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犯罪被害者等施策
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地方公共団体による事例発表


「神奈川県における犯罪被害者等支援の取組み」
神奈川県安全防災局安全安心部犯罪被害者支援担当課長 川合 充 氏

 ただいまご紹介あずかりました神奈川県の安全防災局安全安心部という部がこの4月に組織改正でできまして、その部に所属します犯罪被害者支援担当課長の川合と申します。全国的にも多分犯罪被害者支援に特化した課長級のポストというのは、私が今いるこのポスト、神奈川県ぐらいかなというふうに思っております。先進事例の紹介ということで、ご紹介受けましたけれども、何といっても神奈川県は松沢という知事が、今、二期目の最終年になっておりますけれども、松沢知事が二期目、平成19年に立候補されるときに、新しい11の条例をつくりますというマニフェストを出しまして立候補されて、結果、平成19年の4月に当選をされたのですけれども、新しい先進的な条例のうち、これは皆さんもご存じの禁煙条例をつくりますというのもあったのですけれども、その11のうちの1つに、犯罪被害者支援の条例をつくりますということで立候補されて当選された。犯罪被害者支援を神奈川県の総合計画の重点事業の1つに位置付けて本格的に県行政としての事業をスタートしたのが平成19年ということになります。ですので、まだまだ3年が経過したところということで、歴史とか伝統というか、そういうことがあるわけではなくて、まだまだ新参者ということになると思います。
 お手元にパワーポイントの資料をお配りさせていただきました。1 ページ目の右上のほうからご説明をさせていただきますが、20分程度という時間なので、途中ポイント、ポイント絞ってお話をさせていただきたいと思います。

 平成19年度、本格的にスタートして何をやったかというと、資料記載のとおり、県行政としての窓口、総合相談窓口を設置して、警察官のOBですけれども、非常勤の相談員を配置したということ。もう一つは、先ほど冒頭触れました課長級のポスト、私の今いるポストを新たに配置して、犯罪被害者支援に特化した事業をスタートさせたということになります。それ以外に有識者懇談会というものを設置しまして、これは大学の先生とか、弁護士さん、臨床心理士さん、その他関係の方に構成員になっていただきまして、神奈川県として充実していく事業は何か、それと県で条例をつくる必要性について議論をしていただいたという経緯がございます。
 翌年の平成20年5月にその有識者懇談会からの提言がございまして、必要な支援施策と県として条例の制定が必要だというご提言を受けまして、平成20年度にパブコメやら県議会での議論等を経て、平成21年4月に神奈川県の条例が施行されたという経緯がございます。
 以下、県の条例の説明書きというか、資料がございますが、1点だけ神奈川県として、なぜ条例が必要なのか。これは県議会からもいろいろ言われました。先ほど広尾町の町長さんのお話にもありましたけれども、神奈川県でも特に県議会議員から、法律があるのだから、県で計画をつくればいいのではないかという議論はありました。それに対して県当局としてご説明をした必要性、資料には記載はないのですけれども、強いて言いますと、1ページ目の右の列の中段、県条例の3条に基本理念というのがございます。基本理念のうち、1つ目の「適切できめ細かい支援を途切れなく提供」する。これは将来にわたって、こういう支援を安定的に提供していくためには県・自治体としての最高の法規範であります条例をつくって進めていくべきだという点がまず説明の1つ目でした。
 2つ目のポイントとしては、今度は横幅の話なのですけれども、犯罪被害者が必要とする支援というのは非常に多岐に及びます。行政だけではすべての支援ができません。ということで、先ほど船越専務さんがお話された民間支援団体のご協力、あるいは県民のご理解が欠かせないということで、そういうすべての方たちのご協力を得るためには、条例の中で県の姿勢を明確に位置付けて、その条例に基づいて、地域社会全体で支えていく必要があるということでご説明してきております。
 1ページ目から2ページ目にわたりまして、県条例の説明がありますが、省略をさせていただきます。

◎ かながわ犯罪被害者サポートステーション
 2ページ目の中段になりますサポートステーションのお話をさせていただきたいと思います。
 条例の中に総合的支援体制を整備しなさいという条文がございました。県と警察と民間支援団体の三者で一体となって支援に取り組む体制ということになります。この条例を受けまして、昨年6月に「かながわ犯罪被害者サポートステーション」を立ち上げました。
 体制としては、先ほど支援センターの船越専務さんからお話もありましたけれども、県は私以下、非常勤の相談員さんも含めまして、現在8名の体制で常駐をしております。警察は被害者支援室の警察官2名と臨床心理士の職員が3名おります。合わせて5人。警察につきましては、県警本部のほうに被害者支援室の本体がありまして、組織としては分室という位置付けでサポートステーションに務めている。警察の職員は、特に警察官の方たちは現場に行くことが多いのでサポートステーションには出張のついでに寄るみたいな形で朝から夕方までいるということはないんですけれども、一応そういう形で配置をしていただいている。
 支援センターさんにつきましては、船越専務以下、ボランティアの相談員さんも含めてまして7~8名の体制ということで、合わせますと約20名の体制で昨年の6月からスタートをしております。

◎ かながわ犯罪被害者サポートステーションにおける主な支援
 2ページ目の右の列の中段になりますけれども、サポートステーションにおける主な支援ということで、項目だけ記載をさせていただいております。大体が皆様各自治体で行っている支援と共通するものだと思いますけれども、特徴的なものといたしましては、下のほうから4つ目、緊急避難場所ということで、これは平成21年度から県の事業として、ご自宅で被害に遭われた方の緊急避難場所としての、ビジネスホテルの宿泊料1泊1万円ぐらいということでご案内をさせていただいているのですが、3泊まで県が宿泊料についてはご負担しましょうと。食費は本人さん払ってくださいということなんですけれども、そういうことで実施を昨年度からしているものです。
 その下の生活資金の貸付ですけれども、これも21年度から県の新しい事業として実施をしております。貸付のメニューが2つございまして、1つは国の給付金の対象となるような被害を受けた方、そのご遺族の方に緊急の貸付ということで、上限100万円になりますけれども、県からお貸しする。貸付なので、給付金が振り込まれたらそれで返してくださいという性格のものです。
 もう一つのメニューが、これは給付金の対象にならない比較的軽い傷害事件の被害者さん、だけど、けがをして商売ができないというような方もいらっしゃるので、そういう方へ、こちらのほうは上限が30万円になっておりますが、貸付をするというものであります。

◎ かながわ犯罪被害者サポートステーション
 こういった事業を行っているところですが、2ページの左下のシートをごらんいただきたいと思いますが、三者でどういう役割分担でサポートステーションで支援を行っているかの説明を簡単に記載させていただいているのですが、県につきましては、記載のとおり、弁護士による法律相談や貸付、ホテル、県営住宅の提供、主にお金のかかるというか、そういう支援を中心に行っているほか、広報の関係、市町村等関係機関との連絡調整を県が担っているところであります。
 警察につきましては、被害者の方、ほとんどのケースが一番最初に接するのが所轄の警察官の方ですので、所轄からの情報に基づく初期の段階での支援、特に先ほど臨床心理士の職員がいると申し上げましたけれども、臨床心理士の職員による直接支援やカウンセリングなどを行っているところです。
 先ほど支援センターさんのお話にありましたとおり、神奈川の被害者支援センターさんにつきましては、県の臨床心理士会と協定を結んで、その協定に基づく中長期に及ぶカウンセリングや主に裁判の傍聴などの付添い支援のほか、自助グループの運営育成などを担っていただいているところです。
 先ほどのご説明にもありましたとおり、留意点ということで、赤い字で書いておりますが、個人情報の保護ということを留意しまして、私も実は警察の被害者支援室の辞令をもらっているのですけれども、県の行政の職員と警察の被害者支援室の職員はたすきがけで両方の身分を併せ持っている、そういう形で情報のやりとりをスムーズにしているという点が工夫というか、特徴なのかと考えております。

◎ かながわ犯罪被害者サポートステーション
 その右ですけれども、基本的な支援の流れということで、簡単に(1)~(4)ということで記載をさせていただいております。
 サポートステーションでの支援ですが、県の窓口と被害者支援センターさんの相談窓口、2つ相談窓口があるのですが、相談窓口から入ってくる相談で支援に結び付いたものは10件程度です。ほとんどのケースが警察署からの情報提供によるものです。その警察署ルートの流れですけれども、まず警察署から支援要請があって、県警の被害者支援室の調整担当の警察官が必要に応じて現場に行って被害者さんの状況、サポートステーションの支援の説明をしまして、被害者さんの意向を把握します。その後、被害者支援室の警察官がサポートステーションにその情報を持ち寄っていただいて、三者による支援調整会議を開きまして、具体の支援を決めて、先ほどご説明させていただいた三者の役割分担に応じて迅速に支援にかかると、そういう流れで支援を行っております。
 実は私、担当課長という職名で、昨年度は個別の支援の専決の権限はなかったのですけれども、県の人事当局のほうにお願いしまして、この4月から、例えば法律相談なり、ホテルの提供なりの専決権をいただきました。ということで、より迅速にサポートステーションの中で支援が組織的にも決定できるという仕組みもこの4月からでき上がったところであります。
 次に3ページのほうをごらんいただきたいと思います。

◎ かながわ犯罪被害者サポートステーション支援実績(平成21年6月~22年3月)
 3ページの左上につきましては、昨年の6月、開設以降、この3月末までの10か月間の支援の件数であります。それぞれ括弧書きで、相談の件数であれば、県の窓口と支援センターさんの窓口の合わせた数字のみ記載をさせていただいておりますが、その下、弁護士相談以下の支援につきましても、特にカウンセリングや、直接生活支援につきましては、従前から警察と支援センターさんが行っていたものなのですけれども、特に平成20年度に比べてかなり大幅に増加をしております。
 支援を受けていただいた被害者さん、特徴的なのは、お一人の被害者さんが複数の支援を受けていらっしゃる。例えば法律相談とカウンセリング2つ支援をご希望されて、実際に支援を受けているということで、これもワンストップのサポートステーションを立ち上げて、ワンストップで被害者さんのニーズをお聞きして支援に取りかかっていると、そういう体制の効果のあらわれなのかなと見ております。

◎ 3ページ、簡単に写真を載せさせていただきました。
 右上は、表玄関というか、相談者さんの入る入口です。
その下は事務室ですけど、ちょっとわかりにくいのですけれども、事務室の奥のほうに、右側に私が座っていまして、ちょっと離れた横、左側のほうに被害者支援センターの船越専務が座っているということで、先ほどお話あったとおり、何か悩ましい相談というか、そういうのが入ったときにすぐお互いに相談ができると、そういう関係になっております。
 左下は、先ほど支援調整会議のお話をさせていただきましたけれども、実際に支援の情報が入って、支援調整ルームと言っていますけれども、支援調整会議を行っている風景の写真です。
 その右が、真ん中の赤いマルがサポートステーションなのですけれども、必ずこういう場で申し上げているのは、被害者さんへの支援というのは、三者一体のサポートステーションができましたが、サポートステーションだけの支援ではすべてのニーズにお応えできないということで、記載のとおり、国の機関や市町村さん、その他、関係機関とのネットワークがあって初めて満足のいく支援ができるのだということでお話をさせていただいているところです。
 先ほど支援センターさん、サポートステーションのメリットということで非常に県のほう、私のほうをヨイショしていただいたのですけれども、私、県の行政としても、警察と一緒にいる。あるいは支援センターさん、民間と一緒にいるということで、非常にメリットがございます。先ほどお話にもありましたとおり、県は条例をつくっています。自治体ですので、条例の対象は県民の方ということになってしまいます。ということで、県外の方への支援ができないと、そういう部分について、民間の柔軟な対応といいますか、それを活用させていただいているということで非常に私どものほうも助かっているということがありますし、警察とも一緒にいるということで、県の相談窓口に相談があったケースについて、迅速に地元の警察署に被害届が出ているかとか、そういう確認ができるという点で大変助かっております。
 そういうメリットもありますし、それ以外にも、4ページをごらんいただきたいと思います。

◎ 平成21年度事業(支援以外)
 4ページの上段の左側は、支援以外のいろんな広報の関係の説明ですので、省略をさせていただきます。

◎ 今後の課題
 右のほうですけれども、今後の課題、これまで支援を行っている中で、浮き彫りになってきた課題がございます。1つ目は、人材の確保・育成ということで書いてございますが、支援センターさんのボランティアさんが、今40名程度いらっしゃいますが、先ほど支援が大幅に増えていると申し上げましたが、今後を見ますと、ボランティアの数、数だけではないんですけれども、質的な面も含めて、人材を確保していかなければいけないという課題がございます。県の昨年の秋にボランティア登録制度というものを一応つくりまして、県内の大学や社会福祉士会の事務局等に行きましてPR・呼びかけをさせていただいているところです。人材がなかなか集まらないという点で、今後いかに効果的に確保していく手法というか、そういうのを検討しなければいけないというのが1つ目の課題であります。
 2つ目は、先ほど支援センターさんのお話にありましたとおり、条例の対象になってない方への支援の部分、あるいは目撃者、親族間犯罪の被害者、それと先ほどお話あったとおり、国外で被害に遭われた県民の方。条例ベースではないんですけれども、法律相談なりの要綱ベースで、日本国内、あるいは日本国籍の船舶で被害に遭われた方というのが対象になっているものですから、そういう部分の今後の改善策について検討しなければいけないというのが課題の2つ目であります。
 最後が民間支援団体の財政基盤の強化ということですけれども、昨年度から県からの委託金なり補助金、新しく被害者支援センターさんにお渡しをしているところなんですけれども、自主財源を高めていかなければいけないと。民間の寄附がなかなか上がらない。逆に減ってきているという状況がありますので、いかにして民間企業や一般の方からの寄附をいただけるか、そういう一般からの浄財の確保策、そういったところを今後検討していく予定でございます。

◎ 平成22年度の取組み(新規)
 最後になりますが、22年度の取組ということでお話をさせていただきます。1点目は、支援施策の検証ということで、ちょうど今週の火曜日に検証委員会というものを行いました。これも先ほどの有識者懇談会と同じように、大学の先生、弁護士さん、直接支援にかかわっている団体から代表で来ていただく、あるいは市町村の代表ということで、市町村の担当の課長さんにメンバーになっていただきまして、県の取組の検証ということでいろいろご意見をいただいたところです。先ほどの課題についてもご意見をいただく予定になっております。ご意見をいただいて、それを踏まえて、来年度以降に向けて、県としての施策の充実を図っていく予定でございます。
 もう一つ、広報・啓発事業の関係ですけれども、赤い字で書いてあります。ことしの6月1日にサポートステーションが開設して1周年になります。ということで、そのタイミングでより県民の理解を深めるということでイベントを実施いたします。そのほか、先ほど内閣府さんからお話がございました。昨年度はモデル事業で中高生向けの教材を作成しました。ことしは事業者向け、一般企業の社員研修などで使っていただくための教材、これもDVDになると思いますが、作成したいということで提案をいたしまして、採択していただいたのですけれども、そういう教材の作成とDVDを使った出前研修などを実施する予定でございます。

 ということで、まだまだ県としての取組もちょうど4年目、サポートステーションが立ち上がってから1年がようやくたとうということで、まだまだ手探り状態ですけれども、ほかの自治体さんの取組なども参考にさせていただきながら、より神奈川県として、財政状況も厳しいのですけれども、施策を引き続き充実を図っていきたいと、そのように考えているところでございます。
 以上で発表を終わらせていただきます。ありがとうございました。


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