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第6回「犯罪被害給付制度の拡充及び新たな補償制度の創設に関する検討会」
議事録

○ 事務局(内閣府犯罪被害者等施策推進室参事官)私は4月1日付で内閣府犯罪被害者等施策推進室参事官に着任いたしました池田と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
○ 椎橋座長 どうも本日はお忙しいところお集まりいただきまして、ありがとうございました。ただいまから第6回「犯罪被害給付制度の拡充及び新たな補償制度の創設に関する検討会」を開催したいと思います。
まず、議事に入ります前に、人事異動がございまして、新しく本検討会の構成員となられた杵淵智行内閣府犯罪被害者等施策推進室長から、一言ごあいさつをお願いしたいと思います。
○ 内閣府大臣官房審議官犯罪被害者等施策推進室長去る5月11日付で内閣府大臣官房審議官犯罪被害者等施策推進室長を命ぜられました杵淵智行でございます。
犯罪被害者等施策推進のために努力してまいりたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
○ 椎橋座長ありがとうございました。
本日は第6回の検討会ということでございますけれども、本日の議事について事務局から御説明お願いいたします。
○ 事務局(内閣府犯罪被害者等施策推進室参事官)それでは、お手元の資料の議事次第をご覧ください。本日は諸外国における犯罪被害者等に対する経済的支援に係る制度に関する調査結果、外国調査として英、米、仏、独、韓国のそれぞれに先生方に訪問して審査していただきました結果につき、それぞれ御報告いたします。結構これで目いっぱいになってしまうかなと思うんですけれども、資料との関係もございますし、今後の進め方などの関係もございますので、時間が余れば自由討議ということで幾つかお話をさせていただきたいと思います。
とりあえずは以上でございます。
○ 椎橋座長 ありがとうございました。
今までこの検討会におきましてアメリカ、イギリス、ドイツ、フランス、韓国についてヒアリングを実施しました。そして海外調査について検討を行ってまいりましたけれども、先般は各国制度の専門家であります有識者の方々の御協力をいただきまして、現地調査を実施いたしました。本日は、その現地調査の結果について御報告をいただき、その後、ディスカッションをするということが中心になります。
先日は、タイトなスケジュールで海外調査を実施していただきまして、海外調査に行かれた先生方には大変御苦労様でございました。ありがとうございます。
それでは、これからご報告いただく現地調査報告は、この検討会で非常に重要かつ参考になると思われる事柄でございます。まず進め方ですけれども、調査研究なさってきた5か国について、すべて5か国についての調査報告をしていただいた後に質疑応答としたいと思います。タイトな感じがいたしますが、そのような進め方で始めさせていただきたいと思います。
配付資料について御説明はございますか。
○ 事務局(内閣府犯罪被害者等施策推進室参事官)配付資料につき御説明申し上げます。
資料1~資料5がそれぞれ各国の現地調査報告という形をとっております。事前にメールで資料をお送りしたところなのですが、フランスとドイツにつきましては追加で添付資料を席上配付のものには付けてございますので、それも適宜発表の際にはご覧ください。
また、資料6がモデルケースをベースにいたしました一覧比較表になります。特に社会保障とか福祉関連部分につきまして各国いろいろな制度がございまして、きれいな比較となっているかと言うと、こちらの方でも余り自信がないのですが、できる限り合せてみたものでございます。
この表に関しましては一部まだ御意見をいただいているところでございまして、未定稿の形で出させていただいております。今後例えば被害者補償と社会保障・福祉関連という形で大きく分けているんですけれども、例えば被害者に特化した制度なのか、そうでない一般的な制度なのかというくくり方、要は社会保障・福祉関連という言い方をするかどうかなど、題目などについて検討させていただこうと思っています。
いろいろモデルケース自体の事実関係が不明瞭なところもあって、本当にその金額が満額出るのかといったら当然そんなこともございませんで、想定し得る予想としてはという概算的なものの1つに過ぎませんので、その旨、付言させていただきます。
それから、奥村先生と滝沢先生から追加で補充の報告の書面を頂戴しておりまして、こちらにつきましても席上配付しております。
太田先生からブックレットを1冊提供していただきました。韓国の制度に関連するものです。そちらについても席上配付してございます。
以上です。
○ 椎橋座長ありがとうございました。
それでは、各国の現地調査結果を拝聴したいと思います。
まず、アメリカからということで太田先生からお願いいたします。
○ 太田教授 慶應義塾大学の太田でございます。本日はよろしくお願いいたします。
アメリカにつきましては資料1に概要がございます。いずれ内閣府の方から詳細な報告書が出るかと思いますし、時間も限られておりますので、私の方からはアメリカで特徴的なことを、特に日本の制度の検討にとって参考になる部分を中心にお話をさせていただきます。
まず、給付の対象者についてでありますけれども、アメリカはそもそも非常に日本とは異なる損失補填型のいわゆるまさに補償(compensation)の制度をとっておるために、日本との比較は非常に難しいんですが、給付対象に関しまして日本と異なるところと言えば、アメリカの場合には通報要件と捜査協力要件というものがございまして、被害者が7日間とか、州によっては72時間といったように、一定の期間以内に通報を行っていないことに対して正当な理由がない場合とか、捜査機関、法施行機関が要求する合理的な要求に対して答えない場合に関しては給付の対象にならないという要件がございます。これは実は連邦法の州に対する補償金の補助金の支給要件に入っているために、こういう制度を設けたものに対しては、連邦の基金から州に補償制度や被害者支援のための補助金を出すということになっているために、ほとんどの州で共通した要件や基準が採用されているわけでありますけれども、この通報要件、調査協力要件も同様でありまして、多くの州で採用されております。
今回は連邦政府とニューヨーク州、現地にまいりまして向こうの御好意でワシントンDCの制度も詳細に伺ってまいりましたが、ニューヨーク州やワシントンDCにおきましても通報要件や捜査協力要件が要件とされております。
ただ、アメリカで従来から批判されていますような、これがあるために被害者が補償金を得ることができない場合があるといったような問題は、実際にはほとんど生じていないようでありまして、例えば性犯罪とか児童虐待とかDVの場合には例外とされていたり、正当な理由を示すことができれば支給の対象になったりとか、そもそも各州ごとや裁定の際の裁量が裁定機関にあるために、特に支給に関しては被害者に酷な結果を招いていることはほとんど確認できませんでした。これが給付対象に関しては1点目。
もう一つ、親族間被害の場合にどうするかということでありまして、日本の場合でも夫婦なんかの場合には原則として支給しない。復活支給があるわけでございますけれども、アメリカに関しては親族間被害、DVなんかでも当然に補償の対象になっております。
先ほど言った犯罪者に還流する危険性はどう考えているのかということを現地で確認してまいりましたけれども、アメリカの場合には実際には損失補填方式をとっておりまして、既に被害者が支出している場合にはその支出した分について補填するわけですし、医療機関の場合には直接医療機関に支給する場合もありますから、そういう損失補填方式をとっているために、親族間被害の場合でも犯罪者に補償金が還流するという危険性は少ないということでありました。
ただし、一般的な規定といたしましては、加害者が補償から実質的に経済的な利益を得たりとか、不当な利益を得るおそれがある場合には不支給としたり減額支給とする規定が置かれている州もありますし、ニューヨーク州もそうでございましたけれども、そのように犯罪者が補償から不当な利益を得る場合には支給しないという、一般的な原則が置かれているようでございます。
場合によっては、例えば子どもに対して支給する場合に加害者たる父親に還流しないように、裁判所に命令を出してもらったり信託管理することも法的には可能だとされています。そういったケースがあるような話ではございませんが、法的には可能であるということでございました。
給付対象としましては、日本では一切給付の対象外と置かれております過失犯の被害者に対しては、アメリカでは通常、補償の対象になっております。ワシントンDCの場合には罪名なんかが列挙されておりますけれども、日本的に言いますと自動車運転過失致死傷でありますとか、日本にはない類型ではありますが、無謀運転といいましょうか、Reckless drivingの場合でも補償の対象になっておりますし、ニューヨーク州のように罪種を特に限定していないものがありますので、こういった過失犯の被害者に対しても支給の対象となっております。ただ、州によっては飲酒運転の場合に限定して補償の対象にしている州もあるということでございました。
以上が給付の対象でございます。
給付の内容に関してですけれども、アメリカは先ほど申し上げましたように損失補填でありますので、日本と全く違う、日本であえて言いますと重傷病給付金のような自己負担分を補填してもらえるという制度でありますが、非常に魅力的な部分は、逸失賃金とか扶養者が死亡した場合などの扶養喪失分の補償があるために、ここら辺がどうなっているのかということが国内からの調査ではなかなか分からなかっただけに、現地で調べてまいりました。
ただ、ニューヨーク州でもワシントン州でもそうですし、多くの州でも同じようでありますけれども、逸失賃金というものも実際に現実に生じた逸失賃金、要するに過去の賃金の喪失に対してしか補償がないということでございますので、将来の得べかりし利益まで補償することはございませんし、そもそも上限が設定されておりまして、例えばニューヨーク州の場合ですと週600ドルで、1件当たりの上限が3万ドルですので、例えば250万円ぐらいということで、逸失賃金に対する補償というのも額としては、我が国と比べたらそれほど大きな額ではないということでございます。
扶養者の喪失分として被扶養者たる遺族に対する補償に対しても上限が設定されております。ニューヨーク州も同じように先ほどの逸失賃金と同じように3万ドルとか、ワシントンDCはもっと低くて7,500ドルとなっておりますので、実はこういった逸失賃金や扶養喪失分の補償ということも、金額という点だけから見れば余り魅力のある制度になっているとは思われませんでした。
ただ、障害が残った場合の障害者に対する逸失賃金は、被害者補償の方ではなくて連邦政府が行っている社会保障制度の対象になるということでございましたので、別の社会保障制度の方でカバーされている部分はあるようでございました。
もう一つ、これは内閣府の別の検討会で審議がされております心理カウンセリングを受けた場合ですが、これは我が国の場合には給付の対象になってございませんけれども、アメリカの方は精神科の治療、いわゆる医療行為だけではなくて心理カウンセリングの費用に対しても補償の対象になっております。
補償の内容は州によってさまざまですが、ただ、これにも一定の上限額が設定されている州がほとんどでございます。心理カウンセリング費用自体の上限が設定されている州もあれば、心理カウンセリング費用の補償は上限はなくて、全体の上限だけで設定されている場合もあります。ただ、調査にまいりましたニューヨーク州、これがニューヨーク州を選んだ1つの理由でもございますけれども、唯一心理カウンセリングの費用や医療費の上限を一切設けていない。全体の上限も設定されておりませんので、例えば非常に長期間の治療を受けた場合とか、心理カウンセリングを受けた場合に、一体どの程度支給されているのか。これは現地にまいりませんとなかなか分かりませんでしたので調査をしてまいりましたが、制度的には長期の補償は可能である。実際に20年ぐらい治療費の補償を受けている者もいるということでありますが、ただ、実際そういうケースはほとんどない。その必要性も余り感じられていないということでございました。しかも5,000ドルを超える場合には生計の維持が困難という要件も設定されておりますので、そういう枠の中での適用となります。
現地担当者が強調されておりましたのは、例えば心理カウンセリングの場合にはあくまでも犯罪被害と関連性のある精神的被害に対する心理カウンセリングに対して補償するので、余り長期間になってくると一体それが犯罪被害に由来するものなのかどうか分からないという判断も入ってくるようでございます。その判断は裁定機関の方でやるのではなくて、心理カウンセリングを実施する実施者が毎年州の報告書、正式名称は精神保健治療報告書というものでありますけれども、こういったものを出して、そこで判断をされているということです。ですから、医師が犯罪被害の結果として受けた精神的な被害、トラウマとかPTSDといったものに対するカウンセリングだということを認定し、カウンセリングを行っている以上、補償の対象になっているようでございます。
だれが行うかという問題でございますけれども、これは医師とかクリニカル・ソーシャルワーカーとかメディカル・ソーシャルワーカーなどの州の資格になっている者が行えば、すべて補償の対象となって、それは病院でそういったカウンセリングをやるのか、それとも個人で開業しているのかは全く問題にはなっていない。有資格者であればそれによるカウンセリングは補償の対象になっているということであります。ここら辺は日本との資格制度の違いがあろうかと思います。
求償に関しましては、求償という日本の概念にぴったり来るようなものはないのですけれども、裁定機関が被害者に補償金を支給している場合には、被告人に対して損害賠償命令を命じてもらう場合には、被害者だけではなくて名宛人を被害者補償の裁定機関にしてもらうということが行われているようですが、それを積極的にやっている州もあるようですけれども、なかなかうまくいかない州が多いということでございました。
財源の問題です。これはアメリカの1つの大きな調査目的であったわけですが、連邦及び州ではそれぞれ犯罪者が納付する罰金や、特別賦課金等を財源とする犯罪被害者基金などが設けられておりまして、これから補償制度の費用が支出されているわけであります。
まず調査項目として重要だったのが、特に連邦政府の場合にはその大半が脱税といったような企業犯罪で有罪となった法人が払う罰金が多いために、受給する殺人とか強姦といったような被害者と罪種のずれが大きいのではないかという質問を投げかけたわけでありますけれども、全く問題ない、一切問題ないとされておりました。ニューヨーク州でもワシントン州でも確認しましたが、州の方はこういった連邦とは違って自然人たる犯罪者が払う罰金、賦課金が中心となっているために、連邦ほどはずれが大きくないとは言え、財源を払う犯罪者と被害者の受益者としての被害者のずれがあるわけですけれども、これについても全く問題視されていないということでございました。これは後ほど申し上げます韓国でも全く同じでございました。
連邦の場合には、ほとんどが罰金によるもの。特別賦課金の方は連邦ではほとんど含まれていないということでございました。
犯罪者が払う罰金とか賦課金などを補償の主たる財源としている、唯一の財源としている州が41州あるようでございますが、これは向こうの協会の集計です。これに対し、一般予算を補償の財源としている州は極めて少なく12州ということでございます。ですから、アメリカではほぼ全般的にこの犯罪者が払う罰金や賦課金を財源とした補償制度や支援制度が運用されているということでございます。
アメリカに関しては以上でございます。
○ 椎橋座長 ありがとうございました。非常に手際よく御報告いただきまして、ありがとうございました。御質問等ございましょうが、後ほどまとめていたしますので、現地調査の結果の報告を続けて行いたいと思います。
次はイギリスで、奥村先生からお願いいたします。
○ 奥村教授 奥村です。よろしくお願いいたします。
お手元の資料2と、今日配付していただきました経済的支援制度(2)という資料、これは前回報告のものに資料2を組み合わせたものであります。それから、2月半ばに現地に行って私も初めて知って、1月に犯罪被害者対策について改革をしていこうという動きがイギリスに出ています。そのうちの一環として被害補償制度もその対象になっておりまして、後ほど今日お配りいただいた後ろの方に改正の動きがございますので、その動きのことについて申し上げたいと思います。
資料2に沿いながら見ていきたいと思いますけれども、訪問した先は法務省と犯罪被害者補償審査会とVictim Supportという被害者支援団体の本部ですが、法務省と犯罪被害者補償審査会でほぼ今回の調査目的の内容面は満たされたように思います。Victim Supportについては被害者補償制度についてどのような評価をしているか、どういうスタンスをとっているかの調査であります。
法務省は、先述のように、最近の改正の動きについて諮問書(Consultation Papers)を出したわけですが、この諮問書についてVictim Supportが早速、意見表明を公表しておりますので、それについて少し触れたいと思います。
理念については前にも申し上げていますように、イギリスの場合は市民間で惹起された犯罪について国としては責任はないけれども、社会を代表して気の毒な被害者に対して同情心を持って金銭的な補償の対象にするということで、社会連帯共助の精神から行っています。これは64年に制度化が始まって以来、一貫してそういう態度をとっております。
財源ですが、一般財源であります。今、太田先生の方からアメリカでは罰金とか刑罰賦課金(Victim Surcharge)を財源とするところの方が一般的なようですけれども、イギリスではそういう制度を取り入れることを考えているのかと法務省で聞きましたら、全く考えていない。その理由は、第1に刑罰賦課金については予算が立てにくいということ、第2に、感情的な面からもSurchargeを原資とした補償金を出すことは被害回復につながるとは限らないということにあるようです。それは、むしろ被害者支援対策に使った方がいいというから、その財源としているようであります。
支給対象、これは暴力犯罪に対する落ち度のない被害者ということです。それから、補償制度の場所的適用範囲は、グレート・ブリテンということで、イングランド、ウェールズ、スコットランドが対象になります。それにプラスとして海外テロ犯罪被害補償制度というものがございます。これについては少し後で触れたいと思います。それ以外のものについては支援スキームというのはありません。
不支給とか減額事由について資料2に書いてあります。支払拒否も結構多くて別紙2を見ていただくと分かるわけですが、理由が幾つかあります。1~25等級まで障害の程度に応じて補償金が支払われるわけですが、1,000ポンドに満たないのに出してくるというのが一番多いです。それから、暴力犯罪以外の被害なのに申請をするといったものとか、逮捕とか捜査に協力しなかったことを理由にしたり、申請者に前科があったりする場合にはペナルティで不支給または減額されるということになっているわけですけれども、その辺のことが理由で申請が却下されたのが出ています。
前回の報告のときにも疑問が出たんですが、前科のある父親が殺害された場合に子どもが補償を受けられないのかという問題ですけれども、これについてはイギリスでは申請者または被害者に前科がある場合で、その刑が執行済と見なされない場合には不支給または減額の対象になるということであります。しかし、これについては子どもには罪がないわけでありますので、未成年者の権利保護は重要と考え、改正後の新しいスキームではその保護の対象にしていこうということになっているようであります。
親族関係のある場合ですけれども、これも1979年に改正があって、それ以前には適用できなかったものが、今は親族間の場合でも加害者が訴追されたり同居の可能性がないという判断が下されれば、支給対象になっております。それまでは家庭内暴力というのは事実認定が困難である。非難の程度というのは非常に判断が難しいということとか、詐欺の対象にされるおそれがあったりとか、犯人を利する可能性もあるということで適用対象外としていたんですけれども、家庭内暴力に関する理解が深まりまして、79年以降は認めているということであります。
テロリズムの被害で国外犯と書いてありますけれども、今日お配りしたところの6ページに海外テロ犯罪補償制度も併せてご覧いただきながら見ていただきたいのですが、この4月から始まったばかりで2つの種類があります。任意の見舞金スキームと法定のスキームがありまして、これは前回報告でも申し上げましたように「2010年で犯罪及び安全法」という法律ができて、イギリス国民が海外で犯罪の被害を受けた場合、普通は支給対象にならないわけですが、テロの被害を受けた場合については、社会連帯共助の精神から国内で現在行われている被害者補償制度と同じ趣旨から、テロの被害については国外で受けた場合も補償の対象にしましょうということになったわけです。ただ、まだこのスキーム法律上では制度化できているんですが、まだそれがスキームとしては動いていないということであります。
現在、もし現実に起こった場合に対処する必要があるということで、任意の見舞金スキームが、2012年4月から発足したばかりであります。これについては2002年1月1日以降の海外テロ被害について認めていこうということです。ただ、現行の国内の犯罪被害補償制度に比べますと、被害補償制度の等級表に基づくものだけであります。逸失利益とか特別経費、遺族に対する補償はありません。あくまでもex-gratiaという見舞金的な、恩恵的な制度として見舞金スキームが動き出したということです。まだ始まったばかりなので実態は分かりません。あとはレジュメに出ています法定のスキームですが、これはまだできてはおりません。
遡及効の有無でありますが、遡及適用は行われないということが原則であります。
支給額の算定方法でありますけれども、査定についてはレジュメの2ページ以降に記載されています。スキームの内容は、特に3ページの障害等級法に基づく裁定ということで、先述のように、第1等級から第25等級までの、25のレベルに分かれている。各等級に応じて、1,000ポンドから25万ポンドの範囲で補償金が支払われます。逸失利益等を併せて、総額が50万ポンドです。このように1~25等級の障害の程度に応じた分け方で、障害に対する補償と28週以上就労不能になったような場合の逸失利益に対する補償と、医療費は基本的に無料ですけれども、特別な医療費が要ったとか、介護が必要だとか、そういう特別の経費に対する補償を併せて、補償額が査定されます。ただ、公的な二重補償は認められないというから、併給調整が行われる。社会保障給付との併給調整が行われることになっております。学生についても将来就労不能になるであろう場合には、親の職業など収入等を考慮して算定するという説明がございました。そういうことで学生も対象になるということであります。
生計維持関係にある場合も経済的に独立するまでの期間が補償の対象になり、最高額50万ポンドまで出されるということであります。
資料2の4ページ、支給状況についてはそこに出ているとおりで、大体2億万ポンド以上の補償額を総額出しているということでございます。
求償ですけれども、これも前回報告で申し上げていますが、「2004年ドメスティックバイオレンス、犯罪及び被害者法」によりまして、犯人からの求償制度を1995年犯罪被害補償法の中に挿入するということで、立法化はされているんですけれども、まだ試行されていないということのようでありまして、今度新しいスキームになりましたら、補償審査会が請求できるようにすることになっているようであります。
立替払いの話ですけれども、立替払いの制度はありません。被害者が経済的に回復するにはどうすればいいかということですが、まず1つはイギリスでは損害賠償命令があります。これは日本の損害賠償命令とは違って刑事制裁として科される。その2は、民事損害賠償訴訟です。その3は、個人による任意の保険でありますけれども、そういう方法でしか支払われないということです。このように、立替払い制度はないんですが、ただ、ここにも書いていますようにVictim Supportは、立替払い制度を認めろということをずっと主張していますけれども、政府はそのつもりはないようであります。
次に、私が今日お配りをいたしましたレジュメ7ページの新スキームの改正予定について若干申し上げます。
イギリスは先ほど申し上げましたConsultation Papersを出しまして、年間2億ポンド以上のコストがかかっているということで、財政負担を減らすためにあらゆることをしようとしていまして、第1に、下限の1等級から5等級までの補償を全部廃止し、これにより年間3,500万~4,500万ポンド削減可能だということであります。
第2に、被害補償制度よりも、むしろ犯人に払わせるべきだということで、損害賠償制度へのシフト、損害賠償命令の強化ということが言われております。まだまだ被害者補償に比べて損害賠償命令の率が非常に低いということで、これをもっと強化すべきだということです。
第3に、イギリスは旅行者も現行では補償の対象になっていますけれども、最低6か月間在住する必要があるというふうに改正しようとしています。EUとかEEAの国民は別ですけれども、それ以外の国の者は補償対象外にしようとしています。
第4に、前科がある場合については8ページに出ていますけれども、死亡被害者の前科は原則問わないようにしようという改正案を出しています。
第5に、逸失利益についても改正の方向がありまして、頭打ちで1万2,600ポンドの上限を設定したりして、国による補償の負担を減らそうという動きが出ております。
一方、Victim Surchargeについても改正の動きがありまして、そこに出ていますように成人と少年の場合にわけて、犯罪類型に分けて言い渡し額を変えようとしています。現在一律15ポンドの罰金刑の場合だけになっていますが、これをそこに出ていますように、それ以外の社会奉仕命令とか拘禁刑言い渡しの場合にも増額して認めていこうということになっています。
こうした改正の提案は、先ほど申し上げましたようにイギリスの経済がよくないということで、財政難から何とか切り抜けたいという動きが背景にありますが、重傷害には現行制度より手厚い補償がなされることになるので、補償対象を補償が真に必要な場合に限定し、制度をより充実したものに変えていこうということだと判断いたします。
Victim Surchargeについても、かなりの動きがあるようになります。Criminal Law Reviewというイギリスの刑法の雑誌の最新号では、今後この点が議論になるだろうというコメントを出しておりました。
9ページから10ページにわたりまして各界の反応ということで、Victim SupportとGalopというヘイトクライムの団体ですけれども、これが今回の被害補償制度の改正についてそこに出ているようなコメントをいたしましたが、基本的に減額すること、等級の下限の1~5等級を削減することなどについては、反対ということを主張しております。
こういうことでイギリスでは被害補償制度について世界で最も充実した補償制度の1つだと考えられてきたわけですが、比較的軽度の傷害は補償対象から外し、より支援の必要がある重傷害や児童虐待・性犯罪被害による傷害に対して補償を手厚くすることにより、財政難にも対応しうる開成がこの夏をめどに行われる予定です。
以上でございます。
○ 椎橋座長 ありがとうございました。
それでは、続きましてフランスの現地調査報告をお願いしたいと思います。小木曽先生からお願いします。
○ 小木曽教授 小木曽です。既に前回のヒアリングで大枠については御報告しておりますので、今回の海外調査で新たに分かったことや、強調しなければいけないことを中心にお話したいと思います。私は特にペーパーは用意しておりませんで、こちらの配付されております資料3に従ってお話いたします。
まず、何と言ってもフランスの制度の特徴は財源にあります。理念はこれまでもお話しましたように連帯であると言うわけですけれども、この財源は損害保険にかかる、現在ですと3.3ユーロの賦課金といいますか税金といいますか、これを何と言うかという問題があるわけですが、なぜここから取るのかということをしつこく聞きました。そうすると「国民みんなが損害保険に入るんだ」と答えるんです。「みんなではないでしょう?」と言うと「いや、ほとんどみんなだ」という返事が返ってくる。
例えば普通の税金ですと所得の低い者から取れないけれども、その所得の低い者が例えばバイクを買ったとすると、そのバイクには損害保険がかかるんです。そういう答えであります。したがって、一番広く浅く取ることができる方法がこれなんだという、そういう説明でありました。
厳密に考えますと負担と給付の関係がアンバランスではあるんですけれども、ほぼこれで国民すべてから取ることができる。ただ、これは海外で被害に遭った者等にも支払われますので、結局負担と給付のバランスということについては、ある程度目をつぶっているところはあるのだろうと思います。
しかも、もう一つ強調されますのは、これは国がやっているわけではないということであります。法律をつくっているのは国なんですが、これを実際にやっているのは1ページの資料の訪問先の3つ目のFGTIという機関で、これは、財政金融に関する大臣の所管ではありますけれども、民間の機関であるということでありまして、ですから国庫を通っていない財源なのだという説明を受けました。ですので、これのことを俗にパラフィスカルと呼んでいるんだという説明でありました。国庫に入るわけではない。しかし、みんなから法律上取っている。だからパラフィスカルだという説明でありました。
私は昔書いたもので、間に介在する保険会社が一定の手数料をもらうんだという資料があったものですから、そういう趣旨のことをどこかに書いたことがあるのですが、少なくとも現在はそうではないそうでありまして、保険契約×3.3で自動的にこれだけ支払えという請求をFGTIから各保険会社にするということで、特に保険会社がこれについて手数料を得ることはないという説明でありました。
2ページ、支給対象は前回のヒアリングでお話したとおりでありますが、親族関係がある場合も支払われます。前科の有無は関係ございません。警察への届出は、今でたアメリカ、イギリス等との関係で言えば、警察への届出も義務ではありません。ただ、損害の証明をしなければいけませんので、その際に当然警察に届出ていれば、それが損害の証明に役にたつということはありますが、しかし義務ではない。こういうことであります。
遡及効はありません。犯罪の発生日、被害が発生したときに施行されていた法制度に従うということであります。
支給の算定方法ですが、例えば横長のモデルケースが出ております。その中の死亡したケースというのが一番初めに挙がっていて、その場合の被害補償の総額がそこに書いてあるわけですが、簡単に申しましてそれがどのように算出されてくるかということをお話いたしますと、基本的には日本の民事裁判の損害賠償の算定の仕方と一緒なのですけれども、そこに年収550万とありますので、ここから通常の消費支出が大体20%引かれます。そうすると純粋に補償されるべき額が幾らかというのが出てまいります。これを配偶者60%、子ども40%、この例ですと子ども2人おりますので按分になりまして、子ども各20%ずつに補償されるべき基本的な額が決まります。これにいわゆるライプニッツ係数、ホフマン係数どちらかだと思いますが、いわゆる中間利息の控除の係数をかけます。かけて総額が算出されます。そこから例えば配偶者でありますと社会保険、例えば死亡保険が控除されまして、最終的に配偶者に支払われる額が決まる。子どもは20%ですので、これにそれぞれの子どもの年齢に応じた利息控除の係数がかけられて、それで子どもに支払われる額が決まります。
子どもについては経済的独立の平均年齢、25歳で計算しているらしいんですが、それまでの逸失利益ということで計算をするらしいです。ここに葬儀費用とか精神的な苦痛などが足されまして、この精神的な苦痛については資料の後ろの方に資料1として大体の額の表が出ております。これがそれぞれ加わって、それで最終的な補償額が算出されることになる。こういうわけであります。
併給調整はございますが、これは資料の3ページですけれども、基本的に一言で言いますと、損害補填の性質を持っている保険等については調整の対象となるということであります。そうでないものについては調整の対象とならない。ですから、例えば民間の死亡保険や生命保険に入っていた場合、これは定額で死亡の場合には幾らと決まっているものに入っていたわけですから、それは調整されないということであります。ただ、例えば加害者から一定の額の損害賠償を受けたという場合には、その分が控除されることになります。
ですから、考え方としては被害者を経済的には以前の状態に戻すことに主眼があるのであって、豊かにさせるわけではないということも強調されたところであります。でありますので、前回のヒアリングでも申しましたけれども、補償額が決定された後に民事、刑事の裁判所で損害賠償の言い渡しがあった場合、もし損害賠償の言い渡しの方が高かった場合はFGTIに差額の請求ができることになっております。ただ、一般的には裁判があった後にFGTIの補償請求がされることが多いそうですので、後に差額がFGTIに請求されるケースは多くないということでありました。
心理カウンセリングについては、医療費として社会保険でカバーされる部分はそれで出ますし、それでカバーされない部分については医師の診断があれば、その部分にかかった費用が補償基金の方から支払われる場合があるということでありました。
支払状況はそのとおりです。
求償ですが、この制度はそういうわけでFGTIがいわば加害者に代わってまず支払うという制度であるのかと聞きましたらば、そうである。そういう意味では立替払いだと言えば立替払いであるということでした。その後で加害者に求償する制度が設けられておりますし、FGTIには求償を行うためのデータへのアクセス権等が与えられております。どの程度とれているのかということについては、資料5という求償の額と割合という資料を最後に付けてありますけれども、重傷害、軽傷害、財産犯に分けましてどの程度求償できているかという表です。割合のところをずっとご覧いただきますと30%というのもありますが、最近はだんだんそれが下がってきている傾向にあるようですけれども、大体FGTIが持っている資産の5分の1程度は求償であります。ですので、そういう意味でも先にFGTIが払っておいて、取れる場合には加害者から取るという意味でも、立替だと言えば立替であろうと思われます。
2008年から補償制度でカバーされない極めて軽い傷害ですとか、財産犯についても3,000ユーロを限度として立替払いが始まりました。これについては裁判所から損害賠償の命令があることが前提であります。裁判所から損害賠償の支払いの命令を受けた加害者がそれに応じない場合に、先にFGTIから損害賠償額3,000ユーロを限度として支払われる、この制度は今申しました国家補償制度とはまた別の枠組みの立替払いの制度であります。
先ほど申しましたように、フランスの特徴は財源、それを運用する特化された機関が存在することにあるだろうと思います。日本の犯給法などは警察庁が所管しておられるわけですけれども、そうではない機関が運用しているという点が特徴的な点であろうと思います。
以上です。
○ 椎橋座長ありがとうございました。時間を厳守していただいて、ありがとうございます。
続きまして、ドイツについて滝沢先生からお願いいたします。
○ 滝沢准教授専修大学の滝沢でございます。
私はドイツということで、これから申し上げますのは被害者補償制度の監督官庁の連邦労働社会省と、被害者補償法で被害者を申請する場合には各州の窓口、年金給付局で申請することになっておりまして、ここではノルトライン=ヴェストファーレン州にある実際に請求を担当するラインラント地方連合と、被害者法団体の白い輪の3か所を訪問してまいりました。
まず最初に今日お配りをしましたものと資料4は、事実上、番号は全く同じとなっております。
被害者補償制度の理念についてですが、前回のヒアリングで報告させていただいたとおりのことになっていますけれども、御質問をいただいた点も含めて申し上げますと、被害者補償制度については国が犯罪を予防することができなかったことから、被害者に対して給付を行うという基本理念に基づいて行われております。被害者補償制度は刑法や死刑制度をドイツではボン基本法102条で死刑制度は廃止となっておりますので、被害者補償制度と刑法や死刑制度と全く関連がないとのことです。
ドイツでは被害者補償制度というのは当時1976年に成立をしましたが、この時点で第一次と第二次世界大戦の被害者、戦争犠牲者というのが30万人ほどいましたので、先にできていた法律に準拠するような形で犯罪被害者の給付制度を行っていくようになりました。ただ、最近では戦争の犠牲者の数というのが年々減ってきておりますので、被害者補償制度というのは戦争犠牲者の制度と切り離して検討すべきだという議論というものが、連邦政府の内部で行われていますが、白い輪の方がこれについて難色を示しているとのことです。
財源についてですが、税による一般財源で連邦と州が負担をしております。参考までですけれども、ドイツでは消費税が19%になっています。ただし、生活必需品、例えば食料品等に限っては7%となっていて、これから申し上げますようにドイツの被害者補償制度はかなり手厚い補償をしていますので、こういう財源というものが消費税を1つとってみても、日本より比較的税率が高いことがあるかと思われます。
次に支給対象についてですが、原則として申請をすれば例えば被害者が加害者を挑発して犯罪の被害を受けたような場合や、犯罪組織などテログループに関与しているような場合を除きましては、基本的に申請をします。申請をして、その際に犯罪の被害を受けたことと、それによって被害を受けたことが客観的に証明されれば、原則として給付が始まるシステムになっております。したがいまして、減額事由というのは基本的には存在しないそうです。
申請については書面で行いまして、それで被害を受けたことと健康被害、経済的被害を受けたことの因果関係を、自身で証明していくことになっております。
被害者補償法では、被害者は総裁機関等に届け出る義務が法文上は課せられておりますが、実際のところ例えば未成年者や家庭内で行われた性犯罪のような場合には、届け出ていくことがためらわれるケースがありますので、この場合には実際上は届出をしないでも、申請をして要件があることが判断されれば給付が始まるようなこともあるとのことです。
また、刑事手続との関連、例えば被疑者が逮捕されたりとか起訴されたり、あるいは有罪判決を受けたということというのは、被害者補償制度の給付とは全く関連がないことになっております。
先ほども申し上げましたように、被害者補償制度というのは国が犯罪の発生を防止することができなかったので、被害者に給付をすることになっておりますが、例えば国外犯の場合、犯罪被害者給付法3条Aの規定では、国外で起きた犯罪についても1回払いの形で給付がなされることになっていますけれども、これはドイツに行って聞いてきましたところ、外国で起きた犯罪についてはドイツ政府は犯罪の発生しないように予防する義務というものがない。主権が外国に及びませんので、それなのに給付するのはどうなのかという理念との矛盾があるのではないのかという質問をしましたところ、外国における暴力犯罪であったとしても被害を受けたことは確かですし、その人がドイツ本国に帰った後でも一生被害が続くということなどで、それについては不合理であるということで1回払いの支払いということで、国外犯でも給付がなされるようになってきております。
遡及効の有無についてですが、1949年5月23日にドイツ連邦共和国が成立しましたので、それ以降起きた犯罪について、あるいは被害者補償制度が成立する以前の間に起きた犯罪については遡及することになっています。ただ、実際のところ、これも現地に行って聞いてきましたところ、遡及効があるんでしょうけれども、実際例えば犯罪被害者の方が申請をしたとしても、過去に行われた犯罪についての証明というのが困難であるがゆえに、申請をしても却下されるケースが多い。申請をしたところ却下される理由は、今回ノルトライン=ヴェストファーレン州を選んだ理由というのは却下率が比較的高い州ですので、そういう理由もあって選んでラインラント地方連合に行きましたが、ラインラント地方連合の返答によりますと、申請をすれば基本的には要件を満たしていれば認められる。だけれども、認められないのは過去に起きた犯罪であって、証拠が不十分であって、暴力犯罪を受けたことと被害を受けたことの立証が困難であるので、申請が認められないというケースが多いということですので、遡及効を認めた場合でも不支給とされるケースというのがあったりするとのことでした。
次に支給額の算定方法についてですが、被害者補償制度は基礎年金、調整年金、職業損失補填という3つのものからなっております。申請の手続については先ほどからも申し上げておりますように、被害者自身が暴力犯罪によって被害を受けて健康被害、経済的な被害を受けたことを証明していくことになります。あちらで聞いてきたところによりますと、原則としては被害者は捜査機関に被害届等を出した上で、被害者補償法に基づく給付の申請をしていくことになりますので、捜査機関が捜査をする義務というものが出てきますので、実際に申請を受けた場合にはラインラント地方連合では、微妙なケースの場合にはラインラント地方連合が被害者が有利になるようにするために、捜査機関あるいは医師等に問い合わせるなりをして、その要件を満たしているかどうか判断していくという形で柔軟な運用がなされていると聞きました。
稼得能力の喪失の判断等につきましては、医師が診察をした上でパーセンテージで評価をして、被害者補償法が準拠している犠牲者法の規定に基づいて給付が行われていくという形になっています。実務のところでは本日お配りしたものの2ページ目になりますけれども、身体の各部位について喪失した場合に何%という計算ができるような表というか冊子が実際、実務ではあります。
元の所得と稼得能力、支払われる年金額、支給期間との関係についてですが、年金の支払いというのは恐らくドイツの制度の一番の利点だろうと思いますけれども、国によって被害者が死亡するまできちんと年金の形で支払われるという手厚い補償がなされていると言えるのではないかと思われます。また、給付を受けた後に更に被害状況が悪化してしまうケースがありますが、この場合にはその都度判断して、実態に似合うような形で給付がなされるようになっています。
ただ、これとの関係でラインラント地方連合では、被害者の方の中には被害を受けて年金を受給してしまったら、その後、自身の改善を試みないという方もいるので、ラインラント地方連合では、リハビリを受けてもらうのが給付の条件であることを言っておりました。
併給調整ですが、他の社会保障制度との関係で二重に多くもらうので調整をするという意味での併給調整というのは、ドイツにはございません。ただし、例外的に行政機関内部で本来払わなくてはいけないものは、行政機関が払った場合には行政機関内部での調整や、災害保険のような場合には併給調整がございます。
ラインラント地方連合では、例えば精神的な被害を受けた方に対してトラウマ救急制度をノルトライン=ヴェストファーレン州では設けておりまして、原則として5回、更に追加で10回受けて、合計15回受けることができるそうです。15回受ければ多くのケースの場合には、被害者の人がかなり精神的なトラウマが軽減されるそうですが、15回受診をしたとしても軽減されないケースで多いものは性犯罪とのことでした。
今、ラインラント地方連合のところでは、心理カウンセリングの公費負担制度をノルトライン=ヴェストファーレン州では導入しておりますが、他のドイツで16州ある中でニーダーザクセン州とバイエルン州も同様な制度を設けていますけれども、他の州は設けていないということですので、今後こういう公費負担制度は連邦全体で広げていこうという動きもあるとのことです。
支給状況についてですが、特に資料4との関係で細かいことが書いてありますけれども、給付の申請をしてから支給が開始されるまでは、ラインラント地方連合の場合ですと平均9か月ほどになっておりまして、最近の給付総額については2億1,600万、日本円ですと224億ということで、その内訳は連邦政府と州政府というのが費用負担を行っております。この負担については、ドイツの場合は申請をした際に要件を満たしていれば基本的に支給されることになっておりますので、国家の義務的な経費と考えているとのことです。
求償についてですが、被害者の方が国家に被害者補償制度に基づいて給付の請求をした場合には、犯人に対する損害買収請求権が国の方に移るということで、被害者の方はそれについて請求することはできないことになっています。ただ、例外的に慰謝料というのは被害者補償制度の対象に含まれていないので、別途この場には民事訴訟を提起していくことが可能とのことです。
また、損害賠償履行、立替払い制度というのはドイツには存在しておりません。
8番目のその他の点ですが、実際のところドイツでは実務上の被害者補償制度に関する事務を行っている職員というのは、人数の特定をすることが困難です。それは犠牲者法に基づく事務を行いつつ、被害者についても同時に行っているというのが実際の実務上の実情とのことです。また、被害者補償制度については、特に白い輪というものが、例えば対象犯罪に現在は含まれていないストーカーや住居侵入、パワーハラスメントなどについても、被害者補償制度の対象犯罪に含めるべきだという主張がなされておりますが、連邦政府についてはちょっと否定的な印象を受けました。
最後になりますが、海外調査としての私の個人的な感想等も含めてということになるかと思いますけれども、ドイツの被害者補償制度は以前から指摘されてきたように、手厚い補償をするといった意味では今回、調査いたしまして確かにそのとおりだと思いました。これは国が年金による形で長期にわたって安定的に、被害者に対して給付を行うことができるという利点がかなりあるのではないかと思います。
ただ、実際のところはあちらに行って聞いてみたところ、連邦労働社会省、白い輪というのは被害者補償制度はすごいいい制度だと自慢をされて、日本も導入すべきだと言っておりましたが、ラインラント地方連合では実際に手続を行っているところですけれども、ここでは複雑過ぎるから新しい制度にして、そういうのは導入しない方がいいのではないかということを言っておりました。
私がすごい印象に残りましたのは、申請をした場合に要件が認められれば給付を必ずしなければいけないことになっているので、財政上の問題はどうなのかというのがすごい気になりましたが、この場合は国家の義務的な経費なので、要件が満たされれば国は必ず支給しなければいけないことになっております。ただ、先ほども最初申し上げましたように、日本の場合に比べてドイツの場合、消費税率が高いということなので、この場合、ドイツと同じような形を導入するとなれば、国民の理解が必要になるのではないかということは強く感じました。
以上、雑駁なところではございますが、報告とさせていただきます。
○ 椎橋座長どうもありがとうございました。
それでは、最後になりましたけれども、韓国について太田先生、再びでございますが、よろしくお願いいたします。
○ 太田教授 韓国につきましては前回のヒアリングで相当詳細に報告をさせていただきましたので、今日は今回の調査で、特に調査項目、重点項目としていたところ、あと、こういうところが日本との比較や日本の制度の検討においても、参考になるだろうという個人的な見解から一定の問題、争点に絞ってお話をさせていただきます。
まず給付の対象でございますけれども、韓国の場合にも基本的には親族間事件の場合でも、原則として支給しないことになっていますが、ただ、復活支給といいますか、給付しないことが社会通念に反するというだけの事情がある場合には、支給するということになっております。実際にそういうケースもあるということでございます。例えば母親を殺害した父親が自殺をしてしまって、子どもだけが残されたという子どもに支給したケースがあるそうです。ただ、実際に不支給事例でどういうものがあるか聞いてみましたところ、不支給の中では親族関係がある場合に支給しなかったケースが8割を占めているということでございました。
向こうの担当者の話ですと、韓国の場合には、親族関係がある場合でも金額は必ずしも大きくはないために、犯罪者に還流する危険は日本よりは少ないのではないかということでございました。
給付対象に関しましては、過失犯被害者は日本と同様に対象にしておらず、韓国も常時制度の改革に向けた検討を行っているのですが、過失犯被害者を給付対象とすることは現在、検討の対象になっていないということでございました。
給付の内容でございますけれども、これは2010年までの制度を全く韓国は改めまして、むしろ日本に近い形で、被害者の収入に一定の倍数をかけるという形で給付金を計算する方式に改めたわけでございますが、私の個人的な見方ではありますけれども、日本の場合には倍数という扱いになっておりますが、韓国は法律でも月数とされておりまして、要するに被害当時の月収に月数をかけるということでありますので、ある意味では被害者の被害当時の収入を一定の月数支援をするという内容での給付が明確になってございます。
ただし、韓国では上限がかなり厳しく設定されておりまして、まず月収そのものの計算に当たっても平均賃金の2倍を超える場合には、平均賃金の2倍に相当する金額を月収とする。これは前回も報告したようなことでございますし、しかも最終的に計算された救助金全体が平均賃金の遺族救助金であれば36か月分とか、障害救助金であれば30か月分といったように、最終的な救助金も平均賃金から見て一定の限度額におさめられています。
この点は前回、私がお配りした障害救助金のところに、同じように36か月分と記載しておりましたが、誤植でありまして30か月分です。これは既に改訂したものをホームページにアップロードしていただいていると思います。
ちなみに2010年度の上半期の段階での平均賃金は月収として155万ウォンです。今、非常に円高なものですからこれを標準に計算していいのかどうか分かりませんけれども、今のレートで言いますと大体月収11~12万円ぐらいが平均月収とされておりますので、これを超えてしまいますと、これが月収と見なされますし、最終的にはこれの36か月分ないしは30か月分以上を超える救助金の支給が行えないという形になっております。
2010年に改められた遺族救助金の制度でありますけれども、以前の固定額の支給に対して、今回からは月収に一定の月数をかけるわけでございますが、更に計算に一定の倍数を受けて調整をする計算方式があるわけですけれども、その新しい制度ですと申請者が被扶養者であったかどうかということで相当な差が設けてあります。すなわち遺族救助金の申請者が亡くなった被害者の被扶養者であった場合は高額のものが出ますが、被扶養者でない場合は相当低い金額しか出ないようになっております。場合によっては改正以前の額よりも低い額になってしまう可能性もあるために、この点は韓国では何か議論はなかったのかということを確認してまいりましたが、確かに被扶養者でない場合には余りにも額が低いので、今、引上げを検討しているところであるということでありました。
ただ、私の私見ではありますけれども、日本でも兄弟姉妹の遺族で全く被害者と交流もなかったような遺族に給付金を支給するという、つまり亡くなってから親族が集まってきて給付金をもらっていくというケースがありますので、こういう被扶養者とそうでない場合にどう差別化を図るかという問題は日本でもあろうかと考える1つのきっかけになりました。
前回のヒアリングで、韓国でも2010年から重傷害救助金というものができまして、名称からしても極めて日本の重傷病給付金に似ているために、その算定方式、例えばどういう医療費が対象になるのかとか、カウンセリングがどうなのか詳しく聞いてまいったんですけれども、現地に行ってはっきり分かったことは、名称は似ているんですが、日本の重傷病給付金とは全く違う性格のものであることが分かりました。
すなわち、韓国の重傷害救助金の場合には、被害者が幾ら自己負担したかということではなしに、どれぐらい重度の傷害を受けたかという医師の判定に基づいて、一種の日本の遺族給付金とか障害給付金といったように、早期の自立支援のためにどの程度の支援が必要なのかという観点から支給する。すなわち実際の補填額とは全く関係がない。例えば治療に5か月かかるならば月収の5か月分、治療に1年かかるなら1年かける月収分といったように支給する方式であることが分かりましたので、日本の重傷病給付金とは全く性質の違うものであることは、比較の際には気を付けなければいけないことだろうと思いますし、しかも重傷害救助金の重傷の定義がかなり重い。日本の重傷病給付金とは比較にならないぐらい重いものに限定されているということも注意を要するかと思います。
したがいまして、心理カウンセリング費用がこの重傷害救助金でカバーできるのかどうかという質問も持っていったんですけれども、先ほど言いましたように別に何か医療費とか項目を立てて自己負担分を償還してくれる制度でないために、心理カウンセリング費用に対するものという分には特に制度としてはありませんし、重傷害救助金でカバーされることはありません。ただ、何に使用するかは全く被害者の自由でございます。それを自分で心理カウンセリング費用に充てても構わないということでございます。
韓国の場合に1つ特徴的なのは、今度の2014年から犯罪者の納付した罰金を財源とする犯罪被害者保護基金ができたということは、前回も御報告をさせていただきました。その際に法務省の予算書を見ますと、予算書の項目の中に罰金幾ら、没収金幾らと書いてあるために、もともと法務省の予算がそういう罰金からの財源を基にしているのかという質問も携えて向こうで確認したんですが、向こうの法務省の担当者もどうして予算書がこういう記載のされ方をしているのか分からないということでした。
法務省の予算は財政企画部という日本の財務省に当たるところからの一般予算の割り当て、毎年予算申請をして財務省からの割り当てでやっているので、なぜ法務省の予算が罰金の納付額幾ら、没収幾らという記載の予算処理になっているのかどうかは、担当者でさえも分からないということでございます。ですから、改めましてこの法務部の予算は一般会計からのものでございます。
そういう意味では今回の犯罪被害者保護基金ができることよって、この被害者救助制度及びその他の被害者支援制度が、初めて犯罪者の払う罰金を財源とする被害者保護基金から払われるようになったということでございます。
先ほどアメリカでも言及いたしましたけれども、罰金が科されるような犯罪類型と救助金の支給を受ける被害者の累計は、相当ずれがあるのではないかという質問も行いましたが、確かに財政当局としてはそういうことを制度化に当たって問題視したようでございますが、重要なことは、韓国の場合には被害者救助制度、つまり被害者給付金制度だけを基金から賄っているわけではなく、ほかの被害者に対するさまざまな支援制度も扱っているために、そういった意味では、ずれははるかに少ないのではないかということでございました。
この保護基金のどういうところにメリットを感じるかということも質問してまいりましたけれども、安定的に一定規模の財源が確保できるというところが利点であるということが指摘されておりました。先ほどもほかの先生からも話が出ていたように思いますが、アメリカの方に話を戻しますと、アメリカでも犯罪者の罰金や特別賦課金などを財源とした基金などから補償制度の費用を賄っているわけでありますけれども、連邦政府のところでの犯罪被害者基金の調査をするために訪れたときに、当初は毎年の罰金の納付額からこの基金でそれを使っていってしまうと、かえってなくなっていってしまう。罰金の納付額は少なくなったり増えたりするので、それはむしろ不安定になる危険性があるので、アメリカでは連邦議会が基金の中で幾らまで使ってよろしいという制限額をキャップをはめるということをしていて、それで安定した毎年財源あるように工夫しているということでございました。
この点に関しまして、韓国では財源の安定化を図るために導入したということなんですけれども、ただ、最近経済の情勢が悪化しましたり、韓国では罰金が払えない者に対する社会奉仕命令の制度が一昨年制度化されましたので、罰金を払わないで労役場留置に行く代わりに社会奉仕をするという制度ができましたので、それで罰金納付額が減ったり、今、刑法改正の法案が提出されておりまして、罰金執行猶予制度が日本ではありますけれども、韓国では今度新しく罰金執行猶予制度ができるために、罰金徴収が減ることが懸念されているということで、財源の安定化には若干懸念はあるそうです。ただ、そのために法律には罰金の4%以上というふうに「以上」という規定しかしていなくて、実際にそれを何%にするかは大統領令で容易に変更できるようにしてあるので、もし足らなかったらこれを増やせばいいということでございました。
法律には罰金というふうに規定されていたものですから、まさに裁判所が言い渡す刑罰としての罰金だけがこの財源の対象になるかと思っていたんですけれども、法務省の担当者で確認しましたところ、この中には行政の過ち料とか追徴金とか、ただ、没収は入らないということでしたが、反則金も含まれているということでございました。ただ、当日予定をしていなくて、話の中でこういう話が出てきたものですから改めて確認をして、この内訳を内閣府の方に御連絡くださいとお願いしてあるんですが、まだ現在までに回答が来ていないようでございますけれども、恐らく想像するに圧倒的に罰金が多いことは間違いないと思いますが、一応法律にはどこにも書いていないんですけれども、罰金以外のこういった刑事制裁もしくは行政的な制裁金も、財源に入っているということでございます。
アメリカみたいな特別賦課金のようなものは考えているかということですが、もともとこの基金をつくった立法は議員立法であったために、ほかの選択肢を考えたわけではなくて、こういった通常の罰金の一部を用いるという法案が議員立法にて提出されて、それが通過したしたために、ほかの選択肢としてのアメリカや海外のような犯罪者が特別に払う特別賦課金のような制度は、検討されたことがなかったそうでございます。
ただ、この被害者保護基金の1つの問題は、法務省が所管しているわけでありますけれども、そこから他省庁の被害者支援の施策の予算も出しているために、省庁間で基金の配分の在り方が問題とされているようでありました。
韓国に関しましては以上の点が興味深いところだったのですが、更にあえて言えば、韓国では救助制度そのものが日本の制度と比べて、支給額という点で必ずしも魅力のあるものではないのですけれども、韓国は給付金の制度以外にさまざまな経済的支援制度があるというところが、1つの大きな特徴ではないかと思います。
さまざまなものについて全部報告していたら全く時間がありませんので、詳しくは報告書をご覧いただければと思いますが、例えば、犯罪被害者が実際に負担した治療費支援の制度があり、法務省が支給する補助金を基に被害者支援センターの全国団体が、治療費を被害者に支給しているという制度がありますし、被害者に対して無料で心理カウンセリングを実施するセンターが設置されているといった制度がございます。
被害者支援センターも、先ほど言った法務省の補助金を財源とするもの以外の広域寄附金という言い方しているんですけれども、さまざまなところからの寄附金だとか、一部、受刑者の作業報奨金からの寄付金も入っているんですが、こういったものを財源とする生活費支援などもあります。被害者が生活に困窮している場合には生活費支援、これは金額が幾らかいろいろ原則も聞いてきておりますけれども、かなり個別にケースが違うようでありますが、こういった生活費の支援でありますとか、先ほどの法務省のものとはまた別の治療費支援とか、学費の支援などの制度を被害者支援センターがやっているということでございます。これは経済的基盤が弱い日本の被害者支援センターとは相当違うところであろうと思います。
その際の救助金との併給調整はあるのかというのも聞いてみましたが、一応考慮はするけれども、必ずしも100%調整されるというわけではないということでございます。
そのほかにも他省庁、例えば女性家族部という省庁がございますけれども、こういうところでは性犯罪被害者やDV被害者に対して全く別途、治療費の支援をやっておりまして、これは救助金や法務省の治療費支援とは全く調整を行わずに支給しているものもありますし、性犯罪被害者に対しては民間の相談所が全国にたくさんありますけれども、こういうところでは女性家族部からの補助金に基づいて、カウンセリングに対する補助を行っておりますし、シェルターが設置されておりますが、シェルターから退所するときに自立支援金といったものを支給したりということがございます。
このように救助金の一本立てで見るよりも、それ以外のさまざまな制度で救助金の制度を補完しているという状況にあるようでございます。
以上でございます。
○ 椎橋座長 ありがとうございました。
ただいま5か国につきまして現地調査の結果を御報告いただきました。それぞれ制度が違う国におきまして、それにもかかわらず、平仄を合せるような形で、しかも要領よく御報告をいただきましたので、大変分かりやすく参考になる報告だと思いました。
これから各国ごとに質疑応答に入りたいと思います。最初は大体各国ごと10分程度をめどにして質疑応答という形にしたいと思いますので、構成員の方々から、あるいは報告者の方々の中でも結構でございますけれども、御質問やお感じになったこと等がありましたらお伺いしたいと思います。
まずアメリカから始めたいと思います。どうぞ御自由に御質問、御意見をお出しいただければと思います。
○ 黒澤構成員余り国際情勢に詳しくないものですから愚問かもしれませんが、アメリカにつきましては損失補填的な性格、最後のよりどころ、以前にもそのような説明を受けていたわけでございますけれども、日本で言う生活保護との関係といいますか、それに見合う制度がアメリカにあるかどうか分からないのですが、その辺はどのようになるのでございましょうか。
○ 太田教授社会保障制度については内閣府の方で調査いただいているので、そちらの方で詳しくお聞きいただければと思うんですけれども、基本的にはその他の社会保障制度については、そういったものがある場合には、それをまず先に申請をして、その支援が受けられない場合のみ補償の対象になるということでございますから、生活保護なんかを受けている場合でも、例えば恐らく扶養喪失分の補償などは調整がかかってくるのではないかと想像いたします。
○ 椎橋座長事務局の方からいかがでしょうか。
○ 事務局(内閣府犯罪被害者等施策推進室参事官)社会保障制度について、こちらも余り専門と言うほど専門ではないのですが、勉強した範囲ということなんですけれども、アメリカの場合、イギリスや北欧のような国民総保障的な意味での社会保障というものは存在していない状況になります。特に医療保障と生活保護というのを大きく2つに分けるとしましても、医療保険自体としては非常に限定的な意味で公的な医療保険、基本は財産的に低所得者層を保障するという意味での保障と、65歳以上であるとか腎臓病患者でありますとか、一定の限定がかかったものに対する社会保障的な医療保険みたいなものがございます。
基本、州によってばらばらということもございまして、社会保障、いわゆる所得の保障的なものになりますと、例えば現物支給的になるんですけれども、食べ物を買ったときにお金を政府からあげるよというような、昔フードスタンプと言ってまた今は名称が異なるようなんですが、そういう現物支給的な保障でありますとか、個別の貧困家庭に対する一時補償という単発なものはあるんですけれども、網羅的で公的な補償制度というのは、アメリカについては存在していないと理解してございます。
○ 岩村構成員 私はアメリカが専門でないので余り確たることは申し上げられないんですが、今、参事官の御説明いただいたところで大体そうなんですが、アメリカでソーシャルセキュリティ、社会保障と言うと、基本的に障害年金・老齢年金を指していて、そのほかで存在するのは医療のところで今、御説明があったように、低所得者と高齢者を対象とするメディケートとかメディケアと言われるような公的な医療保障の制度があるということで、それ以外になるとすべて連邦の管轄ではなくて、基本的には州の管轄となって、各州でそれぞれ行っていることになりますが、連邦側の補助金を出すので、連邦が出している補助金の仕組みに乗っかるような形で、各州でそれぞれまさに福祉の制度をやっているということだと思います。
今、御説明があったとおりで、日本の生活保護のように最低生活水準を割ったら普遍的に保障を行うというシステムは多分ないはずで、各カテゴリごとに、例えば母子家庭であるとか障害者家庭というようなカテゴリごとに、とりわけ困窮している人に的を絞ったかなり限定的なプログラムが各州で行われているというのが、恐らくアメリカの姿だろうと思います。
○ 椎橋座長番構成員、どうぞ。
○ 番構成員アメリカはやはり州によっていろいろ違うという御報告を受けましたが、発表いただいたニューヨーク州については、アメリカ全体の中ではかなり取組みとしてはきちんとしている、あるいは財源が安定しているという理解でよろしいんでしょうか。ニューヨーク州がアメリカ全体の中でのどの辺りにいるのかということを、伺えるとありがたいなと思いました。
○ 太田教授 財源の安定度というのがどの程度か分かりませんが、少なくとも財源としてはこれまでのニューヨーク州の場合は、罰金以外に特別賦課金の制度がいろいろございまして、それに基づいて基金を設けていますけれども、それはどうですかと言ったら、今まで不足したことはないということでございます。ただ、ほかの州に比べて非常に安定しているかと言うと、足りない州は幾つかあるというお話は協会の方でも伺ってまいりましたけれども、そういうことよりも今回は特にニューヨーク州を調査対象に選んだ理由は給付額の上限が設定されていない。医療費は心理カウンセリング費用も青天井になっている。これが本当にどの程度として行っているのか。もしそれがかなり柔軟に運用されていれば非常に日本にとっても参考になるだろうというところで、そういう点ではアメリカの中でも上限を設定していない州はニューヨーク州だけでございますので、そういった点ではニューヨーク州はアメリカの中の補償制度の中では、優れた制度を運用している州ではないかという気がいたします。
○ 岩村構成員そうすると、疑問はなぜニューヨークはそうなのかということなんですが、そこはいかがでございましょうか。
○ 太田教授 今、細かいメモを持ってきていないんですけれども、ニューヨークは全米で2番目に補償制度を創設した州ではなかったかと思います。1番目はカリフォルニア州で2番目ではなかったかと思うんですが、当時から上限が設定されていなかったように記憶しています。もし間違っていたら後で訂正をさせていただきますけれども、そういう意味ではなぜこうなのかというのは私の方では存じ上げておりません。
○ 岩村構成員今の質問はなぜかと言うと、アメリカの標準的な姿というのは、むしろ上限があるというのが標準的な姿だと私は伺っていて理解したんですが、そうするとニューヨークというのは、そういう意味でアメリカの中では特異な立法例という位置づけではないかという気がするので、そうすると、なぜそういう特異な立法政策を採用しているのだろうかということをお聞きしたかったということです。もう今、既にお答えいただきましたので、これ以上は結構でございます。
○ 瀬川構成員 総体としてはアメリカは自己補填ということを強調されましたが、その理念に基づいたスキームに対する被害者支援の専門家とか団体などの反応はどうなんですか。
○ 太田教授 基本的にアメリカの場合には幾つかの批判を聞いたことがあるのは、全体額がかなり限られているという点での問題と、アメリカは連邦政府のところで調査をしたときには、そういうことは特に挙がってはいなかったんですけれども、犯罪被害者基金という犯罪者の納付したお金を被害者補償の財源とするということに関しては、アメリカでは古くから批判があって、むしろちゃんと連邦政府なり州政府が一般の予算から州の責任としてこういったものを運用すべきではないかと研究者の方から批判されてきております。連邦のOVCの方ではそういう話は出なかったんですけれども、全国の被害者補償のサポート的な役割をしている協会がございまして、そちらの方では古くからそういう批判はあるという話が出ておりました。
これをどう考えるかなんですが、先ほど財源はある程度安定しているところが結構多いのではないかという話でしたけれども、それはやはり限られた枠の中でやっているから足りているのであって、もっと一般財源からやりなさいという批判がもし研究者などからあるとすれば、今のできる範囲の中でやっているだけではないか。本当はもう少し州自体が独自の一般予算を用いて、もう少し制度的には拡大すべきでないかという含意が裏にはあるのではないかという気がいたしますが、やはり州の議会が予算的に非常に厳しいという話を聞くので、そういうところで制限がかかるよりも、犯罪者が払った罰金とか賦課金ということの方がやりやすいんだというのが当局の説明内容であります。お答えになっているかどうか分かりませんけれども。
○ 内閣府大臣官房審議官犯罪被害者等施策推進室長基金でやる場合に、結局基金の規模によって支給額を足りなくなってくれば減じるとか、そういうような形だからこそ基金と一般財源の違いで意味が出てくるのか、それとも基金で集めているので一定の政府を通すことなく支出の意思決定とかできるという意味で、基金として独立させていることに意味があるのかとか、そういった議論は何かあるのでしょうか。
要は一般財源と基金とで分離することによって財源が一定確保されれば、その財源の中でやるのか、給付の水準はその財源に引っ張られるのではなくて、あるべき姿として決まるので、必要な財源として優先的に取ってくるのはそこだけれども、足りなければ一般財源になるとか、その辺りの根本的な考え方はどうなっているのでしょうか。
○ 太田教授 そもそもこういった犯罪者の納付する罰金等を財源にしたというのは、もともと一般予算では足りなかったからしたということで、そちらの方の犯罪者に納付するものを財源としたら確実にできたのかと言うと、それはよく分からないわけです。
制度を一般予算から犯罪者の納付する罰金に移すという最たる理由は、それによって予算が拡充できる。予算が拡充できればいろんな政策ができるようになったとは思うんですけれども、でもむしろ先ほど言った一般の予算でやるべきだという批判はなぜ出てくるかというのを逆に考えると、それに見合ったものだけしかやっていないのではないか。そこら辺の評価は本当に推測のようになってしまいますが、ニューヨーク州も含めて犯罪者の罰金等を基金としている州でも財源に苦しんでいるところが若干あるかのような話を協会で聞いたのですが、それ以上に厳しいのは先ほど12州でしたか、一般会計の方から財源を担っている州の中には、相当補償制度の運用にも厳しい州があるかのように聞きましたので、それよりはまだいい。でも、その中でもっといろんなものが本来できるのかもしれませんけれども、その中で運用しているということなのかもしれません。これはあくまでも向こうで聞いた話なもので、推測の部分も入ってございます。
○ 松村構成員今あった12州の財政に厳しいところだけが、いわゆる損害賠償金を求償するというのをやっているわけですか。ほかの41州は罰金だけでできるということでしょうか。その辺のお考えはどうなっていますか。
○ 太田教授求償とは関係なく、12州は一般予算、要するに議会が毎年割り当てて承認する予算についてやっていて、この中には補償制度も運用になかなかお金が足りないという州があるという話でございます。求償はまた別のことです。
○ 松村構成員別にそれによって加害者に請求することはないということですか。
○ 太田教授 ないというわけではなくて、求償という制度は基本的にアメリカにはございません。求償的なイメージなものはなくて、ただし、被害者に補償金を支給した場合には加害者が起訴されて有罪になって損害賠償命令を受ける場合に、被害者だけではなくて併せて支給した範囲内で、補償機関に損害賠償を払いなさいという制度は各州で持っているようです。細かい法制度はどうだったのか分からないですが、基本的には持っている州が多いようですが、なかなか運用がうまくいかない。要するに犯罪者の資力が圧倒的に足りないので、そもそも損害賠償命令に被告人の資力を含めていいのかどうかというのはイギリスとアメリカで昔から議論がありますけれども、アメリカの場合は資力を考慮することが多いためになかなか損害賠償命令が言い渡されても賠償額が低いようです。
そうなると、そこから更に補償機関がごそっと持ってくることは考えられないので、しかも、もし損害賠償命令が確定しても、それを執行するのが非常に大変で、今、どの州だったか記憶にありませんが、どこかの州だけは損害賠償命令が言い渡されたら犯罪者を刑務所まで追跡して、できるだけその分を徴収するようにはするというのをやっているけれども、それ以外の州ではなかなかそこまで人の手当も足りないために、なかなかできていないということです。それはまた別の仕組みとしてそういうものがあるということです。
○ 松村構成員分かりました。
○ 椎橋座長ほかによろしいでしょうか。それでは、アメリカはこの程度にしまして、次に移りたいと思います。
イギリスについていかがでしょうか。同じように御質問、御感想等ありましたらどうぞ。
○ 瀬川構成員 資料2の1ページ目、財源のところで刑罰賦課金について書いてあるところです。被害者支援に使った方が有効であると法務省は考えているというくだりなんですけれども、ここでの支援というのは具体的に何を指しているのかということなんですが、この点いかがですか。
○ 奥村教授 被害者補償も支援であることに違いないわけですけれども、このような経済的支援とともに、Victim Supportなどが行っている実際的・精神的な支援、性犯罪の被害者の支援等に係るワンストップサービス、あるいは証人支援などに特化した実際的支援が必要なわけですが、イギリスでは、被害者補償のお金を支給するということと、実際的なあるいは精神的なさまざまな支援にかかるコストを分けて判断しているんだろうと思うんです。ですから理屈としてはアメリカのようにVictim Surchargeを被害者補償制度の原資とすることもできるんだろうということですけれども、先ほど申し上げたような理由でイギリスはとらないという回答でございました。
○ 瀬川構成員この文章は、ほかの経済的支援という意味ですか。実際的な被害者支援という趣旨。
○ 奥村教授そういう趣旨でございます。
○ 瀬川構成員分かりました。
○ 椎橋座長ほかにございますか。
○ 中曽根構成員 基本的なことが分からなくて申し訳ないんですが、イギリスの場合、心理カウンセリングに関して、原則として国民医療サービスでカバーされるというふうにあるわけですけれども、これはつまり心理カウンセリングを受けるのは、国民医療サービスで無料で何回もか受けられるということが決まっているのでしょうか。
○ 奥村教授 心理カウンセリングに関しては内閣府の話でございますので、私どもの直接の調査対象ではないんですが、想像の域を超えないんですけれども、基本的にはNHSでカバーできる部分は無料だということだと思うんですが、具体的に心理カウンセリングをどこまでカバーしているのかについては不確かでありますので、内閣府の方でコメントいただければと思います。
○ 事務局(内閣府犯罪被害者等施策推進室参事官)イギリスの医療保険制度は原則無料ということで、非常にカバーが広いし、補償制度の対象としましてもメインのホームドクター的な、最初にこういう専門医療が必要ですよという紹介があれば、相当幅広い治療、日本で言う医療よりも幅広いものが入ってくる。例えば拒食症や過食症の摂食障害治療みたいなものまでの仕組みなどもあり得るということで、当然心理カウンセリング的なものもお医者様がそれを必要だというものがあるのであれば、保険的にカバーされるようです。
○ 椎橋座長 長期間治療を要するPTSDなんかはどうなんですかね。
○ 事務局(内閣府犯罪被害者等施策推進室参事官)医療の範囲に入って、これが治療として必要だというのであれば入ってきます。
○ 椎橋座長 基本的には医療として無料のサービスが受けられる。特にその後、犯罪被害者に対する支援としてということでなくて賄えているということですかね。
○ 事務局(内閣府犯罪被害者等施策推進室参事官)イギリスに関しては、医療の部分は医療保険全体的にばっと保障できているもので対応していると理解してございます。
○ 椎橋座長ほかにいかがでしょうか。
○ 瀬川構成員 イギリスの議論を今日聞くと相当動きがありますね。かなり早い段階で被害者補償を導入した国なので、長い歴史を持っているのでいろんな問題点が出てきて、いろんな解決策を模索している極めて興味深い動きだと思います。
安定的に運用し成果を上げている中での法改正の動きと理解しているんですが、それでよろしいですか。あるいはいろんな問題点が出てきて法改正が動いているのか、どちらの理解が正しいですか。
○ 奥村教授 両方だというところがあると思うんですが、私ども海外からイギリスの制度を理解するというのは、なかなか難しいところがあるんですけれども、本国でも極めて難しい制度だという捉え方です。被害者補償制度は、長い歴史を持っているわけですが、それをもっと分かりやすくするということも1つの改正の背景にあります。
先ほど申し上げたように、一番は財政難が背景にあって、2億ポンド以上の予算を使っているわけですけれども、これがかなりの財政負担になっている。これを何とか下げたい。それから、先ほど申請却下をしている一番多いのが軽い傷害、1,000ポンドの第1等級にもいかないようなものを請求してくるのが多いということで、それが煩瑣になっているということで、その制度をもう少し程度の高い傷害を対象にしていこうということです。
向こうでお話がありましたけれども、結構弁護士さんがこれを食い物にしているといいますか、請求をすべきだということをしている。そういうところもあるので、できるだけ早い段階で必要な被害者、特に重傷害を負った被害者とか児童虐待、性的虐待の被害者に手厚い補償をより充実していこうというところに、力点が置かれているという形であります。
○ 黒澤構成員 5ページですけれども、国による立替払い制度をVictim Supportではずっと要求し続けていると書いてありますが、これが実現しない理由につきましては、やはり財政問題が大きいという理解でよろしいですか。それともほかの原因があるのでしょうか。
○ 奥村教授 財政的な問題というよりも、私の理解では理念のところがあると思うんです。立替払いするとなると損害賠償の要素が出てくるわけです。イギリスの制度が64年にできましたときに、確かにこれは今でも逸失利益とかそういうものが入っていますので、その部分は損害賠償の要素がありますけれども、あくまでも政府としては先ほど申し上げましたように、市民間で発生した犯罪については国家に責任はなく、あくまでも社会連帯共助の精神から支給しているという発想でありますので、立替えということは考えていないということだと思うんです。
それに対してVictim Supportは、それであったとしても犯人に代わって立て替えて、後で求償すればいいのではないかということで、被害者の支援のために必要だということで、そういう要求を出し続けているということですけれども、政府としては先ほどの考えでそれに応じないということのようであります。
○ 松村構成員今の損害賠償命令制度での金額とかは、一定の支払能力によって決まるということで、逸失利益だとかその辺がどの程度考慮されるか分かりませんけれども、するとあれだけの立派な補償制度以上に損害賠償するという裁判例は結構多いんですか。
○ 奥村教授 いえ、イギリスの損害賠償命令は先ほど申し上げたように制裁として課し、簡易迅速に刑事手続を使って命令を下すという制度ですが、犯人の資力を考えていますので、なかなか実際に経済力のある犯人というのは少ないようで、だから現実には余り取れていない。命令してもそれほど高額の賠償金というのは命じられないというところが実情のようであります。
命じても支払い能力が実際なくて払っていないということがあります。これは日本でも同じような問題があると思います。ただ、政府としてはもっとそれを犯人から賠償できるようなシステムに改めていくべきだということを現在主張しています。
○ 番構成員資料を見せていただいて、先ほど弁護士の話が出ましたけれども、資料2の5ページに不服申立手続ができたということで、そこには弁護士等が犯罪被害補償スキームを悪用する。それが産業化したということで、犯罪がなかったのにあったことにして請求をするようにするなどというのが一番あり得るというか、考えられることなんですが、イギリスの場合は暴力犯罪における落ち度のない被害者を対象にしているということで、そんなに産業化するほどのものなのかなというのが非常に不思議に思うんです。日本だと生活保護のビジネスみたいなものが確かにないことはなくて、いろいろ問題になったりはしたんですけれども、これは具体的にはどういうような感じだとお話を聞いていらしたのか、ちょっと教えていただけますか。
○ 奥村教授 それは法務省での説明だったんですが、前年度で6万6,000件ぐらい請求がある。非常に多いということですけれども、それが多い理由の1つとして、弁護士の助言により被害者が、補償対象になりにくい事例でも、だめもとみたいなものを出す場合が少なくないみたいであります。こう見ると弁護士による不当なビジネスという表現に見えるかもしれませんけれども、そういう実態があるということの説明でございました。
補足ですが、ここに第三者機関としての第1段階審査会による再審査制度を設けたと書いていますけれども、従前、2008年スキームの以前にも審査制度はありまして、上訴機関(CICAP)というものがございました。第1段階は犯罪被害者補償審査会で審査をする。それに不服がある場合は控訴できるという形です。
前は内務省が管轄していたわけですが、内務省と法務省が分化しましたので、現在は法務省が被害者補償制度を担当しております。法務省の中にファーストチェアというトライビューナルができたんです。これは被害者補償だけではなくて、いろんな制度の運用に係る審査会があるのですが、そのうちの1つとして犯罪被害補償についての不服申立、上訴機関としての位置づけとしてできました。そういう位置づけです。
○ 椎橋座長実際の機能としては、以前から慎重に審査されて不当な請求であれば却下するということだったと思うんですけれども、それをもっと効率的にやるということですか。そうではなくて、もっと厳格に審査して不当な申請が通らないようにしようということですか。
○ 奥村教授 先ほど申し上げましたように、犯罪被害者補償審査会にまず不服申立できるわけですけれども、そこでの審査というのは当局が下した判断をまた当局で判断することになります。それについては恣意的な判断もあり得る。そこで審査について更に第三者を審査機関として加えているわけです。法務省が同審査会を運営しているわけですが、審判官やCICAの職員だけではなくて法律、医学の専門分野の者、様々なバックグラウンドをもった一般人も含めた委員から構成されています。これにより、要するに判断の客観性、審査の客観性を担保しようというのが設けられた趣旨だろうと思います。
○ 椎橋座長 イギリスでは例えば最初に審査で補償が認められた後、より重い障害があるので、もっと高い保障を得たいという場合に、更に不服申立をすることはできますね。
○ 奥村教授できます。
○ 椎橋座長 その場合に、もし最初の決定以上のものが認められればやってほしいけれども、それ以上にならないんだったら最初の決定のままでいい。そういうような請求の仕方はできるんですか。あるいは要するに場合によっては慎重に再審査したら下がるかもしれないということがあり得ますね。日本でも実はあり得るのですけれども。
○ 奥村教授想像の域を出ませんけれども、あり得るんだと思うんです。裁定額の計算について障害の程度については客観性が担保されているわけです。何等級に該当するとはっきりしてくる。その程度について疑問があったという場合もあり得るんだろうと思うんですが、そこについては慎重に判断して、医学的な検査の結果を見て判断する。
それに逸失利益とか特別経費が入ってくるわけです。その計算についてごまかしがないか。ごまかしがなくても低く見積もられた場合があり得るだろう。その場合について不服申立していることがあるんだろうと思いますけれども。
○ 椎橋座長 財源が限られている中で、本当に必要なところに必要な給付が得られるということは必要ですね。
○ 奥村教授それを改正の一番の目玉と考えているんだろうと思うんです。だから軽い被害についてはできるだけ対象から外して、必要な重い人にかなり重点を置いた、あるいは弱い立場の児童とか女性とか性犯罪の被害者の保護を重視していこう。補償制度だけではないんですけれども、補償制度もそのような視点で充実させていくべきだという視点があると思います。
○ 椎橋座長 6万6,000件というのは多いですね。これは1年間の数字ですか。
○ 奥村教授そうです。
○ 椎橋座長ほかにいかがでしょうか。
○ 瀬川構成員 数年前に岩村先生にレクチャーされたことがあって、こういう制度を考える場合に常にモラルハザードに注意しなければならないことを言われました。我々はその点が典型的にイギリスに表れているような気がいたします。
○ 椎橋座長それでは、今度はフランスに移りたいと思います。フランスについて同じように御質問、御感想等がありましたらお願いいたします。
○ 内閣府大臣官房審議官犯罪被害者等施策推進室長フランスの場合も財源が特殊なわけですが、結局このフランスの場合の3.3ユーロを乗じるというやり方は、例えばこれまで給付をよりよくするという観点から、この係数を高く設定したとか、逆に給付水準は変更していなかったけれども、対象者が増えてきてしまったために、財源的に無理が出てきたために3.3ユーロを上げるべきか否かの議論が起きるとか、逆に3.3ユーロはいじれないので、この中で賄える給付にしなければいけないみたいなマインドとか、そういった3.3ユーロという係数についての固定度と、給付と財源をどうするのかということについて考え方みたいなものはどうなっているか、教えていただけますでしょうか。
○ 小木曽教授前回のヒアリングでお話したところでありますが、この制度が始まりましたのは、もともとは国庫の一般財源で制度ができた。それが1977年の話なんですが、この補償基金というのはもともと自賠責を運用している機関なんです。これができたのは1950年代のことなんですが、そこにテロに対する国家補償制度というのが1986年にできたんですけれども、テロについてはこの基金を新たにつくって、国庫ではない別の財源からテロの被害の補償をしようというのでできた。ですから、これは1986年にできた制度なんですが、一般犯罪についてはその後も国庫から出していて、これを統一したのが1990年のことであります。
1990年からこちらは補償基金からすべての、テロも一般犯罪も含めて補償しようということになったわけでありまして、その運用をだれに任せようかというので考えたわけなんですが、このときにはドイツの言う国家賠償という考え方であるとか、受刑者からの罰金を使うべきであるとか、いろいろ案はあったらしいのですが、結局どれも襷に帯にというようなことで、先ほど申しましたようにどれだけ広く薄く、しかも潤沢に財源を確保できるかということを考えた結果、どうも保険に行き着いたらしいのです。その運用をだれに任せるかといったときに、自賠責をやっている機関があるではないかということで、そこに運用を委ねたということらしいです。
当時は賦課金は1.幾つだったか2.幾つだったか辺りから始まっているんです。現在3.3なんですが、これが5年以上は変わっていないと思います。インフレの率に従って上がってきたんだと思いますけれども、今のところ非常に潤沢な3億6,000万ユーロの資産を持っておりまして、それに対して支払いが2億6,000万ユーロくらいですから、1億ユーロくらいの余裕を持っているわけですが、なので当面はいいんでしょうけれども、これは向こうの裁判所で聞いたはなしですが、10障害については上限がありませんので、今のように上限を設けない支払いをずっと続けていけば、やがて3.3を変えるか財源が枯渇するか、どちらかということもあるかもしれないとは言っていました。
○ 椎橋座長 財源の問題なんですけれども、この金は結局だれが負担しているのか。フランスの制度はとても合理的だとは思うんですが、犯罪をめぐる犯人と被害者のことを考えた場合に、それは果たして保険に馴染むのかという疑問が無いわけではありません。この制度を導入するときにその辺の議論があったのかどうかよく分からないんですけれども、先ほど質問した立替払いなんかは理念の問題ではなくて、わりとすんなり納得できるのかなという気がするんですが、そもそも基本的に犯人と被害に遭う人との関係を考えてみた場合に、交通事故だったら、まだその関係は保険にも馴染むような気はするんですけれども、一般的に犯罪についてその関係というのが、どうも保険にはぴたっとなじまないような気もするんです。
そして、冒頭に申し上げましたように、一体このお金はだれが負担しているのか。つまり保険契約者なのか保険会社がかぶっているのか、だれが実質的に負担しているのか、その辺を教えていただきたいのですが。
○ 小木曽教授これは保険契約に課しているだけでありまして、保険ではないです。つまり保険事項を共有する人々が保険料を負担して、プールして、一旦不幸な事故に遭った人たちに払いましょうというのが保険の考え方なんだろうと思いますが、これはたまたま通る先が保険契約だというだけで、では犯罪をみんなが保険事故で遭うと認識しているかというと、恐らくそうではないだろうと思います。
だから私は目的税というふうに考えるべきではないかと思うと前回も申し上げたんですけれども、しかし、国庫を通していないので税金ではないんだという説明が先方からあったわけですが、補償の対象は外国人も含まれますし、国外犯も含まれますから、要するに負担と需給の関係というのは厳密に考えるととれていない。ですから加害者もアパートを借りたときに損害保険に入る。車を買って損害保険に入る。将来その人が犯罪を犯せば、そこから払われることになるわけですから、そういう人もいますし、損害保険に入るけれども、犯罪に遭わなければ給付を受けない人も勿論いますし、そういうことになりますので、どうしてそれが保険なのかということですけれども、一番フランスの社会の中で一般的に広く薄く、みんなから取れるのはこれなんですという、そういう説明でした。
私も学生のころにアパートを借りたときに入れと言われました。だから日本で損害保険と考えるそれとは、向こうの損害保険は随分広いんだと思います。例えば車2台持っていれば、2台持っている人はお金あるんだからその分出して何がおかしいのというような、そういう返事でした。だからこそ連帯という何だかよく分かりませんけれども、何でも入る皮袋みたいな概念を持ってきて連帯なのよという説明でした。
○ 黒澤構成員保険料にこのお金は結局入っている。つまり保険契約をする人が負担しているという理解でよろしいでしょうか。
○ 小木曽教授そうです。保険契約1契約ごとに3.3ユーロが加算される。
○ 椎橋座長国民の意識として実態は保険を払っているというか、税金を払っているというか、余り違わないような感じがしますけれども、意識としては。
○ 小木曽教授恐らく約款を見ると、きっと3.3ユーロと書いてあるんだろうと思いますけれども、恐らく知らないのではないでしょうか。払っていると意識しないできっと払っているんだろうと思いますが、一定のカテゴリの人、ここの場合ですと損害保険に入る人たちに義務的に払わせているんですから、税金という性質なんだろうと思いますけれども、国家を通さないからパラフィスカルだという説明でした。
○ 中曽根構成員保険料が多い人とか少ない人、かける人によって金額はいろいろだと思うんですけれども、多くても少なくてもみんな3.3ユーロなんですね。
○ 小木曽教授1契約につき、そういうことです。
○ 中曽根構成員ありがとうございます。
○ 内閣府大臣官房審議官犯罪被害者等施策推進室長導入の時点で、要するに保険を払っている人がこういうものを負担することになるんだということが、どの程度世の中に知られ、あるいは説明されてこの制度が導入されているのかという点は、何か分かりますでしょうか。
○ 小木曽教授先ほども申しましたけれども、いろんな議論はあったらしいです。一番初めは国庫から出したわけですが、導入のきっかけになったのはテロなんです。テロ犯罪で80年代にパリなんかでテロの被害がありまして、それで一気にこの制度が導入されたという背景がありまして、それで恐らくゆえなくひどい被害に遭う人たちを見過ごしにはできないではないかということで導入されたもので、そのときの財源がこういうことで皆さん入ったら2ユーロなり何なり取られることになるんですよというのが、どれだけその当時社会に浸透していたかどうかは分かりませんが、背景としてはそういうことがあったので、恐らくそんなに違和感なく受け入れられたのではないかと想像します。
○ 瀬川構成員感想なんですが、日本に非常に馴染みにくい議論のように展開されていますけれども、被害者に対する経済的支援という点では、非常に割り切った最も合理的な制度だと思いますので、不思議な国ではないので、やはり実際の犯罪被害の実態から見れば、こういうこともあり得るという制度だと私は理解すべきだと思っています。
○ 小木曽教授ついでです。ドイツも国外犯の補償が始まったということでしたし、そのことは説明がつかないんです。国家賠償だという説明がつかない。だけれども、実際にはやらなければいけないということになってきているわけですので、そういう考え方もあるのだろうなと。今のところはそういうわけで、この制度でカバーできない少額の損害賠償命令の立替払いもできたというのは、それは財源があるからできたということでしょうから、1つの考え方だろうなとは思います。
○ 瀬川構成員 もう一点ですけれども、この制度というのは先ほど言ったように非常に割り切った制度だと思います。財源の問題だけが心配なのか、技術的な問題、倫理的、理論的な問題点はそれほど指摘されていない印象なんですが、それでよろしいですか。
○ 小木曽教授はい、そう思います。
○ 太田教授 まだ始まったばかりですので運用は分からないかもしれませんけれども、2008年からの軽微な犯罪についての立替払制度、要するに補償を払っておいてこの機構が犯罪者から回収すると言うんですが、先ほどどうしてやらないのかというイギリスの質問が出ましたけれども、物すごく負担だと思うんです。
恐らく日本的な求償ですが、積極的に求償をやっているのが台湾だと思います。台湾はできるだけ求償するということをやっているんですが、向こうの担当者から聞いたことがあるのは、国が債権の取立屋みたいになっていて本当大変である。向こうは検事がやっているのですが、検事達はお金の取立屋みたいになっていると言うのです。そうすると、フランスでは物すごい件数になってくる可能性もあると思うのです。その辺は今のところ何も特に出ていないのでしょうか。
○ 小木曽教授資料の後ろに付けてある求償の割合、ついでに忘れないうちに申しますが、フランスでは社会保障を支払った場合も国が求償するそうですので、本来払わなくてもいいものを払ったら、本来払うべき者のところに求償するんだということだったので、ああそうですかと言ってちょっと驚いたことがございました。
資料5を見ますと求償額が出ているのですが、表を見るとだんだん求償率が下がってきているように見えるんですけれども、実際に下がってきているのか、それとも古いものから取ってきているので、新しいものについてはまだ十分に求償ができていないということなのかははっきりしません。恐らく後者かなという気はするんですが、そうすると2割くらいは取れていることになるわけです。これは基金が専門にそれをやっていますので、どうなんでしょうか。この求償の割合を多いと見るか少ないと見るかというのはよく分かりませんが、取れているかなと。
○ 太田教授この制度の関係はどうなっているんですか。2008年から始まったのは別の制度として始まっている。これまでの補償の対象になっていないものにまで、ただ、こちらの資料5の表は従来の補償で支給したものの中で求償ができたものの割合。まだ新しい方の制度の運用はまだよく分かっていない状況ですか。
○ 小木曽教授新しい制度、2008年からの方は2010年の実績で支払申請が2万5,000件あって、その申請の64%が1,000ユーロ未満であったということです。1,000ユーロというのは20万円未満の損害賠償の言い渡しを裁判所で受けた被害者が、加害者が払ってくれないので基金に言ったら、1,000ユーロですと全額が払われることになると思いますけれども、これについても後に求償されるはずですが、この求償がどうなっているかということはまだ分かりません。
○ 椎橋座長2011年は極端に低いですけれども、年度途中なんですか。
○ 小木曽教授日本ほどこういう数字の資料が速く正確にとりまとめられる国ではないということもありまして、どうもその辺りが原因なのではないかと推測します。それ以外の中の事情でこの年あるいは10年、11年にかけて額が下がってきていることを推測させる1つの事情としては、申請件数も支払件数も増えてきていますので、右肩上がりで増えてきていますから、それに対して仕事をする人の数が増えなければ反比例するだろうということは想像できます。
○ 椎橋座長FGTIの財源の5分の1程度が求償によるという説明がありましたけれども、相当頑張って取っているということですね。
○ 小木曽教授そういう印象を受けます。3億6,000万の資産のうちの7,100万ユーロが求償であるという報告書ですので、よく取れているのかなと思います。
○ 椎橋座長 テロ犯罪を契機にして始まったというので、何か納得できるような感じはしたんですけれども、連帯共助の精神による。言ってみれば危険をみんなで分担する、負担するというところがありますね。それで瀬川先生がおっしゃったように非常に経済的支援としては安定した制度といえそうで、しかもフランスは人口構成もしっかりしているから、今後とも非常に安定した運用が見込めるものですね。
ほかにいかがでしょうか。
○ 松村構成員そういうことで非常に魅力的な制度だと思いますけれども、日本に導入する場合にいろんな困難があるかもしれませんが、一番大きい障害になるのは何だと思いますか。
○ 小木曽教授制度を導入といった場合にどの部分をということなんですが、要するにこの話は前回最後の方にちょこっと言ったんですけれども、日本では今、罰金があり、犯給法があり、振り込め詐欺の制度があり、ヤミ金の制度があります。それを全部集めると100億はきっと超えるくらいの額があるんだと思いますが、それをみんな集めておいて、どこかそれを運用する機関を新しくつくってやるところを参考にするのか、それとも保険への賦課金という制度を参考にするのかという辺りが、どこをということになると思うんですけれども、保険ということになると日本でどのくらいの人が保険に入ってという問題があると思いますし、基金を今ばらばらでやっているものを全部統一してというところを参考にするのであれば、それぞればらばらでやっているものを統一できるのか。これが恐らく一番大きな問題なのではないかと思いますが、それであれば基金というか財源としてはそれなりの方法があるのではないかという気がするので、是非御検討を。
○ 椎橋座長FGTIの団体の性格はどういうものなんですか。何に近いのでしょうか。
○ 小木曽教授一番初めに始まったのは自賠責保険を運用する機関として始まったんです。今これはそれ以外に狩猟の事故の保険だとか、HIVの保険など全部一手にやっている機関でFGという機関がありまして、その中の1つの部署が犯罪被害をやっているんです。そういう仕組みになっています。性格はですから所管庁は財政金融担当省か何かなんですけれども、民間団体である。法務省に行って聞いたら全然分からないんです。全然知らないんです。
○ 椎橋座長営利は目的としているのですか。
○ 小木曽教授営利目的ではないです。
○ 岩村構成員フランスの場合は社会保障という、日本で言うと基本的には社会保険に当たるものと考えた方がいいんですが、社会保障もフランスは国の直営ではないんです。社会保障金庫という医療と年金と家族手当ということでそれぞれ別ですが、国の組織ではない。やはり全国組織のところはいわゆる公法人という形をとっていて、国家とは切れて、勿論監督は及びますけれども、国とは別人格の機関がやっていますし、更に第一線の事務のところになると、これは法律上は民間の法人となっているので、昔からフランスはどうもそういう公法的なサービスというものを直営ではなく、独立の法人をつくってそこにやらせるというのをよくやっているようで、公役務というふうに行政法の先生たちなんかはよく言っていますが、それに該当するものだろうと思います。
○ 松村構成員もう一つ、ここにありますけれども、犯罪被害者に対して損害賠償の回収支援サービスというのは、具体的にどういうものをやっているのですか。
○ 小木曽教授これは犯罪被害に例えば遭います。重傷害とか軽傷害とか国家補償の対象になるものについては、補償の請求ができるわけです。それでカバーされない犯罪があります。それについては裁判所に民事訴訟なり刑事裁判の附帯私訴なりを起こして、その裁判所がかくかくしかじかという、例えば900ユーロという損害賠償の支払いを命じます。これは日本でそういう債務名義を得たらば、あとは執行に行くわけですけれども、執行に行っても払ってくれないというので、その場合に申立てをしますと900ユーロをここが先に払ってくるという整理です。
○ 松村構成員 ありがとうございました。
○ 中曽根構成員 求償のことなんですけれども、加害者とFGTIが支払い可能な金額について話し合うとなっていますが、別にFGTIは弁護士さんがいる等、その組織の中にどういうメンバーがいるのか、お分かりですか。
○ 小木曽教授恐らく法的なトレーニングを受けた人もいると思いますし、必要があれば弁護士にも頼むんだろうと思いますけれども、一般の債権者と同じ地位になるわけです。相手のところに行って払ってくれ、はい、分かりましたということになればそれでいいし、でない場合は手間暇かかるんでしょうけれども、最終的には訴訟をやってそこから幾らという民事の関係に移行することもあるだろうと思われます。そこに行くまでの間にどういう資格を持った人がというと、これはいろいろだろうと思います。
○ 中曽根構成員分かりました。ありがとうございます。
○ 椎橋座長ありがとうございました。
それでは、続いてドイツに移りたいと思います。ドイツの御報告について御質問、御感想などがありましたらお願いいたします。
○ 瀬川構成員 年金というところがドイツでの一番大きな特徴だと思うんですが、最後の方に複雑過ぎる手続ということをおっしゃったわけですけれども、これ以外に本質的な問題というのは出ていないのかということです。さらに運用上の問題も含めて大きな問題点の指摘はないのでしょうか。
ドイツはほかの分野も複雑な非常に込み入った制度が多いので、もっと本質的なというか、運用上の問題も含めて何か指摘がないのかということです。
○ 滝沢准教授なかなか難しい御質問と思いますが、連邦労働社会省のところでは先ほど申し上げましたように、これはドイツが誇るべき素晴らしい制度だということを、年金制度をとってずっと被害者が死亡までということでよい制度だと言っていましたが、ラインラント地方連合のところでは実際、申請の作業をして判断をするところなんですけれども、ここのところでは先ほど申し上げましたように、手続が複雑というふうに言っていたのですが、その理由まではよく分からないのですけれども、私が調べていて思ったことというのは、戦争の犠牲者に対する法律の規定を準用していくことになりますので、そこの問題と、社会法という社会保障に関する法律がありまして、それとの関係で支給されるものというのが、給付がいろいろ分かれていたりするものが多分あるのではないかという感じがします。答えになっているかどうか分からないのですが。
○ 瀬川構成員それは不公正な運用があるということにつながりますか。
○ 滝沢准教授不公正な運用ということではないかと思います。
○ 瀬川構成員本当に被害が重大な人に、より大きな補償ができているはずだと思うんですけれども、そうではないケースもあり得るという意味でしょうか。
○ 滝沢准教授そこまでの話は出てきませんでした。ただ、申請をした場合には法文上の要件を満たしている場合には、必ず給付をすることになっている。
○ 瀬川構成員そこは非常に単純ですね。
○ 滝沢准教授はい。そういう説明でした。3か所行っても、どこでも同じ説明を受けましたので、そこは多分、正しいのではないかと思います。
○ 椎橋座長ほかにいかがでしょうか。
○ 番構成員基礎年金支給までは平均9か月かかって、 時間がかかるということが問題であるという指摘があるということですが、年金以外の被害者補償に関する治療費等については、割と速やかに補償されるシステムができていて、被害者の方は余り問題を感じていないのでしょうか。
○ 滝沢准教授調整年金と職業損失補償の場合については、まずリハビリを受けてもらいまして、それで障害の程度が軽くなる場合がありますので、それに基づいて至急、給付を判断していくことがありますが、説明を受けたところでは、番先生の今の御質問についてまでは聞けなかったというのが実情でございます。
○ 黒澤構成員 求償と立替払いの関係、6ページなんですけれども、自動的に損害賠償請求権を犯罪被害者が国に譲渡し、行政が犯人に求償することになる。被害者が特に行うべきことはなく、自動的に求償権が移る。取立ての費用対効果は別にしまして、自動的に移ってしまう。したがって、この7番の立替払い制度もないという理解でよろしいのかどうか、いかがでしょうか。
○ 滝沢准教授求償の問題と立替払いは別個の問題だろうと思われます。
○ 黒澤構成員 理念としてはそうかもしれませんが、そうすると逆に言うと立替払い制度も議論がなされたという経緯はドイツにおいてもあるのでしょうか。
○ 滝沢准教授それはないのではないかと思われます。
○ 黒澤構成員特段の契約をすることもなく、自動的に行政の方に権利が譲渡されてしまうわけですね。
○ 滝沢准教授そういう理念的というか、そういうような形です。
○ 黒澤構成員特にコストパフォーマンスが悪いということで、これをやめようという議論もないの ですか。
○ 滝沢准教授連邦労働社会省では、そのような議論は余り出てこなかったんですが、ラインラント地方連合のところでは実際実務を担当している機関ですので、こういう場合の求償の話に触れますと、余り積極的ではないという印象を受けましたが、廃止をしようというところまでは行ってはいないような感じがしました。
○ 椎橋座長よろしいでしょうか。どうぞ。
○ 岩村構成員単なるコメントですが、私の記憶が正しいかどうか疑問なんですけれども、ドイツの場合は労災保険も、実は障害の場合についてはリハビリテーションについて非常に重視していまして、今日の御報告を聞いていて調整年金と職業損害調整についてはリハビリをまずやりなさいというところは、多分ドイツの独特なところだろうと思って伺っておりました。
○ 椎橋座長 ほかにございますか。時間の関係がありますので、次に移らせていただきたいと思います。
韓国について、いかがでしょうか。先ほど触れておられましたけれども、財源の1つとしての罰金がありますが、罰金の部分を法律上4%以上としているので引き上げることはできるのでしょうが、更に運用で上げていこうという動きはあるんでしょうか。
○ 太田教授 一応これまでの予算をベースに最初は試算をして、たしか法案の段階では5%以上になっていて、最終的に4%以上になったようなんですが、従来の試算では4%以上あればよくて、実際にスタートのときに4%に大統領令の方ではしたんだけれども、韓国では被害者支援がどんどん広がってきているので、特に他省庁の施策の部分までカバーしている関係で不足している部分があるので、近い将来的には拡大をしたいんだけれども、財政当局の方との折衝が、要するに国の方に入る罰金の部分が少なくなってしまうので、そこら辺のせめぎ合いがあるということでございました。
○ 黒澤構成員 韓国においては被害者の権利が憲法上、明文で規定されたわけなんですけれども、先ほど支給額は必ずしも魅力あるとは言えない。しかし、さまざまな経済的な支援策がある。それは憲法に規定されたのはごく最近かもしれませんが、憲法で条文化されたということはいろんな面でいい影響を各方面に与えていると理解してよろしいでしょうか。
○ 太田教授 はい、そのとおりだと思います。ただ、韓国は憲法に被害者救助権という権利を規定したのは1987年、現行憲法の制定のときなので、かなり以前の段階からあります。なぜこの段階でこういった被害者の権利規定が入ったのかということに関して随分調べたんですが、なかなか立法資料がなくて、ただ、向こうのいろんな実務家とか研究者なんかの話をすると、幾つかの要素があるということではございます。
例えば1985年の国連の被害者人権宣言であるとか、韓国が民主化宣言をした後の憲法が1987年大韓民国憲法ですので、そういういわゆる民主化の過程でいろんな犠牲が出たということへの配慮もあったのではないかということも言われています。
その結果、1987年、既にこの被害者救助権と法定陳述権という2つの憲法上の被害者の権利として規定されているわけでありますけれども、この被害者救助権が憲法で規定された、それに基づいてできたのが現在の被害者救助制度ですので、まさに憲法上の被害者救助権を実現するものとして、この法制度が、少し時間はかかったんですけれども、できておりますから、まさにこの憲法上の権利規定ができたというのは非常に韓国にとっては大きい。
ただ、生存権の問題とも同じかもしれませんけれども、具体的に幾ら支給するのがいいのかというのは具体的な法律レベルの話ですから、韓国では最初は少し小さくつくって大きく育ててきている。今回2010年の改正でかなり額としても引き上げたということで、額から見ると確かに日本よりもかなり低額です。韓国のいろいろ物価情勢とか平均賃金とか日本とかなり状況が違いますから、余り金額だけで比較するのもどうかと思いますけれども、まさに被害者の権利規定ができたのは救助制度もしくは支援制度を促進する大きなきっかけになっていると考えます。
○ 黒澤構成員ありがとうございます。
○ 椎橋座長 ほかにはいかがでしょうか。
5つの国の実態調査について御報告をいただいて質疑応答してきたわけですけれども、今までの議論を通してここを聞き忘れたとか、あるいは今後の検討にする御提案等がございましたらお聞きしたいと思います。いかがでしょうか。よろしいですか。
それでは、どうもありがとうございました。特に5か国を調査してきていただきました4人の先生方には、大変ありがとうございました。今日の議論の中でいただいた御意見等を踏まえまして、更に検討を進めていきたいと思います。
一応これで本日の議論は終わりまして、最後に次回の検討会の開催について事務局より説明をお願いいたします。
○ 事務局(内閣府犯罪被害者等施策推進室参事官)次回につきまして御説明申し上げます。
配付資料の中にも入っておりますので、ご覧いただきたいと思うのですが、第7回の検討会につきましては、平成24年7月17日火曜日の午後2時半から4時半と考えてございますが、また30分程度延長するかもしれないというのも含んでおります。御了承ください。
議事内容といたしましては、とりあえず警察庁さんと犯罪被害者救援基金の方から、以前御説明をいただいていたものに御質問があって、その補充の御説明をいただくというのがずっとペンディングで来ていたと理解をしてございますので、そこの部分の説明部分をとりあえず予定しております。
その他と書いたのですが、1年以上この検討会を続けてきて、引き続き何をどう検討していくのかというのをそろそろ方向性をある程度決めていかないと、今後どういった調査が更に必要になっていくのかとか、被害者に対するアンケート調査などという話も出ておったかと思うのですが、具体的に何をアンケート、質問事項として聴取したらよろしいのかという点も、これは3年でまとめるという検討会でございますので、ある程度期限が限られてきた中で、今後の方向性について検討する必要があるのかなと思っているところでございます。
今まで1年間いろいろなヒアリングでありますとか、制度についての御検討いただいたものを踏まえまして、今後更にどういうふうな形で発展していったらいいのかというような御意見をとりあえず事務局の方にお寄せいただいて、こちらの方からもそれをある程度、集約できるものは集約し、あるいはまだそこまで至っていないので、こんなところの調査が必要なのではないかというのも含めまして御意見賜れば、それをたたき台にして第7回のところでご覧いただいて、今後の方向性になどにつきましても御議論いただければと思っております。
あと、この第7回というのとはまた違うんですが、本日お配りしました外国調査の部分につきまして一覧表も含めまして、今後、全体報告書という形にまとめさせていただきます。各調査に御協力いただきました先生方とは、また内容的には詰めさせていただきますが、関係省庁さんにおかれましても御懸念事項がある場合、あるいはこういう部分についてはこういう含め方があるのではないかという御意見もあろうかと思いますので、もしこの場でもし何か御意見があるようでしたら、あらかじめ言っておいていただければと存じます。
○ 椎橋座長 いかがでしょうか。ただいま第7回検討会に向けて事務局から説明がございましたけれども、本日の議論を踏まえまして、この検討会の議論の進むべき方向等についてさらなる御意見がございましたら、是非事務局へお寄せいただきたいと思います。どうぞよろしくお願いしたいと思います。
今後、第7回目以降の準備のために有識者、省庁の構成員の皆様には、引き続き御協力いただきますようにお願いしたいと思います。
それでは、第6回の検討会をこれで終わりたいと思います。どうもありがとうございました。

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