといじめによって子供が亡くなる、先ほども申しましたようなそういうような事案があったときに、学校全体としてそういう子供の被害とか、それにどう対応していくのかという、全体的なチームワークというか、生徒指導と私ども言っていますけれども、生徒指導の体制をつくるかというところがポイントでありまして、そういう意味から、例えばいじめが起きた場合の子供を被害から守り、いじめた子供たちに対して、そういうことが将来起こらないように、また、それを見ていた子供たち、知らんぷりをしていた子供も含めてですけれども、そういう子供たちをいかに適切に学校が立て直していくかとか、そういうものを早期発見するために事前に子供たちにいろいろ調査をしていじめがないのかどうかを調べたりとか、チームとして学校でどう対応するのかについてのマニュアル、考え方は適宜文部科学省のほうから各学校に示して、各学校のほうでもいろいろ実践をしていただいている。文部科学省のほうで生徒指導担当の先生方を集める研修会とかがございますけれども、そういう中で今言ったテーマについて取り上げて周知を図っているとか、そういうような事例があるということでございます。
     次の御質問でございますけれども、児童は普通でも被害を訴えにくい。そういうような状況に応じて、児童が特に性被害とか体罰とか児童虐待を受けたときに積極的にみんなに相談していく。いじめが潜在化しないように、そういうようなことが大事ではないかという御指摘でございまして、それはそのとおりだと思っております。担任の先生と子供たちのみならず、スクールカウンセラーの方、先ほど言ったチームとして対応する方々が子供といかにうまく人間関係をつくって、被害のおそれが発生する前に、場合によっては被害のおそれが出てきたときには、速やかにそういう親しい人たち、もちろん、それは友人とかも含めてでございますが、そういうところにきめ細かく相談に応じられるような学校の体制づくりということを私どもとしてはお願いしております。
     もちろん、相談相手というのはスクールカウンセラーだけではなくて、いろんな相談機関というのが市町村に相談機関で置かれているとかもございますので、そういうようなところも紹介して、いろんな相談チャネルがあるのだということを広めに子供たちにもわかってもらい、親の方にもわかってもらい、そういう中から子供の相談というものを実現いたすように努めているところでございます。
     とりあえず以上でございます。
  • 椎橋議長 ただいま御説明をいただきました。中島構成員、よろしいですか。
  • 中島構成員 1点だけ、長かったのでわかりにくかったと思うのですが、ここの質問③の前半の部分は、子供たちがどういうところに相談できるかということについての情報提供をちゃんと教育の現場で行っているのかということです。例えば法務省のほうからそういうSOSを配ってらっしゃるとかあるとわかりますね。しかし、警察のどこに相談したらいいのとか、児童相談所にどうやって相談したらいいのか、そういった情報提供というものは教育の現場でなされているのかというのが1点です。また、子供がわからないのは仕方ないのですけれども、教員の方々が、子供が被害に遭ったときにどこに、例えば民間の被害者支援団体とかがあるということ等の情報を、研修等を通じて行っていらっしゃるのでしょうかという質問だったのです。それについていかがでしょうか。
  • 文部科学省大臣官房総括審議官 ありがとうございます。
     今の御指摘いただいているのは非常に大事な点だと思っています。学校によってなり、市町村によって若干取組の差はありますけれども、学校でそういう生徒指導の事案が発生した、それはこういうような犯罪被害ということのみならず、生徒間で暴力を振るった、これもこの範疇に入ることでございますけれども、いろんな生徒指導の問題があったときに、どういう状態が起こったときにどういう機関に相談するというのを学校でリストをつくることをお願いしております。
     したがって、こういう事案については人権相談事案だから人権相談所で電話番号はここだ。警察との連携は、川崎のこの間の事件を含めまして警察と学校のレーンが弱い。学校が警察に何らかの形で情報を提供すると、学校側が警察に情報を提供したということで、ある意味ではいろんな批判が挙げられることもあるということで、それに消極的であるというような事案も見られたところもございますので、そういうことがあってはならない。
     やはり学校と警察は日ごろから人間関係をつくる連携も大事で、そのための会議を開くこともありますし、定期的にある事案が生じたときにケースを取り上げて、それをお互いに共有することによって進めていくというような、そういう日ごろから人間関係なりをつくるというような、そういうような取組を進めて、先ほど言いましたチームとして他機関等も含めた連携のシステムをつくり、そういうのが活発化していくということをお願いしまして、もちろん学校によっては、ここに抜けがあったとか、ここのところで十分でないということがあり得ない話ではありませんので、そういうことについて引き続き私どものほうからお願いしていくということでございます。
  • 椎橋議長 小西構成員、どうぞ。
  • 小西構成員 私は潜在化しやすい被害の対象としての子供というのは非常に大事なものだと思っているものです。
     いつも文科省にこういう質問が出るとスクールカウンセラーのことが返ってくるのですけれども、やはりスクールカウンセラーは巡回されているようなところもたくさんあるわけで、そうすると、当然受け身の姿勢で、先生が気付かれた子供あるいは本人が困っているということがわかった子供の相談に乗るという形でしかないわけですね。そうすると、潜在化している被害に対応できるかというと、現状では非常に不十分なところがあると思います。
     例えばスクールカウンセラーをもっと常勤化するとか、あるいはそれがなかなか難しいことであれば、やはり学校の先生に子供の被害という視点からもう少し子供を見ていただく必要があると思うので、このお答えは残念だなと少し思うところがあります。  要するに、いじめというのが学級経営とかそういう視点から見て解消すべきもの、それはそうだと思いますけれども、幾ら解消しても、その後、被害を受けた子供は残っているわけですね。そういう子供に対処するというところが、実際にいろんなケースを私も見たり会議に参加したりするのですけれども、学校というところはなかなかそこに視点が来ないという印象を持っています。そういう点では、むしろスクールカウンセラーだけにお任せしないで、ずっといて一番見られる学校の先生に発見する目とか、発見したときに子供が何も言わなくても何が起きているかある程度想像できる力とか、そういうものを付けていただくことが必要で、いつもこの形だけ出てくることには不十分だという気がしています。
  • 椎橋議長 それでは、文部科学省の方からお答えいただきましょうか。
  • 文部科学省大臣官房総括審議官 申し訳ございません。誠に御指摘ごもっともでございます。どうしても説明の都合柄、こういう施策項目にスクールカウンセラーの配置というのがございますので、そちらを中心にそればかり説明して、先ほどくしくもチーム学校というチーム生徒指導ということを言わせていただきましたけれども、そこが根本にあるのは先生のおっしゃるとおりなのです。
     特に小学校ですと学級担任がクラス経営をしていく、学級経営をしていくに当たって、もちろん学習上のことも含めてでございますけれども、この子たちがどういう生徒指導上の課題を抱えているか、人間関係がどうなっているか。ここは先生の基本でございますので、当然学校の教員養成の段階からそういうような生徒指導に関する知識もきちっと身に付けていただくようにしておりますし、先生になっても生徒指導の研修会という学級担任の先生方が参加するような研修会を頻繁に、いわば学校経営、学級経営の基本でございますので、そういうのもやらせていただく。そういう中で先生方がきちっと資質を身に付け、生徒指導についての力を養うというのがあります。
     片や、それだけで十分ではないだろうという形でスクールカウンセラーという第三者として専門家。つまり、教員であると、どうしても子供との人間関係とか評価という点がありますので、なかなか担任の先生にお話はできにくいけれども、第三者で秘密を守ってくれる方であると、子供たちが発言しやすいとか相談しやすいということもあります。外国を見ますと、ともに置いています。やはり学級担任の先生だけではなくて、そういう専門家の方と学級担任の先生方がチームになって子供たちのそういう相談に当たるというのが各国でも状況が見られております。私どももそれを参考にするということもありませんけれども、そういうほうが機能は高いだろうということで、スクールカウンセラーの方にもいろいろアンケート調査をしてやったところ、チームをつくって共同で取り組むやり方のほうがよろしいのではないかという方向性もいただいたので、説明が不十分で申し訳ございませんでしたけれども、今言った点にも留意させていただきながら取り組んでいきたいと考えてございます。
  • 椎橋議長 渡邉構成員、どうぞ。
  • 渡邉構成員 今、各機関で取組状況を話していただいたのですけれども、そのとおりできていれば最高にいいと思うのです。ところが、例えばいじめの問題にしても、私が聞いた例が本当に特別な例だと思うのですけれども、いじめられたほうを隔離する。いじめたほうは野放し。それは本末転倒だと思うのです。やはりいじめはいけないのだというのをちゃんと子供たちに知らしめる。いじめられたほうについては、これからいじめられなくて済むのだよという形でちゃんと学校に来させる。それが本当の教育だと思うのですけれども、私が聞いたのは特別な例だと思いますけれども、そういう事例もあります。
     先ほど川崎の問題も出ましたけれども、あれも学校の先生も何十回となく電話をしたと。だけれども、家庭訪問しても本人には会えない。ただ、親の態度にも問題はあるのでしょうけれども、結局はああいう一番悲惨な結果になってしまったという点では、先ほど来言われているように、各機関の連携、これが本当に大切だと思うのです。児童相談所も一人当たりの受持ちというか、抱えている件数が非常に多過ぎるということで動きがとれないという話もよく聞いています。ですから、そういう意味では、あすの会の顧問弁護士の一人である後藤啓二弁護士が主催しているThink Kids、ここで法改正を求める。警察、児童相談所、自治体、この三者が連携をとって動けるような法律をつくってほしいということでやっていますけれども、それが本当に基本だと思うのです。やはり警察は足があります。機動力があります。学校の先生は、そういう学問的なというか、子供たちに一番身近に接している。児童相談所はいろいろそういう相談が来た場合にどういう対応をしたらいいかというのをすぐ判断できる。自分でできなかったら、警察なり何なりにお願いするという形で、その連携がとれるような、そういった制度が何とかできないかということで考えております。それができるのが一番いいのではないかと思っていますので。
  • 椎橋議長 ありがとうございました。
     そのほかに御質問、御意見はございますでしょうか。
     森山構成員、どうぞ。
  • 森山構成員 法務省のほうで人権相談について教えていただきまして、ありがとうございます。実は私も人権委員をもう二十何年やっていて、具体的にそういう子供から生の声を、びっくりするようなことを聞く例がたびたびあります。そういう意味では、子供のミニレターとか、子供の電話相談は非常に大切だと思いますので、是非ともそこをうまく児童相談所と連携するなり、潜在化を防ぐような、子供の場合、特にそういう意味で声を上げられない子供が多いので頑張ってもらいたいと思うのですが、そういう意味で誰が最初に相談の受け口になるかという問題も大切で、なるべく第三者機関的なところで窓口になったほうがいいのか、特に警察の場合には被害者が警察に相談するのは4.3%とか、本日配付の資料に性犯罪に関して相談する例が少ないとか、友人、知人のほうが相談する例が多いとかありますので、第一義的にそういう相談を受けるところが、そういう意味では人権相談等というのは電話一本で受けられるという意味もありますので、そういうところ、特にスクールカウンセラーも幅広くやるということ。それぞれ役割分担的なものも考えたほうがいいのかなとは思います。
  • 椎橋議長 ありがとうございます。
     そのほかにいかがでしょうか。  中曽根構成員、どうぞ。
  • 中曽根構成員 本当に基本的なことがわからなくてお聞きしたいのですけれども、法務省の方に、「子どもの人権SOSミニレター」というものですが、この事業を始めてからどのぐらいの期間が経っていて、どのような効果があるのか。このようなミニレターというのは年に何回か学校に配付するとか、そういうような形になっているのでしょうか。
     警察庁の方で、性犯罪対策で、本当にすみません、基本的なことがわからないので教えてもらいたいのですが、平成26年10月から、協力が得られた5都道県の医療機関となっているのですが、これは差し支えない範囲で、何県でどんな形でということで教えていただければありがたいと思います。よろしくお願いします。
     あとは警察庁の方で、安心な社会をつくるための匿名通報事業というのが警察における潜在化を防ぐための取組にありますが、この辺も一般の方がわかるような形で、マスコミとかで広報等をやっていますでしょうか。お聞かせ願いたいです。
  • 椎橋議長 ただいま潜在化を防ぐ取組について、法務省と警察庁に御質問がありました。まず、法務省の方、いかがでしょうか。
  • 法務省大臣官房秘書課政策評価企画室長 まず、今、把握している範囲でお答えさせていただきます。
     「子どもの人権SOSミニレター」は、平成20年度から全国で行っています。年1回、学校を通じて全国の小中学生全員に配布という形にさせていただいております。
  • 椎橋議長 では、警察庁、お願いします。
  • 警察庁長官官房給与厚生課犯罪被害者支援室長 まず、5都道県の医療機関の話でございますけれども、性犯罪の被害者の中には、被害の届出を躊躇してしまう方もいらっしゃいます。警察に届け出ずに医療機関を受診された場合、後々、その証拠が滅失してしまうという可能性があることも踏まえまして、証拠資料の滅失防止策のために医師等がその証拠資料を採取するための機材をあらかじめ医療機関に配備いたしまして、そちらで採取していただくということを試行実施しております。この施策を実施している都道県というのが北海道、福島、東京、富山、兵庫となります。それが1つ目です。
     匿名通報事業でございますけれども、こちらは恐らく御想像のとおり、110番通報とか警察安全相談では刑事手続に巻き込まれることを心配され、通報をためらう方もいらっしゃるため、匿名の通報の仕組みが必要だということで、平成19年10月から匿名で通報できる仕組みを設けております。政府広報や警察庁のウエブサイトでお知らせをしているところでございます。
  • 椎橋議長 よろしいですか。
     法務省の方、補足ですか。
  • 法務省大臣官房秘書課政策評価企画室長 補足をさせていただきます。
     今、平成20年度からとお伝えしたのは全国の小中学生くまなくという趣旨でございまして、制度が始まったのは平成18年度からという形になります。
  • 椎橋議長 それでは、そのほかにいかがでしょうか。
     中島構成員、どうぞ。
  • 中島構成員 全体として意見という形で述べさせていただきたいと思います。昨今の状況を踏まえて文部科学省の役割というのは大きくなっているのではないかという印象を持っております。特に、子どもにおいては被害が潜在化しやすい訳ですが、なぜ潜在化するかというと、それは被害の性質にもよると思いますし、もう一つは、どこに相談したらいいかわからないとか、誰を信用したらいいかわからないということで潜在化してしまう部分というのも非常に大きいと思います。ですから、そういう情報を当事者である被害者が早くから知っているということが重要だということと、それを発見する人たちが知っているという、両方が非常に重要だと考えております。
     意見のほうでも書かせていただいたのですが、子供に関しては省庁の連携の分断がどうしてもあると思います。学校に入るまでは厚生労働省の方の管轄ですが、学校へ入ってしまうと文部科学省になってしまいます。児童虐待等もよくそこの分断を指摘されるのですけれども、管轄省庁の違いというものが発見をしにくくさせている面もあると思います。
     文部科学省というのは子供の教育の場ですから、必ずしも子供の健康全部を見るわけではないとしても、子どもが最も長時間を過ごすところであり、そのような場所において発見しやすいというのは事実だと思うのです。欧米でも、学校の先生に対して児童虐待をどのように見抜くかというような教育やトレーニングというのもなされているということを聞いております。先ほども言っていただいたように、いじめであるとか、こういった暴力事案について取組がなされているということなのですが、文部科学省の施策がいつも非常に広い領域を示していると思います。例えばスクールカウンセラーの配置といっても、スクールカウンセラーは犯罪被害だけ扱うわけではありませんし、道徳教育に関しても犯罪被害だけやるわけではないのです。ですので、全体の施策を推進しても、その中の一部である犯罪被害者について、犯罪被害児童をどうするかについてなかなか進まないのではないかという懸念を持ってしまうのです。ですから、具体的に犯罪被害についてどうするというような指針であるとか、そういったものが今後提示されていったほうがよいのではないかと思います。そうでないと、各学校の努力、各先生の努力に落ちていってしまうところがあると思います。
     意見のほうでも述べさせていただいたように、既に、池田小の事件があったり、災害があったことから、防災マニュアルとか学校の危機管理マニュアルが、文科省のほうで提唱されています。確かに犯罪被害は多様ですが、いじめとか性被害とか大きい問題はそんなに多様ではございません。そういったものが発生したときに、どこに誰がどういうように学校として相談していくのかということをガイドライン化すること自体は大変ではありますが、ガイドライン化していっていただかないと各学校も十分にできないと思います。したがって、私自身の希望としては、大きな施策の中で特化したものとして扱っていただくことを推進していただいたほうが、より効果的ではないかと思っております。こちらは意見でございます。
  • 椎橋議長 そのほかいかがでしょうか。
     森山構成員、どうぞ。
  • 森山構成員 ただ今のと関連するのですが、私の資料13-4で、文部科学省に犯罪被害顕在化の事例と統計的データということで、多分犯罪被害ということに関して、特にそういうことまでは、類型化されていないのだろうなどとは思うのですが、先ほどの人権相談の中でも相談の類型化の中に犯罪被害というチェック項目が全く抜けていると思うのです。人権相談のチェック表。そういう統計的なものをきちんと入れていただいて、犯罪被害そのものに特化した部分を、人権相談というのは範囲が広いので、そういう意味で犯罪被害にもう少し特化したデータを集めていただくともう少し見えてくるのではないかと思っています。
     あと、もう一つは、子供と同じようになかなか出てこないのは高齢者だと思います。高齢者も被害の類型に出ておりますけれども、今回高齢者に対する施策等についてはどこかの省庁から何らかの資料があるのかなと思いましたら、ざっと見たところ余りないようなのですが、高齢者。高齢者の場合、家族の問題もありますし、あと施設での問題もあったり、多分これも難しい問題がある。厚生労働省さんのほうで高齢者のそういうことに対しての何らかの今後の検討とかあるのかお聞きしたいと思います。
  • 椎橋議長 御質問も含まれていましたね。ただ今の御質問に対していかがでしょうか。
     法務省からお願いします。
  • 法務省大臣官房秘書課政策評価企画室長 先生からの御質問に対して、種類別の統計しかとっておりませんというお話を申し上げました。その観点でもう少し補足して御説明させていただきますと、平成25年の人権相談件数は約25万6,000件あるとお話をさせていただきました。その中で例えば犯罪的な色彩の強いものとして、夫の妻に対する暴行虐待、これの相談件数が4,334件、親の子に対する暴行虐待に関する相談件数が3,109件、ストーカー行為に関する相談件数が1,490件。どこからが犯罪、どこからが犯罪ではないかという話もあるかもしれませんが、このようなものに関してはかなり犯罪の色彩が強いのだろうと考えられます。ただ、これとは別に強制・強要という類型でも統計を取っておりまして、このような強制・強要における夫の妻に対するもの、あるいは妻の夫に対するものということになると犯罪的な色彩に若干濃淡が出てくるものと感じております。
  • 椎橋議長 それでは、いろいろ御意見出ましたけれども、瀬川構成員、どうぞ。
  • 瀬川構成員 単純な質問ですが、内閣府の資料2の被害が潜在化しやすい類型についての最後の4のところです。「その他(被害を潜在化させやすくする要因)」とあって、その3番目に犯罪被害に関する社会上の通念と書いてあるのですけれども、これはどういうことを意味しますか。
  • 内閣府犯罪被害者等施策推進室参事官 資料の説明の際に、小西先生と中島先生の御意見を伺って作成したという御説明をさせていただいたのですが、特に小西先生からこの点について御指摘をいただいておりますので。
  • 小西構成員 被害を潜在化させやすくする要因として幾つか挙げられるのではないかという要素を私がここに挙げてほしいと言ったので入っているのかなと思いますが、基本的には性犯罪被害に関する偏見ですとか、もう少し広く言うと、例えば虐待全体に関して被害者は大した被害を受けていないのではないかとか、あるいはいつでも逃げ出せたのではないか。
     高齢者虐待でも児童虐待でも、あるいは誘拐、監禁の中での虐待とか、少し特殊なケースですと一人の人が支配して、ほかの人たちに犯罪をさせるような特異なケースが毎年のようにありますね。そういうケースで逃げられたのではないかというような言い方で言われていることが非常に多いですが、実際にはそういう場面で人は簡単に逃げられるわけではない。今、その話をしたいわけではないですけれども、私は今までそういうケースを繰り返し経験し、周囲の人の理解がないことも繰り返し経験しています。それも一つの偏見だといえば偏見だと思います。そういうように世の中全体で、命が危なければ逃げ出すのではないか、あるいは必死で抵抗するのではないか。どうせ本人も悪いところもあるのでしょう。そういうところが決して解消されていないと思うのです。解消されていないことが、そういうことがあるから言いたくない、被害者のほうも言ったら余計つらい目に遭うだけだと思われている方は非常に多いです。そういうことを考えていただけたらと思ってこちらから希望を出しました。
  • 瀬川構成員 わかります。社会上の通念というのはニュートラルな言葉なので、中島先生の配られたパンフレットの中にも性暴力被害についての誤解・偏見と書いてありますように、むしろ「誤解と偏見」とクリティカルに書いたほうがいいのではないかと思います。
  • 小西構成員 それはどちらでも結構です。
  • 椎橋議長 推進室長、どうぞ。
  • 内閣府大臣官房審議官犯罪被害者等施策推進室長 すみません、事務局であると同時に、私は内閣府におきまして子ども・若者育成支援施策も担当しておりますものですから、その観点から補足をさせていただきます。
     子供の被害の関係につきましては、文部科学省さん中心に学警連(学校警察連絡協議会)等があると同時に、あと厚生労働省さん中心に、いわゆる要対協、要保護児童のための協議会があるわけでございます。それらもまたある意味では包括した上で、非常に大きなアンブレラとして、私ども内閣府で子ども・若者育成支援法を所管しておりますけれども、この中で子ども・若者支援のための地域協議会というものを法律で地方自治体に設置していただく努力義務をかけているわけでございます。平成22年からですから、まだまだ進んでいない部分があり、また、これは特に犯罪被害に限った制度ではございませんけれども、犯罪被害も含んで様々な困難を抱えた子ども・若者の育成支援ということで、地域における様々な機関が横のネットワークと同時に縦のネットワークということで、後の中長期的な支援の議論にも関わってくるかもしれませんけれども、世代を超えて途切れのない支援を行うというような仕組みづくりに取り組んでいるところでございます。
     この地域協議会を設置していただければ、それに関与していただく機関・団体は、民間団体も含めて守秘義務がかかりますので、個別のケースについても情報共有が非常にしやすくなるといった取組でございます。そういった仕組みもあるということで御承知おきをいただければと思います。
     また、潜在化しやすい被害の関係で、短い時間の間で議論いただいていない被害類型や、被害者の属性の問題がありますので、後ほどそれらについて御提案、御意見があれば承りたいと思います。また、被害自体をちゃんと犯罪被害であると認識してもらうということがまず第一に大事なことと同時に、相談窓口のアクセスしやすさというものもまだまだそれぞれの類型に関して改善の余地があると思います。さらには、被害を被害者自身が訴えにくい場合に、周囲の気づきなり、周囲の方が通報するというようなこともまた必要になってくる場面が多いのかなと思いますので、そういった点についても構成員の皆様方の御意見をいただければありがたいと思います。
     以上でございます。
  • 椎橋議長 ありがとうございました。
     それでは、まだいろいろ御質問、御意見あるかと思いますけれども、ほかの議題も予定されておりますので、この問題についてはこのくらいにさせていただきたいと思います。
     潜在化しやすい犯罪被害者等への支援ということで関係各省庁から取組を紹介していただいておりまして、さらに、事前の構成員からの質問がございまして、それに対する回答もいただきました。本日は、さらに潜在化しやすい被害者への支援ということで、それを潜在化させない、可視化するというためにはどうしたらいいのかという関心から、御質問、御意見があったと思います。かなり共通していると私が感じましたのは、より透明化する、可視化するための具体的な方法、より効果的な方法というものは何なのだろうかということについて、構成員の方々が真剣に考えておられて、それが質問であり、また御意見であったというように思います。今日は御質問に対する回答というのも関係省庁からしていただきまして、そういうことについての認識はかなり深まったと私は理解しております。
     今日の御意見等を参考にして、さらにまた具体的にお諮りしたい。先ほど推進室長の話にもありましたけれども、障害者、性的マイノリティ、外国人、これらについてはまだ御質問、御意見が出ておりませんでしたので、それらも含めてさらに具体的な形で提案をさせていただきたいと考えております。
     そこで、次の議題に進ませていただきたいと思いますが、被害児童に対する国費による専門的治療等について検討したいと思います。これにつきまして、文部科学省、厚生労働省からまず御説明をいただきたいと思います。
     最初に文部科学省の方からお願いしたいと思います。
  • 文部科学省大臣官房総括審議官 文部科学省でございます。
     資料7でございます。被害児童に対する国費による専門的治療への取組なり今後の方針ということで、書いてある内容は先ほどの資料5と同様でございます。いろいろ厳しい国の事情を国費でもってスクールカウンセラーを配置する事業は、今、都道府県で3分の1の補助金で実施しているところでございまして、都道府県の持ち出しもあるという中で、できるだけ多くの小学校、中学校、高等学校に配置をしていきたいということで取り組んでいることを御報告させていただきます。
     以上でございます。
  • 椎橋議長 それでは、続きまして、厚生労働省の方、お願いいたします。
  • 厚生労働省政策統括官付社会保障担当参事官室室長補佐 厚生労働省からは、資料8でございます。被害児童に対する国費による専門的治療等ということで、こちらも3点の施策につきまして取組状況と今後の方針について記載させていただいております。
     まず(1)ですけれども、思春期精神保健の専門家の養成ということで、厚生労働省におきましては、医師、看護師、保健師等を対象にいたしまして、思春期精神保健の専門家の養成研修というものを実施しております。
     続きまして、(2)ですけれども、少年被害者のための治療等の体制整備ということで、近年、児童擁護施設へ入所されるお子さんについて、その理由を見てみますと、虐待を受けて施設のほうに入所するという方も非常に増えているという状況でございます。このため、平成23年度からは、児童養護施設等に心理療法の担当職員ですとか、虐待を受けた児童に対する個別の対応職員の配置を義務化するなどの体制確保というものに努めております。
     続きまして、(3)のところですけれども、地域の医療機関との協力や連携体制の充実ということで、例えば児童相談所ではなかなか対応し切れない医学的判断ですとか治療が必要なケースに適切に対応するため、都道府県等が地域の医療機関を協力医療機関に指定をしまして、その協力医療機関から個々のケースに応じた心身の治療の必要性について、専門技術的な助言を得る取組について補助を行っております。
     今後の方針ですが、引き続きこれらの(1)~(3)までの施策について確実に実施をしてまいりたいと考えております。この項目につきましては、中島構成員のほうから1点御質問を頂戴しておりまして、資料の13-1の2の質問①が該当するかと思いますが、(1)の思春期精神保健の専門家の養成研修の部分につきまして、児童虐待の支援に特化した項目ですとか、子供のPTSDの専門治療の研修等が含まれているかどうかという御質問でございます。
     御回答でございますけれども、平成26年度におきまして思春期精神保健専門家の養成のための研修であります思春期精神保健研修事業ですとか、またコ・メディカルの専門研修におきましては、児童虐待等被害児童への支援や対応という形で特化した項目を設けてございます。
     また、同じく平成26年度ですけれども、PTSDの対策専門研修というメニューもございまして、こちらの中にはPTSD等でトラウマを受けたお子さんへの対応と治療に関する項目というのが含まれておりまして、その中で専門治療についても説明を行っているという状況でございます。
     以上です。
  • 椎橋議長 ありがとうございました。
     ただいまの文科省、厚労省の方の説明に対して御意見、御質問がありましたら伺います。また、それに限らず、新たな基本計画に盛り込むべき具体的施策の提案等についても御意見がありましたらお願いしたいと思います。この項目につきましても中島構成員から御質問が出ておりまして、ただいまそれに対して御回答もいただきましたけれども、さらに御質問がありましたら、中島構成員、どうぞ。今の点については特によろしいですか。
     それでは、どなたからでもお願いします。
     中曽根構成員、どうぞ。
  • 中曽根構成員 厚生労働省の方にお願いいたします。「1.取組状況」の(1)、「2.今後の方針について」の(1)につながると思うのですけれども、思春期精神保健の専門家の養成研修を実施した後、その研修の修了者についてはどのような形で一般の国民あるいは犯罪被害者の方たちが知ることができるのか。研修を受けた専門家にどのようにつなげていけばいいのかというのを例えば民間の援助団体で支援している者としてもよくわからないので、どの機関にどういう先生がいらっしゃるとか、どういう保健所にどういう保健師さんがいるとか、そういう研修を受けた方がどこにいるとかということはどのようにして知ることができるのでしょうか。
  • 椎橋議長 厚労省の方、いかがでしょうか。
  • 厚生労働省政策統括官付社会保障担当参事官室室長補佐 研修の関係なのですけれども、正確な資料が今手元にないのですが、恐らく研修を受けたことについての何らかの認定マークみたいなものを現状設けていないと思いますので、いただいた御意見も参考にしまして、例えば今後、どういった形で研修を受けたことの証明ですとか、施設にどういう方がいらっしゃるのかというのをどういうように周知していったらいいかというのをよく検討させていただければと思います。
  • 中曽根構成員 あと引き続きまた文科省の方になのですが、ほとんどお願いなのですけれども、現在支援をしていて思うことなのですけれども、確かに各学校の先生方の個人の資質によっては他機関との連携を考えて、例えば民間の援助団体にも連絡をされる、してこられる先生もいらっしゃるのです。ですけれども、全体として例えば文科省として、学校内の中だけで解決するということではなくて、他機関との連携というものを是非考えていってほしいと思います。お願いします。
  • 椎橋議長 文科省の方、どうぞ。
  • 文部科学省大臣官房総括審議官 非常にいい御指摘、本当にありがとうございます。私どもも先ほど言いましたように、学校教育、こういう生徒指導というのは1学校だけで絶対解決しないというのが基本でございまして、もちろん学校内の連携、学校と保護者とかPTAの連携はもちろんですけれども、養護関係、民生関係とか警察関係、いろんな他機関と連携することは非常に大事だということで、文科省に各学校の先生がお集まりいただく会議でその旨を周知しております。ただ、全国数千幾つの市町村の中で、過去に事件があったり、事件があってトラブったということで慎重に対応しなければいけなかった事例も、別に私どもそれはイエスと言っているのではなくて、そういうような中で、いかに日ごろから人間関係をつくった上でちゃんと連携していくというのが一歩一歩進むような形で物事を進めていかなければいけないと思っています。
     この間の川崎の事例についても、学校、警察の連携、先ほど渡邉先生からもお話がありましたように非常に大事なポイントで、我々は学警連と呼んでいますけれども、学校、警察が連携した協議会みたいなものを設けているか。設けている場合に、それを定期的に開催して人間関係をつくったり情報交換しているか。調べたところ、9割はそういうような例があるのですが、そうなっていない例がある。これはいろんな原因があります。一概にこれが原因だと決めつけるつもりもありませんけれども、過去の例であるとか、警察に情報提供することによって学校の子供たちのある意味では保護とか、情報に対する問題であるとか、そういうことを懸念するような声もあって、それによって学校がいかに協力してみんなでやっていくか、そこがポイントだと思っていますので、そこが肝だよということを各学校のほうにお知らせをして、そういうことで一歩進み、二歩進むことによって、よりいい取組ができるのだということについて周知を図ってまいりたいと思います。今も非常に大事な御指摘でございますので、そういうような御意見なり御指摘も踏まえさせていただきまして、それが進みますように努力してまいりたいと考えております。
  • 椎橋議長 小西構成員、どうぞ。
  • 小西構成員 少し戻りますが、先ほどの厚生労働省の中曽根構成員の御質問ですけれども、私が思うに、この思春期の研修も存じ上げていますし、幾つか数日間の研修をなさっていることはよく知っています。とてもいい研修だと思います。
     犯罪被害に関しても中島構成員のところで3日間の研修がありますけれども、では、その人たちが、自分がそういうことの専門家ですと名乗れるかというと、多分名乗る自信が持てないと思います。なぜかというと、3日、4日の講習というのはとても質のいい本を1冊読むようなもので、それだけでは人はできないからです。特に思春期の虐待を扱ってくれる先生は本当に払底しているし、それをパワフルにケースワークしてくれる人も払底していると思いますけれども、そういうように育っていくためにはさらに現場でケースを重ねる、それをスーパーバイズしてもらうとか、あるいはもっと密度の濃い研修を受けるとか、そういうことがない限り、多分私はこういうライセンスを持っていますと出せる自信が普通に良心的にやろうと思うとなかなか出ないと思うのです。  そこは今回の結構大きな問題で、今みたいにメニューで出していただくと、研修もあるし、連携もあるしということなのだけれども、本当に扱うための専門家というのも養成しない限り、ある一段まで、発見するというところまで進むかもしれませんけれども、―それはすごい大事なことですね。見つけるために多くの人が受ける研修も必要なのだけれども―もう一歩進まないと対応という点では現状では足りないのではないかという気がします。
     私、今日でおしまいなので余りたくさん言うのも気が引けるのですが、それが1つ共通の問題としてあって、ここは犯罪被害の支援の検討会ですから、もちろん、子供の幸福とか女性の幸福というのは当然追求していくべき目標ですけれども、では、その中で犯罪被害という視点で何ができるのかというように考えるところも必要だと思います。
     そういうように思うと、今日は例えば警察の捜査とか、司法の中のことというのが挙がっていないですけれども、そちらで専門的に何か積み上げることができるということも考えていかないと、先ほどおっしゃった子供に関する委員会や、いろんなところで子供の問題、潜在化してとても不幸な状態にある人たちのことは取り上げられているのだけれども、ここでしかできないことというのも考えていく必要があるのではないかと思います。
     すみません、2つのことです。厚生労働省に関する先ほどの私の意見というか印象と、全体に関することです。
  • 椎橋議長 御意見ですが、もし何かさらに補足等があればお伺いします。
  • 厚生労働省政策統括官付社会保障担当参事官室室長補佐 1点だけ補足でございます。先ほど中曽根構成員からお尋ねいただきました研修修了者の周知の関係なのですけれども、現状ですと、研修修了者の名簿について市町村とか都道府県等の自治体のほうに配付しているという状況でございますので、今後どういったものができるかというのは検討させていただきたいと思います。
     小西構成員から御指摘いただいた点、非常に重要だと思っていまして、確かに犯罪被害者の問題というのは、そもそも要因自体が複合的に絡み合っているというように思いますので、研修だけを受けて、それで実際に現場ですぐばりばりできるというものでは当然ないと思いますので、人材の研修だけでない育成の方法というのも大切だと思いますし、それぞれ医療ですとか相談ですとか専門分野があるわけなので、そういった各機関で連携していくということが必要なのではないかと思っています。
  • 小西構成員 本当に参考のために申し上げたいのですけれども、そこから先のところで私の領域で教えようと思うとスーパービジョンが欠かせないのです。今は簡単に、映像を送ることもできますし、ネットを使って長い時間会話することもできるし、システムをつくればそういうこともある程度可能なのだと思います。ただ、自分で個人的に実際にやると、そういうことを受けようとしても、教えてあげようとしても何万円も費用がかかるのです。何万では済まないぐらいかかります。例えばそういうことを援助していただく仕組みとかそういうものもあると、もう一段本当に役に立つところまで技量を高めようという人が増えてくるかもしれません。
     例えば臨床心理士さんでそういうものを受けようとして、例えば10万、20万という金を準備されるというのはすごく大変なことですね。そこのもし実行がある形で、この人がこの県にはいますよという形でそれぞれの領域について人を増やすなら、そういう仕組みをそれぞれのところで持つということも考えられるかなと思います。
  • 椎橋議長 貴重な御意見だと思いますので、参考になさってください。
  • 厚生労働省政策統括官付社会保障担当参事官室室長補佐 参考にさせていただきます。ありがとうございます。
  • 椎橋議長 ほかにいかがですか。
     中島構成員、どうぞ。
  • 中島構成員 長くなるといけないので短く意見ということになるのですが、児童虐待について、児童養護施設に治療可能な職員が配置されるというのは非常に画期的なことだと私は理解しておりまして、児童虐待については相当前に比べると進んできているという印象があるのです。
     一方、被害児童と書いてあるのですけれども、児童虐待以外の被害がどうなっているのかという問題がありまして、それが私の先ほど言った文科省と厚生省のギャップに関連していますが、例えば子供、家族が犯罪被害に遭った場合、子供に症状が出ているか出ていないかわからないというときに、学校のスクールカウンセラーが見てくれるのか、それとも児童相談所が見てくれるのか明確ではありません。どちらかが入らないと子供は多分放置されてしまうというような現象が起こってしまうと思われます。ですから、被害が発生したときに、警察の方がこの被害を受けた家族の児童、誰につなぐのか、どこへつなぐのかといったことを多分その場その場で悩みつつやっている印象があり、私の知識では、児童相談所は非常に児童虐待に詳しいのだけれども、こういった一般的な交通事故の遺族になっている子供たちであるとか、殺人の遺族になった子供たち、あるいは子供自体がそういった事故に遭った場合とかとなると、必ずしも特化していないのでどう介入していいかわからないというような問題があるのではないかと思います。
     スクールカウンセラーの方は、かなり勉強していますけれども、どういう形で子供たちを確実にケアに回すかということになると、システムとしては余り動いていないのではないかというような印象を持っているのです。ですから、これは厚生労働省だけの問題ではありませんが、警察で被害者を認知して、その子供たちが直接被害に遭っていたらもちろんのこと、子供が被害に遭っていないものの家族に被害が発生したときに、どこの機関に子供たちをどのようにつなぐかという、そういったネットワークの構築と、それを受けた機関がそれを活用できるような仕組みもさらに今後つくっていく必要があるのではないかと考えております。
  • 椎橋議長 ほかにいかがですか。
     犯罪被害者については、情報提供を始めとしていろいろな取組が進んできているというように言われておりますけれども、今日、潜在化しやすい犯罪被害者の問題について議論しておりますと、まずは情報の提供にしても、どこで適切な対応をしていただけるのか、あるいは各機関の連携がどうなっているのかというようなことについても、まだまだ必ずしも十分ではないというところがあるということがかなり明らかになってきたところがあると思います。
     国費でどうするかという問題につきましてもいろいろな御意見をいただきましたので、それを踏まえまして、事務局あるいは関係省庁において、新たな基本計画に盛り込むべき具体的施策等について検討して、改めて具体的な案としてお示ししたいと考えております。時間の関係がありますので、この点についてこれぐらいにさせていただきたいと思います。
     どうぞ。瀬川構成員。
  • 瀬川構成員 学校内のことを先ほど文科省の方から説明があってなるほどというように思うところもあります。ただし、この検討会は犯罪被害の問題を検討していますので、友達間の交友関係のもつれとか、あるいは子供の遊びの延長でのけんかとか言って済むばかりではなくて、子供の生命、身体の被害絡む問題に関連していますので学校の先生方の間だけで、あるいは近隣の人たちとの間だけで話し合って解決できる問題ばかりではありません。そこには犯罪被害が絡むわけですから、警察の介入が必要なときはそうすべきだという認識を持っていただきたい。
     犯罪が潜在化しやすいというのは、うやむやにされやすい一面を持つわけです。そのためには警察が介入しないと、いじめもそうですが、証拠が散逸する、隠蔽されかねない。それゆえ、いじめの問題、暴力の問題もそうですけれども、適切な時期に警察が介入すべきであるという認識は持っていただきたい。刑事法の立場からはそういう要望を持っているということを御認識いただきたいと思います。
  • 椎橋議長 渡邉構成員、どうぞ。
  • 渡邉構成員 今の意見に関連してなのですけれども、常々思っているのは、例えば警察に連絡がいって、警察官が周りを巡回するとかという形で警察が動いているということが犯罪の抑止力になる、非常に大きな抑止力になると思うのです。ですから、そういう点では連携するというのは非常に大切なことだと思います。
  • 椎橋議長 御意見でしたけれども、文科省のほうで何か感想なり御意見はございますか。世間一般から見ると、学校というのは閉鎖的で、外からの意見というのはなかなか入っていかないのではないか。何か問題が起こったときに、私が特にそう思っているというわけでもないのですけれども、隠蔽体質ではないかとか、先生方の中だけで対応していて、どうも外部からの介入というのを好まない。そのために問題がより悪化してしまう。早い段階で、瀬川構成員の言葉で言えば有効な介入があれば大事には至らなかったのにということがあったのだろうと思われるにもかかわらず、どうしても悪い結末になってしまうことがある。そういうような疑念もないわけではありませんので、そういうことを含めて何か一言ございますか。
  • 文部科学省大臣官房総括審議官 ありがとうございます。
     資料のデータを持ってきていないのですが、先ほども言いましたように学校と警察との連携に関して複数の先生方から御指摘ありがとうございます。特に川崎の事例は、今回の事件の課題として取り上げられることは何項目かあるのですが、その第1のところに今言った学校と警察との連携が十分とれていないというのが歴然とした事実としてあって、もちろん、学校として担任の先生がいろいろ働きかけたとか事実関係としてあるにしても、そこのところをポイントにしなければいけない。
     ここは報道機関の方にもいろいろ報道いただきましたし、私どももそこを全国的に発信いたしましたし、先ほども口頭で言いましたけれども、学校と警察とが入った学警連の組織ができているか、そこが通常活動しているか。市町村ベースのところ、つまり、警察署単位で基本的にこれは動きますので、警察署単位でどの程度やっているのかというのを調べました。そのデータも公表したのですけれども、今言ったような問題意識が十分ではないところがあって、私どもの政策はみんなそうなのですが、御指摘いただいたとおりなのですけれども、そういうことをいろいろな報道機関の方、こういう協議会、推進委員会の方、いろんな場で御指摘いただいて、基本的にみんなで一歩でも二歩でも前進していくためにはこういうようなことをやっていかなければいけないねという共通理解を図ることによって前進していく。
     これは変なケーススタディというのでもないとは思いますけれども、そういうような取組の中でやっていくということが必要だと思っておりますので、繰り返しになって恐縮でございますが、ぜひ専門委員会においても、今言った点につきまして、いろんなほかの機関も含めてでございますけれども、連携の在り方、特にそれは犯罪被害という意味においてはまさにおっしゃるとおりです。子供のいろんな人間関係の問題ではない、犯罪の被害に子供という非常に脆弱なものが遭って、その相談を第三者にできないなり、実際にしても相談機関の職種によってストップされてしまう。そういうことがなきように徹底してまいりたいと思っておりますので、是非活発な御指導をいただくとともに、提言の内容のほうにも盛り込んでいただければ幸いでございます。
  • 椎橋議長 ありがとうございました。
     それでは、時間がございますので次の論点に移らせていただきます。
     次は「論点についての検討②」で、犯罪被害者等に対する中長期的支援でございます。これについては、内閣府、警察庁、文部科学省、厚生労働省から御説明をいただきたいと思います。この論点の検討については考になるのではないかということで、内閣府から平成21年度に実施されました犯罪被害類型別継続調査の抜粋が配布されておりますので、これに関して説明をまず伺いたいと思います。お願いいたします。
  • 内閣府犯罪被害者等施策推進室参事官 内閣府でございます。
     資料9の「平成21年度犯罪被害類型別継続調査 調査結果報告書(抜粋)」を御覧いただければと思います。内閣府では、平成19年度から21年度までの3年間で、犯罪被害者等の置かれた状況についての継続的な調査を実施して、時間の経過に伴う変化というものを把握したところでございます。今回の配付資料は、その調査結果の抜粋でございまして、3年間御回答いただいた層の経年比較分析に関するものとして心身等の問題の経年推移の状況を見たものでございます。
     調査結果の概要を簡単に御説明させていただきます。
     まず、過去30日間の事件と関連した健康上・精神上の問題の有無に関する質問というのがございまして、3年間の推移ということで、まず3ページの図表3-17を御覧いただきたいと思います。こちらにつきまして、事件と関係のある健康上の問題の有無があったか否かという問いに対する答えということになりますけれども、健康上の問題があったとの回答が約5割の水準で若干の増減を見せているというところでございます。
     また、4ページの図表3-20でございます。事件と関係のある精神上の問題があったかどうかという点についての回答、こちらについては徐々に減少する傾向にはございますが、7~8割の高い水準であるということでございます。
     さらに、1枚おめくりいただきまして5ページでございます。精神健康状態をあらわすK6の得点でございますが、過去3年間で少しずつ減少はしている。また6ページの3-23でございますけれども、少しずつ減少は見られるものの、日常生活が行えなかった、支障を来すという日数につきましては一進一退の状況にあるということでございます。
     少し飛びまして12ページを御覧いただければと思います。事件からの回復、こちらは主観的回復度ということでの調査でございます。12ページの図表3-36を御覧いただきますと、年を経るにつれまして7~8割程度回復したと思うというような回答が増加しているところでございます。しかし、お隣の赤い部分でございますけれども、9割~10割回復したという非常に高い回復度を見せる層は0~1%の水準ということで、経年の変化がほとんど見られない状況でございます。また、0~2割程度の回復、3~4割程度の回復を合わせても約7割から6割弱の割合で推移しているところでございます。
     以上の調査を踏まえまして、犯罪被害者等の心身の問題にあっては、時間の経過とともに、少しずつの回復傾向は見られるものの、相当深刻であることがうかがわれる調査結果となっているということを御報告させていただきます。
  • 椎橋議長 ありがとうございました。
     今の内閣府の説明を踏まえながら、引き続きこの論点につきまして関係省庁から御説明をお願いしたいと思います。
     警察庁から、まずお願いいたします。
  • 警察庁長官官房総括審議官 警察庁でございます。途中からの出席で大変失礼いたしました。
     それでは、資料10を御覧いただきたいと思います。
     犯罪被害者等早期援助団体における中長期的な支援への取組状況と今後の方針につきまして、犯罪被害者等早期援助団体制度を所管する立場から御説明いたしたいと思います。この早期援助団体制度の概要につきましては、1に記載のとおりでございますので省略させていただきます。
     次に「2 警察における取組状況と今後の方針」でございます。犯罪被害者等早期援助団体が充実した活動を行うためには、人的、財政的基盤を整備するとともに、情報提供制度を活用することが効果的であると考えられますことから、警察におきましては2の(1)から(3)まで記載のとおり、これら団体に対する財政的援助の充実等に努めておりますほか、団体の運営に必要な資源や助言、情報交換等を行っております。
     また、団体が行う支援が適正かつ確実なものとなるように、支援体制や情報管理体制等についてもフォローアップを行いまして適切な指導を行っているところでございます。
     今後も引き続きこうした取組を推進いたしますほか、早期援助団体において中長期的支援を担う他の行政機関、例えば地方自治体、婦人保護施設、児童養護施設ですが、こうした他の行政機関等への橋渡しが円滑に行えるよう、また、他の行政機関等が実施する中長期的支援に資する情報の提供被害者連絡協議会における情報提供、意見交換等が行われるように適切な指導に努めてまいりたいと考えております。
     以上でございます。
  • 椎橋議長 ありがとうございました。
     続けて、文部科学省から、お願いいたします。
  • 文部科学省大臣官房総括審議官 資料11が文部科学省でございます。先ほど来、御指摘いただいたスクールカウンセラーの配置状況につきまして記載をしております。
     以上でございます。
  • 椎橋議長 ありがとうございます。
     続きまして、厚生労働省から、お願いいたします。
  • 厚生労働省政策統括官付社会保障担当参事官室室長補佐 厚生労働省でございます。
     資料は資料12でございます。こちらが犯罪被害者等に対する中長期的支援ということで3つほど施策を挙げさせていただいております。
     まず「1.取組状況」の(1)ですけれども、一時保護をした後のDV被害等の女性に対する支援ということで、平成26年度からモデル事業を開始しておりまして、例えばDVシェルター等を運営するNPO法人等がDV被害等の女性に対して、生活相談や行政機関への同行支援等の自立支援ですとか、または家庭訪問とか職場訪問等の定着支援を一体的に行うといった事業を開始したところでございます。
     (2)でございますけれども、婦人保護施設における支援ということで、婦人保護施設においては、婦人相談所等で一時保護をした後のDV被害等の女性に対しまして、中長期的な生活支援ですとか、退所後の自立支援というような取組を行っております。
     (3)ですけれども、虐待を受けた子供に対する支援ということで、これは虐待が判明した後に、いろいろ家庭の状況ですとか諸般の状況を勘案しまして、なかなか親御さんと一緒に暮らすのは難しいということが判明した児童につきましては、児童福祉法に基づく措置として、例えば児童養護施設への入所措置ですとか里親委託等の支援を行っているという状況でございます。
     続いて、2の今後の方針ですけれども、(1)(2)につきましては、こうした支援を実施していきたいと考えておりまして、(3)の虐待の部分につきましては、例えば里親とかファミリーホームといったものに委託をして支援していくという場合につきましては、なるべくケアの単位を小規模化しまして、より家庭的な雰囲気の下で養育ができるように推進してまいりたいと考えております。
     この項目につきましても中島構成員のほうから御質問を頂戴しておりまして、資料13-1の2の質問②でございますけれども、婦人保護施設の支援としまして、DV被害者だけではなくて性暴力被害者の受入れの現状等に関する御質問を頂戴しております。
     まず、こちらにつきましては、婦人保護施設では、そもそもDV被害だけではなくて、売春経歴を有する者で保護を必要とする方ですとか、性暴力被害ですとか、ストーカー被害など、様々な理由で保護を必要とする方について対象としているという状況でございます。引き続きそうした方からの支援の求めがありましたら、婦人保護施設としても適切に対応してまいりたいと考えております。  以上でございます。
  • 椎橋議長 ありがとうございました。
     ただ今、犯罪被害者等に対する中長期的支援ということで、各省庁から、その取組と今後の課題ということで御説明をいただきました。ただ今の説明、あるいはそれにこだわらず、犯罪被害者等に対する中長期的支援ということで御意見等がございましたらお願いいたします。御質問でももちろん結構です。
     どうぞ。中島構成員。
  • 中島構成員 厚生労働省からお返事いただいて、ありがとうございます。かねがね性暴力被害者等が自宅へ帰れないような状況の問題について、婦人保護機関が積極的に利用できたらいいと思っておりましたので、現状そうなっているということで安心いたしました。
     ただ、多分、実際に保護する側、例えば警察とか民間の犯罪被害者支援団体はこのことを知っていて利用しているのかというのが逆に私の疑問として残っていいます。というのは、利用したという話は余り聞かないということなのです。ですので、この保護機関がこのような機能を果たしているということがもう少し関係機関に周知されて利用できるような形になるとよいのではないかと思うのですけれども、警察庁のほうではそういった形で積極的な連携とかは進められているのでしょうか。もしおわかりでしたら教えてください。
  • 椎橋議長 警察庁の方、いかがでしょうか。おわかりになれば。
  • 警察庁長官官房給与厚生課犯罪被害者支援室長 申し訳ありません。シェルター等との連携については行っていると聞いているのですが、具体的な話は手元にございません。
  • 椎橋議長 森山構成員、どうぞ。
  • 森山構成員 中長期的支援ということで、今日配られました内閣府の統計資料は非常に最近のもので、男女間における暴力に関する調査報告書、この中で性暴力被害を受けたときに誰に相談したかという中で一番多いのが友人、知人ということになっていますが、こういう性暴力の場合、特に公的な機関よりそういう身近にいる人とかに相談しやすいのは当然だと思うのですが、そういう意味で、この会議では主に省庁のそれぞれの相談窓口とか、そういうことから報告を受けておりますが、民間のワンストップセンターみたいなところでの相談というものが現実にあって、それぞれ機能して警察のほうにつなぐとか、児童相談所につなぐとか、そういうこともやっているというように聞いております。
     東京にある性暴力救援センター東京という、SARC東京、性暴力被害は2年間で576人の被害者のうち32名を警察のほうにつなぐというようなことで、これですと5.5%ぐらいつないでいますから、そういう意味でも民間からそれぞれの省庁につなぐ方法についてもそれぞれの立場で民間をもっと利用していただく。あるいは民間のほうに今後もそういう形でいろんな意味で経済的、人材的な派遣等ができるような方向も考えないと、性暴力はなかなかずっと顕在化しない典型ですので、何とかこれを克服する方法を考えていただきたいと思います。
  • 椎橋議長 ありがとうございました。
     ほかにはいかがでしょうか。
     それでは、渡邉構成員から最初にどうぞ。
  • 渡邉構成員 先ほどの類型別調査ですが、時間とともに精神的な面で回復傾向にあるというのはわかるのですけれども、これは全員がそういうわけではないわけですね。時間によってどんどんひどくなってくるというのもありますし、それは私がずっと自分の目で見てきたということがありますので、時間は解決してくれないというのが私の非常に大きな感覚というか、そういう思いです。
     それと、早期援助団体、これは各地の被害者支援センターを指しているのではないかと思うのですけれども、私が聞いた範囲では、警察は例えば非常に新聞紙上をにぎわしたような大きな事件だと警察の支援室が抱えてしまっているということで、なかなか支援センターに情報が来ない。軽微と言ったら語弊がありますけれども、軽微な犯罪については支援センターのほうに情報が来る。その支援センターも裁判が終わったらもうさようならということで手を引いてしまうケースが多いと聞いていますけれども、これでは中長期的な支援にはならないと思うのです。
     以前にも私は言ったと思うのですけれども、この言葉どおり早期援助団体という言葉を考えれば、私は事件が起こったらすぐ被害者宅に駆けつけられる、そういう体制にあるのではないかと思っていたのですけれども、実際は違うみたいです。個人情報や何かの件もあるのでしょうけれども、警察官が例えば一緒に行って、私のほうは捜査に全力を尽くしますと、犯人逮捕に全力を尽くしますと。日常生活等で困ったことがあったらこの人に相談して下さいという形で引き継いでくれれば、被害者のほうは安心して相談できる。だから、こういう体制が、これは何も支援センターに限らず自治体のそういう担当職員でもいいのですけれども、そういう形ができれば私はとても被害者は救われるのではないかと以前から思っていたのですが、その辺を是非できるのだったらやっていただきたいと思います。
     以上です。
  • 椎橋議長 御意見、御要望ですので、特にお答えいただかなくてもいいのですけれども、お答えいただければお願いいたします。
  • 警察庁長官官房給与厚生課犯罪被害者支援室長 1点補足をさせていただきますと、資料10、先ほど御説明を割愛した制度の概要の1番を御覧いただければと思うのですけれども、被害者の方に、まず情報提供に関する御同意をいただくという手順がございまして、その手続を踏んだ上で御支援をさせていただいているという実情がございます。御同意いただける場合にはもちろん早期援助団体からの御支援があるでしょうし、なかなかそれが難しい場合には、警察による支援が行われるという形になっているのが実情でございます。
  • 椎橋議長 渡邉構成員、よろしいですか。
  • 渡邉構成員 いいです。
  • 椎橋議長 それでは、中曽根構成員、どうぞ。
  • 中曽根構成員 今、ちょうど民間の援助団体で支援している者として感じることは、被害者や遺族にとって本当に渡邉構成員のおっしゃることは必要で、民間の援助団体の中で早期援助団体になっているところは努力をしているとは思っています。
     中長期的支援についてということで今いろいろ御説明をいただいて、もちろん、みんな重要であると思います。突然理不尽な形で被害に遭うと、犯罪被害者とか遺族とかは、その日からもう本当に生活が一変してしまって、精神的にも経済的にも結局はいろいろな面で追い込まれていくのが現状で、そういう意味で中長期的な支援を考えた場合には、その後の生活を立て直していかなければならないという観点からも考える必要があるのではないかと思います。
     そういう中で、1つここで今日は話題になっていないのかもしれないのですけれども、犯罪被害者の方、遺族になった子供たちについての学費等の問題について考えていただけないものかと思っています。
     私どもが支援をした中で調べてみたのですけれども、奨学金事業で給付型というのはすごく少ないです。それも条件があったりとかしています。犯罪被害者の方に対する給付型の事業を行っているところとしては、犯罪被害救援基金というのが給付型の奨学金の事業を行っていると思います。また、私どもでわかっているのでは2013年度から日本財団が預保納付金を使って奨学金事業を行っていると思うのですけれども、確かまごころ奨学金というものだと思いますが、それは無利子とはいえ貸与型です。将来結局返さなくてはならないということから利用する方たちもためらうというのが現状です。なので、経済的な面から考えても日本財団のまごころ奨学金というものを貸与型から給付型に変えることはできないかと思っているのですけれども、いかがでしょうか。
  • 椎橋議長 先ほど各府省庁の御説明に限らずということでしたので、その関係で中曽根構成員から奨学金の問題について提起があったのだと思います。確かに御遺族の子弟、犯罪被害者の子弟が学校に進学して、小学校、中学校、高校、大学あるいは場合によっては大学院と、その各過程で教育が受けられないということがあるとしたら、それは大変な問題だと思います。ですから、そういう意味では奨学金も貸与型ということになると、そのときは実際に日本財団の場合にも受けている方はいるのですけれども、まだ数年なのでその運用の評価は軽々に葉できませんけれども、奨学金を借りて大学とか大学院まで行ったら相当な借金をしてしまうということになって、これは大変なことになったなということになると、その返済を考えて進学をためらってしまうというようなことになることは大変な問題だと思います。
     私の知るところによれば、日本財団のほうも今は貸与型だけれども、内部では給付型にするべきだという意見が強く出ておりまして、その検討をしている。金融庁がどう判断されるかということが多分一番大きなポイントになるのではないかと思います。事務局のほうで何か知るところはございますか。
  • 内閣府犯罪被害者等施策推進室参事官 御指摘の日本財団の奨学金事業ですが、今、議長からもお話がありましたように金融庁が担当省庁でございますので、金融庁と、会議で資料等の提出あるいは御説明等をいただけるかどうか、相談させていただきたいと思っております。
  • 椎橋議長 多分今の問題提起というのは大きくて、可能性も相当あるのではないかと思うのです。変な話ですけれども、預保納付金は振り込め詐欺等によって不当に被害に遭ったお金について、まずは被害者に返す。しかし、返還を申し出ない方がたくさんおられ、その額がかなりの額になる。しかも非常に残念なことですけれども、その被害額がなかなか減らないということがありますので、そういう意味では、預保納付金をどういう使い方をするかということについては、奨学金を貸与から給付にするということについては、これは私の全くの考えですけれども、関係当局の決断次第ではないかなと思われますので、ここでそういう御意見を出していただくということは大変結構なことだなと思います。
     それでは、言い過ぎたかもしれませんが、事務局が関係当局と相談した上で、また御提案させていただきたいと思います。
     それでは、最後の、その他でございますが、渡邉構成員から資料を提出していただいております。2月に開催されました会議におきまして、渡邉構成員から新たな経済的補償制度の創設に関して、これを論点として取り上げるか否かについて構成員間で検討していただきたいという御意見があったことは覚えておられることと思います。これに関しては、犯罪被害給付制度の拡充及び新たな補償制度の創設に関する検討会では議論されなかった新たな視点、切り口に関する資料、これを渡邉構成員から後日提出していただいて、改めて当会議として論点として取り上げるか否かについて検討するということで終わっていたと思います。本日、渡邉構成員より、これに関する資料が提出されましたので、渡邉構成員から御説明いただいた上で論点として取り上げるかどうかということについて検討したいと思います。
     渡邉構成員、お願いいたします。
  • 渡邉構成員 まず最初に委員の方にお願いしたいのですが、この調べた結果は一応匿名にはしてあるのですが、都道府県も載っていますし、見る人が見ればどの事件だというのがわかりますので、取扱いには十分気を付けていただきたいと思います。
     前回の検討会で、2年以上にわたって犯罪被害給付制度の拡充及び新たな補償制度の創設に関する検討会という場で検討していただいたというのはよくわかっているのですけれども、はっきり言って、あすの会でも補償制度案要綱を出して是非検討して下さいということでお願いしたのですが、ほとんどの時間が犯給法の検討に終始したと私は理解していますし、当時、構成員だったあすの会の松村代表幹事もそういうように言っています。
     話し合われた結果が、外国で被害に遭った人にも見舞金を出そうと、これが自民党案ではほぼ100万円という形で、私に言わせれば全く意味がないというか、金額的にも非常に不満だと。ただ、被害に遭った人は非常に人がいいのですね。たとえ100万の見舞金でもとりあえず取っかかりができたことは非常にうれしいということで評価してくれているのです。ですから、それは私どもとして少しは救われたかなという気がします。
     それと、委員の大部分が、親族間については原則支給として、個別に検討して不支給もやむなしというものについては不支給に、あるいは減額もやむなしの場合には減額にという話があったと思うのですが、原則不支給。別居している場合とか、あるいは児童虐待事案については一部支給するとかという形に一応落ちついたということで、成果としてはそのぐらいということで、私どもが調査した16例、これで見ると救われる人は誰もいない。依然として放っておかれたままの状態で苦しい生活を強いられなければいけないという形で、働きたくても物理的に働けないとか、あるいは雇ってもらえないとかという方々が生活保護を受けて非常にみじめな生活を送っている。これで社会正義と言えるのだろうかという気がいたします。
     特に1番の女性等は、支援センターの要請で犯罪被害者の生の声ということで講演に行くのですけれども、そのときに多少謝礼が出る。一時は社会福祉事務所から交通費、謝礼ともに収入とみなしますので返して下さいと要求された。交通費まで収入とみなすのはおかしいのではないかということで抗議した結果、交通費は結構です、ただ、謝礼は収入ですと言われたと。その後も、新聞記者や何かが取材に行ったり何かすると、今回に限っては謝礼も全て返さなくて結構ですというように言っていることが二転三転して変わってくるということで、非常につらい思いをされている。
     一つ一つ説明していくと時間も大変ですので、要するに、前回の検討会で出た結論からいくと、この被害者は誰も、このほかにもまだたくさんあるのですけれども、今回ここに出したのは16例だけということですけれども、誰も少しも救われないという形で、実際に困っている被害者が救われるような、実効ある制度を是非お願いしたいということです。
     犯罪被害に遭った直後から生活に困っている被害者がずっとずっと生活に困っているかというと、そんなことはありません。私どもも調査した中で面談した被害者でも、当時よりも頑張って頑張って収入が増えているという被害者もいます。ですから、年金制度でいくと雪だるま式に支出が膨れ上がってどうしようもないという意見もありましたけれども、そういう心配はそんなにないと思います。
     以上です。
  • 椎橋議長 ありがとうございました。
     それでは、構成員の皆様に御意見をお伺いしたいと思います。
     論点として取り上げるかどうかということでございます。今お伺いしても、16の例を拝見しても、お気の毒な事案ばかりであるということはそのとおりだと思います。ただ、前回の会議からの流れの中で、今回新たな論点として取り上げるかどうかということにつきましては、新たな視点、切り口、あるいは前回議論した後の事情変更を踏まえての御主張ということで、そうであれば論点として取り上げる。そのようには見られないということであれば難しいということになるのではないか。議長として整理するとそういうことになると思います。御意見をお伺いしたいと思います。
     中島構成員、どうぞ。
  • 中島構成員 今日の議題自体が中長期的支援ということでございましたし、私も調査の委員になっております類型別調査におきましても、長期的に経済的な困窮を抱えている方の数が決して少なくはないというのが過去の調査でもわかっていることだと思います。ですので、前回検討した内容そのままということではなくて、経済的な支援のより拡充ということで奨学金制度の話も出ていますし、ここだけに焦点を合わせるわけではなく、そのことももちろん含まれるという形で、経済的支援の拡充という視点の中で、ほかの議論も入れていって検討するというのは重要なことではないかと私としては思っております。
     繰り返し出てくるということは非常に深刻でもありますし、重大でもありますし、私どもの外来にいらっしゃる方たちも経済的に悩んでらっしゃる方もいると思います。なので、幾つもの切り口もあると思うのです。現状の支援が利用できていないこともあると思いますので、経済的な回復ということにおいて、そのうちの1つという視点で取り上げていくことはできるのではないかと私自身は思っております。
  • 椎橋議長 ありがとうございました。
     ほかの構成員の方、いかがでしょうか。
     どうぞ。
  • 中曽根構成員 簡単ですが、同意見です。先ほど奨学金のこともお話をさせていただきましたが、そういう意味で被害に遭われた方が経済的に困窮している状況において、どのような形でどういうところの社会資源をどんなように被害者の方たちにつなげることができるかということも含めながら、いろんな団体・機関が連携できるかどうかということも考えながらということで取り上げていったらいいのではないかと思います。
  • 椎橋議長 先ほど中曽根構成員が問題提起された奨学金について貸与制から給付制にするという点については、これは今までに議論されたことがない問題だということでありますので、まさに新たな視点ということになると思うのですけれども、渡邉構成員が今日提起された問題は、確かにこれらの事例については我々が新たに拝見するということで新しいのですけれども、その中身をどういうように扱っていくかということを考えた場合に、例えばこういうお気の毒な被害者の方々がおられるので、経済的支援を全然受けていない方については犯給法の適用を受けられなかった、あるいは受けたけれども、額が不当に少なかったとか、あるいは一括して支給するというようなものよりも年金制度がいいとか、そういう年金制度の問題とか、犯給法の適用の問題については前に議論しているということがありますので、その場合は、前に行われた議論の繰り返しになるおそれがありますので、新しい切り口という場合には、もう少し御説明をいただければと思うのですが、渡邉構成員、いかがでしょうか。
  • 渡邉構成員 新しい切り口と言われても困るのですが、1つは基本法第3条第3項、平穏な生活を取り戻すまで途切れのない支援をする。国はその責務を有するという基本法の精神をいかしてほしいというのが1つなのです。  いろんなところから、先ほどの奨学金の貸与ではなくて給付にするとか、そういう個々の問題はもちろん大切ですけれども、本当の生活の立て直し、これが一番必要なのではないかなと。いわゆる犯罪者は三食保障されて刑務所暮らししています。お風呂も入れます、本も読めます。テレビ付きの個室に入っている加害者もいます。それに比べて、犯罪被害者は捨て置かれていると言ったら語弊がありますけれども、見られていないというのが私どもが調査をして感じた現実です。ですから、犯罪に遭ったから、その後、国で全部面倒を見ていい生活をさせてくれということは言っていません。せめて加害者と同じように安心して生活ができる、そういう補償を国がして下さいと言っているだけですので、構成員の方々もそこまではやる必要ないよと、前回の検討会で十分議論を尽くしたよということでおっしゃられるのだったら、それはそれでやむを得ないと思います。
     以上です。
  • 椎橋議長 ほかの構成員の方、いかがでしょうか。
     森山構成員、どうぞ。
  • 森山構成員 平成17年に犯罪被害者等基本計画ということで始められて、第2次まで来て、今度は第3次ということになると思うのですが、やはり重点課題自体は5つのものをそのままずっと引き継がれてそれぞれやるというので、基本的には視点としては、まず最初に損害の回復と経済的支援のための損害賠償命令とかいろんなこと、それなりに実現もされてきていますが、それは拡充しなければならない問題がずっと残っていると思いますので、拡充という視点で重点課題の中に含まれると私は思われますので、渡邉構成員の出されたことについても、今後も論点として取り上げていただきたいと思いますし、損害賠償、判決が出てもただの紙切れにすぎないという現実、これについても我々としても放っておけないとは思っていますけれども、いずれ将来的、中長期的にはそういうことできちんと論点として取り上げるようなことをしていただきたいと考えていますので、具体的な意見については、渡邉構成員の意見を尊重したいと思っています。
  • 椎橋議長 ほかにいかがでしょうか。
     この16例をざっと拝見しますと、医療費の現物給付の要望、親族間の犯罪で不支給になったが、それを支給対象にしてほしい。一定の犯給金の支給を受けている方については、年金制度にしてほしい。こういうような要望があるわけですけれども、犯給金の不支給の事案では、それが不支給になったのが不当だったとか、そういう具体的な問題というのはあるかもしれませんが、一番大きな議論があったところであったと思います。親族間の不支給の問題については、今後はDVだけではなくて児童虐待の事案も支給の方向で考える。それ以外の場合でも運用において広げていこうということで前回の会議では結論が出たというところであります。
     年金制度化の問題、医療費の現物支給の問題については、なお現行社会保障制度との関係で難点があり実現は困難であるということで前回の会議は決着したと思っておりますので、本当にそれぞれの事案については何とかしなければいけない、お気の毒だなという気持ちは私も全く同じ思いなのですけれども、結局前の議論と同じ議論を繰り返すおそれがある。以前の会議の議論を無視する訳にはいきませんので、その点も考慮に入れながら、さらに構成員の皆様方のご意見を伺いたいと思います。
     瀬川構成員、どうぞ。
  • 瀬川構成員 議長もしんどいところだと思います。引き続いている会議体なので、恐らく椎橋議長から見たら、今のような答えが通常の常識的な答えだと思います。ただ、せっかく渡邉構成員がこういう資料を出されてもう一回みんなで考えてほしいと言われているわけですから、このまま終わっていいのかどうか。我々も今日初めて見ていますので、もう少し十分に資料を精査する時間が必要なのでは。あるいはまた渡邉構成員のほうからも、今、椎橋議長がおっしゃったような観点からいろんな資料を補充していただき、全員が納得できるような状況をつくって、それから議論してもいいのではないか。また、事務局も議題のプランや日程があるはずなので、早急に今すぐ検討せよといわれても困るのではないでしょうか。今日、中曽根構成員の問題提起がああいう形でスムーズにいく可能性も出てきたように、大上段にかまえた議論ではなくて、個別的に、具体的な解決策を見出していこうとする姿勢を我々も持って、渡邉構成員のおっしゃることをみんなで考えてみようという感じで本日は終わってはどうかと思います。
  • 椎橋議長 わかりました。ありがとうございました。
     それでは、渡邉構成員の見解に賛成の意見もございましたし、今、瀬川構成員も言われたように、もう少し検討する時間をいただいて、今日は結論を出さないで次回に持ち越したいと思います。その間に事務局に御意見を寄せていただいたり、あるいは次回のときにまた論点にするかどうかということについて検討させていただきたいと思います。どうもありがとうございました。
     本日の検討事項は以上でございます。最後でございますけれども、5月3日の委員の任期満了に伴いまして、小西構成員が御退任されると伺っております。小西構成員におかれましては、平成17年から10年間、委員を務められましたけれども、本日が最後の御出席ということになります。
     そこで、小西構成員から最後に本日の検討事項でも結構ですが、それにとらわれずに全般的な御意見あるいは今後の犯罪被害者支援に望むことなどについて御発言いただくとともに、一言御挨拶いただければと思います。
     小西構成員、よろしくお願いいたします。
  • 小西構成員 もう時間がないところで本当に失礼いたします。10年間どうもありがとうございました。
     最初の時のことを考えますと、いまだ道半ばのこともたくさんありますが、それでもいろんなことが変わってきたとは思っています。
     去年実際に被害に遭った方で、地方検察庁からの支援で御紹介され、警察の同行の支援員と一緒にいらっしゃって、私のところで裁判のための診断をして、その後、PTSDの認知行動療法をやり、さらに法テラスから被害者精通弁護士の紹介を受け、御自分で裁判の中で遮蔽を使って証言された方がいました。被害直後はお仕事もできなかったのですけれども、今はもう再開されていますし、裁判もやっていくと言うことで、どの1つの支援も10年前はなかったのだなというか、それも十分に動いていなかったのだなと思うと、そのケースについては感慨を持ちました。
     今後のことなのですけれども、要望のほうに書かせていただきましたが、潜在化する被害者について扱っていただけることには賛成です。その中で、特にここの検討会でなくてはできないことというのを検討していただけたらと思っていまして、ここにあることは大体3つ書いてありますが、1つは、司法の中で本当に被害者のことに精通する人というのをつくっていただく時期なのではないかと思います。警察も検察も裁判所もさまざまな努力はされていることはわかりますし、以前よりはよくなったけれども、先ほどの議論と一緒で、研修を受けるということは人ができるようになるということとは違いますね。実際に専門と言える立場で本当に被害者のことを理解して扱ってくれる専門職、海外にはございますが、そういう人たちをもう少し強力に、そんな全員がなる必要はないですけれども、少数でも養成していただけないかなというのが1つの考えです。
     というのは、例えば子供の被害については、そういう人がいない限り聞くこともできないし、状況を的確に捉えることもできない。それは福祉の分野でも医療の分野でも同じですけれども、司法の分野でもきっと同じはずなのです。潜在化しやすい被害者を扱うということでしたら、やはり性犯罪や子供のことに関しては専門的な人をつくっていくということを考えていただけないかということが1つです。
     もう一つは、紙にはみんな書いてあってできているはずだけれども、できていない連携というのを、どうしてできなくて、どういうところならできているのかということも検討していただくということはやっていただきたいなと思っています。
     もう一つは、今、ちょうど議論になっておりましたけれども、犯罪被害給付制度において家族内の犯罪についての前年度の議論で一応の決着を見ましたが、やはりこれについては原則個人の単位で給付する、さらに様々な事情については勘案するという形にしていただかないと、確かに社会の連帯共助の精神にのっとってやる。それはそれでいいのですけれども、もう連帯共助そのものが伝統的な家族に乗ってできるわけではないです。私たちはすごく意識的にそういうことをやっていかない限りできないので、このところは根本から変えていただいたほうがいいのではないか。現行がどうかということではなく、やはり考え方の問題としてそうではないかなと思っております。
     ほかにもいろいろあったと思うのですけれども、今、何か現実に提案できそうなこととして挙げさせていただきました。本当に10年の間いろいろ勉強させていただきまして、及ばないこともたくさんありましたが、皆様のおかげで何とかやってこられたと思います。どうもありがとうございました。
  • 椎橋議長 ありがとうございました。
     引き続きこの会議に携わる我々といたしましては、ただ今の小西構成員の御意見等を踏まえながら、犯罪被害者等の立場に立ったより良い新たな基本計画策定に向けて充実した議論を進めていきたいと考えております。長い間、いろいろな思いがおありだと思います。今、少しお話しされましたけれども、もう何十倍、何百倍もいろいろお話しされることはあると思うのですけれども、本当にありがとうございました。引き続き犯罪被害者等施策に関して御協力、御指導のほどをお願い申し上げたいと思います。
     それでは、次回の日程に関する連絡がございます。事務局からお願いします。
  • 内閣府犯罪被害者等施策推進室参事官 次回の会議でございますが、5月26日火曜日の午後4時から、場所はここの会議室の隣の特別中会議室でございます。
     議題は、犯罪被害者等の安全・安心の確保、民間団体の活動促進、加害者の損害賠償責任の実現方策について御検討いただく予定でございます。論点の取組状況、今後の方針等について御説明していただく省庁ですけれども、犯罪被害者等の安全・安心の確保については、警察庁、総務省、法務省、厚労省、国交省。民間団体の活動促進について、内閣府、警察庁。加害者の損害賠償責任の実現方策について法務省等を予定しているところでございます。
     作業手順にありましては今回と同様でございます。関係省庁から提出のありました資料等につきまして会議開催の2週間前までに構成員に送付させていただきます。これを受けまして、構成員の皆様から1週間前までに御意見、御質問等を提出していただければと思います。
     以上でございます。
  • 椎橋議長 ありがとうございました。
     司会の不手際で大分長い時間超過してしまいまして、誠に申し訳ございませんでした。これをもちまして第17回の「基本計画策定・推進専門委員等会議」を終わります。本日はどうもありがとうございました。
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