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第3回「犯罪被害者等に対する心理療法の費用の公費負担に関する検討会」
議事録

○小西座長 本日はお忙しいところお集まりいただきまして、ありがとうございます。
 ただいまから、第3回「犯罪被害者等に対する心理療法の費用の公費負担に関する検討会」を開催いたします。
 本日は、第3回目の検討会ということですが、本日の議事について事務局から御説明をお願います。
○事務局(内閣府犯罪被害者等施策推進室参事官) それでは、議事次第をごらんください。
 本日、当面の検討スケジュールにつきまして御説明いたしまして、次に、前回の各省の御説明に対していろいろと御質問いただきましたので、それに関しての御説明が各省からなされるということでございます。
 議事次第の4と5ですが、心理療法の実施状況ですとか、臨床心理士による実務の現状などにつきまして、合計お三方からヒアリングをするということになっております。その後、自由討議、その他ということで閉会ということでございます。
 以上です。
○小西座長 ありがとうございました。
 今、お話いただきましたように、今回、犯罪被害者等に対する心理療法(カウンセリング)の実施状況について、それから、臨床心理士による実務の現状についてのヒアリングということで、3名の方においでいただいております。お忙しいところ来ていただきまして、ありがとうございます。
 これらのヒアリングにつきましては、次回に持ち越すことができませんので、10時25ぐらいになりましたら始めさせていただきたいと思います。ヒアリング以外の件でもっと意見や質問をしなければならないという場合には、時間の状況にもよりますが、次回以降検討させていただければと思いますので、御協力よろしくお願いいたします。
 本日の議事次第については、今、事務局から御説明があったとおりですけれども、それぞれの議事ごとに検討を行っていきたいと思います。まず、当面のスケジュール(案)について、事務局から説明お願いします。
○事務局(内閣府犯罪被害者等施策推進室参事官) 資料1をご覧ください。 検討の推移、ヒアリング対象者との日程調整等により変更があり得るものではありますが、当面のスケジュールはこの資料のとおりとなっております。
 次回、第4回ですけれども、12月7日の開催を予定しておりまして、ヒアリングをお2方から実施するということを予定しております。お1方は、県警の被害者支援室でカウンセラーをなさっておられる臨床心理士の方から、公費負担されている犯罪被害者等に対する心理療法の実情などにつきましてお聞きいたします。
それから、社会保障制度における心理療法と公費負担医療ということで、加藤構成員にお願いすることとしております。
 その後、第2回で積み残してあります心理療法の定義、種類、実施者等の概念整理をいたしまして、心理療法の必要性、有効性に係る現状把握などをいたしたいと考えております。
 第5回、第6回は今のところ論点整理、論点検討、自由討議等ということで考えております。
 以上です。
○小西座長 ありがとうございます。
 ただいま説明のありました当面の検討スケジュールですが、犯罪被害者に対する心理療法の実状につきましては、今回及び次回検討会で、実際に現場で心理療法(カウンセリング)に携わっておられる方々からのヒアリングを行っていきたいと思います。
 今回、今後の検討に関わる御意見をお二 方からいただいておりまして、久保構成員から資料6‐1、「心理療法の公費負担制度について」にありますように、既存の制度について少しでも対象を拡充することは可能であるかなどを検証してみたいという御意見をいただいております。
 松坂構成員から、資料6‐4、カウンセラーの方々にサポートしてもらった経験を持つ犯罪被害の当事者の方々を含めた、生の声をヒアリングしたいという御意見をいただいております。
 松坂構成員、趣旨を簡単にお話いただければと思います。
○松坂構成員 医療の一環としてのサービスを受けるというか、そのサポートを受ける側において、犯罪被害者として現実に苦しんでいる方が実際にカウンセリングを受けたときの経済的負担とか、時間的な負担とか、いろいろとあると思うのです。
 前回も申し上げましたけれども、そういう実状をお伺いして、犯罪被害者の被害回復のためにはどういう制度を作ったらいいのかということを考えたいと思います。そのために、心理療法という医療サービスを提供する先生方の御意見を聞くのは当然必要なのですが、我々は、そのサポートを受ける側の犯罪被害者の方の生の声をも把握する必要がある、そういう趣旨で意見を申し上げました。
○小西座長 ありがとうございます。
 サービスの受け手の実状ということで、この辺りをどう進めていくかにつきましては、検討の進め方の御意見を受け止めまして、次回以降検討させていただきたいと思います。
 当面の検討スケジュールにつきまして、何か御意見がございましたら御発言をお願いいたします。よろしいですか。
今後の検討スケジュールにつきましては、検討状況、ヒアリング対象者との日程調整などにより変更はあり得ますけれども、このようなスケジュールで進めていくということで御了解をいただいたということでよろしいでしょうか。
 次に、議事次第の3、心理療法(カウンセリング)の公費負担に関する各種制度についてですが、これは第2回の検討会において各省庁から御説明をいただいた際、構成員の方々からいろいろな御質問等が出まして、今回、担当の省庁からそれぞれ御回答、御説明、資料の提出をいただくということになっていたものです。本日、説明いただく事項については、資料2‐1にまとめてございます。
 本日、大変立て込んでおりまして、時間の関係がありますので、作成していただいた説明資料については事前配布によりごらんいただいていることを前提に、各省庁からは簡潔な説明をお願いいたします。
 また、これも事前配付しておりますけれども、更に構成員から事前に御質問等をいただいております。今回の事前の質問への回答、説明につきましては、ごく簡単に一言で答えられる場合は今日いただいてもいいと思うんですが、かなり本質的な質問などもございまして、これはおおむね次回以降にまたお願いすることになろうかと思います。
 それでは、御回答いただく方に入ります。まず、厚生労働省から医療保険制度に関する資料のほか、障害者自立支援法、生活保護制度に関する資料の提出を受けております。たくさんあるのですけれども、時間も限られておりますので、第2回検討会において多数の御質問が出ました医療保険制度に関する説明をお願いいたします。
○厚生労働省保険局医療課 厚生労働省の保険局医療課でございます。
 資料2‐2、前回質問がございました医療保険に対する御説明をさせていただきます。
 (1)どういった人が医師の指示の下、診療報酬の点数のつく行為を行うことができるかという御質問に関しましては、精神科の専門療法については、診療報酬の評価では約20程度あるのですけれども、基本的には医師がやることが条件となっているものが多いのですが、その中でこちらに記載させていただいているような精神科継続外来支援・指導料であるとか、入院通院の集団精神療法とか精神科作業療法に関しましては、医師の指示の下、保健士、看護師、作業療法士等、これは点数によって違うのですが、ほかの方が指示の下で行うことができるといった点数もございます。
 この指示というものはどういうことかという御質問に関しましては、これは個別の患者さんの状態にもよりますし、必要な医療も変わってきますので、基本的には医学的判断にはなるんですけれども、少なくとも医師の関与なしで単独でやるということに対しては診療報酬上の評価はつかないということになります。
 (2)臨床心理士が含まれるか、これはほかも含めて御質問が多かった事項かと思いますが、臨床心理士に関しましては、臨床心理技術者等ということで幾つかの条件に入っております。これは先ほどの精神科継続外来支援・指導料という療養生活環境を整備するための支援のところでは、精神保健福祉士が入っておりますけれども、例えば入院集団精神療法とかですと、臨床心理技術者等というものが入っておりまして、この臨床心理技術者等というもの定義は、心理学的な学問を学ばれて、心の悩みを持つ人から心理相談を受ける人をいうということで、ほかに御質問がございましたが、特に資格等は要件としておりません。
 実際どの職種の人がどの点数に入るかというのは、どういった疾患に対してどういった治療をだれが行うかといったエビデンスに基づいて、中央社会保険医療協議会で議論されて決まったものでございます。
 続きまして、(3)の当該医者がイメージした治療をほかのクリニックに推薦した場合なんですけれども、これは基本的には当該医療機関内で指示をして、その指示の下にスタッフが行ったことに対してやっておりますので、別の医療機関になった場合には算定の対象外となります。
 (4)診療報酬の点数のつく通常カウンセリングと言われるようなものはどういうものか、また精神療法はどういうものかという御質問ですが、カウンセリングについては心身医学療法というものがございまして、これは心身症、関係ないかもしれないですけれども、過敏性腸症候群といったものが入るかと思いますが、そういったものに関して心理、社会的要因と身体傷病との関連を明らかにして、心理的影響を与えることで症状の改善または疾病からの回復を図る治療法を評価したというものがございます。
 また、精神療法に当たるものとしましては、入院精神療法や通院在宅精神療法といったもの、下に細かく説明を書いておりますけれども、このような評価がございます。
 (5)現在の認知行動療法とPTSDに係る診療報酬についてということで、認知行動療法の対象としては、うつ病等の気分障害ということになっておりますので、PTSD等でうつ病等の気分障害も併発されたというか、そういった症状も出てきたことに関しては、認知行動療法の対象となり得ます。ただ、これは基本的には医学的判断に基づいて、どういった治療が必要かといったものでどの点数が算定できるかということが決まってまいります。
 混合診療についての御質問もあったかと思いますので、重ねて御説明させていただきます。混合診療については、保険診療と保険外診療の併用で保険で認められている治療法と認められていない治療法を同時にやった場合には、原則全体を自由診療として整理される。
これに対する厚生労働省の考え方としましては、本来は保険診療により一定の自己負担額において必要な医療が提供されるにもかかわらず、患者に対して保険外の負担を求めることが一般化してくることによって、患者の負担が不当に拡大する恐れがあるのではないか。また、安全性、有効性等が確認されていない医療が保険診療と合わせ実施されてしまう可能性があるのではないか。科学的根拠のない特殊な医療の実施を助長する恐れがあるのではないかという考え方で、一定のルールの設定が不可欠ということを考えております。
 ただ、保険外併用療養費というものもございまして、保険診療との併用が認められている療法として、次のページに保険導入のための評価を行うものと、差額ベットのような保険導入を前提としないものとして、ここに記載させていただいているような内容に関しては、自費になりますけれども、保険診療と併せて徴収可能という制度となっております。
 医療課からは以上となります。
○小西座長 ありがとうございました。
 この件につきましては、更にいろいろ御質問をいただいております。私の方からも御質問したいこともございますが、それは次回やっていただくことになると思います。
 次に、警察庁から被害少年カウンセリングの状況、部外の精神科医等への委嘱状況、犯罪被害給付金の支給状況について、説明お願いいたします。
○警察庁犯罪被害者支援室長 警察庁でございます。
 資料2‐3、1枚目が被害少年のメンタルヘルスケアに対する取組みの事例ということでございます。幾つか具体的な事例ということでございましたので、4つ記載をさせていただいております。
 1つ目は、女子小学生被害の強制わいせつ事件ということでございましたけれども、これに対しまして、臨床心理士資格を有する部内の職員によりまして、1年5か月の間に8回のカウンセリングを実施したところでございます。このケースは児童の実母についても不安、緊張度が高いということで一緒に実施しておりまして、部内でございますので、特段費用等についてはいただいておりません。
 2つ目は、女子小学生被害の児童福祉法違反事件ということでございます。こちらにつきまして、専門の部外 の医師の方によるカウンセリングを6回実施したということでございます。
 3つ目は、成人男性らによる女子中学生の児童買春周旋等事件ということで、児童買春被害にあったというものでございます。精神科医における カウンセリング、投薬治療等を行うとともに、警察職員による学習支援等を行ったということでございます。
 4つ目は、女子小学生被害の準強制わいせつ等事件ということでございます。こちらにつきましては、部外の臨床心理士の方にお願いいたしまして、カウンセリングを実施したということでございます。
 2枚目は、部外の精神科医、臨床心理士の方への委嘱の状況ということでございますが、各都道府県警察におきまして、部外の専門家の方といたしまして、精神科医の方が59人、臨床心理士の方、126人に委嘱を行っているということであります。
 3枚目が、精神疾患に係る給付金の支給状況ということでございます。まず、3枚目が重傷病給付金についてということでございますけれども、1つ目のグラフは裁定金額の分布ということで、記載のとおりになっております。青が精神疾患のみということで、赤が精神疾患と身体疾患の両方で評価したというものでございます。全体では、精神疾患のみでお支払いしたケースが11件、両方ということでお支払いしたケースが19件ということになっています。
 2つ目のグラフが裁定数の状況ということで、重傷病給付 金全体との比較で記載しております。損害賠償等の調整でゼロ円となった方も含めておりますが、重症病給付金全体が233件で、赤で書いたグラフの分布になっております。一方、精神疾患については、全体で30件でございますけれども、青で書いている分布ということになっておりまして、どちらについても10万円未満が最も多いという形になっております。
 3のところに、支給の裁定額の平均額と最高額ということで書かせていただいております。平均額といたしましては、精神疾患全体、重症病給付全体それほど大きな差はないだろうと思っております。最高額については、ともに120万円ということでございます。
 4枚目は、同じく障害給付金についての支給状況であります。1つ目のグラフは、裁定金額の分布ということでございまして、こちらについても記載のとおりになっております。赤が精神疾患と身体疾患両方の方、青が精神疾患のみの方ということでございまして、記載のような形になっております。一番多額の方が800万円ぐらいということになっておりますが、ちなみにこの方は20年改正以前の犯罪行為によって被害を受けた方ということで、旧法での算定ということになっております。
 2つ目のグラフは、裁定となった等級での分布ということになっております。前回御説明申し上げたかと思いますけれども、障害給付金は障害の等級に応じてお支払いしておるわけでございますが、精神疾患のみあるいは精神と身体疾患両方、障害給付全体をグラフに落としたものでございます。青が精神疾患のみの場合、赤が精神疾患を含む身体疾患も含めたもの、緑が障害給付全体ということでございます。全体では14級が最も多いところでございまして、精神疾患では9級が最も多いところということになっております。
3の 支給裁定額、こちらにつきましても平均額と最高額を示しているところでございます。平均額については、ほぼ同じぐらいという形になっておりますが、最高額については現在のところ、このような形でございます。理由が分からないところもございますが、あえて申し上げれば、精神疾患については症状が固定されてからということになりますと、若干申請されるのが後ろ目になってしまうということもございまして、障害給付につきましても20年改正以前の犯罪行為による方がかなり含まれているということでございます。
 以上でございます。
○小西座長 ありがとうございました。
 次に、文部科学省からスクールカウンセラーとして臨床心理士を選んだ理由ということで、御説明お願いいたします。
○文部科学省初等中等教育局児童生徒課生徒指導室長 文部科学省初等中等教育局児童生徒課の郷治と申します。
 まず、前回の会議で御説明しましたとおり、スクールカウンセラーの制度は臨床心理士を中心とした制度にはなっておりますけれども、修士課程を修了した方であれば1年、学士課程であれば5年というように、一定の心理臨床業務や相談業務を経験した方もスクールカウンセラーとして採用する基準があり、心理学的な素養がなくても教育相談の経験が長い元教員がスクールカウンセラーになっているケースなどもございますので、臨床心理士以外の方を排除している制度ではないというところを押さえさせていただき たいと思います。
 なぜ、臨床心理士を中心とした制度になっているかということですが、資料2‐4にいじめと不登校の歴年のグラフが載っておりますけれども、ちょうどスクールカウンセラーの制度を導入した平成7年ごろには、いじめを受けた子どもが自殺するという象徴的な事件が相次いでおり、いじめの件数についても、学校においてより正確に計上する方向で定義を変更したことなどから、急増しているところでございます。不登校につきましても平成3年ごろから非常に多くなって、統計を取り始めてから6、7年ごろには急増の過程にありました。当時、スクールカウンセラーのような専門家が学校に入るという制度が全くなく、子どもの教育は教員だけが学校で取り組んでいる状態であったわけですが、このような状況から、スクールカウンセラーという外部の専門家を急速かつ大規模に導入する必要性が高まっていたということでございます。
その結果として、資料の中に配置数の推移を示してございますけれども、初年度の7年度、8年度、9年度ごろには、一番下の計のところをごらんいただきましても、2倍、3倍といった規模で導入校が増えておりまして、このように急速、大量に専門家を迎えないといけないということで、一定の組織力のある心理資格の方々に御協力いただかないといけないということがございました。
また、スクールカウンセラーの場合は学校に相談室を設けて1対1の面談をしているだけではなく、学校内を見回って子どもの様子を見たり、授業に入って子どもの様子を見たり、さらには学校の方針や一定の組織、環境の作用といったものも重視しながら、子どもの悩みに答えていくということが仕事でございますので、そういう意味で、カウンセラーとしては特殊な面があります。
 そういったところについて、資格者を提供する団体側にも資質を落とさないための研修でありますとか、一定の協力をいただかないといけないということから、当時、幾つかの心理資格の連合資格として発足しておりました臨床心理士の団体に御協力いただいて、こういう事業を展開してきたということでございます。
 それから、単価について御質問がございましたが、臨床心理士や精神科医あるいは臨床心理学を教える教授などの方につきましては、事業主体である県と政令指定都市が定めているものでございますけれども、大体全国の平均で、5,060円ぐらいでございます。それ以外の方につきましては、平成22年度は全国平均で3,030円ぐらいでは定めていると承知しております。
 最後に、犯罪の被害者に対してスクールカウンセラーで対応することは可能なのかという御質問でありましたが、これは軽々には申せないことでございますけれども、スクールカウンセラーの制度の中で、各事業主体が学校で事故、事件が起きたときに当該被害を受けた子どもやその周りの子どもの教育相談に応じるために、緊急にベテランの 臨床心理士の方を派遣するといったことは現状でもいたしておるわけでございますが、それは最初の3日とか1週間とか1か月といった期間、学校に入って、学校が比較的平常の状態に回復するのを待ちながら カウンセリングもしているという現状でございまして、この場で検討されているようなことをすぐにお引き受けするような状態ではないと考えております。
 以上でございます。
○小西座長 ありがとうございました。
 少し今までの流れを整理しておきますと、これまで広く公費負担によって行われていると考えられる心理療法やカウンセリングについて、どのような制度かあるいは対象者はどんな人か、やっている人たちの資格はどういう形で考えられているのか、費用負担の仕組みはどうか、そういうことについて幾つかの例を出していただき、御説明いただき、その中でいろいろ疑問になっていることについて今回お答えいただいたわけです。更に、それを犯罪被害者に対して行われている心理療法等の制度、医療保険等を含めて理解していく必要があると考えます。
 御説明の方も時間を限ってしまって、大変やりにくかったと思いますけれども、先ほどお話しましたように、今回出た意見については、次回扱うということにしたいと思いますが、今、御質問いただいている事前質問の趣旨について、是非このことは言っておきたいとかあるいはイエスノー程度で答えられる単純な質問というのがございましたら、今の段階でお話いただければと思いますけれども、何か今、説明しておきたいということがございますでしょうか。よろしいですか。
 それでは、更に御質問等がある場合には、事務局の方にお寄せいただければと思います。
 次に、議題4犯罪被害者等に関する心理療法(カウンセリング)の実施状況に入りたいと思います。
 犯罪被害者等に対する心理療法(カウンセリング)が、実際に現場でどのように行われているのか、対象者、被害者等の特性、症状、心理療法等の内容、実施者、効果、費用等について、実際に現場で心理療法等の実務に携わっていらっしゃる方からヒアリングを行うということが、犯罪被害者等に対する心理療法等の公費負担の検討を行うに当たり必要なことであると考えられます。
 本日は、犯罪被害者等に対する心理療法等の実施状況等について、東京女子医科大学付属女性生涯健康センター所長で精神科医の加茂登志子先生から、主に公費負担されていない心理療法の実施状況について、特定非営利活動法人ウィメンズカウンセリング京都代表の井上摩耶子先生から、フェミニストカウンセリングの活動の実際について、それぞれレクチャーをいただくこととしております。
 まず、加茂先生からお願いいたします。
○加茂代表 それでは、始めさせていただきます。
 資料3、私どもの施設は、女子医大の付属施設でして、医療施設という位置づけになっております。ページをめくっていただくと、本院のすぐそばにございます予備診の形でビルの1階にこのような形で入口がございます。こちらは第1クリニックの方で、もう一つ第2クリニックという心理療法を中心に行っているところがございます。
 医療施設の中で心理カウンセリングをやっていく実情というのは結構厳しいものがありまして、その辺が伝わっていくといいかなと思って用意したのですけれども、まずは自己紹介なのですが、今、小西先生にも御紹介いただいたように、私は精神科医でして、精神医療の中で指定医あるいは精神神経学会の専門医という位置づけで、大人の精神科を中心にしておりますけれども、一部思春期や子どもも拝見しているという状態です。
 女性に関しては、特に平成9年度から東京都の女性相談センター、いわゆる婦人相談所で非常勤嘱託医を拝命しておりまして、以来ドメスティック・バイオレンスの被害女性や性犯罪の被害女性を多数拝見しております。
 現在は、主な学会活動としては日本トラウマティック・ストレス学会の副会長をさせていただいているということと、警察関連では千葉県警の心理のアドバイザーをさせていただいている。異色なところでは今年から、国連のスタッフに関する心理カウンセラーの研修も受けまして、こちらの資格もいただいております。
 ただ、最も日常的にやっている仕事は臨床医でして、週平均130人ほど患者を拝見しております。非常に多いかと思いますが、精神科医の実情はこんなものかと思います。このうち、トラウマ関連疾患の患者は約35%、多いときで40%くらいで、これは精神科医としては異色のパーセンテージ、非常に多いと思います。
 次のスライドが女性生涯健康センターの組織図になっています。どのようなところで診療しているのかということをまず御把握いただきたいと思います。非常に小さな施設で、中のスタッフは事務長を除いては全員女性でやっております。女性に特化した診療施設というところなんですけれども、中は精神科だけではなくて、皮膚科、婦人科、内科、漢方、小児科、異色のところではリハビリメイクですとか、心理、ソーシャルワーク、栄養相談という形でいろんな専門家が集まって、学際的に女性の患者を拝見しているあるいは女性のお連れになっている児童を拝見しているという施設です。
 大体、月間延べ1,500~1,700人の患者が来院しておられて、うち初診は150人程度です。そのうち、メンタルケア科と呼んでおりますが、精神科に通院している患者は全体の60%前後で推移しています。
 それぞれが個別に診療しているかというとそうでもなくて、例えばDVで来られた方は内科的にもいろいろ病気を抱えておられるということもあったりします。高血圧といった疾患もありますので、そういった方は内科にお願いしたりとか、性犯罪被害で来られた方は婦人科で受診していただいて、婦人科的な検査、性感染症などを含めてしていただいているということです。お子さんを連れてきた場合には、小児精神、育児相談の方にも行っていただくという形で、全体が有機的に動くような形になっています。
 先ほど申し上げたように、クリニックは2つあります。1つは第1クリニックで保険診療を中心とするクリニック、先ほど写真でお見せしたのは第1クリニックの方ですけれども、もう一つ第2クリニックが100メートル離れたところにもございまして、そちらで心理相談や自費部門を中心にやっているということです。なるべく、このような形で小さな施設なのですけれども、オールインワン型で多機能に患者に対処して、中で解決していくのですが、ここでうまく解決できなかった問題に関しては、すぐそばにある女子医大の本院や他の女子医大のサテライト施設に御紹介するという形になっています。
 この中でどれくらいトラウマの方々が来られているかというのが、次の図なんですけれども、これは2004年9月にクリニックを開設しておりますので、そこから2008年の12月までの統計をお示ししています。ここまで、いろんな科を含めまして全患者数5,121、現時点では7,000を超えた数にきているのですが、この時点では5,121人でして、このうちメンタルケア科を中心に通っておられる方が2,776人、54%おられました。中では精神科医は常勤が2人と非常勤が4人でやっているのですけれども、常勤医が主にトラウマ関連の患者を見て、非常勤医の方はうつ病とか不安障害とか一般的な精神診療をしております。このうち、トラウマ関連の患者はメンタルケア科の中の13.7%、全体の患者の中の7.4%という数字になっています。
 このトラウマ関連の患者の中で、PTSDの診断がついた方がこのうちの58%、非常に多い数になっています。全患者の中の4.3%なのですが、トラウマの中では約6割という数になっていて、多くは私ともう一人常勤の精神科医で配分して拝見しています。
 次のスライド、これはちょっと古い資料なのですけれども、現在もそれほど配分は変わっていないと思います。当センターを受診した被害者の方の被害内容と平均年齢ということなのですが、私たちが東京都の女性相談センターに行っているということもありまして、家族間の暴力、特にDVの方が最も多く、7割です。しかし、それだけではなくて、オープン後徐々に性犯罪被害や幼少時の虐待の被害の方が増えまして、幼少時虐待が11%。職場内でのセクシャルハラスメント、これはほとんどレイプと同等の被害の方ですけれども、約4%。性犯罪被害が13.5%というパーセンテージになっておりまして、一番若い被害者が性犯罪被害の被害者、一番年齢が高いのが家族間の暴力の被害者という形になっています。
 現在は、若干性犯罪被害の方が増えていると思います。ざっと最近のものを見たんですけれども、20~25%ぐらいのところに来ているかと思います。
 この方たちがどれくらいPTSDの診断がつくかというのが次のスライドです。ごらんになるように非常に高い率でPTSDの診断がつくわけなのですが、家族間暴力で配偶者間だとうつ病の方が多くなるのですけれども、32%。幼少時の虐待で性的虐待の方は100%ついておりますし、レイプに準じる職場のセクシャルハラスメントの方は6割、性犯罪被害は単回被害の方で78%、人数は少ないですが、拉致監禁被害の方で100%という数字になっています。ですので、PTSDとうつ病をどうきちっと治療するかということが2つの大きな柱になっていて、加えてこの中で出ておりませんけれども、解離性障害の方々も中には含まれてきますので、非常に治療は難しいのですが、この方たちをどう治療するかというのは非常に大きなミッションになっています。
 こういった患者たちはどこからくるかというのが、次のスライドです。私たちが勤務しております東京都女性相談センターからDVの患者さんたちはたくさん来られますけれども、そのほか小西先生からお聞き及びだと思いますが、持続エクスポージャー療法などの開業研究もしておりますので、こういった他施設の共同研究をしている施設、中島先生がいらっしゃる国立精神神経医療研究センター、小西先生の武蔵野大学、犯罪被害者支援センターが新宿区で非常に近くにありますので、そちらからもときどき患者さんが紹介されてこられます。日本トラウマティック・ストレス学会の理事関係からも時折患者さんの御紹介があります。これはかなり遠隔から来ておられまして、久留米大学とか兵庫県こころのケアセンターなどからも御紹介があります。
勿論、東京女子医大の本院の精神科からも私はこういったケアをしているということで、時折患者さんを送ってこられます。弁護士からも長くこういうことをしておりますので、ときどき御紹介がございます。勿論、患者さんたちが自分で探してということもあります。
 常勤医2人でやっている施設ですので、なかなか初診が入らなくてそれなりにお待ちいただいた上で診察という流れになっております。
こういった来られた方をどのように診療しているかということなのですが、まずDV被害者の治療をどうしているかです。これは特に犯罪被害の方、トラウマの方たちというのはなるべく早く来ていただきたいという気持ちもありますので、流れを円滑にするためにちょっとしたシステムをつくっています。先ほどの形で初診依頼があった後に、これは大体看護師が電話で受けるのですけれども、その後臨床心理士の自費のインテイク相談を設定しておりまして、これは社会貢献ということで1時間3,000円で設定しております。こちらで情報をざっといただきまして、そこから初診担当医師への紹介ということになっております。
 その後、医師の方に初診の紹介がありまして、通常の診療に入っていただく。ただ、トラウマ関連疾患に関しては、非常に複雑な病態を抱えておられる方が多いので、臨床心理士の関与が必須です。心理査定に臨床心理士に関わってもらい、その後グループ療法のファシリテーターとしても活躍してもらっています。DV被害の方は経済的にも困窮されておられる方が多いものですから、私どもで設定している個人の心理療法は自費なものですから、なかなか入れないという実情がありまして、グループ療法を活用していただいて、こちらで心理療法を中心にやっております。DVの心理教育グループ前期・後期とDVのグリーフワークグループもつくっております。
 そのほか、小さなお子さんを連れて逃げてこられる方が多いものですから、こういった方に対しては育児支援として、そこにPCITとかCAREグループといったものも個別に施行するようにしております。これは後で説明させていただきます。
 個人の心理療法としては、自費の心理療法と持続エクスポージャー療法を提供しております。そのほか、ソーシャルワーカーなども関与しており、非常に手厚くしているのですが、なかなか医療経済の面からいくとこれをすべてカバーしていくとかなりしんどいと言わざるを得ないかなと思います。
 次のページ、性犯罪被害者の治療ということで、同じような枠組みで動いているんですけれども、性犯罪被害の方に関してはなかなかグループ療法の導入が困難だということで、主に個人で対応するようにしております。
 次が、持続エクスポージャー療法の臨床研究の試験なのですが、その前に今日、お配りした追加資料を先にお話ししたいと思います。上のスライドがスタッフと治療の現状、下が女性生涯健康センターにおける被害者に対する心理療法の枠組みということなのですけれども、トラウマケア班のスタッフは今、お話したように常勤医師2名、臨床心理士が常勤3名おります。そのほか、非常勤の心理士として治療が4名、心理査定が3名おります。
 トラウマ関連患者さんの受診、ほとんどが犯罪の関与している方と思いますが、年間平均90人で、クリニック開設以降推定630人ほど受診しておられます。このうち、研究に参加してPEを受療した方というのは 全体の4%弱、かなり少ない数字になっています。
 なぜこうなるかということなのですけれども、私どもの施設の被害者に対する心理療法の枠組みは3つありまして、保険診療、自費診療、臨床研究への参加という形になっています。保険診療に関しては、経済的困窮状態にある被害者が多いために、ほとんどの方が保険診療のみ利用しておられるという現状があります。一応、心理療法の自費の枠組みはあるのですが、使える方はごくわずかです。そして、この枠の中で臨床心理士が関与しているのはDV被害者に対するグループ療法、ただこれは、臨床心理士だけでは保険点数が取れませんので、医師やソーシャルワーカー、看護師などの同席を要しております。
 もう一つは、どうしても個人心理療法が必要でという方には、30分枠の保険診療日に医師が診察する日に来院していただいて、実質無料で30分診療というものを月1回、ほとんどサービスという形で行っております。この診療に関しては長期的な見通しに立った心理療法ということではなくて、そのときどきのストレス軽減のみに焦点づけられたものです。
 一方で、自費診療に関しては、サポーティブサイコセラピー、支持 的心理療法、認知行動療法、持続エクスポージャー療法、この中に入ってきているPCITといった、さまざまなバラエティーに富んだメニューがあります。費用設定としては30分枠と私たちが呼んでいるものですが、実質25分5,250円、50分1時間枠でございますけれども、10,500円、90分に拡大しますと15,750円という数字になっています。50分枠から見通しを持った治療の組立てができると考えています。
 この自費診療が受けられない方たちあるいは参加を希望する方たちに関しては、現時点で持続エクスポージャー療法に関しては臨床研究を行っておりますので、こちらに参加していただいております。これは保険診療枠内で行えるものでして、むしろこの研究費から交通費・参加謝金などの支給があることもございます。
 こんな枠でやっておりまして、持続エクスポージャー療法なども当施設では手厚くできています。
 ここから、PEに関する説明ですが、小西先生、PEに関してはこれまで何か説明はあったんですか。
○小西座長 名前だけという感じだと思います。認知行動療法があることは皆様御存じだと思いますが、実質的には。
○加茂代表 では、少し詳しく説明させていただきます。
 持続エクスポージャー療法、通称PEと言いますが、これは大体1回90分のセッションを合計9回~12回行う非常に濃密な形でのトラウマ焦点化、認知行動療法です。内訳に関しては、このようにきっちり治療の枠組みがなされているものでして、アメリカで創始されて日本にも5年ほど前に導入されて、よい成果を上げております。
 私たちの施設は、このPEのRCTランダマイズ・コントロール・スタディの研究の関連施設となっておりまして、国立精神・神経センター、医療研究センターの金吉晴先生が中心なのですけれども、小西先生なども一緒にやらせていただいて、こちらを2007年から始めております。こちらに参加していただくという形で患者さんがPEを受けておられます。
 2009年11月の段階でエントリー27名で、これはPEを受けた方と通常療法の方とランダム化で割りつけをして、どちらが効果があるかというものを見たものです。その結果が2009年11月ごろからほぼ提示できる形で発表させていただいているんですが、次のスライドに、CAPS_Completerと書いてあるものですが、CAPSというのはPTSDの詳しい操作的な診断ができて点数化できるものなのですけれども、これはPEをやった分とTAUをやった分2つ、赤線は一般診療TAUをしたもので、青線がPEをしたものとなりますが、非常によい効果が出ております。
 PE分が3か月後フォームアップで上がっているのは、中に裁判を抱えている方が何人かおられて、この方たちが裁判の場に戻ると少し症状が悪くなるということなのですけれども、それでもTAU分に比べるとかなりいい改善率が見えています。
 次のスライドも、PE分が非常によかったということを示しています。
 次のスライドが、PEというのはPTSDの治療に非常に効果があると思っておりまして、実際にそういう結果が出ているのですが、これを日常臨床の中に取り入れたいと考えているんですけれども、非常に大きな問題があります。それは診療報酬の問題でして、PEと一般診療と並べて書きました。PEは1回大体90分ほどかかる治療です。90分間に熟練した精神科医がどれくらい最大で患者さんを拝見するかというと、大体10分9人ということで9人拝見します。これが十分かというと不十分なところもあるかと思いますが、それでも患者さんたちを1年、2年とかけながら改善していくことができる。こう計算しますと、90分ごとの診療報酬で見ますと、PEの場合はほとんど処方がありませんので470点、つまり4,700円です。対しまして、一般診療はほとんど処方を伴っております。そうすると、90分間に4,212点、4万2,120円の報酬があると、簡単な計算ですけれども、こうなっております。
 次のスライドは、これを12回やったときにどれほど収支の差異が出るのかということを示しています。PEの場合は90分4,700円掛ける1人12回分行って、診療報酬としては保険診療の枠内で行いますと5万6,400円。それが一般診療内で行いますと4,680円掛ける9人掛ける12回ということで、50万強という数字プラス血液検査なんかも行いますのでアルファということになります。
 こうしますと、かなり診療報酬内でPEを行っていくということは困難と言わざるを得ません。解決方法を自分なりに考えてみたのですが、特別な心理療法として保険点数を設置していただく方法は勿論あるかと思います。例えば高度先進医療のような形で設置していただくわけなのですけれども、その場合は4,200点掛ける12回で現状の一般診療とほぼ同等の収支になります。自費診療を引用していくとなりますと、患者さんたちはかなり経済的な問題がありますので、公費負担は必須であろうかと考えます。
 時間がなくなりましたので、PCITのことも書いてございますが、PEだけではなくて、そのほかにも非常にエビデンスが出ている心理療法というのはほかにも出てきております。こういったものを着実に医療の場に導入することで犯罪被害者の方たちはかなり改善することが推測されるのですけれども、できていない現状があるということをお分かりいただければと思います。
 以上です。
○小西座長 加茂先生、どうもありがとうございました。
 それでは、今日、お話いただいた先生に事前の質問を出していただいたところでは、皆さんにも御質問いただきたいと思うのですけれども、私が聞きたかったことは、自分も同じように保険診療と実際に犯罪被害者の役に立つと思われる心理療法の間で、どうやってそういうことを実行していくかという制度がないために、すごく苦労しているわけなのです。1つ伺いたいのは、PEはとても劇的に効くというのはよくわかっているのですが、被害者の中でPE適用になる人の大体のパーセントが教えていただけたらと思います。
○加茂代表 PE治療になる方は、PTSDがつく方に関してはほぼ全員ではないかと思っています。ただ、いろいろトラウマに関して直面化しなければいけなかったりということもありますので、非常に不安感が強かったり自殺メニューがあったりという方は、少し一般診療でその状態を軽減して薬物療法なども加えまして、安全になってから行うという形になるかと思います。
 直面化は避けたいという方も中にはおられるので、来られた方の恐らく六、七割は適用になるのではないかと思います。ただ、実施の現状は先ほどお示ししたように4%弱という数字です。
○小西座長 ありがとうございます。
 それでは、ほかに加茂先生に御質問がありましたら、どうぞ。
 久保構成員、どうぞ。
○久保構成員 よく分かりました。
 御説明の中で、患者さん すべてをカバーするのは医療経済上からかなりしんどいとおっしゃいましたね。それは、最後に御説明いただいた保険診療との関係をおっしゃったのでしょうか。
○加茂代表 そうです。収支の関係から申し上げさせていただきました。私たちとしては、効果がある治療をやっていきたいのですけれども、それを中心にやりますと、多分センターを続けることは不可能になると思います。
○小西座長 ありがとうございます。
 多分、先ほどお示しいただいた90分の12回というのは、医師だと3日分の診療ぐらいだと思いますけれども、それが5万円だったら絶対やっていけないという感じだと思います。
 ほかにございますでしょうか。
 加茂先生、どうもありがとうございました。
 次に、井上先生にお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします
○井上代表 ウィメンズカウンセリング京都の井上摩耶子です。
 ウィメンズカウンセリング京都というのは、民間のカウンセリングルームで1995年に開設したので、今年16年目です。15人のスタッフがいて、いろんなことをしています。10人がカウンセラーです。あとのスタッフは行政で働いていたり、看護婦だったりして、土曜日や日曜日の行事などに参加しています。
 犯罪被害者等に対するフェミニストカウンセリングの実施状況ということで、対象者(被害者)の特性、症状についてです。フェミニストカウンセリングというのは、簡単に言えば、「女性による女性のためのカウンセリング」という特徴を持っています。そういうわけで、男性から女性への暴力被害者がたくさん来られます。
 「男性から女性への暴力」が大半ですから、加害者と同じ性に属する精神科医とかカウンセラーよりは、女性のカウンセラーの方が話しやすいということで、1995年開設当時は、DVとか性暴力被害ということが社会的に知られていなかったので、いろいろな精神科医とかカウンセリングルームで2次被害、レイプされた上に、あなたにも問題があったんでしょうと言われるという方がたくさん来られましたが、最近、そういうケースは減ってきたと思います。
 しかし、女性被害者にとってはカウンセラーが全員女性であるために、性暴力被害の詳細を話しやすく、そのために信頼関係を早く築くことができるという利点があると思っています。
 具体的な性暴力被害者としては、強姦、強制わいせつ、セクシャルハラスメント、児童期の性虐待被害者の方とドメスティック・バイオレンスの被害者の方です。
 上記の人たちの症状は、性暴力被害者の急性ストレス障害、PTSD、長期反復する被害を受けている児童虐待やDVの被害者は、DSMに載っていませんが、複雑性PTSDの方。ASDやPTSDを発症せずにうつ病とか不安障害、パニック障害、アルコール依存症の方、性暴力の被害者で早期に治療されていない方は、そこから男性嗜癖とかセックス嗜癖と言われるような症状を訴えてこられる方もいらっしゃいます。
 フェミニストカウンセリングの費用は、ウィメンズカウンセリング京都では1995年の開業以来、50分~1時間で5,000円です。加茂先生のところの半分です。2005年より250円の消費税を加算しました。性暴力、DV被害者の人が多いのでカウンセリング料金を上げられないまま16年目になります。毎年討議してやはり上げられないと判断し、女性同士のシスターフッド、女性の連帯ということで、私たちが我慢しようという考えでやっています。
 フェミニストカウンセリングの内容と効果についてです。従来の伝統的カウンセリングとの違いは、私も伝統的カウンセリング業界からフェミニストカウンセリングに移ったんですけれども、特に犯罪被害者、性暴力被害者のカウンセリングをする場合には、被害者の方の内面に問題があるとして、その人の心を探究していくのではなくて、問題の外在化をします。その人の問題ではなくて、外側の問題、加害者の問題であるというところに始めから立っています。
したがって、刑法、セクハラ規定、DV防止法などに準拠し、セクハラも男女雇用機会均法のセクハラ規定、あるいは人事院の人事院規則10‐10に、DVもDV防止法に
準拠しながら、被害者の語る被害状況など聞き、これは被害者だと私が思った場合には、はっきりと、あなたは悪くない、悪いのは加害者であると明言します。これは、伝統的臨床心理学とはすごく違う。いい悪いの問題ではないでしょうとか、加害被害の問題ではないでしょうと言われる人も結構いるんですが、私たちはあなたは悪くないということを明言します。あなたは悪くないという言葉だけが一人歩きしているきらいもありますが、判になるケースも多いので、あなたは悪くないと簡単に言って、敗訴するようなことがないように、そこはきちんと聞いて確信を持って、あなたは悪くないと言っているつもりです。
 被害者化といっていますが、DVの被害者の人もなかなか自分がDV被害者であると思えないんです。2月、3月に内閣府の男女共同参画でパープルダイヤルという24時間の電話相談をしました。2万件のアクセスがあったんですけれども、ウィメンズカウンセリング京都も実施地でした。DV防止法ができて10年ですが、やはり50代、60代の方が、ちょっと話を聞いてくださいと話して、これはDVなんでしょうかと聞かれることが多かったんです。DV防止法が10年前の制定ですから、当時、50代の人は40歳でした。殴られたり暴言を吐かれたりするのは、男性から女性へのしつけだと思っていたけれども、どうやらDVらしいと気づかれたのですね。
 この場合は、自分が夫からのDV被害者だということをはっきり認識するということは恥ずかしい。でも、否認しないで自分はDV被害者であると被害者化しないと、DVから生き延びるサバイバーになるということはできないと思っているので、被害者化を進めるカウンセリングをしています。
 次に、2つの心理教育をします。第1に被害者の被害に関わらせながら、「強姦とは」「強姦被害者の心理や行動」を説明する。小さいときの性暴力の児童虐待の被害者に対しても同様です。今、私たちはDV家庭で育った子どもたちのカウンセリングをしていますが、これは無料です。DV家庭で育つというのはこういうことなのだという話、また、あなただけではないという話をする。心理学的、精神医学的な説明や情報提供です。
 2番目に、犯罪の精神的後遺症である症状、例えばPTSDについての心理教育、PTSDは異常な事態への正常な反応なんです、というところから始めて、PTSDの主要3症状について情報提供をしています。 私たちはフェミニストトラウマカウンセリングをしているのですが、これは今、加茂先生からお話がありましたが、認知行動療法の曝露療法とナラティブ・アプローチ、ナラティブというのは物語ということです。一応これは両方とも伝統的なカウンセリングから来ている療法ですが、それを使ってやっています。
 女性による女性のカウンセリングということで、いわゆるジェンダーの視点に立っているんですけれども、この認知行動療法とナラティブ・アプローチは、ジェンダーの視点に立つカウンセリングとすごく整合性があります。その意味では、エビデンスのない理論や技法でやっているということではありません。
 まず、第1段階としては、基本的な安全感を回復するということです。とくにセクハラ被害者の方、たとえば教授から大学院の学生に対するセクハラ強姦は立場利用の犯罪なので、継続してしまうんです。半年も1年も継続してしまう。まずは加害者から離れてきちんと基本的な安全感を取り戻す。カウンセラーとの間に信頼関係を回復して、さらに、こういう被害を受けているということを、家族とか、サポートしてくれる人に話すことができるように援助する。そうすることによって、まず安全だという感覚を取り戻してもらって、ここからトラウマの想起にとりかかる。
 私たちは加茂先生とか小西先生のような精神科医ではないので、薬を出せないので、京都では必ず精神科医と連携しています。3人ぐらい信頼関係を持っている精神科医がいらっしゃるので、そこに送致して薬物療法と併せてカウンセリングを進めています。
 安全だということを確認してから、一番厳しかったトラウマを思い出してもらって、話してもらいます。ここら辺は、先ほどのPEのような感じで、トラウマのところを思い出してもらう、レイプされて一番つらかったそのときのこと繰り返し話してもらう。
 服喪追悼というのは、私はこれがすごく大事だと思っているんですが、強姦されてしまったということで自分が失ったものがいっぱいあります。愛とは何かとか人への信頼感とか、あるいは指導教授から強姦によってキャリアを全部失った人もいます。そういうことをはんでも悼みきれないトラウマ体験ですが、、ここではどこまでも悼むことに付き合うということによってしか、そこからの回復はないと思っています。
 服喪追悼をしてもらって、外傷ストーリーの再構築する。その被害から逃れずに自分はセクハラ強姦の被害者であるというストーリーをつくってもらいます。当事者の人はすごいといつも思っていますが、中には、セクハラ強姦の被害者ならではの私の人生物語が構築されます。
 最終的には、暴力によって失ってしまった人や世界への信頼感を取り戻して、自分の世界との再統合とか再結合、もう一度社会の中で生きていってもいい、人を信じてもいいと思われるところまでいくということです。
 下には参考文献が出ていますけれども、ナラティブ・エクスポージャー・セラピーというのがあって、これは証言療法とも言われていますが、チリのピノチェト政権のときの集団リンチ、拷問被害者の人をPEと物語をひっつけて語られたものを記録して、それを裁判にすぐ出すということで証言を通して社会を変え、裁判に勝つというやり方。私達には、まだまだそんなことができているわけではないけれども、外傷ストーリーをきちんと構築したところで裁判が始まると、本人尋問などでも自分はこうだったということをきちんと語れるし、相手側の弁護士からの反対尋問にも動じることなく答えることができる。そういう意味では、ナラティブ・エクスポージャー療法みたいな考え方に近いかと思っています。
 そのほかに、被害者のアドヴォケイト活動、代弁・擁護活動として法廷や大学などのセクハラ調査委員会へ意見書を出したり、専門家証言をしています。A大学のB事件で、意見書を書いて、その前にも初めてセクハラという言葉が判決に載ったC市の事件にも関わったんですが、、やはり法廷というのは裁判官から関係者も全部男性であることが多いので、本当に十五、六年前は被害者の人が泣きながら証言していても、今から思えば全部2次被害、そのときあなたは処女だったのかみたいな、言い方が多かったので、私たちがそばについて被害者の心理とか行動を、裁判長を始めとする法廷関係者に説明する必要があると思っています。法廷や弁護士事務所へ同行支援をして、弁護団会議にも出て、そこでも泣いてしまってなかなか言えなくなっている被害者の言葉を代弁したりします。
 年間のカウンセリング実施件数ですが、うちは全部性暴力とかDVだけをやっているわけではありません。いろんな問題に対してカウンセリングをしていますが、全体で、1,200~1,300件ぐらいです。性暴力件数(DV被害者は除く)は全体の約30%~40%です。ややこしい書き方ですが、1,200件の30%だったら360件、40%だったら480件。1,300件の30%だったら390件、40%だったら520件ということです。
 被害者の来所の経緯は、ホームページを見てこられる方が結構多いです。医療機関、精神科、心療内科からの送致、弁護士、警察、大学などからの送致、結構セクハラ相談の相談員として各大学や教会や仏教関係のところに行っていますので、そこから重い症状のある人が紹介されてきたりします。
 平均的な継続治療期間は1年半です。毎週やるのが理想的だと思いますけれども、お金の問題と仕事をされていたりすることが多いので難しく、隔週で36面接。約18万9,000円のカウンセリング料になります。36面接というのは多いと思われているかもしれませんが、トラウマカウンセリングのところでもお話しましたように、まずは症状コントロールというかPTSDから回復して、そこから裁判になると2年ぐらいかかりますし、その間かなりサポートが要ります。仕事に行けなくなっていたのに、もう一回戻るとかあるいはやめてしまってハローワークへ行って仕事に復帰するという問題、また人間関係がすごく障害されています。性暴力被害者の家族関係とか、夫との関係とかいろんな関係が難しくなっている。そういう関係を回復することなどで、結構長いカウンセリングが必要になってくると思っています。
 近親姦被害者の場合などには、他者や社会に対する認知が非常に歪んでいて、外は怖いところだ、どの男性も自分を強姦するという感じになっていらっしゃるので、現実適応への確認作業のために4年も、5年も、その場合は月1回ぐらいになっていますが、長期にわたって継続するカウンセリングになります。逆に10回程度で終結するケースもあります。
 また、カウンセリング料金については、仕事をやめざるを得なくなった性暴力被害者には資力がありません。減免制度をつくっていまして、自己申告制なのですけれども、それによって無料や1回1,050円~3,150円しか払えない場合も多い。夫から逃れたDV被害者も同様です。
○小西座長 井上先生、あと5分ぐらいなんですけれども、要するに犯罪被害者への支援のシステムとしてどう成り立ち得るかということを今日お聞きしたいと思っているので、もしよろしかったら、そういう側面について最後にお話しいただけるとありがたいと思います。
○井上代表 犯罪被害者等の支援ということは、フェミニストカウンセリングの内容と効果というところで言ったことです。あとは資格のこととかそういうことが求められていたので一応書いていますけれども、これぐらいで言えているかと思っています。
○小西座長 ありがとうございます。
 そしたら、私の方から御質問して構成員の方からも御質問があると思うのですが、皆様の混乱を避けるためにお話ししておきたいのですけれども、恐らく加茂先生のところでやられているPEというのは定式化されて、完全に何回という形で決まってやられているフルバージョンのものです。今、井上先生の方でお話しいただいたPEというのは、PEの要素 を取り入れてセッションをやってらっしゃると聞いたのですが、そういう形でよろしいですね。
○井上代表 そうです。ちゃんとしたPEはしていません。
○小西座長 中身としては、少しその点は違っているのだということが分からないと混乱するかと思いましたので、それだけはつけ加えておきます。
 それでは、事前にいただいております質問につきまして、中島構成員からお願いいたします。
○中島構成員 質問は費用に関することなのですが、先ほど金銭的に余裕の ない方には無料とかそういう対応という話もありましたが、費用の問題で本来5,000円というお金が払えなくて継続できないという御相談 はどれぐらいあるのかということが分かれば教えていただきたいのと、もし、こういった公費負担が実施されるともっと被害者の方が相談しやすくなるという可能性はあるのかどうかということをお答えいただければと思います。
○井上代表 これは小西先生の質問と同じでいいですね。
○小西座長 ほぼ同じような形です。
○井上代表 減免申請というシステムがありまして、統計を見たら、2006年と2007年、2008年の減免の金額が出ていました。減免の述べ延べ カウンセリング回数、2006年は148回ありました。平均のカウンセリング料金が1,873円だったのです。差額というか取れなかったお金が49万9,800円でした。2007年は、103回あって平均の料金が1,957円で、マイナスになったのは33万9,150円でした。2008年は111回ありまして、平均のカウンセリング料金が1,680で39万6,270がマイナスになりました。今は、もっと増えていると思います。
 差額の分はうちは一応株式会社を名乗っているのですが、全部会社がかぶっているわけです。カウンセラーにはきちんと1時間3,000円払っています。私自身はもうボランティアでもいいやみたいになっているので、払えない人というのは私が担当している人が多いです。
 今も、DVの人が3人、性暴力の人が3人、生活保護 を受けている人もいるんですけれども、とてもお金は払えません。DVの子どもに対しては無料でやっています。ですから、10人ぐらいは無料でやっています。反貧困ネットワーク京都に入っているので、そこに関連している施設の人から送られてくるのですが、若い人で生活保護を受けていて、よく聞くと性暴力の被害を受けている人がいます。そういう人はとてもお金を払えません。そういう意味では、貧困層にも性暴力、DVの被害者が多いので、中島先生の言われた、もし負担が軽減して利用しやすくなったらすごくメリットがあると思います。
 私たちも、この制度があるということをホームページとかリーフレットまでは宣伝していないんですが、言ったらものすごく来られると思います。でも、そうなるとうちがやっていけないということでできないでいます。
○小西座長 ありがとうございました。
 ほかに、御質問ございますか。
 どうぞ。
○内閣府大臣官房審議官犯罪被害者等施策推進室長 教えてほしいのですが、ウィメンズカウンセリング京都の方に、公的なお金、補助金だとか委託費だとかそういうものは出ているんでしょうか。
○井上代表 それは一切出ていません。
○内閣府大臣官房審議官犯罪被害者等施策推進室長 ありがとうございました。
○小西座長 公的な資金がない中でということですね。
ありがとうございました。
 それでは、議題5、臨床心理士による 実務の現状に移りたいと思います。犯罪被害者等に対する心理療法(カウンセリング)の実施者として臨床心理士の方が御活躍されていることは、ここまでにも皆さんお分かりのことだと思います。実際にどのようにカウンセリング等を行っているのか、主たる分野、報酬、医療との連携の状況、臨床心理士の養成や研修の状況などその実態について。また、臨床心理士による犯罪被害者等に対するカウンセリングの実施状況について、本日は社団法人日本臨床心理士会会長の村瀬嘉代子先生にいらしていただきまして、レクチャーをいただこうと思います。幾つもこういうことについて私たち疑問に思ってきておりますので、是非、教えていただければと思います。
 よろしくお願いいたします。
○村瀬代表 村瀬でございます。よろしくお願いいたします。
 既に資料はごらんいただいていらっしゃいますようで、御質問もいただいておりますので、小西先生、私の話は10分ぐらいでございましょうか
○小西座長 時間ですか。30分弱ぐらい大丈夫です。
 今日はとにかく先生方にお話を伺って質問をするということがメインですので、25分でできれば大丈夫です。
○村瀬代表 初めに、臨床心理士というのは資料をごらんいただきましてお分かりのように、非常に広い領域で仕事をしております。基本的にどういうスタンスで臨床業務を行っているかと申しますと、生物、心理、社会モデル、つまり心の問題というのは決して狭い意味でのインナーサイキック、精神内界のことだけというよりも、むしろ元はその人が生物学的な器質的な特質をどう持っているか、ここのところは医学との連携が非常に大事なところですが、さらにその人がどのような親子、家族あるいは地域社会、時代という社会的文脈の中に置かれているかを総合的に考えます、その上で、その人の心理的な問題が起きてくるという多次元でとらえて、統合的に見ていこうというスタンスを持っています。
 ただ、当然比較的シンプルな事柄に対しましては、あえて広げて対応するということではございませんけれど、多くの場合、チームワークを大事にする、問題の局面が時間の経過に連れて様相が変わってまいりますので、医療だけではなく、法的な問題ですとか行政の方と連絡をとるとか、そういう複雑な事案というものが最近増えておりますので、コラボレーションや連携を大事にするということを基本にしております。
 私は今、臨床心理士会という立場でお話させていただきますが、余り性暴力被害のみに特化するというよりも、臨床心理士は幅広く被害者支援を行っております。勿論性暴力被害への支援は重要な課題ではございますが、例えば交通事故や殺人によって大事な家族を失われて、きょうあすの生活状況が混乱状況になっておられるというような方に、先ほど申しましたような多次元からどういう形の支援を効果的に速やかに行うことによって、少しでも状態を早く回復されるように、そういう多面的に事態を捉えようとして関わっております。多面的にかつ全体状況を的確に捉え、同時に個別的に寄り添う、これを共通に認識にして支援活動を進めております。
 もう一つ、臨床心理士が被害者支援ということにどれぐらい関わっているか、例えば全国には七十名近くと聞いておりますが、各県警の中で臨床心理士が被害者支援専門の仕事をしております。統計がございませんけれど、実はさまざまな場、機関、いろんな領域におきまして臨床心理士は被害者支援活動に携わっております。最初の 主訴は別の訴えで来られましても、中には事件の被害者であるということもかなりあり、統計などは第1主訴と第2主訴で集計する場合が多いかと思いますが、実は犯罪の被害者になるということが人の生活の安全を脅かす、直接の原因であるけれども、相談にの当初に、それをおっしゃらないということが実務上、多く経験することです。その辺の数字は明示してお示しできない事情をおくみ取りいただきたく存じます。
 この資料について申し上げますが、臨床心理士という制度が発足いたしまして21年経ちました。養成課程は大学卒業資格の上に第1種指定大学院、第1種というのはよりカリキュラムが充実しておりますので、ここを修了すると翌年の春に試験に合格すると、すぐに臨床心理士になれるわけでございます。第2種指定大学院というのは、その後に実務経験が必要となっております。それから、専門職大学院というのは、既に何らかの学部卒で専門職に就いておられる方が大学院に入られる。この場合は、修士論文が省略されているという実務を重視するカリキュラムになっているかと思います。第1種や第2種は研究者になるという方向性も含まれているということでございます。
 1次試験というのは、筆記試験、2次試験が面接試験です。なお、5年ごとに資格の更新を行っておりまして、資格更新の要件は実務をしっかり行っていたかという職場の上司の証明、その間、研究をしているかという研究業績、いろんな研修にどれだけ出席しているか、さらに、そうした仕事や研究の成果を論文やいろいろな文章に書いているかとさまざまな観点から点数制で評価して、更新できるという制度をとっております。
 先ほど申しました大学院の履修カリキュラムというのは、次のページのような心理臨床の実務をするのに必要な必修科目というのが決められておりまして、そのほかに実習をすることが課せられております。この実習の中では、医療、教育、福祉、司法等々のさまざまな領域をなるべく経験するようにという形で、実習機関と大学の教育システムとが連動するように、それぞれの大学院では工夫されているところでございます。臨床心理士の試験の合格率はほぼ61%で、ハードでございます。
教育・研修規定ですが、先ほど申しましたように5年ごとに更新する中身というものがここに記したものでございます。
 臨床心理士の現状でございますけれども、2011年4月1日現在で日本臨床心理士会の会員は1万7,171名でございます。恐らく、10月現在は少しずつ入会されておりまして、1万8,000人を超えているはずでございます。先ほど申しました臨床心理士試験に合格して資格を持っている人は全体で2万1,000人くらいでございますが、臨床心理士会というのは組織率が非常に高くて、このように多くの人が入会しておりますが、入会しない人もいらっしゃいます。
 臨床心理士は、本来の臨床活動のほかに一般市民向けの無料講演会・相談会など、公益性の高い活動にも常日ごろ、全国各地で力を入れておりますし、殊に医療に勤務する臨床心理職者、先ほどから心理技術者という言葉でお話がございますが、その場合の心理技術者の大半はこの会の会員でございます。それは後で統計が出てまいります。
 臨床心理士の会員の動向調査を3年に1度しておりまして、実は2011年度施行中でございまして、まだ統計結果が出ておりませんので、少し古いものでありますことを御了承いただきたく存じます。
 調査の回収率が70%強ぐらいのところで、どういう仕事をしているか、それを整理したものが次の表でございます。
 年齢は、こんな形に分布しておりまして、性別は圧倒的に女性が多数です。臨床心理士の住所でございますが、このように全国に散らばっておりまして、下部組織ではございませんが、各県に臨床心理士会がございまして、日本臨床心理士会と各県士会と緩やかな連合体という形をとっております。
 少し余談になりますが、このたびの東日本大震災で特別に東北に急遽大勢の臨床心理士を派遣するという事態になりますと、すぐ全国の県士会に連絡して、人を招聘するとか、詳細は省きますけれども、いろんな問題につきまして、各方面から御依頼をいただきますと、このようにすぐ連絡して、適材適所に配置するということに努めて参りました。
 主たる所属県士会というのが、今、申したようなものでございますが、臨床心理士は、県庁所在地に比較的に集中して住んでいるということがございまして、例えば犯罪被害などの御相談を受けますときに、非常に不便なところで深刻な問題が起きるような場合、その場に赴いて、大変な状況の御遺族の方を支えたり、いろいろ関係調整のお手伝いをさせていただくようなときに、都市部に臨床心理士が偏っているところが少し問題ではございます。
 最終学歴は、表示のとおりでございます。
 現在の就業形態でございますが、これは前もって委員の先生からいただいております御質問とも関連することでございますけれども、非常勤で働いている人が全体の46%という、専門職としてはかなり特異かと存じます。これは後で、まとめて申し上げようと思います。
 年収ですが、その低さにつきましても委員の先生から御質問をいただいております。これは統計をとるときに、今、申しましたように非常勤もすべて込みにいたしましたということもあるようでございます。後にお答えさせていただきますけれども、単価には非常に大きな幅があるというのも実情でございます。
 臨床心理士が現在どのような領域で働いているかと申しますのは、次の主たる勤務領域の通りです。医療・保健領域に一番多く、たしか非常勤も含んで6,000人近く働いております。次が教育領域で、以下のような状況になっております。
 主たる勤務機関、医療・保健領域の中では病院と診療所が90%です。当初申し上げましたように、臨床心理士も昨今ではアウトリーチあるいはコラボレーティブに仕事をすることが増えてまいりまして、この少ないこうした施設等々にも次第に多く勤務するようになっております。
 福祉領域の中では、一番多いのが児童福祉施設機関、これは例えば乳児院、児童養護施設、情緒障害児短期治療施設、児童自立施設、自立援助ホーム等々でございます。以下のように、近年この領域に就職することが次第に増えております。
 教育領域では、この図で、各自治体から各校派遣という、いわゆるスクールカウンセラーとして働くことが重きをなしています。
 次が、産業・労働領域で、企業あるいは事業所の中の健康管理・相談室に42%、最近では独立の健康管理・相談所が少しずつ増えておりますけれども、そういうところにこれだけ働いています。
 司法・法務・警察領域で働いている割合は図のとおりですが、殊に、刑務所内に止まって居たい、そのために敢えて違反行為をするというような近年の特異な状況への対応や、性暴力の累犯者が増えているということで、法務省関係につきまして臨床心理士が特にそうした難しい事案についての心理面接を担当するということなど、少しずつ働く者が増えている現状がございます。
 私設心理相談領域というのは、自分で相談機関を開所している場合です。これにつきましても、不適切な形で医療の対象となるべき人を長く抱え込み過ぎて、遷延化しないように、あるいは行政と相談してもう少し生活全般の改善を考えることが、より心理的な問題の解決に速やかな結末を見るだろうと近年鋭意留意いたしまして、そうした連携ということを大事に考えて仕事をしています。
 大学・研究所では、主に研究・専門教育を行っています。
 こういうさまざまな領域で働いております臨床心理士が、どういう人を面接の対象に関わっているか、これは領域をすべて込みにした統計ですが、この表にあるような状況でございます。
 臨床心理士としての仕事への満足度というのが、このように出ております。解釈はいろいろですけれども、自分自身の力量についてやや不満とか不満という、とてもまじめで勉強しようと思う人が多いのかと思われます。
 3.医療領域における臨床心理士の業務でございますが、詳細は省きますけれども、精神科だけではなくて近年ほかの科にも非常に多く臨床心理士が関わらせていただくように変わってまいりました。
 先ほど申しましたように、非常勤で働いている者が多いわけでございますが、その内訳がこういう次第です。
 今、申しました診療科別臨床心理士の人数でございますけれども、このように精神科以外のところでも増えておりまして、これは3年前の統計でございまして、最近はもっと増えていると思われます。
 心理療法でございますが、心理療法というのは現在、非常に数多く専門分化していて、たしか世界で200~400ぐらい技法があると言われております。しかし、主なものは人間性心理学、行動療法、精神分析、認知行動療法であろうかと思います。非常に専門分化してそれぞれが全く別の技法のように一見したところ見えるものも、実は日常生活の中で人の精神的な治癒と成長に役立つ、あるいは人間関係が円滑に運ぶための振る舞い方、考え方、感じ方というものを似たようなものを取り出して、洗練して、体系化づけたものがそれぞれの心理療法の理論と大まかにはそう考えられるかと思います。
 複雑な問題ほどいろんな局面から考えなくてはならなくて、始めに方法論ありきというアプローチよりも、実態をしっかりアセスメントして、今の時点で何がどのように必要かというアセスメントと方法論がきちんと結びついている。そして、状態の推移につれて方法も随時対象者の必要に応じて考えていくことが要諦だと考えます。
 今、心理療法の効果研究をいろんな研究者がやっています。詳しくはここに挙げました文献をごらんいただきますと、そういう研究結果が紹介されております。勿論、PEですとかこの状態のこのときにこれが必要という、それはございます。しかし、先ほど申しましたように、状態を的確にとらえてこの状態には何が必要かということを随時多彩なメニューの中から選んでいくことが一番質のいいサービスになるわけでございまして、効果の分散を占める変数というものを見ていただきますと、どれかだけが非常によくて、ほかの理論がすごく劣るということではないという研究結果が示されているようでございます。
 現代における心の問題というのは、先ほど複合していると申しましたが、これは被害者支援でございますので、臨床心理士がどういうことをしているかということのお尋ねに絡めまして、言及させていただきました。
 心理カウンセリングの質の確保ということでございますけれども、ここも<1>~<5>に書かれたようなことが非常に大事です。
 現在、犯罪被害者支援相談を実施しておりますのは、警察内の被害者支援相談室並びに大学付属の心理相談センター、そのほかにほとんど全国に犯罪被害者支援センターが設置され、そこでは複雑で困難なケースを臨床心理士が担当し、そのほか、女性センターや病院や警察から依頼され、そこで勤務する臨床心理士が医師とチームワークで担当する場合もあります。先ほど述べましたように、第一の主訴として来談されない場合でも、何らかの被害の相談、支援という場合が少なくなく、いろんな領域で被害者支援を行っているというのが実情です。
 基本の技法はここに挙げましたようなものを用いますが、大事なことはなかなか自分で意見を述べられないという被害者の方に調書作成に立ち合うとか、被害者の裁判への出廷に立ち合う、裁判所や検察庁に付き添う場合もあります。
 広義に考えますと、児童自立支援施設入所者や少年院在院者のほぼ6割が何らかの犯罪被害を受けていると言われ、私は近年こういう領域の実践や研究をしておりますが、これは実感でございます。ですから、狭い意味でのはっきり犯罪被害ということを主に訴えてこられるほかに、この点にも注目することがとても必要ではないかと日ごろ感じております。
 コラボレーティブにチームワークを大事にしていくということは重ねて申し上げるまでもないことでございますけれども、抱え込まないでいかにいろんな資料とか使える社会資源に精通しているか、また、社会機関に精通していて、タイムリーに適切な連携をとっていくことが大事ですし、殊にある時期までは臨床心理士は部屋の中に閉じこもって何しているか分からないというお言葉をかなりいただきましたが、近年はアウトリーチも積極的に行うようになっております。
 臨床心理士の報酬でございますけれども、女性の非常勤が多くて、家族の介護ですとか子育てをするので常勤の仕事を望まない。一方、先生方の御質問にもございました資格の問題も絡みまして、常勤職の道が狭いということもあることが現在の課題になっております。
 臨床心理士の被害者相談の費用ということですが、これはこういうことを専門にやっている人たちの意見を聞いて見ますと、大体こういうことにかなり習熟度が求められるということで、こういう額が提示されました。
 大体、以上でございます。
○小西座長 どうもありがとうございました。
 それでは、事前提出をいただいた質問にお答えいただいた部分もあると思いますけれども、中島構成員、御質問がありましたらどうぞ。
○中島構成員 報酬の件は今、お答えいただきましたので、結構です。 これはそうするべきという意味ではなく、現在議論されているという前提に基づいてお伺いするわけですけれども、臨床心理士の国家資格化について臨床心理士会の方ではどういった議論とか実現の方向へ行っているかお教えいただけたらと思います。
○村瀬代表 実は、ごく最近の臨床心理士会の会報に、最新の情報をまとめたものがございまして、それをコピーしてまいりました。ですから、貴重な時間でございますので、後でお配りして、結論から申しますと、心理学の世界の中で大まかに申しますと、基礎系と臨床系というところの意見の違いがあったのが、最近は諸学会連合で合意を見ましたことと、今回の1資格1法案が進むに当たりましては、むしろ医師の団体の方から早く国家資格化をという御理解のお声をいただいて、そちらの医療心理士国家資格制度推進協議会の方でも、現在進行形の原案について、基本的に賛成をいただいており、臨床心理職国家資格推進連絡協議会、これは心理学の学会の中でも臨床系の学会と日本心理臨床学会、日本臨床心理士会が学会ではございませんけれども、特別に入っております。その推進連、3つの団体が現在の資格の原案について、本年7月の初めにようやく合意を見ましたので、これを具体的に進めるというところまでまいっております。
 正直に申しまして、多少の不協和音はありますが、正当な手続を経て合意にいたりました。
 以上でございます。
○小西座長 中島構成員、よろしいですか。
 私の方で伺いたかったこともございますが、お答えいただいた部分もあります。
 率直に聞きたかったことは、心理カウンセリングの大半が臨床心理士に担われていて、しかも、ここまで調べてきたような非常に広範で働いていらっしゃるにもかかわらず、非常勤であったり、最近私がよく聞くのは医療施設と半分契約のような形で歩合制だけで拠出を受けていらっしゃるような臨床心理士が結構たくさんいらっしゃって、恐らくここにいらっしゃる多くの方は、最初はカウンセリングというのを求めると臨床心理の専門家が出てらして、適切な値段でやっていけるところがあると思ってらっしゃったのではないかと思っているんですけれども、実際には非常に劣悪な環境でそういう形でやることも増えているんではないかと思ったので、先生に実状を伺いたいと思いまして、質問させていただきました。
○村瀬代表 例えば医療の領域で、あれだけ多い人数の人が働いておりますけれども、国家資格でないのは医療の中で心理職だけでございます。あとはみんな国家資格ですから、資格のある方々の業務につきましては、保険点数が計算されて、きちんと相応の収入が出るわけですが、臨床心理士は1銭も収益を上げられない。しかし、実際には先ほど申しましたように医療の中でも非常に広い領域で働くようになっている。
 一方で、必要は認められるけれども、臨床心理士が幾ら働いても1銭の収益にもならない。つまり雇用者側は、必要を感じてほかのところの費用を臨床心理士のペイに充てていらっしゃるというところもありますので、収入は伸びないというのも実状だと思います。
 先に小西先生がおっしゃいました歩合制というのも、これは今年度の動態調査が進行形でございますので、そこのところははっきり申し上げられませんが、1つには臨床心理士が相応に会って面接を受けると意味があるという、ある程度自由診療のような形であるお金を払ってもいい、そういう患者さんも一方では増えてきたということと、もう一つは今、申しましたような資格がないことで微妙な経済上の問題もあるので、半ば独立でクリニックの中でそういう部門があると、医療が必要だというときには速やかに連絡が取れるということで、そういう形態が数としてはどういう推移をたどっているか定かには分からないのですけれども、おっしゃるような傾向は表れてきているかと思います。
○小西座長 ありがとうございます。
 それでは、本当に時間がないところお忙しい方々に来ていただきまして、貴重な御意見をいただきまして、どうもありがとうございました。
 もう時間が過ぎております、申し訳ございません。先ほどお話しましたように、必要なことはまた次回御検討いただく時間が持てるかと思います。第4回の開催について、事務局から今、御説明をいただこうかと思います。
○事務局(内閣府犯罪被害者等施策推進室参事官) 第4回は、12月7日水曜日、午前10時~午後0時でありまして、場所は未定でありますので、決まり次第また御連絡させていただきます。
 議題は、先ほど当面のスケジュールで御説明したとおりとなっております。
 以上です。
○小西座長 ありがとうございます。
 ただいま、第4回検討会の検討予定事項等について説明がありました。本日の議論を踏まえまして、検討課題や現状把握についてさらなる御意見がありましたら、事務局の方にお寄せください。
 今日、お聞きいただいても分かるように、非常に複雑な問題を扱わなくてはなりません。限られた時間の中で有意義な議論を行うために、構成員の皆様方には是非、事前意見を出していただき、それらについて互いに事前に把握した上でこの場で議論していきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
 また、提出いただいた事前意見は、事務局から事前に構成員に送付するとともに同日配付いたしますが、可能な限り正式な配付資料として公表したいと考えております。前回もお願いしておりますけれども、第4回目以降の準備のため事務局から検討課題や現状把握が必要な事項について、有識者や各省庁の構成員の皆様御依頼されていただくこともあろうかと思います。その際には御協力いただきますよう、よろしくお願い申し上げます。
 これをもちまして、「第3回犯罪被害者等に対する心理療法の費用の公費負担に関する検討会」を終わります。皆様、御出席いただきまして、どうもありがとうございました。

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