-
犯罪被害者等施策
-

-


第3回「犯罪被害給付制度の拡充及び新たな補償制度の創設に関する検討会」
議事録

○事務局(内閣府犯罪被害者等施策推進室参事官)それでは、定刻になりますので開会させていただきたいと思います。
本日は、お忙しいところをお集まりいただきまして、ありがとうございます。ただいまから第3回犯罪被害給付制度の拡充及び新たな補償制度の創設に関する検討会を開催いたします。
次に、議事次第にありますように、座長代理の指名ということで御案内させていただきます。冨田座長が御体調の関係で急遽、本日の検討会に出席できなくなりましたので、本日の検討会は座長代理に進行をお願いしたいと考えております。その座長代理についてですが、瀬川座長代理と打ち合わせの時間をとることが難しかったものですから、冨田座長と御相談いたしました結果、冨田座長より改めて本日の検討会限りの座長代理ということで、番構成員に座長代理をお願いしたいという御指名をいただきました。そこで、今日の進行は番座長代理にお願いいたしたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
○番座長代理ただいま今回の検討会限りの座長代理として御指名をいただきました。よろしくお願いいたします。
本日は、第3回の検討会ということですが、本日の議事について事務局から御説明をお願いします。
○事務局(内閣府犯罪被害者等施策推進室参事官)それでは、お手元の資料の議事次第をごらんください。この後、引き続きまして、犯罪被害者等の経済的状況に関する現状把握の方法等につきまして、事務局から御説明いたしまして御議論いただきます。
4番目といたしまして、本日は社会保障制度等の概要につきまして、岩村構成員からレクチャーをいただくこととなっております。
また、5番目ですが、ドイツにおける犯罪被害者等に対する経済的支援制度ということで、本日は滝沢先生に御説明をいただくということでお越しいただいております。よろしくお願いいたします。
6番目といたしまして、海外調査につきまして、現時点での事務局の進捗の御報告を、簡単にさせていただきます。
7番目の自由討議は議題を設けておりませんので、特段なければそのまま第4回検討会の日程を御説明をして閉会となろうかと思います。
以上です。
○番座長代理それでは、議題3、犯罪被害者等の経済的状況に関する現状把握の方法等に入りたいと思います。なお、本日の検討会はかなり時間のやりくりをして御出席いただいた方もありまして、予定された2時間を大きく超えることはできませんので、おおむね午後1時45分ごろには議題4に入りたいと思います。皆様、進行に御協力いただきますようお願いいたします。
私の方から少し経緯を御説明しますが、前回第2回検討会で自由討議として、犯罪被害者等の経済的状況に関する現状把握の方法やモデルケースの設定について御議論いただく予定でしたが、時間の関係でできず、次回以降となったものです。その後、8月上旬に松村構成員から資料6-1でございますが、正式に御意見が提出されたことから、本日の第3回検討会までの時間が空いたこともあり、事務局において各構成員から御意見を伺い、それを参考に経済的状況に関する現状把握の方法等に関する案を作成し、本日御議論いただくこととなったという経緯がございます。
前回までの議論でもありましたように、本検討会では犯罪被害給付制度の拡充に係る検討と、新たな補償制度の創設に係る検討を行うものですが、検討の進め方としまして、まず、犯罪被害給付制度等の現行制度の運用状況、問題点を把握した上で、現行制度で何が不足しているのか、犯罪被害者等の経済的支援として何が必要かについて検討し、次に、現行制度の限界の有無、拡充方法の有無、拡充内容等について検討することとしているものであります。その結果を踏まえて、新たな補償制度の創設に係る検討を行うこととなります。
これらの検討を行うためには、犯罪被害者等の経済的状況に関する現状把握を行う必要があるわけですが、これは簡単なことではないと考えられるところ、この現状把握に関する考え方や方法等について御検討いただきたいというものです。この現状把握については大変重要な事項でもありますので、事務局から案を説明していただいた後、各構成員から御意見をいただきたいと思います。
それでは、事務局から、まず犯罪被害者等の経済的状況に関する現状把握の方法について御説明をお願いいたします。
○事務局(内閣府犯罪被害者等施策推進室参事官)それでは、事務局から御説明いたします。資料1をごらんください。まず、資料1を作成した趣旨について御説明させていただきます。本検討会での検討に際して、犯罪被害者等の経済的状況に関する現状把握が必要であるということについては異論のないところであろうと思われます。しかしながら、具体的にどういったことを把握すべきかという点につきましては、基本的な考え方を含め、さまざまな御意見があるように思われます。
そこで、犯罪被害者等の経済的状況に関する現状把握の方法について、現時点における事務局の基本的な考え方や具体的な方法についてお示しし、本検討会の議論に供するという趣旨で資料1を作成いたしました。
このような趣旨で作成しておりますので、基本的な考え方にしましても、具体的な方法にしましても若干前広に記載しております。資料1につきましては、たたき台的なものととらえていただければと思っております。
以下、資料1に基づいて説明いたしますが、本日は後ほど御説明いたしますが、今後のスケジュールの都合もありますので、少なくとも現状把握に関する基本的な考え方とヒアリングについては、構成員の方々の御意見を一通りお伺いしたいと考えております。そして、仮に基本的な考え方について最終結論に至らなかったとしても、ヒアリングにつきましては次回と次々回の検討会で実施できるよう御議論をお願いしたいと考えております。なお、御議論いただく時間を十分にとれるよう、資料内容の説明についてはできるだけ短くしたいと思っておりますが、事前に御意見や御質問をいただいている部分もありまして、補足的な意味も込めて事務局の考えについて、この場で御説明する必要があると考えておりますので、若干時間をいただくことについては御理解いただければと思います。
それでは、現状把握につきまして目的、方法、基本的な考え方について御説明いたします。
まず、目的についてですが、犯罪被害者等に対する経済的支援拡充の必要性、方法等に係る検討を行うためには、犯罪被害給付制度、社会保障制度等を含む現行制度では救済が不十分とされる実情等を整理する必要があると思われます。この整理のために犯罪被害者等の経済的状況に関する現状を把握しようというものであります。
ここで言います犯罪被害者等の経済的状況に関する現状といいますのは、「※2」でも記載してありますように、ヒアリングやアンケート調査などによって把握し得る犯罪被害者等の実際の経済状況と、幾つかの具体的な事例を参考に設定したモデルケースによって把握し得る、現行制度による犯罪被害者等への給付状況等の現状のことを言っております。
このような意味での現状を把握する方法としましては、ヒアリング、アンケート調査及びモデルケースによる把握の3つが考えられると思います。事務局としましては、それぞれについてどの程度できるかということはひとまず置きまして、この3つの方法を使って現状把握したいと考えております。
次に、現状把握に関する基本的な考え方についてです。まず、3項のなお書きにも記載してありますとおり、本検討会の検討の俎上に乗せ、経済的支援拡充の必要性、方法等の検討に活用するという意味で、犯罪被害者等の経済的状況に関する現状に関しましては、便宜上「検討対象とすべきケース」ですとか「何々のケースを検討対象とする」となどという表現を使って説明したいと思います。
では、3(1)をごらんいただきたいと思いますが、検討対象とすべきケースにつきましては、典型的・平均的なものとすべきという考え方もあろうかと思いますが、何をもって典型的・平均的とするのか、その基準の設定自体が困難でありますので、この考え方をとることは極めて難しいと考えます。
そこで、3(2)のア~ウの3つのケースを検討対象とするのが適当と考えております。このア~ウにつきましては、事前に警察庁から御質問や御意見をいただいているところでもありますので、若干補足して御説明させていただきます。
第1回の合同検討会では、本検討会における検討の進め方について御議論いただき、まずは現行の犯罪被害給付制度(犯給制度)についてどこが不十分なのか、改善点はあるのかなどといった点について明らかにするということになりました。そこで、現行の犯給制度の支給対象となっているもののうち、平成20年改正後の制度により受給しているケースについて検討対象とするとともに、現行の犯給制度の対象となっていないケースについても検討対象とする必要があると考え、アとイを記載いたしました。アとイのケース分類ないしケース類型とは若干レベルは異なりますが、検討対象を考えるに当たって必要な視点といたしまして、被害前の経済的状況に回復せず、日常生活に支障を生じているケースというものもあろうかと思いましたので、ウを加えました。内容的には、ウはアにもイにも係るものという整理になるかもしれないと思っております。
なお、ア~ウのほか性犯罪被害のケース、現行制度では何が不足しているのかをあらかじめある程度考えて、そういったケースを検討対象とするということや、あるいは時系列的な観点を入れたケースを検討対象とすることも考えられるところだと思います。
次に(3)ですが、(2)のケースのほか、経済的支援の対象とすべき困窮しているケースについて検討対象とするということも考えられると思います。その場合、困窮のとらえ方については、資料に記載のような考え方があると思われます。
なお、3項で言っております何々のケースを検討対象とするというのは、ここに記載のあるケースについてヒアリング、アンケート調査、モデルケースによる把握のいずれかの方法によって本検討会の検討の俎上に乗せるという意味でございます。
次に、ヒアリングについて御説明いたします。ヒアリングした内容はあくまでも個別事例でありまして一般化はできませんが、犯罪被害者等の実情を理解し、議論を深めるために有効であると思われますし、アンケート調査と併用することで一層議論が深まると考えられ、実施したいと考えているところです。
ヒアリング対象は、先ほど説明した基本的な考え方に基づきまして、資料に記載のあるア~ウとするのが適当であると考えております。
聴取事項につきましては、例として<1>~<8>までを掲げました。ヒアリングに来てくださる方がここまでは話せないですとか、話したくないというのを無理に話してくれと言うつもりがないことは勿論であります。ただ、これまで犯給制度が数回にわたり拡充され、近いところでは平成20年7月に拡充されたにもかかわらず、まだ足りていないという犯罪被害者等からの声もあると。そういったことがあって、この検討会が立ち上げられたことを考えますと、事務局としては立ち入ったことを聞くことにはなるのですが、やはり犯罪被害者等の経済的状況に関する現状を把握するためには、これらの事項について聞く必要があるのではないかと考えているところです。
また、これらの事項につきましては、ヒアリングでは聞けなくても、アンケートやモデルケースによってできるだけ把握していきたいと考えております。
ところで、聴取事項例の<2>にある現行制度につきましては、警察庁から1の「※1」で定義的に説明している現行制度とは異なるのか、異なるとすると、その理由は何かという御質問をちょうだいしておりますので御説明いたします。
結論から申し上げますと、両者は異なるものであります。1の「※1」で定義的に説明しております現行制度は、犯罪被害給付制度のほか社会保障制度等を含むものです。ここで社会保障制度等と「等」を入れましたのは、具体的諸制度のうちどこまでが社会保障制度に含まれるかという社会保障制度の意義ないし範囲につきましては、幾つか見解があるように思われたからです。
他方、聴取事項例<2>では、できれば犯罪被害給付制度や社会保障制度等による公的給付だけでなく、民間の保険給付など私的な給付も含めて受けることのできたすべての給付による補償がどの程度までなされたかを把握したいと考えまして、資料にあるような記載をしたものであります。
対象者の選定方法につきましては、犯罪被害者団体、犯罪被害者支援団体等からの紹介や、犯罪被害給付金に係る裁定が行われるなどして警察で対応した犯罪被害者等から選定することが考えられると思います。事務局としましては、いずれか1つの方法で対象を選ぶのではなく、できるだけ複数の方法で選ぶのが適当と考えております。
ヒアリングで明らかとなりました個人情報につきましては、議事録の一部を非公表としたり、ヒアリング内容を後日活用する際には、あらかじめ説明者から同意を得るなどの方法をとって適切に扱うようにしたいと考えております。
次に、アンケート調査について御説明いたします。アンケート調査につきましても、その結果を一般化することはできないものの、ヒアリングと併用することで犯罪被害者等の実情の理解や検討会での議論が深まると考えられ、実施したいと考えております。
調査対象はヒアリング対象と同様とし、調査事項例はヒアリングの聴取事項と同じとして、これらについて自由回答方式で記述してもらうことが考えられるのではないかと考えております。
対象者選定方法等について考えられるところは(5)に記載したとおりです。
アンケート調査につきましては、本日の御議論を踏まえ、事務局において今後、更に具体的に詰めていきたいと考えております。
次に、モデルケースによる把握等について御説明いたします。事務局は具体的な事例を基にモデルケースを幾つか設定し、これらモデルケースにより現行制度による犯罪被害者等に対する給付の現状を把握するということを考えております。
モデルケースの例としましては、(1)のア~ウが考えられ、モデルケースにより把握すべき事項や比較すべき制度等の例としては(2)に記載されているようなものが考えられると思います。モデルケースにつきましても、本日の御議論を踏まえ、今後、事務局において具体的に幾つか設定し、モデルケースによる把握や比較を行うこととしたいと考えております。
その他、モデルケースによる我が国と諸外国の制度比較につきましては、記載のとおりでございます。
事務局からは以上です。
○番座長代理ありがとうございました。
続きまして、当面の検討スケジュール案、資料2についてです。犯罪被害者等の経済的状況に関する現状把握のため、犯罪被害者等からのヒアリングを実施することに関して、前回第2回検討会で予定していた当面のスケジュール案を変更する必要があるのですが、現状把握に係る検討と密接に関連するものであり、スケジュールを踏まえて現状把握の方法を検討する必要があることから、続けて事務局から説明をお願いします。
○事務局(内閣府犯罪被害者等施策推進室参事官)それでは資料2をごらんいただければと思います。前回、時間の都合などにより御説明いただけなかったり、あるいは更なる説明依頼がなされたものに、警察庁による犯罪被害給付制度の現状に関する事例説明と、公益財団法人犯罪被害救援基金による犯罪被害者等に対する支援金支給事業の事例紹介がありますが、今回は冨田座長が御欠席であることや、複数の有識者構成員の方が所用により途中退席せざるを得ないということを事前にお伺いしていることから、配付資料のない事例説明につきましては、スケジュール的にもう少し後の方にしております。
また、座長代理から御説明いただきましたとおり、ヒアリングをできれば第4回、第5回に実施したいということで、若干、前回御了解いただいたスケジュールを修正しております。第4回につきましては、ヒアリングをいたすとともに、イギリス、フランス、韓国の制度についてヒアリングをして、海外調査の御議論をいただくと。第5回についてもヒアリングを行うとともに、アメリカの制度について御説明をいただき、また、海外調査についても海外調査時期が近くなっておりますので御議論いただき、確定に向けて検討を進めていただくということで、もし、時間があれば、ここで警察庁や救援基金の事例説明をお願いすると。時間の関係でこれが無理であるということであれば、第6回の検討会以降にこういった御説明をしていただくということを考えております。
また、前回のスケジュールのところで国土交通省や厚生労働省にお願いできればと考えております制度についての御説明などにつきましては、第6回以降にしているという形です。
事務局からは以上です。
○番座長代理それでは、現状把握につきまして資料6のとおり、松村構成員、警察庁及び法務省から事前の御意見を提出していただいておりますので、まず、松村構成員からお願いしたいのですが、その前に私の方から少しお話しさせてください。
本日、松村構成員から紹介可能な経済的困窮の事例について、本検討会終了後回収を前提に、個別事例に関する参考資料の提出をいただいております。これにつきましては個別事例であり、個人が特定されるおそれが出てくる可能性があるため、松村構成員からそのような部分については議事録を非公表としてほしいとの要請をいただいております。本年3月25日付の犯罪被害者等施策推進会議決定「犯罪被害給付制度の拡充及び新たな補償制度の創設に関する検討会」及び「犯罪被害者等に対する心理療法の費用の公費負担に関する検討会」の開催について、その8において「座長は、検討会の終了後、遅滞なく当該検討会の議事要旨及び議事録を作成しこれを公表する。ただし、議事録の公表に際し、当該議事録が、行政機関の保有する情報の公開に関する法律第5条各号に掲げる情報のいずれかを含む場合は、座長が検討会の決定を経て、当該議事録の全部又は一部を非公表とすることができる」とされております。よって、個人が特定されるおそれが出てくる部分につきましては、議事録から削除する、あるいは概要としてまとめるなどの作業を行った上で公表するという扱いにしたいと思います。
また、松村構成員提出に係る参考資料については、構成員限りの机上配付とし、本検討会終了後に回収させていただきます。
それでは、松村構成員、お願いいたします。
○松村構成員数々の御配慮、ありがとうございます。私から資料6-1として現状把握の方法についてということで述べさせていただいておりますけれども、既に1回配付しておりますので、その追加分という感じでお話を聞いていただきたいと思います。
今回の経済補償制度の審議に当たりましては、これからの犯罪被害者だけでなくて、既に被害者になってしまった人も現在苦しんでいるという状況を踏まえますと、それらの人も救うべきではないかと考えるわけです。そのために経済補償制度の現状把握をするんですけれども、その場合にはヒアリングということで、現在どのようなことで苦しんでいるのかを皆さんに理解していただくのが出発点ではないかと思います。
以下の12事例に基づき、紹介可能な事例を説明した。
事例A 夫が顔見知りに殺害された殺人事件
事例B 見知らぬ男から暴行を受け重篤な後遺障害が残った傷害事件
事例C 店主が客から暴行を受け高次脳機能障害を負った傷害事件
事例D 重篤な後遺障害が残るも生活保護受給のため犯罪被害給付制度を申請しなかった事例
事例E 妻が暴行を受け重篤な障害が残った傷害事件
事例F 妻を親族に殺害された殺人事件
事例G 妻に重篤な障害が残った殺人未遂事件
事例H 親が子を殺害した殺人事件
事例I 子を殺害され、子の妻も重傷を負った殺人等事件
事例J 親族間による殺人事件
事例K 家族を殺害され、自身も重篤な障害が残った殺人等事件
事例L 夫を殺害された殺人事件
そういうことで、殺人事件の半分は親族間ということで今現在は対象になっておりません。現在の犯給法は、通り魔的な殺人だけが対象になっているように思いますので、改善が必要だと思いますし、このように今の時点で困っているだけではなくて、本当は30年前にも困っていたんだと。だけれども、何も解決してくれなかったということも含めて、是非いろいろなケースを考えていただいて、実際に聞いていただけたらばありがたく思います。
以上です。ありがとうございました。
○番座長代理ありがとうございました。
次に、警察庁、お願いいたします。
○警察庁長官官房総括審議官私どもの方で提出した意見は、かなり技術的な部分でございまして、実質的に今、松村先生がおっしゃられたように、いろいろなケースがありますので、そういう現状をつぶさに見るというスタンスについては、表現として分かりにくいのではないかという部分であったり、落ちてしまうんじゃないかという部分があったものですから、提出したものでございます。
最初の「○」と2番目の「○」を併せて申し上げますと、まず、3(2)のアの部分、現行の犯給制度云々となっているんですが、実は実際の給付の人数を見てみますと、犯給で受けている被害者というのは数としてはそう多くはないんですね。例えば、オウムのケースで見ますと、被害者は6,000人以上おられたんですが、実際に犯給でというのは、そのうちの3分の1もおられません。つまり、ほとんどはむしろ労災とかそういった手当を受けている方でございまして、例としてこの辺どうなるのかなと。むしろ、現行制度による救済が不十分だと言う方がケースには合っているんじゃないだろうかと。
それに関連して、これは多分同じことを言っておられると思うんですけれども、例えば4の(3)のアのような形になってしまうと、今、松村先生がおっしゃられたDさんは、要するに犯給の対象になっているんですが、生活保護の関係で受けられなかったというケースですよね。要するに、支給対象になっているけれども、生活保護との受給調整で困窮になってしまったというケース、こういうものは落ちてしまうのではないかと。そういうことがあるので、この辺の表現ぶりを整理されたらいかがかと。より幅広く広げるようにされたらいかがかというのが、1つ目と2つ目の御提案でございます。
3番目の「○」につきましては、私どもの方としましては、現状できる限り御協力させていただきますけれども、私どもの方で整理した分類の仕方と違うものですから、このとおりピシャッとお示しできるかどうか分かりませんけれども、私どもの方で出せるデータにつきましては、できる限り提供させていただきたいと思いますので、この点については、個別具体的に相談させていただきたいと思っています。
1つ目と2つ目は、表現的にこれだと読みにくかったり、落ちてしまったりするケースがあるので、もうちょっとふわっと書いた方がいいのではないかということで申し上げたものでございます。
○番座長代理ありがとうございました。
次に法務省、お願いいたします。
○法務省秘書課政策評価企画室上席補佐官本日は代理出席させていただいております、内堀と申します。よろしくお願いします。
それでは、資料6-4の2番目に記載してあります意見と申しますか、今後、御検討いただきたい事項について説明いたします。
資料1の2ページ「4 ヒアリングについて」の(4)聴取事項(例)の<1>に「経済的損失(収入の増減、被害により強いられた支出・費用等)」という記載がありますが、被害により強いられた支出・費用等といっても、その内訳はさまざまなものがあると思われます。制度の在り方を検討するに当たっては、支出と費用についてその内訳をできる限り区分して把握することが必要かつ適切ではないかと思われます。そのため、対象者への質問事項を検討するに当たっては、このような観点も考慮の上、例えば、被害によって生じた損害項目として、逸失利益、療養費、被害により引っ越しに要した費用、刑事手続に関して支出した費用など、対象者が回答しやすい質問事項を検討していただければと思っております。
以上です。
○番座長代理ありがとうございました。
それでは、ここで構成員の皆さんから自由な御意見をいただきたいと思いますが、いかがでございましょうか。現状把握の方法、ヒアリングの関係について、御意見のある方はお願いいたします。
○黒澤構成員ちょっとよろしいですか。「4 ヒアリング」の(4)の<2>にいろいろ列挙された事項と、4ページの(2)モデルケースより把握すべき事項の<2>、この両者で年金、医療保険、介護保険がモデルの方には入っていますけれども、ヒアリングの方には入っていないのですが、これは意図的に何か意味があるのでしょうか。
○番座長代理事務局いかがでしょうか。
○事務局(内閣府犯罪被害者等施策推進室参事官)今言われて「そうだな」というところがありまして、多分そんなに意図はないと思っております。モデルケースのヒアリングも公的給付を含めて受けることのすべての給付ということですので、もうちょっとその辺も検討したいと思いますけれども、多分意図的ではないと思います、すみません。
○黒澤構成員それから、3つの方法論について併用すべきという、私はかねてからそういう考えですけれども、ヒアリングにしろアンケート調査にしろ、なかなか一般化することは難しいと思います。そうであれば、この検討会の目的、つまり制度の拡充あるいは新たな制度の創設、そういう目的から考えた場合に、一般的な話というのは結局モデルによって把握した現状ごとにするということになるのか、あるいは法律、制度をつくるときに、立法事実でかくかくしかじかこういうことだからと、勿論ある程度一般化もしますけれども、個別の事情というのも大きくきいてくるわけですが、その3つの方式を併用する、それはそれで私は賛成ですが、この関係はどういうふうに最終的に理解すればいいのか。あるいはやっていくうちに整理されていくのか、その辺のところが読んでいて分からないのですけれどもどのように考えればよろしいのでしょうか。
○事務局(内閣府犯罪被害者等施策推進室参事官)今後、御議論をいただく中で整理されるところもあろうかと思いますが、ひとまずは、モデルで一般的にというより、この3つの方法により、これが把握し得る最大の現状であるということで説明していきたいと考えております。
今日の御議論ですとか、その後進む中でもう少し考え方を整理して、最終的な示し方との関係でどうなのかということも御説明できるようになるかもしれないですけれども。
○番座長代理ほかに御意見のある方。川出構成員、どうぞ。
○川出構成員今お話があった3つの方法の役割分担についてですが、まず、ヒアリングにつきましては、時間も限られいますし、また、現行制度では不十分であるところを明らかにするようなものでないとあまり意味がないと思います。そこで、資料1で3つの類型が上がっていますけれども、ヒアリングは、平成20年度改正後の犯罪被害給付制度により、支給を受けている方で、かつ経済的に困窮されている方、資料1の3つの類型でいえば、イとウの組み合わせのようになるかもしれませんが、そのような方がいいのではないでしょうか。松村構成員から紹介された事例も、多くの場合はこれにあたるのではないかと思います。
これに対してアンケート調査は、もっと幅広く行うべきもので、例えば、被害者の方の中には、現行制度で十分な支給を受けているという方もいらっしゃるかもしれませんが、そのような方も含めてアンケート調査は実施されるうことになるだろうと思います。
もう一つの方法である、モデルケースによる現状把握であるが、私はモデルケースの設定というのは、海外の制度との比較を行うことを目的とするものだとイメージしていましたが、先ほどのご説明によると、必ずしもそれにとどまるものではなく、それを使って現状そのものを把握するということのようです。いまひとるイメージがわきませんので、モデルケースの設定による現状把握というのは、具体的にはどのように行うのかをご説明いただけませんでしょうか。
○事務局(内閣府犯罪被害者等施策推進室参事官)やはりヒアリングやアンケートだけですと、個別的なものにとどまってしまうと思われるものですから、具体的な事例に基づいて、そんなに現実離れをしていないような幾つかの具体的なモデルケース、例えば、御遺族でどういったお立場で、例えばどれくらい収入があってとか、こういう条件であるというものを幾つかつくって、そういった方には現行の犯給制度や社会保障制度などによると、具体的にはどういった給付がなされるのかを落とし込んでいって把握してみると。そうすると、現行の犯給制度や社会保障制度等では、こういう人に対しては総額はこれくらい、この内訳はこういうことについて支給されているということが把握できるであろうと。そうすると、まさに第1回に御議論いただいた総論的な、何が足りていないのかということについてもできるだけ明らかにするということに資するのではないかと考えております。
当初は、確かに検討会で海外制度と比較するというところでモデルケースを使うということで、平成18年の海外調査とは少し違うことをやってみたいと御説明しましたが、今申し上げたような犯罪被害者等の経済的状況の把握の一方法としても使えるのではないかということで、今やっておるところです。これにつきましては、やはり抽象的にお話ししているだけですと、なかなかお分かりいただけないと私どもも事務局としても自覚しているところですので、考え方やこういったようなということをお示ししつつ、実際にはこんなもので考えていますということを徐々にお示ししたいと思っているところです。
○番座長代理先ほど松村構成員からのお話の中で、親族間の事件で犯給法の対象にならなかったという方もかなりいらっしゃると、そういうことも問題であるという御趣旨だと受け止めてよろしいのでしょうか。
○松村構成員そういうことでございます。
○番座長代理それでは、ヒアリングの話なども出ましたけれども、ヒアリングの方法等についてスケジュールのこともありますので、事務局はいかがお考えでしょうか。
○事務局(内閣府犯罪被害者等施策推進室参事官)事務局といたしましては、先ほど御説明したようなスケジュール案から考えますと、ヒアリングでお聞きする方の人数は海外調査前ということでありますと、最大5人程度であろうかと考えております。
○番座長代理現実にスケジュールからいって5人程度が最大ではないかということですが、その点についていかがでしょうか。
中曽根構成員どうぞ。
○中曽根構成員ちょっと話を前後するのかもしれませんけれども、アンケートは無記名で行うということですか。
○事務局(内閣府犯罪被害者等施策推進室参事官)恐らくそういった形になっていくかなと思っておりますが。
○中曽根構成員ヒアリングといいますと、やはり皆さんの前でお話をするということで、そういうことができる被害者もおられますけれども、できたら余り表に出てこないで、でも、本当のことは言いたいという方たちもたくさんおられると思います。また、東京までは、なかなか出てこられないという人たちもおられると思いますので、やはりそういう意味ではアンケートは大きな意味を持っていると思いますし、本音が出てくるのではないかと思います。ヒアリングの5名程度というのもいろいろな時間的な問題で考えれば仕方がないという言い方は失礼なんですが、妥当なのではないかと思います。
○番座長代理松村構成員、お願いします。
○松村構成員私も、タイミングが合う人とかいろいろありますので、最大限5人に聞いていただければ、1人30分としても150分ですから、かなりのことを聞いていただけて、理解していただけるのではないかと思います。5人ぐらいやっていただければありがたいと思います。
○番座長代理よろしいでしょうか。
それでは、当面の検討スケジュールについては検討状況、ヒアリング対象者との日程調整等によって変更はあり得ますが、このようなスケジュールで進めていくということで、特に犯罪被害者等からのヒアリングについては、第5回検討会までに資料1に沿った形で5人程度を選定し、お話を伺うということで、次回第4回検討会においては松村構成員から御紹介いただいた方にヒアリングをお願いすること、また、その他のヒアリング対象者については本日の検討を踏まえ、事務局において調整を行い、実施可能なヒアリングを行うということで御了解をいただいたという理解でよろしいでしょうか。ありがとうございます。
それでは、議題4に移りたいと思います。社会保障制度等の概要でございます。犯罪被害者等の経済的状況に関する現状把握、犯罪被害給付制度の拡充についての検討、新たな補償制度の創設についての検討を行うに当たり、犯罪被害者等のみを対象とした経済的支援制度のみならず、結果的に犯罪被害者等の生活や経済的状況を救済・支援している社会保障制度等についても把握し、考慮することは重要なことだと思っております。よって本日は、社会保障制度の専門家である岩村構成員に社会保障制度の概要について御説明いただくこととしております。
岩村構成員、よろしくお願いいたします。
○岩村構成員ただいま御紹介いただきました岩村でございます。社会保障法を専攻していることから今日、社会保障制度の概要を話すようにということで御依頼を受けましたので、少しお時間を頂戴してお話ししたいと思います。ただ、厚生労働省の方がお二人もいらして、そういう方の前で話をするというのは非常にやりにくいのですが、やってみたいと思います。
お手元に今日は資料3があると思います。それに沿いつつお話をします。ディスプレイにも出ておりますが、資料3と同じものでございますので、どちらをご覧いただいても結構でございます。
まず最初に、社会保障というのは一体何かということを少しお話ししておきたいと思います。実は、社会保障というのは何を指すかということになりますと、欧米主要国を見てみても共通する概念というか、考え方というのがあるわけではありません。例えば、アメリカでソーシャルセキュリティ(social security)と言うと、基本的には老齢年金や障害年金を指すと一般には理解されていて、医療の制度というのは入ってこない。ごく低所得者の方、それから、高齢者向けの公的な医療制度というのはありますが、ソーシャルセキュリティと一般の人に言ったときには年金を思い浮かべるのが通常だろうと思います。
他方で、例えば、私はたまたまフランスをやっていますけれども、フランスの場合、社会保障という用語、英語で言うソーシャルセキュリティはフランス語だとSecurite socialeとなります。これは基本的には社会保険、家族手当そして労災保険を指しまして、例えば、福祉の制度や日本で言う生活保護のようなものは、社会保障という観念の中には一般的には入らないと考えています。
ところが、ドイツは、フランスとは違って、社会保障法は社会法典をもとにして社会法(Sozial Recht)と言いますけれども、これには社会保険も入りますが、社会福祉といったものも入っています。このように、共通して何が社会保障かというのをとらえることはなかなか難しいということがあります。
そういう意味で、何が社会保障かというのは、それぞれの国の制度の沿革であるとか、あるいは経済・社会の在り方、政治の状況、もう一つ比較的大きいのは、特にこれは大陸ヨーロッパや北欧の場合ですが、、労使関係、更には、人々のより一般的なものの考え方といったものに左右されるということが言えるかと思います。
翻って、では、日本はどうだろうかということですが、これも何が社会保障の制度なのかを一般的に定義する法律はありません。それでも幾つか考え方はありますけれども、非常に大ざっぱにまとめると憲法第25条、生存権の理念に基づいて設置されているいろいろな制度の全体だと考えていただければいいだろうと思います。ただ、何が入るかということになると、実は今申し上げたように、固まった考え方があるわけではありませんで、人によって異なるということもあろうかと思います。
一般的には、かつては社会保障制度審議会というのがございまして、社会保障に関するいろいろな法律というのは、そこで一回審議するということをやっていました。ですので、従来であれば社会保障審議会にかかるものが社会保障だと、あるいはそれに準ずるものと考えて言うことができたんですが、今は社会保障制度審議会というのはなくなってしまったので、そういう制度的な意味で何が社会保障かというのを考えるものは、はっきり言うと法律的にはないのかなと思います。
そうはいっても、では、何が入るのかということは考えなくてはいけない。ある程度理論的には考える必要があるかもしれないし、政策などを考える上でも必要でしょう。そうしますと、まず第1に、通常挙げられるものとしては、いわゆる社会保険というのがあろうかと思います。これは、基本的には強制加入というのを前提としまして、被保険者になる方、それから、労働者、サラリーマンの方の場合ですが、その被保険者を雇っている事業主の人から保険料を集めまして、それを財源にして保険給付、この保険給付というのは例えば、医療のように現物もありますし、典型的には年金のように金銭で行うことがありますが、それを支給する仕組みというのがあります。日本の社会保障制度の根幹にあるのが、この社会保険であると言っていいだろうと思います。
もう一つ重要なものとしては、学問上はよく公的扶助と言いますが、具体的に言うと日本の場合は生活保護になりますが、その生活保護、それから、いわゆる社会福祉に属するものを挙げることができます。これをどう言ったらいいかというのはなかなか難しいんですが、これまたものすごくアバウトに申し上げますと、保険料をあらかじめ支払っていただくことを要件とはせず、基本的には税金を財源とする仕組みといってよいかと思います。もっとも、子ども手当、その中に含まれているような形になっている児童手当といったものもあって、すべてが財源が税金というわけではないものもないわけではなくですが、これが社会福祉に入るかどうかも一つの議論になりますけれども、基本的には税を財源としまして、その対象となる人、つまり給付やサービスを受ける人のニーズ、個別の状況に応じて給付なりサービス、これは現金でやる場合もありますし、介護のように現物で行うものもありますが、そういったものを提供するというのがあります。ほかにもあるんですが、大きく言うとこういったものが日本の社会保障制度を構成していると考えられている主なものだと言ってよろしいかと思います。
少し立ち入って簡単にそれでも御説明しようと思いますが、社会保険ということになりますと幾つかに分けることができます。1つは、いわゆる被用者、つまりサラリーマンの人、より正確に言うと、いわゆるフルタイムで働く正規の従業員というか正社員を対象とする被用者保険というものと、旧労働省が所管していた労働保険とがあります。細かくは立ち入りませんが、被用者保険としては今出ているもの、それから、労働保険としては労災保険や雇用保険がございます。
それから、もう一つの柱としては、被用者、つまりサラリーマン、正規のフルタイムの正社員の人たちと、その被扶養者、家族の人たち以外の人を対象とするというのを、括弧がついているのは理由があってそう書いたんですが、そういうことを想定した制度というのがございます。
具体的には、主として市町村がやっておりますけれども国民健康保険と、国民年金のとりわけ第1号被保険者ということになりますが、それらが入ってまいります。「(ことを想定した)」というのは、実は例えば、国民健康保険とか国民年金(第1号被保険者)のところには、今、正規でない被用者の人たちというのがかなり入ってきてしまっているということがございます。そういうことから、今、社会保険、被用者保険については適用範囲をどうするかを審議会などで現在議論しているという状況がございます。
あともう一つは、こういうサラリーマンかサラリーマンでないかを区別しないでいる制度がございます。本当に区別していないかというとちょっと問題ですけれども、例えば、介護保険とか後期高齢者の医療制度、つまり75歳以上の高齢者の方を対象とする医療制度といったものがあります。
介護保険はまだしも、後期高齢者医療制度が社会保険かというのは非常に微妙です。というのは、大まかに言うと全体の財源の半分が税金ですし、4割が現役の医療保険の被保険者からの拠出金で賄われていて、後期高齢者の75歳以上の方々の保険料というのは全体の1割の財源にしかなっていないということがあって、社会保険と言えるかどいうことになるとなかなか難しいんですが、一応、法律の構成としては被保険者という言葉を使い、保険給付という言葉を使っているので、ここでは社会保険というところに入れております。
他方で、もう一つの柱であります公的扶助と社会福祉にどういうものが入るかということですが、1つは先ほど申し上げましたように生活保護が入っております。これはよく最後のセーフティネットと言われますけれども、困窮していって他のあらゆる手段、つまり預貯金、資産、就労能力といったものを全部使っても、生活保護基準で定める最低限度の経済生活を営むことができないというときに、足りない部分、最低限度の生活水準に達しないところについて生活保護で給付をしましょうという仕組みです。これは勿論、経済生活を支えるという点で重要なんですが、もう一つ重要なのは、生活保護を受けると国民健康保険の加入者ではなくなって、生活保護の方で医療扶助という形で医療の提供がなされる。それから、介護についても介護扶助という形で提供がなされるというところも、もう一つ重要なところです。場合によっては、被用者保険に入っているけれども、例えば、世帯人が非常に多くて、しかし、世帯の主たる生計者の賃金が非常に低いときには、最低生活水準に足りないというケースが出てくるので、そういった場合には生活保護は受けますけれども、医療そのものは健康保険でというケースも出てくることはございますが、そういうケースを除くと生活保護の場合は基本的に医療や介護もくっついてくると考えていただくといいと思います。
もう一つ、福祉の領域になりますと、いろいろなものがありますので、そのすべてを取り上げることはできませんが、主なものとしては、例えば障害者福祉と児童福祉を挙げることができると思います。障害者福祉については、現在の制度では障害者自立支援法に基づいて障害者の方々のための介護のサービス、あるいは入所サービス、就労支援、場合によっては更正医療と昔は言っていましたけれども、障害が悪くならないようにするといった医療をこの仕組みの枠の中で行っております。この財源としては国及び地方公共団体の税が中心であり、サービス受益者も一定の負担をするという仕組みです。
もう一つ、恐らく現代において重要なものとしては児童福祉がございます。これも内容は非常に多岐にわたりますけれども、典型的に挙げることができるのは、1つは児童保育であり、今これは同じ内閣府の中で改革の問題を検討しております。それから、児童養護もあります。これは次に出てくる児童虐待と今はほとんどかぶってしまっているところがあります。そして児童虐待の防止を挙げることができます。それから、児童福祉に入るかどうかは問題としても、金銭給付として、子ども手当なりその中に形式上に含まれている児童手当といったものが存在します。そのほか、例えば、母子福祉であるとか、障害者の関係で言うと、例えば、身体障害者の福祉法もありますし、知的障害者の福祉法もありますし、その他発達障害、精神障害といったものがそれぞれ個別法としてあり、それぞれの障害の類型に応じたサポート体制も組んでいるところでございます。
もう一つの項目としてお話ししておかなければいけないのは、今、社会保障制度がどういう問題に直面しているかということでございます。ものすごく大まかに言いますと、日本の社会保障制度というのは大体高度成長期までに、ほぼ現在の姿ができたと言ってよろしいのかなと思います。しかし、第1次オイルショック、第2次オイルショック、更に円高というような状況に見舞われて、1980年代以降は、むしろそれまでにつくり上げた制度を大きく変わってしまった経済、社会状況にどうやって合わせるかが中心的な課題になったと思います。
どういうものが要因かということは今申し上げましたけれども、主なものを挙げると、1つは経済成長が1980年代以降、余り大きなものにはならない、場合によってはマイナスということがしばしばあるということです。
それから、やはり何といっても日本の場合は非常に急速に高齢化が進んで、そのために高齢者を対象とする給付費というのが急速に膨張してきているということが挙げられます。
更に、それとの裏腹の関係にもあるんですけれども、他方で、少子化がこれまた急速に進行しているということが挙げられます。なぜ少子化が問題かというと、要するに、社会保障の給付の原資を財源を提供する世代、つまり、働いて国民所得をつくり上げてくれる世代の数が減ってしまっているというところが、社会保障制度の今後の運営、制度設計を非常に難しくしているところだと言うことができます。
もう一つは経済の国際化で、今、円高で話題になっていますが、かつてのように一国の経済である程度閉じたところであれば、社会保障制度をどうしようが経済や社会にそれほど関係なかったんですが、経済活動が非常に国際化しますと、自分たちの国だけである制度をつくってしまうと、それが非常に経済活動に大きな影響を及ぼすということが出てきてしまった。そのことが制度設計の幅の広さを狭める効果を持ってきているということがあります。
最後は、今まで申し上げたことのまとめみたいなものですけれども、国や地方公共団体の財政が非常に困難な状況になっているということを挙げることができるかと思います。
そういったことから、1980年代以降はどうやって新しい経済・社会の状況に社会保障制度を合わせていくかというところが大きな政策の動きであったと思います。先ほど申し上げたような変化の要因の中で、例えば、増える給付費を賄うために保険料の率や額を上げるとか増税をするということは勿論考え得るわけですけれども、実際にはいろいろな経済条件の制約の中では、なかなかできないということになります。そうすると、何が起きるかというと、特に高齢化に象徴されますけれども、給付やサービスが自然に増えていく、あるいは政策的に新しい給付や何かで対応しようと考えるときに、そういったものを賄うための財源を確保する見通しが立たないということが挙げられます。もっともそれを言ってしまうと実は身もふたもないんですが、政策を考えるということは、ある意味で非常にリアリスティックに物事を考えなければいけないので、先立つものがないことにはどうしようもないという部分がございます。
そうすると、1990~2000年代の前半ぐらいまでどういうことをやってきたかというと、80年代に至るまでのところで築き上げてきた給付などについて、その内容を見直すことです。放っておくと給付水準が上がっていってしまうので、それを抑制する、更には、場合によっては給付水準を引き下げるというようなことをやってきたのが80~90年代、2000年代の前半くらいまでの大きな政策の流れだったと言っていいかと思います。勿論、給付内容の見直しとか抑制するとか、引き下げるということだけをやっていたというわけではありません。ただ、大きな全体の流れを見ると、そういう方向だったと言ってよろしいと思います。
給付の内容、水準、サービスの受給者の範囲という問題を今申し上げたことに当てはめてみます。例えば、給付の内容や水準を充実させたい、あるいはサービスの受給者の範囲も今よりも広げたいということを考えたときには、これを言うと本当に身もふたもないんですが、やはり財源の調達ができるかどうかというのが現実的には非常に大きな政策の決定要因ということになってしまいます。
ところが、実際には先ほど申し上げたように、いろいろな諸条件の中で保険料率や保険料額を上げるとか、増税するといったことにはいろいろな難関があって、そう簡単に新しい財源を見つけるというわけにはいかないということになる。それがずっと2000年代前半までの政策の基調、あるいは2000年代後半ちょっとまでの政策の基調だったんですが、私などはある意味でやり過ぎたと思っています。2000年代末ころから少し政策を変えようという話になり、そうした方向の新しい政策の到達点というのが、つい最近6月に出ました税と社会保障の一体改革の話ということになります。つまり、とりわけ財源としては社会保障のために消費税を考え、社会保障の給付体系あるいは制度体系全体を新たに見直して、新しい社会条件、経済条件に対応するような制度にしていこうという方向に今、展開しつつあるところだと思います。ただ、消費税と言った途端に与党は選挙に負けるので、どうなるのかというのはこれから先の話だという気がいたします。
以上のお話を最後にまとめさせていただきますと、少なくとも社会保障制度を考えたときに、制度設計のポイントというのは一体何かということだと思います。社会保障制度というのは、これもものすごく大胆に言ってしまうと、要するに、社会保険料や税金などで確保した財源を給付やサービスとして配分するという仕組みであるということが言えます。そうしますと、これこそ本当にリアリスティックに考えていけば、では、必要な給付やサービスを拡充していくといったことを考えるのであれば、やはり必要な財源をどうやって調達して確保するかを考えなくてはいけない。そこから先ほど申し上げたように、社会保障と税の一体改革という話が実は出てきたとお考えいただくといいのだと思います。
ただ、実は財源の確保だけで問題が解決するかというと、必ずしもそうではなくて、一番最初に書きましたように、要するに、社会保障制度というのは社会保険料や税などでお金を集める。ということは、更に言い換えると、国の中の経済活動から一定のお金を取るという話なんですね。そうすると、給付として再分配するための原資を確保しようとすると、やはり国の経済活動というのがきちんと動いてくれないと、お金は集まらないということになります。したがって、配分しようとする給付などのサービスを拡充しようとするのであれば、それを支えるに足る経済成長をどうしても考えていかなくてはいけないということになるのだろうと思います。
実は、欧米諸国もそこが一番悩んでいるところで、経済成長が大きく伸びていかない中では、なかなか社会保障費に充てるべき財源というのも増やせないというジレンマの中に今いるということになるかと思います。
あともう一つ、給付の内容と水準の関係で重要なことは、一般的にはあまり指摘されないんですが、各方面にいろいろと目配りした設計をしませんと、給付の過重な受給であるとか過重な供給というのが社会保障の場合は非常に生じやすいということがあります。そういう観点から、実はモラルハザードを防ぐということも、制度設計を考える上では一つ頭の中に置いておかなければいけないものであるかと思います。
モラルハザードと言うと場合によって非常に悪くとられるんですが、別にこれは日常用語で言う故意に給付を受けようとするということでは必ずしもなくて、ある制度設計をした結果として、個々の受給者が別に意識をしなくても過剰受給に陥ってしまう、あるいはサービスの提供者の方が別に意識はしないんだけれども、過剰供給になってしまうということが発生するとお考えいただくといいと思います。
日本においてモラルハザードが生じて、過剰受給・過剰供給が発生したものとして一番よく知られているのは、老人医療を無料化したときの事態でありまして、その結果として高齢者の医療消費というのが爆発的に伸び、他方で医療機関の高齢者向けの医療供給というのが爆発的に増えてしまった。これは要するに、基本的に医療を受けた際の一部負担金というのをなくしてしまったために、いわばモラルハザードが起きて、そういう状況になってしまった。後期高齢者に至るまでの流れというのは、そこをどうやって解決するかという実に20年以上に及ぶ問題の解決のための歩みだったということが言えると思います。一度そういう制度をつくってしまうと、既得権化してしまい、制度を改めてモラルハザードが起きないようにするというのは非常に難しくて、現在の後期高齢者制度のもとでも実はその問題は完全には解決していないということが言えると思います。
あと、もう一つ制度設計で考える上で重要だと思うのは、周辺に位置する、つまり先ほど社会保障の外縁は何かというのは余りはっきりしませんということを申し上げたんですが、社会保障の制度と結びついていると言えば結びついているし、社会保障と同じ考えに基づいているかというと、必ずしも基づいていないというようなものが幾つか挙げられます。例として挙げたのは被爆者援護ですが、これはある意味、国家補償というような観点が入っています。医薬品副作用被害の補償制度もありますが、ある意味では無過失責任的なものです。それから、公害の補償制度もあります。そういったものとのバランスというものも、やはり制度設計を考える上ではどうしても考えておく必要があります。そこでアンバランスが生じるというのは一方では不公平感を発生させることになる原因かなと思います。
もう一つは、これは社会保障をやっているとこういうことばかり言われるので、もううんざりという気もしなくもありませんけれども、制度が長期的に維持できるかどうかということも重要なポイントになります。そのためには、先ほど申し上げたように、基本的には経済活動の中からお金を集めてきて、それを再分配するということですので、そうすると、とにかく安定的な財源というものが確保できるかというのが一つのポイントになります。今、日本の社会保障は何が困っているかというと、結局のところ安定的な財源の確保のめどが立たないというところが一つ大きく困っているところです。
もう一つは、やはり将来の給付費というのがどうなるのか。これは医療のように、そのときにだけという短期給付の場合で、将来の給付費は関係ないんじゃないかと一見すると思われるものでも問題となります。先ほど申し上げたように、高齢者医療については無料化をやった結果として爆発的に増えてしまって、短期的な給付の問題のはずなのに、その及んだ影響は非常に長期に及びました。年金といったような長期にわたる定期的な給付の場合は、当然、将来どうなるかは考えなくてはいけません。そして、先ほど申し上げたように、高齢化が進んでいる中では一回長期給付を支給しますと、それが非常に長い期間にわたって支給されるので、長期的にどういう給付の見通しになるかということは当然考えなければいけないということになります。高齢化については今お話ししてしまったので、飛ばします。
最後は、やはり管理・運営をいかに効率的・合理的なものにするかということも重要なポイントだろうと思います。制度を複雑にしますと、いろいろなところで見落としがあって、問題が生じたり、あと、制度を複雑にするとそれだけ管理・運営コストが上がるということもあります。他方で難しいのは、では、全部東京に一元化すればいいかというと、必ずしもサービスを受ける人にとっては便利ではないということがあるので、そういう管理・運営面での効率性・合理性をどうやって確保するかということも、もう一つ考える必要があります。
個別的にその都度ニーズを測定して給付するというのは、管理・運営コストが非常にかかります。逆に、社会保険が典型ですけれども、非常に定型化されたものを提供するというものですと、それほど管理・運営のコストは比較的かからないということになって、それは給付設計をどうするかということと結びついてくる問題だと考えてよろしいかと思います。
限られた時間の中でいろいろなことをお話ししようと思って、ちょっと早口になってしまって申し訳ありませんでしたが、もし、何か御質問があれば限られた範囲ですけれども、お答えしたいと思います。どうもありがとうございました。
○番座長代理どうもありがとうございました。
御質問のある方、どうぞ御自由にお願いします。
瀬川構成員どうぞ。
○瀬川構成員最初に共通する概念がないということをおっしゃったので、こういう質問をしていいのかどうか迷うところなんですが、1点お尋ねします。IVのところで1980年代以降の再調整期ということをおっしゃったんですが、欧米では同じような状況があるような感じもするんですけれども、その点はいかがでしょうか。
○岩村構成員欧米でも同じようなことはございます。やはり特に欧米の先進諸国に共通するのは、一つは高齢化の進展ということでございまして、そうしますと、例えば年金については年金の給付費が膨脹するということはございますし、それから、高齢者についても医療費が増えるということはございます。更には、高齢者の介護のニーズも増えていくということも同じであると言ってよろしいと思います。ですので、例えばドイツの場合であれば、日本がある程度モデルにしたわけですけれども、高齢者の介護のニーズに応えるために介護保険というものをつくっておりますし、他の諸国においても高齢者の介護をどうやって提供するかということは、ほぼ共通して問題になってきているというようなことはありまして、それぞれほかの分野についても同じようなことはあると言ってよろしいかと思います。
ただ、日本の特徴は、ほかの国に比べて非常に急速に高齢化が進むというところでございまして、更に、少子化も実は急速に進むというところが、ほかの国と比べたときの大きな特徴と言ってよろしいと思います。
○瀬川構成員ありがとうございました。
○番座長代理ほかにいかがでしょうか。
松村構成員どうぞ。
○松村構成員ちょっと教えてください。オウム事件のときの補償がありましたよね。あれはいわゆる一般的な公的補助、社会福祉の中に入っていると考えてよろしいですか。
○岩村構成員ちょっと私はそちら方面まで完全に把握していないんですが、オウムの場合の補償は、私の理解する限りでは社会保障の中には入っていないと思います。政府の方針としてどう扱ったかは分かりませんけれども、一般的には普通は社会保障の中には入らないと考えてよろしいと思います。
○松村構成員ということは、つまり個人的な補助だったということですか。
○岩村構成員個人的な補助かどうかというよりも、ある特定の出来事に対して政策的・政治的に何らかの形で補償するというものなので、そういう意味では非常にアドホックなものだということで、普通は社会保障だとは考えないと思います。
○瀬川構成員私の理解では、テロというものに対する特別な立法だったと思っています。
○内閣府大臣官房審議官犯罪被害者等施策推進室長いいですか。今の点はそういう理解でよろしいかと思います。
私の方からも、現在のいわゆる犯給制度、幅広く犯罪被害者に対して支給すると。これは社会の連帯・共助の精神に基づいてという位置づけになっているわけなんですが、今の先生のお話ですと、最後に出てきました周辺に位置する諸制度という位置づけになるのかということが一つと、もう一つは税の問題で、いろいろな議論があるんですが、一部の国ではいわゆる罰金という、ある特定的な財源をベースにそういう制度を組み立てていると。これについても特定財源的なものでも社会保障の原資という意味では位置づけられるということでよろしいんでしょうか。
○岩村構成員まず第1点については、おっしゃるとおり、私自身は犯給法の現在の制度というのは社会保障ということではなくて、周辺に位置する制度と考えることになるのかなとは思っております。
それから、私は犯罪被害者の制度を余りよく知らないので何とも言えないんですが、通常考えるのは社会保険料と税というもので、多分、罰金というものまでも一方ではあるのかもしれませんが、普通、社会保障の財源として罰金を挙げるのは余りないのではないかと理解しております。
○番座長代理よろしいでしょうか。岩村構成員、ありがとうございました。
次に、議題5、諸外国における犯罪被害者等に対する経済的支援制度等に入りたいと思います。我が国における犯罪被害給付制度の拡充について、また、新たな補償制度の創設について検討するに当たり、現在、諸外国における犯罪被害者等に対する経済的支援制度等がどのようになっているのかを把握することは、大変有意義であると考えられます。また、本検討会では本年度、諸外国における犯罪被害者等に対する経済的支援にかかわる制度等について調査を実施する予定です。本日は、ドイツにおける犯罪被害者等に対する経済的支援制度について専修大学法科大学院の滝沢誠准教授に御説明いただくこととしております。
それでは、滝沢先生、よろしくお願いいたします。
○滝沢准教授ただいま紹介に預かりました、専修大学の滝沢誠と申します。今回このようなところで報告させていただくのは初めてで、大変緊張しております。至らないところもありますが、よろしくお願い申し上げます。
まず最初に、レジュメに沿って御報告させていただきます。なぜドイツの法制度に着目されるようになったのかということから、まず、最初に述べさせていただきたいと思いますが、既に御存じのように、平成16年には犯罪被害者等基本法が成立いたしまして、その後、平成17年12月から平成22年3月までの間に第1次犯罪被害者等基本計画が策定され、それに基づいていろいろな施策が行われてきました。その後、平成23年3月に第2次犯罪被害者等基本計画の策定が閣議決定されまして、本年4月より5年度にわたりまして実施されることになっています。
その中では、引き続き重点課題に関する施策としまして、犯罪被害給付制度の拡充及び新たな補償制度の創設といったものが含まれております。なぜそのようなことになったのかですが、恐らく従来までの犯罪被害者の補償金に基づく給付制度というものが存在していましたし、あるいは公益財団法人、犯罪被害救援基金に基づく給付事業があります。また、そのほかの社会保障制度に基づく措置が行われておりまして、個々の被害者の状況に応じまして適切に支援が行われてきたものと思われます。
ただ、そうだとしましても、その後新たな局面を迎えているのではないかと思います。それは犯罪被害者等基本法の第3条2項では、犯罪被害者は犯罪の被害を受ける前と同じレベルの生活になるように、国が政策を設けなければいけないといったこと。あるいは被害者の支援、犯罪被害を受けた後に迅速に被害者の支援を行わなければいけないといったこと、あるいは加害者に対する刑事手続に付随して、なるべく早い段階で被害者の損害回復が実現されるようにしなければいけない。また、犯罪により生じた経済的損害については、できる限り確実な形で回復される、例えば、後遺障害を持たれている方にとっても確実に加害者の資力にかかわらず給付できるような制度がどうしても必要になってくるのではないか。その中で、やはりドイツの制度が着目されてくるには、これから申し上げますように、それなりの理由があるのではないかと思われます。
そこで、次にドイツの制度、被害者保護に関する制度について若干、必要な点について申し上げます。
まず、ドイツ連邦共和国におきましては、ボン基本法の第1条におきまして、ナチス時代の反省も踏まえまして、人間の尊厳は冒すことができない至上のものという形で、人間の尊厳の不可侵というものが規定されています。また、法治制度に関しては民主主義的な国家あるいは社会福祉国家が本基本法第20条1項に想定されています。また、連邦制というのが採用されておりまして、16の州が基本的にはそれぞれ必要な範囲で権力を行使するということで、例えば、例外的な外交や国防といったものは、州ではなくて連邦が行う。それ以外については、基本的に16の州がそれぞれ責任を持って実施するという制度になっております。
また、次に、刑事司法に関する概要ですが、もちろん刑事訴訟の基礎理論的な対立はありますが、おおむね日本と似たような刑事訴訟制度を備えております。例えば、国家機関である検察官が起訴をするといった制度、ただ、ドイツで特徴的なところは、検察官は法定の理由がある場合以外は、有罪となり得る証拠がある場合には検察官は必ず起訴を義務づけられ、起訴法定主義あるいは裁判長の職権が極めて強いという職権主義や、あるいは民刑の峻別というのが厳格に守られているところがあります。
また、ドイツの刑事司法制度の中で特徴的なものとしまして、現行の刑事司法制度の理念と被害者保護の調和を図るような法制度というのが数多く存在しています。例えば、一般の被害者が私人として訴追をすることができる私人訴追制度、あるいは検察官が公訴を提起したら検察官の公訴提起、実証活動とはまた異なるベクトルでの訴訟主体として犯罪被害者が訴訟活動等を行うことができる訴訟参加制度、あるいは起訴された事件について刑事裁判所が被告人に有罪判決を言い渡す場合に、それによって生じた損害を回復できる刑事裁判官が同時に民事上の判断を行うことができる、付帯私訴制度というものが存在しています。そのほかに、例えばここでは余り重要ではないと思いますが、加害者・被害者和解制度や、違法な収益を没収して、それを被害者の損害回復に充てるというようなものや、罰金刑の執行緩和といった制度がございます。
次に、レジュメのIIの3にまいりますが、既に御存じかと思いますけれども、ドイツはEUに所属しています。最近のヨーロッパの中では、EU法というものがかなり強くなってきておりまして、EUは自由、平等、民主主義、法の支配を基本的な理念としまして、EUの域内でこのような自由、平等、民主主義、法の支配、人や物の移動の自由を保障する理念を掲げています。それぞれの構成国というのは、今申し上げました理念を実現できる法制度が存在しない場合には、それを実現できるようにするための施策が求められてきています。
そこで、次はEU法、EUレベルにおける被害者保護に関するものについて、幾つか申し上げたいと思います。
まず、3の(2)の1)ですが、2001年5月15日にポルトガル政府の提案に基づきまして、EU構成国に対しまして、被害者保護の政策実現を求めるという刑事手続における被害者の地位に関する2001年5月15日EU大綱規定というのが設けられています。ここでは被害者は告知、聴聞や証拠提出する権利、情報入手の権利、刑事手続におけるコミュニケーションの保障、保護を受ける権利、刑事手続における損害回復の権利等が規定されています。これらを設置していない構成国というのは、この大綱規定に基づいて必ずそういう制度を設けなければいけない義務が課せられることになります。
2004年4月29日にはEU理事会でガイドラインというのができました。ここでのスタートラインというのは、往々にして犯罪被害者は資力のない加害者から損害を回復できないことがあることの前提としまして、EUでは人と物の自由な移動が基本になっていますので、そういう国境を越えた犯罪が生じた場合の被害者の損害回復を実現させるために、犯罪被害者が母国で損害回復を申請する権利、構成国が犯罪被害者の損害回復を支援する組織を設置する義務、申請を行った被害者への支援等を規定しています。
これはちょっと分かりづらいかもしれませんが、例えば、ドイツ人がイタリアに行きまして犯罪の被害を受けました。その後、本国に帰国した場合には、イタリアで受けた被害を回復するために本国で損害回復を申請することができます。それに基づいて請求を受けたイタリアは、ドイツ人の損害回復を実現するためにそういう組織を設置する義務がありまして、被害者の損害回復がなるべく迅速にできるような支援をすることが求められています。これはEUならではのものではないかと思われます。
3)、2011年にできた最近の提案ですが、ヨーロッパ議会及び理事会に対して犯罪被害者の権利及び保護の最低基準並びに被害者支援に対する提案がなされています。ここでは先ほど申し上げました2001年5月15日、EU大綱規定を更に進める提案というのがなされています。ここではスタートラインとしまして、すべての被害者というのは適切な保護及び支援を受けられること、並びに刑事手続に参加できることが承認されること、丁寧、思いやり、専門的に扱われること、あるいは情報入手の権利、支援を受ける権利、告知・聴聞を受ける権利、訴追をしない場合の被害者の権利、刑事手続において保護を受ける請求等の権利が規定されています。
このようにEUにおきましては被害者保護、経済的支援につきまして、もはや共通認識として形成され、それぞれの構成国がその構成国の法文化、法制度に応じまして、多くの場面で被害者支援、被害者保護を行うことが求められてくることが認識されているものと言えましょう。
そこで、本題のドイツの被害者補償制度について進んでまいりたいと思います。先ほど申し上げましたように、ドイツの大原則であります人間の尊厳の不可侵と社会福祉国家という理念がございますので、そのようなものに基づきまして、犯罪被害者が被害を受けたときに補償ができる被害者補償法が成立しています。これはどういう理由で成立したのかといいますと、国家が犯罪を予防することができなかったことから、被害者に対しての補償を行うということに由来しています。これは1976年、当時のSPDの政権のもと、連邦議会で全会一致により成立しております。ただ、この法律はこれから申し上げますように、具体的な施策については戦争の犯罪被害者、犠牲者に対して支給に関する法律というのがありまして、具体的な施策はその法律に基づいて行われていきますが、どういう人が犯罪被害者であるといった定義や、どういう状況のときに被害者が経済的な補償を受けられるのかを規定しているのが被害者補償法ということになります。
そこで、被害者補償法に基づきまして、補償の対象となる犯罪と被害者はどこまで含まれるのかということに進んでまいりますが、基本的にドイツ国内、船舶や航空機の中で行われた犯罪も含みますが、ドイツ国内で発生した故意で違法な暴力犯罪によって被害を受けた人が対象になります。この場合は、正当防衛や誤想防衛についても含むとされています。
また、故意の場合のほかに、社会的に危険な方法で過失により惹起された犯罪によって生命・身体等に危険が生じるような場合、例えば、放火や溢水や爆発による攻撃で被害を受けた方もその対象になります。ただし、車両を用いて行われた暴力犯罪については対象とはなっておりません。
次に、請求することができる被害者の範囲はどうなのかといいますと、まず、ドイツ人が含まれます。次に、EU加盟国の国民、そのほかに相互主義のもとにある外国人、ドイツと同じような制度を設けている国の外国人もそこに含まれます。また、3年以上ドイツに適法に居住している外国人も対象になります。ただ、6か月未満の場合には満額ではなくて減額の形で支給されることになります。
次に3にまいりますが、では、対象となる被害の範囲がどのように補償法で定められているのかといいますと、犯罪との因果関係があると認められる健康被害と経済的被害がそこに含まれております。
ここまでは補償法で定められているものですが、その次に、こういう要件を満たした被害者の場合ですと、どのような形で扶助や年金等の支給がなされるのかにつきましては、戦争犯罪の犠牲者法の規定に基づきまして施策が行われていくことになります。この法律の管轄はどこの省庁が行っているのかといいますと、連邦労働社会福祉省というベルリンとボンにあるところが管轄しております。2010年の4月現在、約1万8,100人が、その法律に基づきまして年金を受給しています。
費用負担はどのような形でなされるのかといいますと、先ほど申し上げましたように、ドイツでは連邦制というのがとられていますので、まずは、それぞれの州が負担することになります。具体的に見てみますと、費用負担というのは犯罪被害が発生した州が基本的に負担をします。被害発生が特定できないような場合には、犯罪が発生したときに被害者が居住もしくは日常的に滞在していた州が費用を負担することになります。
また、どこにこういう被害を受けた人が申請していくのかといいますと、それぞれの州の年金給付局に申請します。その申請に基づきまして、要件を満たしているかどうかで給付がなされる形をとっています。
そこに含まれるものは幾つかありますが、例えば、治療や犯罪被害によって身体障害者になってしまった方に対するリハビリ的なものが含まれますし、あるいは犠牲者法の第25条以下で犯罪扶助がなされていますが、このスタートラインに立つ者というのは犯罪被害の結果や家族の喪失がありますので、それを保障して軽減するために、すべての生活状況につきまして家族及び遺族の面倒を見るという社会福祉的な発想、国家の義務をスタートラインとしています。
次に(3)ですが、補償法で極めて重要なもので、それゆえに日本でよく引き合いに出されて、このような被害者の経済的回復のために極めて着目されるものとしまして、年金による給付というのがございます。これは犠牲者法、戦争犯罪の犠牲者を主に念頭に置いているもので、犯罪の被害者についてそれを準用していくという形をとっていきますが、これは例えば、犯罪被害者が被害を受けて稼得能力が低下した場合に、その低下の程度に応じて基礎年金を受給することができるというものです。
例えば、レジュメに書いておりますが、稼得能力が30%低下した場合には、月額123ユーロ、40%の場合には月額168ユーロ、50%の場合は226ユーロということで、稼得能力の低下のパーセンテージが高くなればなるほど月額の基礎年金額が高くなっていくような形になっています。
また更に、満65歳以上の重度の障害者となった場合の基礎年金については増額がなされていまして、50~60%の場合には月額25ユーロ、70~80%の場合には31ユーロ、90~100%の場合は38ユーロ加算されるということになります。
また更に、認定結果によりまして重大な健康被害を受けて就業可能でない場合の被害者に対する重症手当につきましては6段階に分かれていまして、段階が上がるにつれ、月額の手当が増額される形になっています。
また、稼得能力の低下によって重度の被害者への調整年金がなされていまして、50~60%の稼得能力の低下の場合には月額396ユーロの調整年金、70~80%の場合は479ユーロということで、どんどんパーセンテージが上がるにつれ月額の調整年金額が増えていきます。
また、犯罪の被害を受けた方の遺族年金につきましては月額387ユーロで、片親が死亡した場合には月額110ユーロ。両親が死亡した場合には204ユーロということで、また更にこの場合には加算されていくということになります。
ちなみに、1ユーロは、ここ最近のユーロでの危機がございますので、計算しやすいように110円ということにしておきました。
請求が却下される場合はどのような場合なのかといいますと、補償法の第2条に規定されています。犯罪被害を受ける原因が被害者にあるような場合、あるいは犯罪被害者が政治的・軍事的な紛争に積極的に関与しているような場合、あるいは犯罪組織に関与しているような場合には請求が却下されますし、また、これもドイツの刑事訴訟の特徴なのかなと私個人では思うのですが、犯罪被害者が積極的に犯罪事件の解明や加害者の訴追協力に寄与しないような場合や、あるいは被害者が犯罪被害の後に直ちに捜査機関に被害の申告をしないような場合にも請求が却下されることが規定されております。
駆け足になってしまいましたが、最後に「むすび」にまいります。ドイツにおきましては今申し上げましたように、EU及びドイツ法におきまして犯罪被害者の経済的な支援を受ける権利があるということで、やはり犯罪被害者というのは犯罪被害も経済的に困窮するような状態にあることが明らかになって、それゆえにEU法やドイツ国内法のレベルにおきましても、そのようなことが明確に確認されているものだろうと思います。
また、ドイツも日本と同じように、年金等の経済的な自己負担が増大しておりますけれども、このような中で経済的な支援を必要とする被害者に対しまして、包括的な扶助や支援が行われています。また、国家によりまして年金の支給の形で長期にわたって安定的に被害者に対して経済的な支援を受けることができるという利点が見受けられるものだろうと思われます。
ただ、ドイツの制度を前提とした場合に、仮にドイツの制度を日本に導入することができるかという問題は極めて難しい問題ではないかと思われます。この点につきまして、私は社会保障の専門家ではないということもありますので、いわば今回の報告をさせていただくに当たって調べていたところの感想も含めながらという形で進めていきたいと思いますけれども、つまりは、被害者の経済的支援のみに特化した補償制度を創設するということは、いささか難しいのではないかと。それは、例えば、ドイツの制度でも被害者補償法というのがありますが、具体的には戦争の犠牲者に関する法律を用いて準用するような形で行ってきているという問題があります。
あと、財源をどのように確保するのかといった問題や、国民の理解が得られるのかどうかというところもあるのではないかと思われます。
また、ドイツの被害者支援等と日本の被害者支援と違うところが幾つかありますが、例えば刑事手続においては、被害者支援はかなり多くの点で日本もドイツと同じように手厚い被害者支援がなされるようになってきています。ただ、異なるものとしまして、例えば、ドイツの刑事手続におけるものでは、私人訴追制度や付帯私訴制度というのは理念としては評価することができるのですが、必ずしも実務で余り頻繁に用いられていないというところもあります。
また、加害者と被害者の間で和解したような場合に、刑を減軽したり、検察官の訴追をしないことができるというものにつきましても、理念としては好ましいんですけれども、余り実務では用いられていなかったり、むしろこのようなものは被害者支援ではなくて、加害者に着目したものであるという印象を受けます。
また、被害者支援や民間支援団体の点につきましては、ドイツで極めて特徴的なものとしまして、白い輪という民間支援団体の存在があります。日本でも民間支援団体では細かな支援がなされておりますが、ドイツにおきましてもかなり細かな支援、しかも、それぞれの支援をする方というのは日本もそうでしょうが、かなり被害者の方について親身になって相談していったり、支援していくというところが個人的な印象として残っております。
白い輪につきましては、被害を受けた方の支援だけではなくて、犯罪予防についても積極的に発言したりするところも、また日本と異なるところがあるかと思います。
以上、駆け足で雑ぱくな報告でございましたが、御静聴ありがとうございました。
○番座長代理ありがとうございました。
それでは、御質問がある方、どうぞ御自由にお願いいたします。黒澤構成員どうぞ。
○黒澤構成員理念、趣旨の点ですけれども、予算の費目といいますか、財源は全部年金ですね。社会福祉的な理念に基づいて、要するに、国家が犯罪を予防することができなかったことから補償を行うということで、全部年金のみですね。
○滝沢准教授この点については余り詳しく調べられなくて申し訳ないんですが、例えば、年金については年金の形ですけれども、そうではないような形でも。
○黒澤構成員それ以外の給付もあるのですか。
○滝沢准教授はい。例えば、治療のような場合。これも余り専門ではないのですが。
○黒澤構成員私も警察OBですから、犯罪抑止は究極の福祉だと言ったこともありますけれども、社会福祉的な国家理念に基づいて、戦争とかナチスドイツのそういうことが根底にあるということなのでしょうか。このような給付をする趣旨・理念が、国家が犯罪を防げなかったことということですので、それは社会福祉的な国家理念に基づくということで、恐らく社会福祉的な費目、予算はそこで講じられていると思います。治療費も恐らくそういうことなのでしょう。
○滝沢准教授そうですね。恐らくナチスドイツの反省というのもありまして、人間の尊厳や社会福祉国家を目的としてできておりますし、そのとき被害者補償法を制定したのが当時の社民党、SPDです。
○黒澤構成員担当する行政庁はどこなのでしょうか。
○滝沢准教授連邦労働社会福祉省です。
○黒澤構成員やはり社会福祉理念に基づいて、では、予算も恐らくそういうところから。例えば、警察とか司法関係とかそういうところが財源となっているわけではないということですね。
○滝沢准教授多分それはないと思われます。
○番座長代理瀬川構成員どうぞ。
○瀬川構成員端的に関連してお聞きしたいんですが、ドイツではこの制度は社会保障の制度として位置づけられるという理解でよろしいですか。
○滝沢准教授はい、そうです。
○瀬川構成員関連なんですが、我が国の現在の経済的支援について、ドイツと比較した場合、我が国で欠けているものは何なのでしょうか。骨格が違うのでおっしゃりにくいかも分かりませんが、年金ということを一つ言われたわけですけれども、大ざっぱな感想で結構ですので、年金以外ではこういう点がドイツはすぐれているなというのはどこなんでしょうか。
○滝沢准教授例えば、寝たきりで重障害になったような方、先ほどの回収資料にもあったような場合は、補償法や法律を受けた犠牲者法の規定に基づいて行われていくという意味では、日本よりも手厚いのではないかと思われます。
○番座長代理よろしいですか。
私からちょっと伺いたいのですけれども、補償法の理念を見ますと、加害者との関係はどうなのか。加害者に対する損害賠償との関係はどういう形で整理されるのでしょうか。例えば、資力が乏しい被害者や加害者から補償を受けられない被害者に対する補てんとしての意味合いという形なのでしょうか。
○滝沢准教授多分そうではありませんで、補償という形でいくものだろうと思われます。
○番座長代理中曽根構成員どうぞ。
○中曽根構成員車両により生じる暴力犯罪というのは、今回はちょっと違うかもしれないんですが、これはやはりドイツでも交通に関する別の補償制度があるということでしょうか。
○滝沢准教授申し訳ございませんが、そういう制度までは存じ上げておりませんが、多分別に自賠責等が当然あると思います。
○中曽根構成員あと基本的なことですみません。遺族年金というのは御遺族になられた対象者の方が亡くなられるまでということでいいんでしょうか。それから、遺児年金は何歳まででしょうか。
○滝沢准教授最初の御質問は亡くなられるまでだと思います。
遺児年金につきましては、ちょっと分かりかねますが、恐らくは成人になるまでではないかと思いますが、後日調べて御回答申し上げます。
○番座長代理松村構成員どうぞ。
○松村構成員年金なんですけれども、被害者の稼得能力の低下に応じて基礎年金ということでパーセンテージで書いてありますが、年金を受ける前に普通の生活をしていたときの所得というのは全然反映されないんですか。
○滝沢准教授恐らくは元の所得と稼得能力とは計算した上でいくのではないかと思われます。
○松村構成員差額が47%まで補償しているということをちょっと聞いたことがあるんですけれども、そういうベースとこれとはどうなっているのかということでお尋ねしました。
○滝沢准教授調べて御回答申し上げます。
○松村構成員先ほど、付帯私訴はまだやった方がいいよとおっしゃっていましたが、日本にはできていますよね、番先生どうですか。
○番座長代理損害賠償命令制度のことをおっしゃっていらっしゃいますか。付帯私訴とは違いますね。損害賠償命令の審理が刑事の審理が終わった後に始まるという意味では。刑事と民事は一応峻別されるということですね。
○内閣府大臣官房審議官犯罪被害者等施策推進室長滝沢先生、どうもありがとうございました。ドイツの制度についてはかなりいろいろと動いているところもあるやに聞いておりますので、また、これからお調べいただきながら、いろいろと御教示いただければと思いますけれども、ドイツは年金制度をとっていると。年金制度は日本についてもどうだという御意見があることも承知していますので、参考になる部分がこれから出てこようかと思いますが、一方で、日本の場合、一時金が諸外国に比べるとかなり高く出ているというような状況の中で、ドイツの場合は例えば、残された遺族に一時金という形で相応の大きな額が出るという形になっていないと。これは年金制度で対応していくということでよろしいんですよね。
○滝沢准教授恐らくそうだろうと思われます。
○内閣府大臣官房審議官犯罪被害者等施策推進室長原資は社会保障云々ですけれども、これは年金にはなっているけれども、みんなが積み立てているということではなくて、普通の租税の中から出されているということでよろしいんですね。
○滝沢准教授はい。
○内閣府大臣官房審議官犯罪被害者等施策推進室長先ほど松村構成員からもお話がありましたけれども、何十パーセントで幾らのユーロ、これは大きい額なのか小さい額なのか、数万円という程度ですから、これまた議論があろうかと思いますが、稼得能力という形でもともとの所得との関連性ということも踏まえて研究して教えていただければと思いますので、よろしくお願いいたします。
○番座長代理よろしいでしょうか。瀬川構成員どうぞ。
○瀬川構成員先ほど最後の方ですが、補償法第2条について請求が却下される場合という補償法第2条のことを言われたんですけれども、被害原因が被害者にある場合というのは具体的にどんな場合に実際にあるのか、もし分かれば教えていただきたいと思います。
○滝沢准教授申し訳ございませんが、そのような資料を調べてみたんですが持ち合わせておりませんけれども、基本的に請求をすれば要件を満たしている場合には、給付法に基づいて支給されるというシステムをとっています。例えば、被害原因が被害者にあるような場合というのは、被害者が挑発をして障害を負ってしまうような場合などが恐らく典型的なものになるのではないかと思われます。
○瀬川構成員正当防衛とか誤想防衛を含むというのが最初の説明でしたね。それ以外にどんなものが具体的にあるのかなと。
それから、ドイツの制度のつくり方で最も興味深いのは、国が犯罪を予防できなかったことから補償を行うという点です。この点が大きく全体を包んでいるような気がいたします。その際に、対象となる犯罪について議論があるのかなんですけれども、暴力的な犯罪は当然だと思いますが、ほかの犯罪に拡大するというか、例えば、一部の財産犯とかそういう議論はありますか。
○滝沢准教授私が調べた限り、そのような議論は余りございません。
○内閣府大臣官房審議官犯罪被害者等施策推進室長先ほどのお話で、被害原因が被害者にある場合、日本の制度でも御案内のとおり挑発行為云々だったら支給をしないとか、減額という形になりますので、恐らくそういうことかなと私は理解しておりますが、それはまた調べていただいて。
もう一つは、注意的に私が考えていることですが、ドイツの国家賠償的な考え方というのは余りほかの国では例がないと思うんですけれども、ドイツはナチス云々ということがあろうかと思いますが、これが逆にいろいろな人たちの議論の中で、国が犯罪を防げなかった責任を負うということは、裏返して言うと、国は犯罪を防ぐ義務があるんだと。義務を履行するためには、いわゆる予防警察ではありませんけれども、テロに対してはそういうことをドイツはやっていますが、かなり厳しい治安立法を伴ってくる可能性があると。それが国の有り様としていかがなものかということで、この考えについてはかなり批判的な見解も示されていると。その辺、ドイツの中でそういう議論というのはあるんでしょうか。
○滝沢准教授私の感想も半分入っているんですが、ドイツでは社会保障制度についてはかなり手厚い保障がなされておりますし、被害者に対しての支援等はこの法律に基づいて行われていくべきだという考えはかなりあります。ただ、私個人としては、国が犯罪を防止する義務まで課していくというのは、いささか行き過ぎなところもあるだろうと思われます。それは恐らく社会福祉的な理念に基づいて行っていくというのが、かなり前面に出てきているのではないかと思われます。
治安立法という点につきましては、ドイツの方が犯罪捜査の手法というのは、日本では考えられないようなものもかなり導入されてきておりますので、犯罪予防や犯罪捜査の観点からは、調和が図られているのではないかと個人的には思われます。
○瀬川構成員これは私の極めて個人的な意見ですけれども、死刑制度との関係があると思います。ドイツは戦後すぐ死刑を廃止しましたので、その点の被害者に対する感覚というのが根底にあるのではないかと思います。
それから、これは黒澤先生の方が御存じだと思いますが、日本でも犯給制度をつくる際に、この議論をかなりされているようですが、結局、我が国では否定されたという考え方だったと理解しています。
○番座長代理よろしいでしょうか。
本日、御説明をいただいた滝沢先生には、ドイツ制度の専門家として今後も本検討会に御協力いただく予定でございます。滝沢先生、引き続きよろしくお願いいたします。今日はありがとうございました。
それでは、議題6、海外調査についてに入りたいと思います。前回までにもお伝えしているところですが、本検討会では本年度海外調査を実施する予定です。平成18年の経済的支援に関する検討会においても、アメリカ、イギリス、フランス及びドイツについては海外調査を実施しているところですが、時間が経過していることもあって、今回はこの4か国に韓国も加えて現在の状況を把握するとともに、モデルケースを活用するなどして具体的な犯罪被害者等に対する経済的支援について調査を行うことが望ましいと考えられるところです。
それでは、事務局から説明をお願いいたします。
○事務局(内閣府犯罪被害者等施策推進室参事官)それでは、お時間もございますので資料5をごらんいただいて説明に代えさせていただきます。
調査目的につきましては、前回、海外調査案につきまして簡単な資料をお出しいたしましたけれども、もう少し具体的に詰めていったというものでございます。
調査対象国は5か国、アメリカ、イギリス、フランス、ドイツに加えて韓国ということで考えております。
調査概要というか今後の進め方ですが、5か国に関しまして我が国の制度との比較に資するように、こちらの検討会で検討事項ですとか、どういった視点で調査をするですとか、調査先としてこういったところが考えられるのではないかというような大きいところを御議論いただいたり、検討していただきまして、それを踏まえて各調査対象国の御専門家であるヒアリングをいたしました有識者の方々、それと事務局において文献等によって事前調査を行い、また、現地調査を行っていくというようなことをしたいと思っております。この有識者や事務局との検討結果が今どうなっているかということについては、随時検討会で御報告していきたいと思っております。
こういう具体の作業をしながら、この検討会で他のこと等御議論いただきながら、海外調査について現地調査までできるように積み上げていきたい、作業を進めていきたいと思っておりまして、今後のスケジュールにつきましては、そこに書いてあるとおりでございまして、来年2月には現地調査を実施したいと思っておりますし、3月には調査結果をまとめて報告書を作成ということで考えております。
以上です。
○番座長代理それでは、海外調査につきまして御意見のある方どうぞ、お願いいたします。よろしいでしょうか。海外調査については今後、事務局において本検討会での議論を踏まえて、各国制度の専門家である有識者の御協力をいただきながら、事前調査等の準備を進めていくこととなりますが、その過程で構成員及び関係省庁に事務局より御協力をお願いすることもあるかと思いますので、その際にはどうぞよろしくお願いいたします。
ここで今日の議論を踏まえまして、議事全般について何か御意見等ございましたら、いただきたいと思います。よろしいですか。
それでは、今日いただいたいろいろな御意見を基にしまして、次回以降、更に検討を詰めていきたいと思います。
それでは、最後になりましたが、第4回検討会の開催について、事務局より説明をお願いします。
○事務局(内閣府犯罪被害者等施策推進室参事官)それでは、第4回の検討会の開催について事務局より御説明いたします。
第4回につきましては、先ほどのスケジュール案のところで御説明した内容となっておりまして、日時は11月14日月曜日、15~17時までで、最大18時まで延長する場合があるということでお考えいただければと思っております。
諸外国における制度につきまして御説明をいただく方ですが、イギリスにつきましては同志社大学大学院司法研究科の奥村正雄教授、フランスにつきまして中央大学法科大学院の小木曽綾教授、韓国につきましては慶應義塾大学法学部の太田達也教授からそれぞれレクチャーをいただくことになっております。それから、被害者の方からの経済的状況に関するヒアリングを行うこととしております。
それから1点だけ、議事次第でかなり前に戻って申し訳ないのですが、先ほど現状把握の方法ということで、アンケートにつきまして無記名になるのだろうかということを中曽根構成員から御質問いただきまして、そういうことになるだろうと私がお答えしましたけれども、アンケートにつきましてはまだいろいろと詰めていくということですので、記名か、無記名か、どういうやり方をするのか、被害者の方に配慮しながらということはいろいろと多角的に検討しながら詰めていきたいと考えておりますので、その点、若干の補足をさせていただきます。
事務局からは以上です。
○番座長代理ただいま、第4回検討会について説明がありました。本日の議論を踏まえまして、更なる御意見等がありましたら、事務局へお寄せください。
事前意見の提出についてですが、検討会当日の限られた時間の中で有意義な議論を行うため、構成員の皆様方には可能な範囲で是非、事前意見を出していただき、それについてお互いに事前に把握した上で、密度の濃い議論をしていきたいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。
また、提出していただいた事前意見は、事務局から事前に構成員に送付するとともに当日配付いたしますが、可能な限り正式な配付資料として公表したいと考えております。なお、どうしても正式な配付資料として公表すると支障があるという場合には、その旨を事務局に伝えていただくようお願いいたします。
また、毎回お願いしておりますが、海外調査を含めて第4回目以降の準備のため、事務局から必要な事項について有識者及び省庁の構成員の皆様に御依頼をさせていただくこともあろうかと思いますので、その際には御協力いただきますようお願いいたします。
それから、先ほど松村構成員から参考資料として出ました資料は回収ということにさせていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
これをもちまして第3回犯罪被害給付制度の拡充及び新たな補償制度の創設に関する検討会を終わります。つたない議事進行でございましたが、御協力ありがとうございました。

▲ このページの上へ

-