コラム

メディアに対し、依然として厳しい国民の目 (元朝日新聞論説副主幹 臼井敏男)

 犯罪被害者とその家族は報道関係者からしつこく取材を受けているかどうか。「あてはまる」、「ややあてはまる」と答えた国民は81.9%にのぼった。2年前の前回の調査では、82.5%だったから、ほとんど変っていない。  「事件に直接関係のない私事に関する報道をされる」についてはどうか。「あてはまる」、「ややあてはまる」と答えた人が77.7%。「間違った報道をされる」が54.8%だった。

 前回は、この2つの質問をまとめて、「事件に直接関係ない私事や不正確な報道をされているかどうか」と聞いていた。「あてはまる」、「ややあてはまる」で79.2%。これも大きな変化はない。

 大きな事件が起きれば、新聞やテレビの記者、カメラマンが被害者の自宅に駆けつける。その写真や映像が流れる。被害者や家族が「そっとしておいてほしい」と取材の自粛を求めることもある。メディアの側も取材の方法を各社で話し合ったり、代表取材にしたりしている。しかし、国民からはまだまだ理解されず、厳しい目が続いているということだろう。

 一方で、犯罪被害者はメディアの取材と報道をどう受け止めているのか。「あてはまる」、「ややあてはまる」で見ると、「しつこく取材を受ける」で2.2%(前回7.3%)、「私事に関する報道をされる」で3.1%、「間違った報道をされる」で3.7%。前回は「私事や不正確な報道」で11.2%だった。被害者の受け止め方はいくらか良くなったと見えるかもしれない。

 しかし、今回答えてくれた被害者の80%は犯罪にあってから3年以上たっている人たちである。全体の数字だけで、この2年間に被害者の受け止め方が変わったと単純に見るわけにはいかない。

 そもそも犯罪が起きても、メディアが直接取材したり、事細かに報じたりするケースは多くはない。「しつこく取材された」、「プライバシーを侵害された」という被害者の割合が小さいのは当然なのだ。数字の小ささで、ほっとするわけにはいかない。

 被害者が何を考え、何を社会に求めているのかを知るためにも、メディアは被害者に積極的に取材する必要がある。積極的に取材しつつ、被害者の人権を守る。そうなって初めて、メディアに対する国民の目もやわらぐと思う。