3.犯罪被害者等の実態

3-5.犯罪被害者等の実態についての総括

<加害者との面識の有無による相違>

1.犯罪被害者等と加害者の面識の有無(問12)は、「無」が約75%で4人に3人の割合であるが、犯罪被害者等の精神的苦悩は、面識の有無で大きな差が見られる。

 犯罪被害者等が加害者と面識があることは、事件前の関係性を保持したまま、新たな対立関係を生じることであり、周囲の目も加害者と犯罪被害者等の関係に好奇の目をもって接することも多いと思われる。また犯罪被害者等と加害者の相互の家族の関係など、切実な苦悩が生じていることも推測される。したがって、加害者と面識のある犯罪被害者等は、より絶望的な状況に陥る場合が多く、孤立感、暮らしの場や周囲からの逃避、将来への絶望感などの精神的な苦悩の大きさが、面識の無い犯罪被害者等との大きな差となって表れていると推察される。そうした状況は、一方ではコミュニティや所属する組織などが本来ケアするべきかもしれないが、現実には難しい。犯罪被害者等の立場に立って、どのような悩みを持っているのかを考え、身近なところで支援が受けにくいようであれば、支援機関などの情報を伝えることも必要であると考えられる。

問14 事件後の心境や状況 <「加害者との面識の有無」別>

図3-59:問14 事件後の心境や状況 <「加害者との面識の有無」別>

加害者との面識の有無と犯罪被害者等の精神的苦悩

図3-60:加害者との面識の有無と犯罪被害者等の精神的苦悩

<事件後の経過年数による相違>

1.犯罪被害者等の現在(調査時点)の心境は、事件後の経過年数と対応するものと対応しないものがある。事件後の経過年数で比較すると「5年未満」と「5年~15年未満」のスコアが高く、「15年以上」との差が大きい項目が多い。15年未満と5年未満の差がそれ程大きくないということは、犯罪被害者等の精神的な状況が15年ほどは持続されたままであり、15年を過ぎると多少の変化(弱まる傾向)が見られるということが考えられる。一方、年数が加わるほど高く・強くなる傾向にあるのは、「自分は不幸だと思った」、「自分の気持ちは誰にもわかってもらえない」、「将来の夢や希望を持てずにいた」などで、1人の人間として自尊心を取り戻して前進するための前向きな気持ちへの高まりは、15年を経て更に重くのしかかり、癒されないことがわかる。

問14 「事件後の心境や状況」 <事件後の経過年数別>

図3-61:問14 「事件後の心境や状況」 <事件後の経過年数別>

2.回復に有効と思うことを、事件からの経過年数別に見ると、中間の「5年~15年」が高く、加害者との関係(処罰や弁償、謝罪など)は「5年以上」経ってからが重くのしかかってくる問題であることがわかる。そうした問題の多くは時間が解決していく傾向にあるが、一方で「犯罪被害者等に対する地域の人々の理解協力」や「犯罪被害者等に対する国民の認知・理解」では、年数が経ってからの方がより有効であるとしている。犯罪被害者等の苦悩が長い間続き、その理解を求め続けていると言えよう。

問28 犯罪被害回復に有効な処置 <事件後の経過年数別>

図3-62:問28 犯罪被害回復に有効な処置 <事件後の経過年数別>

<加害者からの謝罪の有無による相違>

1.犯罪被害者等の中で、加害者から謝罪を受けた人(問15)と、謝罪を受けなかった人では、犯罪被害の回復に有効であるとする事柄が異なっている。謝罪を受けた人が、回復に有効であるとする事柄は、加害者の謝罪、加害者の被害弁済、公的経済援助であり、逆に謝罪を受けない人が謝罪を受けた人より被害の回復に有効であったとする項目は、適正な処罰や裁判での意見陳述である。謝罪を受けた人は、加害者に適正な処罰や裁判での犯罪被害者等の意見陳述の機会を得るよりも、加害者の被害弁償や加害者からの謝罪が被害の回復によりつながるとする傾向にある。

問28 犯罪被害回復に有効な処置 <加害者からの謝罪の有無別>

図3-63:問28 犯罪被害回復に有効な処置 <加害者からの謝罪の有無別>