5.国民の理解の増進と配慮・協力の確保に向けて

(1)調査結果全体から

 今回の調査を通して明らかになった点を、以下に示す。

  • 国民一般が「重犯罪の犯罪被害者等」として思い描いた「犯罪」で最も多いのは、「殺人・暴力犯罪」であり、犯罪統計で示す実態とは大きく乖離している。一方、本調査において対象となった犯罪被害者等の犯罪で最も多いのは、「交通犯罪」であり、次いで「性犯罪」、「暴力犯罪」の順である。(第2章第2節1、第3章第2節3)
  • 国民一般が得ている報道情報源は、圧倒的にテレビであるが、平成18年度との比較ではウェブサイトの躍進が目立つ。(第2章第2節2)
  • 犯罪・司法に関する用語に関しては、国民の義務として間もなく導入される「裁判員制度」が国民一般に広く認知され理解されているほか、「PTSD」も半数の人たちに理解されているが、その他についての浸透度は低い。(第2章第2節3)
  • 国民一般の約半数が、日常生活において重犯罪に巻き込まれる不安を感じているが、その中で「地域社会に具体的に関わっている人」は不安を感じる度合いは比較的低い。一方、不安を感じている人は、犯罪被害者等支援に関心があり、犯罪被害者等をより一層理解したいと思っている人が多い。(第2章第2節4、第2章第5節)
  • 国民一般は、犯罪被害者等の心情や置かれている状況について、前回の調査と比較して、二次的被害の面は改善されていると認識しているようであるが、一方で「自分の気持ちは誰にもわかってもらえないと思っている」、「自分は不幸だと思っている」などの孤立・孤独感を連想させる認識が若干高まっているように思われる。(第2章第3節1~2)
  • 国民一般は、犯罪被害者等の心情や置かれている状況について、犯罪被害者等よりもより深刻なイメージを抱いている。犯罪被害者等の中では、家族よりも本人の方が深刻に捉えている。(第4章1、第3章第3節1~4)
  • 国民一般のうち、本人・家族を除いた身近で重犯罪に遭遇した経験を持つ者(過去5年以内)は約7%であるが、その犯罪の種類は、人が犯罪の被害者として想起する犯罪の種類にある程度影響を与えている。(第2章第2節5~6)
  • 刑事政策に関して国民一般は、一般的には「凶悪犯罪を減らすためには厳罰化が必要である」と考えているが、個人としては「日頃の自分の行動に十分注意することの必要性」を認めている。一方、犯罪被害者等に対する理解を深める努力や支援への思いは、必ずしも高くない。また、男性に比べ、女性の方が加害者への認識(再教育、特別予防など)が多少強い。(第2章第2節8)
  • 犯罪被害の影響からの回復にとって何が有効であるかの認識に関しては、犯罪被害者等と国民一般の間には明らかな違いが見て取れる。犯罪被害者等は「加害者からの謝罪や弁償」を重視しているのに対して、国民一般は「カウンセリング」をあげている。(第4章1)
  • 犯罪被害者等が回復する上で必要とした支援は、犯罪被害者等は直後には「警察との対応」や「事件についての相談相手」を求めているのに対して、国民一般は「プライバシーへの配慮」をあげ、両者の間には支援に関しても認識の違いが読みとれる。半年を経過した時点では、犯罪被害者等は「そっとしておくこと」に対して、国民一般は「精神的な自立への励まし」をあげている。(第4章1)