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第5回「犯罪被害者等に対する心理療法の費用の公費負担に関する検討会」
議事録

○ 内閣府犯罪被害者等施策推進室参事時間でございますので、開始をさせていただきたいと存じます。
初めに、4月1日で内閣府犯罪被害者等施策推進室の参事官として着任いたしました池田でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
では、小西座長、よろしくお願いいたします。
○ 小西座長本日はお忙しいところをお集まりいただきまして、ありがとうございます。
ただいまから、第5回「犯罪被害者等に対する心理療法の費用の公費負担に関する検討会」を開催いたします。
今日は時間が長くなっておりますけれども、是非御協力をよろしくお願いいたします。
それでは、本日は第5回の検討会ということですが、本日の議事について、まず事務局から御説明をお願いいたします。
○ 内閣府犯罪被害者等施策推進室参事官御説明を申し上げます。議事次第の方をご覧ください。本日は3時間の長時間にわたりますが、議題として挙げさせていただいている事項がたくさんございます。どうぞよろしくお願い申し上げます。
まず最初に、厚生労働省、警察庁、それぞれの御担当者様から今まで出てきている質問への御回答や関係制度に関する御説明をいただく予定でございます。
次いで、議題3といたしまして、被害者からのヒアリング結果につきまして、小西座長から御教示いただきたいと存じます。なお、この点で配付させていただいております資料につきましては、追って回収をさせていただく予定でございます。
議題4、心理療法の必要性、有用性。議題5、心理療法の種類等の整理は、いずれも2回目の検討会から先延ばしされてきたものでございます。どちらもこの会で既に具体的な実践例などを踏まえておられますので、そういった部分も含めて整理する時間としたいと存じます。
議題6につきましては、海外調査の結果を御報告させていただきます。
議題7では、皆様から頂戴した御意見を下に、今後検討していく論点について整理いたしました事務局案を提示させていただきたいと存じます。その後、自由討議とさせていただきます。
以上でございます。
○ 小西座長ありがとうございました。大変盛りだくさんで、議事がスムーズに進行していくことが必要かと思います。
それでは、初めに議事次第の「2.心理療法(カウンセリング)の公費負担に関する各種制度等」についてです。
これは第4回検討会において各省庁から御説明をいただいた際、構成員の方々からいろいろな御質問が出まして、今回、担当の省庁からそれぞれ御回答、御説明あるいは資料の提出をいただくということになっていたものです。本日、説明いただく事項については、資料1-1をごらんください。
それでは、厚生労働省から説明をお願いしたいと思いますが、前回、臨床心理士によるカウンセリングを公費負担医療に組み込むことなどについての加藤構成員からのヒアリングを受けての御説明も含まれておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
○ 厚生労働省保険局医療課それでは、厚生労働省の方から御説明をさせていただきたいと思います。私は厚生労働省保険局医療課の前田と申します。よろしくお願いいたします。
資料1-2に厚生労働省からお返しをいたしました資料が一とおりございますので、そちらに従いまして、御説明をさせていただきたいと思います。
「(1)中央社会保険医療協議会における心理療法等に係る議論の経緯について」でございます。
心理療法等を含めました精神医療に関しましては、平成23年11月2日に中医協で御議論をさせていただいたところでございます。具体的な資料及び議事録につきましては、本日は資料が多うございますので、URLをお示しさせていただいております。ですので、そちらを御参照いただければと思っております。
1枚めくっていただいて、精神医療に関しまして、今回は平成24年の診療報酬改定で実施をさせていただいた基本的なものをまとめさせていただいたものでございます。こちらは中医協の方で精神科救急であるとか、いろいろなテーマについて御議論をいただいた成果でございまして、こういった形で改めさせていただいたという一覧でございます。仔細については省略をさせていただきたいと思います。
「(2)高額療養費制度の適用がなされるための詳細な要件等について」という資料がございます。1枚後ろがA3で折っていただいている資料がありますけれども、そちらでございます。
具体的にこれは別紙A3の1枚で御案内を差し上げますと、資料の真ん中部分「高額療養費制度、高額医療・介護合算制度」という形でまとめておる部分でございます。簡単に申し上げますと、先ほど御説明をいたしました診療報酬なり介護報酬で適用になって、お支払をすると。その自己負担が一定程度を超えた場合に、その上限を設けさせていただいて、その上限分が自己負担になるという仕組みでございます。基本的には発生した費用とその費用が高額になった場合の取扱いという運用でございます。
「(3)認知行動療法として認められている技法(療法)はどのような技法(療法)か。ある程度科学的な検証の進んでいる技法(療法)のみ認知行動療法として認められているのか」という御質問でございます。
こらちは上側に認知行動療法について御回答を申し上げております。物の見方や受け止め方、考え方というものを認知と呼ばせていただきまして、その認知に働きかけをして気持ちを楽にするという精神療法の一つでございます。ストレスを感じると悲観的に物事を考えるというようなことがありますけれども、認知行動療法では、その考え方を修正して、うまく問題に対応できるという形で、幾つか疾患などについては効果があるということは実証されていると承知をしております。
こういうエビデンスでございますが、具体的にどういった方々にどういう内容で実施をしていただくのかということが重要でございますので、これは今、診療報酬上で評価をしておりますのは、うつ病に対するマニュアルというものが平成21年の厚生労働省の心の健康科学研究事業というものの中でおまとめをいただいたものがございますので、そちらのマニュアルに従っていただいた認知行動療法については、診療報酬上の評価を行っておるというものでございます。
「(4)臨床心理士の国家資格化を前提として臨床心理士によるカウンセリングを診療報酬の算定要件とするなど、診療報酬で評価することについて」は、診療報酬で評価する、しないというのは、医療の提供者、保険者、患者の代表などが参加をいたします中央社会保険医療協議会において、疾病に対する診療としての有効性・安全性等について議論をされ、決定をいただくものでございます。臨床心理士が国家資格化した場合に、臨床心理士が診療報酬の算定要件になるかどうかについても、必要に応じて、中医協で御議論をいただくものと承知をしてございます。
厚生労働省からは以上でございます。
○ 小西座長ありがとうございました。
それでは、御質問、御意見等がございましたら、御自由にお願いいたします。よろしいでしょうか。
それでは、次に警察庁から説明をお願いいたします。今回、補足説明に併せて、犯罪被害給付制度の重傷病給付金についても警察庁から御説明の申し出がありましたので、併せてお願いいたします。
○ 警察庁犯罪被害者支援室長警察庁犯罪被害者支援室長の滝澤と申します。事務方の方からでございますが、御説明をさせていただきます。
資料1-3をごらんいただければと存じます。御質問は何点かございましたが、民間被害者支援団体に対して国が出している補助金のうち、カウンセラーによる心理療法に使われている割合でございます。
記載のとおりでございますけれども、支出額として明らかなものは、平成22年度で970万円となっております。これは相談業務のうちカウンセリングに使ったことが明らかなものということでございます。これ以外に、例えば部内の役員や職員に臨床心理士の方がいて、その方の人件費に入っている場合など、計算しにくい場合などがございますけれども、そのような形で補助させていただいたお金が使われているということでございます。
2枚目、(2)といたしまして、前回の検討会におきまして、2つのケースで重傷病給付金が出ましたということで御報告を申し上げたところ、障害給付金はどうなのかという御質問がございました。いずれにつきましても、障害給付金は支給をされておりまして、ケース<1>につきましては、障害等級は9級、PTSDということで給付金が約250万円、ケース<2>につきましては、同じく障害等級は9級ということで、給付額は約220万円ということとなっております。
3枚目「(3)公費負担による被害者カウンセリング実施の例」ということで、大体どういうような形態のものに対してカウンセリングが行われているのかという御質問だったかと思います。公費負担によるカウンセリングの回数とか1回当たりの費用、予算額等についてどうなのかということで、東京と神奈川に聞いたところはここに記載しているとおりでございます。
若干御説明いたしますと、警視庁においては被害者カウンセリングを被害者支援都民センターにほぼ一任をしております。一方、神奈川県警察におきましては、神奈川被害者支援センターと民間団体のほかに警察部内のカウンセラーも犯罪被害者等に対するカウンセリングを行っているということで、少しやり方が異なっております。
実施状況でございますけれども、両方をまとめた形になります。人数、件数ともに性犯罪被害に係るカウンセリングがやはり多くなっております。強姦、強制わいせつ等でございますけれども、これらに対するものが多くなっているということであります。対遺族・家族のカウンセリングの大部分を交通事故関係のものが占めております。強盗、強姦、強制わいせつ、傷害に係るカウンセリングは、被害者に対するものが大部分でございますけれども、中には遺族や御家族に対するものもあるということでございます。
縦ラインの中で、被害者、遺族、家族のほかにその他という欄を設けておりますけれども、その他といたしまして、被害者の交際相手の方でありますとか、事件の目撃者に対してカウンセリングが行われているという例もございます。カウンセリングの継続状況でございますけれども、これはばらばらでございまして、1回でということもありますし、お一人に対して10回以上行われるケースもあるということでございます。
「(4)精神疾患にかかる重傷病給付金の高額療養費等該当状況」でございます。前回に30件の精神疾患の方について、平成22年度中に重傷病給付金をお支払いたしましたという御説明をいたしました。その30件のうち8件については高額療養費ということで、右側から3つ目の欄でございますけれども、これだけの高額療養費が出ていらっしゃるということで、医療費の分から差し引いた形での犯罪被害者負担額ということになっておられます。
御質問については以上でございます。
今後、御議論に入られますということで、既に御承知の面も非常に大きいかと思いますが、犯罪被害給付制度の概要ということで、重傷病給付金あるいは障害給付金を中心に少し御説明をさせていただきます。犯罪被害給付制度はさまざまな改正を経てきておりますけれども、現行の状態ということで御説明を申し上げたいと思います。
一番上の「趣旨」という欄にありますとおり、犯罪被害給付制度は故意の犯罪行為による被害を対象として実施をするということになっております。このため、故意ではない犯罪行為の被害が原則として対象にならないということ。あるいは犯罪行為による被害であるということを確認する必要がございます。
給付金の種類でございますが、3つに分かれておりまして、前回までに御説明をしておるとおりでございますが、重傷病給付金、障害給付金、遺族給付金の3つの種類がございます。重傷病給付金でございますけれども、重傷病となった場合に医療費の自己負担相当額と休業損害を考慮した額を1年を限度としてお支払いをするということとなっております。
ただ、医療費の自己負担額と休業損害加算額を合わせまして、120万円が限度額ということになっております。こちらも御説明しているとおりでございますけれども、精神疾患についても対象となっておりまして、加療1か月以上で3日以上労務に服することができない程度の精神疾患という場合を重傷病ととらえて、重傷病給付金をお支払いするということとしております。
支給の方法でございますけれども、治療や休業が終わった後での一括の給付ということになります。具体的には、例えば事件後8か月間加療されていたということになりますと、医療費自己負担額が発生した場合には、加療が終わった時点での申請をしていただき、それから公安委員会による裁定手続ということになりますので、その間は一旦被害者の方に負担をしていただいているということになっております。
障害給付金でございます。障害給付金は被害者の方に後遺障害が残った場合に支給するものでございます。障害給付基礎額に障害等級に応じた倍数をかけて算定をするという形になっておりまして、精神疾患につきましても前回までに御説明を申し上げましたように、障害等級に該当する場合にお支払いをしている例がございます。重い1級とか2級に該当する場合もございます。
なお、障害給付基礎額でございますけれども、被害者の方の収入を基にして算定をしております。この基礎額については、年齢に応じて最低額と最高額が定められておりまして、最高額を超える場合には最高額で計算し、最低額を下回る場合には最低額で計算をするというやり方でやっております。
更に先ほどの例で御説明を申し上げたとおりでございますけれども、重傷病給付金を受けて、かつ障害給付金を受けるということも当然ございます。また、これら2つの給付金は被害者本人の方が対象ということになっておりますので、例えば障害を負われた方の御家族については、範ちゅうに入っていないということになります。
遺族給付金でございますけれども、遺族給付基礎額に生計維持関係遺族の数に応じた倍数をかけたものが給付されることとなります。遺族給付基礎額につきましては、障害給付金の場合と同様でございますけれども、被害者の方の収入を基にして算定をしていくということになります。給付金を受給するのは遺族の方でございますけれども、四角の中に入れてあるとおりで順番がございまして、順位に応じた受給となっております。例えば死亡された方に配偶者がいる場合には、配偶者のみが受給し、子どもや父母がいても受給の対象とはならないということになります。
それから、すべてではございませんが、何点か付加してございます。手続でございますけれども、給付金を受けようとする方がお住まいの住所地の都道府県公安委員会の方に申請をしていただくことになります。各公安委員会は捜査を行った警察に対して照会を行うなどをしまして、犯罪行為による被害であったのか。被害者と加害者の関係などにつきまして、事案を明らかにした上で裁定をしていくということになります。
加害者が未検挙であったり、あるいは加害者が責任能力がなくて、例えば起訴されなかったりという場合であったとしても、犯罪行為による被害であるという確認ができれば、お支払いをすることは可能でございますけれども、被害者の方からの届け出がない状態で捜査がなされていない場合ですと、なかなか裁定を行うことはできないということになります。
また、資料の下段の「支給制限」に書いてございます。犯罪被害給付制度でございますが、社会全体の共助の精神を示すということもございまして、一定の場合に支給の制限があるということとなっております。ここに記載のあるような場合には、全く支給をしないか、あるいは減額をして支給をするということとなっております。
詳しくは細かく規定されておるところでございますけれども、例えば親から子に対する犯罪といいますのは、原則として不支給ということになります。ただ、個別の事案を踏まえて、全く支給しないことが社会通念上不適切であるという場合には、一定程度、3分の1を給付することができるというような細かい決まりになっているところでございます。既に御承知のところでございますが、これらはすべて国の一般財源ということで措置をしているというものでございます。
御承知のことも多かったかと存じますが、以上でございます。
○ 小西座長ありがとうございました。
それでは、御質問、御意見等がございましたら。
久保構成員、どうぞ。
○ 久保構成員カウンセリングに対する公費補助は970万円とありますね。その後で例に挙げた東京都と神奈川もこの金額に含まれるのでしょうか。
○ 警察庁犯罪被害者支援室長東京都と神奈川も含まれているはずですが、ちょっと確認させていただきます。申し訳ございません。前回、民間支援団体につきましては、1年間で381人の方に対して988回のカウンセリングを実施しているというお話を申し上げましたけれども、これのうちの一部は公費によって賄われているということになります。
○ 久保構成員そうしますと、東京都と神奈川が750万円ですから、970万円から差し引きますと220万円ですね。残りの道府県は220万円の中に。
○ 警察庁犯罪被害者支援室長先ほど申し上げたとおりでございますけれども、残りの都道府県は220万円の中でやっているということになりますが、申し上げましたとおりに、人件費などに入っておりまして、この970万円の中でうまく数え切れない。これの外枠にあるものに公費が使われているけれども、カウンセリングに使われているものもあるということでございます。
○ 久保構成員要するに大半が部内処理のケースも多いと。
○ 警察庁犯罪被害者支援室長多いということでございます。役員の方や職員の方に臨床心理士なりカウンセラーの方がおられまして、その方がやっていらっしゃるという場合もあるということでございます。
○ 久保構成員ありがとうございました。
○ 小西座長太田構成員、どうぞ。
○ 太田構成員2点ございます。
まず1つは確認ですけれども、(4)高額療養費の該当状況の資料についてです。これはそれぞれの人たちは、加療期間が1年以上となっているので、重傷病給付金はたしか1年までとなっていますね。1年経った段階でまだ治療は続いているんだけれども、1年までなので、その時点で申請が出てくれば、1年までの額の中で高額療養費等を除いた部分、あとは賦課金もあるかもしれませんけれども、それを除いた自己負担額について、重傷病給付金を給付していると。実際には更に1年以上の加療が行われていれば、更に本人たちは負担をしているという状況と考えてよろしいでしょうか。
○ 警察庁犯罪被害者支援室長そうです。
○ 太田構成員2ページ目はケースが2つ書いてありますけれども、ケース<1>は資料4の方でいうと2番目のケースになると考えてよろしいでしょうか。高額療養費の支給があるケースですので、入院日数が1日違うとかありますが、恐らくこのケースだと思うのです。
○ 警察庁犯罪被害者支援室長そうです。
○ 太田構成員そのことと関連して、このケース<1>の場合も<2>の場合も、重傷病給付金と障害給付金が両方支給されているケースだと思いますけれども、いずれもこの障害等級については9等級ということになっていますが、精神疾患の状況を見ると加療期間が1年以上で、しかも<1>の方は更に入院まで約3か月近くしているということは、性被害の場合にもっとひどいケースもあるのだと思いますが、これだけでも十分重いケースだと思いますが、それでも障害等級は9等級の表現だと、確かにこれは妥当するのかなという気はしますが、もっと重い等級になっているケースもあるのかどうか。
9等級ですと「神経系統の機能又は精神に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの」ということですが、もう少し上の例えば5等級「特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの」、これは両方に該当するような気もしますが、5等級になったりするとか、もっと上の方の1とか3とかだと、生涯服することができないとか重いのであれですが、そこら辺はいかがでしょうか。これでも9等級なのかなという気もするんですけれども、実際に5等級とかあるのでしょうか。
○ 警察庁犯罪被害者支援室長前回のときにも御説明を申し上げたとおりですけれども、精神疾患の方でも障害等級2等級であるとか3等級であるということで判断をしたものがございます。どういうふうに認定をしていくかと申しますと、精神科医の方に意見書を書いていただくようになりますけれども、精神症状の状態でありますとか、日常生活等に対する能力の判断ということについて御意見をいただきまして、それを当てはめて考えていくということになっておりますので、勿論、入院されたけれども、その後に良好になられたということなどもおありかと思いますし、これらの点については医師の方の御意見を踏まえて認定をしていっているところでございます。たまたまこの等級でございましたけれども、2級、3級に該当しているようなケースもございます。
○ 太田構成員これくらいのケースでも9等級と判断されているケースもあるということですか。
○ 警察庁犯罪被害者支援室長その場合もあります。
○ 太田構成員ありがとうございます。
○ 小西座長加藤構成員、どうぞ。
○ 加藤構成員犯罪被害給付制度の場合、故意の犯罪行為でなければいけないという話でしたが、申請をした後に不支給の裁定をされた事由、要するに支給制限とか今の故意の犯罪行為に該当する、あるいはしないということで、不支給裁定になったような例はございますか。
○ 警察庁犯罪被害者支援室長不支給裁定の例もございます。例えばいろいろなケースがございますけれども、例えば交通事故であって自賠責を受けていらっしゃるにもかかわらず、犯罪被害給付制度を申請されたような場合というのは、不支給の裁定をしていることがございます。
また、幾つか不支給とする場合の項目というのが決まっておりますけれども、例えば著しい暴行を被害者の側がまず加害者に加えまして、それで反撃のような形で被害に遭ったというような場合には、それについても支給をしないということになっております。こういったものに該当するということで支給をしていない場合もございます。中には、民事裁判などを経て、予定される給付金の額を超えるような損害賠償金をもう既に受け取っておられるということで、不支給になるというケースもございます。
○ 加藤構成員わかりました。
○ 小西座長ほかにはございますでしょうか。
ありがとうございました。それでは、次に進んでいきたいと思います。
次に、議題「3.カウンセリングを受けた犯罪被害者からのヒアリングの結果について」に入りたいと思います。
前回第4回検討会において、カウンセリング業務に従事している方々のヒアリングに加え、可能であれば、カウンセリングを受けた犯罪被害者等からも意見・要望をお伺いしたいとの御意見に関しまして、カウンセリングを受けた被害者に検討会の場で話をしてもらうことが実質的には大変難しいということで、代替案として被害者にカウンセリングに関して聞きたい質問を出していただき、これを協力いただける被害者の方に、私あるいは臨床担当者が聞き取り、録音あるいは聞き取り結果をまとめるなどをして、検討会で御紹介するという方法を御提案させていただき、御了解をいただいたところでございます。
構成員の皆様方には、事務局にヒアリングに向けた質問事項の提出をいただき、事務局においてとりまとめたものについて、御協力をいただけることになったお二人の方からお話を伺うことができました。まとめた資料については一番最後に付いていたと思います。
当初、非公開の場での聞き取りを予定しておりましたところ、一人の方については少人数の場であれば公の場でのヒアリングに御協力いただけることとなりまして、このような事情からお一人の被害者の方につきましては、3月13日に有識者構成員のみにお集まりいただき、ヒアリングに参加していただいた構成員の方は御承知のことと思いますけれども、実施したところでございます。
もうお一人の方につきましては、臨床施設に来ていただいて聞き取りを行いました。
本日はこれらの聞き取りの結果について御報告いたしますが、本日御報告する内容については、個人に関する情報でありまして、行政機関の保有する情報の公開に関する法律第5条各号に掲げる情報が含まれる場合には、本年3月25日付の犯罪被害者等施策推進会議決定、犯罪被害給付制度の拡充及び新たな保障制度の創設に関する検討会及び犯罪被害者等に関する審理療法の費用の公費負担に関する検討会の開催について、8に基づきまして、議事録から削除する。あるいは概要としてまとめるなどの作業を行った上で公表するという扱いにしたいと思います。
本日ヒアリング結果に関する資料を卓上に配付しておりますが、同推進会議決定に基づき、構成員限りの机上配付とするとともに、非公表扱いとし、本研究会終了後に回収させていただきます。大変わかりにくい言い方になっておりますが、こういう個人情報に関して保護するという観点から、本日の資料はこの場限りということで、公表に際しては御本人の了承をいただき、その上で検討させていただきたいと考えております。
今日限りの資料に基づき、少し御説明をしたいと思います。構成員限り検討会終了後回収というものをごらんください。
事前に把握させていただきたい事項と、当日に御質問したい事項とまとめて、被害者の方に提示しました。御質問の場にいてくださった方は、むしろもっと本人の生き生きとした話をお聞きいただいたと思いますけれども、質問内容を今、全部ここで示しますと大変だと思いますので、簡単にまとめたいと思います。
事前に把握していた事項は被害に遭われる前の経済状態、被害の経緯、カウンセリングを受けることになった経緯、期間、実施者、実際に行われた治療カウンセリング、公的制度の利用状況などです。質問したい事項については経緯や期間・時間、治療、カウンセリング等、効果や本人が主観的に感じている効果あるいは費用、公的制度の利用状況などで、御本人に聞かないとわからないコメント、評価、その他の援助などについて、お話を伺いました。
その結果を見ていただきたいのですが、犯罪被害者に対するヒアリング結果の概要で、Aさんという仮名で、ここの場に来ていただいて、構成員限りで直接お話を伺ったものです。職場の先輩に性交を強要されたということで、御本人の状況としては認知症になったような状態になったと表現されておられました。自分のことを大事に思えなくなり、カウンセリングを受けるに至った経緯に関しては、もう自分は障害を受けてずっとそのまま治らないだろうから、それを受容しようと思ってカウンセリングに最初は行ったと。復職できるまでに回復するとは思っていなかったということをおっしゃっていたのが印象的だったと思います。
カウンセリングを受けた期間、時間等ですが、継続した治療が開始されるまでに4か月ということで、この方にとっては適切な治療につながるまでの期間が非常につらかったということをお話になっていました。さまざまな制度はあるけれども、、警察、被害者支援機関、社会福祉協議会、弁護士、そういうところに御自分でアクセスされたにもかかわらず、なかなか関係がつながらなかったということをお話しされていました。
4か月後から1~2週間に1回の医療及びカウンセリングを継続。カウンセリングは1回につき、ここでは30~60分で、その後、治療が半年くらい継続したところから別のカウンセリング機関を紹介されまして、持続エクスポージャー療法、PEをなさっています。PEは4か月で終了ということです。
効果につきましては、御本人は積極的にとらえられていたと思います。2つのカウンセリング及び心理療法としては、1つは医療機関におけるカウンセリング、もう一つは認知行動療法を受けていらっしゃいますが、どちらもよい評価を受けていると思います。
例えば医療機関でのカウンセリングについては、コーチングのような対応をしてもらえて、生活改善のための取組みができた。また、持続エクスポージャー療法によって町に出られるようになり、電車に乗れるようになり、文章を見ても記憶が飛ばなくなり、といった効果が表れ、よい状態で復職ができたと言われています。
費用につきましては、医療の方が3割自己負担で薬代を含めて2,000円程度ですが、病院に通った医療費の3割を自己負担をすることは、そもそも負担であると感じた。収入がないのに、病状には終わりが見えず、自分がよくなるかどうかわからないのに、お金を使っていくことがなかなか大変であるとおっしゃっていたと思います。これを何回も繰り返して言っていらっしゃったと思います。
医療機関でのカウンセリングは5,000円かかるはずであったが、研究協力のため無料だったということですが、費用がかかっていれば、なかなか行きにくい。1年だけであってもカウンセリング費用を出してもらえれば、行きやすいと思うというお話をされていました。
公的制度の利用状況ですが、大分いろいろなところにアクセスされていますが、結局、公的制度の利用はなしということで、犯罪被害給付制度についても相談はしたが、まだ申請ができないという状況のようでございました。むしろ、就業していたために医療支援もなかなかうまく受けられず、一方無収入という扱いではないので、先の見込みがないのに福祉制度等もうまく利用できなかったという問題点があったと言われていました。
評価のところですが、カウンセリングは大変有効だった。持続エクスポージャー療法はもう一度社会に出るための訓練であり、大変つらい療法であったが、自分がよくなっていくのを実感できたため、大変よかった。カウンセリングは持続エクスポージャー療法を受けられるようになるためのリカバリー、フォローなどのために必要であると感じた。
当初、別の医療機関に通院していた際、医師から叱られているように感じる機関もあったし、薬なら処方できるなど、投薬治療のみを案内された機関もあって、結局継続的な治療にはつながっていません。被害後、早期の時期にカウンセリングを受けたかった。できれば警察の届出よりも前に受診したかった。被害者が利用し得る制度全般について精通している人がいればよかったと思う。どこかの病院に行ってお金を自己負担して治療を受け、後日払い戻しを受ける方法よりは、専門機関があって、そこに行けば無料で治療を受けられる方がよい。と述べておられます。
もう一人、次がBさんという方で、これはこちらに来ていただいたわけではなく、臨床機関の相談室を使ってヒアリングを受けていただきました。夫からの暴力と支配があり、1年半ほどの同居期間中、暴力による外傷で整形、口腔、脳外科などを受診し、不眠、恐怖の反応、PTSD症状があり、一人で外出できなくなり、自分の部屋の雨戸も開けられなくなった。この方は就業中でしたが、会社に理解があり、休職ができたので、経済的には困らなかったとおっしゃっている方です。こういうふうに経済的に安定した生活を送れない被害者もいますけれども、むしろそういう方には、こういうインタビューを受ける機会もないんだと思っていただけるといいと思います。インタビューをお願いできる人は、ある程度生活が安定し、回復された方ですから。
カウンセリングを受けるに至った経緯は、やはり会社での仕事ができなくなる支障が出たため、会社の上司と保健を扱う部署から声をかけられ、被害について話した。初めに女性センターに相談に行き、警察署にも行った。女性センターでは収入があるということで受け入れてもらえなかった。実家に戻り、3か月後に実家のある自治体の女性相談につながり、そこで医療機関を紹介される。医療機関に半年通い、医療機関の中で10回程度のカウンセリングを受け、その後、カウンセリング機関を紹介され、2週間に1度、その後1か月に1度のカウンセリングを受けている。50分は短いかもしれないとおっしゃっています。どちらも臨床心理士のカウンセリングです。
カウンセリング機関で行っているのは、PTSD症状に焦点を合わせた認知行動療法を応用したカウンセリングですね。これは認知行動療法ではありませんけれども、応用したカウンセリングで症状が随分改善したと言われています。
費用ですけれども、医療機関は3割自己負担で2,000円程度。カウンセリング機関は1回2,000円で、これはとても安いですけれども、月2回で4,000円。収入が安定していたので4,000円なら大丈夫だが、月1万円程度が限度であろうと。カウンセリング費用が公費負担になれば、もっとカウンセリングを受けやすくなると思う。この方も公的制度の利用はありません。警察に相談に行ったが被害について訴えを起こさなかったので、公的援助の情報は入ってこなかった。
評価ですが、最初のSOSはうまく出ていなかった。公立の女性相談では相談時間が限られ、心理カウンセラーが相談に応じてくれるのは月1回で、それを逃すともう一か月待たなくてはならない。もっと回数を増やしてほしいし、相談する立場の者が都合がよいときに相談が行けるようになるとよい。被害に遭ったときに、このような相談窓口や機関があることをもっと広報してほしい。自分がそういう立場になって、初めて探すのは大変である。このような発言でありました。
勿論、限られた方ですし、限られた情報ですので、例えば実際にはその制度が使えるのかもしれないけれども、うまくいかなかったということなど、それぞれの事例性がございますが、このような形で被害者の方は実際に語られているということです。
これについて、何か御質問、御意見等がございましたら伺いたいと思いますけれども、どうでしょうか。
○ 太田構成員コメントといいますか、私の感想を申し上げておくと、まず、このカウンセリングへの公費負担という点で非常に考えなければいけないと思う問題として上げられていたのは、先ほども座長の方から説明がありましたけれども、収入の問題もあって、いつ終わるかわからない治療やカウンセリングのための費用を払い続けることができないので躊躇してしまうという問題がありました。
我々はこのカウンセリングの公費負担の問題をこれから考えていくわけですけれども、犯給制度か、もしくはそれ以外のものをつくるかはともかくとして、事後的にそれを償還するという制度も必要だとは思うのですが、それだけではまずいのではないかというのが印象です。そういう制度をつくった上で仮給付の制度とか、犯給法だったらあるわけですけれども、いろいろなものを合わせてつくるか、もしくはそれプラス、ワンストップセンターとか、迅速な形で費用負担なしにそういった支援を受けられるような、しかも安定して比較的長期間受けられるような何らかの制度的な担保というものが、公費負担制度と併せてないと、公費負担ができたから、それで問題解決ということにはならないのではないかというのが、まず1点ありました。
公費負担の問題ではないのですが、被害者支援センターとか警察でのインテークの対応が非常にまずい。それで支援を受けていく気もなくなってしまったというのが非常に印象的だったので、今後、公費負担の問題とは別に、インテークの問題などもきちんと対応できるような状況をつくっていかなければいけないのではないかという印象を持ちました。
以上です。
○ 小西座長ありがとうございます。
ほかにございますか。
○ 中島構成員質問とかではなく、私も補足で、今回こちらに出てこられた方というのは少数なわけですが、私自身が実際に医療を提供している立場からしますと、こういう方たちの状況は全然特殊ではなく、非常に一般的な被害者の方たちの状況だと思います。特に最初の方の場合、収入がないという不安を訴えられていましたけれども、犯罪被害者の方のかなりの多くは就職が持続できなくなって、会社が休業補償をしてくれればいいのですが、必ずしも皆様がしてもらえないという現実があり、生活保護になってしまうと医療は受けられても、やはりカウンセリングを受けるのは非常に難しいということです。、今、太田構成員からもお話がありましたように、被害者の置かれている収入のない状況を踏まえた上で、カウンセリングの費用が重要であると思います。
その費用が例えば2,000円とか4,000円とか、あるいは医療費の自己負担が幾らということを考えると比較的少ないようですが、現状では犯罪被害者に適切なカウンセリングのできる医療機関であるとか、カウンセリング機関が非常に少ないために、実はかなり交通費をかけていらっしゃる方が多いです。交通費だけで何千円とかかってしまう現状があって、そういった見えない費用がかかるということを踏まえて、公費負担の必要性というものを考えていただければと思います。
○ 小西座長ありがとうございました。
私の方からも申し上げておきますと、ここに来て話していただけるところまでこれる方は、かなり恵まれている方がむしろ多いんですね。例えばお金が続きませんと、ちゃんとしたカウンセリングをご紹介することもできない。今、中島先生が言われたような形になりますので、人に自分のことを話していただけるような状況にまで、なかなか回復できないという方も多かったり、Aさんも県をまたいで治療に行かれているので、例えば人ごみが怖いときなどはタクシーを使うしかない状況になったりしているようです。
各地域に支援があるということも、とても大事なことだと思います。けれども、お話が聞くことができるのは、幾つかの条件に恵まれた人だと思っていただければ、私としては幸いです。
ほかになければ、今のお話を踏まえた上で、今後論点の整理に向けて検討を行ってまいりたいと思います。
それでは、次に積み残しておりますことを幾つか検討したいと思います。
議題「4.犯罪被害者等に対する心理療法(カウンセリング)の必要性及び有効性に関する調査結果」についてです。これから説明いただく資料により明らかになる範囲で、どういう被害者の方々のどういう症状について、心理療法が必要になるのかといった観点から主に御説明をしていただき、今後の検討会の議論につなげていただきたいと考えております。
まず、心理療法の必要性について、事務局及び中島構成員から説明をお願いいたします。
○ 内閣府犯罪被害者等施策推進室参事官では、まず私の方から、資料2-1の観点で御説明を申し上げます。
この資料は犯罪被害者の精神健康状態等に関しまして、または被害者に対する治療、相談状況に関してなされました過去のいろいろな研究結果を小西先生の御協力もいただきまして、リストアップして要約を作ったものでございます。
要は研究結果の抜書きというか、サマリーになっておりまして、個別に読み上げるというよりは、時間の都合もございますので、この資料自体の説明は私の方からは省略させていただき、むしろこの場では御専門の中島先生の方に委ねたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
○ 小西座長資料2-1は、心理療法がどのくらい必要かということについて、今まで研究された結果が載っているとお考えください。
それでは、中島先生、よろしくお願いいたします。
○ 中島構成員それでは、私の方から手短に、犯罪被害者に対する心理療法の必要性に関して、今まで日本等で行われてきた研究のまとめについて説明させていただきます。
資料2-1は小西座長が主任研究者になっている厚生労働科学の研究班で、平成17年~19年度にかけて、かなりいろいろな側面で調査を行ったもののまとめです。
まず、その犯罪被害者がどの程度、精神健康が悪いのかについて幾つか調査研究があります。平成17年度は自助グループに所属する犯罪被害者、これは遺族ですね。遺族に対して、これはランダムサンプリングとか非常に難しいので、あくまでも協力をしていただいた方ということになりますけれども、その方たちに対して、かなり綿密な調査を行った結果、56名のうちでPTSDに現在なっているという方が40%ということで、かなり高い割合を示しています。この40%というのは、日本人の一般人口でのPTSDの有病率は1%くらいですから、それを考えると非常に高い割合だということが言えます。
その次の研究は、更にもうちょっとサンプル数を増やすということで、犯罪被害者の当事者団体の方にお願いをして、これはアンケートで調査を行っています。この中には遺族だけではなく、被害者の御本人や家族等も含まれているのですが、例えば全般的な健康指標を図るK10をこの当時は使っていますけれども、K10というものを使ったときに、やはり全体として40%の人が臨床上問題になる精神健康状態を示していたという結果があり、特に被害者本人では70%近いという非常に高い割合を示しております。被害者本人は性被害の人が多いです。これは日本人の一般住民の12か月の有病率というのが、不安障害全般で5~6%、精神障害全般で10%に満たないということを考えますと、やはり著しく高い割合であるということが言えると思います。
更に平成19年度におきまして、遺族を対象に同じように詳細な面接を行っているのですが、少なくともこれは被害から平均約8年経過した人を対象にしているのですが、その時点で何らかの精神的不調を経験したというのは9割くらいいるということです。精神科や民間被害者支援団体も含め、相談をした人が67%に上っています。これもかなり高い割合で、よほど重症でないとなかなか精神科に行かないということを考えると、大変調子が悪かったのではないかということです。
こういうときに、過去に問題があった人が多いのではないかと必ず言われるのですが、この調査では既往歴、つまり事件以前の通院・入院のある人は少ないということから、明らかに犯罪被害によって、こういった精神障害が多く発生したということが言えると思います。この8年の時点でPTSDに該当している人が17.8%、うつ病が12.3%、病的な複雑性悲嘆という人が20%、何らかの精神障害に該当した人が40%に上っているということで、非常に長期経過しても精神症状が残っている。つまり、長期にわたる精神的な医療、心理的な支援を必要とするというのが、この3つの調査でかなりはっきりしたことではないかと思います。
ただ、この調査の問題は圧倒的に遺族の調査で、なかなか遺族以外のサンプルに調査をお願いすることが難しいです。ただ、いろいろな研究で、遺族より性被害者の方が精神健康が悪いということが一般的に言われておりますので、ほかの被害者がこれより軽いということは余り言えないと思います。
もう一種類の調査です。その相談を受けている側がどうかということで、犯罪被害者が利用するであろうと思われる幾つかの機関に対して調査を行っています。
まず、各地方の精神保健全般を担当している精神保健福祉センターにおいて、どれくらい被害者が利用しているのかということですが、これは全部の機関に調査をしたもので、若干データは古いのですが、3ページを見ていただくと、実は犯罪被害者からの相談は非常に少ないです。全体の1%くらいしかないです。
ただ、1%くらいなのですが、その中の少ない方たちというのは、PTSDを抱えているとか重症の方が多いということです。また、ここに相談できる人の特徴があって、警察に届けている事例が3割くらいと結構多くて、やはり単独でというよりは、何かどこか経由をしたり、ある程度どこかにかかった上で精神保健センターに来ているのかなということもあります。
逆にどこにも相談に来ないで精神保健センターに来ているという場合もありますので、こういった相談機関においても犯罪被害者の数は少なくとも対応できるということは重要かと考えております。
精神保健福祉センターというのは、医療を備えているところもあれば、そういう面接ができないところもありますので、そうすると被害者の人も医療が受けられないところで、どの程度相談をするかというのはわからないということがありますので、今度は全国の医療機関を対象に調査を行ったのが(2)です。
これはかなり網羅的に行った調査ですけれども、その結果、これはその医療機関の中心になる医師に聞いているのですが、1年間で犯罪被害者の診療経験がある医者というのは、実は5割くらいいるということがわかりました。被害者は少ない、少ないと言いながら、全く経験をしないということは、実はそんなにないということがわかってきました。
ただ、数は非常に少なく、年間の平均の診療者数は2.4人ということで、医療現場に行く場合には、性暴力とかDVの被害者が多いということが、この調査でわかってきました。一部、非常に集中する医療機関と余り行かないところの差もあるということがわかってまいりましたので、全般的な対応ができるということと、集中していく医療機関に対してはもうちょっとサポートが必要かということです。
これは医療なわけですが、今回問題になっているカウンセリングの方はどうかということで、臨床心理士の方に対して調査をしたのが(3)になります。これは実は医療者とほとんど同じ結果が出てきて、やはり1年間に犯罪被害者の相談を受ける臨床心理士は42%くらいいるということで、臨床心理士の場合は児童虐待の相談が多く、あとは性暴力、配偶者間暴力の方が多いです。私たちは遺族を調査しながら、遺族の対応は余り行っていない結果になってしまうのですが、利用機関において性暴力被害者の治療に関する問題は非常に重要であって、そういった費用の問題は心理医療のところにおいて重要な課題であるということが分かると思います。
参考までに犯罪被害者支援団体において、そういう精神科等医療機関の連携に関する調査も行っています。これは全部の団体にお願いをしたのですが、犯罪被害者支援団体の中では、心の問題の相談の割合が非常に多いです。40%以上が心の問題だという団体が約半分あります。ですから、被害者支援団体にとって心の相談は非常に重要であると言えます。そのうち、精神科医療機関の紹介が必要だと感じた場合も2~4割くらいあるということで、そういった連携が非常に重要であるということです。実際に数はそんなに多くなかったのですけれども、ここでも性被害者であるとか暴行傷害の被害者等、PTSDのハイリスクの方の障害が多くなっていました。
これらを総合すると、現状はその被害者が集中して相談するところでは、心の問題の相談がかなり多いのだけれども、実際に精神科につながる人が今のところは少ないような印象を受けます。ただ、多いところでは非常に多く受けているということも考えられます。今のところは、医療の現場での相談としては、性被害、DVが中心であって、これらの人の問題がカウンセリングでは大きいのかもしれないということが言えると思います。
ほかの資料のことを簡単に御説明いたします。資料2-2の方です。
では、医療者の方がどういった治療に対するニーズを持っているのかということで、これは被害者ではなくPTSDということですが、日本で多分一番、被害者の相談を受けている医療関係者が参加している日本トラウマティック・ストレス学会という学会があって、その学会の会員に対して、PTSDの場合はどんな治療をしていますかということを調査したものです。これが論文になっております。
これで見ていただくと、206ページの図2を見ていただくといいと思います。PTSDの場合、一般的な支持的なサポーティブな精神療法が非常に多く出されているのですが、この時点でも3割くらいは認知行動療法を使っていたり、あとは薬物療法をかなり併用している実態があります。実態はこうですが、その下の図を見ていただくと、今後習得したい治療技法として、圧倒的に認知行動療法が多いです。5割くらいの人は認知行動療法を習得したいと回答しています。つまり、PTSDにエビデンスがあると呼ばれている治療法を医療とか心理の現場では必要としているというのが、この調査の結果になるかと思います。これは心理士もほぼ同様で、あとはお薬の話です。
つまり医療現場ではニーズが高いけれども、今はそれがなかなかと習得できないということで、治療できないという現状があります。この段階では医療保険のこととかは聞いていませんが、実際に習得しても今度は費用の問題があった場合に、なかなか提供できない可能性もあるかもしれないと思います。
最後に資料2-3は私が学会とかで報告しているスライドですが、関係のあるところだけ簡単に御説明をいたします。今まで犯罪被害者の精神健康の問題について、ずっと話してきたのですが、内閣府の方で大々的な調査を行ったときの結果が1ページのスライド2に出ておりまして、これはK6というものを使っていますが、犯罪被害者の方の場合、重傷精神障害、つまり医療が必要な人の割合がこの黄色い一般対象者に比べて著しく高いということで、ウェブを通した調査でも示されています。
ほかのスライド、例えばPTSDの有病率が非常に高いというのがスライド3ですし、スライド4にはPTSD以外の気分障害、不安障害の合併率が高いということを示しております。
2ページのスライド5では、アルコール・薬物関連障害や自殺行動も非常に高いということです。この中を全部説明すると大変なので、簡単なところだけを御紹介しておきますけれども、精神科医療機関の利用についての問題だけ御紹介しておきます。スライド6に書いてあるのですが、警察庁の犯罪被害実態報告書で、カウンセリングが必要だと思っている人が60.3%いるのにカウンセリングを受けた人は7.8%しかいない。ハイリスク者が40%いるのに対して、精神科医療機関の受診者が16%しかいないということで、必要としているけれども、受けられない人たちがかなりの割合でいるというのがいろいろな研究から示唆されていることです。これはアメリカでも同様です。
次のところで、どういう理由で精神科を受診しないのかということで、アメリカなどでは少し調査がありますが、ほかの人はどう思うか分からないとか、どこに行ったらいいか分からないという中に、やはり金銭的余裕がないというのが理由の一つとして挙がっています。これは日本で一般住民の調査で受診の必要があるけれども、しないという人たちの上位の理由には余りそれが入っていないことからすると、犯罪被害者の場合は費用の問題は大きいのではないかということが言えるかと思います。
あとは皆さんで御参考に見ていただければ済むかと思いますが、次に小西先生の方で御説明する部分があると思うのですけれども、5ページの後半のところは、今、世界的にPTSDの精神療法に関して、何が推奨されているかという研究のことについて報告をまとめたものですが、簡単にいいますと、今のところトラウマに焦点を当てた認知行動療法。特に暴露を含む認知行動療法に最もエビデンスがあり、EMDRにもそれなりのエビデンスはあるのですが、そのほかの治療については余り推奨される段階にないというのが、ほぼ世界的な潮流であるということが言えると思います。
長くなりましたけれども、ざっとまとめますと、犯罪被害者において、一般住民に比べると著しく精神障害の有病率が高くて、やはりPTSDやうつ病が問題になっているだけでなく、自殺のリスクとかもかなり広範にあるということ。そして、ある程度は精神医療等がかかっていますけれども、すべての必要な人がかかれていない状況があって、その中には費用の問題の可能性もあるというのが大まかなまとめかと思います。
以上です。
○ 小西座長中島構成員、ありがとうございました。
続きまして、今度は有効性の問題ですが、ここについては私の方から簡単に御説明をします。
今、中島構成員の方から出していただきました、5ページ、6ページの辺りのお話がありましたけれども、現在、PTSD患者を対象とした認知行動療法の効果は世界中の多くの研究で実証されています。心理療法の世界でこれほど確実な結果が出ていることは、むしろ珍しいと言えます。エビデンスがある方法は幾つかあるのですが、最も確実なエビデンスがあると言われているのが、プロロングドエクスポージャー法です。我が国でも数か所の施設でこのPE法が使われておりまして、犯罪被害者の心理療法としても効果を上げていると言えます。
海外の非常に厳密な研究に匹敵するものが日本でたくさん出ているかと言うと、そうではないのですが、日本で出ている結果について、私の方で資料3に挙げております。
1つは、各種トラウマによるPTSD患者を対象にした日本におけるエクスポージャー療法の有効性に関するランダム化比較試験。大変長くて申し訳ございません。飛鳥井先生がなさっているものですね。これが国際誌に出ていますので、それの翻訳した要旨を載せております。
何をやっているかというと、基本的には、PTSDがあるとわかった患者さんを2群にランダムに振り分けまして、その2つの群の間に差がないということを確認したところで、片方にはプロロングドエクスポージャー法をし、片方には日常の治療法で扱っていて、その結果がどういうふうに違うかということを比較しているものです。
治療実施前の評価において、PE群とTAU群、Treatment as usual(日常でやっている治療法)の略ですけれども、その群との間にPTSD治療指標、うつ症状指標、精神健康指標に有意差がない。この状態では約8割の方が休職・休学中。治療後に比較したところでは、PTSDもうつ症状も精神健康の症状もいずれもPE治療群の方が有意に改善されていたとなっております。
その結果では、6か月後でPTSDの臨床上の治療が必要でなくなった状態の方が約2割、純寛解の方も約2割、得点が15点以上改善した人が8割、63.2%の3分の2の方が診断基準上PTSDに該当しなくなったというふうになっております。目覚ましい結果があったというのがこの研究の結果だと言えると思います。
その下で参考と書きましたのはこれとはまた違う方法で、コントロール群を取っていないので、エビデンスレベルとしては前述のものより低いのですが、私のところでPE法をやったときに、事前と事後でどれくらい症状が違うかということを統計的に検討した結果がございますので、それを出しました。
大学のセンターの話はここでは省かせていただきますが、武蔵野大学心理臨床センターでは日常的にたくさんの被害者の方の心理療法、カウンセリングを行っています。。
3ページの下、ここでは24人の方です。どんな方かというと、性的暴行が11人、性的虐待が3人の、性的な被害を受けた方14人。DVの被害の方が4人。交通事故の被害者の方が2人。最後は監禁事件の被害者の方で、性的暴力、身体的暴力を含む事件の被害者の方が4人という方々に対して、PE治療を行っています。
かなり具合が悪い方が多いのですが、5ページの下の結果です。その結果として、大変よくなったという方が11名。35%以上症状が減ったという方が1人。10%から35%の症状が減ったという方が5人。ここまでは症状が減ったということですね。変わらなかった方が0名、途中で治療から抜け落ちた方が5名となっております。これは海外の研究などと比べても標準的な値です。
その次の表は、治療効果についてです。PTSD症状についても、解離症状についても、抑うつ症状についても治療前後で有意差があるということが示されています。限界はあるのですが、犯罪被害のようなトラウマ体験を持っている方たちにPEが有効であるということが示唆できたと考えています。この後も治療は継続しておりまして、経験ケース数はもっと増えておりますが、全体の結果はほぼ同様です。
それでは、ただいまの中島構成員にお話しいただいた必要性の部分、有効性の部分につきまして、御質問等がありましたら、御自由にお願いいたします。
○ 太田構成員いろいろとあるのですが、とりあえず心理療法の有効性です。いろいろな調査結果を見させていただくと、3か月後の評価、6か月後の評価、12か月とかありますけれども、前も臨床心理士の先生に来ていただいたときのお話にもありましたが、治療の必要な期間、これは公費負担をどれくらいカバーするかという問題も絡むので、大体どれくらいの期間をやればいいというのは、ある程度研究はされているのでしょうか。3か月では余り効果が出ないという話が出ていましたけれども、大体6か月とか12か月で、5年とか長期間のものは現在必要ないとはされているのでしょうか。
○ 小西座長これもどういう治療法を選択するかにもよりますが、PE法は定型でやれば、必要な期間は評価を含めても3~4か月と思っていただいていいと思います。ただし、、その前に事前に6か月くらい、症状を軽減してPE療法に乗っていくための期間が必要なこともあります。特に状態が重い場合、そういう期間が事前に必要な方が多い。これはPEをやっている治療者の中では共通の理解だと思います。
例えばそういう準備のための治療期間を更に意識的につくっていく定型の治療法などもあるのですが、その場合だと事前のフェーズが例えば4~6か月くらいで、エクスポージャーの部分が4か月くらいとか、そういうような形でなされているものもございます。期間としてはそういうことです。
○ 太田構成員期間としてはいずれにしましても、PE法に関して言うと、例えば2年とか3年とかの長期間を前提とするような療法ではないということでよろしいでしょうか。
○ 小西座長そうです。基本的には10回から、どんなに長くても20回となっております。
○ 中島構成員治療期間を定めるのはなかなか難しくて、その方がPTSDだけ持っていて、しかもシングルトラウマ、単回の被害であれば、かなり短くて済みます。ところが多くの被害者の場合、うつ病が合併しているとか、複雑に精神症状が合併してくると、それぞれの治療にそれなりに期間がかかります、例えばうつ病であれば、普通は最低1年くらいは治療をしなければいけないということがあります。特に虐待の被害者など非常に複合した被害になりますと、PTSDだけを治療してもほかの問題、対人関係の問題とかの治療があり、これだと何年もわたってかかるということがあるので、その方の状況によって治療期間は実はかなり変わってきてしまいます。
ですから、先ほどの調査でもありましたように、被害者はPTSDだけを持っているわけではないので、PTSDの治療法の期間だけでカウンセリング期間を決めていいかと言うと、それはそれで正しくないかもしれないと思います。
○ 小西座長自分でも足りなかったと思うので補足したいのですが、お示しした資料の中に実際に私どものところで、レパートリーとしては認知行動療法も持っていますし、支持的なカウンセリングも持っています。医療機関との連携もできるという比較的選択肢が多い状況で被害者のためにベストのことを考えていくというふうにしますね。そうやっていて、期間全体を含めると3年くらいとかかっている方は勿論います。
PEというのはよさそうに見えるのですが、そこに乗っていくまでにある程度の条件が必要です。最初のだれにも話せない、だれも助けてくれないという状況から来られるところから、トラウマに直面して治療をやろうというところまで持っていくために本当にたくさんの時間がかかる。すべての人がそこを通ればうまくいくんだというよりは、そういう選択肢をたくさん持っていて、その中でその人の状況に合わせて、最後は回復できるように持っていくというイメージなので、そこは今、私の説明が足りなかった部分だと思いました。
○ 太田構成員まだ幾つかあるのですが、違う種類の質問ですので、ほかに質問があれば先に。
○ 小西座長そうですか。では、何かほかに御質問はございますか。
では、太田構成員、大丈夫です。
○ 太田構成員これも公費負担の範囲に絡むのですが、今のお話ですと、PTSDに関してはPE法がかなり有効ではないかと言われている。あとEMDRについても一定の評価をなされているというお話ですが、それ以外にも多分いろいろな療法があると。先ほど習得したい療法の種類にもいろいろとありましたが、少なくともそのことに関して、明らかに有効でないと言われていない以上は、例えばこれから公費負担をするときに、PE法だけに限るとかいうことはできないと考えてよろしいでしょうか。
要するにこれ以外の療法は有効でないから、カウンセリングの費用負担の対象にならないということ、その程度の有効性の確認はなされていないと考えてよろしいでしょうか。そこで絞れないと考えてよろしいでしょうか。
○ 小西座長エビデンスがないからといって、有効でないという証明はできたわけではありせん。ある治療法について有効であるということは言えるのですが、出なかったことの原因が治療法が無効であるということとは違います。例えばサンプルのサイズですとか、全体の研究の構成ですとか、そういうことも当然影響してきます。そういう点では、積極的に排除するということは、科学的に言うと、なかなか難しいということは言えます。
ただ、明らかに何か有害であるとか、明らかに無効であるということがはっきりしているようなものがあれば、それは排除は可能であろうと思います。エビデンスが出ているものも、別に今はPE中心にお話をしておりますが、世界中で見れば、もう少し幅広くあるわけです。そういうエビデンスをどの程度評価していくかということも、これは具体的な検討の中でまだ考えるのかなと思っています。
○ 太田構成員ということは、我々はこれからカウンセリング費用に関する公費負担を考える上で、例えばある特定の人が本当にオーダーメードの療法をある臨床心理士の人がやった場合に、極めていい効果が出たという場合でも、それはPE法でないからだめだとかいうふうには言えないわけですね。そうするとある程度、そういうことも含めて、療法の種類からも限定できないと考えた方がよろしいでしょうか。
○ 小西座長制度として考えたときには、例えば薬のことを考えていただきたいのですが、今の先生が言われている方法は、例えばある人のある特定の薬や療法が効いたから、何事も、民間の食事療法も、何かを飲むということも、限定できないのではないかという話になっていくということになるのですが、そうはならないですね。
例えば保険診療の中では当然、だれがやっても効果があると期待されているエビデンスがある方法を取っているわけです。そういう立場から言うと、保険診療ということになっていくと、そのエビデンスが厳しく要求されるということになるのだと思います。
一方、そのエビデンスの限界もあって、さっきお話ししたように、ある意味では、薬治療はエビデンスを出しやすいです。心理治療は今までそういうことが非常に難しい領域でした。むしろPEあるいはEMDRというようなものは、その難しい領域の中から、あえてその薬と同じような形の実験計画をしても有効性が確認されるという点では、そのエビデンスは非常に価値があるわけです。
その中で私たちが制度として作っていくときに、心理カウンセリングの問題は、支援の理念と治療効果の問題とのせめぎ合っているところにあると私は考えて居ます。せめぎ合っていて難しいことだから、どちらかしか取らないということができない領域、先生の御指摘は非常に最もだと思いますけれども、そこは今のところは心理療法における科学的エビデンスというものの限界も踏まえながら、実際にやっている方たちの最大公約数を取っていくという形でしかできないのではないかと思っています。
○ 太田構成員私が言っていることと全く同じことだと思います。でも、薬とは違うと思うんです。ただ、要するに最終的に対象になる療法をどうやって限定するか。無制限にはできないとすると、資格の上で制限をかけておくのか。資格の上でも制限をかけ、更に心理療法の種類でも制限をかけるのかということが多分あるかと思います。その点に前提となるような科学的根拠がどの程度あるのかを確認したかったものですから、お聞きしました。
別にもう一つよろしいですか。割とこのPE法とか、いろいろなものを習得したいというお医者さんとか臨床心理士の方が多いみたいですが、逆に臨床心理士の方もPE法は、普通は勉強されないでなられるということでよろしいんですか。
もう一つは、こういうのを習得していくのは大変でしょうか。これも臨床心理士さんの資格を持っている人だけのカウンセリングに給付を認めるのかどうかということと、更には研修を受けて認定を受けた人だけをカウンセリングに対して給付していくのかということもあると思いますので、その習得はどれくらい大変なことなのか。また、こういう研修を受けましたというくらいで認定していいものなのか。そういう研修が果たしてできるかどうかも分からないのですが、その辺りはいかがでしょうか。
○ 小西座長中島先生の御意見も伺いたいと思いますけれども、現在、PEの教育をしている者は日本で数人だと思います。その他のエビデンスを持った治療法についても数人の方がやっているという状況だと思います。一番よく分かっている自分のことで言いますと、年に1遍、4日間でワークショップをやります。対象者は資格を持って、PTSDの方を診たことがある方と限定していますが、1回に20~30人未満がせいぜいです。それで訓練して、すぐにできるようになるかと言うとそうではなく、訓練をした上で2例ビデオを撮って、スーパービジョンを受けていただくという形でやっていますので、フルの習得は正直に言って、技量も必要とされますし困難ではあります。
ただ、毎年来られている人はいらっしゃいます。私のところだけではなく、国立精神神経医療研究センターでも毎年来られています。こういう国全体の需要について話す委員会からすると、本当に砂漠に水をまいているような作業かもしれません。だんだんやられる方が少しずつは増えています。けれども、先生のご質問に関するお答えとしては、臨床心理士を取りたての人ができる治療法ではありません。
○ 太田構成員そうなると、もしこの公費負担の点で、臨床心理士の資格を持っているだけではなくて、一定のそういう研修を受けた人に限るというような制度をつくるとすると、全国的に組織的にそういった研修とか養成の仕組みをつくらないと、現時点ではとても難しいという状況でしょうか。
○ 小西座長先ほどのお話に明確に答えられなかったのもその点があります。PEだけがすごくはっきり効くから、例えば認知行動療法だけをやろうという考えは、非常に現実的でないです。
もう一つ、私的な経験で申し訳ありませんけれども、うちのセンターは若い臨床心理士さんをそのまま育てているんです。それでも、この人たちは少し練習していくうちに、PEそのものではなくても被害者のカウンセリングをできるようになります。その点では初心者でも技量が未熟でもできる方法もあるわけです。支持的なカウンセリングなどでも、支援としてやっていくことはできるので、そういう全体を総合して見ないと、日本全体で被害者のカウンセリングをできるようにしていくということを考えるときには、その辺まで裾野を広げないと、なかなか上がっていかないと思います。
○ 太田構成員くどいようですけれども、そうするとPE法でもそれだけ研修とか人の養成にかかるとすると、EMDRとか別の療法になってくると、これはこれで別の研修が必要で、そうなると例えば臨床心理士さんの中で被害者のカウンセリングの研修を受けましたという認定制度をつくるとすると、単にPE法だけをやればいいというわけでもないと思いますので、そうすると犯罪被害者カウンセリング心理士という認定をつくろうとしても、もっとその前にPE法の資格とかEMDRの資格みたいな感じでしていかないと、そういう療法の中で選択して実施できるというものの、更にその次の課題みたいな感じになってしまうということでしょうか。
○ 小西座長私ばかりしゃべっているのも何なので、中島先生の御意見も伺いたいと思います。
○ 中島構成員ここでPTSDに有効な治療という話をし過ぎてしまったばかりに誤解があるのかもしれないですけれども、犯罪被害者の全員がまずPTSDではないんです。けれども、犯罪被害者のほとんどはカウンセリングを必要としているという現状を考えた方がいいと思います。犯罪被害者の必要としている公費負担のカウンセリングというのは、別にPTSDのカウンセリングである必要はないと私は思っています。
どういうことかと言うと、性暴力被害は確かにPTSDを発症しやすいですが、半分は自然寛解します。ただ、自然寛解をするための条件は適切な支援が得られるとか、助言が得られるとか、サポーティブなカウンセリングが得られるということも当然そこには入ってくるわけです。やり方として多くは、まずその被害に遭った方ができるだけ適切な回復していけるようなサポートとしてのカウンセリングがある。これは別にPEである必要は全くないんです。被害者の方に適切な対応ができるとか、法的なことも含めて、犯罪被害についての知識がある。そういうことであればいいと思います。
PTSDになられた方で、なおかつパロキセチン等のSSRIも3~4割には有効です。普通の医療機関に薬物だけで通っても3~4割はよくなる。PEを必要とする人はそれをやってもよくならないという限定された人になってきますから、その人たちをもってすべての被害者の治療の方向を定める必要は別にないと思っています。
ですので、その犯罪被害者のカウンセリングといったときには、犯罪被害者の方が初期から安心して関われる技能のある臨床心理士なり、医師なり、精神保健福祉士であれば十分であって、そのための技量の要件として、PEなどを要件にする必要はないと思っています。むしろ研修としては、きちんと犯罪被害者に対応できる研修を受講して、それをきちんとマスターしているということであればいいので、そんなに難しいことを要求しないで良いと思います。
なぜかと言うと、先ほどの調査でも言ったように、年間に1人くらいはみんな診ているわけなので、その年間1人くらいを全員が診るのに対して、これだけ特殊な治療法を要求するのは、なかなか難しいだろうと思います。こういう特殊な治療法は、そのシステムとして期間的に見られるところで集中して提供できるということの方が、将来的には望ましいのではないかと思います。
○ 小西座長ありがとうございました。
参考までに、大体うちでどういう手順で被害者のカウンセリングを決めているかを御紹介しますと、最初に来られたときにアセスメントをします。一部の方はお話をするだけです。それで治る方はよくなっていかれる。情報があるだけでよくなる方もあります。あなたの症状はこういうことで起こっているから、それでいいんですと。それから先行きはよくなりますみたいなことの情報が、心理教育という中にさっき入っていたと思いますけれども、そういうのでよくなる方はもうそれで大丈夫です。
医療に行って、医療とカウンセリングをやる方もあるし、医療の方でよくなれば、それでやってしまう方もいます。その中で非常に具合が悪い方と具合が悪いんだけれども、すぐに特殊な療法に行ける方もあります。事前に安定化の治療をしばらく長く重ねる方もいますし、その前に自殺防止のためにとりあえず入院をしていただかなくてはいけないという方もいます。いろいろな選択肢を使いながら、最終的に本人の力が使えるところは使って、よくなっていっていただくということなので、その中での心理カウンセリングの占める領域は非常に大きいんです。ところが何をやればいいと尋ねられてしまうと、非常に多岐にわたっていて、なかなか一言で言えないということもあります。
○ 太田構成員中島先生のおっしゃるとおりだと思いますが、要するに裾野が広いんだと思います。ただ、どこまで公費負担をするかということがあるために、一番コアな部分は負担の必要性も高いわけですね。非常に広いカウンセリングの中で、一体どこまで公費負担をしていくのかということも議論は必要なので、その前提として、いろいろとお伺いをしていたということでございます。
○ 小西座長今の議論は、実はカウンセリングとは何かとか、あるいはこれからの論点をどうするかという、これから先の議論のところでもっと扱うべきことだったかもしれませんので、先に進ませていただいて、今のことを思い起こしていただければと思います。
では、次に議題「5.心理療法の定義、種類、実施者等の概念整理(共通イメージ保有のための整理)」です。これがないとこの先に進めませんので、それについて事務局から御説明をいただきたいと思います。
当初、心理療法やカウンセリングの定義、種類、実施者について、共通の認識で議論をするための用語の整理をしてほしいと御要望がありまして、当然のことですが、これまで予定をしておりましたけれども、いつも時間の都合で積み残されていたものです。
これも広義にも狭義にも使われ、明確に統一されているものが必ずしもあるとは言い難いものですが、本検討会において心理療法の公費負担について議論をしていくためには何らかの認識は共有をする必要があると考えられますので、まず事務局から御説明をいただいた後、私の方から本検討会におけるこれまでの現状把握を踏まえて、被害の時期と被害者に必要と思われる心理療法、カウンセリングについて、整理の意味でもう一つ補足説明をしたいと思っています。
それでは、事務局からお願いいたします。
○ 内閣府犯罪被害者等施策推進室参事官では、私の方から資料4を主に使いまして、御説明を申し上げます。付けた資料番号が飛び飛びの説明になるかもしれませんが、ほかの複数の配付資料にも言及したいと思っております。
先ほどの必要性、有効性の話を聞いておりまして、議題の並べ方として、こちらが先の方がよかったかなと反省しているところでありますが、心理療法の定義、種類、実施者についてという概念整理について御説明を申し上げます。
これはそもそもカウンセリング等の具体例について、この検討会がヒアリングを始める前に御提案して、共通イメージを持って進んでいけたらという趣旨で作ったのではないかと理解しているのですが、検討会も第5回となりまして、皆様方におかれましても相当程度具体例をお聞きになったと存じますので、むしろ確認のところもあるかと思いますが、説明させていただきます。
まず、心理療法とは何ぞやという定義ですが、法令上これを定義したものは見当たりません。また、幾つかの文献を見ましても、講学上の定義も取り立ててはないようでございます。心理学辞典の記述を基に一応その定義づけを試みたものが資料4の1枚目の右肩上の水色ボックスになります。
これもあくまでも定義的なものとしか言えませんが、その内容はここに記載しましたように、実施者は一定期間、そのための特有の訓練を積んだもの。
目的は治療者との治療契約に基づく対人関係を介して患者の認知、行動、感情、身体感覚に変化を起こさせ、症状や問題行動を消去もしくは軽減すること。
方法は言語的、非言語的、道具を生かした介入など多岐にわたる。対象は患者個人を対象とするものから、夫婦、家族、集団を対象とするものまでさまざま。こういったものが心理療法として言われる。ただ、これは若干狭義のものと仮に括弧づけでさせていただきます。後になぜ狭義としたかということについて、説明申し上げます。
この心理療法にはどのような種類があるかというと、認知行動療法、先ほどから出ております暴露療法でありますとか、EMDR、遊戯療法、精神分析療法、家族療法、集団精神療法、来談者中心療法などが挙げられてございます。
次に、カウンセリングあるいは心理療法とカウンセリングの関係について、説明申し上げます。カウンセリングという言葉も第2次基本計画策定時の議論で出てきたものでございますが、これも法令上には特段定義は見当たりません。また、講学上も固まった定義というのはないようです。
1枚目の図式でいきますと、オレンジ部分がそうなるわけですけれども、心理学辞典のカウンセリングという項目を見ますと、次の3つが代表的な概念規定として紹介されてございます。
<1>は、適用上の問題を理解し、解決することができるように、ほかの人がその援助に努めるというような関係。
<2>は、自分一人では拮抗できない問題で悩まされている個人と、訓練と経験とによって、他人の個人的障害の解決が可能となるように援助できる資格を備えた専門家との間の一対一の関係において生起する過程。
<3>は、2人の人の間の社会学習の相互作用と挙げられてございます。
そして、カウンセリングの方法、目的は単純な忠告という辺りから、強い長期の心理学的措置という極まで多岐にわたっていると考えられます。
この心理療法とカウンセリングの関係は、これまた心理学辞典によりますと、両者を区別するという考え方。
2番、両者を一部重複させて区別するという考え方。
3番、両者を同一概念として扱う考え方。
4番、カウンセリングに心理療法を含める考え方。
更に5番、心理療法にカウンセリングを含めるという整理の仕方がございまして、これもやはり統一されていないと言えるかと思います。
本検討会で想定している「心理療法(カウンセリング)」という形で、今まで書類上は出てきていると思いますが、これをどう考えたらいいのだろうかということにつきまして、事務局として説明させていただきます。事務局案でございます。
1枚目の資料と4枚目の資料をめくっていただきながらということになります。心理学辞典におきましては、心理療法を限定した意味合いでとらえる場合には、相談やカウンセリングなどを除外した、あくまで治療であると定義されているという趣旨の説明がなされております。ここが極めて狭義の説明になろうかと思います。
一方、第4回基本計画策定推進専門委員等会議における有識者構成員からの意見等の資料が4枚目に引用されてございます。
「狭義の疾病の治療のみではなく、犯罪被害者の権利回復の一環であり、この点では、カウンセリング費用給付は海外のvictim compensation制度におけるカウンセリング費用給付のように、保健医療制度における医療保障より幅の広い心理的支援と考えることができる」。
「現在医療保険外のカウンセリングとして提供されている心理的支援が、海外で治療効果が実証されている専門的療法から、より一般的な療法、ときには一部で行われている特殊な療法まで広がりがあり、質も様々であることは事実である」。
「このような狭義のカウンセリング(特定の精神・心理療法)に限らず、広く支持的カウンセリングを早期から受けられることも重要である」などといった記述がございます。
これらの記述からしますと、心理学辞典で説明されているところの狭義の心理療法に限られない心理的支援、支持的カウンセリングの必要性が指摘されていると言えると思います。そして、本検討会がこのような専門委員等会議での議論の結果、立ち上げられたものであることを考えますと、その狭義の心理療法のとらえ方を前提としましても、本検討会で言う心理療法については、その狭義の心理療法に限らず、心理的支援、支持的カウンセリングまで含めたものとすることが適当と考えております。
なお、この心理的支援、支持的カウンセリングにつきましては、便宜上、心理カウンセリングと呼ぶこととしまして、この1枚目のところでも左側の水色ボックスのオレンジと重なる部分に心理カウンセリングを設けてございますが、そのように解して資料を作成してございます。
そして、フェミニストカウンセリングにつきましては、実態に即して心理療法に一部含まれる部分があるだろうということで、中間領域のところに持ってきてございます。
5枚目が犯罪被害者支援に活用されている心理療法の例といたしまして、医師、心理臨床家、これは定義が難しいのですが、それと精神保健福祉士、看護師などを挙げてございます。説明をそれぞれ記載してございますが、時間の関係もありますので、こちらについては、読み上げは割愛いたします。
2枚目「犯罪被害者支援に活用されている心理療法の例」も認知行動療法等、それぞれ説明を付けてございますが、これについても改めての読み上げは割愛させていただきます。
その他ですが、これまで説明してまいりましたように、本資料は犯罪被害者等に対する心理療法の公費負担について議論をするために必要となる「心理療法(カウンセリング)」の概念として、構成員間で共通認識を持つという目的で作成したものでございます。この概念整理を一般化、普遍化するというつもりではございません。
ただ、講学上や臨床上の概念と余りにもかけ離れていては検討会外での説明で困難を伴うこととなりますので、心理学辞典等の記述を参考とするとともに、小西座長にも相談をしながら、本資料を作成させていただきました。
資料6-4が先ほど挙げさせていただきました心理療法の実施者の例とか、心理療法の例などを御提案する前ではありましたが、実際に制度をお持ちの省庁であるとか、心理療法やカウンセリングの実施に当たっておられる方々からのヒアリングを本検討会では既に行っております。どういったものがあったかにつきまして、資料6-4で項目的にリストアップしてございます。
資料6-5は現状把握をした具体的内容を更に敷衍いたしまして、各種公費負担制度の対象者、財源、自己負担額について、表としてまとめたものでございます。
なお、資料6-4に戻っていただきまして、項目<8>とされておりますのが、ただいま資料4でワンセットで御紹介させていただきました心理療法(カウンセリング)の概念整理でございます。
更に今回、小西座長には、この検討会でヒアリングをしてきたものなどの位置づけみたいなものを追加で御説明をお願いいたしまして、補足の資料を本日、机上配付という形で配付させていただきます。この御説明も伺い、その部分も項目<8>の中で一緒に認識を共通化したものとできればと存じます。
以上でございます。
○ 小西座長ありがとうございました。
それでは、もう一つ考えなくてはいけない軸が時系列ということなので、時系列について、これまで何人かの方に来ていただいて、現実に行われている犯罪被害者に関する心理療法、カウンセリングについてお話をいただいたと思いますが、そういうものをどこに位置づければいいのかということで、ラフに考えてみました。資料4補足資料をごらんください。
被害の発生後から当然、心理的な支援も必要になってくるわけですけれども、例えば直後ですと、一番可能性があるのは警察の内部における心理支援。今日も神奈川の方で出ていましたけれども、そのような形のものがあるのだと思います。一方、もう一つ軸があって、犯罪被害者をどこまでの対象とするか。どういうふうに犯罪被害者等を考えていくかという軸でいいますと、例えば司法に直接関わっている方だと警察ということになります。
一方で、ワンストップセンターは、概念としては警察に関わらない方も、被害直後からの支援もするわけですね。その2つの軸で考えてみますと、おおむね直後の時期と急性期。これが数日から1か月と書きましたけれども、数か月かもしれません。中長期も1か月後くらいから長くで、それぞれオーバーラップがあって、きれいには分かれないものですけれども、大体のイメージを挙げてみました。
急性期には、宮崎先生にお話しいただいたような警察と非常に連携を持った形の臨床心理士への委嘱によるカウンセリングが行われていたと説明を受けました。これが回数が限られて、急性期に行われているものでした。一方、一部の民間、犯罪被害者支援組織で特に警察との連携をもって臨床心理士等がいるところでは、ここで急性期の心理カウンセリングが行われていると思われます。
もう一つ、東京女子医大女性生涯健康センターの加茂先生にもお話いただいたと思いますが、こちらではカウンセリング及びPTSDの認知行動療法。もっと医療あるいは専門治療に関わるところが行われておりまして、私の大学の方でも心理ベースで同じようなことが行われております。
それぞれがダブりながらやっているわけですけれども、例えば警察による心理支援を警察に届けた人は100%なわけですが、そういう意味では緑になっているところはどちらかと言えば、狭義の犯罪被害を受けた方々が行かれるところで、黄色の方は自分が被害を受けたと思われた方をイメージすると、こういう形になるのかなと整理しております。同じようなカウンセリングと言いましても、質の問題もございますし、こういう時期の問題も違いがある。私たちが対象とするのは、このうちのどの辺りを対象として、制度を構築していけばいいのかを考える助けになればと思って出しました。
先ほどの事務局からの説明、今、補足しましたことで何か御質問がございましたら、あるいは御意見がございましたら、お受けいたします。
それでは、続きまして、今日は本当に盛りだくさんでございますが、議題「6.海外調査結果について」、事務局から御説明をいただきたいと思います。
○ 内閣府犯罪被害者等施策推進室参事官御説明を申し上げます。資料5を前提にさせていただきます。
先般、検討会1の方で米、英、独、仏、韓の5か国にわたる犯罪被害者等に対する経済的支援に関わる制度に関する調査を実施いたしました。各国での訪問先、機関等につきましては、資料5の最終ページにございます海外調査の概要の方をごらんください。この調査に合わせまして、検討会2の視点といたしまして、心理カウンセリングの公費負担に関する質問項目も設けまして、聞き取りを実施いたしました。
また、社会保障制度や医療保険制度等、文献等から調査したものもございます。検討会2の視点の部分につきまして、資料5に概要をまとめてございます。前提となります社会保障制度や医療保障制度自体が相当異なりますので、どうしてもきれいに比較対象できる調査ではないかもしれませんが、一応の目安として御参考にしていただければ幸いでございます。
簡単に各国の結論だけ申し上げます。
まず、アメリカは被害者補償制度として、カウンセリング費用をカバーしてございます。補償対象となる回数、期間、金額などは州ごとによって枠組みが異なるということでございます。
イギリスは心理カウンセリングが原則として国民保健サービスでカバーされることとなっております。ただ、この保健サービスとしてのカウンセリングを受けられるまでの待機期間中に受けたカウンセリングの部分については、犯罪被害補償制度の対象となってくるということのようでございます。
フランスはどこで心理カウンセリングを受けるのかということで補償の枠組みが若干異なるようでございます。病院で実施される心理カウンセリングの費用は、医療費として疾病保険の対象となっていますが、個人による心理カウンセリングの費用は医療費としては補償されておりません。その中で専門の医師による診断により、心理カウンセリングの必要性が証明された場合には、被害補償制度により保障されるという形になっている模様です。
ドイツも連邦制なので、国としてどれくらいの共通基盤があるのかは判然としない状態でございますが、とりあえず調査としましては、ノルトライン・ヴェストファーレン州、これはドイツで一番人口の多い州になるかと思いますが、デュッセルドルフとかケルンとかが入っている辺りです。公的費用負担か否かという点につきますと、医療保険でカバーされる模様でございます。ただし、精神療法に関しては公的医療保険で対応できる精神療法士が不足しているとのことですので、その実態に即し、地方独自でトラウマ救急制度、要は特定の病院との早急受診の提携関係を築いておくということが特色として挙げられるかと思います。
韓国につきましては、日本の犯罪被害給付制度に相当する犯罪被害救助制度を始め、複数の省庁がそれぞれ持っている被害者支援の枠組みが上限や罪種制限などがある模様でございますが、活用されているようでございます。
それぞれ詳細につきましては、資料5を御参照ください。現在まだ資料読込みなどを継続しているところでございまして、検討会1の分も併せて、調査結果については追って、より詳細なものをまとめる予定でございます。
以上でございます。
○ 小西座長ありがとうございました。
この海外調査に関しましては、本検討会構成員の太田構成員がアメリカと韓国に行かれたんですね。太田先生に是非ただいまの報告に加え、コメントなどがございましたら、いただければ思います。
○ 太田構成員詳細なものについては追って報告書が出ますので、それを御参照いただくとして、私はアメリカと韓国を担当したものですから、アメリカも基本的にはニューヨーク州と、連邦政府の御好意で急遽、コロンビア特別区の2つの制度について、いろいろと聞き取りをしてまいりました。
今、簡単な御紹介がありましたように、まず、アメリカに関しては損失補てんの制度を取っているので、カウンセリング費用もその損失補てんの対象になるのですが、幾らまでいいのかというは州ごとに違って、カウンセリング費用として上限が定められている州もあれば、そのカウンセリング細目ごとの上限はないけれども、全体額のキャップがはめられていて、それを全部カウンセリング費用で埋めることも可能です。
いずれにしてもキャップがはめられている州がほとんどでありますが、調査でニューヨークを選んだ1つの理由は、ニューヨークだけは唯一医療費の上限が定められていない州であります。従いまして、カウンセリング費用も細目ごとの上限が設定されておりませんので、無制限に支給が可能になっているということもありまして、ニューヨークの調査をしてまいりました。ただし、5,000ドル、今で言うと40万円でしようか。それを超えるような場合には、生計が困難であるということの証明資料が必要になってまいりますので、全く無制限というわけではございません。
ただ、非常に印象的だったのは、向こうでいろいろとお話を伺って、ずっと3年も5年も支給が可能なのかという形でお聞きしましたら、確かに実際には20年以上この給付をしているケースはあるということでした。しかし実際には、ほとんどのケースは心理カウンセリングは長期の例もないし、必要性も余りないということでした。ですから、一定の期間のカウンセリングである程度効果を上げて、それで給付を行っておしまいというケースがほとんどであるとのことです。
そのことに関しては、実際にカウンセリングを担当している実施者の方から、毎年レポートが裁定機関の方に提出をされて、まだ治療が必要だとか、必要でないということが判断されている。これは実際にはどうやっているかは、医学や心理学の領域はよく分からないのですが、実際には余りにも長期間になってくると、本当にそれが犯罪被害の影響なのかどうかという因果関係は難しいんだけれども、そういうことの判断も実際には実施者の方でなされる場合もあるということでした。
心理療法の内容ですけれども、これに関する制限は一切ない。特にニューヨークの場合には一切ない。ただし、実施者の場合にはMDとかCSW/MSWという資格者が行うカウンセリングであれば、補償の対象になるということで、その人たちが個人開業の場合でも病院の場合でも、どんな療法をそこでやるかは全く関係なしに、有資格者のカウンセリングであれば補償の対象になっているということでありました。
ただ、幾らそこで補償するかということは、実際に被害者が負担をした後に償還をする形でやる場合には、ニューヨークの場合は上限はないですが、その範囲で補償するのですが、実際に被害者が払わないで裁定機関と連携を取っているような、もしくは登録されているようなところでカウンセリングを受けた場合には、直接その機関に裁定機関が払うというやり方もやっていて、その場合にはもう既に裁定機関の方で設定した、金額の設定が資料にも最初のページに書いてありますが、MDの場合には150ドル、CSW/MSWの場合は100ドルというような設定がされている。ただ、被害者は先に自分で負担をしたという場合には、この適用はないということでありました。
韓国につきましては、既に紹介もありましたが、日本と極めて似ている部分があるのですが、心理カウンセリングの費用について、特別な給付制度があるというわけではございません。日本と同様の一定の後遺障害が残った場合には、その等級に応じた障害給付金が出るということは同じでありますから、その支給されたものをカウンセリング費用に使おうが、どういうふうに使おうが、それは自由だということであります。
私も随分長い間韓国この制度を見てきていますけれども、新しくできました重傷害救助金が日本の重傷病給付金と極めて似ているために、日本と同じような発想で、一体その支給の要件は何なんだと考えていました。日本の場合は一定の加療期間、入院、1年までの費用、保険の対象という要件があるけれども、韓国の場合はどういう場合に対象になるんだという質問を携えていったのですが、よくよく聞いてみて分かったことは、日本の重傷病給付金は唯一、損失補てん型の給付金制度を取っているわけですが、韓国は全く似たような名前を取っているのにもかかわらず、これは損失補てんの制度ではないということです。
実際に被害者は幾ら自己負担をしたから、幾らカバーするという制度ではありませんので、医療であるとかカウンセリングは幾らまでということは一切関係なし、これは臨床心理士ではなくて医師に限られていますが、医師がこの人に関してはどれくらいの期間の治療が必要だと診断をした、その月数に被害者の所得をかけて支給するという支援金に属するものだと考えた方がよろしいかと思います。
ですから、心理カウンセリングを受けたから幾ら償還するという類いのものではないということは、今回詳しく聞いて、初めてわかったことです。これが日本とは非常に似ているけれども、全く異なる制度と考えた方がいいということであります。
ただ、韓国の場合には、救助金とか給付金の制度についてはそうですが、ほかの法機関から心理カウンセリングの提供や費用負担などが行われておりまして、資料にも書いてございますように、スマイルセンターが民間の被害者支援センターの連合会、日本でいいますと被害者支援ネットワークに相当するところに法務省の方から委託がなされておりまして、ここで心理カウンセリングがなされています。
現在は韓国に1か所しかないんですが、今後これを全国に拡大していく予定でありまして、ここでは無償でカウンセリングを受けられるということと、そこには医師が来ていまして、正式職員としての常勤職員の臨床心理士などもいる。更にそこから紹介されて、外部で治療を受ける場合には、そのセンターが費用負担をするということになっておりますので、こういう給付金以外の部分での心理カウンセリングの提供や費用負担という制度がありますし、それからスマイルセンターでは更に法務省の予算に基づく治療費支援という制度がありまして、原則500万ウォンまでですから、今はウォンが安くなっておりますので、昔ですと50万円、今ですともう少し安いかと思います。
女性家族省による治療費支援の制度も、DVとか性犯罪被害者に対する治療費支援という複数の制度による心理カウンセリングに対する経済的支援の体制が整えられているという状況でございます。
以上でございます。
○ 小西座長ありがとうございました。
それでは、ただいまの御説明あるいはコメントについて、何か御意見、御質問がございましたら、どうぞ。
○ 加藤構成員太田先生、アメリカのニューヨークのものは、被害者補償制度は犯罪被害者に限定されているのですか、いないのですか。韓国の場合はどうなっているかも教えていただければと思います。
○ 太田構成員今、御紹介させていただいたのは、いずれも犯罪被害者に限定されている補償制度であります。ただ、どこまで罪種が限られているかというのは、日本とはかなり制度が違うのですが、いずれにしても犯罪被害者に限られています。
○ 加藤構成員韓国の場合は、女性家族部からの援助もあるんだというお話を最後の方になさったと思いますが、それは例えばDV対策と言ったらおかしいですが、そういう被害者のためにということですか。
○ 太田構成員DVとか児童虐待の被害者、性犯罪に対する被害者に対する治療費支援という制度になっていまして、これは厳密な意味での補償の方も救助金の方もそうですが、厳密な上での事実認定は必要ではありませんので、これが何に該当するとか、そういうことには特に関係なしに、そういった事実があることに対して給付をしているという状況です。
○ 小西座長ありがとうございます。
ほかにはいかがでしょうか。
○ 中島構成員アメリカのカウンセリング費用の補償ですが、アメリカでは民間の保険とかでカウンセリング自体も保険の適用になっているという現状がバックにあるのかなと思います、ニューヨーク州の対象となっている有資格者であるということは、例えば通常であれば、民間の保険の対象になっていて、ある程度目安があるという前提の下に行われているのでしょうか。
○ 太田構成員そのとおりです。基本的にアメリカの場合はどの州もそうでありますけれども、犯罪被害者に対する補償制度は最終手段、ラストリゾートということになっておりまして、ほかの公的な給付、民間の保険等でカバーできるものは、そちらから優先的に支給を受けた上で、それでカバーができない部分を被害者補償で支給をするということになっておりますので、民間の医療保険に入っている比較的めぐまれた人は、そちらの方でまず保険金を受けてもらうということです。これは私の担当外ですけれども、内閣府さんの方が民間の調査会社に委託をして、調査を行っているアメリカの社会保障の対応、適用もありますので、例えば連邦の方の社会保障の障害者プログラムがあるようであります。
これは後ほど、内閣府の方にお聞きいただければと思いますが、こちらの方の適用があるケースに関しては、まずこちらの方の給付を受けてもらう。それで足りない分に関しては被害者補償の方でカバーをする。ですから、いずれにしても、ほかで何か給付を受けられる場合には、まずそちらの方を優先するというのがどの州でも取られている制度の仕組みでございます。
○ 小西座長どうぞ。
○ 松坂構成員この1枚目のニューヨーク州の被害者補償プログラムによってカウンセリングを受けられるというのは、要件として何か必要なものがあるのでしょうか。真ん中辺に、「被害者支援局は」云々とありまして、「精神保健治療記録を作成することを要求する」とありますが、これは要するに患者の方が自己申告制で、それをカウンセリングの方が記録に取って、それによって、この人は犯罪被害者であるという認定を行う仕組みだと考えてよろしいですか。
○ 太田構成員これは資料の方は内閣府さんの方で用意されたものなのですが、これはまさに心理カウンセリングの部分だけを抜き出したもので、これ以外にも必要な要件、充足しなければいけない要件とか、手続的要件がいっぱいございますので、それを満たした上で、更にこういう給付の内容があるということです。
今の精神保健治療記録に関しましては、この人がこういう治療を必要とするという、簡単に言いますと診断書のようなものが必要だということでありますし、アメリカの場合にはこれもほとんどの州と言っていいと思いますが、警察への通報を要件としておりまして、警察記録で事実確認をしています。勿論、起訴されるとか裁判が有罪になるというは必要要件ではないのですが、1週間とか一定の期間以内に通報していませんと、補償の対象になりません。
これはかつて、かなり批判された部分でもあるのですが、今回もなぜ通報要件が必要なのかということを聞いて参りました。通報が多少遅れても被害者支援ということを考えれば、構わないのではないかと思うのですが、これは実は連邦政府が各州に配る補助金の要件となっています。補助金が欲しいのであれば、各州がこういう要件を充足するような制度を作りなさいと枠をはめているために作らざるを得ないのですが、実際には合理的な捜査協力でいいということになっているために、かなり捜査協力という点でも柔軟に解釈をしているということと、その中の通報という点に関しても、例えば性犯罪被害者の場合やDVや児童虐待という場合に通報できないケースが幾らでもあるので、その通報できなかったことに対する正当の理由があれば、例外は認めています。この辺はかなり柔軟に認めているので、これがなかったことによって、支給されないというケースはほとんどないのではないかという印象を受けました。
ただし、中には本当に犯罪被害があったかどうかがわからない、警察にも届けていない。それにもかかわらず、事実関係すらも確認できないようなケースで不支給になっているようなケースはあるということですが、1日遅れたから、1週間遅れたからとか、そういうようなことで不支給になるようなケースはないので、一般的に言われているような捜査協力要件とか通報要件ということが、被害者によってかなり不利になっているということは、ニューヨークやコロンビア特別区では余りないということでございました。
○ 小西座長ありがとうございます。
ただいまの論点も大変重要な点ですが、今後の検討に関わってくる部分だと思いますので、またこれに関しては詳しい報告書も出るということですから、そちらも参照しながらやっていきたいと思います。
次に議題「7.検討課題の整理について」に入りたいと思います。これは本検討会において検討すべき論点と考えられる検討課題を、構成員の皆様から既に御提出いただきました。事務局で整理をし、論点案として作成されているものです。
これについて、まず事務局から一とおり御説明をいただき、構成員の皆様に論点(案)について御検討をいただきたいと思います。その上で本日、おおむね論点(案)について御了承をいただき、次回以降は具体的な論点の検討を行ってまいりたいと考えております。
それでは、事務局から御説明をお願いいたします。
○ 内閣府犯罪被害者等施策推進室参事官御説明に先立ちまして、どのような資料をお配り申し上げたかについて御説明いたします。
今後の検討に当たっての論点整理(案)、事務局案が資料6-1でございます。
これを作成する前提として、構成員の皆様から頂戴いたしました個々の御意見を編綴したものが6-3でございます。
頂戴した御意見をある程度まとまった、この概念はこちら、この御意見はこちらという形で整理を試みましたものが6-2でございます。この御意見の中には、こんな論点がありますというオープンな形での御提示と、更に踏み込んで前提とされている御認識でありますとか、こうあるべきではないかという具体的な提案が含まれている御意見がございまして、そういった具体的な御意見につきましては、青字で表記してみました。どちらとも言い切れないという部分もございまして、あくまで感覚的な分類でございますが、御参考になればと思います。
資料6-4と6-5は既にごらんいただいておりますが、検討会の中でヒアリングなどを行いました内容をまとめたものでございます。
6-6、6―7も今までにごらんいただいている資料でございますが、今まででどのように検討を進めていくか。あるいはどのような検討課題があるかといったものについて、以前整理したものの資料を再配付しているということでございます。
今回の事務局整理(案)というのが、今まで机上に出させていただいていた進め方や検討課題を大きく変えたというものではございません。あくまで論点としては従前のものを踏まえた上で、頂戴した御意見を前提に整理をしてみたものとして御理解ください。
では、6-1について、内容をもう少し御説明いたします。そもそも犯罪被害者等への心理療法(カウンセリング)の公費負担の在り方を検討する前提として、検討会としては現状はどうなっていると認識しているのか。そして、その現状の何が問題だと考えているのかという趣旨での御意見がございました。この点は制度を議論する前の問題設定部分として、認識を共通すべき部分であろうと思われます。
そこで論点として、「1.犯罪被害者等に対する心理療法の現状についての共通理解」、「2.支援が不足していると考えられる範囲」として設定をしてございます。
資料6-2でいきますと、1~2枚目の辺りで、中島構成員や小西座長の方からも、このような共通認識ができているのではないかという御意見をいただいておりますし、加藤構成員あるいは久保構成員の方から、必要に応じてさらなる検討も必要かどうかという御意見をいただいております。
続きまして、こういった問題設定を受けて、どういう公費負担の在り方があり得るかという方向での論点を3以下にまとめてございます。
まず3ですが、これは公費負担の対象となる犯罪被害者等とはだれか。この御意見は多くの方から頂戴いたしました。文字どおり犯罪被害者等の中での対象選定基準という意味もございますし、どの制度を用いるのかという点ともリンクをするのですが、だれがその基準をもって、ここで言うところの犯罪被害者性を認定するのかという点。
更には要件的には対象者としての要件を具備している犯罪被害者がいるとして、この人に心理療法あるいはカウンセリングが必要だと判断するのはだれなのかという異なった問題提起がございましたので、3つの小論点に分けさせていただきました。アの中で、制限を設ける基準と要件具備の判断をするものということ。イとして、その心理療法を受ける対象としての認定者基準を掲げてございます。
4でございますが、公的支援を要する心理療法とはどのようなものかという御意見も多数ございました。これもどの時点でのどういった制度での支援を念頭に置いているのかとも連動しておりましたが、心理療法、カウンセリングの種類や範囲といった問題とだれが実施するのかという論点に分けることができます。そして、だれがというのは、更に質と療法の双方についての問題提起がございました。その趣旨で4をまとめてございます。
5としては、公費負担をするとして、上限を設けるか。設けるとして何を基準とするのかという方向での御意見がございました。3~5につきましては、どのような公費負担の仕組みを想定するのかということの各論でもございます。ある特定の制度を前提とすると、おのずと範囲が決まってくるところもあるのかもしれせんが、制度論から始めると収拾がつかなくなると思いましたので、とりあえず制度論につきましては各論の後に置いて、6といたしました。
この公費負担の仕組みの中では、なぜ公費を支出するのかという理念的な整理についての御意見を頂戴いたしましたので、これを最初に小論点として、アを入れてございます。
更にどのように公費を支出できるのかいう枠組みの問題として、具体的な提案もいただきました。分けまして、<1>犯給法の重傷病給付金の拡大。<2>犯給法の新たな給付金の創設。
<3>社会保障制度を用いた仕組みづくり。これは例えばということで、療養費としての適用対象の拡大について御意見がございましたが、ほかにも犯罪被害者等の心理療法やカウンセリング費用負担を公費で、或いは被害者の負担を軽減していこうという目的にかなう制度があるかどうかを排除する意見ではございませんでした。
<4>まだ具体的に案としての御意見ではございませんでしたが、犯給法とは離れて、新たに公費支給制度を創設していくということも可能性として御指摘がございました。
続きまして、ウ、エ、オ、財源問題と公費支出をするとして現物支給をするか否かという点。更にオとして、公費支出を新たに制度を創出するとすれば、どこが公費を支出するのかということへの御意見がございました。
先に「イ 既存の制度の拡充か、新制度の創設か」として挙げた4つの方向性において、それぞれにおいて問題となる程度、範囲は異なろうかと思いますが、枠組み論としては共通する視点ではあろうかと思いますので、ウ、エ、オと羅列してございます。
最後に制度の改編であれ、新設であれ、検討会としてまとめたものについての有効性については、検証を考えた方がいいであろうという御意見もございましたので、7を付け加えてございます。
最後に、とりあえず本検討会としては公費負担部分について、今年でまとめていく必要があるわけですけれども、それ以外で、あるいは将来についての観点からの御意見がございましたので、「8.本制度の限界と将来への展望」として記載してございます。
方向性としては2つございまして、どういう制度設計をするにせよ、対象とならない範囲が残った場合に、それをどういうふうに検討会としては考えているかという視点。イとしては、カウンセリングについて、どちらかというと広報啓発活動の必要性ということの確認でございました。
以上でございます。
○ 小西座長ありがとうございました。
ここで確認しておきたいのですが、本日やりたいことは論点整理でありまして、これらの論点に皆様がさまざまな御意見をお持ちであることは十分承知しておりますけれども、論点としてどうかというふうにお考えいただければと思います。
それでは、まず総論についてですが、犯罪被害者等に関する心理療法(カウンセリング)の現状について理解するということが1つあるわけですけれども、今、事務局からもこれまで本検討会で行ってきました現状把握について説明がありましたが、これについてはいかがでしょうか。また、今日は心理療法の必要性、有効性について御説明をさせていただきましたけれども、これらについて何か御意見なりがございましたら、いただければと思います。
○ 松坂構成員各論的な質問もしくは意見なのですが、先ほどの議論の中で、小西先生、中島先生からは、PEのいわゆる有効性・必要性のエビデンスがあるのだということは、よく理解できました。先ほど太田先生から指摘が若干あって、私もああ、そうかと思ったのですが、実は我々が目指していたのはPEではなくて、もっと手前のいわゆる支持的な支援的なカウンセリングなんですね。これについて有効である、もしくは必要であるということは多分疑いはないのですが、エビデンス的にはどういう説明をすることになるのでしょうか。それをお知らせください。
○ 小西座長中島先生、何か御存じでしたら補足していただきたいのですが、このことについてエビデンスという形で出てはいないと思います。というのは、そのエビデンスというものを科学的になしていくためには、さっきもお話ししたようなRCTの枠組み作るところからして非常に難しいです。基本的には支持的なカウンセリングで、さまざまな被害者に対して、こういうことをやるというのは、質が悪いからではなくて、そもそもそういうタイプの検証に向かないカウンセリングなのだということを私は思っています。
先ほど御質問をいただいたときに思っていたのですが、メディカルなモデルでやるのか。そうではなくて、幸福の増進とか権利の回復というモデルでやるのかというところで違っているところもあると思います。そういう点でむしろ権利の回復という点で心理的な支援を考えたいが、PEはたまたまその上に乗って、究極に突き詰めたときには科学的なメディカルな効果としても十分検証されますよということが載っているのだと考えるのかなと、私は考えています。
○ 中島構成員小西先生のおっしゃるとおりですが若干補足をすると、では、この心理療法の目的とは何かということです。正確に言うとアウトカムとは何かという話に多分なってくると思います。PEの有効はあくまでもPTSDでしかありません。PEはうつ病を良くするわけではありません。そうすると犯罪被害者にとってPTSDは治ったけれども、うつ病は治っていない。では、PEがすべてかと言ったら、そうはならないわけです。ですから、ここで言うところの心理療法の多くの目的は、被害者にとっての心身を含めた生活機能の改善であるということだと思います。
ただ、これだけ広いアウトカムを要求するとなると、研究として結果を出すのは大変難しいのと、特に私たちが必要とした、例えば急性期における研究というのは、被害者に直後に同意をもらわなければできないという大変な問題を含んでいて、研究そのものがデザインとして設計できないということがあります。いろいろな形の研究がなされていますけれども、例えば最近では災害の直後とかでも、PFA、Psychological first aid(心理的応急手当)というような非侵襲的かつ支持的な対応が恐らく有効であるということを経験値から言っているというような形で、これも一つの実証性と言えば言えなくもないと思います。
今のところは被害者の精神的な回復について、非常に厳密なエビデンスがあるかないか分からないにしても、ある程度、報告等で被害者の苦痛を改善するとか、機能を改善しているというようなものが見られるものについては広く含めるというような姿勢があってもいいのかなと思っております。
○ 松坂構成員そうしますと、私も全く同感なのですが、医療現場における専門の方々のこれまでの経験を中心とした経験則に基づいて、これは国民的に争いのないことなんだという整理をしておくわけですが、多分これに対しては異論はないと思いますが、こういう制度をつくる過程におきましては、私の杞憂であればいいのですが、必ず反対する人からは、エビデンスがないのではないかと。それがなくて、どうして国費が出せるのだという議論が必ずどこかであるかもしれませんので、その辺については理論武装をしていきたいと思っています。
○ 小西座長おっしゃるとおりだと思います。ただ、人の幸福に関わることにどの程度エビデンスがあって政策が行われているかというのは、むしろもっと広く考えるべきで、あることの方が珍しいというような領域もたくさんあると私は考えております。1つの意見でございます。
○ 内閣府大臣官房審議官御参考までに。この間の東日本大震災のときに、すぐに心のケアという観点から議論があり、これに政府としても対処をするということで、厚労省さんを中心に財務省も含めて理解を得て、国費を比較的スムーズに投入することができた。そういうことを考えますと、松坂構成員から御指摘のあった件について、科学的なエビデンスを示さない限りは財政的な支出は無理だよという範ちゅうでは、多分ないのではないかと。事務局としては余り楽観しては勿論いけないのですけれども、その点については、ある程度過去の実績であるとか、実際にカウンセリングを終えた人の声とか、被害者支援団体なり警察なりの中にカウンセリングの専門家も入れて、実際にやってきたということで説明は付くのかなとは考えております。
○ 松坂構成員安心いたしました。
○ 小西座長ありがとうございます。ほかにはいかがでしょうか。
それでは、犯罪被害者等に関する心理療法の現状について、ひとまず現状を把握し、心理療法の必要性、有効性についても共通理解は得られたということでよろしいでしょうか。
今後、具体的な論点を検討していく中で、勿論必要があれば、そのつど整理していくということでやっていけばよろしいのではないかと思います。
次に各論の具体的な検討課題がたくさん出ておりましたけれども、これについて御意見がありましたら、ここで討議をしておきたいと思いますが、いかがでしょうか。
○ 久保構成員最初の支援が不足していると考えられる被害者ということで、被害者の範囲の問題がありますね。これは非常に重要だと思いますが、届け出をしていない人、本当は必要なのに逡巡して相談にあらわれない人。そういう対象から漏れる人をどうやって把握して対応していくのかは非常に難しいと思いますが、先ほど中島先生の資料2-3の中で御提案があって、リスクが高いのに受診しない群について、調査による実態の解明と御指摘になっているわけですけれども、イメージとしてはどういう方法でやれば、実態が把握できるのかはイメージがなかなか湧かないのですが、何かお考えはありますでしょうか。
○ 中島構成員私どもでも分析がまだ全部終わっていない部分があって、報告していない部分があるのですが、基本的には被害者の方たちをできるだけ母集団を反映するような形でサンプリングをして、その方たちに精神健康の調査を行い、医療機関の受診の調査を行い、なおかつ精神健康が悪いにもかかわらず、受診されていない方の場合、どのような理由でなさらないのかということを聞いていくことができると思います。
実は内閣府の方で既に調査をしていて、私は持ってきていないのですが、受診しない理由について、類型別調査の中でも少し聞いています。そういった既存のデータをもうちょっときちんとまとめるということでも、今の段階ではできるのではないかと思っています。それは研究者の仕事なので、私たちが考えなければならないと思います。
○ 久保構成員ありがとうございます。やはりそういう客観的なデータがもしあれば、そういったようなものを示すのも、説得力という意味では大事なのではないかと思っています。
○ 小西座長多分いろいろな調査の端々にはあっても、例えばこういう調査があるかという御質問をされると、そのことを目指した調査の設計はなかなか難しいんですね。今日のように幾つかの調査からにじみ出てくる現実といいますか、そういうものが見えるという形で何か出せれば、そういうものも工夫できると確かにおっしゃるとおりで、説得力が増すのではないかと思います。
ほかにございますでしょうか。
○ 太田構成員論点6のイにある<1>と<3>ですけれども、犯給制度の改正や犯給制度以外の新たな公費制度というのはある程度、検討の範囲内という気はしますが、医療保険とか社会保障の改革は我々が厚生労働省に向けて提言をすると、検討してくださるという可能性もあるということで検討していくのでしょうか。それとも、これはあくまでも現在の制度を基に、どういうふうに制度設計をするかという議論でいくべきなのでしょうか。この<1>と<3>は、我々ではいかんともしがたい面があるような気がしますが、いかがでしょうか。
○ 小西座長お願いします。
○ 内閣府犯罪被害者等施策推進室参事官若干どのように申し上げたらよろしいのかなというのがあれだったのですが、犯給制度をいじるという中に重傷病給付金の拡大というのが一つございまして、これはどうしても医療保険との関係の連動を含んだ御意見であったかと思われます。どういう制度を拡充したり、あるいはこの制度ではどうしてもしようがないから、新設しなくてはいけないのではないかという御意見もあり得るかとは思いますが、とりあえず公費負担の仕組みとして御提案をいただいた、考える論点的なものとして、こんなものが出てきましたという趣旨で掲げさせていただきました。
では、検討会で出したということにつきまして、例えば速やかに政府として反応できるのか。立法措置が必要なものであれば勿論ですし、予算の関係でもそうですし、そこの部分については申し訳ありません。私の方から、こういう対応ができるとか、その予定というのは申し上げる立場ではないのですが、純粋に犯罪被害者に対してカウンセリングも含めた心理療法といったものについての公費負担の手当が何らか必要ではないかということで、この検討会が立ち上がってきて、使える制度としてはこんなものがあるのではないかという御意見をまとめさせていただいたという趣旨でございます。
○ 小西座長どうぞ。
○ 太田構成員思考の整理というのだったら分かるのですが、論点として<1>と<3>を含めていいかどうかというのは、これから検討していかなければいけないのではないか。<1>を議論するとなると、中央医療審議会でやるような、この中で医療保険で心理療法を認めなさいなどという議論をここで延々とやるのかというと、多分そうではないと思うので、論点として整理するとすれば、<1>と<3>は射程範囲を超えざるを得ない。
勿論、重傷病給付金ということは医療保険で関わってきますけれども、これも現在の医療保険は変わらないという下で議論せざるを得ないので、重傷病給付金というのは難しいのかなという気もしますが、<1>と<3>をダイレクトにここで議論していくというのは、医療保険をどうするか、社会保障制度をどうするかという壮大な議論をここでやらなければいけない。この検討会で求められているのは、そういう方向性ではないのではないかという気がしたものですから、お聞きしました。
○ 小西座長私の理解としては、皆様方が最初に始められたところを思い出していただければ、こういう制度はどうして使えないのかということに疑問をお持ちの構成員の方もたくさんいらしたと思います。この制度がここで今、扱える範囲ではないのではないかという太田構成員の見解というのは、今、共有されているかもしれないのですが、最初の段階では決して私たちの共有ではなくて、ここまでいろいろなことをやってきて、少しそういう方向に向かいつつあるのだと思います。今後の論点に入れるかどうかは確かに考えるべきところだと思いますが、少なくともこれが外側に出たときに、そういうことをなぜ私たちは考慮しないのかということについて、何らかの共通の見解があった方がいいのではないかとは思います。
○ 太田構成員私はこの公費負担の制度という中での制度提言という形ではなくしても、例えば付随的な提言とかいうことで、今後、医療保険についてはこうなっていってほしいとか、社会保障についてはこうなってほしいとか、公費負担以外にも何かカウンセリングが提供できるような機関が必要ではないか。そういう付随的な提言として出していくことは重要かなという気はしますが、最終的に<1>の医療保険を拡大しなさいというのがこの検討会の最終提言になるのかというと、ちょっと違うような気もするので、そういう意味では<1>と<3>がどんぴしゃの論点になるのかというのが確認しておきたかったということでございます。
○ 小西座長ほかの構成員の方も御意見も伺えればと思います。
○ 加藤構成員公費負担をどうとらえるかということも裏にあると思います。恐らく公費負担医療と言った場合には、前に報告させてもらいましたけれども、医療保険というものがベースになって、患者が負担する部分について、どういう形で経費援助をするかという形で公費負担医療という言葉が使われているということもありますので、太田先生がおっしゃっているように、この委員会の直接の論点になるかという点では、私もそれでいいと思います。
しかし、犯罪被害者等に対する公費負担をどうするかといったときに、現在の医療保険制度の持っている問題点とか、あるいは公費負担に当たっての理念的なことは、医療保険制度の在り方とも関係してきますので、大上段に今の医療保険制度がどうこうということではないでしょうけれども、例えば現在の医療保険制度では、犯罪被害者等に対して十分な対応はできないというようなこと。それについては将来的にこうあるべきではないか、くらいのことは十分に言えるような気がしますので、確かに<1>、<3>という形で大きな論点にするのは、いろいろと考えた方がいいと思いますが、全くなくすということも必要ないのではないかという気がします。
○ 小西座長ほかには御意見はいかがでしょうか。
○ 中島構成員私も今の御意見に賛成で、実質的にこれを議論することは難しく、実際に保険にかけるかどうかは私たちがすることではないので、中心的な論点としては挙がらないのですが、被害者の方々の要望というところから入っていきますと、例えばPEが何で医療保険の認知行動療法の適用にならないのかという疑問を持っていらっしゃる方がたくさんいて、そういったことを実際的にどうできるのかということをある程度明示できるのは、この委員会しかないだろうと思います。
結果として、それはここで十分扱える問題ではないとされたとしても、今後こういうことを学会なり何なりが検討していってもらう必要があるという結論を出すというのは、有用ではないかと思います。
○ 小西座長松坂構成員、いかがですか。
○ 松坂構成員実は私の方で当初の論点整理を出させていただいて、その中に傍論として、もし抜本的な制度が立ち上げられないとしても、既存の制度として医療保険が点数でアップして、かつ臨床心理士の国家資格化が実現して、中医協で審議がなされて、3割負担で心理的なカウンセリング及びPE療法などが保険で受診できることになれば、3割負担という負担はありますが、相当被害が救済されるのではないか。そういう観点から意見を述べたわけですので、私も論点としては一応残していただけたら、ありがたいなと思います。
○ 小西座長ありがとうございます。
久保構成員はいかがですか。
○ 久保構成員私も加藤先生、中島先生の御意見に賛成で、正面から確かに是非を論じるのは難しいと思いますが、いわゆる犯罪被害者のカウンセリングに専門家として当たっている立場から、医療保険についてどういう注文があるのか、一定範囲で医療保険で救済できる部分があるのかどうか。そういったものを方向性として要請する、あるいは見極めるという意味で論点にあってもしかるべきではなかろうかと考えます。
○ 小西座長ありがとうございました。
皆様方はそれほど違わない御意見と思いますので、これは事務局の方でどういう形で書き直すかを考え、更にもし御意見があれば、具体的に提出していただき、それで変更したらどうかと思います。
ほかの点で何か御意見はございますでしょうか。
○ 太田構成員今のことに関係しますけれども、もしそういう将来的に課題までを含めて論点ということであれば、松坂構成員から話があった臨床心理士の国家資格化や被害者支援の専門家としての養成。もう一つは先ほど話をしました、心理カウンセリングの提供機関の創設や拡充も含めていただければと思います。
○ 小西座長わかりました。例えばここで具体的に議論することができないけれども、本来はこういうことがあり得るべきだというようなことについて、一つ項目をもとめていただくとか、そういうことも可能かと思います。これからの議論の中で扱っていければと思います。
○ 太田構成員8番などは、将来の展望みたいな形で、更にこの検討会としては、そういうこともやっていってほしいということを展望として書くというイメージかと思っていました。
○ 小西座長ありがとうございます。
ほかにはいかがでしょうか。
○ 太田構成員論点の順番はこれから審議していく順番ではないと思いますので、被害者の範囲をどうするかは、どういう公費負担の制度にするかということと直結していますので、3、4と順番に議論をしていくわけではないということは確認をさせていただきたい。恐らく6辺りが決定的で、例えば犯給法の範囲内でやるといったら、その被害者の範囲はそこに当然引きずられてくるわけですから、経済的なものとしては6番辺りを考えながら、その中で範囲をどうするかという議論になるかと考えています。
○ 小西座長今は議論の順番ということですけれども、太田構成員がおっしゃることはもっともだと思いますが、6から始めてしまうことで、またほかのところが抜け落ちていってしまうのが非常に心配だなという気もするのですが、どうですか。勿論、何を使っていくかによって当然変わってくる部分もあるということは非常に理解しますけれども。
○ 内閣府犯罪被害者等施策推進室参事官先ほど説明させていただいたのですが、確かに心理療法であるとか犯罪被害者とか、だれが実施できるのかというのは、どこの部分の介入について、どういう制度を考えているのかという議論の各論でございますので、確かに行ったり来たりという面はどうしても、この制度について話すときの犯罪被害者はどうなのかという形で、結局戻って来ざるを得ないのかなとは思います。最初からこの制度で行くのだと制度決めをして、そこから話を1つにまとめていってしまうのか。
あるいは例えばこういう被害者を保護していきたいねという前提で、使える制度はどういうものだろう。一部はもしかして将来の提言という形で納めるしかないのかなという形で、思考過程を取っていくのか。どういう順番でやるのかというのは、勿論この検討会の構成員の先生方の御提案に従いたいとは思うのですが、この論点整理案としては、どういう被害者を保護していきたいと思っていたのか。どういう制度が使えそうだったのか。あるいはこれはどうしようもないから、新しい制度しかないんだなという話になって、その制度をいろいろと考えた中で、これは間に合わないので将来の提言になるかなという感じでイメージをしていただいて、この論点整理の案を見ていただければよろしいのかなと思います。
○ 小西座長質問ですけれども、そういう気持ちで見るというのは、具体的にどういう提案ですか。
○ 内閣府犯罪被害者等施策推進室参事官皆さんにいただいた御意見を見ていて、関心がおありのところがそれぞれ異なっておられるというのもあったので、そういう順番で整理をしていった方がまとまりが付きやすいかなと、私として考えたという趣旨でございます。順番としては、この順番でやっていったら案外早いかなというか、その方が楽かなと。ただ、私としても6番を先に持ってきて、制度決めを先にしてしまうのがいいのか、その辺は分かりません。
○ 小西座長松坂構成員からお手が挙がっていましたので、先に御意見をいただいて、次に太田構成員からいただきます。
○ 松坂構成員議論の仕方についての提案です。大きく分けて理念的なところです。ベーシックな、なぜ公費負担をするのだというところは、確かに大事な議論ですね。ここがぶれてしまうと、各論でも、また行ったり来たりになります。ただ、この理念は物すごく大きい問題で、皆さんは御承知のとおり、国家の責任だという考えもありますし、互助の精神であれするのだと。はたまた、それも折衷的な考え方で、これを議論しますと、なかなかまとまりませんので、私はある程度、皆さんの共通の認識を持ったわけですから、各論のその1としては犯罪被害者をどう見るのだと。犯罪被害者とはというところから始めることによって、自動的に各人のなぜ公費負担をするのかという、皆さんはそれぞれ微妙にポリシーが違うのだろうと思います。そこが犯罪被害者をどう見るかというところに表れますから、そこから議論を始めていただけると、私は交通整理的には分かりやすいなという気がいたします。
○ 小西座長ありがとうございます。
太田構成員、どうぞ。
○ 太田構成員余り言う必要もないと思いますが、私は3、4を全く考えないで6を決めてしまえと言っているわけではなくて、まさに密接に連動しているので、犯罪被害者の何ぞやをどうするかということも勿論ありますが、それはある程度の制度設計と連動しているので、まさに先ほど参事官がおっしゃられたとおり、そこを意識しながらやっていって、別に3、4を考えないで6を決めろと言っているわけでは全くございません。
○ 小西座長ありがとうございます。
みんな連動しているので、こういうことを考えずにやるということは無理ですが、例えば今日は最後に心理療法とは何かというのが出てきましたが、あれは多分だれも共通認識がないところで、先に議論をしていくという形になっても余り実りがなかったと思います。そういうことから考えますと、現実の状況を踏まえながら進んでいくということはどうしても必要で、そのことを考えますと、今、松坂構成員が言われましたように、もう少し具体的なところから、でも、かなり理念を考えないといけないところからスタートするというのも一つの案かなとは思います。
ほかに何か御意見がございましたら、どうぞ。
○ 中島構成員今の話のまとめ方という順番ですけれども、例えば可能な範囲ということで話し合っていくのか。それとも可能かどうかは別にして、ある種、アイディアルな理想的な公費負担の在り方という枠組みを理念として定めて、その上で、しかし現実としてこの範囲に規定せざるを得ないという形で落としていくのかという順序があるのではないかと思います。この検討会でこれだけ検討されましたので、まずある程度可能かどうかということを抜きにして、可能であればという言い方になるかもしれませんが、この検討会が目指す被害者支援における公費負担の在り方というところ。これはもしかしたら6のアになるのかもしれませんが、そこをある程度共通の理解とした上で、どんどん各論に絞っていくというやり方もあるのではないかと思いました。
○ 小西座長ほかにはいかがですか。
○ 太田構成員まとめなければいけない期限の問題で、先ほど参事官の方から、今年というお話がありましたけれども、年内までに提言の骨格みたいなものをつくる。そうすると2か月に1回くらいずつだと思いますから、あと4回で結論をある程度まとめるということでいいのかどうか。
また、我々は予算のことを全く無視して議論していいのかどうか。非現実的なことになってしまっても困るのですが、恐らくある程度固まってきたら、事務局の方で試算みたいなものも出せるのかもしれませんけれども、そこら辺は我々はお役人ではないために理想論ばかり言ってしまって、昔は警察庁で2000年の委員で議論をしたときも、財務省がOKしてくれませんよという話で大分絞ったような記憶があるのですが、そこら辺は余り意識しなくてよいということでよろしいでしょうか。
○ 小西座長私がお答えすることかどうかわかりませんけれども、理念を述べるのであれば、この場は要らなかったかもしれないと私は思っています。取りこぼしているからこそ、今のいろいろな問題の中で、どうやって実現させるかということがこの委員会の大きな目標であると思います。そういう点では、予算の問題も実現可能性の問題もかなりシビアに考えないといけないと思っています。
犯罪被害者給付や犯罪被害者支援の理念としてどうあるべきかということは、勿論頭の中には必要ですけれども、そのことを決める分科会ではなかろうかと考えています。そういう点では期限の問題もありますし、かなり中身の詰まったところから議論を始めていかないと間に合わないと思っています。
○ 太田構成員日程もあと4回ですか。
○ 内閣府大臣官房審議官一応これはこの前の2次計画を出したときに2年以内ということですから、年度に何らかの方向ですね。ただ、中間案みたいなものを出して、パブコメが必要になってくるかもしれませんから、そうなってくると秋ごろに、一応こういうふうな中間案を考えていますよということが示せれば、一番余裕のあるスケジュールかなという気はします。
私の立場で言うことかどうかあれですが、これがなぜ2年で、もう一つの第1検討会が3年かというと、これはカウンセリングを中心として精神的ケアについて、ある程度の緊急性があるだろうと。制度全体を見直すものとは別にですね。そういう意味ですから、ここで出していく提言というのは、この論点整理8の「本制度の限界と将来への展望」はある程度理想的というか、こういう方向性は議論の中で出てきたということは書けると思います。
ただ、この検討会で示すのは、各省庁の方も構成員で入っているわけですから、それぞれの省庁がとてもこんなものはできっこないよというものを示すわけにはいけないわけで、そういう意味では実現可能性を頭に置きながら、今の制度よりも一歩でも二歩でも精神的なケアを必要とする被害者に何らかの手立てを差し上げるという形でまとめていっていただきたいと。
ですから、先生方のまさに理想とするところとは、ちょっと低いレベルになるかもしれないけれども、現状よりは一歩でも二歩でも進んだものを示していって、それを踏まえて、第1検討会なり何なりでステップアップができれば、それはそれでいいのかなと私は思っています。
○ 小西座長この委員会の立ち上がりからして、そういうことが目的だったことも確かだと思います。例えば先ほど2つ障害になっている点。例えば医療保険が解決することがなかなか難しい。全部がカバーできれば随分違うのに。それから、臨床心理士が国家資格化していれば、もうちょっと楽だった。それがなかなか難しい。
そういうことは確かに解決していくべき問題ですけれども、それを待っていたために私たちは犯罪被害者等基本法が最初にできたところから、ここまでこの問題を積み残してしまったわけです。その積み残してしまっている中で、今そこだけが落ちているような形になっているところをどうやって上げていくかが、この委員会が特別につくられた意義だと思います。
そういう点では、議論の方向は必ず実現するように、必ず役に立つように、そういうことを目標としてやっていかなくてはいけないのではないか。それは私はずっとそういうふうに思っております。
○ 太田構成員もう一つの方の検討会との関係ですが、こちらの検討会の結果を尊重するという方向で来ていますので、あちらの方の検討会の様子を見ると、まだ具体的な検討に入っていないようですが、秋とか年内にもし我々が犯給制度に絡むような提言をしたとしても、それは向こうの議論に方向性が大きく食い違うということはないわけですか。向こうの方がどんどん進んでしまって、年度内に違う方向になるような、うまく調整できないようなものになるということは、向こうの進度からすると、ないと考えてよろしいですか。
○ 内閣府大臣官房審議官現時点では、そういうことはないだろうと思っております。
○ 小西座長ほかに何か御意見がございましたら、お願いいたします。
それでは、幾つか練り直さなくてはいけないところもありますが、論点案につきましては、そういう訂正もあり、訂正を含めて御了承いただいたものとして、事務局の方に再度提示していただき、次回からは具体的な論点検討を行ってまいりたいと思います。
今回の議論につきまして、もし御意見が更にございましたら、是非提出していただき、それも含めて事務局の方で整理し、とりまとめたものを基にして、次回、次々回辺りで、それも検討したいと考えています。有識者及び各省庁の皆様には、各論点について、こうあるべきというような御意見、あるいはこの場合にはこのような問題、課題があるというような御意見などを是非具体的にいただければと思います。別途、事務局から依頼をしていただきますので、どうぞよろしくお願いいたします。
それでは、最後になりましたが、第6回検討会の開催について、事務局より説明をお願いいたします。
○ 内閣府犯罪被害者等施策推進室参事官第6回の検討会につきましては、机上にも配付いたしましたが、6月6日午後1時半から午後4時半、また3時間コースになります。どうぞよろしくお願いいたします。
○ 小西座長ただいま第6回検討会について御説明がありました。本日の議論を踏まえまして、また御意見を頂戴いたしたいと思っております。
検討会当日の限られた時間の中で有意義な議論を行うため、構成員の皆様方には、是非また事前意見を出していただき、それについてお互いに事前に把握した上で、密度の濃い議論をしていただきたいと考えておりますので、よろしくお願いいたします。
また、提出いただいた事前意見は、事務局から事前に構成員に送付するとともに当日配付いたしますが、可能な限り正式な配付資料として公表したいと考えております。
なお、第6回目以降の準備のため、事務局から論点に関する御意見の提出について、有識者及び省庁の構成員の皆様には御依頼させていただくこともあろうかと思いますので、その際には御協力をいただきますようお願い申し上げます。
これをもちまして、第6回「犯罪被害者等に対する心理療法の費用の公費負担に関する検討会」を終わります。
時間どおり終わることができました。皆様、御協力を本当にありがとうございました。

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