コラム

犯罪被害者に対する公的支援と民間支援
(全国犯罪被害者の会(あすの会) 副代表幹事 松村恒夫)

昨年に引き続いての犯罪被害者等に対する国民意識調査であるが、犯罪被害者に対する国民の理解・認知度が全体としては、進んでいるようには見られなかった。昨年11月には、第3回目の犯罪被害者週間行事として様々な催しが国民的行事として行われた。しかし、犯罪被害者等施策、支援の関係者に対する啓蒙の域を出ず、広く国民の理解を増進するまでには至っていないのは残念である。

 特に、犯罪被害者等施策の基本である「犯罪被害者等基本法」について、半数以上の国民が初めて聞いたという答えからもそのことは明らかである。犯罪被害者に対する施策及び理解へのより積極的な広報活動が必要であろう。

 しかしながら、被害回復に繋がる支援とは?の設問で、国や自治体からの支援及び被害者団体からの支援が昨年より10%近く上昇したことはそれなりに関係機関が努力したことが評価されたものと思われる。反面、支援団体からの支援の満足度は約11%、行政からの経済的な支援の満足度は5%であり、充分とはいえないと思われている。いずれにしても支援が満足に行われていないとの認識をもっており、家族・友人・近隣の住民や同じ被害を経験した被害者からの支援が被害から回復するための最も重要な方法であると考えられている。

 昨年度から犯罪被害者に対する公的支援として、犯罪被害者等給付金(支援金)の拡充や損害賠償命令制度、公営住宅への優先入居、国選弁護制度等の施策が施行されているが、一般国民はそのことをまだ知らないと思われる。今後、周知徹底されていけば、支援の満足度がかなり改善されるのではないかと思われる。

 一方民間支援についても、犯罪被害者の精神的自立への励まし・支援、日常的な話し相手になることをはじめ、被害者の傍らにいて、被害者の事を理解している人がここにもいるのだということを身近な支援として行われる事が重要だと国民は考えている。さらには、カウンセリングや同じような体験をした被害者同士が語り合う機会を持つことが有効だと思っている。

 犯罪被害者になったら、ワンストップで必要な支援が受けられるシステムが構築されることが急務であり、必要に応じて諸施策が見直されていくことが、犯罪被害者が被害から回復し、事件以前に近い状態に戻れる道であると思う。その為には、犯罪被害者になったら何処へ行けば必要な支援が受けられるのかを日常的に知っているか、あるいは教えてもらえるかがその第1歩であると信じる。