関係機関・団体と連携した犯罪被害者支援促進モデル事業

あすの会の歩み(活動の成果)

犯罪被害者等に関するテーマ別啓発事業(大阪府)
「あすに生きる-犯罪被害者- 地域社会の支えを考えるフォーラム」

林良平(あすの会幹事) 林良平
(あすの会幹事)

どうも今日はお忙しい中ありがとうございます。本日は内閣府のモデル事業ということで、初めて被害者自身がこういう企画をし、皆様に被害者の思いを伝えるということの機会を得たわけでございます。関係者の皆様方、本当にありがとうございます。

私はこれから、あすの会の紹介と、あすの会の活動の歴史。そしてあすの会がどのような形で関わり、どのような成果ができたかという、この3点をかいつまんでお話しさせていただきます。

まず皆様方の今日のお手元、資料に、コピーした20ページぐらいの冊子があると思いますけれども、ちょっと分厚いやつですね。「あすに生きる」。それともう一つこの1枚もののコピーですね。「あすの会の活動の成果」と書いてあります。それをもって説明させていただきたいと思います。

最初の資料、分厚いほうの1ページを開けていただきたいと思います。あすの会とは何なのか。あすの会は全国犯罪被害者の会、通称を「あすの会」ということにしておりまして、通称のほうが今は名前がよく通っているようでございます。これは2000年の1月23日に東京で設立総会を行いまして発足した、被害当事者の団体でございます。

2ページの上のほうに、「あすの会には二つの支援組織があります」と書いてあると思いますけれども、あすの会を支援するフォーラムというのがございまして、これはあすの会、被害当事者でございますけれども、2000年以前の被害者に対してはほとんど何も被害者支援というものが、支援というか経済的支援というのがない。皆お金に困っておりますが、こういう組織を立ち上げるにはお金がいるわけですね。そういうことで物心両面の応援をしようということで、ここに書いてあります瀬戸内寂聴さん、当時アサヒビールの社長でございました樋口廣太郎さん。そして経団連の会長でございました奥田碩さん。東京都知事であります石原慎太郎さんの4方が代表発起人となりまして、資金カンパをお願いしたいということをやっていただきまして、あすの会の物心両面でのバックアップをやっていただいております。

その下に、犯罪被害問題研究会というのが書いてあります。ここには法律家の方ですね。そして弁護士の方。今日、第4のブログラムでパネリストになっておられます高橋弁護士も入っていただいているんですけれども、こういう法律の専門家の方々が犯罪被害者のために、どういう法律を作ればいいのかということをずっと研究してくださる研究会です。ですからあすの会には被害当事者の会と、そこを物心両面で支援するフォーラムというものと、法律の専門家の方々がたくさんいらっしゃいます研究会と、この三つの組織で成り立っているものだということをご理解ください。

次に、2000年の1月23日に発足したあすの会が、どういう活動をしてきたかと申しますと、先ほど申しました、1番目に大きな影響を与えたのが、研究会の方々がヨーロッパに、日本の刑事司法の根幹である部分のドイツとフランスの法律を調査に行った、その中で被害者はどういう具合になっているのか。被害者は訴訟参加できるのか、できないのか。そういうことを調べたのです。

そういう調査をしまして、実は向こうではそういう被害者が訴訟参加できている制度があるんだということを、「ヨーロッパ調査報告書」という形でまとめていただきました。その本を出した直後の2002年の12月8日、ヨーロッパで被害者が訴訟参加できているじゃないか、日本でもそういう制度を作っていくように働きかけていこうよと、あすの会の第4回総会で決議しまして、全国で署名運動を行っていくことにしたわけでございます。

全国の県庁所在地で街頭署名をやろうじゃないかということで、翌年2月、東京新宿を皮切りに、60箇所を回りました。

3ページと4ページ、ちょっと見ていただきたいと思うんですけれども、そういう署名活動をやっておりましたところ、当時の小泉首相の官邸から被害者の方々のお話を聞きたいと、そういう申し出というかお勧めがありまして、7月8日にお会いできたわけでございます。約25分間でございましたけれども、おそらく皆さんもそうですけど、被害者がその当時、2000年以前の被害者がどういう状況にあったのかということをほとんどご存じなくて、私たちの話をただじっと聞いてくださいました。

最後に、「わかった」「そんなにひどいのか」と。本当に二言三言でした。その後自民党のほうに党としてやっていこうよと。政府としてもやっていこうよということで、ある意味、犯罪被害者等基本法というのは、この声、鶴の一声で成ったような気持ちでおります。

全国で展開した署名活動は最終的に57万2,512、署名が集まりまして、提出したわけでございます。

そして私たちは、ちょっとページが飛びますけれども、15ページ、16ページを開けていただけませんでしょうか。署名活動だけではなくて、堺市の議員さんがきっかけを与えてくださいまして、地方自治法99条に基づく意見書を国に提出すると、そういうものがあるということで、堺市のほうが先駆けてそれをやってくださって、その情報を与えていただき、私たちもそんな方法があるのならやらなければいけないということで、展開しました。

2004年の3月3日、大阪府と兵庫県と京都府。この三つで同時に提出しまして、地方自治法99条に基づく意見書。こういう運動を展開し始めたのであります。

で、これが最終的には100を超す地方自治体が国に提出してくれたわけでございます。先ほどの小泉首相との出会い、そこでの約束と、今、地方自治法99条に基づく意見書が出てきまして、国会では与党だけではなくて、議員全部でこれを法律化しよう。いわゆる議員立法にしようという機運が生まれてまいりまして、犯罪被害者等基本法が成立したのでございます。それが17ページ、18ページにあります。写真として当時の、新聞記事も載せておりますけれども、2004年12月1日に犯罪被害者等基本法が成立しました。

翌年の12月27日、犯罪被害者等基本計画が閣議決定いたしまして、犯罪被害者に対するその権利とか、救済とかいうものが一気に加速して、施策として出ていくようになったのでございます。

これが大まかな活動の、一部分にしかすぎないのですが、大体の流れでございます。

次に、先ほどの1枚ものの資料を見ていただきたいと思います。「活動の成果」とあります。

私たちあすの会ができるまで犯罪被害者に関する救済策としましては、昭和56年、犯罪被害者等給付金支給法という、これも同じく犯罪被害者の人たちが立ち上がってできた、市ノ瀬さんとおっしゃる方ですけれどもね。その人たち、やはり被害者が一つのまとまりになって動いて、ようやくこういうものができたのでございます。

それと、被害者を取り巻く人たちの努力のおかげで、2000年に犯罪被害者保護二法というのができました。

繰り返しますが、2000年以前には、犯罪被害者に対して、いつ犯人が起訴されたのか。裁判に送られたのか、それはどこであるのかとか、裁判、出所の時期も教えてもらえませんでしたし、判決の結果も教えてくれない。そして犯罪被害者に対しては医療費の支給もなかったというのが2000年以前でございます。2001年には犯給法が改正され、被害者の医療費の自己負担分は3か月間は国が支給してくれることになりました。

そして犯罪被害者には裁判がいつどこでありますよということも通知する制度ができまして、2000年以前と2000年以降とでは被害者に対する施策が全然違うということを皆様、頭に入れていただきたいと思います。

あすの会が発足して以降、どういうものができたかということになりますと、資料の、1番目にありますが、犯給法は成立以降一回も見直しがなかったのでありますが、私たちのあすの会の代表であります岡村代表が委員になり、初めて見直しされ、大体金額的には50%アップぐらいの犯給法の見直しがなされたわけでございます。

あとは2番目、司法解剖後の遺体返還のための公費負担が実現した。3番目、司法解剖後の遺体修復措置について、やはり被害者から要望がすごく大きかったのですね。司法解剖してもそのまま送ってきたりという例がたくさんあったものですから、せめてお葬式のときには亡くなった方の体をきちんとした体にして返してほしいという要望がありましたので、こういうのも通りました。それと、公判記録のコピー代ですね。謄写料。これもすごく高かったのでありますが、半分以下になりました。

そして、先ほども言いましたように、基本法の成立。そして基本計画の閣議決定。そして昨年の6月の20日に犯罪被害者等の権利・利益の保護を図るための刑事訴訟法の一部を改正する法律が成立しまして、今日の人形劇に、その新しい制度を模擬裁判にして入れたんですけども、被害者がようやく刑事裁判に参加できるようになりました。そして刑事裁判の手続きを利用して、損害賠償を請求できるということも可能になりました。公判記録の閲覧・謄写の条件の緩和、範囲の拡大、そして被害者のプライバシーの保護と、こういうものがこの6月20日、昨年の法律改正で可能になり、被害者の権利が拡大したということでございます。

そして今年、先ほど申しました犯給法の見直しだけでは不十分だということで、大幅な見直しがなされまして、今年7月1日から以降の被害者に対しては、これも犯給法の2度目の見直しということになりますけれども、大幅な経済的な支援ができるようになりました。

新聞等では犯給法が見直されて、私たちも、あすの会もよく言ってるんですが、自賠責並になりましたと。3,000万という表現になっていますけれども、ちょっとここにこの表を入れました。その表現は正確ではないということを言いたくて入れたのでございます。

ここに遺族給付金と書いてあります。いわゆる殺人でですね。被扶養者2名と書いてあります。この、例えば奥様と子供さんが1人いる家庭でご主人が亡くなった場合どうか。そのときの金額はどうなんだということを言いますと、現行法では、例えば40歳で見ますと、今までは最高額で1,404万円だったんですね。で、改正案、7月1日以降は2,170万円になりました。でも、最低額ですね。要はこの自賠責と違いまして、収入によって最高額と最低額の幅がありまして、同じ40代でも最低の方、今度の新しい制度でも1,567万円です。ですから最高額とここの最低額の間に500万ぐらいの開きがあるということですから、3,000万円という金額が報道の中に出ても、それは50代ぐらいの最高額の人の金額であるということを、基礎知識として頭の中に入れておいていただけたらありがたいと思います。

最後に、9番目ですが、今年、少年法が見直されました。加害者が12歳以上である事件の場合、家庭裁判所において、重大事件における少年審判の傍聴が可能になったということです。まだ十分ではございませんが、あすの会ができて今、8年ですけれども、いろんな形で犯罪被害者を取り巻く環境というのが変わってきたように思います。

ただ、今日のこのシンポジウム、フォーラムでも、それがどのように運用されるのかどうかというのがやはり今後の問題だと思っていますので、これは後の体験報告、パネルディスカッションをお聞きくださいますようお願いいたします。私の報告は終わらせていただきます。

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