第16回「犯罪被害給付制度の拡充及び新たな補償制度の創設に関する検討会」議事録

1 開催の挨拶

  • 椎橋座長 ただいまから第16回の「犯罪被害給付制度の拡充及び新たな補償制度の創設に関する検討会」を開催したいと思います。
    お忙しいところ,お集まりいただきまして,ありがとうございました。
    本日は,前回に引き続きまして,本検討会としての議論の取りまとめの方向性について考えていきたいと思います。
    まず事務局から配付資料について,御説明をお願いしたいと思います。
  • 内閣府犯罪被害者等施策推進室参事官 お手元の配付資料を御覧ください。
    今回の資料は,取りまとめ文案と警察庁からお出しいただいた資料でございます。
    事前配付が遅くなりまして,申し訳ありませんでしたが,取りまとめ文案,資料1の1ページ目から5ページ目については,まだ一部議論が継続中のところはありますが,前回御議論いただいたことを踏まえて,まとめの文章としたら,こんなふうになるのではないかという形で,文章化したものになります。
    最後のページ,6ページ目になりますが,これは前回取りまとめ案のたたき台として,表みたいなものを配付させていただきましたが,そこで時間的に議論ができなかった部分をそのまま移行して,アウトライン形式で記載しております。次回はここの部分につきましても,本日の御議論を踏まえまして,文章化して,お見せしたいと思っております。
    資料2以降は,前回,警察庁にお願いしました,親族間犯罪の要因分析などですけれども,それぞれ御説明時に言及していただくよう,お願い申し上げます。
    以上です。

2 海外での犯罪被害者に対する経済的支援について

  • 椎橋座長 ただいま事務局から御説明がありましたように,最終ページ部分は,前回の資料1で,時間がなくて終わらなかった部分を移してきたものでございますので,本日は前回と同様,とりあえず6ページ目につきまして,本検討会としての今までの議論を振り返りながら,どのように最終的に検討会としての結論を出すかにつきまして,御意見を確認してまいりたいと思っております。
    文章化されている部分にも,まだ終わっていない論点が残っておりますので,早速,海外での犯罪被害者に対する経済的支援についての論点について,確認させていただきたいと思います。
    この論点につきましては「第1 犯給制度に関する議論」の中で「3 海外での犯罪被害者への適用拡大の適否」という議論の結論として,犯給制度をそのまま海外事犯に適用させるような制度変更は難しいということになっていたかと思いますので,それでは,新しく何らかの支援の制度を海外での被害者のために構築するとしたとして,どういう議論になるのか,そういう位置づけでおります。
    最初にアの部分ですが,海外での犯罪被害者に経済的支援をする支給根拠の部分でございます。海外における被害者についても,できるだけ経済的支援を受けられることが望ましいだろう。このこと自体に関しては,特段の反対の御意見はなかったように思いますけれども,他方で,日本の主権が及んでいない,つまりは日本が国として治安維持の責任を負っていない海外での被害者に,なぜ日本国が経済的支援をするべきなのかという観点での御指摘はあったかと思います。
    ただ,今までのところ,犯給制度のような制度を海外でと考えた場合,何が難しいのかという議論で進んできていましたので,国内の被害者に犯給制度として支給している根拠を参考としまして,犯給制度で言われております社会の連帯共助の理念を根拠にするという趣旨は海外にも適用できるのではないかという前提理解があったような気がいたしますけれども,余り正面から取り扱ってはまいりませんでした。
    そこで,犯給制度を離れて検討してみるとして,いかがでしょうか。支給根拠に対して,別に御意見があれば,お伺いしたいところでございます。まず海外での犯罪被害者に対して,何らかの経済的支援をする。その場合,犯給制度から少し離れて考えてみたらどうか。その支給根拠はどういうものになるのかというところをまずお伺いします。一番根本的なところかと思いますけれども,その点について,御意見があればお伺いしたいと思いますが,いかがでしょうか。
    瀬川構成員,どうぞ。
  • 瀬川構成員 これまでにもこの点についてお話したことがありますので,大雑把な議論になるかも分かりませんが,少し考え方をお話したいと思います。
    今,座長がおっしゃいましたように,犯給法との関連は,確かに幾つかの問題点があることは事実です。犯給制度の拡充に事実調査の困難性ということがあるとしても,例えば典型的な事件としては,グアムでの殺人ですが,あのようなケースをこのままにして,犯罪被害者に対して何もしなくていいのか。今後ああいう事件を起こった場合を想定して,この場で議論すべきだと思っています。
    殺人が国内で行われることと,海外で行われること,犯罪被害者の救済、支援という点では共通性を持っているし,幾つかの困難はあるにせよ,何らかの1つの方向性をこの検討会で出すべきではないかと思っています。
    いま具体的な提案を持ち合わせているわけではありませんが,この検討会でも,小規模でもいいから,こうした考え方を盛り込んだらどうかと考えています。外務省がこれまで何度か邦人保護について,かなり積極的に取り組んでおられる姿勢は,我々もよく理解できたんですけれども,邦人保護といった場合,法的にどの程度を含むかは別としまして,犯罪被害が起こった場合,その邦人を保護するというのは,大事な問題だと思います。その後の犯罪被害者のケアを十分に行うことも,実際上邦人保護の一環ではないか,あるいは邦人保護のもう一つの重要な側面だろうと考えております。
    そこで,最終報告書に具体的な提案を盛り込むことは出来なくても,私としては,何らかの形で海外での犯罪被害者の経済的な支援の必要性を訴えかける必要性はあるのではないかと思っています。
    残された時間は余りないですけれども,経済的支援の中身,仕組みは,これからこの検討会で考えたらいいと思います。犯給法と同じような仕組みを作るのではなくて,例えば対象を絞って,殺人事件,死亡事件に限るという方向性は1つあるのではないかと思います。
    それから,経済的支援の中身ですが,大雑把なんですけれども,通常言われる見舞金程度のもので,まずはスタートしてはどうかと考えております。額については、これから詰めないといけないのですが,方向性というのは,この検討会で出していいのではないか。
    前回の検討会のときは,基金に頼るという感じで終わったかと思います。今回の場合,本年,グアムの殺人事件が起こりましたので,国民の理解も得やすく,何らかの方向性が出ないのかと思っております。
    ただ,そうは言っても,先ほども申しましたように,事実調査の困難性という現実がありますので,どの程度の調査、情報があればいいのかという問題、国民の理解をどう得るかという問題は残ります。私もこれまで海外にトータル3年ほどいたことがあるんですが,たしか大使館とか領事館に警察・検察関係者もおられたと思います。全ての国ではないかもしれませんが,そういう方々の協力とか理解を求めながらという形だと思いますが,いわゆる在外公館が得られる程度,入手できる程度の情報,把握できる程度の情報をもとに,対象を限定して,言わば見舞金的なものを出せないのか,そういう制度設計はできないものかと考えております。
    今,思いつきの大雑把で雑駁な考え方ですけれども,皆さんのお考えをお聞きしたいと思っております。
    以上です。
  • 椎橋座長 ありがとうございました。
    ただいまこの会としての方向性を出すべきだ。被害に遭うという意味では,日本国内と海外での場合と共通性があるし,それから,邦人を保護すべきだという観点からいうと,海外での被害者も保護する必要がある。その場合,犯給制度を及ぼすというときに言われた,事実認定の難しさ,公平性等,困難な問題もあるし,国民にどれだけ理解されるかという問題もあるので,とりあえずは対象を絞って,見舞金としてスタートするということは考えられないだろうか。見舞金としてスタートするということは,支給対象にも関係してまいりますけれども,支給根拠にも関連して,見舞金ということになると,連帯共助の精神と親近性があるという感じがいたしました。
    ほかに御意見,御質問はいかがでしょうか。番構成員,どうぞ。
  • 番構成員 私も賛成です。社会の連帯共助という理念に基づいて考えますと,今,グローバルな世の中で,たまたま海外に渡航して犯罪に巻き込まれた邦人に,被害の一部を見舞金という形で出すのであれば,説明が付くと思います。
    警察庁からありましたように,国内犯と同じような事実の収集ができないということは,当然そういうことなのでしょうから,民間の基金をということで外に投げるよりも,国として,それを支援するという形を見せるという意味合いでも,見舞金という形はいいと思います。
    それから,死亡事件に限るとか,そういう限定をつけることも重要ではないかと思います。犯罪を広げますと,相当な広がりをもってきてしまいますので,死亡事件とか,あるいは生命に重篤な危険が迫ったような事案,例えば少年法の審判傍聴などのときに,そういう制限がつきましたけれども,一定の制限をつけることも賛成です。
    この検討会で,何か打ち出せればいいと思っております。
  • 椎橋座長 ありがとうございます。
    松村構成員,どうぞ。
  • 松村構成員 連帯共助の精神からいけば,何らかの見舞金的なものを出すべきだとは思うんですけれども,ただ,1つ引っかかるのは,海外旅行へ行く場合には,基本的に保険制度もあるので,その辺の活用を考えて,どうあんばいするかということです。この前のグアムの事件のように,保険をかけていかないで,事件に遭ってしまった場合には,ある程度見舞金などでカバーするよりしようがないと考えます。
  • 椎橋座長 ありがとうございました。
    ただいまお三方から,まとめて言うと,今,松村構成員に言っていただきましたように,社会連帯共助の精神から,見舞金として出すということについては,かなりの構成員の方々の賛同が得られたように思いますけれども,当然それは支給対象との関係にも関わってくると思いますので,支給対象との関係についても進ませていただきたいと思います。
    どのような対象に経済的支援を及ぼすかということですけれども,事務局からの資料では,順番はともかくとして,今までこれに関連して出てきている御意見をそのまま列挙しているという形になっております。
    特に最初の2点をまとめますと,日本に住所を持っている日本国籍の旅行者。ただし,外務省の危険情報だけを基準とするか。又,どのような基準とするか。詳細は別として,漠然とした表現ではありますけれども,普通の旅行者や出張者というような,短期滞在者を想定された御意見が出てきていたかと思われます。
    他方では,ジャーナリストのように,仕事として,紛争地域に取材に行くというケースもあるという御指摘をいただいたところでありますけれども,こういうような,あえて危険地帯へ赴かれる方も,日本に住所を持っておられる短期滞在者という枠組みでいうと,その中に入ることになると思います。
    そこで,更に対象者という観点で,構成員の皆様方の御意見を確認させていただきたいのでありますけれども,もともとこの検討会で,この問題を深めて取り上げてみるきっかけとなった事件の1つが,アルジェリアでの人質事件でございました。その場合,必ずしも個々の被害者のケースは,よく存じ上げておりませんけれども,海外赴任者が犠牲になっておられますので,日本に住所をお持ちでない方も考えられます。
    アルジェリア事件自体については,3点目に挙がっている,テロ事件としての切り分けをするとしたら,特別立法ですべきだという御意見もありましたし,明らかに就労先での被害でございましたので,労災適用によって,国内で同様の被害に遭ったとしても,犯給制度での問題が生じないケースかもしれません。ただ,明らかなテロ被害でなくても,海外赴任者や留学生のように,数年単位の滞在者が一般犯罪被害に巻き込まれるということもあり得るかと思います。そういった方で,留学をきっかけに,海外にそのまま就職をされたり,あるいは家族をお持ちになったりというような方もおられますので,そういう場合は,生活基盤が日本から海外へ移行する方もいらっしゃるということで,どこでどういうふうに切り分けるかということが難しい面もございます。
    そこで,本検討会でのまとめ方として,日本に住所を持っている被害者であるということについては,そういう御意見もあったという言及にとどめるべきかどうかということもございます。あるいは国内での住所の有無というのは,本検討会として,国として,経済的支援を行う犯罪被害者の対象者を考える上でのメルクマールとして捉える。そういう1つの結論としてまとめるべきか,あるいはほかにもメルクマールとして考えられる点があるかどうか,考え方は幾つかあると思いますので,この辺りの点について,御意見を承れれば幸いでございます。いかがでしょうか。
    1つの考え方というか,1つの基準でばさっと切るというのは,なかなか難しい面がございます。幾つかの基準を組み合わせるとか,いろんな考え方があり得るかとは思いますけれども,この辺りのところで,何かお知恵を貸していただければ幸いでございます。
    黒澤構成員,どうぞ。
  • 黒澤構成員 ここに記載してある住所をどういうふうに捉えるのか。例えば民法上の居所の場合はどうなるのか。どういった場合に住所を持っていたというのか,その辺も詰める必要があるのではないかという気がいたします。
  • 椎橋座長 犯罪被害に遭ったときに,住所がどこであったかというのが,重要なファクターであることは間違いないと思います。それをどういうふうに捉えるか,どういう位置づけをするか,そういう御指摘が,今,黒澤構成員から出されました。
    その点について,あるいはほかの点について,御意見はございましょうか。どうぞ。
  • 内閣府大臣官房審議官犯罪被害者等施策推進室長 先ほどの趣旨のところとも関連すると思います。瀬川構成員から,イメージという形で,そんなに詰めた形ではないという御指摘でしたので,余り詰めた議論をしてもとは思いつつですが,見舞金というのは,今,犯罪被害給付制度で給付しているようなものとは違うんだというところを,性格として出しているんだということだろうと思いますし,そういう意味では,いろんな精査はせずに,一定額的なものをイメージできるようなお話だと思います。
    又,金額的にも,これまで見舞金的なものだったのではないかという議論からしても,それほど大きなものではないんだろうという感じのイメージができると思うんですが,その際に,そこへつなげていく支給根拠の話が,社会一般の共助的な,これまでの犯給制度の説明と基本的には余り変わらないお話になってしまっていたので,若干ここは硬い話で恐縮ですけれども,制度の支給根拠が同じであるとすると,それは犯給制度の変形になってしまうのではないか。そうなってくると,先ほどの事実認定の問題,あるいは対象を絞ったにしろ,公平性の問題をどうするのかみたいな議論がもしかしたらあると思って,支給根拠のところは,先ほどは申し上げませんでしたけれども,どう考えるのかは,少し考えなければいけないと思います。
    その中で,対象というのも,支給根拠をどういうものにするのかによっては,変わり得るものであろうかと思います。何らかのことをしようという国民的な思い,犯給制度上ほどの社会連帯ではないにせよ,海外で悲惨な事案があったときに,本当に何もしてあげなくていいんだろうか。物すごく漠然と申し上げれば,そんな思いを何らかの形で反映させていくときに出てくる対象者というのは,どんな人なのかという,そんなイメージになってくると思います。
    そうなってくると,ここで出てくる一時的な旅行者のイメージに比較的近く,海外で滞在されていて,それなりに定住性を持たれた方というのは,外国のほうでしっかり見てもらっているし,外国に生活の拠点もあるんだというイメージに近づいていく。そこは何となく切れ間がありそうな感じはするというところと,保険をかけても行けるのではないかという議論とも関連するんですけれども,危険が一定程度予想される地域に行かれる方というのは,やはり違うのではないかという議論は出てくると思います。
    結論めいたことを言うつもりはないんですが,お話を伺いながら,私なりに思ったところでございます。ただ,支給根拠は何なんだろうというところに,又戻ってきてしまうので,先ほど何と言っていいのか分からないと思って,申し上げなかったんですが,そういうところとここは関連してきて,支給根拠を犯給法とは違うんだと言いながら,そういうものとして考えることの結果によって,いろいろ決まってくるところもあるという感じがいたした次第でございます。
  • 椎橋座長 番構成員,どうぞ。
  • 番構成員 法的には,逆に社会連帯共助というと,見舞金が出てくると思っております。犯給法と違うのは何ですかということですけれども,犯給法はそこから始まって,かなり進化してしまった。犯給法の考え方は,国が責任を持つのは一次的にはないが,社会として,被害者を支援しなければいけないというところから始まっておりますので,まさしく今おっしゃったことと一致するのではないかと思います。しかし,犯給法の手続の流れに乗せることが難しいとおっしゃるから,そうであれば,別枠でといっているので,お話が逆転しているのではないかと思います。
    私も定住者は除くべきであろうと思います。前も申し上げたのですが,そういう意味合いでいくと,たまたま日本の方が海外へ行っていて,犯罪へ巻き込まれましたという場合に,社会として支援するということだろうと思いますし,松村構成員がおっしゃったように,保険を掛けている方とか,労災がおりる方とか,そういう方は,もちろん犯給法でも除かれるわけですから,当然除いてもいいと思います。そうでないと,犯給法とのバランスがつかないと思います。だから,社会の連帯共助で,根拠は全然構わないと思っています。犯給法の仕組みに乗せられないのでということで,いいのではないかと思います。
  • 椎橋座長 推進室長,御発言ありますか。
  • 内閣府大臣官房審議官犯罪被害者等施策推進室長 今,番構成員からそういうお話でしたけれども,番構成員はそもそも犯給法はそうではなくなっているというお立場で御説明になっているので,私は全然敵対するつもりはなく,そこは分かりつつ申し上げているんですが,多分制度を持っているほうとしては,ちょっと違うだろうという立場があり得ると思うんですが,今の話は,警察庁的にはどういう整理になりますか。
  • 警察庁長官官房審議官 犯罪被害給付制度の場合,社会連帯共助といったところからスタートし,こういった精神を持ちつつやっておるということは,今も変わりはないと思っています。ただ,御指摘のとおり,国内の犯罪被害になった場合,警察のみならず,日本国として,何らかの対応,安全についてやれることという意味で,それは海外における犯罪被害とは全く違った側面がある。今の給付金制度というのは,そういったところの色合いも持っておるということだと思っております。
    今回,瀬川先生から御提案いただいた話は,およそ見舞金ということで,その根っことしても,社会連帯ということからもくるんだと思いますが,それはお気の毒な方に対して,国としても,一定程度経済的な支援をするという形の整理だと,お聞きした範囲で考えます。
  • 椎橋座長 川出構成員,どうぞ。
  • 川出構成員 支給根拠については,国内の犯罪被害の場合も,国外の犯罪被害の場合も,同様に社会連帯共助と考えればよいのではないかと思います。そこが同じであるとすれば,国外での犯罪被害の場合にも,本来は犯給法と同じ形で支給するということは十分に考えられるわけですが,これまで指摘がありましたたように,事実調査の面などで難しい問題があり,実際問題として犯給法と同じかたちにはできないので,見舞金のかたちにして,犯給法のような厳密な事実調査とそれに基づく認定をすることなくお金を支給するかたちにする,そのような整理ができるかと思います。
  • 椎橋座長 黒澤構成員,どうぞ。
  • 黒澤構成員 ちょっと視点が違うんですけれども,支給根拠の問題で,私もよく分からなくなってきたんですが,相互主義的な考え方を持ってきた場合,例えばアメリカ人が日本で犯罪被害に遭ったときに,アメリカは何らかの金を出すのかどうかという観点から考えて世界を見た場合,どんな具合になるのか。邦人保護,相互主義的な考え方をもとに,出せるということも考え得ると思って,世界の実態がどうなのか。ほとんどそういう国はないんですか。日本でアメリカ人が犯罪被害に遭った,イギリス人が日本で犯罪被害に遭ったら,イギリスやアメリカでは,見舞金とか,何らかの経済的な支援がなされるのかどうか,その辺はどうなんでしょうか。
  • 椎橋座長 外務省の方,どうぞ。
  • 外務省領事局海外邦人安全課課長補佐 外務省でございます。
    過去の私どもの経験からいって,外国で犯罪被害に遭って亡くなった方に対して,犯給法に似たような制度で,見舞金が出た例はあります。ただ,相互主義を持ち出して,自国と同様に日本で何か実行できないのかと求められた話を聞いたことはありません。相互主義として,要求できるという一種のイメージというか,そういうものとしては,どこの国の政府も捉えていないと思っています。
  • 黒澤構成員 おっしゃるとおりだと思いまして,相互主義的な考え方で,イギリスがそういうことなら,日本国もそうしましょうという,相互主義そのものということではなくて,実質的な根拠として,そういったことも考え得るのではないかということで申し上げたんです。
  • 椎橋座長 厳密な相互主義という意味ではなくて,相互主義的な考え方で,同じことを相手の国にお互いに義務付けるということとは,違うものです。しかし,精神は同じようなものがあってもいいのではないかという御趣旨です。
    今まで御意見を伺ってまいりましたけれども,社会の連帯共助の精神から見舞金を出すということについては,大方の一致があったのではないかと思います。
    その対象はどうするかということにつきましては,犯給制度そのものを拡大するのは難しいということで,別の形でやるべきではないのか。その際に,いろいろ考えるべき要素があるので,支給対象をどうするか,具体的には絞り込んでいくということだと思うんですけれども,出た御意見としては,殺人等のような場合に限定するとか,あるいはその地に長く住んで,住所があるような場合は除外するとか,保険に入っている場合は,両方から受けるということはできないので除くとか,いろんな形での絞り込みになるのではないかと思います。一般的なイメージとしては,短期に滞在されているときに,その国で被害に遭ったというイメージだと思われます。
    この点については,実現可能性を考えてみないといけないと思いますけれども,外務省におかれては,在外公館における活動がございます。警察は警察で,事実認定の前提となるところまで事実が解明できるのか,外国の場合どうかということで,関係しておられるということです。その辺りのところは,実現可能性との関係で,外務省と警察庁については,今日御意見があればお伺いしたいと思いますし,あるいは更に御検討をお願いできるということであれば,お願いしたいと思いますが,本日はいかがでしょうか。
    どうぞ。
  • 外務省領事局海外邦人安全課課長補佐 もう一回,外務省です。
    経済的な問題以外のことについては,邦人保護ということで,そもそも外務省設置法という,外務省の任務を決めている法律によって,決められております。ですので,犯罪被害者の方に対しては,できる限りのことはやっている。ただし,経済的な問題,要するに見舞金とか,例えば犯罪によって負傷した場合の医療費などについては,はっきりいって支給ができない。私どもにその権限は与えられていませんので,そこにいる被害者が治療費に困っていたとしても支援できない。そういう意味では,かなり苦しんでいるのは事実であります。
    今回,こういうふうに議論いただいていることについては,私どもとしても,非常に感謝しているのでありますが,そもそもの議論として,どういう方々に払うのか,例えば切り分けがなかなか難しいというのは,全くそのとおりでありまして,国外に長く住んでいる方をどの辺りで区切るか,留学生は一時的に海外に居るため居所というべきなんだろうと思うんですけれども,それを住所と捉えるのかと言われると,私どもにとっても非常に苦しいです。実際にそれを審議いただく警察,公安委員会の方々にとっても,かなりの難問かと思いますので,それは十分に議論していただいたほうが,私どもにとってもありがたいです。
    それから,民間の保険の有無とか,現地政府の見舞金の支給がある場合には,減額するというお話もありましたが,実をいうと,民間の保険の有無などは,かなりチェックが厳しいです。個人で加入して行かれる方は,ご家族が気付きますので,それは我々も分かります。ところが,最近はクレジットカードに附帯した保険などがありまして,気が付くと,支給を受けられるというものがあるんです。私どももこういうものを極力探して,お手伝いをするようにしていますけれども,御本人が知らないものが後で分かるとか,そういったこともあるんです。そうしますと,私どもとしても,これによって,見舞金若しくは犯給法に基づく給付金が決まると言われると,かなり責任重大でありまして,その辺は十分に御議論をいただきたいと思っております。
    あと,現地政府が何かしらの見舞金,若しくは給付金を払うかについては,大概は私どもが被害者の御家族に同行して,若しくは代わって,現地の当局に尋ねることが普通でありますので,これはかなりの確率で把握できています。なかなか厳しい面はありますが,永住でない外国人に対しても払った例というのはありました。例えば,2001年の9.11事件のときに,世界貿易センタービルに巻き込まれて亡くなった方々は,給付金を受けております。ですので,そういった方々の場合,把握はできるので,例えばその分を犯給法の支給額から減額するといったことはできるんでしょうけれども,警察庁さんが言われるとおり,判定はかなり難しいと思われます。そういう意味では,見舞金であれば,単純化していただいたほうがという気はしますが,この辺はよく御議論をいただきたいです。
    今,思い付くのは,その辺までです。
  • 椎橋座長 義援金が集められて送られるということはあるんでしょうか。
  • 外務省領事局海外邦人安全課課長補佐 義援金の例では,犯罪被害者の方だと,今,思い付かないんですけれども,例えば地震の被害者については支給された例があります。2年前にニュージーランドで大地震がありました。これは3.11の日本の大地震の1か月ほど前の地震なんですけれども,このときに日本人の方が28名亡くなりまして,そのうち,現地政府が,現地の法制度に基づいて払った給付金がありまして,これは日本円で約40万円です。それ以外に現地の赤十字が集めた見舞金がありまして,これが大体60万円ほどを2回にわたって,約120万円を各犠牲者家族に支払われたという例はあります。犯罪被害給付ではないんですけれども,こういった例はあります。
  • 椎橋座長 ありがとうございました。
    警察庁はいかがでしょうか。
  • 警察庁長官官房審議官 外務省からも,現地での調査の困難性等について話がございました。
    それから,瀬川構成員から,大使館,領事館に警察関係者がいるというお話がございました。あれは警察出身の者なんですが,外務省職員の身分で行っておりますから,あくまでも大使の指示のもと働くという性格のものでございます。細かいことを申しまして,済みません。
    そういった中で,警察として,今,御提案のような制度について,いかなる対応ができるかについては,外務省あるいは内閣府にも御調整いただきまして,検討してみたいと考えております。
  • 椎橋座長 ありがとうございます。
    推進室長,どうぞ。
  • 内閣府大臣官房審議官犯罪被害者等施策推進室長 細かな話で恐縮でございますけれども,これまでの議論からしますと,先ほど保険の話がございましたが,保険は国内の制度でも,民間の保険に関しては,基本的に考慮しないことになっておりますし,そういう意味でも,考えるのはいかがなものかという感じだと思います。どちらかというと,考えるならば,保険が掛けられるんだから,そもそもそんなものは要らないのではないかという議論の際にはあり得るんだと思いますが,そこはそうではないんだ,ひどい目に遭った人に対して,一定の思いを示すんだという整理にしてくるのであれば,保険を掛けているかどうかというのは,別の問題だと思います。
    それから,海外からの給付は考え方次第という気もいたしますけれども,国内では公的機関の給付は一応整理をすることになっておりますが,あくまで日本国民として慰謝しようという話なので,海外政府がすることについて,差し引くべきだみたいな議論が,果たして見舞金という性格になってきたときに,出てくるべき議論なのかという感じがいたしました。
    その感じであわせて申し上げれば,義援金のような話も,それぞれ義援金をという思いの方たちが,プラスアルファーいたんだと考えていけばいいような感じだと,今,感じたところでございます。
  • 椎橋座長 支給対象について,いろいろ御意見を伺いました。次に文章化するに際して,ここも言っておきたいということがございましたら,お願いいたします。
    番構成員,どうぞ。
  • 番構成員 先ほど保険の話をしましたけれども,私も犯給法を間違えて認識しておりました。保険は除外ということであれば,特に今回の見舞金制度を作るときに,それを考慮する必要はないと思います。
    おっしゃったとおり,見舞金であれば,できるだけ難しくなく,速やかにお渡しできるような形で条件を決めなければいけないと思います。ですから,どんな犯罪か,あるいはどこまでそれが明らかになったらいいのかというところが,一番絞るところだと思いました。
  • 椎橋座長 どこまで明らかになったらいいかというのは,今,番構成員から出ましたが,この辺り,警察庁のほうではいかがですか。
  • 警察庁長官官房審議官 これがまさに非常に難しい問題でございまして,ここはまた相談させていただければと思っております。
  • 椎橋座長 ありがとうございます。
    それでは,今まで出ました御意見を整理して,事務局で文章化して,次回にお諮りしたいと思います。
    それでは,海外での犯罪被害者に対する経済支援の問題は,このぐらいにいたします。
    どうぞ。
  • 松村構成員 テロ被害の場合は,検討しなかったとなっていますけれども,全然違うのではないかということは,はっきりさせておいていただいたほうがいいのではないかと思います。この前のテロ,アルジェリアから帰ってくるときの被害者の扱いをこれからもやってくださるということならば,それはそれで意義があると思うんですけれども,あれはあくまで例外だと思います。そうだとすれば,テロ被害者については,特措法みたいなものを作っておく必要があるのではないかということは,ここで言っておきたいと思います。
  • 椎橋座長 外務省の方,御意見ございますか。
  • 外務省領事局邦人テロ対策室課長補佐 外務省でございます。
    今,構成員から御指摘がありましたとおり,アルジェリア事件における被害者につきましては,以前の検討会でも説明させていただきましたけれども,全ての場合において,アルジェリア事件において使用したように,政府専用機に乗って御遺体あるいは生存被害者の帰国ができるかといいますと,一概にこういった場合ならばできる,できないということを決めるというのは,確かに難しいというのは,御指摘のとおりでございます。
    他方で,テロに関しまして,何らかの別の区分として,特別措置法のような形での手当をしてはどうかという御指摘かと思いますけれども,その点につきまして,外務省の立場としては,テロリズム,テロというものに関して,定義というものが,国際法上も又は国内法上も,確立したものとして示されていないというのが現状でありまして,そういった点からの難しさというものがあるのではないかと考えております。
    これまでの説明の繰り返しで恐縮です。
  • 椎橋座長 黒澤構成員,どうぞ。
  • 黒澤構成員 これは言及するのがいいのかどうか,よく分からないんですけれども,外国人が日本国内にいらっしゃいます。単なる数日の旅行者から,定住されている方から,いろんな外国人の方がいらっしゃると思うんですが,その方が犯罪被害に遭って,犯給法に乗らない場合,外国で日本人が被害に遭った場合には見舞金が出るんですけれども,そこは言及しなくていいのかどうか。ネグっても構わないとは思うんですけれども,その辺はどういうふうに考えたらよろしいんでしょうか。グローバル,国際化した世界の中で,日本人だけ見舞金をやるのか,そういう声もあるかもしれないと思いまして,申し上げました。
  • 警察庁長官官房審議官 現在の犯給制度について申し上げますと,日本国内で犯罪被害に遭われた外国人の方でも,正規の在留資格を持って,日本国内に居住されている方については,対象になっておりますので,そういった範囲では説明が付くものかと思います。
  • 黒澤構成員 単なる旅行者は,だめだということになりますね。
  • 警察庁長官官房審議官 そうです。
  • 黒澤構成員 ここに書いてあるように,本件もたまたま海外に行った際に事件に巻き込まれてしまった。そのバランスで,そのままネグっていていいのかどうかという問いでございます。
  • 椎橋座長 外務省の方,どうぞ。
  • 外務省領事局海外邦人安全課課長補佐 現実的な話を申し上げると,海外で日本大使館が邦人保護の一環で支援をしますけれども,これは端的に言うと,日本のパスポートを持った方々のみでございます。定住者の方で,外国のパスポートを持っておられる方は,その国の大使館に連絡が行って,情報提供も全てそちらの大使館へ行きます。そういう意味で,現実問題として,調査をすることがかなわないんです。そういった制限があります。ですので,私どもとしてお手伝いできるのは,被害者が日本国籍である場合になります。
  • 椎橋座長 推進室長,御意見ありますか。どうぞ。
  • 内閣府大臣官房審議官犯罪被害者等施策推進室長 黒澤構成員のおっしゃったお話に関しては,先ほどの相互主義的と言われているところとも関連をしてお話になっているとも感じますし,まさにそこが相互に国々でそうしてしまえば,逆に今回検討しているものは,もしかしたら要らないのかもしれないという議論とも関連しそうな気がいたしますが,残念ながら,まだ世界でそういう形になっている,あるいは議論が起きているということでもないという感じのお話ですので,今,その議論をされるのは,難しいということを感じた次第です。
    もう一つは,日本国民が,今,海外で被害に遭ったときには,さすがに日本人としてどうなんだろうという思いから,ようやくこの議論が出始めたぐらいのところで,更に国内に来られた外国人の方々までとなると,国民の理解度というのは,随分差がありそうな気がするという意味におきましては,違うものだと考えること自体は,それほど不合理なものではないと思った次第でございます。
  • 椎橋座長 川出構成員,どうぞ。
  • 川出構成員 私も同意見でして,社会連帯共助の精神という場合,恐らく外国人の方でも,日本に定住されている場合は,まさに社会の一員として捉えるということだと思います。同様に,海外にたまたま行っている日本人の方も,社会の一員といえるわけですが,他方で,一時的に日本に旅行に来られている外国人の方というのは,そのカテゴリーに入らないという整理でいいのではないかと思います。
  • 椎橋座長 小西構成員,どうぞ。
  • 小西構成員 この件に関して,意見が言えないでいるんですけれども,なぜかといいますと,実際に外国で被害に遭われた方を臨床で診ることが私はあるんですが,余りにも様々な状況で,余りにも様々な国で,本当に一件一件違うんです。連帯共助の精神で見舞金を出す,そのことについて,何も議論はないんですけれども,どこで線引きするかということになって,具体的に自分がお会いしたケースを考えますと,非常に難しいというのが思うことなんです。
    それで意見がなかなか言いにくくなっておりますが,連帯共助の精神そのものを,何かの形で私たちが表したいということであれば,余り難しくしないで出すという形でないと,しかも,それが国内で議論されたときに,理解できる形で出さないと,無理ではないかというのが,現実的に考えることです。
  • 椎橋座長 ありがとうございます。
    実現可能性のことを考えますと,考え得ることを最初から全てということは,なかなか難しい。できるところからやっていくということでは,大体一致しているのではないか。どこら辺までだったらできるのかということについて,いろいろ御意見を伺いましたので,一度事務局で文章化して,次回また確認していただく,議論していただくということでまとめさせていただきたいと思います。
    事務局,何かございますか。
  • 内閣府犯罪被害者等施策推進室参事官 中身的には,オペレーション的に関与していただく必要があるであろう外務省とか,警察庁とか,もし必要があれば,ほかの省庁などとも相談しながら,またお示ししていたきいと思っております。

3 各種支援の現物支給について

  • 椎橋座長 ありがとうございました。
    それでは,次のテーマに移らせていただきたいと思います。
    松村構成員から御提出いただきました,あすの会の要綱第12項に列挙されている,各種支援の現物支給の話に進みたいと思います。
    列挙されている各種支援に係る費用につきまして,医療関係費としてまとめられておりますけれども,その支援の提供の枠組みは,医療機関に限らず,多様な内容を含んでおられます。その上で,例えば本検討会でヒアリングした中に,自宅改造費,義足,義肢といった費用負担がかかってくる方について,犯罪被害者だからということではなくて,そういうニーズがある方だから,利用できる制度があるようでございますので,そのように,犯罪被害者でなくても,同種のニーズをお持ちの方がおられることを前提にして,犯罪被害者にだけ特有の現物支給制度を作らなければいけないという理屈は,個々の制度の枠組みごとに検討していく必要があると思われます。
    更には,現物支給の枠組みを作れるのかということ自体につきましても,個別の支援内容や提供されている現場,被害者との接点の持ち方など,個別に検討していかなければならないことであろうと思われます。
    列挙されているうちの一つ,カウンセリング費用もございましたけれども,これについては,検討会2として,2年間,別途それだけを御議論した結果を本検討会にも御報告いただいておりますので,ここでは先に心理療法,カウンセリングの部分についての取りまとめの方向性を確認させていただきたいと思います。
    これについては,事務局からの資料にもありますように,本検討会としては,検討会2の提言を支持するということで,合意していただいているところでございますので,まずこの点については,その旨,取りまとめでも言及することとしたいと思いますけれども,よろしいでしょうか。前のときに,何度か確認をさせていただきましたので,改めて文章化する上で,確認をとりたいということでございます。
    小西構成員,それでよろしいですか。
  • 小西構成員 何度かこちらに来させていただいて,お話させていただきましたので,それで結構でございます。
  • 椎橋座長 それでは,次に,カウンセリング以外の現物給付の論点に戻りますけれども,カウンセリングについても,専門的な議論を経てみないと,犯罪被害者だからこそ,そのニーズがあるとか,あるいは犯罪被害者だからこそ上乗せできるという理屈を見出すことがなかなか難しいと思われます。したがいまして,全ての制度について,個別に検討していくことは,時間的な関係もありますし,本検討会としては難しいという感じがいたします。
    その意味で,議論の優先順位としても,本検討会として,特に集中して取り上げるべき制度と,絞り込まれたものもなかったことから,取りまとめの上でも,総論的な意味で,今までの御発言の中で関連するような御指摘を4点記載しております。
    最初の2点は,犯罪被害者性の認定だと思われますが,番構成員から,過去の検討会での被害者認定カードについての言及があったところでございます。この点について,今までの検討会での御議論を事務局から御説明いただきたいと思います。よろしくお願いします。
  • 内閣府犯罪被害者等施策推進室参事官 現物支給みたいな制度といっても,窓口でどうやって犯罪被害者ということが認定できるのかという議論の流れの中で,番構成員から,過去の検討会でも,被害者カードみたいなことを検討したことがあったのではないかという御指摘を受けたことを踏まえての記載でございます。
    過去の検討会というのは,平成18年から平成19年にかけて3つの検討会が開かれておりました。そのうちの一つ,「支援のための連携に関する検討会」の中で言及があったのが,被害者カードでございます。小西構成員には,この議論の中にも入っていただいておりました。
    この検討会の中での被害者カードというのは,被害者がいろんな機関なり,団体なり,弁護士やお医者様も含めてですけれども,行くときに,一から被害状況であるとか,事件のことを説明するのは,大変御負担がかかるので,概略的なものを見せれば済むようなカード的なものができないかという前提として,議論が進んでいたものでございます。この検討会の中では,カードに書かれている被害事実がそのとおりである,被害者がおっしゃっているとおりであると認定できる機関というのは,ちょっと難しいのではないかということと,結局カードなり何なりに記載されている事実関係を見たとしても,それぞれの支援の場で必要な個別の情報というのは異なってくるので,例えば弁護士さんであれ,お医者さんであれ,どういう状況だったのか,それぞれの立場で必要な情報を改めて聞き直さなければ,適切な支援ができないのではないかということが指摘されたところでございます。
    今回の枠組みでいいますと,例えば何らかの障害者に対する支援について,それが必要な犯罪被害者であるということを,どこが認定できるのかという問題が生じてきてしまうと思われます。前回の検討会での被害者カードというものと,今回ここで犯罪被害者に現物給付をする上で,この人が犯罪被害者ですといって示せるカードというものが作れるかどうかというのは,議論としては,かぶってこないというところでございます。
    以上です。
  • 椎橋座長 ありがとうございました。
    ただいまの事務局の説明に対して,何かございましょうか。
    小西構成員,どうぞ。
  • 小西構成員 今,名前を挙げていただきましたので。このとき,最初に御提案いただいたのは,本村構成員だったと思います。例えばあすの会から来ていただいている構成員のような方の場合,お話を伺っていると,当然誰もがそういうことをできたらいいのにと思うと思います。私も本当にそうだと思うんですけれども,逆に自分の医学の臨床場面で,被害を受けた方を診たときに,事実認定というのは,非常に難しいものがある。記録には原則的に患者さんの被害のお話をそのまま書きます。でもその事実の判断や認定はふつうの臨床ではできません。そこのところで,この問題はいつも引っかかっていってしまうところがあって,とても難しいということを経験したと記憶しています。
    誰をこの法律の対象にするのかというところで,いつも議論が難しくなっていくわけですけれども,実際には,個人情報の問題,それをどうやって共有するか、どうやって保護するかという問題,この辺が非常に難しくて,実現するにはいろいろハードルがあるというのが,私の感想です。個人的な理解も含めてですので,それは御了解いただきたいです。
  • 椎橋座長 ほかにいかがでしょうか。松村構成員,どうぞ。
  • 松村構成員 私は理解できません。例えば犯罪に遭ったとき,刺されたときに,これは犯罪事件ではなくて,被害ではないと判定するのは難しいというのは,理解できないんです。明らかなものがあればすぐに認定して,それなりの治療なり何なりをすべきで,それを認定するのが難しいから,できないというのは,趣旨に反するのではないかという感じがいたします。
    現物給付と言っているのは,結局,入院なり何なりをしたときに,お金を直接払わないで済むようにしてくださいというのが,主の目的ですから,認定が難しいとか,そういう問題ではなくて,本当にこの人は犯罪被害者なんだという認定を誰がすべきかということで,恐らくこれは警察ではないかと思うんですけれども,そういうことさえしてくれれば,スムーズにいくのではないかと思います。
  • 椎橋座長 中曽根構成員,どうぞ。
  • 中曽根構成員 実際,支援をしていて思うのは,犯罪の種類によって事実の認定がしにくい場合もあるのではないかと思うので,例えばカードに何を書くかということも出てくるんですけれども,カードに記載するというのは,難しいような気がしています。
  • 椎橋座長 犯罪による被害者であるということが,容易に認定できる場合と,そうでない場合がある。そうでない場合,どうするか。犯罪被害に遭った方については,なるべく早く支援をするべきだということについては,一致しているところだと思いますけれども,それがなかなか難しい場合を含めてどうするかということを考えた場合,どうするか。被害に遭われた方は,犯罪被害者でなくても使える制度に,いかに結び付けていくかということも大事だと思いますので,そういう意味では,次のその他の議論にもつながると思います。
    小西構成員,どうぞ。
  • 小西構成員 先ほど半分しか言えなかったと思うので,むしろ認定されない場合にも,使えるような制度が当然必要になってくるんだと思っています。刑事事件という形で規制されている限り,できないことがたくさんあるわけで,それはここの場でお話することではないのかもしれませんけれども,先ほど罪種というお話がありましたが,殺人事件で事実認定が争われる場合と,例えば強姦やDVで,実際に被害があることは誰もが知っていても,事実認定あるいは認知というところで問題が出るケースと,本当にいろんな問題があるわけです。でも,何とか助けてほしいという人がたくさんいることは事実で,先ほどみたいなお話をすると,限定していくほうにばかりいってしまうので,決してそう思ってはいないし,それではいけないということは,この検討会の方にもぜひ知っていただきたいと思います。法律で救えないところをどうするのかという,その他のほうの議論は,非常に大事なことなんだと思っています。
  • 椎橋座長 中曽根構成員,どうぞ。
  • 中曽根構成員 医療費が非常にかかる,医療費の負担が,被害に遭った後にすぐにあるということは間違いないので,その点で何とかならないかということは思います。予想していなかった犯罪に遭って,結局は医療費の負担がかかるわけですので,その点については,自己負担でない方法がないものかと考えます。
  • 椎橋座長 犯罪被害者であるかどうかの認定が難しい場合も含めて,犯罪被害者でなくても使える制度に,いかに犯罪被害者をスムーズにつなぐかということとの関係で,次のテーマのその他があるわけですけれども,とりあえずここに進んでいただいて,その他との関係でも,十分に救済できない,早急に救済できない場合をどうするかということを,又議論するということもあっていいのではないかということで,まずその他との関係を議論させていただきたいと思いますが,よろしいでしょうか。
    現物給付のところでは,最後のところで,一時金の金額との関係がございますけれども,この記載について,事務局にお伺いいたしますが,取りまとめ文章との関係をどういうふうに考えたらいいのか,御説明いただきたいと思います。よろしくお願いします。
  • 内閣府犯罪被害者等施策推進室参事官 この記載の趣旨は,犯罪被害者性の認定とか,そういうお話とはちょっと違う観点ですが,一時金の議論に関連して,今までの御議論の中で出てきたものの1つとして挙げています。一時金の金額,死亡事案,あすの会の要綱案のところで1,200万というお話があった中で,どうして1,200万円なんだというところで,挙げていただいた支給趣旨の中に,医療関係費として,現物支給の項目にある,いろいろな費用負担のことが含まれておりました。
    御発表の中では,結局,現物給付が実現するような形で負担軽減がされるのであれば,一時金の金額というのは,1,200万円にこだわるところではないという趣旨の御発言があったと記憶しております。そういう意味では,現物支給の形での被害者の費用負担の軽減という考え方は,ある程度一時金的な形での給付との相関関係にもあると理解できるかと思っております。
    本検討会では,結局のところ,犯給制度での重傷病給付でありますとか,障害給付の制度自体を変える提言には,前回からの御議論におきましても,結論としてはそうなりませんでした。その点,列挙されているような現物給付制度がないこととしても,こういった事項で被害者にかかっている経済的負担の軽減も,現行の犯給制度の支給の中には含まれているということは,1点挙げられると思っております。
    つまり,現物給付の関係で,そもそも一時金との金額の連動性みたいなことをわざわざ指摘しなくてもいいといえばいいのかもれませんし,指摘するとしたら,現行の犯給制度で,一部ではありますが,支給根拠の中には含まれている部分があるという形で,言及させていただくこともできると思っております。
    以上です。
  • 椎橋座長 ありがとうございました。
    今の点について,いかがでしょうか。松村構成員,どうぞ。
  • 松村構成員 これからいきますと,一時金を先に決めるべきなのか,それとも見舞金を先に決めるべきなのか,どちらかに決めないと,話が何も進まないのではないかという気もします。一時金がどの程度になるのかによって,現物支給のほうが影響あるかもしれませんけれども,いずれにしても,一時金そのものの額の決定のほうが先なんだろうと思うんですが,実際に困っているのは,現物給付でカバーしてもらいたいという要求が強いことは確かです。
  • 内閣府犯罪被害者等施策推進室参事官 それでは,取りまとめ文章上も,ここの部分については,現場での負担が相当重たいという御指摘があったという言及を加えさせていただくということで,よろしいでしょうか。
  • 椎橋座長 松村構成員,いかがですか。
  • 松村構成員 結構です。
  • 椎橋座長 要は現場での負担をいかに軽減するかということで,それが現物支給なのか,一時金によるものなのかということはあると思いますが,大事なのは,現場での負担をいかに軽減するかということです。そういう表現はぜひ入れていただきたいと思います。
  • 内閣府犯罪被害者等施策推進室参事官 そのような御議論があったということで,記載させていただきたいと思います。

4 相談支援体制の整備と地方公共団体の見舞金制度について

  • 椎橋座長 それでは,次に移りまして,前回の御議論から出てきたことでありますが,取りまとめの文章上,国としての経済的支給そのものではないけれども,関連する分野として,相談支援体制の整備と地方公共団体の見舞金制度について言及する,第3のその他という項目を設けることにしたいと思います。何かの提言をするまで,具体的に議論を進めておりませんので,出てきた個々の御指摘についての言及にとどまると思いますけれども,それでよろしいでしょうか。あるいはそのほかに,その他で言及しておいたほうがいいような視点がありますかどうか,その辺りのところをお伺いしたいと思います。
    この点については,特に御異論はなかったと思います。地方に押しつければいいということではだめですという御意見は伺っておりますが,項目を設けて,こういうことを文章にあらわすこと自体については,御異論はなかったと思いますが,その点についてはよろしいですか。
  • (「異議なし」と声あり)
  • 椎橋座長 そのほかに何か言及すべきことがあれば,お伺いしたいと思いますが,いかがでしょうか。
    事務局,どうぞ。
  • 内閣府犯罪被害者等施策推進室参事官 先ほど番構成員からもありましたし,中曽根構成員からも御指摘があったように,何回かこの検討会の中で,医療費負担の重さというところで,必ずしも医療保険が使えるんだという部分,自己負担が3割負担ではなくて,全額負担という形でふってきているケースが,いまだに散見されるのではないかという御指摘がありました。ここの部分については,2次計画後に厚労省さんからも通知をいただいているところで,更にそこの部分についての周知を図って,少なくとも医療機関で,犯罪被害者がわざわざ医療保険が使えるはずですと,条件交渉をしなくてもいいように,今後この制度が周知徹底されるべきということについて,付言していきたいと思っております。
  • 椎橋座長 番構成員,どうぞ。
  • 番構成員 地方自治体の支援の1つなのですが,現物支給といえば現物支給で,法律相談の現物支給という形で,神奈川県などは,被害者は県民という限定があるようですけれども,2回無料で弁護士による法律相談を提供する制度があります。法律的な支援の分野では,例えば刑事事件の最中の被害者の支援について,弁護士費用交付というような日弁連の制度とか,各地の弁護士会で法律相談は1回無料とか,東京の場合は,無料の電話相談を受け,弁護士が必要と判断し,希望した被害者には,1回無料の面接相談をするという制度もあり,そういう意味での支援体制は,かなり広がっております。ですから,法律相談なども,地方公共団体などが必要な被害者に無料で提供していただける,これも現物支給としてやっていただければありがたい。神奈川県のようにやっていただければありがたいと思っております。
  • 椎橋座長 いろいろなところで行われております無料の法律相談を,更にそのほかの地方自治体にも広げたいということで,それはどういう形で表現できますか。
  • 内閣府犯罪被害者等施策推進室参事官 恐らく見舞金制度と同列で,見舞金制度であったり,あるいは県として提供している法律相談,ほかにも支援があるところとないところがあると思いますので,そういった形で,できるだけ全国統一的な支援体制が進むことが望ましいとか,そんな感じで,特定というよりは,これからどんどん水準が上がっていくことを期待する,みたいな書き方が,国の検討会としては,無難だという印象を持っております。
  • 椎橋座長 そういう表現方法でよろしいでしょうか。番構成員,どうぞ。
  • 番構成員 これを言うのは,私が弁護士だからということはもちろんありますけれども,被害者の方が,自分は法的な制度として何が利用できるかとか,そういうことを知るというのも非常に重要で,いろいろな法的制度が進んできても,それを知らないで過ぎていってしまった被害者がいます。法的支援を広げて,できるだけ被害者の方に説明をして,いろいろな制度を利用してほしいと思っておりますので,法的支援の広がりという意味合いで,積極的にそういう支援ができてくればいいという気持ちから申し上げましたので,お願いします。

5 親族間犯罪に係る犯給金の裁定被害者の統計について

  • 椎橋座長 弁護士さんに普通に相談したら有料ですので,無料でやっていただければ,経済的支援になるのでしょうから,正面からというわけではないんでしょうけれども,そういう支援が現にあって,それが広がっている。更にやっていないところについては,期待するということは,書いてもいいんでしょうね。
    ほかにいかがでしょうか。
    よろしければ,次に移りたいと思いますが,今までのところで,積み残してあった議論,6ページの議論まで一応終わりましたので,今日出していただいた御意見をまとめて,次回には全体にわたって文章化して,お見せできると思います。
    ここでもう少し御議論していただきたいのは,ここまで全体にわたって議論してきたわけですけれども,前回議論未了となっていた部分について,遡って議論していただきたいのですが,取りまとめ上は,反映をさせる箇所が幾つか分かれるかもしれませんけれども,幾つか警察庁に調査をしていただくことをお願いしていたことがございます。
    まず親族間犯罪について,その要因の分析,今までの御発言の中で,しがらみという言葉が出てきましたけれども,親族間犯罪に係る犯給金の裁定被害者の統計について,これは御要望もあったところでございますが,この辺りについて,警察庁から御発表いただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
  • 警察庁長官官房給与厚生課犯罪被害者支援室長 要因の分析ということで,御説明をさせていただきたいと思います。
    資料2から御説明をさせていただきたいと思います。資料2は,資料2-1と資料2-2となってございます。これは警察庁が集計しております犯罪統計から,殺人と傷害の2罪種につきまして,平成20年から平成24年を対象として,犯行の動機原因別検挙件数と被疑者と被害者の関係別検挙件数というものを,クロスしてとってきたものでございます。このような形にしておりますが,統計というものの性質上,それほど詳しい要因分析ではないということを,おわび申し上げさせていただきながら,御説明いたしたいと思います。
    親族間犯罪と全体の検挙件数それぞれにつきまして,そういった形でとってまいりました動機原因の割合を帯グラフで示しております。
    まず資料2-1ですが,資料の左側が親族間犯罪になっております。これは被害者が被疑者との間で,実父母,養父母等々,親族であるものということでとっているものでございます。資料の右側は全体でございますので,親族も入れた形での全体の数となっております。
    動機原因別でございますけれども,帯グラフの中の比較的数が多いところに丸数字を入れております。それぞれが下に書いてあります,動機原因の凡例に該当いたします。
    例えば資料2-1の左側では,<12><13>という辺りは非常に大きくなっておりますが,<12>が怨恨,<13>が憤怒になっております。<9><10>もそれなりに大きくなっておりますが,<9>が介護・看病疲れ,<10>が子育ての悩みでございます。
    それから,平成20年の下に括弧書きで558件とか,1,120件ということで件数を書いております。
    それでは,資料2-1からでございますけれども,これをお比べいただきますと,親族間犯罪についても,全体につきましても,<12><13>が多くなっております。親族間犯罪については,全体に比べると<9><10>の割合が多くなっております。
    <12><13>の憤怒,怨恨とは何なのかということにつきましては,統計の性質上,それが具体的にどういうことかというところは,とれていないことになっております。
    20年から24年の変化ということでは,そんなに大きくは変わっていないと言えると考えておりますが、件数は,ちょっと減ってきていると言えるかと思っております。
    資料2-2,傷害については,全体的にも<13>がかなりの部分を占めているということでございます。これは親族間犯罪についても,全体についても,大体同じということになっておろうかと思います。
    件数は平成20年から24年にかけて増加をしておりまして,この点については、後ほど御説明をさせていただければと思っております。
    資料2との関連で,資料3を御説明させていただきたいと思います。こちらは法務省に教えていただきまして,法務省の法務総合研究所が公表していらっしゃいます,家庭内の重大犯罪に関する研究という研究成果の該当部分を抜粋させていただいているものでございます。
    資料3-1を御覧いただければと思いますけれども,これは被害者と被疑者の関係別の検挙件数と親族率の推移でございます。
    2-1-2図となっておりますが,上の<1>一般刑法犯総数ということで,これは棒グラフが全体の数,折れ線グラフが占める割合でして,占める割合は,右側が目盛りになっておりますので,平成10年,11年ぐらいまでは,大体0.3~0.4%ぐらいだったものが,現在1.5%程度になっているということでございまして,これは後ほど御説明をさせていただければと思っております。
    下のグラフが殺人についてでございます。殺人についての親族率というのは,折れ線グラフで示されているものでございます。直近の数字は52.3%となっております。従来から検討会でも,殺人の半数が親族間によるものであるという御指摘がございましたところですけれども,これも資料から読み取れるところでございます。ただ,御覧のとおり,少し上がり気味のところはございますが,平成元年以降,大体45~50%ぐらいで推移をしていると見ておるところでございます。
    資料3-2を御覧いただければと思います。これは割合ではなくて,親族が被害者である事件に係る検挙件数の推移でございます。ここに記載のとおりでございますけれども,親族が被害者である殺人事件自体は,数としては,緩やかな減少傾向をたどっているところでございます。
    御覧いただきまして分かるように,傷害につきましては,11年,12年ごろから急増いたしまして,現在では2,500件前後でございます。最新の件数は2,789件になっております。
    この点については,裏側を御覧いただければと思います。先ほど申し上げましたように,親族犯の傷害につきましては,平成11年,12年から急増してございます。法務総合研究所の分析としましては,親族が被害者である傷害事件の急増は,傷害の右下のグラフを御覧いただければと存じますが,配偶者間の傷害が顕著に増えていることとなっております。この増加が、配偶者が被害者である事件の検挙件数が12年から急増していることと連動しているという御指摘となっております。
    更には、平成13年のDV防止法の施行等の社会情勢の変化を背景に,それまで表面化することの少なかった配偶者による暴力が顕在化するようになったことも,事件数急増の一因があるように思われるという御指摘となっております。恐らくDV防止法の施行等,あるいは社会的関心の増加で、件数が増えてきたのであろうという分析になっていらっしゃいます。この点につきましては、犯給制度において、平成18年以降,DV事案に係る親族間犯罪の特例を拡大した規則改正を行うなど,対応はさせていただいているということを,付言させていただければと思っております。
    前回の検討会でも述べさせていただきましたが,今回,保護者による長年にわたる性的虐待など,特にお気の毒な年少者被害について,特例を拡大していくことができるのかなどを検討してまいるとともに,引き続き実態を踏まえた適切な運用がなされるように,都道府県公安委員会の御理解を得てまいりたいと思っております。
    ただ,全体として申しますと,殺人の件数自体は,どちらかというと,減少傾向であり、親族間によるものが半数を占めているとはいえ,それは近年に始まった傾向でもないと見ているところでございます。
    資料4を御覧いただければと思います。これは犯給制度におきまして,親族間犯罪について,裁定被害者数はどのような形になっているのかということでございます。
    一番上が親族間犯罪に係る裁定被害者数ということで,上欄が裁定被害者数全体でございます。そのうち,親族間犯罪のものが,平成24年度であれば18件になっております。
    内訳ということで,そのうち,全て不支給のケース,減額になっているケース,全額支給になったケースということで,記載をしております。
    親族間犯罪では,そもそも給付金の申請自体をされない方も当然たくさんいらっしゃるだろうと思います。ただ,親族間犯罪であっても,特例がございますので、必ず支給されないということでもございません。申請に対して裁定を行う都道府県公安委員会の事務局を務める都道府県警察には,事案の状況を踏まえて,丁寧に制度内容を被害者等に教示申し上げるようにということで指導をしているところでございますし,これは不支給だろうという場合も,当然申請がございましたら,受け付けまして,事実関係を明らかにするということで,対応をしているところでございます。
    また、資料にはございませんが,私が申し上げておりました,しがらみとは何なのかということでございますけれども,事案の背景に親族関係ならではのもつれがあって,親族として生活してくる中で生まれてくるようなものが,しがらみと言えるのではないかと思っております。
  • (以下「しがらみ」について,個別の裁定例等を例示しながら説明した。しかし,例示した内容は,行政機関の保有する情報の公開に関する法律第5条第1号に掲げる個人に関する情報が含まれることから、平成23年3月25日付の犯罪被害者等施策推進会議決定に基づいて、議事録から削除した。)
  • 親族の間柄というのは,一筋縄ではいかないというと,語弊があるかもしれないですけれども,親族として生活する中で生まれてくるものが,憤怒とか,怨恨につながってきているところもあろうかと思います。そういった事案も多く発生しているところであると考えております。
    資料5を御覧いただければと存じます。こちらはDV事案についてということで,先ほども平成13年の施行以降,非常に顕在化するようになったのではないかという御指摘が,法務総合研究所の研究の中でもあったところでございますけれども,こちらは警察で受けております,配偶者からの暴力事案の認知件数の推移ということで,相談などを受理した件数ということでございます。
    記載のとおり,平成13年10月がDV防止法の施行でございますけれども,それ以降,ずっと増えてきている状態にございます。
    下が配偶者からの暴力事案への対応状況の推移ということで記載をしておりますが,指導警告等の件数も載せておりますし,表の下側は他法令による検挙としておりまして,DV事案として,被害者から警察に相談等があったものに係る検挙件数ということで,記載いたしているものでございます。
    私からは以上でございます。
  • 椎橋座長 ありがとうございました。
    ただいま御説明をいただきました。配偶者間の暴力が顕在化するようになったために,傷害の件数が増えたという特徴的な面がありますけれども,それ以外の殺人等については,数字の上では,傾向について,余り変化は見られていないという報告があったと思います。
    今までの議論で,何でこのような報告を警察庁にお願いしたかといいますと,親族間犯罪については,原則と例外を逆転させるべきではないかという御意見との関係で,調査をお願いしたということがございます。
    この点,ただいまの警察庁の御発表を踏まえて,御意見をお伺いしたいと思いますが,いかがでしょうか。
    小西構成員,どうぞ。
  • 小西構成員 これは番構成員が提案されたかと思いますが,基本的には逆転するべきだと思っています。親族間に犯罪が多いのは昔からの傾向で,むしろ犯罪というのは,親族の間でたくさん起きるものです。DVは今までたくさん傷害があったのに,出てこなかっただけですから,被害としてきっちり扱っていくことが,今度は必要なんだと思います。もちろん家庭の中の被害にも,同情すべきケースと,今,警察の方から、家族内の犯罪で給付金を出すことに社会的理解が得られないケースがあることをご提示いただきましたが,おっしゃるような「しがらみ」で,加害者被害者と言うけれども、どちらが悪いか分からないというケースがあることは分かります。でもそうではないケースもあります。
    だから,先ほどと同じことが言えます。例えば今まで親族間の犯罪というのは,親族だから特殊な事情、つまり「しがらみ」があるんでしょうというところに全部まとめられてきたものなんだと思います。ところが実際には、家族外の犯罪にも家族間の犯罪にも,被害者に大変同情すべきケースと,そうではないケースがあるわけです。それが「家族だから普通は問題が起きないはず、助け合うはず」という視点があるために,ほかの犯罪と違う扱いを受けてきた部分が,今の御説明にもあるのではないかと思います。たとえばDVや虐待がそうです。家族の中には、救済するべき暴力被害がたくさんある。実際に犯罪被害を扱うときに,家族の中のことを例外として扱いというのは,これから先のことを考えても,犯罪の被害者の中心部分をある程度落としてしまうのではないかと思っております。その点で,逆転させるということに賛成です。
  • 椎橋座長 ほかに御意見はいかがでしょうか。川出構成員,どうぞ。
  • 川出構成員 前回も申し上げたことですが,そもそも親族間の被害について,原則不支給とされている根拠が何かということが問題になるかと思います。今のお話の中で,親族間の犯罪の場合,それまでにしがらみといいますか,積もり積もった事情がある場合が多いというご指摘がありましたがが,仮にそれが根拠だとすると,親族間以外の犯罪について減額事由になっているような事情が親族間の犯罪については一律に認められるという発想になるかと思います。
    しかし,減額事由とされている被害者側の帰責事由には,いくつかの段階が定められているわけですね。例えば,犯罪を教唆したような場合は不支給ですが,不適切な行為があったというような場合には,減額は3分の1にとどまっています。そうすると,それと比較したときに,親族間の犯罪は一律に原則不支給ということが説明できるのかという疑問があります。親族間の犯罪の場合,親族ならではのしがらみがある場合がほとんどだということであれば,原則例外を逆転させることは難しいのかもしれませんが,例えば,一律に減額するという程度にとどめることも考えられるわけで,原則不支給というのは考え直す余地があるように思います。
    加えて,以前にご指摘がありましたように,家族というのは本来助け合うべきものなので,そのような家族の中で起きた犯罪について,社会連帯共助の精神から手を差し伸べることには国民的な合意が得られないということも,親族間犯罪について原則不支給となっている理由の1つかと思います。しかし,これについても,現在でも本当にそういえるのか,家族のあり方が変わってきたというご指摘もあることですし,そこも見直す余地があるように思います。
  • 椎橋座長 原則不支給の趣旨について,今更改めて問うまでもないというか,警察庁から改めて言っていただくのもどうかと思いますけれども,その辺り,議論になっていますので,審議官,どうぞ。
  • 警察庁長官官房審議官 せっかくの御指名でございますので,申し上げます。以前にも申し上げたことの繰り返しにもなろうかと思いますが,犯罪被害給付制度は,通り魔のような,不慮の犯罪被害を主として対象にして,そもそも発足したものでございまして,互いに助け合うべき親族の間で行われた犯罪というのは,こういったものと同視できないのではないかということでございます。
    それから,親族間犯罪につきましては、親族関係がございますので,給付金を給付することによって,結果的には加害者の関係者を利することになるケースもあろうということで,不支給という制度をとっております。
    若干家族関係が変化しているのではないかという御指摘もございますが,とはいえ,家族,親族というのは,相互に助け合うべきものだという価値観が,日本社会にまだ残っていることを信じたいというところもございます。
  • 椎橋座長 番構成員,どうぞ。
  • 番構成員 逆に言いますと,そういう家庭で事件が発生し,殺人までに至った場合,被害者は非常にかわいそうだと思います。本来,助け合うべき家庭,あるいは温かい場であるべき家庭でDVの被害者が発生し,殺人にまで至るというときに,私はいつも思うんですけれども,本当にかわいそうだと思うのです。ですから,そう考えると,家庭とか,家族関係はそういうものだ,そうであれば,そこで考えられもしない犯罪が起きるということは,異常事態であって,そこを一律不支給とするのは,全く理解できないです。それは家族を大事にしていないことではなくて,家庭というのは,そういうことが起こってはいけない場でありながら,起こってしまったわけです。いろいろなしがらみとおっしゃいましたけれども,そういうものがあれば,不支給の事例として,裁定すべきだと思います。
    今,思い出すのですけれども,2003年に警察庁の被害者対策室が中心となって,犯罪被害者対策のシンポジウムが開かれました。そのときに,私も呼ばれてお話をしましたけれども,特に取り上げたのはDVの問題で,ちょうどDV法ができて,日本もそういうことをようやく言うことになった。イギリスの犯罪被害者対策の担当官が基調講演をなさったのですが,日本では考えられないぐらいDVの被害者支援をしたり,あるいは防犯に努めたりしていとのことでした。そういうことをすることが,警察のコストを減らすこと,重大事件の発生を減らすことにつながるとおっしゃっていました。
    犯罪の重要部分が親族間犯罪であるということ,統計上表れていることを冷静に考えると,そこから殺人の半分以上を占める親族間犯罪を原則不支給とするのは,余りにもおかしいことだと思います。今回どうしてもそれは変えられないとしても,そろそろ考え方を変えるべきときだと思いますので,今後はそういうことも含めて,警察庁でもよく検討していただければと思います。統計を見て,ますますそう思いました。
  • 椎橋座長 松村構成員,どうぞ。
  • 松村構成員 ついでに済みません。これを見ますと,犯給制度の中の特に親族間犯罪のところが,原則不支給だということは,金を出すのが嫌だということを,はっきり言っているみたいです。ちょっと言い過ぎかもしれませんけれども,それなりのことをとられますので,逆転するというほうにしていただきたいと思います。
  • 椎橋座長 警察庁の方,どうぞ。
  • 警察庁長官官房給与厚生課犯罪被害者支援室長 お叱りを受ける中で申し上げるのも恐縮でございますが,犯罪被害者支援を家族間の犯罪全体についてやっていないかというと,それは警察なりに取り組んでやっているということをまず申し上げさせていただきたいと思います。
    また,今回この統計を出しまして,申し上げておる趣旨といたしましては,家族間の関係とか,家族のあり方が変わったと本当に言えるのかどうか。例えば殺人だけで申しますと,件数自体は減っており,少なくとも平成元年からの20年余りを見ましても,割合はそれほど変わっているわけではない中で,現在,犯給法の原則と例外を逆転させるとしたら,何を根拠にしたらいいのか。もちろんDVの状況などはございますが,原則不支給と申しながらも,従来御説明しておりますように,規則の段階では,様々な形で一定程度支給をするような形での考え方もやってきております。まだ不十分な範囲があるのではないかということは,御指摘のとおりでございまして,どういったものがいいのかというのは,考えてまいりたいと思っているところでございますが,今回出した統計が、なぜ,今,原則と例外を逆転させるのかという材料になり切れていないと思っているところでございます。
  • 椎橋座長 小西構成員,どうぞ。
  • 小西構成員 統計で傷害がこれだけふえていて,明らかに変わっています。少なくともこのことに何も対応しないというのは,あり得ないように思います。
  • 警察庁長官官房給与厚生課犯罪被害者支援室長 傷害の増加について申し上げますと,恐らくDV事案の顕在化であろうと言われているところでございます。そのように考えますと,実態として,家族関係のあり方が,本当に変化したと言える材料になるかどうかというところはございます。
  • 小西構成員 それはおかしいです。
  • 警察庁長官官房給与厚生課犯罪被害者支援室長 更に申し上げさせていただきますと,親族間犯罪が傷害に占める割合という意味では,それほど大きいものではないということでございます。
  • 椎橋座長 小西構成員,どうぞ。
  • 小西構成員 私より番構成員に言っていただいたほうが,法的にしっかり言えるのかもしれませんけれども,先ほどの海外の話も,支援するといいと思うけれども,なかなか難しいという意見を申し上げたのは,それが法律的に十分な状態で引っかかってこないということがあるからです。助けたいケースの実態はあるけれど、定義がうまくできないというのは,そういうことです。そういうケースでもなんとか実態に合わせて支援して行こうとしているわけですよね。そうだとしたら,定義ができる、すなわち現在の制度で犯罪被害として引っかかってくるケースでさえこれだけ増えていることを,実態が変わらないということで,退けるのは非常に矛盾した態度ではないかと思います。その実態は数からいっても、大変憂慮すべきものであるにもかかわらずです。
  • 警察庁長官官房給与厚生課犯罪被害者支援室長 DV事案につきましては,原則,例外の逆転ではないんですけれども,現在,規則におきまして,一定程度の対応をしてございます。これが足りないという御指摘はあろうかと思いますけれども,一定程度の対応をさせていただいているところでございまして,決して放置をしている訳ではないと考えております。
  • 椎橋座長 番構成員,どうぞ。
  • 番構成員 1つだけです。実態が変わらないけれども,多分顕在化してきたと思います。講演でもそういうふうに話しています。ただ,顕在化するということが,変わったということなのです。つまり自分が受けているものを,被害として外に言えるものなのかどうかということが分からなかった。妻なんか,一発,二発殴られても,文句を言うものではないということだったのが,そうではなくて,警察に相談に行き,私は被害者であると申告するようになったというのは,ものすごく大きな変化です。これは家族関係の変化です。ですから,実態は変わっているのです。それなのに,いつまでも原則,例外は逆転させず,運用で対応するという方法が,本当にふさわしいのかということを申し上げているということです。
  • 椎橋座長 川出構成員,どうぞ。
  • 川出構成員 家族関係が変化したかどうかは評価が分かれるところだと思いますが,少なくとも,こうした実態が顕在化し,家族の中でもこれだけ暴力が行われているのだということを社会が認識するようになっているわけですね。そうした状況のもとで,家族内の話だから,家族の中で処理すべきであって,社会連帯共助の精神から手を差し伸べる必要はないのだという,親族間犯罪についての原則不支給を根拠づけていた社会あるいは国民の意識が変わっているということはできないでしょうか。そのような意味で立法事実に変化があるということができるように思います。
  • 椎橋座長 推進室長,どうぞ。
  • 内閣府大臣官房審議官犯罪被害者等施策推進室長 家族関係が法律的な評価として変化をしたのかという点について,恐らく警察庁としては,現時点で判断する材料を持っていなくて,それはこの制度の中で議論するよりは,もっと別の世界で決まってくれば,そうなりますということなのではないかと,今,感じていた次第です。
    一方,DVみたいな形のところで,事実上変化している部分については,そうは言いながらも,一部の原則,例外を変化させながら,適切な対応ができるように,今,努力をしているということで,対応しているんだろうと思いますし,根本の部分の議論というのは,どこで決まるんだろうかという中で,家族間が変わったかどうかというのは,実はこの分野だけではなくて,いろんな議論で出てきて,難しい問題になってきつつある話だろうと思いますが,それを今この制度の中で考えるのは,難しいということだと感じたところでございます。
  • 椎橋座長 中曽根構成員,どうぞ。
  • 中曽根構成員 支援をしていて思うんですけれども,民間の援助団体として,犯給制度の説明を受けたりするときに,親族間は出ませんという形で教えていただくケースが多いわけです。原則親族間は出ませんというところから,例外もあるという御説明をいただいているんですけれども,どれが例外なんだろうと,警察署の方たちも思っておられるのではないかと思います。なので,表現の仕方も含めて,現場にいる警察の支援室の方たちにも徹底していただくと,親族間の事件の中でも,少しでも給付がなされるのではないかと,現場の方たちが思われるのではないかと思います。そこで,支援室のほうが,これはもうだめなのではないかと,固定観念というと大変失礼なんですけれども,そういうふうに思っておられる部分があると感じます。
  • 椎橋座長 支援室長,どうぞ。
  • 警察庁長官官房給与厚生課犯罪被害者支援室長 御指摘ありがとうございます。様々な研修や会議の機会などにも,そういった注意をしているところでございますが,恐らく不十分というか,御説明が足りていない事案があろうかと思っております。そこは何かの形で徹底させていただくようにしたいと考えております。
  • 松村構成員 今の杵淵室長の発言は物すごく気になるんですけれども,結局ほかで変わってこなければ,変わらないということならば,なぜこの会議があるのか。この会議で変えてもいいのではないかと思うんですけれども,だめなんですか。それについて,御見解をお聞きしたいと思います。
  • 椎橋座長 推進室長,どうぞ。
  • 内閣府大臣官房審議官犯罪被害者等施策推進室長 できるか,できないかは,私が決めることではございませんので,私が申し上げたからといって,そうだということではありません。ただ,私が感じましたのは,大変大きな議論につながっている部分なので,警察庁として,今,そうですという根拠がありますから,これで変わりましたといって,説明をしてやっていくことは難しいという観点が,にじみ出てお話をしているように感じると,申し上げたということでございます。
  • 椎橋座長 事務局,どうぞ。
  • 内閣府犯罪被害者等施策推進室参事官 今回,警察庁に調査結果を出していただいた議論の流れを確認させて頂きます。現行制度の前提として,DVに全額支給できるようなものにするという幾つかの改正の過程がございました。それにストレートではないんですけれども,大きく支給額が変わった平成20年改正もございます。その意味で犯給制度がこういう形でよろしいかという審議は,国会で今まで何回か経てきております。そのときの状況と立法事実が変わっているのかという観点で,立法事実が出てくるほどの,少なくとも統計上の意味があるかということで,確認を調査として出してもらうという流れでございました。そういう意味では,統計上からは,少なくとも平成20年改正であるとか,過去に国会で犯給制度のあり方について御議論いただいたこととの比較からすると,変化はないのではないかということを,先ほど御報告いただいたと思っております。
    それに加えまして,今回,議論しているのは,経済的支援でございまして,先ほど警察庁の鈴木審議官からも御発言がありましたけれども,1つとして,お金を出すといったときに,家族関係の場合は,どこでお金のやりとりが家族間で切れるのかというのは民法である程度決まっているところがございます。配偶者間は,離婚をしてしまえば,縁が切れるというのが,ある程度はっきりしている分野ではないかと思うんですけれども,子供とか,その他の親族間でほかに扶養義務がある人がいない場合等,経済的支援で加害者の関係者にお金がいかないように,どういうふうにしてセーブできるのかという枠組みは,現状,外的に担保されている制度は,限定的だと思っております。
    その観点で,先ほど警察庁から,児童虐待事案みたいな形での年少者被害について,もうちょっと例外事案を広げられないかということをお考えだと御発表がありましたけれども,その観点からいくと,個人的には年少者被害に限定するのはいかがなものかと思っております。例えば児童虐待,性的虐待が継続して,お子さんが成長して,結婚して,初めて性的虐待が表に出てくる,ようやく被害が出せるという話になってくる可能性があります。そのときには,婚姻して,新しい世帯とになっているというところが,ある意味きれいに分かれるところでございますので,年少者に限定してしまうと,親権等を剥奪でもしない限り,親にお金が戻っていってしまう,あるいは扶養する親の関係者にお金がいってしまう可能性がありますので,御検討の際には,できれば被害者が「年少者」であることの限定をとっていただけたらいいと思っております。
    くどくどしい話ではございますが,立法事実の変化をどういうふうにして捉えるのかということについては,そうはいっても,家族関係については,社会的にも心情変化があるのではないかという非常に強い御指摘があったことを踏まえて,今後そういう観点での犯給制度の御議論はあってもいいのではないかという御意見があったというのは,当然この取りまとめの部分では踏まえるべきだと思います。
    他方,それ以上に,立法事実の変化をどういうふうにして捉えるか,更に皆さんの御意見を踏まえるような立法事実の変化というのが,何らかの形で読み込めるのかどうなのかというのは,又警察庁にも御検討いただきたいとは思いますが,現状のところは,難しいという警察庁の御判断自体についても,取りまとめ上は,言及せざるを得ないのではないかと思っております。
  • 椎橋座長 いろいろ御意見を伺いましたけれども,統計の数字についての評価も分かれておりますし,それが立法事実に変化があったのかどうかということについての評価にも結び付いて,これも分かれているということがございます。それから,根本的な犯給制度の理念をどう考えるかということに関連しましても,議論が分かれているところだと思います。
    実際のところは,いろいろな場合があるのだと思います。番構成員が御指摘なさったように,家族とは名ばかりで,そういった関係がないのに,ひどい被害を受けている。こういう場合に原則不支給でいいのかというと,それはおかしいのではないか。しかし,他方で,家族に保険金を掛けて殺害して,そこから利益を得るという事例を考えますと,それは許されるものではない。そのときに,原則と例外を変えると,そういう場合でも,原則は支給なんだ,例外的に不支給なんだという立場をとった場合に,果たして国民の理解が得られるかどうかという問題,すなわち,将来に向けて,家族間は助け合うものだという規範が崩れてはいけないのではないかという御意見もあるのではないかと思います。
    そう考えると,議論を1つにまとめるということは,今の時点ではできないと思いますので,この点については,文章表現をする場合には,両方の意見があったということでまとめるしかないと感じている次第でございます。いかがでしょうか。
    例外と原則を逆転させるべきだという意見のほうが多かったことは,間違いないんですけれども,それも特に傷害,DVについて,かなり集中して,その辺りを根拠にしてということだったと思いますので,全体についてということを考えると,そのエビデンスが十分であるかどうかということについては,いかがでしょうか。
    そこまで踏み切ることができるかどうか,少し不安を感じるものですから,大分私見が入って,言い過ぎかもしれませんが,必ずしも1本にまとまったとは言えないと感じております。そういう形で文章化する。簡単にいうと,両論併記ということになりますが,この点について,何か御意見がございましたら,お願いします。
    両論併記という形で,とりあえずは文章化するということで,今日のところはまとめさせていただきたいと思います。
    それでは,大分時間が押していて申し訳ないんですけれども,警察庁に宿題としてお願いしておりました,重傷病給付金の受給者の加療期間についての調査の結果がありますので,これについても,簡単に御発表いただきたいと思います。時間は余りとらないで,終わるようにいたします。

6 重傷病給付金の受給者の加療期間についての調査の結果

  • 警察庁長官官房給与厚生課犯罪被害者支援室長 それでは,資料6を御覧いただければと存じます。
    重傷病給付金の給付期間につきまして,これまでどういう形でバックデータをとってきたのかということで,記載をしているものでございます。
    重傷病給付金は,平成13年の法改正で創設されております。
    そして,平成18年に給付対象期間を長くしたという,改正の経緯をたどってきております。
    一番下が,今回考えるに当たって,ちょっと前に調査をしたものでございます。
    平成12年の調査は,重傷病給付金創設前でございますので,受給者ではなくて,犯罪被害者の方に聞いていったという形でございますが,688人の方のうち,大体3か月未満で加療が終わる方が72%であったということで,これをもとといたしまして,平成13年の法令改正では,重傷病給付金の給付対象期間を3か月といたしました。
    平成13年から17年にかけての調査でございますけれども,平成13年以降にお支払いをしてきた方で,追えるだけ追ったという形で,379人の方に実際にはどれぐらいかかったかということをお伺いをしたものでございます。これによりますと,1年以内で終わっている方は76%,更にそれ以上かかっている方が24%ということで,この結果を踏まえまして,大体76%の方は入るということで,1年ということで区切って,平成18年の政令改正をいたしました。
    そして,今回,調査をいたしたものでございますが,ちょっと数が多いので,平成22年中に限らせていただいていたものなんですが,233人の方に聞いた結果といたしまして,1年以下でという方が67%,2年以下の方が19%,2年以上かかるという方が14%ということでございます。
    数が必ずしも十分な調査でないと思っておりますし,3つの調査のやり方自体も単純比較はできないんですけれども,7割ぐらいのところで,線を設けてきたという気はいたします。22年調査も、1年以下の方が67%ということを以て,これで給付対象期間を2年に拡大しますという材料になり切らないとは思っております。ただ、更にどうしていくかということは,引き続き実施状況を見まして,検討させていただければと思っております。
    以上でございます。
  • 椎橋座長 ただいまの御報告について,御意見があれば,お伺いしたいと思います。
    特にないようでしたら,時間も過ぎておりますので,これについては,時間がなかったということで,事務局に御意見をお寄せいただければ,いただいたご意見を反映するという形で文章化して,お見せしたいと思います。
    それでは,事務局から今後の予定をお願いしたいと思います。
  • 内閣府犯罪被害者等施策推進室参事官 次回の予定を調整させていただきました。12月11日,今日と同じで4時半です。引き続き,取りまとめに向けた御検討をいただきたいと思います。
    今日お見せした部分の取りまとめ文章の書きぶりは,いちいち御意見をいただくことができませんでしたので,そこの部分も含めて,次回までの間にもお寄せいただければ,適宜反映させていきたいと思っております。よろしくお願いいたします。
  • 椎橋座長 それでは,大分時間が超過してしまいまして,申し訳ございませんでした。これにて第16回の「犯罪被害給付制度の拡充及び新たな補償制度の創設に関する検討会」を終了したいと思います。どうもありがとうございました。
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