-

第4回「犯罪被害給付制度の拡充及び新たな補償制度の創設に関する検討会」
議事録

○ 事務局(内閣府犯罪被害者等施策推進室参事官)
前回に引き続きまして、冨田座長が御欠席となっておりますので、本日の進行は瀬川座長代理にお願いすることとしております。
なお、本日は、諸外国における犯罪被害者等に対する経済的支援制度等についてレクチャーをいただく有識者の方々においでいただいております。今後、先生方には海外調査に使用するモデルケースの作成など、海外調査に御協力いただく予定でございまして、被害者の方の実情を把握しておいていただく必要もありますので、本日の検討会の冒頭から御出席をいただいております。
それでは、瀬川座長代理、よろしくお願いいたします。
○ 瀬川座長代理本日は、第4回の検討会ということでございますが、議事を進行させていただきます。
どうぞよろしくお願いいたします。
まず、本日の議事でございますけれども、事務局から御説明をいただきます。
よろしくお願いします。
○ 事務局(内閣府犯罪被害者等施策推進室参事官)それでは、議事につきまして御説明いたします。
配付資料の議事次第2から始まっておりまして、経済的状況に関するヒアリングということで、鈴木氏(仮名)に今日お話いただくこととなっております。
3番目、諸外国における犯罪被害者等に対する経済的支援制度等ということで、本日はイギリス、フランス、韓国におけるそれぞれの制度につきましてお話をいただくことになっております。
4番目、海外調査につきまして、これは主としてモデルケースについてですが、事務局から御説明いたしたいと思います。
お時間がありましたら、自由討議ということであります。
その他、第5回検討会の日程につきまして最後に御説明をいたしまして閉会という次第となっております。
以上です。
○ 瀬川座長代理それでは、議題2「犯罪被害者等の経済的状況に関するヒアリング」に入りたいと思います。

(鈴木氏、付添人、高橋弁護士入室)

○ 瀬川座長代理前回、第3回検討会におきまして犯罪被害者等の経済状況に関する現状把握の方法について御検討いただきました。その際に、犯罪被害者等の経済的状況に関する現状を把握するため、犯罪被害者等からのヒアリングを実施することにしております。
本日は、松村構成員よりご紹介いただきました重篤な後遺障害が残られた傷害事件被害者である鈴木氏からお話しをいただきたいと思います。
まず、鈴木氏の御紹介でございますが、平成20年5月18日、見知らぬ男らによって殴られ、左半身麻痺及び重篤な高次脳機能障害を残されました。そのため、外へ出るには介助が必要となっておられます。
民事裁判を起こされ、約1億6,000万円の賠償を認める勝訴判決となりましたが、加害者からは1円の支払いもないという状況とのことでございます。
犯罪被害者等給付金でございますが、これは419万円支給があったとのことですが、後遺障害により、車いすの生活を強いられ、仕事は全くできない状況で、収入はないとのことでございます。現在は御実家での生活をされているということでございます。
鈴木氏は、左半身麻痺及び重篤な高次脳機能障害であることから、本日のヒアリングに際しまして、必要に応じて全国犯罪被害者の会(あすの会)副代表幹事の高橋弁護士が代読及び質問への回答などを補助されると伺っております。
また、本日お話いただく内容についてですけれども、個人情報との関係がございます。もう少し詳しく言いますと、行政機関の保有する情報の公開に関する法律第5条各号に掲げる情報が含まれる場合には、本年3月25日付の犯罪被害者等施策推進会議決定、「『犯罪被害給付制度の拡充及び新たな補償制度の創設に関する検討会』及び『犯罪被害者等に対する心理療法の費用の公費負担に関する検討会』の開催について」8に基づきまして議事録から削除する、あるいは概要(サマリー)としてまとめることなどの作業を行った上で公表するという扱いにしたいと思います。
よろしいでしょうか。
それでは、鈴木氏、どうぞよろしくお願いいたします。
○ 代理人高橋正人弁護士それでは、高橋の方から代読させていただきます。
その前に1点お願いがあります。
ここに鈴木氏体験談とありまして、実名が書かれてあります。これから読み上げます内容に関しましては、ここの場だけに限らず、皆さん、いろいろな方に広めていただきたい。こういう方がいらっしゃるということを広めていただきたいと思いますから、内容に関しては全く公開、オープンであります。ただ、名前だけは出さないでいただきたい。
なぜかと申しますと、来年の春、加害者が出所してくる予定であります。そして、どうもお礼参りを受ける具体的な危険があるということでありますので、名前だけは出さないでいただきたい。内容は広く社会に広めていただいて構わない。それを御了解いただきたいと思います。
まず、事件の概要からお話したいと思います。
私は、兵庫県で電気工事やケーブル工事を行う会社を経営しておりましたが、平成20年、自分の会社の従業員と愛知県に出張していたとき、事件の被害に遭いました。
私は、翌朝の朝食を買うために、従業員が運転する車の助手席に乗り、コンビニに向かったのですが、コンビニに到達し、私たちが駐車場に入ろうとしたところ、駐車場から出ようとした若者グループの車と進路が一緒になり、鉢合わせになって険悪な雰囲気になってしまいました。私は、運転席の従業員をなだめて車を降り、興奮する若者グループをなだめていたところ、その中の1人に殴られて転倒し、後頭部を地面に打ち付けて、意識不明のまま病院に運ばれました。病院では、脳挫傷及び急性硬膜下血腫と診断され、緊急手術を受け、20日間意識が戻りませんでした。幸い、命だけは取り留めましたが、後に述べますとおり、重い後遺症が残ってしまいました。
刑事裁判で加害者は、自分は暴行を加えていない。その場にいただれかが暴行したのだと言って容疑を否認しました。勿論私に対する謝罪は一言もありませんでした。加害者には私選の弁護人が3人も付いていました。しかし、判決では加害者が暴行した事実が認められ、懲役3年6か月の実刑判決が下されました。
ただ、この判決で一番悔しかったのは、私の落ち度として、加害者に対して言いがかりをつけて頭突きをしたという認定がされてしまったことでした。これは、加害者の言い分に従ったものですが、私自身、事件で残った後遺症のせいで事件当時の記憶がなく、きちんと反論することができませんでした。事件当時現場にいた私の会社の従業員は、私が加害者に対して言いがかりをつけて頭突きをしたなどということはなかったと言ってくれましたが、事件直後、彼は1人で仕事をしなくてはならなくなったことや、私のことが心配なことで頭がいっぱいで、警察に言われるがまま返事をしてしまい、それが裁判の証拠に使われてしまったようです。加害者の言い分が通ってしまった形になり、本当に悔しいです。
私が鈴木氏から聞いた限りでは、被害者に対する検察官からの事情聴取は一切なかったそうです。
次に、私の後遺症についてですが、まず、左半身麻痺の後遺症が残り、つえがないと歩くことができません。当たり前だと思っていた生活ができなくなりました。家事も1人でやるのはとても難しいです。近所の人がときどき手伝ってくれますが、やはり自分でできるように頑張りたいという気持ちを持っています。
左半身麻痺以上に辛いのは、高次脳機能障害という後遺症が残ったことです。この後遺症によって知的な能力が低くなってしまい、人の話を理解して判断することが難しくなってしまいました。記憶力も弱くなりました。また、めまい、ふらつき、耳鳴りがひどく、家に1人でいるときに失神して倒れることもあります。不安なので1人では外出できません。声も出にくくなりました。
後で少しお話をしていただくと思いますが、彼は非常に小さな声しか出すことができません。
それに、事件当時のことだけでなく、事件前のいろいろな記憶もあいまいになってしまいました。よい思い出の一部も消えていってしまっているのがとても悲しく、悔しいです。
性格まで変わってしまいました。以前は人に暴力を振るうことなんてなかったのですが、事件の後は感情の抑えがきかなくなって、暴力的な性格になってしまいました。それも高次脳機能障害の症状の1つだそうです。家族にも手を出すことがあり、そんな自分になってしまい、辛いです。
事件前は、内縁の妻と一緒に生活をしていたのですが、今は別居しています。後遺症のせいで仕事ができなくなり、私の収入がゼロになったこと。私が妻に対して暴力を振るうようになったこと、妻は同じ時期に自分の母の介護をしなくてはならなくなったことでノイローゼ気味になったことが原因です。私は、今は実家に戻って母と2人で暮らしていますが、母にさえ暴力を振るってしまうことがあります。
病院の先生からは、てんかんやふらつきを抑える薬、感情を抑える薬をもらっているのですが、飲むとぼーっとしてしまい、何も気力がわかなくなります。ただ、飲まないわけにはいきません。
先生に「治るのですか」と聞いても、先生はその質問には何も答えてくれず、ただ、「焦ってはだめ」としか答えてもらえず苦しいです。辛くて仕方がないときは、命が助かっただけでもよかったと考えるようにしています。
事件によって家族がばらばらになり、人生がめちゃくちゃになりました。以前のように家族が一緒に安心して暮らせるようになりたいです。
次に、経済的な部分についてお話します。
まず、収入ですが、事件前、私は電気工事、ケーブルの配線工事などを行う会社を経営していました。個人経営の会社なので、収入は月によって変動していましたが、順調に仕事を受注していたときは、月100万円ぐらいの手取りは残っていました。しかし、事件の日を境に、左半身が麻痺した上に、仕事をする上で必要な知的能力が失われてしまったので、仕事をすることが全くできなくなって、収入はゼロになってしまいました。
当面の生活は、犯給法による給付金419万円でつないでいます。ただし、この支給金の金額は刑事裁判で加害者の言い分が通って、私に落ち度があったことになってしまったので、3分の1に減らされてしまった金額です。
この金額につきましては、その後いろいろとお話を伺ったのですが、今、419万円は約200万円ほどの治療費、更には自宅をバリアフリーにしたり、そういったものでもう419万円は一銭も残っていないそうです。
早く生活保護の申請をしたいのですが、預金額が10万円以上あると生活保護の申請ができないと言われ、いまだ申請できないでいます。
これも今、年老いたお母さんと住んでいらっしゃるのですが、お母さんが老人ホームに入るということで、どうしても最初の一時金を出さないといけない。その一時金が銀行にプールされているということで、結局生活保護の申請は通らなかったそうです。そのため、現在、鈴木氏は普通の銀行からも借り入れをすることができないため、いわゆるノンバンク、かなりたちの悪いところだと聞いていますが、そこからわずかなお金を借りて生活をしているそうです。
将来、預金がなくなったら生活保護を受けられるのかもしれませんが、それでも給付額は月12~13万円と聞いています。母と住んでいる家の家賃は月10万円ですし、これからお話する医療費などを考えると、とても生活できる金額ではありません。
被害に遭ったことでかかる医療関係費ですが、事件の日に病院に搬送されて、事件現場近くの愛知県の病院に1か月ぐらい入院しました。その後、兵庫の病院に転院して3か月入院しました。大変な金額になっていると思いますが、手術、入院費用は姉が立て替えてくれました。また、愛知や兵庫の病院まで姉と内縁の妻が交代で付き添いに来てくれていましたが、その交通費はもちろん自費です。
入院費を姉が立て替えてくれたということですが、先ほどいただいた419万円から立て替えてもらったお金をお姉さんに返していますから、結局、御本人が治療費を払ったことになっています。
退院してからは、自宅から診療科目ごとに幾つかの病院に通院するようになりました。今は2か所の病院に2週間に1回ぐらいのペースで通っており、相当の治療代、薬代、交通費がかかります。後遺症でだれかの介助なしには外出ができないので、通院するのにも付き添いが必要で、付き添いの費用もかかります。京都に暮らしている姉は、病院の付き添いなどのために私の住む兵庫まで来てくれますが、その交通費は姉の自己負担です。
本当はもっと病院に通わなくてはいけないのですが、経済的な理由から、思い通りには通院できないでいます。例えば耳鼻科の先生からは、毎日通うように言われているのですが、その都度かかる治療代、薬代、交通費を考えるととても通えず、あきらめました。ですから、左耳の耳鳴りとふらつきがひどくて苦しいです。
また、高次脳機能障害や左半身麻痺の症状を改善するためにリハビリに通いたいのですが、リハビリ費用は1回4,000円かかるので、とても私に払える金額ではなく、リハビリに通うことは断念しました。
薬は漢方がよいという話を聞き、試したこともあるのですが、漢方はもともと保険がきかないので、それもあきらめました。
医療費のほかには、例えば自宅のトイレを和式から洋式に替えたり、部屋の段差を少なくしたり、手すりをつけたりしました。市から補助金が出ましたが、勿論全額ではありません。また、自分で食事をつくれないので、スーパーなどででき合いのものを買うしかなく、食費がかかります。
こういった私の被害の賠償を求め、加害者に対して民事裁判を起こしました。加害者は1度も出席せず、欠席のまま1億6,000万円を認める判決が下りましたが、1円も払われていません。
世の中の人は、1億円の判決が出れば、1億円が当然支払われていると思っている人も多いようですが、加害者が払わなければただの紙切れにしかならないことをわかってほしいと思います。
加害者は今、服役していますが、今に至るまで一切謝罪もないまま、来年、社会復帰してくる予定です。判決で損害賠償を請求できる権利を得ましたが、加害者に請求して逆に逆恨みをされ、また危害を加えられないか心配です。
ですので、犯罪被害に遭い、国が被害者と認定した者が起こした民事裁判の判決の損害額全額を加害者に代わり国が一旦立て替えて支払ってくれる制度を実現してほしいと深く願います。
また、治療やリハビリの必要があるのに、現状ではそれに必要なお金がありませんし、病院まで繁雑に付き合ってくれる人もいません。外出もしたいのですが、1人では外出できません。このようなときに、医療やリハビリ、付き添い介護などを無償で提供してくれる制度があればとても助かります。是非そのような制度も実現してほしいと思っています。
以上です。
○ 瀬川座長代理ありがとうございました。
せっかくの機会でございますので、構成員の方々あるいは出席の先生方から御質問がございましたらよろしくお願い申し上げます。
番構成員、どうぞ。
○ 番構成員伺いたいと思います。
高橋先生は犯給法のことをよく御存じだと思うのですが、鈴木氏の場合は改正された後の犯給法が適用されたということですか。
○ 代理人高橋正人弁護士いえ、改正される直前です。
○ 番構成員直前ですか。例えばもしこれは改正法であれば金額的にはもう少し出たということになりますか。
○ 代理人高橋正人弁護士確かに年齢と収入を考えればもっと出たとは思います。
○ 番構成員ただ、今、お話になった入院費だとか家の改装費用などを出すと、その後の生活が安定するまでは全く見込めないということは同じということになりますか。
○ 代理人高橋正人弁護士それは全く変わらないと思います。改正された犯給法も結局、休業損害と併せて上限は120万円。ところが、鈴木氏にかかっている治療費は200万円をはるかに超えています。
ちょっと質問を超えるかもしれませんが、実際に現在どうやって生活をしているかというと、昔ある程度収入があった方ですから貯えがあるわけであります。ただ、その貯えを切り崩して生活をしていて、先ほど伺ったら、来年で大体底をつくそうです。もう来年はどこからも収入が入らないそうです。どうしていいか今、途方に暮れているとおっしゃっておりました。
○ 番構成員続けて伺いたいのですが、先ほど、被害者の落ち度と、非常に嫌な言葉で、私も大嫌いな言葉ですが、全く知らないうちにそのように認定されてしまって、3分の1が減額になったということですね。全体のうちの3分の1が減額になったということですか。
○ 代理人高橋正人弁護士3分の1になったそうです。
○ 番構成員そのような判決が出て、3分の1まで減ったということですか。
○ 代理人高橋正人弁護士判決ではなくて、公安委員会の審査会の決定で。
○ 番構成員ちょっとひどいですね。それも問題かなと思います。
これは私の意見で申し訳ありませんが、例えば亡くなった事件、意識がなくて入院されていて自分では反論できないような事件で、どちらかというと加害者側の言い分に沿って動機などが構成される場合には余りにも理不尽な結果になりますね。
○ 代理人高橋正人弁護士そうですね。犯給法の話とはちょっと違って法務省の話になってしまうのですが、私がこの話を聞いて一番腹を立てたのは、被害者から全然事情聴取をしていない。そして、一方的に裁判を開いて勝手にやってしまった。これが私は一番腹が立ちました。
○ 番構成員分かりました。ありがとうございます。
○ 瀬川座長代理ほかに。
川出構成員、どうぞ。
○ 川出構成員現在の障害給付金は最初にまとめて支払いがなされて、それで終わりということになっているのですが、先ほどのお話からすると、給付の在り方としては、例えば年金のようなかたちで、継続的に給付がなされる形のほうが、被害者の方にとっては望ましいとお考えでしょうか。
○ 代理人高橋正人弁護士年金と一言に言われても、まず、金額がよく分からない。だから、正直な気持ちを普通に言えば、今、年老いたお母さんと2人で住んでいますから、せめてちゃんとした生活が送れるだけの金額はいただければとおっしゃっておりました。
あと、一時金ということになった場合に、例えば損害の賠償ということで一時金にしてしまうと、これは当然、交通事故の場合との均衡を考えないといけないですから、そうなると将来もらうであろう利息をあらかじめ先取りをすることになるから、その分を、いわゆる中間利息を控除しなければいけなくなってくる。そうすると例えばあと60年間稼働能力があったとしても、実際には60倍するのではなくて、ライプニッツ係数でやると17倍しか掛けないです。掛け算としては。ですから、実際には一時金でもらうと3分の1以下になってしまいます。でも、年金という形であれば、必要な金額が毎月入ってきます。逆に言うと、嫌な話ですけれども、途中で早くお亡くなりになった場合には、国の負担はその分なくなるということではないでしょうか。
○ 瀬川座長代理いかがでしょうか。
どうぞ。
○ 警察庁長官官房給与厚生課犯罪被害者支援室長非常に辛いお話をお聞かせいただきまして誠にありがとうございました。
先ほど減額の額のお話が出ていらっしゃったんですけれども、もう1度ちゃんと調べさせていただきたいと思いますが、恐らく3分の1を減額して、3分の2をお支払いしたというケースではなかったのかなと思っておりまして、誤解があったら申し訳ありませんけれども、少し調べさせていただきたいと思います。
○ 瀬川座長代理どうぞ。
○ 番構成員非常に不当というか、理不尽だと思われる内容の点はともかくとして、意識不明で20日間も入院されていたということですから、恐らく申請したのは少し後になってからと思いますが、申請から犯給法で給付されるまでどのぐらいの期間があったと覚えていらっしゃいますか。
○ 代理人高橋正人弁護士事件が起きたのは、平成20年5月です。犯給法はたしか20年7月から施行されていると思うのですが、申請をしたのは、20年5月から1年たった21年の春です。それも警察から初めて言われて、こういう制度があるということを聞かされたそうです。そして最初に見せられたパンフレットが、平成20年7月に施行された後のパンフレットを見せられたそうです。それで、これだけ、何千万円入りますよと言われたそうですが、実際にもらった金額が419万円だったものですから、非常にびっくりして、結局後からお話を聞くと、犯罪日が施行日より前であるから前の法律が適用されるという説明を後から受けたそうです。
○ 松村構成員鈴木氏、今日は御苦労様です。
全体的なことかもしれませんけれども、今、鈴木氏が本当に切実に願っていることはどういうことか。ここに書いてあるようですけれども、それ以上にあるのではないかと思いますので、切実にこうしてほしいということがあれば教えていただきたいと思います。
○ 代理人高橋正人弁護士まず、一番求めているのは、加害者に対する損害賠償、判決が出ても1円も払われていない。それを国に立て替え払いをしてほしい。そして、国から加害者の方に後で請求してほしい。
そう思うのはなぜかということですが、もし本人が直接加害者に取り立てに行ったら、これは当然、お礼参りを受ける。また結局は同じ被害に遭ってしまう。これは非常に怖いと。ですから、国に立て替え払いをしてもらって、国から加害者の方に後で請求してほしい。こういう制度をつくってほしいとおっしゃっていました。
○ 瀬川座長代理太田室長、どうぞ。
○ 内閣府大臣官房審議官犯罪被害者等施策推進室長今日は本当に大変な状況の中でお話を伺うことができました。ありがとうございます。
今からお聞きすることは、私自身は大変聞きにくいことですが、実際の経済状況ということ、置かれている状況を把握するという意味であえて教えてほしいのですが、先ほどの資料の中で段差等いわゆるバリアフリー化のために市から補助金が一部出たということがありましたけれども、この事件に遭ったがゆえに何らかの公的な補助がほかにあったのかなかったのか。例えば医療費で言うと、高額医療費の返還等があったのかなかったのか。その辺の実態と、いわゆる民間の保険、そういうものに御加入なさっていたのか、されていなかったのか、その辺を手続的にもし加入されていたとして、非常に難しい問題があったのかなかったのか、そういう点を教えていただきたいのですが。
○ 代理人高橋正人弁護士まず、公的な支給ですが、先ほどの犯給法の419万円とバリアフリーにするために市からのわずかな補助金が出た以外は一切何も出ていません。
次に、民間の年金ですが、民間の保険会社との年金契約は結んでいません。
最後に保険適用については、健康保険の適用があったのですが、結局、その適用した結果として最終的に請求が来たのが200万円を超える金額だったということだそうです。
○ 内閣府大臣官房審議官犯罪被害者等施策推進室長ありがとうございました。
○ 瀬川座長代理よろしいでしょうか。
予定の時間が参りました。
○ 代理人高橋正人弁護士では、最後に一言本人から。
○ 鈴木氏今日はこのような機会を与えてくださりありがとうございます。
犯罪被害に遭い、肉体的、経済的に大きな損害を受け、医療と生活の面で大変困窮している人が日本じゅうにたくさんおります。皆さんの力でよりよい制度ができ、少しでも元の生活、普通の日々が送れるようになるよう、お力をお貸しください。お願いします。
○ 瀬川座長代理鈴木氏、本当にありがとうございました。
貴重なお話を聞けましたので、今後の議論に十分生かしたいと思います。本当に今日はありがとうございました。
○ 鈴木氏ありがとうございます。

(鈴木氏、付添人退席)

○ 瀬川座長代理それでは、続きまして、議題3「諸外国における犯罪被害者等に対する経済的支援制度等」でございます。
前回、ドイツにおいての議論につきましてヒアリングを実施しましたけれども、本日は、イギリス、フランス、韓国についての説明をいただきたいと思います。
まず初めに、イギリスにつきまして、同志社大学大学院の奥村教授にお願いしたいと存じます。
よろしくお願いいたします。
○ 奥村教授ただいま御紹介をいただきました同志社の奥村でございます。
ちょっとのどを痛めていまして、大変お聞き取りにくいかと思います。御無礼申し上げますが、よろしくお願いいたします。
本日は、検討会にお招きいただきましてありがとうございます。
外国の制度を正確に理解し、正確に御紹介するということは至難の業ではありますけれども、また、今日は社会保障制度との絡みということでありまして、私は全くの素人ですので、よく分かりませんので、もし間違いがあればお許し願いたいと思います。
レジュメに沿いまして御紹介申し上げたいと思います。
イギリスの犯罪被害者等への経済的支援制度については、もうかなり紹介されておりまして、新しいことはほとんどないのですけれども、新しいことと言えば、1のところに書いていますが、海外テロ被害補償制度が立法化されたというところであります。
レジュメの後ろの方に紹介しておりますが、2010年にできまして、Crime and Security Actという法律です。海外でのテロ被害に対する補償ということでできました。イギリス国内ですと犯罪被害補償制度の対象になるわけですけれども、海外は対象外だったので、ここの3つ目に書いています、英国赤十字社海外テロ被害者救援基金というのが政府の寄附もあって発足しているわけですけれども、公的給付を求める、補償を求める立法化の声があって、基本的には現行法の犯罪被害補償制度と同じ趣旨で海外で起こったテロで被害に遭った人にも公的補償をすべきだということで立法されました。2010年1月18日以降の被害になるんですが。
その補償制度の名称ですけれども、海外テロ被害補償制度としてVictims of Overseas Terrorism Compensation Schemeということですけれども、これがネットで検索してもヒットしてこないのです。CICA(犯罪被害補償審査会)が担当するであろうということだったのですが、そのホームページにもこのスキームが出てきません。私の検索ミスかもしれませんけれども、まだどこに出てくるのかが詳しくは分からない状態でございます。
今日のお話は、もう既に紹介されております犯罪被害補償制度について確認という意味でお話を申し上げることになります。
犯罪被害補償制度については、公的制度で、イギリスは御存じのように、1964年8月1日から、その半年前にニュージーランドができていますけれども、もともとイギリスが制定しようという動きでできたものであります。そういう長い伝統を持っているわけですが、現在は2008年のスキームになっております。それを中心にちょっと御紹介申し上げたいと思います。
それまでグレート・ブリテンということで、イングランド、ウェールズ、スコットランドが適用範囲でありますけれども、ロンドンとグラスゴーに本部がありましたが、現在、グラスゴーの方に統括されていまして、本部がロンドンにはないみたいであります。責任官庁もかつては内務省だったわけですけれども、ごらんのように2007年、政府の機構の改革がありまして、内務省と法務省に分かれて、被害者問題については法務省が担当することになっています。
スコットランド政府からの業務委託を受けているということで、法務省責任官庁で、そしてそれの下にある独立団体である犯罪被害補償審査会が運営をしているというものでございます。
北アイルランドは別個の被害補償制度があるということであります。
人的適用範囲ですけれども、英国市民である必要はない。国籍を問わないという形であります。一時滞在者も含む可能性もあるということで、それを排除する理由は、必ずしもイギリスに住んでいる必要はないということのようであります。
根拠法令ですけれども、95年に犯罪被害補償法という法律ができて、それに基づいて行われているのですけれども、そこに2004年、DV、犯罪及び被害者法という法律を挙げていますが、これは後で若干触れますが、CICAが加害者から求償するということが問題になりまして、求償権が2004年のDV、犯罪及び被害者法の57条に規定されまして、1995年の犯罪被害者法の中に挿入するという形で立法化されたものであります。海外テロについては2010年、犯罪及び安全法という法律であります。
この理念につきましては、考え方、学説はいろいろありまして、国が犯罪を防止できなかった責任があるとかという学説もあるのですけれども、内務省の説明としては、一貫としまして、国は、市民が他人の暴力行為によって被った障害に対して責任はないけれども、暴力事犯の、これは先ほど番先生が嫌いな言葉だとおっしゃったのですが、落ち度のないと、ブレームレスという言葉を使っておりますけれども、被害者に対して、一般社会を代表して裁定した補償額の給付によって社会の連帯感と同情心を実際に表明することにあると。もしこれは国に責任があるとなってくると、財産犯を除外するわけにいかないという配慮がありまして、入れていないというところであります。
財源は、国の一般財源、一般会計から出しているということです。2010年度では、そこにあります6万数千件に対して約2億8,100万ポンド。今レートが125円ぐらいになっておりますので、日本円にして356億円ぐらいを支払っているということであります。これは日本と比べるとかなり多いんです。日本の場合は、平成21年度で裁定数が656件で裁定金額の総額が約12億7,000万円。単純比較は数が違うのでできないということであります。
2008年スキームの現行だと申し上げましたけれども、これの変更点については、細かいことは一々申し上げませんが、不服申し立て期間について、従来はCICAP(Criminal Injuries Compensation Appeals Panel)というのがありましたけれども、それがFirst-tier Tribunalという、法務省の中のいろいろな不服申し立て機関があるんですけれども、その中のInjuries Compensationについて、First-tier Tribunalを担当する部署ができました。不服申し立て機関が変わったということとか、Tariff Scheme(障害等級表)の変更とか、そういったものがあるということであります。
申請者は、64年8月1日以降に犯罪被害の障害を受けた者あるいは同日以降に犯罪被害を受けた者が死亡した場合の有資格の申請者ということになっていまして、事件発生後、申請期限は2年以内という、これは日本も一応、2年以内ということで同じですが、それが困難な場合には、相当な場合にはさかのぼって申請できるということであります。
犯罪の被害について、日本の場合は、犯罪被害補償に特化していますけれども、イギリスの場合は、いわゆる暴力犯罪、この定義もはっきりとはしていないのですが、かなりCICAの裁量に任されている部分があるようでありますが、その暴力犯罪の被害と、汽車転覆等の罪ですけれども、これは被害者が事故に遭って亡くなったあるいは重傷害を目撃した鉄道従業者の心身に重大な影響を及ぼしたときに、これも補償の対象にするというのも入っております。犯人の逮捕とか、検挙に協力したときに受けた障害についても含めております。したがって、必ずしも犯罪の被害だけには限らない。犯罪の被害に関連した2つのものが入っているということです。2と3はほとんどそういう事例がないのでしょうから、基本的には1の暴力犯罪の被害補償に大きな力が出ていると思います。
欠格事由ですけれども、これは後でも出てきますが、いろいろな補償について現行制度、この被害補償制度以外に社会保障制度などに基づいて申請している場合がありますので、二重申請はだめだということであります。社会保障制度などがあれば、それが優先されて適用すべきだと、申請すべきだということで、手続が終わるまで被害補償制度は動かないということになっております。
裁定額の減額・不支給ということですけれども、警察への通報を怠ったとか、協力しなかったとか、審査会に協力しなかったなどということと、申請者の行動が満額の裁定を不適当とする場合、もしくは申請者に前科があることによって、満額の裁定、それ自体が不適当となる場合があると。そういう基準は、前回についてはペナルティ・ポイントというのがありまして、点数によって減額が10%から100%までありまして、その中で調整して、満額とも不支給か減額するということになっております。
ポイント制度というのは、先ほども申し上げましたが、なぜそんなことをしているのかというと、被害補償制度というのは、無辜の被害者に対するものだからということで、被害者側にブレームレスの被害者でないといけないということがペナルティ・ポイントを科している理由であります。
家庭内暴力についてですけれども、攻撃者が被害者と同居している場合は裁定が行われないと。ただし、申請が出される前に攻撃者が訴追され、審査係が仮に不起訴の場合でも相当と見なした場合も含むんですが、もしくは被害者との同居をやめたときというのを除いておりまして、攻撃者が同居家族の中での家庭内暴力についても訴追されたり、同居をやめたときは対象にするということで、これは1979年10月1日の改正でありまして、それ以前はその場合でもだめだったということであります。
障害等級表に基づく裁定ということですけれども、その1つがメインのところでありまして、身体の障害ということで、そこに出ていますように、物理的な障害から性的虐待・性暴力、精神的障害、その精神的障害だけでは基本的には補償の対象外ですけれども、身体的障害があるのが原則ですが、ただし、被害者が身体障害を受ける相当のおそれがあったときとか、親密な関係にある者が暴力犯罪の被害に遭ったのを目撃したときに精神的障害を受けたとか、同意のない性犯罪の被害者であったときというところ。先ほど申し上げましたように列車等転覆の事故によって死傷結果を目撃したときなどは精神的に障害を負った、PTSDとかを負った場合は精神的障害だけでもいいということになっております。
障害の等級の程度ですけれども、1等級から25等級までありまして、それぞれのレベルによって、25までのレベルで金額が決まっていると。最低が1,000ポンドということで、具体的には、鼻の骨が折れた程度が1,000ポンド。25等級というのはかなり植物状態に近いような形の障害を受けたということで、脳の障害、高次脳機能障害とかなり厳しい状態の場合であります。
2008年スキームで若干障害等級の変更がありましたことは一々申し上げませんけれども、そこに掲げているように変更、増額をいたしたりしております。
イギリスの場合の特徴ですけれども、次の3のところに入りまして、障害等級で障害を受けた部位によって、障害の程度によって補償金の額が決まってくるわけですが、重傷害を受けて、所得があった人が犯罪被害において療養することによって所得を喪失あるいは就労能力を喪失してしまう場合が出てくるわけですけれども、それについて追加的な補償をすることになっております。重傷害を受けて28週は超えないといけない。28週までは、雇用主による法定疾病給与で支払われるからということですけれども、29週目からの休職期間、現場へ復帰するまでの間の所得または就労の喪失に対する補償がなされるということであります。
そのときに働いていなかった場合どうするのかという問題があるんですけれども、被害に遭ったときに雇用されていないが、障害の結果、逸失利益があると見なされる場合は、それも補償の対象にするということであります。自営業者もその中に当然、3年間の事業収入証明が必要ですけれども、収入が認められれば、28週を超えた、29週目からの一定の期間の休職、休業の間の補償がなされるということであります。
これは就労不能が犯罪被害の直接の結果であるということが必要でありますが。
逸失利益の請求ですけれども、実際には、将来どれぐらいの期間就労できないかとか、障害の影響が長期の就労能力にどのように出るのか。職歴はどうかとか、障害がなければ収入も得ていたであろう可能性。余命はどの程度あるのか。障害がなければ得ていたであろう年金と異なるレベルの年金を得ることになるのかどうかといういろいろな要素を考慮して逸失利益の計算をするということであります。
ただし、逸失利益補償ということですけれども、給付額の上限がありまして、申請時点における全国平均賃金の1.5倍が上限になっておりまして、たくさんお金をもうけている人でも、上限がここでストップするということであります。2010年2月現在では、そこに書かれている程度が平均賃金ということで、年にすると3万8,000ほどですので、日本円で大体477万円ぐらいということであります。それの1.5倍ということであります。
重傷害を受けた場合、先ほどの鈴木氏のお話にもありましたけれども、就労能力の喪失がある場合に、医療にかかる追加的補償として、特別な医療費などについて、バリアフリーにしたとかとおっしゃっていましたが、その経費について支払う制度があります。特別経費としての補償。これは障害を受けた日まで遡及されるということであります。
御案内のようにイギリスは、疾病の治療費は国民健康保険(NHS)により基本的に無料ですけれども、それを超えた患者負担分がありますが、それが補償されるということであります。
私的な治療を受けて、それが相当だと見なされた場合は、保険適用外だった場合はそれも補償の対象になる。
特別の装置費用、住宅改造費、食事の調理にかかるケア費用なども対象になるというところであります。
裁定額の調整ですけれども、社会保障制度の給付があるというのが、それが最初だと申し上げましたが、それがある場合はそれを優先するということですが、法定給付の二重支払いを避けるということが前提であります。社会保障制度というのは、ただ生活費に対する補助であって、被害補償は犯罪被害による苦痛の軽減に目的があるわけで、制度趣旨は異なると思われるわけですけれども、政府は公的給付の二重支払いはできないとして、これを減額調整の対象にしているということであります。ただし、減額調整の対象になるのは、障害等級表に基づくものではなくて、障害等級表に基づく補償額については減額調整はありませんので、その対象になるのは特別の所得喪失等の補償、特別医療費等の補償について調整の対象になるということであります。
そこに具体的な参考事例を挙げてありますので、そういう計算、実際はもっとややこしい計算をするところがあるんですけれども、一応、簡単なものとしてはこういう仕組みで計算して、控除するものとプラスするものと併せて給付裁定額を決めるということであります。
被害者が死亡した場合は遺族に対して給付がなされることになりますけれども、給付内容としては、葬儀費用。ただ、亡くなられた方に対しては、1人の場合には1万1,000ポンド、2名以上の場合は5,500ポンドとかなり低いんですが、もし生計依存関係があったという場合は、その家庭の収入を比較しまして、遺族が被害者から経済的に独立するまでの期間。
もし御主人が亡くなってしまいますと、その後、奥さんが専業主婦だった場合、通常、御主人が定年まで働けたとしてもらえる額の補償ということになってまいります。その場合も、先ほど申し上げたように、平均賃金の上限があるということであります。子どもに対しては、18歳になるまでの間の児童手当が出される。
いずれにしても、全部合わせて、障害等級表に基づく25万ポンドまでの補償と、こういった追加の補償を合わせまして、総額50万ポンド以内でおさめるということになっております。
裁定額の給付は一括払いということであります。
求償については、先ほど申し上げたように、2004年のDV犯罪及び被害者法の中にできて、それが95年の法の中に挿入されたということであります。
不服申し立てについては、先ほど申し上げましたように、CICAの裁定に対して再審査請求を出して、更にそれに不服申し立てができる。第1段階審査会へ出すことができるということでありまして、二重チェックができるということになっております。
ざっと見てきたわけですけれども、日英比較をしてみますと、対象となる犯罪というのは、基本的には類似しているなというところであります。そういう部分としては、犯罪被害の中に先ほど申し上げたように、列車転覆に対する鉄道従業者に対する補償とか、警察に協力した場合の補償というのは、日本の場合は、警察に捜査協力の場合は、警察官の職務に協力援助した者の災害給付に関する法律によって対処されているので、守備範囲が違うというところが若干ございますけれども、基本的には同じ対象の範囲ということであります。
制度趣旨も基本的には同じで、社会連帯共助というところであります。
財源は全く同じで一般会計ということです。
申請資格は基本的に同じですけれども、イギリスの場合は冒頭に申し上げましたように、一時滞在も可能性があるということであります。
申請期間は基本的に同じです。ただ、日本は犯罪があったときから7年とありますけれども、イギリスはそれはないということであります。
給付金の種類と相違は先ほど申し上げたように、追加の部分が出てくるということでありまして、それが異なるというところであります。
死亡した場合に葬儀費用などが出てくるところに違いがあるなということであります。
総括として、類似点がCICA、被害補償制度と犯給制度が類似点が多いわけですけれども、犯給制度ではなくて、被害補償制度にあるものは何かということですが、重傷害を受けて、所得喪失、就労能力の喪失の場合に、29週目から職場復帰までの期間の逸失利益の補償がなされる点があるということであります。生計依存関係にある場合は、最大退職年齢までの逸失利益の補償。ただし、先ほど申し上げた平均賃金の上限があるわけですけれども、イギリスの場合は社会保障として国民保険による労働不能給付がなされることになっておりまして、犯罪被害者のみを特別扱いしていませんので、そういう制度が背景にあるということも前提となっているということであります。特別経費として、特別装置費用、住宅改造費などのケア費用等の支給もなされるということであります。不服申し立て制度について二重のチェックがあるということでありまして、第三者機関による再審査が行われるということで、この辺りの違いについて検討の余地はあるのかなと思っています。
急ぎまして申し訳ございませんでしたけれども、以上です。
○ 瀬川座長代理ありがとうございました。
御質問がございましたら、どうぞ。
川出構成員。
○ 川出構成員どうもありがとうございました。
最後のところで、一般的に、働けなくなった場合に支払われる、労働不能給付という制度があるということだったのですが、この労働不能給付についても28週を超えた後も支払われるわけですね。
○ 奥村教授長期の労働不能給付と同じです。
○ 川出構成員その額というのは、犯罪被害者の場合と同じく平均賃金の1.5倍なのでしょうか。
○ 奥村教授社会保障制度のことでそこがちょっと分からないところがありまして、調べないと分からないんですが、長期労働不能給付、労不能給付がどの程度支給されているのか、給付されているのか調べてみたいと思っているんですが。
○ 川出構成員もう1点よろしいですか。就労能力の喪失による逸失利益の補償は、一括払いでなされるということだったのですが、今後およそ働くことができなくなってしまったことが明らかな場合は、最初の時点で支払われるとして、例えば1か月とか2か月休業した場合には、その後にまとめて請求するという形になるのでしょうか。
○ 奥村教授そうですね。職場現場復帰したときに、29週以降、現場復帰までの間の部分を。
○ 瀬川座長代理ほかはいかがでしょうか。
私の方から。
イギリスと日本との比較を最後にされて、類似点が多いと言われたのですけれども、そもそもイギリスをモデルに我が国もつくったと言っていいと思うのですが、2つ質問があるんです。
1つは、もう既に半世紀近くイギリスは実施したわけですけれども、その中でイギリスの補償制度について大きな変化があったのかないのか。今の感じではなさそうな感じもしますけれども、テロ以外について大きな変化があったのかどうか。
○ 奥村教授補償制度についてですね。これはもう既にございまして、もともとはこのイギリスの補償制度は1964年にできていましたときは、損害賠償型で、犯人の、加害者の損害賠償義務を肩代わりするという形だった。そういう性格の制度としてスタートしたということがありましたけれども、それで莫大な損害額が出てくるということで、これは財政的に難しいということから、制度、タリフスキームの方に変えていくという形になっていったわけです。
○ 瀬川座長代理今の制度と比較すると非常によく似通っているわけですね。理念という点でもよく似通っていると見ていいですか。
○ 奥村教授何とですか。
○ 瀬川座長代理日本の制度と。
○ 奥村教授似ているところがありますけれども、日本も休業補償とかを考えてやりますけれども、日本の場合は、過去3か月ですとかを見て、収入を基礎額にして計算するというようですけれども、イギリスの場合は得べかりし利益を考慮するということで、少しその辺、損害賠償型の要素も残していると理解しております。
○ 瀬川座長代理件数とか額に非常に大きな違いがあると思うんですけれども、それはスキームの仕組みにあると思いますが、それ以外に何か大きな、日英の違いというものがあるのでしょうか。
○ 奥村教授額では、先ほど申し上げたように、単純比較はできないと思うんです。総額が確かに12億幾らと350億では、申請件数自体も違いますので、単純比較はできないのですが、日英の制度の中での違いにつきましては、先ほども最後の方に申し上げましたように、スキームの内容が特別の、逸失利益の部分をかなり計算して、考慮して、補償の対象にしているということと、特別経費についても見ていこうということでありまして、そこがかなり違うなというところであります。それは多分、今、日本の犯給では対象にならないのではないかと思うんですけれども、それが先ほど申し上げたように、イギリスではいろいろな社会保障制度がありますので、それがあるので別に不思議ではないというものだと思うのですが、日本はもしそれがないとすると、何で犯罪被害者だけという問題が起こるのではないかということになるのではないかと思いますが。
○ 瀬川座長代理結構です。よく分かりました。ありがとうございます。
ほかはいかがでしょうか。
どうぞ、松村先生。
○ 松村構成員すべてのものはスキームから始まって、スキームで全部決まっているという感じですけれども、このスキーム自体の英国のスキームと、日本のいろいろな交通事故などの例の表を比較されたことはありますか。等級表などがありますね。
○ 奥村教授日本の犯給制度との比較ですか。
○ 松村構成員賠償されたときの等級表みたいなものがあるのですけれども、それとの比較というのはないですか。
○ 奥村教授ないです。
○ 松村構成員比較されたことはない。
○ 奥村教授日本の労災を前提にした1から14級までの。
○ 松村構成員それよりもっと細かいスキームが決まっていますね。しかもそれが1996年、2001年、2008年と大分頻繁に改正されて、非常にいい方向だろうと思うんですが。
○ 奥村教授大体が増額の傾向になっています。障害等級を440種類ぐらいに細分化して、非常に分かりやすいと。見えやすい部分ですね。この部位の障害については幾らと決めてありますので、客観性が担保されている部分があるなと思います。
○ 松村構成員ということは、採点も時間がかからないということですね。
○ 奥村教授そうですね。
○ 松村構成員分かりました。
○ 奥村教授ただ、採点にそれだけだったらいいんですけれども、社会保障給付とかをもらうような場合はそちらの方が優先されますので、そちらの手続が済むまではなかなかこちらの被害補償制度が動かないということで、少し時間がかかるようであります。
○ 瀬川座長代理どうぞ。
○ 太田教授1点お伺いさせていただきます。
5ページにあります被害者が死亡した場合の補償が日本とはかなり違う部分があると思うんですけれども、このうち葬儀費用とか補償標準額というのはきちっと計算できると思います。これに対し、生計依存の場合遺族が被害者から自立するまでの期間の部分の一定の費用を給付するということですけれども、これは例えば配偶者の場合は通常、被害者の定年退職までとありますが、20代前半ぐらいの御夫妻で主として生計を維持している夫が亡くなった場合、妻は被害者たる夫が退職するはずだった歳までの30年間とか、それぐらいの所得の一定の割合を加算されるということでよろしいのでしょうか。
○ 奥村教授そうですね。昇進の可能性があった可能性もあるということで、亡くなられた時点の全国平均賃金が頭打ちの上限になっていますけれども、そういう計算です。私は細かいことは分からないのですけれども、計算方式の中にいろいろな乗数を掛けたりして、そのうちの何十%という形で計算するようであります。それで、総額を計算するみたいです。
○ 太田教授一括払いですので、申請時の段階で退職までの期間を計算して、一挙に計算をして、その場で支払ってしまうと。
○ 奥村教授一括払いで。
○ 太田教授後で御遺族の方が経済的に自立しようがしまいが関係なくて、その段階で支給をするということですか。
○ 奥村教授関係ないです。自立することが見えて、奥さんも働いていられたとかという場合は自立する可能性が出てきますね。
○ 太田教授それでも、申請の段階でまだ分からないわけですので、基本的には支給することになりますか。
○ 奥村教授支給するということみたいです。
○ 太田教授そうすると、非常に高額なものを支給しているということになりますね。
○ 奥村教授場合もある程度出てくるということです。
○ 太田教授生計を維持していた方が亡くなった場合。
○ 奥村教授実際どれぐらい出しているのかと知りたいなと思っているんですけれども、余り情報公開をしないみたいで、かなり以前の被害補償審査会のマニュアルレポートとかを見ていますと、幾らでどれぐらいの平均で出してとか情報がありましたけれども、最近ほとんど出てこない。総額と何件申請が出てきたというぐらいしか出してくれていないので、その辺は具体的に調べないといけないなと思いますが、日本にいるとちょっと分からないなというところで、向こうも教えてくれるのかどうかも分からないんですが。
○ 瀬川座長代理よろしいでしょうか。
時間も来ましたので、この辺にさせていただきます。
ありがとうございました。
少しお時間をいただきたいのですけれども、御都合により、警察庁の北村審議官が今、到着されました。区切りのよいところでございますので、ここでごあいさつをいただきたいと思います。
○ 警察庁長官官房総括審議官10月25日付で警察庁の総括審議官を拝命いたしました北村でございます。
本日は、予算委員会の関係その他で遅刻いたしまして、心よりお詫び申し上げたいと思います。
この事務につきましては、警察庁としても極めて重要な事務であるということで、また今後、制度にも響いてくるということでありますので、真剣に勉強してまいりたいと考えております。
諸先生方からの御指導、御鞭撻を引き続きよろしくお願いしたいと思います。
○ 瀬川座長代理ありがとうございました。
それでは、議事に戻ります。
続きまして、フランスにおける経済的支援制度につきまして、中央大学法科大学院の小木曽教授にお願いしたいと存じます。
どうぞよろしくお願いいたします。
○ 小木曽教授こんにちは、小木曽です。
レジュメに従いまして、お話しまして、あと若干補足をいたしたいと思います。
資料2、フランスでは、犯罪被害による経済的損失を補償する制度として大きく分けて2つございまして、1つは、私訴といっておりますけれども、これは刑事裁判でその犯罪を原因とする損害賠償請求訴訟、民事訴訟を一緒にやってしまうという制度であります。被害者は、民事訴訟の当事者として刑事裁判に参加することができます。ただ、そこで損害賠償の支払いを命ずる判決を勝ち取ったとしても、実効性は余り高くないものでありまして、そこで国家補償制度ということになります。
国家補償制度の歴史としては、1977年に一般財源を財源とする制度が初めてできました。1986年にテロに特化した国家補償制度ができまして、このときに、それに特化した補償基金というものが創設されました。1990年に一般犯罪とテロ被害の補償制度の財源を、補償基金に統一いたしまして、現在に至っております。
その理念でありますが、社会の連帯であるということが当時から現在に至るまで言われているのですけれども、最近の傾向としまして、そこに書いてありますように被害者が障害を負った、受傷後、補償される前に被害者が死亡した場合に、その遺族に補償の請求権の相続ができるのかできないのかという問題について、1990年ころにはこれを否定するという考え方だったようですが、最近ではこれを認めるという傾向にあると、これは後に述べますように判例でございます。ですから、若干権利性が強まっているという解説をされることがあります。
これは、補償委員会が裁定しまして、実際の支払いは補償基金が行うという仕組みになっております。補償委員会は、便宜上CIVIと呼びます。補償基金はFGTIと申します。
被害並びに補償範囲ですが、これは刑事訴訟法の中に定めがございます。まず、重い身体犯の場合です。故意・過失を含みます。被害者死亡の場合、重い障害、重い障害と申しますものは、生涯障害が残るということを指しております。そうでない場合は、1月以上働けなくなったということがそのカテゴリーに入ることになっております。
性犯罪、人身売買については、重身体犯というカテゴリーで補償されることになっております。犯罪による、直接の損害を補償ということなのですが、この直接の損害が何を意味するかというものは、個別の裁判例がたくさんございます。
被害者については、フランス国籍を持っている者、フランス国内で被害に遭ったEUの国籍保有者、適法に滞在している外国人もその対象になります。国外での被害は、フランス国籍を持っている者ということになっておりまして、重障害については、補償額の上限が定まっておりません。ここには、精神的な被害も含みます。ただ、被害者の過失による減額がございます。
2つ目の類型は、それよりも軽い身体犯の場合と財産犯です。軽い身体犯というものは、1月未満の就労不能です。財産犯につきましては、これは限定列挙ということになっておりまして、窃盗、詐欺、背任、強盗・恐喝というものは、訳し方がこれでいいのかどうかという問題がありますが、英語で言えばExtortionです。フランス語も似たような発音ですが、暴力による財物の取得を表す言葉だろうと思います。それから、器物毀棄がその対象になります。
こちらは、収入要件がございます。1,393ユーロ未満の月収であること。この月収は、法律扶助を受けることのできる月収と同じであるということです。ただ、これに扶養者が2名いる場合には、これに167ユーロを足して、以降1名ごとに106ユーロを足していくという要件の変化があります。
このカテゴリーは、他の機関から補償を得られないことということが条件に入っております。それから、犯罪による損害が重大であることという要件が入っております。補償の上限は4,179ユーロまでと決まっております。収入要件の3倍までということであります。
もうひとつのカテゴリーは比較的新しいものですけれども、フランスでよく車が燃えるということを御存じだと思いますが、それが加わっておりまして、2,084.5ユーロ未満の月収、そして補充性は同上軽身体犯の場合と同じです。車検済み強制保険加入車でなければいけないとか、フランス国内の被害です。上限は、軽身体犯の場合と同じように定められております。このような類型について、国家補償の対象になるということであります。
手続ですが、日本では地方裁判所に相当するといっていいと思いますが、ここに補償委員会が設置されまして、ここに申請することになっています。補償委員会というものは裁判機関でありまして、職業裁判官2名と被害者問題に識見を持つ成人フランス人1名で構成されることになっております。
管轄は、そこに書いてあるとおりであります。
申請期限は、犯罪の日から3年または原因となった犯罪について刑事裁判が確定する日から1年ということであります。
実際の手続は、補償委員会に申請書、レジュメの後ろに付けてあるフランス語の文書が申請書なのですが、訳している余裕がありませんでしたので、時間があれば簡単に御紹介したいと思います。この申請書を、委員会にあてて送付します。委員会は申請受理しましたら、これを補償基金に送付します。2か月以内に補償基金は申請人に対して補償額を提示します。これに申請人が同意した場合は、補償基金から補償委員会にその旨を通知しまして、補償委員会がこれを追認して、1月以内にその額を支払うという仕組みになっております。
この数年の間の改正でこういう迅速な手続、前は基金からの補償額の提示ということにはなっていなかったのです。全部、補償委員会が裁定してその額を基金が支払うという仕組みになっておりましたけれども、まずは基金から補償額を提示するということにして、迅速な手続に変えたものであります。
この額に、申請人が不同意の場合は、補償委員会が調査・聴聞・裁定をいたします。ここでくだった裁判については、上訴ができます。
その他としましては、仮払いができます。刑事裁判が係属している場合は、委員会が裁定を延期するということもあります。調査・裁定は非公開で行っています。民事・刑事の裁判が委員会の裁定額より多額の損害賠償の支払いを被告人に命じた場合は、差額の請求ができます。
調整規定ですが、これは社会保障給付、国家補償法による給付、医療・リハビリ給付、雇用者から支払われる休職中の給与、共済の給付、その他当該被害を原因とするあらゆる賠償・補償ということになっておりまして、主には加害者からの賠償、保険者から支払いということのようであります。ここで、もし被害者が生命保険等に入っていた場合、定額の生命保険の場合には調整の対象にはならないということです。
<7>は書いてあるとおりであります。
<8>、基金は、加害者に対して求償権を取得することになっております。
<9>は飛ばしまして、これも最近の2008年の法改正でありますけれども、先ほど話が出ておりました民事訴訟によって損害賠償金の支払いが命じられた場合に、基金が立て替えるという制度が2008年から運用されております。ただ、額は1,000ユーロ未満であれば全額立て替えをいたしますが、1,000ユーロ以上は3,000ユーロを上限としまして、言い渡された損害賠償額の30%の立て替えをするという制度が運用されております。
財源でありますが、こちらは保険法の中に定めがあるのですが、これまでの紹介でこれが税金か保険料かという議論があるようですけれども、そこに原文を挙げてあるのですが、これは損害保険契約1件ごとに、現在3.3ユーロを賦課して、これを集めて基金をつくっております。一定のカテゴリーにある人々に、経済的な賦課を課すという制度が税金で、保険というものは保険事故の危険を共有している人々が、保険料を払って、不幸にして事故に遭った場合に、その保険金がプールされたものから保険金を支払うというものを保険だとしますと、この制度は、財源の負担者と受給者の間に一致する関係がありませんので、これは目的税と性格づけることが正しいのではないかと私は思います。
レジュメの4ページ、実績であります。2010年の実績ですが、この基金の資産が3億6,000万ユーロ、大体今、1ユーロ105円ぐらいですから、300億くらいでしょうか。そこに税金と書いてありますのは、そういうわけで、損害保険契約に係る目的税を集めたものがそれだけあって、運用益もございます。それから、求償して得られたものを足して、それだけの額があるということであります。
申請人数は、1万7,873人で、内訳はそこに書いてあるとおりであります。
支払い総額は、2億5,520万ということですから、先ほどイギリスが300億ですから、こちらは200億円くらいです。テロについては、2009年の数字ですけれども、テロ被害者については270万ユーロが支払われている。これは総額であります。先ほど申しました損害賠償の立替払いの申請が2万5,000件あって、そのうちの64%は1,000ユーロ未満であって、直ちに立て替えられたということのようであります。
今のものが基金の実績ですけれども、損害補償委員会の方の裁定等に関するデータ、これは2006年で数字が5年ほど前のものですが、全国で2万3,400件の承認・裁定を行っているということであります。うち、被害者・申請者と基金が合意したものは8,600件、裁定が必要になったものは1万4,800件ということであります。このうち、3.9%で上訴されているということであります。
この上訴について、控訴院と訳していますけれども、高等裁判所でどのような裁判がくだっているかということにつきましては、2006年中に750件、被害者総数は1,159人について上訴がありまして、そこにそのようなデータがございましたということですが、そのうちのIに書いてございます補償の最低額は300ユーロ、最高額が93万4,973ユーロということですから、9,000万円くらいです。上限がありませんので、一番高い重障害についてはそのくらいの額が支払われた例があるということであります。
高等裁判所で裁判されたときに、その額がどのくらいになったということについては、<3>に書いてあるような実績であります。低い方が1,500ユーロくらいからです。障害については1,000ユーロくらい、高いものについては66万3,000ユーロ、これは先ほど言った93万というものはCIVIが裁定した額です。控訴院で一番高かった額がそれであるということであります。実績については、そのようなことになっております。
5ページ目、社会保障制度がどうなっているかということですけれども、今の補償制度は一時金の支払いですので、その後はどうなるのかということですが、これは私、全く素人で分かりません。ただ、そこに挙げてありますような文献によりますと、社会保障というものは、そのような範囲をカバーするものであるとか、社会保険、社会扶助、補足的な民間制度というものでフランスの社会保障制度はでき上がっているということであります。
(2)<1>のBに書いてあります社会保障関連の目的税が多数存するという辺りが、どうもこの国家補償制度の財源をこのような制度にしたということと何らかの関係がありはしないかという気がしております。
この国家補償制度をつくる際に、どのような制度にするのかという議論はあったわけですけれども、結局、広く薄くできるだけ財源を集めるにはどうするかということが優先されたように思われます。そのときに、背景事情として社会保障の制度の中に目的税が多数存するということですから、その辺りがヒントになっているのではないかと思うということであります。
日本の制度との比較で申しますと、国家補償に特化した機関と財源が存在するという点が一番大きな特徴であろうと思います。そして、その財源については、負担と補償を受ける者が不一致でありますけれども、そこには目をつぶっている。補償申請と補償額は日本の犯救制度に比べると大きな差がありますが、1つには、犯罪の発生件数なども影響しているのではないかと考えます。フランスは日本の人口のほぼ半分ですが、認知件数では三百何万件だったように記憶しております。イギリスはもっと高いのです。発生件数、イギリスはずっと高いというようなことも関係しているのかなという気はしております。
海外調査先案と書いてございますが、私の資料にはCIVIが一番初めに書いてありますが、よく考えますと、基金に先にいった方がよさそうな気はいたします。というのは、10年ほど前に調査に行ったことがあるのですけれども、今、申しましたように1件1件裁判なので、モデルケースなんてものを示されても具体的ケースではないので分からないと言われたことがあって、この基金の方が申請人に額を提示することになっていますから、そうするとそこには等級か何かがあるのではないかと想像します。そこには行ったことがないので分かりませんが、そうではないかと思います。
<3>に書いてあるINAVEMというものは、被害者支援の全国組織を束ねているところであります。
若干補足させていただきますものは、親族間の犯罪について補償があるのかないのかということについて、判例を検索いたしましたら、非虐待児童が親の虐待を理由に補償請求することを認めた裁判例が見つかりましたので、恐らく親族間の犯罪についても、こちらの刑事訴訟法の定めには、そのカテゴリーに該当するあらゆるものが請求できると書いてありますので、そのあらゆるものの中には親族間の犯罪の被害者も含まれるのではないかと理解しております。
以上です。
○ 瀬川座長代理ありがとうございました。
それでは、御質問ございましたらどうぞ。
黒澤構成員、どうぞ。
○ 黒澤構成員資料2の1ページ2の(3)対象犯罪の重身体犯ですが、ここに故意のほかに過失が入っており、4ページの2の(9)<3>C)の控訴院裁判の事例で過失致死と書いてございましたが、過失の範囲がどうなっているのか。特に、先ほど目的税で保険に関連して財源とその利益を受ける人の不一致は気にしないというお話がございましたけれども、例えば過失で火事を起こして人が死んでしまったあるいは重大な交通死亡事故が過失で起きたと、保険との関係もあろうかと思いますが、この過失の範囲というものは一体どういう具合になっているのかということが1点。
もう一つは、損失補填制度の私訴で刑事裁判に付帯する損害賠償請求訴訟が書いてあるのですが、一般の民事訴訟があるのかどうか。ほかのところで私訴等と「等」が入っておりますが、ほかの争い方といいますか、損失補填制度があるのかどうか。
実効性は高くないと推測されるとおっしゃられましたが、これは先ほどお話があった国が立て替える、その話と理解すればよろしいのでしょうか。
以上でございます。
○ 小木曽教授後の方から申しますが、私訴というものは、刑事裁判で損害賠償請求訴訟を一緒にやってしまう場合の言い方ですので、私訴等と書きましたときには、「等」の中には民事裁判を別立てでやった場合を入れております。
○ 黒澤構成員一般の民事訴訟でも争うことも勿論できるということですか。
○ 小木曽教授そうです。
○ 黒澤構成員分かりました。
○ 小木曽教授それから、過失の範囲ということですが、交通事故については別立ての補償制度があります。被害者にとっては、被害が起こる原因が過失であった故意であったかということは全く関係がないわけでありまして、発生した犯罪とされる行為による損害であれば、それが補償の対象になるということです。そういう意味でも比較的補償を受けやすい制度をどうやってつくるかということが考えられてできた制度です。お答になっているかどうか分かりませんが。
○ 瀬川座長代理中曽根構成員、どうぞ。
○ 中曽根構成員よろしくお願いします。
すごく分かりやすかったのですが、ちなみに先ほどの鈴木さん(仮名)がもしフランスの国籍を有する被害者であったとした場合を教えていただくということはできますか。例えばいわゆる対象及び補償範囲等で考えれば、重身体犯ですね。そして、3ページの<7>のD、委員会の最低額に多額の損害賠償の支払いを被告に命じたとき、申請人は差額請求可とあって、例えばフランスの基金で先ほど419万円が払われていたとすれば。
○ 小木曽教授1億幾らということですから。
○ 中曽根構成員差額を請求することは可能であるということですね。
○ 小木曽教授はい。
○ 中曽根構成員(5)の<8>の基金は加害者対する求償権があるということは、基金は加害者に対してその金額を請求できます。(6)に私訴等による損害賠償金の基金による立替払いとあるのですけれども、こうなると鈴木さん(仮名)の場合は何%か。
○ 小木曽教授そうですね。<2>の3,000ユーロは立替払いを受けられるということなろうかと思います。
○ 中曽根構成員ということはあるわけですね。ということは、申請人は差額請求可となっているけれども、これは可ですが、確定ということですか。
○ 小木曽教授3,000を立て替えて、それが本来は損害賠償のはずですから、その分が補償から引かれるということになると思います。
○ 中曽根構成員一応、請求は可能であるということですね。それが認定されるかどうかは、また別問題なのでしょうか。
○ 小木曽教授そうです。
○ 中曽根構成員分かりました、ありがとうございます。
○ 川出構成員重身体犯の場合に、補償額の上限はないということの意味なのですが、これは、要するに、民事訴訟で請求したとしたら認められる額までは補償がなされるということだと理解してよろしいのでしょうか。
○ 小木曽教授それは、でもそうでしょうね。ただ、基金がそれで納得するかどうかということがあるので、そこのところで基金が納得しないと裁判で争っていくということなるのです。
○ 川出構成員基金が納得するということは、要するに基金としてこれだけの損害が生じているということを認めるということですよね。そして、そこで認められた損害額に対応する補償については上限はないということですから、結局、損害賠償金を立て替えているわけではないけれども、実際の機能としては損害賠償金の額までは補償がなされることになると考えてよいのかということです。
○ 小木曽教授制度の枠組みとしてはそうなっているということだろうと思います。
○ 瀬川座長代理岩村構成員、どうぞ。
○ 岩村構成員財源のところなのですが、損害保険契約からお金を取るということは、最初からですか。
○ 小木曽教授そうです。この基金が86年にできたときからこの仕組みです。テロの国家補償制度ができたときに、この基金はこういう財源で始まったと記憶しています。少なくとも、90年からは間違いありません。
○ 岩村構成員というのは、先ほどの社会保障の目的税にヒントを得たのではないかというところなのですが、微妙でして、社会保障に特化した目的税というものが入ったのは比較的新しいのです。ですので、86年だとどっちが先だったかという感じだという気がいたします。
○ 小木曽教授ありがとうございます。
○ 瀬川座長代理どうぞ。
○ 国土交通省総合政策局政策課長政策企画官1つもし御存知でしたら教えてください。
先ほど、奥村教授のイギリスのケースでいきますと、補足資料のところで住宅の給付ということで低所得者に対して家賃と地方税を補助するということがレジュメの中にございました。後ほどあります韓国のところでもそういうケースということで、低所得者に対して手当はあるのですけれども、フランスの給付金そのものというわけではないですが、被害に遭われた方に対して住居、現物なのかお金なのか分かりませんけれども、もしそういう制度というものを御存じでしたら教えてください。
○ 小木曽教授申し訳ありません。これは私は分かりません。
○ 岩村構成員私の方からお答えしますと、フランスの場合は社会保障の中の御紹介いただいた中に家族手当というものがあるのですが、その中に1つに住宅手当制度というものがあって、これが非常に幅広く住宅についての手当というものを提供しております。これも所得要件がついてないものと低所得者向けのものと2種類あるということですので、犯罪の被害者かどうかということに特化せず、一定の要件を満たせばこの住宅手当がもらえるという仕組みになっております。
また、当然のことながら公共の低廉な住宅というものもフランスの場合は非常に発達しているということでございます。
○ 瀬川座長代理よろしいでしょうか。どうもありがとうございました。
それでは、続きまして韓国における経済的支援制度について、慶應義塾の太田教授にお願いしたいと思います。太田先生は、「犯罪被害者等に対する心理療法の公的負担に関する検討会」の構成員でもあられます。
どうぞよろしくお願いいたします。
○ 太田教授慶應義塾大学の太田でございます。本日はよろしくお願いいたします。
残り10分ちょっとしかございません。10分は質問時間をとってくれということですので、2分ぐらいでお話をしなければいけないのかもしれませんが。
○ 瀬川座長代理十分に時間をとってありますので、どうぞ。
○ 太田教授幸い、韓国の場合は、日本の犯救法の旧法を参照しながら立法を行ったということもありまして、日本の犯救法と極めて類似性が高い制度になっておりますので、制度の細かいところはレジュメを見ていただくとしまして、お話としましては、日本の類似点以外の相違点を中心にお話をさせていただければ、韓国の特色が十分お分かりいただけるのではないかなと思います。
まず、一番大きな違いは、韓国は犯罪被害者の権利を被疑者、被告人の権利と並んで、憲法上の権利として規定しているということが最も違うところであります。私の知る限り、アメリカみたいな州憲法はいろいろ例がございますけれども、中央の憲法で犯罪被害者の権利を規定しているというのは、韓国、タイ、メキシコとか、極めて限られた国しかないという状況の中で、韓国は、しかも1987年の現在の現行憲法制定のときに既にこの犯罪被害者の権利を入れているという点では、世界的には非常に珍しいケースだと考えます。
どうして憲法上の権利として犯罪被害者の権利が入ったのかということは、私は留学時代相当調べましたし、向こうの事務官にも相当聞いたんですけれども、はっきりとした記録が残っておりませんで、よく分からないんですが、韓国の法曹やいろいろな方々の大方の見方としましては、要するに韓国が民主化宣言を80年代に出しまして、その後初めてつくられた民主憲法であります。光州事件等の大きな苦難を経て、韓国が民主化をした結果できた憲法でありますので、そうした中で被害者の権利を入れたということのようです。それから、1985年の国連によるいわゆる被害者人権宣言の影響もあったというふうに言われております。
2つ被害者の権利が規定されておりまして、被害者は公判意見陳述権といったものが規定されております。ただ、この内容は単に公判で被害者の意見を陳述するということにとどまらず、憲法裁判所の判例で内容が相当に拡大をしております。
そして、もう一つが本日のお話に関係いたします犯罪被害者救助権です。権利という言葉は使っておりませんけれども、一般にはこれは権利というような位置づけがなされておりまして、犯罪被害者は国から救助を受けることができます。
ここで言う救助というのは、広い意味での救助ということではなく、今からお話しします犯罪被害者救助制度、いわゆる給付金の支給を受けることができるという意味で解されております。この給付金を受ける権利が憲法に規定されていることが恐らく日本や海外の制度とは最も大きく違うところであろうと思います。
そして、1987年の憲法に基づきまして、同年、犯罪被害救助法というものが制定されまして、犯罪被害者に対する給付制度ができました。これは、補償制度ではないために補償金というふうに呼ばない方がいいだろうと思います。韓国では救助金という言葉を使っております。
ただし、この犯罪被害者救助法は昨年廃止されまして、日本の犯罪被害者等基本法に相当する犯罪被害者保護法が2005年に制定されましたけれども、この犯罪被害者保護法と統合する形で犯罪被害者救助法が廃止されておりますので、現在、犯罪被害者救助金の支給に関する規定はすべてこの犯罪被害者保護法に規定されております。
基本的な救助制度の理念といいますか、考え方ですけれども、かつて犯罪被害者救助法、旧法ができましたときには、その受給要件の中に生計維持困難、要するに被害者がどんなに大きな犯罪被害を受けても生計を維持することができる場合には支給されないというふうな生計維持困難という要件が含められています。この点が日本と極めて条文が似通っていながら大きく異なるところの一つでありまして、そのために韓国の学会の方でも、韓国の救助制度というのは福祉モデルだと言われております。要するに、必要のある者には給付を行うけれども、必要のない者には給付しないという、この点では犯罪被害が発生すれば収入がない者に対しても一定の給付を認めている我が国とは大きく異なるところでありますが、この要件は余り評判のよくない要件であったものですから、2005年の改正で削除されておりまして、そういう点では福祉モデルから脱却しております。
また、このことは特に韓国では指摘されておりませんけれども、もともと現在の2010年の改正までは、死亡と障害の程度によりまして固定額を支給しており、死亡の場合には一定の額、障害の場合には3段階とか、その後もう少し細かくなりましたけれども、固定額を支給するということで、そういった点では見舞金的な要素が強かったというふうに私自身は考えておりますが、これも今度の2010年の改正で、被害者の被害当時の月収に月数を掛けるという、いわゆる日本の制度と基本的には類似した、被害者の所得にかかわらせるという、恐らく世界では珍しい日本の制度に類似した形に変えましたので、そういう意味では見舞金という発想ではなくて、被害者が被害後の経済体制に移行するまで、それを自立と言えるかどうかは分かりませんけれども、それまでの一定の経済的な支援を行う、こういう制度に大きく変わったというふうに考えることができます。
ただし、現在のこの犯罪被害者保護法の中には「犯罪被害者の福祉増進」という文言が依然として使われておりますので、そういった点では実際の内容とは若干異なった目的規定になっています。ただし、この保護法の方は救助制度自体の目的規定ではございませんで、いろいろな保護の制度を含めての規定ではございます。そこでは「福祉」という言葉がまだ出てくるということでございます。
続きまして、2ページは受給要件、どういう人に支給するかということに関しましては、極めて日本の制度と類似性が高くはなっております。ただ、先ほどのイギリスと同じように、自分や他人の刑事事件の捜査や裁判の過程で、捜査機関に協力して被害を受けた場合には支給対象になるという対象者が加えられております。
外国人に関しましては、相互保証の下で支給の余地があるという規定になっておりますが、現在、向こうの法務省の方では、これは一応見直しを進めているというふうなことを聞いております。
要件は、先ほど言いましたように、かつては生計維持困難という要件がありましたが、これは2005年に廃止をされ、更にその後に「加害者の不明又は無資力」という要件もあったんですけれども、これも2010年に改正をされております。
救助金の種類は、日本と極めてよく似ております。遺族救助金、障害救助金、それから昨年の改正で日本の重傷病給付金と同じ重傷救助金というのができております。計算方法は、先ほど言いましたように、被害者の月収掛ける月数となっています。日本の場合も、基本的には日額の7割、8割掛ける倍数となっていますが、この倍数を日数とみなせば、基本的には被害者の被害当時の収入プラス一定の期間の経済的支援を行うという発想になりますので、この点では現在の日本の制度と近くなるような改正が行われたということであります。ただし、合計額が平均賃金の36か月分は超えられないということで、合計額に関してはかなり大きな制約が課せられておりまして、これは韓国でも支給実績といいますか、支給額に関してはまだ大きな限界があるというふうに認識されております。
実際の試算によりますと、これは法務省の試算、被害者の収入とか、いろいろによって違うわけでありますが、大体150万ウォン~5,400万ウォンで、今は超円高低ウォンの時代ですので、計算は難しいんですけれども、簡単にするときには10で割っていただければ円になる、それの3割ぐらいを割り引いていただければ、現在の円に換算できるとお考えください。
ただ、この金額を考える際に、韓国における物価事情というものが日本とはかなり違うということには気をつけておく必要があるだろうと思います。ほかのものに関しましては、日本とそう物価は変わらない面もあるんですが、食品に関しては韓国は極めて安く生活をすることができます。それから、人件費もかなり日本よりは安いという点は考慮する必要があろうかと思います。
あと、細かい月数や月収の計算方法については、記載のとおりでございます。
3ページの障害等級に関しましても、日本と相当似た内容になっておりまして、参考までに、重い方は簡単に想像がつきますので、一番低く認められている第10等級というものの内容を訳出しておきました。日本の制度とほとんど同じでございますし、精神的被害が何等級に入っているかといったものも3ページの下に訳出しておきましたが、日本と同様に、極めて厳しい精神障害しか認められないということになっている点も同じです。
4ページの不支給・減額事由も、細かい点は日本と若干違うところもありますけれども、これは全く日本と同じでございますし、親族間の場合に不支給事由になったり、減額事由になったりする点も同じであります。また、復活支給がある場合も同じであります。併給調整のある法令も、内容は違いますけれども、法令に基づく給付との二重給付はできないような規定になっております。
5ページの方に、損害賠償等との調整がある点は日本とは同じでありますが、日本と違うところは救助金を支給することを決定したとき、これは決定機関も日本は基本的には公安委員会、警察ということになっておりますけれども、韓国の場合には検察庁が主務官庁になっております。その中に審議会が置かれておりまして、ここが決定をすることになっておりますけれども、救助金を支給する決定を行ったときには、この審議会が求償権を行使するかどうかを同時に決定しておくということが行われております。重大事件の場合にこの救助金の支給が問題になることから、その加害者、犯罪者の多くは刑務所等へ、あと保安処分もありますので保安処分施設に収容されますけれども、そこの刑務所の中で、韓国も日本と同じように懲役刑がございますので刑務作業が義務づけられておりまして作業をしなければいけません。そこで支給されたような、日本で言うところの作業報償金、韓国では奨励金、それから保安処分の場合は報償金とか、いろいろありますけれども、こちらの方から損害賠償を受けることができるような規定も整備されております。
更に、現在、国がこの求償権を積極的に行使していこうという方針を行っております。これはアジアのほかの地域でも徹底的に求償を行っている国があります。ヨーロッパでもスウェーデンがその国だと思いますけれども、そういった意味では、これを非常に積極的にやれば、先ほどから出ています損害賠償の立替払いという機能を一部果たすことができるわけでありますけれども、こういう方針をとっております。ただ、現実にはかなり厳しいのは日本とは変わらないわけですけれども、方針としては求償権を積極的に行使していこうというふうになっています。
裁定機関のお話は、先ほどさせていただきました。
不服申立も、日本とは違うところはありますけれども、一応制度は整備されております。
6ページが支給状況の表であります。
最も日本と違うところは、先ほどフランスの方の御説明にもありましたとおり、韓国は従来一般の予算で運用してきた犯罪被害救助制度を、主として犯罪者が納付した罰金に基づく基金をつくりまして、ここから救助金を支給していくという制度に昨年改めまして、今年の1月1日から施行されております。これが、恐らく最も韓国と日本との相違点ということになろうかと思います。根拠法も7ページに掲げてあるところでございます。
現在、法律では罰金徴収額の4%以上をこの基金に組み込むができるというふうになっているんですが、現在、大統領令に基づきまして4%を組み入れておりますが、法務省の担当者によりますと、これから5%、6%というふうに上げていきたいと言っております。大統領令の改正でこれが上げられるものですから、非常に弾力的な運用が可能になっております。
それから、先ほど、求償して得た犯罪者から取得した求償金といったものもこの基金に組み込んでいくことになっておりますし、それから先ほどの犯罪者の刑務作業の日本で言うところの報奨金等から得た場合も、この基金に組み入れることになっております。
ただ、この基金から用いることができるのは、この犯罪被害救助金に限らず、それ以外のさまざまな犯罪被害者に対する支援の予算もこの基金の方から出すということになっておりまして、これが現在、韓国で大分大きな問題になっております。
7ページの下から8ページにかけまして、どういう内容のものにこの基金を使うことができるのかということを列挙しておきましたけれども、基本的に犯罪被害者支援を行っているのは、何も法務省に限らず、日本の厚生労働省に当たります保健福祉部でありますとか、あと、女性家族省という女性の地位向上とか権利保障とか、そういうことにかかわる省があるわけですけれども、こういうところが例えばDVとか性犯罪被害者の支援なんかも行っているために、そういうさまざまな担当官庁が行う被害者支援の費用もすべてこの犯罪被害者保護基金から賄うということになっています。これは基本的に韓国の法務省が管理・運営している基金なんですけれども、ここからどういうふうに各省庁で使うかというのを割り振って決めているという状況であります。
ただ、使い道は、8ページの真ん中にございますように、15人以内の委員から構成される、公務員や、それ以外の大学教授とか、さまざまな人がなっている審議会が運用の方法、方向性を決めておりますけれども、この中でも今後この基金をどういう方向で使っていくのかということが議論されております。
実際の予算を8ページの下に掲げておきました。ただ、今日確認をしてこなかったんですけれども、法務省の2011年度の予算を掲げておきましたけれども、日本と違いまして、罰金等の収入が法務省の歳入ということになっているというところが多分大きな違いだろうと思います。要するに、国庫に入るのではなくて、国庫に入るとしても法務省の歳入ということになっているところが違うから、多分こういうことができるのではないかと思います。
ただ、これは従前はどうなっていたかというのは確認をしてきていないために、これは改めて分かりましたら、調査のときに報告をさせていただきます。大体1兆8,000億ウォンですから、大ざっぱに言えば、1,500億円ぐらいの罰金が法務省の予算として罰金から入ってまいります。従来は通常の予算の中でやっていたんですけれども、今度からはそこからの歳出ということにせずに、9ページの上の方にこの基金の方への罰金からの4%の繰入れと、そこからの支出というふうな形になってまいります。
9ページの上にちょっとありますように、転入金というのは罰金の方からの転入金なんですけれども、求償金の方も大体6億ウォンぐらいですから、5,000万円ぐらいでしょうか、これぐらいも求償するつもりのようでございまして、今年の予算は623億8,100万ウォンですので、大体五十何億円ぐらいの予算になっています。その中から、法務省、それこそ女性家族省、保健福祉省といった犯罪被害者の支援を行っているところに支出しているということであります。ただ、どういう項目に使うかということは、向こうでもいろいろ問題になっております。
以上でございますが、今もお話しました韓国の犯罪被害者救助制度の特色をそこに掲げておきました。今後調査をするためには、韓国に関しては日本とかなり類似性が高いので調査がしやすいのですけれども、アメリカですとか、イギリス、フランスなんかと比べる場合に、何かモデルケースを考えてこいということでございましたので、そこにいろいろ考えてきました。しかし、例えば損失補てん型の制度をとっているアメリカの場合には、ただ単に、幾らの所得のある夫が殺され、妻と子どもがいるというふうなことを提示しただけでは、例えば葬儀費用とか、カウンセリング費用とか、交通費とか何とかというのを個別に請求するアメリカの場合に、向こうはこんなんじゃ計算できないというふうに言われてしまいますので、その国その国に合ったモデルケースを設定しないと、そう横並びのものが、要するに比較する方としましては何かそういうものがあった方が助かるというのは非常によく分かるんですが、かなり国ごとの特色を考えてつくらないと、モデルケースというのはそう簡単にはいかないのではないかなという気がいたします。ただ、韓国やほかの国も考えて、特色が出るような項目を含めたモデルケースを<1>~<9>として考えておきました。
あと、韓国で調べるべきことというのは、実際にこの新法の下でどう運用がなされているかとか、それから精神的被害に対する救助というのがどれぐらいなされているかとか、求償権を実は本当はどれぐらい行使しようとしているのか、もしくは行使したのかということとかでありましょうが、韓国のユニークなところは、この救助制度だけでいこうということではなしに、そのほかのさまざまな犯罪被害者に対する経済的支援の制度が用意されているというところが一つの特徴ではないかなと思います。
補足資料ということで、刑事手続内外において犯罪被害者の支援に役立つようなものを掲げておきました。韓国は修復的司法というのを積極的に取り入れていこうという方向性が決まっておりますので、それに基づきまして刑事調停が法制化されております。比較的軽微な事件、実際には財産犯が割と多いんですけれども、そういったものはこういうところで裁判が紛争を解決する中で被害者の経済的な損害回復も図っていこうという方針がとられておりますし、もともと韓国には、名前がややこしいのですけれども、損害賠償命令という附帯私訴制度がございますけれども、これもそこに掲げてありますように、一定の取扱件数はあります。ただ諸外国と違いまして韓国は非常に罪種を限定してあるというところが特色でありますし、これも実際にどういう罪種について用いられているかを調べますと、ほとんどが財産犯で、あとは軽微な傷害事件というふうに用いられております。
それから、日本でできました制度を参考にしまして、公判調書に和解が成立したことを記載すると、そこに債務名義を認めるというあの制度と全く同じ制度を韓国でも法制化しております。
ただ、それ以外にもユニークなのは、日本では犯罪被害者支援センターが各都道府県にできておりますけれども、相談とか直接的支援ということを中心に行っておりますが、韓国はそういった直接的支援や相談以外にも経済的支援を犯罪被害者支援センターが行っております。
どうしてこれができるのかというのは、いろいろ背景がございまして、これは日本の保護司に相当する方がいろいろかかわられているんですけれども、そうした人たちによる財政支援なんかもありますために、そういった経済的支援ができるようになっております。ただ、どれぐらいのものを行っているかというのは、センターごとでかなり内容が違っておりますので、実際には各センターごとに調査をしてみないと、実際の給付額というのは分からない状況であります。
それから、私自身が非常に注目しておりますのは、今年から韓国では犯罪被害者に対する経済的支援の一環として、社会的企業というものが設立されております。最近世界的に大きな潮流になっております社会的企業を犯罪被害者支援のためにつくっていくということで、法務省が主導の下、犯罪被害者を雇用することによって就労支援、経済的な自立を促し、かつ職業訓練も行うという意味も持たせると同時に、その収益を全部犯罪被害者の財源としていく、こういう社会的企業をこれからつくっていくという政策がとられておりまして、今年これまでに2つ企業が設立されています。花の配達会社と七宝焼の会社がつくられているという状況です。
それから、あと、直接的な経済的支援としましては医療費の支援をする法務省や女性家族省の制度、それから経済的な支援というのは先ほどの被害者の方のお話にも出てきましたが、医療的な負担をしなくても済むように、無料のカウンセリング等を行うようなセンターをつくったり、これはスマイルセンターですけれども、これもいろいろありますけれども、そういったものをつくったり、あとは住居の支援なんかを行ったりしているという状況でございます。
以上でございます。
○ 瀬川座長代理どうもありがとうございました。
それでは、御質問がございましたら、どうぞ。
○ 川出構成員どうもありがとうございました。制度の理念のところですが、犯罪被害者の経済的自立までの経済的支援が理念とされていて、そのうえで、遺族救助金と障害救助金については、被害当時の被害者の月収掛ける月数で計算し、ただし、月数は36か月以下になっています。これは、3年あれば、基本的には経済的な自立ができる状態になるはずだというような考え方に基づいているのでしょうか。
○ 太田教授特に、なぜ36か月なのかということの立法趣旨は厳密には語られてはいないんですけれども、まさにこの計算方式からすると、3年という期間内に被害者の人が次の経済的な体制に移っていただけるのではないかということで、こういった期間を設定しているものだというふうに考えております。
○ 川出構成員この理念というのは、法律に書かれているのでしょうか。
○ 太田教授書かれておりません。要するに、福祉モデルだというのは生計維持困難というのがあったために、韓国でもこの法律ができたときにいろいろな批判なり議論があったために、福祉モデルをやめたということは、イコール脱・福祉モデルというふうには言えないかもしれませんけれども、今度どういう制度をつくろうかというときに、結局、日本の計算方式と極めて似た、月収掛ける日数、韓国の場合は月数という言い方で、日本は倍数と言っていますけれども、実際にはあれは日数に相当するわけですので、そういう制度を採用したということからすると、経済的支援を行うという言い方しかされていないんですけれども、その趣旨としては次の体制に移行するまでの経済的な支援という制度に切り替えたというふうに私は評価しているということでございます。
○ 瀬川座長代理どうぞ。
○ 松村構成員ちょっと参考までに教えていただきたいんですけれども、5ページにありました作業奨励金または勤労報償金から損害賠償金を払うということですけれども、大体これは1月働いてどれぐらいの額なんですか。日本の場合だと4,000円前後で、たしか物すごい低いと思うんですけれども、韓国の場合はどうなんですか。
○ 太田教授申し訳ございません。今日は統計を持ってまいりませんでしたけれども、韓国も非常に低額になっておりますので、ここから実際に求償していたとしても相当な期間がかかるということは韓国でも変わりはありません。
○ 瀬川座長代理ありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。
罰金徴収額から4%以上とっている、これは最近というか、去年導入されたとおっしゃったんですが、これを導入された背景というか、どういう理論があってこうなったのか、そのときに賛否、賛成、反対論というのはどんな状況であったのかというのをお聞かせ願えればありがたいんですけれども。
○ 太田教授これは韓国の法務省の中の人権局の人権救助課というところで所管をしているんですけれども、まさにその担当者の方にお聞きしたんですけれども、とにかくこれまで財源が非常に足りなかったので、そこで考えられたのがこの犯罪者の罰金を使うということでした。
ただ、そこのときに問題はありませんでしたかと聞くと、問題があったのは、要するに財源を従来の日本で言うところの財務省、向こうは財政企画部といいますけれども、こちらの方から事実上法務省の方にそれを移すようなことになるので、予算の確保という点で、事実上の権限が法務省に移るということに対して非常に大きな議論が財務担当の役所の間であったということでした。
もう一つは、これは法務省が行っている救助金の制度だけでなくて、それ以外の官庁が行っている犯罪被害者の支援の財源もここから出すということになっているために、実際にはこのお金をどう使うかという権限を、言ってみれば、法務省の方が管理できるというような形になるのに、ほかの省からすると、財政企画部に予算請求をしてもらうのではなくて、なぜ法務省の方に予算をお願いしてもらわなければいけないかという点でかなりいろいろあって、これは現在でもまだ問題がずっと続いているようなことは伺っていますけれども、そういうことがあるそうです。
ただ、犯罪者のお金を使うことに対して批判がなかったかについては、ほとんどそういった話は私は聞いておりません。
ただし、これはもう少し私は詰めてみないといけないなと思っているのは、先ほどもお話ししましたように、もともとの法務省の予算の組み方が日本と違う、要するに罰金の方はもともと法務省の方の歳入という形で入っているということがこの制度をやりやすい背景にはなっているのかという印象は持っております。
○ 瀬川座長代理ありがとうございました。太田先生、ヨーロッパとか、アメリカは詳しいんですけれども、このような罰金徴収額をとっているというのはアメリカでも幾つかあるんですか。ヨーロッパはいかがですか。
○ 太田教授まず、基本的に最も盛んにやっているのはアメリカとカナダ、北米だと思います。ただ、韓国との大きな違いは、アメリカの場合も、連邦もそうですし、州の場合もそうですし、カナダの場合もそうですけれども、犯罪者で有罪が確定した者に対して刑罰を科すと同時に、ビクティム・ファイン・サーチャージ、要するに犯罪者に追加的に罰金を払わせる。連邦だと多分今でも50ドルだと思いますし(※)、カリフォルニア州の場合には、たしかレスティチューション・ファイン、賠償罰金という名前だったと思いますけれども、最高額は1,000ドルぐらいです。
要するに、犯罪者に対して刑罰として、刑罰と言うと非常に微妙なところもありますけれども、通常科される自由刑等の刑罰以外に追加的に罰金を科すことで被害者支援の財源としているところがあるわけですけれども、韓国の場合には、新たな罰金、こういう追加罰金をつくるのではなしに、従来からとっている罰金を一部4%を転用しています。そういう点では、北米型の制度とは違うことになります。
それから、ドイツなんかの場合には、これは前回のときにお話があったかもしれませんけれども、たしか罰金ではないですけれども、例えば遺産相続のときに一部その費用をこの基金なんかに入れると、その分に関しては相続税が免除されるとか、そういう形で基金の中に組み込んでいるというようなことを聞いたことがあります。ただ、これは古い制度で、最近は制度の変化が激しいですから、余り自信はありませんけれども。そういう点では、例えばアジアのある地域では犯罪者から没収したものをこの基金に組み込むというようなことをやっているところはあります。
済みません、ヨーロッパについて、それ以外で犯罪者から追加的に罰金をとっている例は私はよく存じ上げません。
○ 瀬川座長代理少し外れますけれども、追加的な罰金というのでアメリカのことをおっしゃったんですが、その前に、本来のオリジナルな刑罰は減刑しますか。
○ 太田教授そこら辺は、量刑上いろいろ議論のあるところでありまして、追加罰金のことに関しては、追加罰金を言い渡した場合に従来の量刑の方を加減するのかどうかということに関しての議論は知らないんですけれども、もともとアメリカで大きな議論があるのは損害賠償命令です。アメリカの場合は、損害賠償命令を言い渡す場合に、例えば自由刑を言い渡す場合にも損害賠償命令を言い渡すわけで、これはイギリスなどでもそうでありますけれども、その場合に、量刑上、それはどう考慮していいのかということに関しては、理論上結構大きな問題があります。また、例えば共犯などが3人いる場合に、例えば1人が損害賠償命令で払いやすいから、それを払うことが確実な場合には、量刑上、加減措置をするなど、量刑上、不公平なことも生ずるので、果たしてそれはいいのかどうかという議論があったと思います。そこから推測をすると、この追加罰金を払った場合、それを他の刑の量刑に考慮するのはいいのかどうかという議論も理論上あり得るかと思います。
ただし、一般的には、連邦の場合は50ドル(※)でありますし、州の場合もマックス高い額で1,000ドルぐらい取っているところもあるようですけれども、そんな大きな額を支払わせるわけではないので、だからといって量刑の方が大きく動いているということは考えにくいだろうと考えております。
○ 瀬川座長代理ありがとうございました。
ほかにございますか。
番構成員、どうぞ。
○ 番構成員ちょっと外れてしまうのですけれども、犯罪被害者保護基金の予算を見ますと、韓国はDVとか、最近は性暴力被害者に対する制度的、実際のワンストップセンターの設置等、最近は児童虐待の問題も、とても手厚くやっているという印象ですが、やはりこのような財源の裏付けがあって、お金を持ってくることができるということで、あのような展開をしているのでしょうか。
○ 太田教授これまでの経緯を見ますと、むしろ基金の制度もそうでございますが、これができたのも昨年で、今年から始まっているわけですので、特にDVだとか、性犯罪被害者の支援だとか児童虐待に関しましては、財源ができたから十分な制度ができているという訳ではありません。韓国の場合はDVの問題も非常に深刻な状況にあり、また性犯罪の件数の日本に比べて非常に多いという問題意識から、被害者に対する支援が、特に家庭内暴力に関する立法法、性犯罪被害者の保護とか、処罰に立法も、かなり昔から特別立法が行われてきておりますので、むしろ予算があるからやるというよりも、こういう社会的な立法事実とか、社会的な背景だとか、問題意識だとかというところから展開が進んできて、それに見合う予算がどうしても必要だということで、こういった基金のような工夫をつくろうと、むしろこういう順番ではないかと思います。
ただ、実際に4%ではとても足りない。要するに、法務省だけではなくて、女性家族省だとか、保健福祉省だとか、さまざまなところである意味では取り合いのような状況になっていて、とても4%では足りないので、これを将来4%から更には5%ともっと上げていかないと、とてもではないけれども、この予算の中では収まらない。ただ、そういうやり方でいいのかどうか、基金の利用は法務省だけに限って、ほかの省はほかの省で独自に予算請求するほうがいいのではないかどうかという議論も、いろいろなところで行われているようではあります。
○ 瀬川座長代理ありがとうございました。
よろしいでしょうか。
それでは、3人の先生方、本当にありがとうございました。
引き続き、本検討会に御協力をいただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。どうもありがとうございました。
続きまして、議事を進めさせていただきます。
議題4 海外調査についてでございます。
前回までにお伝えしているように、今回の海外調査では、モデルケースを活用するということが了解されております。調査対象国における具体的な制度、あるいはさまざまな諸事情がありますので、一概に言えませんけれども、そういう形でモデルケースを活用して調査をするということについては合意を得ております。
本日は、国際比較のためのモデルケースの設定につきまして、構成員及び今日御出席の先生方に御意見を賜りたいと思います。
まず、事務局の方から説明をいただきます。
○ 内閣府犯罪被害者等施策推進室参事官それでは、資料4に基づきまして、事務局の方から簡単に御説明いたします。
これはたたき台ということですけれども、英、米、独、仏、韓国における犯罪被害者等への経済的支援の状況です。これは被害者を対象とした、いわゆる補償制度によるもののみならず、社会保障、福祉制度も含むものであります。この状況につきまして、可能な限り具体的に把握して、比較するためのものでございます。
今日はいろいろとヒアリングの際の御議論でも出ておりましたけれども、いろいろと諸事情が各国あるということで、そういったものを踏まえていく必要があると思っておりますが、ひとまずたたき台として事務局が考えたのは、2番に書いてあります(1)~(8)であります。
今日の結果などを踏まえて、適宜選択・修正するものではありますけれども、
(1)死亡したケース
(2)重度の障害が残存したケース
(3)重傷病の精神疾患を負ったケース
(4)夫が妻を殺害した親族間のDVのケース
(5)実兄が弟を殺害したという親族間の兄弟間のケース
(6)国外における犯罪被害で死亡したケース
(7)国外のテロ被害で死亡のケース
(8)日本国内で外国人が犯罪被害により死亡したケース
こういうもので決定してはどうかということを考えておりまして、(1)~(3)については、現行、犯給制度も支給対象となっているもの、(4)については減額になっているもの、(5)以降については、現在制度の支給対象になっていないというものであります。
いずれにつきましても、被害者側に被害を誘発するような帰責事由はないものとして、被害者と加害者の関係性についても記載のない場合は面識のないものとし、いずれのケースも就労時間外、道路交通に起因しないということで、労災ですとか、交通の方の関係の支給はないというものを想定しています。
2ページ目に、それぞれにつきまして、死亡、重度障害、海外の関係の(5)~(7)につましては、平均的な家族構成で、世帯主が亡くなられて、平均的な収入でこういったところの家族というのを想定しております。
重傷病の精神疾患を負ったケースにつきましては、これも被害年齢については統計などを基に、また、平均給与などを基に25歳の女性の独身の方を想定してやってはどうかということです。
夫が妻を殺害したDVのケースというのは、そこにありますような女性の専業主婦で、43歳ということですけれども、これも平均的な家族構成などを基に設定したものでございます。
こういったところが事務局のたたき台となっております。
以上です。
○ 瀬川座長代理ありがとうございました。
御意見、御質問がございましたら、どうぞ。
川出構成員、どうぞ。
○ 川出構成員1つ確認ですが、(4)と(5)のところで「加害者が経済的支援により、利益を得る可能性はない」というのは、被害者に対する経済的支援から加害者が利益を得るということですか。
○ 瀬川座長代理どうぞ。
○ 内閣府犯罪被害者等施策推進室参事官亡くなって、お子さんが残されて、お子さんに支給されたものが加害者ももらう可能性があるかないかという意味でございます。
○ 瀬川座長代理ほかにいかがでしょうか。
太田教授、どうぞ。
○ 太田教授こういうもので横並びに比較をしたいという御趣旨はよく分かるんですけれども、先ほど言いましたように、例えば損失補てんのタイプの補償制度を持っている国の場合には、こういうふうに例えば夫の収入が幾らでとかということを出されても、例えば葬儀費は幾らかかったのかとか、そういう実際の経費などを計算して行うために、こういうものでは恐らく回答を得られないのではないかと思います。具体的にもう少し示してくださいと言われてしまうかもしれないし、これでは答えられませんという可能性もあると思います。これは、あくまでも日本を想定したものでありますので、どこまで具体性を持たせるのかが問題だと思います。
先ほどの奥村先生のイギリスのお話でも、例えば葬儀費用が入っていたりとか、年齢によって何歳まで働くのかとか、いろいろなプラスアルファの可能性があるので、実際どこまで具体化するのかでしょう。ある国で具体化すれば、他の国では合わなくなってくるということで、一律に横並びに表でお示しになられたいのかもしれませんが、韓国の場合は日本と同じで非常にやりやすいですが、そうでない場合はやりにくい面もあるのではないかと思います。むしろ、欧米ではやりにくいだろうと思うんですが、その辺はいかがでしょうか。
○ 瀬川座長代理黒澤構成員、どうぞ。
○ 黒澤構成員モデルケースについては、これはこれでいい。また、こういう比較も必要であろうかと思います。
今日いろいろお話を伺っていても、目的的にこういうものが日本にはないではないか。では、これはどうなのだろうと。逆さまというか、モデルケースでいろいろ国際比較をすると同時に、先ほど太田先生もおっしゃっていましたが、その国に特有な、日本にはない仕組み、制度について、被害者救済がどういうふうになっているのか。そういったものと併用して調査をすることが大事なのではないか。
当然、そういうことをお考えになっておられると思いますけれども、そんな感じがいたします。
○ 瀬川座長代理どうぞ。
○ 内閣府大臣官房審議官犯罪被害者等施策推進室長今、おっしゃられたとおりで、このモデルケースだけで調査をやろうというものでは当然ありませんで、例えば先ほどの葬儀費用云々はどうなんだ。それは当然、こういうときにはこういう葬儀費用がプラスαで出てきますよという形で、備考欄というわけではないでしょうけれども、あくまでもこれは1つ、我々が比較するときの材料として考える。その国独特の制度というのが付加されてくるというもので考えているものでありまして、今までこういう形で、こういうケースだったら、このぐらいが大体あるよ。ほかに、この国にはないけれども、こういう制度がプラスであるよと。あくまでも日本の制度を確立するためですから、現行の日本の制度を頭に置きつつ、大体どのぐらいの状況になっているのかなというのを把握したい。
そのぐらいの趣旨でありまして、これで出てきたものをがしっとした形で出してもらわないと、これからの議論ができませんというものでは当然ございませんので、そこは柔軟に考えていただいていいのではないかと思っております。
○ 瀬川座長代理恐らく、これまでの調査研究というのは、しばしば個々の調査がそれぞれの関心でされていたので、内容の理解について未消化な部分が残った。恐らくモデルケースという議論というのはそこから出ていると思いますので、今、室長がおっしゃったように、できるだけ日本の制度に役に立つようなことを得たいという発想から調査がなされればと願っております。
黒澤構成員、どうぞ。
○ 黒澤構成員例えば今日話題になった国が代わって立替えておいて求償するとか、基金が立替えておいて求償をすると。そういった事項について各国を比較してみる。そういった比較、検討をするということを申し上げたかったのです。
○ 瀬川座長代理太田先生、どうぞ。
○ 太田教授私もこれ以外のことをいろいろ調べるのは当然ですけれども、モデルケースをやるにしても、もう少し具体性がないと、回答を得るのが難しいのではないかと申し上げているのです。制度に関しては一般的な事項プラス葬儀費用プラス夫が退職するまでの基金とかという一般の説明で並んでいるだけなので、だとすれば、勿論これもモデルケースを設定していただいてもいいと思いますが、それ以外に例えばイギリスだったら、先ほどの夫が死亡して、妻がもらう場合に、夫の退職までに実際幾らぐらいもらえるのかとか、私が非常に興味があるのは、年金システムをとっている国の場合に、年金が受給されたケースで長期間の場合、総計どれぐらいになっているのか。あと、この場合のケースに入ってきませんが、児童虐待のケースでありますとか、余り収入的に関係ない幼児とか、高齢者が殺害された場合、もしくは障害が残った場合とか、そういうことにも意識するべき項目は共通で持っておいて、その具体的な支給額を各国で調べるというのが有効ではないかという気がいたします。
○ 内閣府大臣官房審議官犯罪被害者等施策推進室長今、御指摘があったような点は、意見として、これで固めるつもりではありませんので、それを踏まえながら、また修正をかけていきたいと。
ただ、先ほど言われた部分でも、例えば年金だとかだったら、モデルAの死亡したケースで、この人が実際に亡くなったときに、年金をやっている国であれば、定年が60だったら60でこういう形で出ていますよというのは、それで付加して書いていただければ分かるのではないかと思いますし、葬儀費用についても、大体年収で葬儀費用が変わるということは余りないでしょうから、一般的に葬儀費用としてはこれぐらいが支給されていますと付加する。このような形で書いていただくなり、実用させていただければいいのではないかなと思います。
それと、先ほど黒澤構成員の方からもお話がありましたけれども、あくまでも今度は5つの国という形でやっていますので、その国の中でどうなんだと。そのほかの国につきましては、正直言って、私どもは調べる資源というのもありませんので、とりあえず5つの国でそういう形でやっていくというものでございます。
この結果だけに拘泥するつもりは勿論ございませんので、そこは柔軟にやらせていただきますし、また、こういう点も併せて、今、出てきましたように、子どもが被害者だったらどうなるのというのも付け加える必要があるのであれば、付け加えさせていただきたいと思います。それは意見を出していただいたことを踏まえて、検討いたします。
○ 瀬川座長代理ほかに御意見ございませんでしょうか。
中曽根構成員、どうぞ。
○ 中曽根構成員済みません、同じです。つまり、多分国によって年収とか、経済状況も違うと思うんです。先ほど先生がおっしゃったように、韓国ではまた経済状況も違うと思うので、その国の平均の夫で、専業主婦で、子どもが2人の場合は、その国ではどういう形で補償がなされていくのかということを知りたい。それによって、日本ではどうあるべきかということを考えていきたいという、多分同じ意見です。
○ 瀬川座長代理ありがとうございました。
よろしいでしょうか。
岩村構成員、どうぞ。
○ 岩村構成員先ほど先生がおっしゃったんですが、なかなか国によってモデルでというと難しいし、そんなものはないと言われる可能性もあって、ただ、こういう形である程度年収を想定して聞いてみるというのは1つのやり方かなと思います。
ただ、どうしても購買力平価が違うし、給与水準もそれぞれ違うので、その国での本当のイメージが捕まえられるかというところは慎重に考える必要があるのかなと思います。
もう一つは、ある国ではやっていて、日本ではやっていないとか、日本ではやっているけれども、ある国はやっていないとかというのも非常に難しくて、つまりほかの制度が同じようなことをやっている可能性があるので、そこはかなり気をつけて、深く調べないといけないものですから、非常に難しい作業かなと思います。ヒアリングでそれがどこまで分かるかというのは、ちょっと分からないところがあるかなという気がいたします。
○ 内閣府大臣官房審議官犯罪被害者等施策推進室長今、おっしゃられた部分が、正直言って、我々も一番知りたいところでもあり、難しいところなんです。やはり犯給制度以外のところでカバーされているものがあるのではないか。もしくは日本では法の制度でカバーされているが、ほかのところは別の被害者法の制度でやられているのではないかとか、ここにありますように「社会保障・福祉制度によるものを含む」と書いてあるんですが、実際どこまで分かるか。そういう意味で、岩村先生にもお入りいただいているわけですが、事実上、モデルケース云々をいろいろとやりとりするとき、各国の大使館のアタッシェの人たちにも相当御助力をいただかなければいけないなと思っていまして、そういう作業も今、進めているところであります。現時点でどこまでできるか、正直言って分かりません。分からないけれども、やる努力だけはして、とりあえず新しいものをつくるのか、今の制度を拡充するのかは別として、やるだけのことをやったんだというところは示していきたい。
そういうところもございますので、不十分なものかもしれないけれども、そういう努力をしながら、1つの成果を出していきたいという考えでございますので、またいろいろと御助言をいただければと思います。
○ 瀬川座長代理岩村構成員、どうぞ。
○ 岩村構成員1つの例ですが、今日も幾つかそれぞれの国の御紹介がありましたけれども、例えば損害賠償額と社会保障の年金給付を調整するというのがございましたが、フランスの場合だと、犯罪被害の補償の場合はどうなっているか分かりませんが、もし損害賠償絡みだとすると、社会保障の年金はフランスの場合、将来分も全部引くんです。ところが、日本は調整はするんですが、将来分は引かないんです。例えば同じように調整するといっても、実はかの国で考えている調整というのと、こちらの国で考えている調整というのは違うということがあり得るので、その辺も非常に難しいだろうという気がいたします。
○ 内閣府大臣官房審議官犯罪被害者等施策推進室長そういう点も含めて、調査をして、また調査報告が上がってきたときに、専門の先生方でそこら辺の読み方というか、見方というものについても、当然議論はしていくことになろうかと。そういう意味で、この検討に比較的長い時間とっておりますので、あくまでも完璧なものを期待したいんだけれども、それは難しいということを踏まえた上での調査でありますので、そこら辺は今後、また議論というか、検討を重ねていきつつ、日本の制度に向けて判断材料にしていくということで御理解をいただければなと思います。
○ 瀬川座長代理よろしいでしょうか。
どうもありがとうございました。
本日の議論を踏まえまして、海外調査につきまして、モデルケースを念頭に置きながら調査を進めるということで合意をいただきたいと思います。
モデルケースにつきましては、非常に柔軟にといいますか、適宜取捨選択しながら、あるいはほかの社会保障制度とか、その一国のいろんな制度、諸事情を考えながら調査を進めるということで御了解いただきたいと思います。
今日来られた3人の先生方にも御協力をいただきたいと思っていますので、よろしくお願いいたします。
それでは、議事を進めまして、時間もまいりましたので、最後ですけれども、自由討議というところでございまして、もし何か今日付け加えるべき御意見あるいは御質問がございましたら、どうぞこの場でお願いしたいと思います。いかがでしょうか。
どうぞ。
○ 小木曽教授先ほど、報告の中で申し上げようと思っていて忘れていたことが1つありました。日本の被害の回復制度というのは、犯給があり、被害回復給付金があり、振り込め詐欺の救済法がありと、別立てでいろいろありますけれども、それを一本化するという発想というか、議論というか、そういうものはないんでしょうか。
○ 内閣府大臣官房審議官犯罪被害者等施策推進室長現時点では、先ほどの韓国ではありませんけれども、我々も少しでも財源をいろんなところ確保したい。振り込めなどはまさにそういう形で、緊急避難的にとは申し上げませんが、使えるものなら使ってしまえという形で、とりあえず今、持ってきている段階で、それを一本化するという議論は、現時点ではなされていません。とりあえず、まず取れるところを一生懸命探しているというのが実態であります。
将来的に、被害者支援一本化という形になるかもしれませんけれども、ただ、先ほどの韓国の例でありましたように、それぞれの省庁が関与してくる世界の中で、日本の中で横断的に1つの予算をつくって、それを配分していくというのは、正直言って、なかなか困難ではないかという気はいたします。
○ 瀬川座長代理ほかにいかがでしょうか。よろしいでしょうか。
今日は、大変活発な議論を本当にありがとうございました。
それでは、一応第4回の検討会は以上といたしまして、続きまして、第5回の検討会の開催につきまして、事務局より説明をお願いします。
○ 内閣府犯罪被害者等施策推進参事官第5回の検討会は、開催日は来年になりますが、1月26日木曜日の午後1時~午後4時となっております。
議事といたしましては、被害者の方から経済的状況に関するヒアリングをするということと、諸外国における犯罪被害者等に対する経済的支援制度等で、アメリカの制度について冨田教授から御説明をいただくことを予定しております。
また、海外調査につきまして、恐らく最終的に煮詰まったものの御報告になろうと思いますが、そのようなところを現時点では考えておるところでございます。
この被害者の方からのヒアリングにつきましては、有識者の方や関係省庁、構成員の方々にまた御協力をお願いしたいと思いますので、その節はどうぞよろしくお願いいたします。
○ 瀬川座長代理第5回の検討会について御説明がありましたけれども、さらなる御意見がございましたら、事務局の方にお寄せいただければ幸いでございます。
それから、次回はヒアリングを始め、海外調査も含めて、これから準備を進めてまいりますけれども、また御協力をいただきたいと存じます。
本日は、本当にどうもありがとうございました。

(※)会議後、太田教授から、連邦の場合、現在は100ドル(重罪。法人を除く)となっているとの報告があった。

▲ このページの上へ

-