講義1

 
テーマ:「犯罪被害者支援の活動に現状」
講師:福島 好伸 氏(静岡中央警察署 警務課相談係長)

 こんばんは。静岡中央警察署警務課の福島と申します。
 最初に警察の捜査の流れということで、少しお話しさせていただきます。ご存じの人があるかどうかわかりませんけれども、警察の捜査というのは、まず犯罪が発生したところから始まります。犯罪が発生しますと被害者からの被害届をとり取りまして、それから捜査が始まります。

 捜査の状況ですが、まず被害者から被害届の提出、供述調書の作成、証拠品の提出、実況検分見分の立ち会い、この段階で例えば性犯罪の被害者になったりしますと、警察からかなり事細かに詳しく聞かれます。これが通常でいう二次被害というような状態になります。被害に遭った女性がさらに警察で詳しくいろいろな聴取をされますが、警察的に被害者支援ということで女性警察官が担当することになります。

 捜査が始まりまして、犯人の特定ができたということで逮捕に至りますが、逮捕状の請求ということになりますと、通常は通常逮捕ということで逮捕状を請求します。緊急の場合には緊急逮捕、事件の現場ですぐ逮捕できた場合には現行犯逮捕ということがありますが、どのような逮捕手続を踏みましても、逮捕後48時間以内に逮捕した犯人と書類が検察庁の検事に届きます。検事は何をするかといいますと、その段階で24時間以内に裁判所に被疑者の勾留請求を行います。裁判官が被疑者と書類を受け取りまして、勾留に付すかどうかという結論が出ます。裁判官の許可が出ますと、その後10日間の勾留が認められて、警察と検察官の捜査が始まります。

 10日間のうちに容疑がしっかり固まらない場合には、さらに10日間の延長がありまして、裁判官から勾留が認められてから最長20日間の間に、裁判をするかどうかを検事が決定します。裁判するということは、下にある起訴ということになります。横にある不起訴ですが、これは嫌疑不十分ということで、身柄を釈放することになります。

 起訴されますと裁判が始まります。裁判は、裁判所と検察官、相手の弁護士の都合によって日取りが決定されます。そして第1回の公判、地方裁判所ですが、裁判所の決定で不服があれば、「控訴」とい言いまして次の高等裁判所に裁判を委ねます。高等裁判所でさらに不服ということで最高裁判所に委ねる場合には、「上告」といいます。ですから、地方裁判所、高等裁判所、最高裁判所と3回の裁判が行われることになります。

 警察が捕まえて起訴されるまでの犯人のことを「被疑者」とい言います。その後、起訴されてから裁判の判決が出るまでの被疑者を「被告人」といいます。さらに判決、裁判が確定して刑の執行をするときには「犯罪人」といいます。犯罪人となった場合には、既に不服申し立てもなく刑の執行に服することになります。これが刑事手続の流れで、捜査の流れということになります。

 事件の被害者を支援する場合には、警察署では事情聴取とか検見分、この際に女性警察官とか、殺人の事件ですと遺族に付き添うような捜査はしますけれども、裁判が始まるような状態になりますと、警察は一応手を引きます。全く引くわけではないのですが、その後は警察のほうで事件が多発してとても処理できる状態ではありませんので、県の警察本部に犯罪被害者支援室というのがあります。こちらのほうに警察署から被害者の支援を依頼します。そうしますと、支援室からNPO法人の犯罪被害者支援センターに警察ができない支援をお願いするような形になります。支援センターは、被害者の公判の付き添いとか、ふだんの悩みの相談を受け付けます。

 ですから、警察がやる仕事というのは短期的な仕事になります。犯人が捕まって裁判を受ける、その辺までは警察が責任を持ってやりますが、その後はどちらかというと支援センターに委ねるような方向になります。

(中略)

 警察が被害者支援ということで皆さんにお願いしたいことは、皆さんも「被害者支援ということで私たちは何ができるんだ」と思うでしょうが、実際に警察で皆さんに頼むようなことはありません。先ほど言ったような生々しい事件で皆さんも一緒になって支援してもらうわけにもいきませんし、何ができるかといいますと、ほとんどの強姦事件が明るいところではなくて、ちょっと入った暗いところで発生しています。犯人はずっと後ろからつけています。今日帰りましたら、友達や家族の方に、夜の道を一人で歩くときは周りを必ず確認するようにお願いして下ください。被害に遭ってからでは遅いんです。被害に遭わないことが一番の被害者支援だと、私どもは思っています。暗い道に入るときには周りをよく確認して、急いで車に乗るとか、そういうちょっとした注意があれば、この強姦事件、強盗事件6件は全部防げています。

 それと被害に遭っていても警察に届出をしないという人がいるかもしれません。もしそういう人がいましたら、今これだけの被害者支援をしているということを話していただいて、警察に被害の申告をするように勧めてもらいたいんです。警察は被害の申告がなければ事件がわかりませんし、捜査も開始できませんから、泣き寝入りすることだけは絶対にしないでもらいたいです。本人の名前とか、個人情報は警察から漏れることは一切ありません。現代の社会で警察から個人情報が漏れることは100%ありません。ただ、先ほど言った被害とか、そういう状況を聞かなければなりませんから、もう一度事件を思い出していただくという状況はありますけれども、犯人が第2、第3の犯行を犯しているということを考えますと、警察としてはどうしても被害申告をしていただいて、犯人を捕まえる捜査に着手したいと思います。ですから、もし「私、警察に言えないでいるよ」という方がいましたら、各署に相談係がいますので、遠慮なく相談していただきたいと思います。

 どうしても被害届を出したくないという場合でも、犯人がわかればその捜査をしますので、その事件は犯人を尾行して次の犯罪を防ぐことができます。ですから、そういう人がいたら必ず警察へ相談するようにお願いしたいと思います。

 一人歩きのときは必ず周りを確認して、明るい道から暗い道に入る場合には、一旦立ちどまって止まって周りを確認して、車等に乗るということを心がけていただければ、性犯罪は半分以下に減ると思います。
 

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