-
犯罪被害者等施策
-

警察庁ホーム > 犯罪被害者等施策 > もっと詳しく知りたい:犯罪被害者等基本計画 > 犯罪被害者等基本計画

犯罪被害者等基本計画

平成17年12月

 

I 犯罪被害者等基本計画策定の目的

1.犯罪被害者等の置かれている状況

治安を守り、犯罪等(注1) を撲滅するため、我が国においても様々な取組がなされているが、犯罪等は跡を絶たず、人が被害者となった刑法犯の認知件数(道路上の交通事故に係る危険運転致死傷及び業務上過失致死傷を含む。)は、平成16年で305万5,018件である(注2)。毎年これだけの認知件数があるということは、一生の間犯罪被害者等(注3) とならずに過ごすことのほうが困難であるといえよう。犯罪被害者等に係る諸問題は、国民全体が考えていくべきものであるが、犯罪被害者等が受ける被害の実相についての理解は十分ではない。犯罪被害者等は社会の例外的な存在であって、自分たちとは関係がないという誤った認識や、犯罪被害者等は、特別に公的に守られ、尊重され、加害者からの弁償に加えて十分な支援が受けられることで容易に被害から回復できているという誤解もある。こうした認識の誤りもあり、犯罪被害者等に対する支援についての社会の関心は高いとはいえない。

(注1) 犯罪及びこれに準ずる心身に有害な影響を及ぼす行為をいう。(犯罪被害者等基本法第2条第1項)
(注2) 法務省法務総合研究所編『犯罪白書(平成17年版)』国立印刷局、2005年による。
(注3) 犯罪等により害を被った者及びその家族又は遺族をいう。(犯罪被害者等基本法第2条第2項)

しかしながら、犯罪被害者等は、国民の誰もが犯罪被害者等となり得る現実の中で、思いがけず犯罪被害者等となったものであり、我々の隣人であり、我々自身でもある。犯罪被害者等は、生命を奪われ、家族を失い、傷害を負わされ、財産を奪われるといった、いわば目に見える被害に加え、それらに劣らぬ重大な精神的被害を負うとともに、再被害の不安にさいなまれる。犯罪等によってゆがめられた正義と秩序を回復するための捜査・公判等の過程で、犯罪被害者等は負担を負い、時には配慮に欠けた対応による新たな精神的被害(二次的被害)を受けたり、名誉感情を傷つけられながら、自らの正義の回復に期待してこれに耐えていく。しかし、望む限りの情報が得られるわけではなく、かけがえのないものを奪った犯罪等の真実を必ずしも知ることができず、望むような関与もできず、疎外感・無力感に苦しむことが少なくない。さらには、周囲の好奇の目、誤解に基づく中傷、無理解な対応や過剰な報道等により、その名誉や生活の平穏が害されたり、孤立感に苦しむことも少なくなく、支援を行う各機関の担当者からさえ心無い言動を受けることもある。このように、犯罪被害者等の多くは、これまでその権利が尊重されてきたとは言い難いばかりか、十分な支援を受けられず、社会において孤立することを余儀なくされ、さらには、犯罪等による直接的被害にとどまらず、その後も副次的な被害に苦しめられることが少なくなかったのである(犯罪被害者等基本法前文)。

2.犯罪被害者等のための施策における犯罪被害者等基本計画の位置付け

もとより、我が国においても、犯罪被害者等のための施策は行われてきた。戦後について概観すれば、昭和20年代に、当初は、どちらかといえば治安対策や交通政策に位置付けられて始まり、その後、昭和55年の犯罪被害者等給付金の支給等に関する法律の成立に見られるような、いわば純然たる犯罪被害者等のための施策が展開されるようになった。平成に入ってからは、各府省庁において、相談、情報提供、精神的ケア等の総合的な支援や刑事に関する手続への参加の機会の拡充のための施策が講じられるようになるとともに、内閣に「犯罪被害者対策関係省庁連絡会議」が設置され(平成11年)、密接な連携が図られるようになった。また、民間の支援活動については、昭和40年代に今日的な活動の嚆矢が見られ、平成に入ってから、様々な民間団体による活動が全国的に展開されるようになった。

こうした取組が、相当の成果を上げる一方で、各府省庁単位での取組は一定の壁に突き当たった感も生じる中、依然として犯罪被害者等の置かれた状況には深刻なものがあり、国民の誰もが犯罪被害者等となる可能性の高まっている今こそ、犯罪被害者等の視点に立った施策を講じ、その権利利益の保護が図られる社会の実現に向けた新たな第一歩を踏み出す必要があった(犯罪被害者等基本法前文)。もとより、犯罪被害者等に係る問題の根源的な解決策は、犯罪等を撲滅することであり、犯罪等を抑止する取組を着実に実施していくことが重要であることはいうまでもないが、依然として犯罪等が跡を絶たず、多くの犯罪被害者等が困難に直面し、苦しんでいる現実に対し、犯罪被害者等の視点に立ち、一日も早くその心身が回復され、平穏な生活に戻ることができるよう、犯罪被害者等のための施策を新たな段階に進める必要があったのである。

そこで、平成16年12月、犯罪被害者等が直面している困難な状況を踏まえ、これを打開し、その権利利益の保護を図るべく、犯罪被害者等のための施策に府省庁横断的に取り組み、総合的かつ計画的に推進していく基本構想を示した「犯罪被害者等基本法」(以下「基本法」という。)が制定され、平成17年4月に施行された。そして、政府は、基本法にのっとり、総合的かつ長期的に講ずべき犯罪被害者等のための施策の大綱等を盛り込んだ犯罪被害者等基本計画(以下本文中においては「基本計画」という。)を策定することとされた。

基本法が犯罪被害者等のための施策を総合的かつ計画的に推進していくための基本構想を示すものであり、犯罪被害者等の視点に立って施策を展開していく過程の第一段階として位置付けられるならば、基本計画は、第二段階として、今後一定の期間内に構築すべき施策体系の具体的設計図と工程を示すものであり、個別具体的な施策の着実な実施を図っていくためのものである。したがって、基本計画は、犯罪被害者等及びその支援に携わる者の具体的な要望に立脚し、できる限りのことをするものでなければならないとともに、犯罪被害者等の権利利益の保護が図られる社会の未来像を結ぶことのできるものでなければならない。

3.犯罪被害者等基本計画の策定方針

犯罪被害者等のための施策を展開していく過程の第一段階である基本法は、犯罪被害者等が直面している困難な状況を打開し、その権利利益の保護を図るために必要な基本的施策を条文化したものであり、第二段階としてこれらを施策体系として具体化する基本計画は、犯罪被害者等及びその支援に携わる者からの要望を基に、これらをいかに満たしていくかという視点で検討され、策定されるべきである。

こうした考えに立ち、基本計画の検討に当たっては、まず、犯罪被害者等及びその支援に携わる者からの要望を広く把握し、それら一つひとつについて、どのような施策が可能かを検討した。検討の基本的な方針としては、犯罪被害者等のために有用でないもの、公共の福祉の理念に反するもの、あるいはより有用な代替的手段があるもの、のいずれかに該当するものでない限り、当該施策を基本計画に盛り込むこととした。また、個々の施策の中には、種々の問題点や危惧が指摘され、慎重に検討していく必要のあるものも少なくないが、柔軟な発想で、現行制度にとらわれることなく問題点や危惧に対処し、要望を可能な限り満たすとともに、幅広い支持が得られ、真の実効性を持って安定した形で運用されるよう、バランスの取れた施策体系の構築を目指すこととした。

なお、基本計画における「犯罪被害者等」とは、基本法における定義のとおり、犯罪等により害を被った者及びその家族又は遺族を指し、加害者の別、害を被ることとなった犯罪等の種別、故意犯・過失犯の別、事件の起訴・不起訴の別、解決・未解決の別、犯罪等を受けた場所その他による限定を一切していない。当然ながら、個別具体の施策の対象については、その施策ごとに、それぞれ適切に設定され、判断されるべきである。

4.計画期間

基本計画に盛り込まれた個々の施策については、実施可能なものは速やかに実施することとする一方、検討を要するものについては、検討の方向性を明示し、原則1年以内に、大きな制度改正又は財源の確保を必要とするものは2年以内(例外的に3年以内とするものもある。)に結論を出し、その結論に従った施策を実施することを方針とし、明確な期限の設定と方向性の明示により、できる限り迅速な施策の実施を目指した。

他方、基本計画は、犯罪被害者等のための施策の総合的かつ計画的な推進を図るために作成されるものであり、今後一定の期間内に構築すべき施策体系の具体的設計図と工程を示すものとして位置付けられるものであることにかんがみれば、基本計画全体についての明確な計画期間を設定し、個々の施策をその計画期間中に展開すべき施策体系として統合し、それらを貫く基本方針や重点課題としての意味付けを行うべきである。その期間の長さについては、施策体系ができ上がり、その目指す機能が有機的に発揮されることを担保するだけの期間を確保する必要がある一方で、一定の期間で区切ることによって、施策の進捗状況を含め、犯罪被害者等を取り巻く環境の変化等を踏まえた適切な見直しを担保する必要がある。

こうした観点から、計画期間は、本基本計画の閣議決定時から平成22年度末までの約5か年とする。

 

II 基本方針

基本方針は、犯罪被害者等が直面している困難な状況を打開し、権利利益の保護を図るという目的を達成するために、個々の施策の策定・実施や連携に際し、実施者が目指すべき方向・視点を示すものである。

基本法は、国及び地方公共団体が犯罪被害者等のための施策を策定・実施していく上で基本となる3つの「基本理念」を掲げている。施策の実施者が目指すべき方向・視点は、この3つの基本理念を踏まえて設定されるべきである。また、基本法は、国民の配慮と協力を責務と定めている。犯罪被害者等は、社会において理解され、配慮され、支えられることが必要であり、すべての施策の基盤として、国民の総意が犯罪被害者等のための施策に向けて形成されることも施策の実施者において目指すべき方向・視点とされるべきである。

そこで、以下の4つの基本方針を設定する。

[4つの基本方針]

<1> 尊厳にふさわしい処遇を権利として保障すること

基本法第3条第1項は、「すべて犯罪被害者等は、個人の尊厳が重んぜられ、その尊厳にふさわしい処遇を保障される権利を有する。」と規定している。

犯罪被害者等は、国民の誰もが犯罪被害者等となり得る現実の中で、思いがけず犯罪被害者等となったものであり、我々の隣人であり、我々自身でもある。その尊厳は、当然のこととして尊重されなくてはならない。しかし、犯罪被害者等は、その被害の実相を理解されず、例外視され、被害の責任があるかのように誤解されるなどして、必要な支援を十分に受けられなかったり、刑事手続など様々な場面で無理解な対応をされたり、周囲の好奇の目にさらされ、中傷され、あるいは、軽視されたり無視されるなど、疎外され孤立することが少なくない。そうした疎外感・孤立感から、犯罪被害者等の中には、加害者に対する一面手厚い対応に比べ、犯罪被害者等は不公平に軽んぜられているという思いが強くある。

犯罪被害者等のための施策は、例外的な存在に対する一方的な恩恵的措置ではなく、社会のかけがえのない一員として、犯罪被害者等が当然に保障されるべき権利利益の保護を図るためのものである。施策の実施者は、犯罪被害者等はその尊厳が尊重され、その尊厳にふさわしい処遇を保障される権利を有していることを視点に据え、施策を実施していかなくてはならない。

<2> 個々の事情に応じて適切に行われること

基本法第3条第2項は、「犯罪被害者等のための施策は、被害の状況及び原因、犯罪被害者等が置かれている状況その他の事情に応じて適切に講ぜられるものとする。」と規定している。

犯罪被害者等が受ける被害の状況については、生命・身体・精神・財産に対する被害として様々な内容があり、被害の原因や犯罪被害者等が置かれている状況にも実に様々なものがある。また、時間の経過とともに、犯罪被害者等が直面する問題も種々に変化する。そうした差異に着目せず犯罪被害者等のための施策を一律に講じても、当該犯罪被害者等が直面している困難に対して意味のないものとなったり、時には、かえって負担を増す結果ともなる。

犯罪被害者等のための施策は、個々の犯罪被害者等が直面している困難を打開し、その権利利益の保護を図るために行うものである。施策の実施者は、個々の犯罪被害者等の具体的事情を正確に把握し、その変化にも十分に留意しながら、個々の事情に応じて適切に施策を実施していかなければならない。

<3> 途切れることなく行われること

基本法第3条第3項は、「犯罪被害者等が、被害を受けたときから再び平穏な生活を営むことができるようになるまでの間、必要な支援等を途切れることなく受けることができるよう、講ぜられるものとする。」と規定している。

犯罪被害者等は、犯罪等により、それまで享受していた平穏な生活が破壊され、本来有している能力も阻害され、自らの力だけでは回復困難な状況に陥る。そうであっても、犯罪被害者等は、自らが直面する様々な困難に立ち向かい、それらを乗り越えていかなければならないが、深刻な被害の影響により、平穏な生活を回復するまでには長期間を要し、また、時間の経過とともに直面する問題が様々に変化し、それに伴い、必要とされる支援内容も変化する。

こうした事情がある中で、適用される制度や担当する機関等が様々に替わることや地理的な制約等により、制度や組織の継ぎ目に陥り、必要な支援等が途切れることがある。

犯罪被害者等のための施策は、犯罪被害者等が直面するその時々の困難を打開することにだけ注目するのではなく、犯罪被害者等が再び平穏な生活を営むことができるようになることに視点を置いて行うべきものである。施策の実施者は、制度や担当機関等が替わっても連続性をもって当該犯罪被害者等に対する支援等が行われるよう、また、犯罪被害者等の誰もが、必要なときに必要な場所で適切な支援を受けられるよう、途切れることのない支援等を実施していかなければならない。

<4> 国民の総意を形成しながら展開されること

基本法第6条は、「国民は、犯罪被害者等の名誉又は生活の平穏を害することのないよう十分配慮するとともに、国及び地方公共団体が実施する犯罪被害者等のための施策に協力するよう努めなければならない」と規定している。

犯罪被害者等は、社会において平穏な生活を享受する権利を有しており、そうした生活を回復することが犯罪被害者等のための施策の目標である。しかし、犯罪被害者等は、社会において、ともすればその被害の深刻さ、回復の困難さを十分に理解されることなく、軽視・無視され、他方で、好奇の目にさらされたり、被害の責任があるかのように誤解され、中傷されるなど、疎外され、孤立し、その苦しみを増幅させられることが少なくない。そうした状況から逃れるために、犯罪被害者等であることを隠して生活をしていかざるを得ないこともあると指摘されている。

犯罪被害者等は思いがけず犯罪被害者等となったものであり、我々の隣人であり、我々自身でもある。国民一人ひとりが犯罪被害者等のことをよく理解し、配慮し、尊厳を尊重して支えることが健全な社会の証である。犯罪被害者等の居場所は、我々の隣に、地域社会の中にあるのであって、そこで暮らし続けられるように支えなくては、犯罪被害者等の平穏な生活は還らない。また、国民の誰もが犯罪被害者等となる可能性が高まっている中、犯罪被害者等に対する社会の支援は、犯罪等に対する拒否の強いアピールとなって安全で安心な社会づくりの基盤ともなるものである。

したがって、犯罪被害者等のための施策は、犯罪被害者等がその名誉又は平穏を害されることなく、共に地域で生きていけるよう国民が総意で協力する社会を形成していくという視点を持って実施されなくてはならない。同時に、国民の総意が形成されるよう、犯罪被害者等のための施策の策定・実施は、国民からの信頼を損なわないように適切に行われる必要がある。

 

III 重点課題

基本計画は、I、3.で述べたように犯罪被害者等及びその支援に携わる者の具体的な要望を基に策定されるものであるが、広範囲・多岐にわたるそれらの要望を総覧し整理する中で、大局的な課題として浮かび上がってくるものとして、以下に掲げる5つの課題を指摘できる。これらの課題は、関係府省庁がそれぞれに対応していくのみならず、各府省庁が、有機的な施策体系の一部を担っているという意識の下で横断的に取り組んでいく必要のあるものである。各府省庁は、個々の施策の実施に当たっては、各課題に対する当該施策の位置付けを明確に認識し、各課題ごとに府省庁横断的かつ総合的な施策の推進・展開が図られるよう努める必要があり、それによって、一層効果的な取組が可能となるものである。

[5つの重点課題]

<1> 損害回復・経済的支援等への取組

犯罪被害者等は、犯罪等により、生命を奪われ、家族を失い、傷害を負わされ、財産を奪われる。そうした損害に加え、高額な医療費の負担や収入の途絶などにより、被害者本人はもとより、遺族や家族についても、経済的に困窮することが少なくない。また、犯罪被害者等は、自宅が事件現場になったことで居住ができなくなったり、加害者から逃れるために住居を移す必要が生じたりするが、経済的困窮などともあいまって、新たな住居の確保に困難を伴う場合が少なくない。さらに、犯罪等による被害の実相や刑事手続等による負担に対する無理解等により、雇用の維持に困難を来すことも少なくない。犯罪被害者等が直面するこうした経済的困難は、それ自体重大であるだけでなく、精神的・身体的被害の回復に悪影響を与えたり、刑事手続等への十分な関与の障害ともなるなど、他の重点課題とも密接に関係する面がある。

もとより、犯罪等による被害については、その被害が加害者の犯罪行為等によるものであることからすれば、加害者に対する損害賠償の請求により被害の回復を図ることは当然であるが、犯罪等により精神的・身体的に大きな負担を負っている犯罪被害者等にとって、更に大きな負担となったり、民事訴訟遂行上様々な困難を生じたり、さらには、加害者の賠償能力が欠如していることなどにより実効的な賠償を期待できないことが相当多いと指摘されている。また、国等による積極的な救済制度についても、現行の制度では、犯罪被害者等が直面する経済的困難全体から見ると不十分であると指摘されている。こうした点に関し、犯罪被害者等からは、加害者に対しては多額の国費を投入して更生や社会復帰に向けた様々な施策が行われているのに比べ、犯罪被害者等に対する国からの直接の援助は極めて乏しいとの批判もある。

このような犯罪被害者等が直面している困難な状況を打開するため、犯罪被害者等の損害を回復し、経済的に支援するための取組を行わなければならない。

<2> 精神的・身体的被害の回復・防止への取組

多くの犯罪被害者等は、犯罪等により、その生命・身体に重大な被害を受ける。一刻を争う救命救急医療から後遺障害に対する長期にわたる治療や介護等の援助まで、身体的被害の回復・軽減のための支援が必要であり、犯罪被害者等がいつでもどこでも適切な支援を受けられるようにする必要がある。また、多くの犯罪被害者等は、当該犯罪等が意図した直接的な精神的・身体的・財産的被害を受けるのみならず、自分自身や家族が犯罪等という攻撃(あるいは悪質な行為)の対象にされた(あるいは巻き込まれた)ということ自体から精神的被害を受ける。こうした精神的被害によって著しい苦痛を受け、身体的被害を受けた場合と同様に日常生活や社会生活のための機能に障害が生じる場合が少なくない。このような精神的被害に対する適切な介入や支援が行われないことが症状の重症化や慢性化をもたらすことから、身体に関する救急医療と同様に被害直後から適切な診療や援助を受けられるようにする必要がある。

しかしながら、犯罪被害者等の治療を行える専門家・施設が不足しており、身近な地域で適切な医療や福祉サービスを受けられないとの指摘がある。特に、精神的被害に関しては、一般的に、ほとんどが治療や支援がなくとも自然に回復するものである、回復は個人の資質の問題であるなどの誤った認識から見過ごされやすいだけでなく、医療関係者においても理解が十分とは言えず、その診療やケアに関する研究の遅れや、専門家・施設の不足により、多くの犯罪被害者等が精神面の重い症状を負いながら、適切な診療やケアを受けられず、社会から孤立していると指摘されている。

また、犯罪被害者等が受ける精神的・身体的被害には、当該犯罪等によって直接もたらされるもの以外に、再被害によるもの、ないしは再被害を受けることに対する恐怖・不安によるものや、保護、捜査、公判等の犯罪被害者等が必要的にかかわらざるを得ない手続の過程で、また治療や回復の過程でかかわらざるを得ない関係機関において、配慮に欠けた対応をされることによって受ける二次的被害がある。こうした再被害や二次的被害への恐怖・不安により、被害の申告をためらう犯罪被害者等もいると考えられる。

このような犯罪被害者等の精神的・身体的被害に対し、これを回復・軽減し、又は防止するための取組を行わなければならない。

<3> 刑事手続への関与拡充への取組

犯罪被害者等が、捜査や刑事裁判等に対し、「事件の当事者」として、事件の真相を知りたい、善悪と責任を明らかにしてもらい、自己の、あるいは家族の名誉を回復したい、適正な処罰により自らの正義を回復してほしいなどと願うことは当然である。事件の正当な解決は、犯罪被害者等にとって最大の希望であり、その回復にとって不可欠であるともいえる。また、解決に至る過程についても、遺族がこれに関与することでその責任を果たせたと感じるなど、犯罪被害者等の精神的被害の回復に資する面もある。

しかしながら、現状について、犯罪被害者等からは、捜査や刑事裁判等は、加害者及び弁護士と、警察、検察、裁判所のみを主体として行われ、犯罪被害者等に認められた権利は貧弱であり、十分な情報も与えられず疎外され、証拠として扱われているに過ぎないという批判があり、刑事司法について社会の秩序維持という公益を図る目的が強調され過ぎているという指摘や、犯罪被害者等に信頼されない刑事司法は国民全体から信頼されないという指摘もなされている。

犯罪等には、社会の秩序を侵害するという面と個人の具体的な権利利益を侵害するという面があるが、人が被害者となる犯罪等の場合、一般的な感覚からは、両者は截然と区別されるものではない。社会が個人によって成り立っているように個人もまた社会の中にあるのであって、刑事裁判等において違法性と責任が明らかになり、適正な処罰が行われることは、社会の秩序を回復するというだけでなく、当該犯罪等による被害を受けた個人の社会における正当な立場を回復する意味も持ち、このことは、現実の問題として、個人の権利利益の回復に重要な意義を有している。刑事司法は、社会の秩序の維持を図るという目的に加え、それが「事件の当事者」である生身の犯罪被害者等の権利利益の回復に重要な意義を有することも認識された上で、その手続が進められるべきである。この意味において、「刑事司法は犯罪被害者等のためにもある」ということもできよう。また、このことは、少年保護事件であっても何ら変わりはない。

もとより、刑事に関する手続や少年保護事件に関する手続は、国家、社会、個人に関する様々な価値観の相克・変化を踏まえた歴史の所産でもあり、国家及び社会の秩序維持、個人の人権の保障、少年の健全育成等の時として衝突し、考量困難な種々の要請に応えるものでなければならない。そのことを前提としつつ、「事件の当事者」である犯罪被害者等が、刑事に関する手続や少年保護事件に関する手続に適切に関与できるよう、その機会を拡充する取組を行わなければならない。

<4> 支援等のための体制整備への取組

思いがけず被害に見舞われた犯罪被害者等は、精神的被害により、自分の身の回りのことすら満足にできない状態に陥る。その一方で、診療を受けたり、捜査・公判等に協力したり、損害回復のための請求を行うなど、次々に新たな対応を迫られ、再び平穏な生活を営むことができるようになるためには、様々な困難に立ち向かうことを余儀なくされる。犯罪被害者等に対しては、被害直後から、犯罪被害者等が直面している各般の問題について、相談に応じ、必要な情報の提供等を行うことが必要となり、さらに損害賠償の請求、経済的支援、精神的ケア、医療・福祉サービス、刑事手続等への関与など種々の場面での支援を様々な機関が行っていく必要がある。しかしこのことは、犯罪被害者等から見ると、相手方機関が次々と替わるということにもなる。様々な機関がそれぞれの役割を果たすべきであることは当然であるが、異なる制度や機関の継ぎ目を橋渡しする横断的なシステムがなければ、継ぎ目に当たる度に犯罪被害者等を制度や組織の谷間に陥らせ、さらには、時間の経過とともに支援が次第に弱まる感を抱かせることにもなる。したがって、継ぎ目のない支援体制を構築する必要がある。

犯罪被害者等に対する支援においては、支援に資する様々な制度に関する知識に加え、犯罪被害者等の心身の健康を回復させるための知識・技能が求められる。現状については、そうした知識・技能を十分に持った人材の不足が指摘されており、人材の養成に加え、専門的な知識・技能に関する調査研究や、その基となる犯罪被害の実態等に関する調査研究も求められている。

さらに、犯罪被害者等が望む場所で、ニーズに応じた支援を受けられるようにする必要があり、そのためには、民間の支援団体の存在と地域ネットワークの形成が重要である。民間の支援団体は、支援の提供者として不可欠の存在であるが、そのほとんどが財政面の脆弱さ、人材育成の面での問題を抱えており、また、他の機関・団体等との連携不足や、活動の地域的な格差などの問題点もあり、援助が求められている。

これらの現状を乗り越えて、犯罪被害者等の誰もが、望む場所で、必要なときにいつでも、情報の入手や相談ができ、専門的知識と技能に裏付けられた支援が受けられる継ぎ目のない支援体制を民間の支援団体とともに構築していかなければならない。

<5> 国民の理解の増進と配慮・協力の確保への取組

基本方針 <4>が示すように、犯罪被害者等が再び平穏な生活を営むことができるようにするためには、国民の期待に応え得る十分な施策を実施する必要があるが、施策が措置されても国民の理解と協力がなければその効果は十分には発揮されない。また、犯罪被害者等は、地域社会において、配慮され、尊重され、支えられてこそ、平穏な生活を回復できるのであり、施策の実施と国民の理解・協力はまさに「車の両輪」である。しかし、現状は、犯罪被害者等は、受ける被害の実相を理解されず、配慮のない対応をされ、疎外され、孤立することが少なくなく、二次的被害を与えられることもある。また、例外的な存在と誤解され、軽視・無視されることもある。

犯罪被害者等を理解することは、犯罪被害者等への配慮を可能にし、二次的被害を防止するのみならず、犯罪被害者等が我々の大切な隣人であることを改めて想起させ、隣人と共に生きる健全な社会をつくることを可能にする。また、犯罪被害者等への支援に協力することは、自己や周囲の者が犯罪被害者等となった場合に対処できる知識・能力を身に付けることにもなるとともに、犯罪等に対し、地域社会が一丸となって対決し、安全で安心な社会をつくることを可能にする。

広く国民の理解と協力を得るための取組は、目に見える効果を直ちに期待できるものではないが、国民一人ひとりに深く届くよう着実に進められなくてはならない。様々な分野・場面で、教育活動や広報・啓発活動等による息の長い取組を行い、犯罪被害者等が置かれている状況、犯罪被害者等の名誉又は生活の平穏への配慮の重要性等についての国民の理解を深め、犯罪被害者等への配慮と犯罪被害者等のための施策への協力を確保していかなればならない。

 

IV 推進体制

政府においては、基本方針及び重点課題を基礎としながら、犯罪被害者等からの要望等を踏まえ諸施策を展開していくことが重要であることは言うまでもないが、犯罪被害者等のための施策が全体として効果的・効率的に行われるためには、「施策の推進」という視点が重要である。基本法第8条においても、基本計画には、同条第2項第1号が掲げる政府が総合的かつ長期的に講ずべき施策の大綱等のほか、同項第2号に基づき、施策を総合的かつ計画的に推進するために必要な事項を定めることとされている。また、犯罪被害者等のための施策は、相互に密接に関連しており、その効果的・効率的な実施を図るためには、犯罪被害者等の意見に随時耳を傾けつつ、犯罪被害者等のための施策全体の中における位置付けを認識し、府省庁間の連携を十分にとり、施策相互の実施状況を照らし合わせながら企画立案を行ったり、複数の施策を調和的に実行していくことが必要である。特に、犯罪被害者等からの要望を踏まえた新たな施策を検討し実施することが重要となるが、限られた期間内に集中的に施策を企画立案し実施できるよう必要な体制を整備し、着実に取組を進めていく必要がある。

連携協力については、総論として、基本法第7条に定められており、施策の策定・実施に関する犯罪被害者等の意見の反映等については、基本法第23条に規定されているところ、これらについて、具体的な措置を、より明確にしていく必要がある。また、施策の実施の推進及び実施状況の検証・評価・監視は、犯罪被害者等施策推進会議の所掌事務であり、これについても、基本法の要請や犯罪被害者等の要望を踏まえ、適切に行っていく必要がある。

[基本法から導き出される事項]

基本法第7条からは、国として施策の推進に必要な事項として、
<1> 国の行政機関相互の連携・協力
<2> 地方公共団体との連携・協力
<3> その他様々な関係機関・関係者との連携・協力
が掲げられ、また、基本法第23条からは、国として施策の策定及び実施において踏まえるべき事項として、
<4> 犯罪被害者等の意見の施策への適切な反映
<5> 施策策定過程の透明性の確保
が求められている。

さらには、犯罪被害者等施策推進会議の所掌事務に関連して、
<6> 施策の実施状況の検証・評価・監視
<7> フォローアップの実施
<8> 基本計画の必要な見直し
が求められる。

[今後講じていく施策]

(1) 国の行政機関相互の連携・協力

ア 犯罪被害者等施策推進会議を活用し、関係府省庁間で重要事項の審議、施策の実施等を行っていく。

イ 犯罪被害者等施策関係省庁連絡会議(平成17年4月1日関係府省庁等申合せ)を活用し、関係府省庁等の間での随時の連絡調整等を行っていく。

ウ 犯罪被害者等施策推進会議及び内閣府において、他の政策に係る中長期的方針等に基づく各種施策と連携した犯罪被害者等のための施策の総合的な推進を図る。

(2) 地方公共団体との連携・協力

ア 内閣府において、地方公共団体のうち、知事部局における犯罪被害者等施策の窓口が未整理であるものに対しては、窓口となる部局及び体制を確認する。

イ 内閣府において、都道府県犯罪被害者等主管課室長会議(第4、1.(1)ア参照)等を活用し、地方公共団体との連携・協力を確保し、国と地方公共団体との適切な役割分担を踏まえながら施策を推進できるよう、各地方公共団体における窓口部局との間の情報共有等を図る。

ウ 内閣府において、構造改革特別区域制度の活用を通じた地方公共団体における犯罪被害者等施策の可能性について周知を図る。

(3) その他様々な関係機関・関係者との連携・協力

ア 行政機関以外の国の機関、民間の犯罪被害者団体、犯罪被害者支援団体、事業者団体等と連携・協力関係を築きながら犯罪被害者等施策を講ずる。

イ 内閣府において、犯罪被害者団体等との間の情報交換に当たり、「犯罪被害者団体等専用ポータルサイト」(第4、1.(29)参照)も活用する。

(4) 犯罪被害者等の意見の施策への適切な反映

ア 内閣府において、関係省庁からの参加を得て、様々な犯罪被害者団体等から、意見を定期的に聴取する機会を設ける。

イ 内閣府において、犯罪被害者団体等の意見を、上記の機会のほか、様々な媒体により、随時受け付ける。

ウ 犯罪被害者団体等から聴取した意見について、適切に施策に反映させるよう努める。

(5) 施策策定過程の透明性の確保

ア 行政機関の保有する情報の公開に関する法律(平成11年法律第42号)の趣旨に照らし、情報公開を行っていく。

イ 犯罪被害者等施策推進会議の議事録等の施策情報について、迅速な公開に努める。

ウ 内閣府において、「犯罪被害者等施策」のホームページを、犯罪被害者等のための施策に関する情報提供窓口として適切に運用する。

(6) 施策の実施状況の検証・評価・監視

ア 犯罪被害者等施策推進会議において、施策の有効性についての検証を行い、効果的かつ適切な施策を実施させる。

イ 犯罪被害者等施策推進会議において、基本計画の作成・推進による効果についての評価を実施し、その結果を基本計画及び個別施策の改定・見直し等に反映させる。

ウ 犯罪被害者等施策推進会議において、施策の検討・決定・施行の状況について、適時適切に監視を行う。

(7) フォローアップの実施

内閣府において、定期的に施策の進捗状況を点検するとともに、点検結果に基づき、犯罪被害者等施策推進会議の行う施策の実施状況の監視と連携し、施策の実施の推進を図る。また、内閣府において、点検結果について、年次報告等を通じて公表する。

(8) 基本計画の必要な見直し

犯罪被害者等施策推進会議において、犯罪被害者等のニーズ、犯罪被害者等を取り巻く環境の変化や犯罪被害者等施策の実施の進捗状況等を踏まえて、必要に応じ、基本法第8条第5項の規定に基づき、犯罪被害者等基本計画を見直す。

※ 各府省庁が個別具体の犯罪被害者等のための施策を実施するに当たって留意すべきことを定めたものについては、関係府省庁すべてが留意すべき事項であるので府省庁名を付していない。

一方、基本計画の推進を図る内閣府並びに施策の実施の推進及び施策の実施状況の検証・評価・監視を行う犯罪被害者等施策推進会議については、当該所掌事務に基づき、担当機関名を付している。

 

V 重点課題に係る具体的施策

第1 損害回復・経済的支援等への取組

犯罪被害者等が犯罪等により受けた損害を回復し、経済的負担を軽減することができるよう支援を行うことが必要であり、基本法は、第12条において「損害賠償の請求についての援助等」、第13条において「給付金の支給に係る制度の充実等」、第16条において「居住の安定」、第17条において「雇用の安定」に係る必要な施策を講ずることを求めている。

1.損害賠償の請求についての援助等(基本法第12条関係)

[現状認識]

多くの犯罪被害者等は、思いがけない犯罪等により、生命を奪われ、身体を損なわれ、かけがえのない財産を奪われ、多大の損害を被り、経済的に困窮する。その損害の金銭的回復は、犯罪被害者等が自ら行う加害者の不法行為を原因とする損害賠償の請求にかかっている。また、損害賠償の請求は、犯罪被害者等にとって金銭的な回復を図るためのものであるが、これに加えて、当該犯罪等に係る事件の全容を把握し、犯罪被害者等の名誉を回復するとともに、加害者に謝罪や反省を求める機会としても重要な意味を有している。

しかしながら、多くの犯罪被害者等にとって、損害賠償の請求によって加害者と対峙することは、犯罪等によって傷つき疲弊している精神に更なる負担を与えることにもなる。また、訴訟になると高い費用と多くの労力・時間を要すること、訴訟に関する知識がないこと、独力では証拠が十分に得られないこと、加害者の所在等の情報が不足していること、加害者に住所等を知られることへの恐れなど、犯罪被害者等は、損害賠償を請求する上で多くの困難に直面する。そのため、損害賠償の請求を躊躇する犯罪被害者等も少なくない。そして、そのような困難を乗り越えて訴訟で勝訴判決を受けても、加害者に賠償能力が欠如していたり、財産を隠されるなどして強制執行にも困難を来たすなど、損害回復の目的を果たせないことが相当多い。こうしたことから、現在の損害賠償制度が犯罪被害者等のために十分に機能しているとは言い難いとの指摘がある。

[基本法が求める基本的施策]

基本法第12条は、国及び地方公共団体に対し、犯罪等による被害に係る損害賠償の請求の適切かつ円滑な実現を図るための施策として、

を講ずることとしている。

[犯罪被害者等の要望に係る施策]

犯罪被害者団体等からは、
<1> 附帯私訴制度の導入
<2> 損害賠償命令制度の導入
<3> 損害賠償債務の国による立替払及び求償等
<4> 公費による弁護士選任
<5> 国による損害賠償請求費用(弁護士費用、刑事記録の謄写の費用、印紙代等)の補償等
<6> 日本司法支援センターの活用
<7> その他損害賠償請求の実効性確保のための制度の整備等
<8> その他損害賠償請求に関する援助
に関する種々の要望が寄せられている。

[今後講じていく施策]

(1) 損害賠償請求に関し刑事手続の成果を利用する制度を新たに導入する方向での検討及び施策の実施

法務省において、附帯私訴、損害賠償命令、没収・追徴を利用した損害回復等、損害賠償の請求に関して刑事手続の成果を利用することにより、犯罪被害者等の労力を軽減し、簡易迅速な手続とすることのできる制度について、我が国にふさわしいものを新たに導入する方向で必要な検討を行い、2年以内を目途に結論を出し、その結論に従った施策を実施する。【法務省】

(2) 損害賠償債務の国による立替払及び求償等の是非に関する検討

損害賠償債務の国による立替払及び求償等については、現行及び今後実施する損害賠償請求の適切・円滑な実現を図るための諸施策及び刑事に関する手続への参加の機会を拡充するための諸施策並びに犯罪被害者等の経済的負担軽減のための諸施策を踏まえ、更に必要かつ相当であるかを検討することとし、具体的には、犯罪被害者等に対する経済的支援制度に関して設置する検討のための会(第1、2.(3)参照)において、社会保障・福祉制度全体の中における犯罪被害者等に対する経済的支援制度のあるべき姿や財源と併せて検討する。【内閣府・警察庁・法務省・厚生労働省】

(3) 公費による弁護士選任、国による損害賠償費用の補償等の是非に関する検討

公費による弁護士選任、国による損害賠償費用の補償等の是非について、犯罪被害者等に対する経済的支援制度に関して設置する検討のための会(第1、2.(3)参照)において、社会保障・福祉制度全体の中における犯罪被害者等に対する経済的支援制度のあるべき姿や財源と併せて検討する。【内閣府・警察庁・法務省・厚生労働省】

(4) 日本司法支援センターによる支援

ア 日本司法支援センターによる民事法律扶助制度の活用によって、弁護士費用及び損害賠償請求費用の負担軽減を図る。【法務省】(再掲:第3、1.(11)ア)

イ 日本司法支援センターにおいて、犯罪被害者等のために、その支援に精通した弁護士の紹介なども含めた様々な情報を速やかに提供する。【法務省】(再掲:第3、1.(11)イ及び第4、1.(27)ア)

ウ 日本司法支援センターの具体的な業務の在り方について、犯罪被害者等やその支援に携わる者の意見を踏まえて準備作業を進める。【法務省】(再掲:第3、1.(11)ウ及び第4、1.(27)イ)

エ 日本司法支援センターによる犯罪被害者等支援について、警察庁その他関係機関及び日本弁護士連合会等と十分な連携を図る。【法務省】(再掲:第3、1.(11)エ及び第4、1.(27)ウ)

オ 日本司法支援センターの機能及び犯罪被害者等支援に関する具体的情報を十分に周知させる。【法務省】(再掲:第3、1.(11)オ及び第4、1.(27)エ)

(5) 公判記録の閲覧・謄写の範囲拡大に向けた検討及び施策の実施

法務省において、公判記録の閲覧・謄写の範囲を拡大する方向で検討を行い、2年以内を目途に結論を出し、その結論に従った施策を実施する。【法務省】(再掲:第3、1.(3)ア)

(6) 損害賠償請求制度に関する情報提供の充実

ア 損害賠償請求制度の概要その他犯罪被害者等の保護・支援のための制度について紹介した冊子・パンフレット等について、警察庁及び法務省において連携し、一層の内容の充実を図るとともに、十分に周知させる。【警察庁・法務省】(再掲:第4、1.(22))

イ 法務省において、犯罪被害者等の損害賠償請求に係る民事訴訟手続に関する情報の提供につき、説明資料の作成を含め検討し、早期に結論を出し、必要な施策を実施する。【法務省】(再掲:第4、1.(24))

(7) 刑事和解等の制度の周知

法務省において、刑事和解、公判記録の閲覧・謄写、不起訴記録の弾力的開示等現行制度を周知徹底させる。【法務省】(再掲:第3、1.(3)イ及び(16)ア)

(8) 保険金支払いの適正化等

ア 財団法人自賠責保険・共済紛争処理機構における調停、国土交通省による保険会社に対する立入検査、国土交通大臣による適正な支払いを行うことの指示等により、自賠責保険金の支払いの適正化を図る。【国土交通省】

イ 金融庁において、「保険会社向けの総合的な監督指針」(平成17年8月12日策定)に基づき、各保険会社における保険金等支払管理態勢整備の状況について検証していく。【金融庁】

ウ 金融庁において、保険会社の検査・監督を行うに当たっては、苦情・相談として寄せられる情報を活用し、保険会社側に問題があると認められる業務・運営については、適切な対応をしていく。【金融庁】

エ 財団法人日弁連交通事故相談センターにおける弁護士による自賠責保険に係る自動車事故の損害賠償の支払いに関する無料の法律相談・示談斡旋等により、適切な損害賠償が受けられるよう支援を行う。【国土交通省】

オ 国土交通省において、ひき逃げや無保険車等の事故による被害者に対しては、政府保障事業において、本来の加害者に代わって、直接その損害をてん補することにより、適切な支援を行う。【国土交通省】

(9) 受刑者の作業報奨金を損害賠償に充当することを可能とする制度の十分な運用

法務省において、刑事施設及び受刑者の処遇等に関する法律(平成17年法律第50号)における受刑中の者が作業報奨金を被害者に対する損害賠償に充当することを可能とする制度が十分に運用されるように努める。【法務省】

(10) 暴力団犯罪による被害の回復の支援

暴力団犯罪の被害者については、警察において、都道府県暴力追放運動推進センターや各弁護士会の民事暴力対策委員会等とも連携しつつ、暴力団犯罪による被害の回復を支援する。【警察庁】

 

2.給付金の支給に係る制度の充実等(基本法第13条関係)

[現状認識]

多くの犯罪被害者等は、思いがけない犯罪等により、生命を奪われ、身体を損なわれ、かけがえのない財産を奪われ、多大の損害を被る。しかし、犯罪被害者等が、自ら、加害者に損害賠償の請求を行っても、十分な回復を期待できないことが多いといわれている。また、犯罪被害者等は、犯罪等に遭ったその時点で受ける損害だけでなく、働き手を失ったことによる収入の途絶や長期の療養のための費用負担などにより、遠い将来にわたって、経済的困窮に苦しむことになる者が少なくない。こうした過酷な経済的負担・困窮は、犯罪被害者等の精神的・身体的被害にも悪影響を与え、その回復を困難にするばかりか悪化させることにもなる。加害者による実効的で十分な損害の賠償が期待できない場合などには、国等による積極的な救済制度が必要である。現在、国が行っている主な制度としては、犯罪被害者等給付金の支給等に関する法律(昭和55年法律第36号)及び自動車損害賠償保障法(昭和30年法律第97号)に定められたものがある。また、地方公共団体において、類似の趣旨の制度を設けている例もみられる。しかし、過酷な経済的負担・困窮に苦しむ犯罪被害者等にとっては、現在の犯罪被害給付制度等では不十分であるとの指摘がある。

[基本法が求める基本的施策]

基本法第13条は、国及び地方公共団体に対し、犯罪被害者等が受けた被害による経済的負担の軽減を図るための施策として、

を講ずることとしている。

[犯罪被害者等の要望に係る施策]

犯罪被害者団体等からは、
<1> 犯罪被害給付制度における給付金額の増加、給付対象の拡大、年金方式による支給等制度の充実
<2> 罰金を財源とした犯罪被害者等補償制度の創設
<3> 医療費、介護費、遺体搬送費、葬儀費用及び通院のための交通費等の補償制度の創設
<4> 医療費の無料化
<5> 医療保険利用の利便性確保
に関する種々の要望が寄せられている。

[今後講じていく施策]

(1) 現行の犯罪被害給付制度の運用改善

現行の犯罪被害給付制度の周知徹底、迅速な裁定等運用面の改善を図る。【警察庁】

(2) 犯罪被害給付制度における重傷病給付金の支給範囲等の拡大

警察庁において、犯罪被害給付制度における重傷病給付金の支給範囲及び親族間犯罪の被害に係る支給について、現状よりも拡大する必要があることを前提に、必要な調査を行い、1年以内を目途に結論を出し、その結論に従った施策を実施する。【警察庁】

(3) 経済的支援を手厚くするための制度のあるべき姿及び財源に関する検討並びに施策の実施

犯罪被害者等に対する経済的支援制度を現状よりも手厚いものとする必要があることを前提に、犯罪被害者等が行う損害賠償請求に対する国の補償等の在り方に関する検討を含め、社会保障・福祉制度全体の中における犯罪被害者等に対する経済的支援制度のあるべき姿やその財源を検討するため、推進会議の下に、有識者並びに内閣府、警察庁、法務省及び厚生労働省からなる検討のための会を設置し、必要な調査を行い、2年以内を目途に結論を出し、その結論に従った施策を実施する。【内閣府・警察庁・法務省・厚生労働省】

(4) 性犯罪被害者の緊急避妊等に要する経費の負担軽減

警察庁において、性犯罪被害者の緊急避妊等に要する経費について、その経済的負担を軽減する必要があることを前提に、支給方法の検討を含め、必要な調査を行い、1年以内を目途に結論を出し、その結論に従った施策を実施する。【警察庁】

(5) 司法解剖後の遺体搬送費等に対する措置

犯罪被害給付制度とは別に、各都道府県警察において、司法解剖後の遺体搬送費及び遺体修復費を措置する制度を積極的に推進する。【警察庁】

(6) 医療保険利用の利便性確保

厚生労働省において、警察庁の協力を得て、犯罪被害者等における医療保険利用の利便性確保につき、現状に関する必要な調査を行い、1年以内を目途に結論を出し、必要な施策を実施する。【厚生労働省】

 

3.居住の安定(基本法第16条関係)

[現状認識]

犯罪被害者等の中には、自宅が事件現場となったことによって物理的に居住困難な状況になったり、耐え難い精神的な苦痛を受けることで居住ができなくなったり、その他犯罪等による被害に起因する様々な要因により引越を余儀なくされる者が少なくない。また、配偶者等からの暴力(DV)のように、保護の観点から自宅以外に居住場所を求める必要のある場合もある。そうした犯罪被害者等にとって、再び平穏な生活を営むことができるようになるためには、安定した新たな居住先の確保が不可欠であるが、犯罪等による被害によってもたらされた経済的困窮などともあいまって、困難であるとの指摘がある。

[基本法が求める基本的施策]

基本法第16条は、国及び地方公共団体に対し、犯罪等により従前の住居に居住することが困難となった犯罪被害者等の居住の安定を図るための施策として、

を講ずることとしている。

[犯罪被害者等の要望に係る施策]

犯罪被害者団体等からは、
<1> 公営住宅への優先入居
<2> 犯罪被害者等が被害直後に緊急入所してとりあえずの衣食住の確保や介護が受けられる場所及び生活の立て直しを図るための中期的(3年から5年程度)な居住環境の整備
に関する種々の要望が寄せられている。

[今後講じていく施策]

(1) 公営住宅への優先入居等

ア 国土交通省において、犯罪被害者等が事件現場になった自宅に住めないなどの事情がある場合には、公営住宅の同居親族要件の緩和等により、単身入居を可能とすることや、管理主体の判断で公営住宅への優先入居ができることを明確にするよう検討し、平成17年度中にも所要の措置を講ずる。【国土交通省】

イ 独立行政法人都市再生機構において、機構賃貸住宅における犯罪被害者等の入居優遇措置について、公営住宅への優先入居に関する検討結果を踏まえ、必要性について検討する。【国土交通省】

ウ 国土交通省において、公営住宅への入居に関する犯罪被害者等への情報提供を警察庁及び法務省と十分連携して行う。【国土交通省】

(2) 被害直後及び中期的な居住場所の確保

ア 厚生労働省において、児童相談所及び婦人相談所による一時保護や婦人保護施設及び民間シェルター等への一時保護委託の実施について適正な運用に努める。【厚生労働省】(再掲:第2、2.(3)ア)

イ 厚生労働省において、「子ども・子育て応援プラン」(平成16年12月24日少子化社会対策会議決定)により、平成21年度までに、虐待を受けた子どもと非行児童の混合処遇を改善すること等の個別対応できる一時保護所の環境改善を実施する。【厚生労働省】(再掲:第2、2.(3)イ)

ウ 厚生労働省において、児童相談所及び婦人相談所による一時保護の現状や配偶者等からの暴力(DV)被害者及び人身取引被害者の一時保護委託先である民間シェルターにおける一時保護委託の状況に関する必要な調査を行い、1年以内を目途に結論を出し、必要な施策を実施する。【厚生労働省】(再掲:第2、2.(3)ウ)

エ 厚生労働省において、一時保護から地域における自立した生活へとつながるよう、婦人保護施設及び母子生活支援施設の機能強化を図ることなどにより、入所者に対する日常生活支援の充実に努める。【厚生労働省】

オ 児童虐待、配偶者等からの暴力(DV)、人身取引以外の犯罪等による被害者に対する被害直後の保護及び再被害の危険回避のための施設について、犯罪被害者等に対する経済的支援制度に関して設置する検討のための会において、社会保障・福祉制度全体の中における犯罪被害者等に対する経済的支援制度のあるべき姿や財源と併せて検討する。【内閣府・警察庁・法務省・厚生労働省】(再掲:第2、2.(4))

カ 犯罪被害者等の生活の立て直しを図るための中期的な居住の確保について、犯罪被害者等に対する経済的支援制度に関して設置する検討のための会において、社会保障・福祉制度全体の中における犯罪被害者等に対する経済的支援制度のあるべき姿や財源と併せて検討する。【内閣府・警察庁・法務省・厚生労働省】

 

4.雇用の安定(基本法第17条関係)

[現状認識]

犯罪被害者等が仕事を維持・確保することは、経済的負担の軽減になるだけでなく、精神面における被害の軽減・回復にも重要な意味を有する。犯罪被害者等は、精神的・身体的被害によりやむを得ず従前に比べ仕事の能率が低下したり、対人関係に支障を生じたり、治療のための通院、裁判への出廷等のために欠勤したりすることになるが、犯罪被害者等が被る精神的・身体的被害の重篤さや、刑事手続等による負担に関する雇用主や職場の知識の欠如・無理解により、仕事をやめざるを得なくなる場合が少なくないとの指摘がある。

[基本法が求める基本的施策]

基本法第17条は、国及び地方公共団体に対し、犯罪被害者等の雇用の安定を図るための施策として、

を講ずることとしている。

[犯罪被害者等の要望に係る施策]

犯罪被害者団体等からは、
<1> 事業主等の理解の増進
<2> 被害回復のための休暇制度の導入
に関する種々の要望が寄せられている。

[今後講じていく施策]

(1) 事業主等の理解の増進

厚生労働省において、犯罪被害者等に対する十分な理解に基づき、以下の施策を実施する。

ア 母子家庭の母等に対するトライアル雇用事業の適正な運用に努める。【厚生労働省】

イ 公共職業安定所や独立行政法人雇用・能力開発機構都道府県センターにおける事業主に対する配置や労働条件等雇用管理全般に関するきめ細やかな相談援助の適正な運用に努める。【厚生労働省】

ウ 公共職業安定所における求職者に対するきめ細やかな就職支援の適正な実施に努める。【厚生労働省】

エ 独立行政法人雇用・能力開発機構都道府県センターにおける事業主を対象とした雇用管理講習会において、犯罪被害者等の雇用管理に資するテーマについて取り上げる。【厚生労働省】

オ 公共職業安定所職員に対する研修において、犯罪被害者等への理解に資するテーマを取り上げる。【厚生労働省】

(2) 個別労働紛争解決制度の活用等

ア 厚生労働省において、犯罪被害者等に係る個別労働関係紛争の解決に当たって、個別労働紛争解決制度について周知を徹底させるとともに、その適正な運用に努めていく。【厚生労働省】

イ 厚生労働省において、犯罪被害者等が事業主との間で生じた労働問題に関し、情報の提供、相談等を行う公的相談窓口として、労働問題に関するあらゆる分野の相談に専門の相談員がワンストップで対応する総合労働相談コーナーについて周知を徹底させるとともに、その積極的な活用を図っていく。【厚生労働省】

(3) 被害回復のための休暇制度導入の是非に関する検討

厚生労働省において、警察庁及び法務省の協力を得て、犯罪等の被害に遭った労働者が被害を回復するための休暇制度の導入につき、現状に関する必要な調査を行い、1年以内を目途に結論を出し、必要な施策を実施する。【厚生労働省】

 

第2 精神的・身体的被害の回復・防止への取組

犯罪被害者等が犯罪等により直接的に心身に受けた被害から回復できるように支援するのみならず、その負担を軽減し、二次的被害を受けることを防止することが必要である。また、犯罪被害者等は再び危害を加えられるのではないかという不安を持つものであり、再被害を防止し、安全を確保することが必要である。

基本法は、第14条において、心理的外傷その他心身に受けた影響から回復できるようにするための「保健医療サービス及び福祉サービスの提供」、第15条において、再被害からの「安全の確保」、第19条において、「保護、捜査、公判等の過程における配慮等」に係る必要な施策を講ずることを求めている。

1.保健医療サービス及び福祉サービスの提供

(基本法第14条関係)

[現状認識]

平成16年において、生命・身体に被害を受けた犯罪の被害者数は、123万8,668人に及ぶ(注1)(道路上の交通事故に係る危険運転致死傷及び業務上過失致死傷を含む。)。このうち、生命被害の重大さはいうまでもないが、身体に被害を受けた者についても、一般的には「重傷」、「軽傷」などとして扱われるところ、実際には、それらの言葉からは想像し難いほど、長期にわたる治療を余儀なくされたり、重篤な後遺障害を負うことが少なくない。また、生命に被害を受けた事件の遺族はもとより、身体に被害を受けた者についても、多くの者が同時に精神的被害を受けていると考えられる。さらに、身体に被害(物理的外傷)はなくとも犯罪等によって直接的に精神的被害を受けた犯罪被害者等も多数に上ると考えられ、性犯罪の被害者(同年において、傷害の結果を伴う者を除き、1万196人)を始め(注2)、重度のPTSD(外傷後ストレス障害)等の犯罪等による被害に対する持続的な精神的後遺症に罹患している者も少なくないと考えられる。なお、性犯罪のように顕著な精神的被害を与えると考えられる犯罪については、被害申告がなされず、いわゆる暗数化している犯罪被害者等も少なくないと考えられる。

こうした精神的・身体的被害に対する保健医療サービス及び福祉サービスについては、不十分であるとの指摘があり、特に精神的被害については、近年、様々な研究成果等が発表されているが、その深刻さ、回復の困難さなどについて、精神保健関係者も含め医療関係者において、依然として理解そのものが不十分な面があるとの指摘がある。

(注1) 法務省法務総合研究所編『犯罪白書(平成17年版)』国立印刷局、2005年による。
(注2) 警察庁編『平成16年の犯罪』警察庁、2005年による。一つの事件で数人の被害者がいる場合は、主たる被害者について計上してある。

[基本法が求める基本的施策]

基本法第14条は、国及び地方公共団体に対し、犯罪被害者等が心理的外傷その他犯罪等により心身に受けた影響から回復できるようにするための施策として、

を講ずることとしている。

[犯罪被害者等の要望に係る施策]

犯罪被害者団体等からは、
<1> PTSDに関する医療・福祉サービスの充実
<2> 後遺障害に関する医療・福祉サービスの充実
<3> 女性被害者・少年被害者に対する医療・福祉サービス体制の充実
<4> 犯罪被害者等支援に精通した心理職・精神科医・法律家等の養成
<5> その他医療・福祉サービスの充実
に関する種々の要望が寄せられている。

[今後講じていく施策]

(1) 「PTSD対策に係る専門家の養成研修会」の継続的実施等

厚生労働省において、平成8年度から実施している医師、看護師、保健師、精神保健福祉士などを対象とした「PTSD対策に係る専門家の養成研修会」を継続して実施し、PTSD対策に係る専門家を養成するとともに、犯罪被害者等の精神的被害について、医療・福祉関係者に対する啓発を更に推進する。【厚生労働省】

(2) 重度のPTSD等重度ストレス反応の治療等のための高度な専門家

の養成及び体制整備に資する施策の検討及び実施厚生労働省において、犯罪被害者等の重度のPTSD等重度ストレス反応について、犯罪被害者等に特有の対応を要する面があることを踏まえ、診断・治療等を行う専門家が全国的に不足していることを前提に、実態を把握し、その上で、「PTSD対策に係る専門家の養成研修会」の在り方を含め、必要とされる高度な専門家の養成及び体制整備に資する施策を検討し、3年以内を目途に結論を出し、必要な施策を実施する。【厚生労働省】

(3) PTSDの診断及び治療に係る医療保険適用の範囲の拡大

厚生労働省において、PTSDの診断及び治療に係る医療保険適用の範囲の拡大について科学的評価を行い、これを踏まえ、平成18年度に予定している次期診療報酬改定において、必要に応じて措置を講ずる。【厚生労働省】

(4) 地域格差のない迅速かつ適切な救急医療の提供

厚生労働省において、地域格差なく迅速かつ適切な救急医療が提供されるよう、初期、二次、三次の救急医療体制の整備を図るとともに、総務省と連携し、メディカルコントロール体制(注3) の充実強化を図る。【厚生労働省】

(5) 救急医療に連動した精神的ケアのための体制整備

厚生労働省において、救急医療に連動した精神的ケアのための体制整備に資する施策を検討し、1年以内を目途に結論を出し、当該施策を実施する。【厚生労働省】

(6) 高次脳機能障害者への支援の充実

厚生労働省において、障害者自立支援法(平成17年法律第123号)や高次脳機能障害支援モデル事業の成果の普及等により、高次脳機能障害者の適性とニーズに応じた支援を提供できるような仕組みを構築する。【厚生労働省】

(7) 長期療養を必要とする犯罪被害者のための施策の検討及び実施

ア 厚生労働省において、犯罪被害者を含め、長期療養を必要とする患者が必要な医療や介護サービスを受けられる方策について、医療機能の分化、連携を含めた平成18年の医療提供体制の改革の中で検討して、1年以内を目途に結論を出し、必要な施策を実施する。【厚生労働省】

イ 犯罪被害者等に対する経済的支援制度に関して設置する検討のための会において、特に犯罪等の被害による後遺障害者に対する経済的支援及び福祉サービスの在り方について十分に検討する。【内閣府・警察庁・法務省・厚生労働省】

(8) 思春期精神保健の専門家の養成

厚生労働省において、平成13年度から実施している医師、看護師、保健師、精神保健福祉士、児童相談員などを対象とした思春期精神保健の専門家の養成研修を継続して実施し、思春期精神保健の専門家を養成するとともに、児童虐待や配偶者等からの暴力(DV)の被害者等の心理と治療・対応についての研修を充実させる。【厚生労働省】

(注3) 救急現場から医療機関に搬送されるまでの間において、救急救命士等が行う救急医療活動について、医師による指示、指導・助言、事後検証を行い、その質を保障する体制。

(9) 少年被害者のための治療等の専門家の養成、体制整備及び施設の増強に資する施策の実施

厚生労働省において、少年被害者の被害について、犯罪被害者等に特有の対応を要する面があることを踏まえ、全国的に治療又は保護を行う専門家が不足し、そのための体制及び施設が十分ではないことを前提に、現状に関する必要な調査を行い、その上で、少年被害者が利用しやすく、地域的な隔たりなく十分な治療・配慮を受けられ、また、十分な期間保護が受けられるようにするため、児童精神科医等専門家の養成、その適正な配置その他の体制整備及び施設の増強に資する施策を実施する。【厚生労働省】

(10) 性暴力被害者のための医療体制の整備に資する施策の検討及び実施

厚生労働省において、性暴力被害者について、特有の対応を要する面があることを踏まえ、性暴力被害者が利用しやすく、十分な治療・配慮等を受けることができるような医療体制の整備に資する施策を検討し、1年以内を目途に結論を出し、当該施策を実施する。【厚生労働省】

(11) 犯罪被害者等への適切な対応に資する医学教育の促進

文部科学省において、犯罪被害者等への適切な対応に資するよう、PTSD等の精神的被害に関する知識・技能を修得させるための教育を含め、各大学の医学教育における「医学教育モデル・コア・カリキュラム」(注4) に基づくカリキュラム改革の取組を更に促進する。【文部科学省】

(12) 犯罪被害者等に関する専門的知識・技能を有する臨床心理士の養成等

文部科学省において、「臨床心理士の資質向上に関する調査研究」の中で、犯罪被害者等に対する支援活動についての調査研究を実施し、その結果に基づき、財団法人日本臨床心理士資格認定協会等に働きかけ、犯罪被害者等に関する専門的な知識・技能を有する臨床心理士の養成及び研修の実施を促進する。【文部科学省】(再掲:第5、1.(15)エ)

(注4) 各大学のカリキュラム改革に資するよう、平成13年3月に文部科学省の「医学・歯学教育の在り方に関する調査研究協力者会議」において、すべての医学生が卒業までに最低限習得すべき教育内容をガイドラインとして示したもの。

(13) 犯罪被害者に係る司法関連の医学知識と技術について精通した医療関係者の在り方及びその養成のための施策の検討及び実施

厚生労働省において、警察庁、法務省及び文部科学省の協力を得て、現状及び諸外国の状況に関する必要な調査を行い、犯罪の実情及び犯罪被害者に係る司法関連の医学知識と技術について精通し、犯罪被害者の置かれた状況を踏まえた支援、捜査・裁判を見通したケア、検査、診断書の作成等を行うことのできる医療関係者の在り方及びその養成のための施策を検討し、3年以内を目途に結論を出し、当該施策を実施する。【厚生労働省】

(14) 検察官等に対する研修の充実

法務省において、検察官等が犯罪被害者等の支援に精通するための研修等の充実を図っていく。【法務省】

(15) 法科大学院における教育による犯罪被害者等への理解の向上の促進

文部科学省において、各法科大学院が、自らの教育理念に基づき多様で特色のある教育を展開していく中で、犯罪被害者等に対する理解の向上を含め、真に国民の期待と信頼に応え得る法曹の養成に努めるよう促す。【文部科学省】

(16) 児童虐待に対する夜間・休日対応の充実等

厚生労働省において、平成16年の児童福祉法(昭和22年法律第164号)の一部改正に伴い、次の施策を実施する。

ア 児童相談所の夜間・休日における連絡や相談対応の確保、中核市規模の人口を有する市での設置の促進、分室・支所の活用による市町村支援体制の確保等を図っていく。【厚生労働省】

イ 夜間対応等の体制整備や児童虐待に対する医療ケアの重要性にかんがみ、地域の医療機関との協力、連携体制を充実する。【厚生労働省】

(17) 少年被害者の保護に関する学校及び児童相談所等の連携の充実

文部科学省及び厚生労働省において、少年被害者の保護に関し、要保護児童対策地域協議会を活用するなど、学校と児童相談所等少年被害者の保護に資する関係機関との連携を充実する。【文部科学省・厚生労働省】

(18) 少年被害者に対する学校におけるカウンセリング体制の充実等

ア 文部科学省において、少年被害者を含む児童生徒の心のケアに資するよう、スクールカウンセラーの適正な配置や資質の向上、「子どもと親の相談員」の配置など、学校におけるカウンセリング体制を充実するとともに、少年被害者を含む児童生徒に対し、個々の状況に応じた必要な学習支援を促進していく。【文部科学省】

イ 文部科学省において、スクールカウンセラーを始め学校の教職員が一体となって、関係機関や地域の人材と連携しつつ、犯罪被害者等である児童生徒の相談等に的確に対応できるよう、犯罪等の被害に関する教職員やスクールカウンセラーに対する研修を支援するとともに、各学校における取組を引き続き促進する。【文部科学省】

ウ 文部科学省において、犯罪被害者等である児童生徒に対する心のケアについても、大学の教職課程におけるカウンセリングに関する教育及び教員に対するカウンセリングに関する研修内容に含めるなどその内容の充実を図るよう促す。【文部科学省】(再掲:第5、1.(15)イ)

(19) 被害少年が受ける精神的打撃軽減のための継続的支援の推進

警察において、被害少年(注5)が受ける精神的打撃の軽減を図るため、保護者の同意を得た上で、カウンセリングの実施、関係者への助言等の継続的な支援を推進する。【警察庁】

(20) 里親制度の充実

厚生労働省において、少年被害者の保護に資するよう、里親養育援助事業や里親養育相互援助事業による里親の支援等により、里親制度の充実を図っていく。【厚生労働省】

(21) 少年被害者の相談・治療のための専門家・施設等の周知

厚生労働省において、少年被害者の被害に対する相談・治療等を行う専門家、医療施設その他の施設等を把握し、警察とも連携してその周知に努める。【厚生労働省】

(22) 犯罪被害者等に対する医療機関に関する情報の周知

厚生労働省において、犯罪被害者等が利用しやすいように、医療機関の情報を周知させるとともに、関係機関において、当該情報を共有し、適時適切に犯罪被害者等に提供する。【厚生労働省】

(23) 犯罪被害者等の受診情報等の適正な取扱い

ア 厚生労働省において、犯罪被害者等の受診情報が医療機関や保険者から流出しないよう、個人情報の保護に関する法律(平成15年法律第57号)に基づき、医療機関や保険者に対して適切に対応していく。【厚生労働省】

イ 金融庁において、犯罪被害者等の保健医療に関する情報を始めとする個人情報の取扱いに関し、損害保険会社に問題があると認められる場合には、保険業法(平成7年法律第105号)に基づき、保険会社に対する検査・監督において適切な対応をしていく。【金融庁】

(注5) 「被害少年」とは、犯罪その他少年の健全な育成を阻害する行為により被害を受けた少年(20歳未満)をいう(少年警察活動規則(平成14年国家公安委員会規則第20号)第2条第7号)。

 

2.安全の確保(基本法第15条関係)

[現状認識]

犯罪被害者等が再び危害を加えられることに不安を抱くのは、暴力団員によるいわゆる「お礼参り」や、児童虐待、ストーカー行為、配偶者等による暴力(DV)の反復などのいわば典型的な場合に限られるものではない。暴力的(攻撃的)な性格の犯罪等により被害を受けた場合、犯罪被害者等の多くが、再び危害を加えられることに対し深刻な不安を抱いている。また、実際に再被害を受けた事案も存在する。再被害を防止することは当然であるが、再被害に対する不安は、被害申告を躊躇させる原因ともなるなど犯罪被害者等の大きな負担となっており、不安を解消する取組が必要であるとの指摘がある。

[基本法が求める基本的施策]

基本法第15条は、国及び地方公共団体に対し、犯罪被害者等が更なる犯罪等により被害を受けることを防止し、その安全を確保するため、

を講ずることとしている。

[犯罪被害者等の要望に係る施策]

犯罪被害者団体等からは、
<1> 刑務所出所及び少年院出院の際の住所、矯正の程度等犯罪被害者等が求める情報の開示
<2> 刑事手続における被害者の氏名・住所の原則非公開
<3> 加害者が逮捕されるまでの間、危険を回避するための犯罪被害者等専用シェルターの確保
<4> 再被害防止のための省庁間の連絡制度の充実
<5> その他再被害を防止し、安全を確保するための取組の充実
に関する種々の要望が寄せられている。

[今後講じていく施策]

(1) 加害者に関する情報提供の拡充

ア 法務省において、再被害防止のため、警察の要請に応じ、行刑施設、地方更生保護委員会及び保護観察所が警察に対して行う釈放予定、帰住予定地及び仮出獄中の特異動向等の情報提供、再度の加害行為のおそれを覚知した検察官、行刑施設、地方更生保護委員会及び保護観察所による警察への当該情報の連絡について、関係者に周知徹底させ、一層円滑な連携を図っていく。【警察庁・法務省】(再掲:第3、1.(19))

イ 法務省において、加害者の仮出獄の時期、自由刑の執行終了による釈放予定時期、釈放後の住所についての情報を適切に提供していくほか、さらに、更生保護官署が、保護司との協働態勢の下、犯罪被害者等に対し、加害者の収容先、加害者の処遇に関する情報、加害者の釈放予定等を含む刑事裁判終了後の加害者に関する情報を提供できるよう、更生保護官署に被害者支援専任の担当者を配置することを含め、検討を行い、2年以内を目途に必要な施策を実施する。【法務省】(再掲:第3、1.(20))

ウ 警察において、子どもを対象とする暴力的性犯罪の再犯防止を図るため、法務省からそれらの前歴者の出所情報の提供を受け、出所後の居住状況等の定期的な確認を含めた対策に努める。【警察庁】

(2) 犯罪被害者等に関する情報の保護

ア 法務省において、証拠開示の際に証人等の住居等が関係者に知られることがないよう求める制度について、また、性犯罪の被害者等について公開の法廷では仮名を用いる運用がなされていることについて周知を徹底させるとともに、検察官等の意識を向上させる。【法務省】

イ 法務省において、性犯罪等の被害者について、一定の場合に、 <1>起訴状朗読の際、被害者の氏名等を朗読しないこととするなど、公開の法廷において被害者の氏名等を明らかにしないようにする制度、 <2>検察官又は弁護人が、証拠開示の際に、相手方に対して、被害者の氏名等が関係者に知られないようにすることを求めることができる制度の導入に向けた検討を行い、2年以内を目途に結論を出し、その結論に従った施策を実施する。【法務省】

ウ 総務省において、「住民基本台帳の閲覧制度等のあり方に関する検討会」の報告書(平成17年10月20日)を踏まえ、犯罪被害者等の保護の観点も含め住民基本台帳の閲覧制度等の抜本的見直しを行う。【総務省】

エ 警察による被害者の実名発表、匿名発表については、犯罪被害者等の匿名発表を望む意見と、マスコミによる報道の自由、国民の知る権利を理由とする実名発表に対する要望を踏まえ、プライバシーの保護、発表することの公益性等の事情を総合的に勘案しつつ、個別具体的な案件ごとに適切な発表内容となるよう配慮していく。【警察庁】(再掲:第5、1.(16))

(3) 一時保護所の環境改善等

ア 厚生労働省において、児童相談所及び婦人相談所による一時保護や婦人保護施設及び民間シェルター等への一時保護委託の実施について適正な運用に努める。【厚生労働省】(再掲:第1、3.(2)ア)

イ 厚生労働省において、「子ども・子育て応援プラン」(平成16年12月24日少子化社会対策会議決定)により、平成21年度までに、虐待を受けた子どもと非行児童の混合処遇を改善すること等の個別対応できる一時保護所の環境改善を実施する。【厚生労働省】(再掲:第1、3.(2)イ)

ウ 厚生労働省において、児童相談所及び婦人相談所による一時保護の現状や配偶者等からの暴力(DV)被害者及び人身取引被害者の一時保護委託先である民間シェルターにおける一時保護委託の状況に関する必要な調査を行い、1年以内を目途に結論を出し、必要な施策を実施する。【厚生労働省】(再掲:第1、3.(2)ウ)

(4) 被害直後の保護及び再被害の危険回避のための施設に関する検討

児童虐待、配偶者等からの暴力(DV)、人身取引以外の犯罪等による被害者に対する被害直後の保護及び再被害の危険回避のための施設について、犯罪被害者等に対する経済的支援制度に関して設置する検討のための会において、社会保障・福祉制度全体の中における犯罪被害者等に対する経済的支援制度のあるべき姿や財源と併せて検討する。【内閣府・警察庁・法務省・厚生労働省】(再掲:第1、3.(2)オ)

(5) 警察における再被害防止措置の推進

警察において、同じ加害者により再び危害を加えられるおそれのある犯罪被害者等を「再被害防止対象者」に指定し、防犯指導・警戒等を実施して行っている再被害防止の措置を推進する。【警察庁】

(6) 警察における保護対策の推進

警察において、暴力団等から危害を被るおそれのある者を「保護対象者」に指定して、危害行為の未然防止の措置を推進する。【警察庁】

(7) 保釈に関しての犯罪被害者等に対する安全への配慮の充実

法務省において、加害者の保釈に関し、検察官が、犯罪被害者等から事情を聴くなどによりその安全確保を考慮して裁判所に意見を提出するよう、適切な対応に努めていく。【法務省】(再掲:第3、1.(6))

(8) 再被害防止に向けた関係機関の連携の充実

ア 警察庁及び厚生労働省において、配偶者等からの暴力(DV)の被害者、人身取引の被害者、児童虐待の被害者等の保護に関する警察、婦人相談所及び児童相談所等の連携について、現状に対する犯罪被害者等の意見・要望を踏まえ、一層充実していく。【警察庁・厚生労働省】

イ 警察庁及び文部科学省において、警察と学校等関係機関の通報連絡体制の活用、児童虐待防止ネットワークの活用、加害少年やその保護者に対する指導等の一層の充実を図り、再被害の防止に努める。【警察庁・文部科学省】

(9) 児童虐待の防止、早期発見・早期対応のための体制整備等

ア 警察において、子どもの死亡例に関する適切な検視等の実施に資する教育、児童虐待の発見に資する指導・教育、児童の保護等を行う職員に対する虐待を受けた児童の特性等に関する教育等職員の児童虐待に関する知識・技能の向上に努める。【警察庁】

イ 文部科学省において、学校教育関係者など、職務上虐待を受けている子どもを発見しやすい立場にある者が、虐待発見時に適切に対応できるよう、通告義務の周知徹底を図るなど、早期発見・早期対応のための体制の整備に努める。【文部科学省】

ウ 文部科学省において、平成17年度に、学校等における児童虐待防止に向けた取組を推進するため、国内外の先進的取組事例を収集・分析する。【文部科学省】

エ 厚生労働省において、児童虐待の早期発見に資するため、児童相談所を中心とした多種多様な関係機関の連携による取組について、全国の好事例を収集し、周知徹底を図る。【厚生労働省】

(10) 児童虐待防止のために行う児童の死亡事例等の検証の実施

厚生労働省において、児童虐待防止のため、社会保障審議会児童部会の下に設置された「児童虐待等要保護事例の検証に関する専門委員会」での児童の死亡事例等の検証を引き続き行っていく。【厚生労働省】

(11) 児童虐待・配偶者等からの暴力(DV)の早期発見のための医療施設における取組の促進

厚生労働省において、医療施設における児童虐待や配偶者等からの暴力(DV)の早期発見のための取組を促進するための施策を検討し、1年以内を目途に結論を出し、当該施策を実施する。【厚生労働省】

(12) 再被害の防止に資する教育の実施等

ア 法務省において、矯正施設に収容されている加害者に対し、被害者の心情等を理解させるため、「被害者の視点を取り入れた教育」の内容の一層の充実を図り、再被害の防止に資する。【法務省】(再掲:第3、1.(24)ア)

イ 法務省において、仮釈放に際し、地方更生保護委員会が、事案に応じた犯罪被害者等の安全確保に必要な遵守事項の適切な設定に努め、保護観察所が、当該遵守事項を遵守させるための加害者に対する指導監督を徹底していく。【法務省】(再掲:第3、1.(26))

ウ 法務省において、犯罪被害者等の意向等に配慮し、謝罪及び被害弁償に向けた保護観察処遇における効果的なしょく罪指導を徹底していく。【法務省】(再掲:第3、1.(24)ウ)

エ 文部科学省において、非行少年等の立ち直り支援を行う中で、再被害の防止に資するよう、加害少年の立ち直りを図っていく。【文部科学省】

オ 文部科学省において、様々な機会を活用して全国的に開設して行う子育てに関する学習講座の中で、児童虐待の防止に資するよう、親等の学習支援を充実する。【文部科学省】

 

3.保護、捜査、公判等の過程における配慮等(基本法第19条関係)

[現状認識]

犯罪被害者等は、犯罪等による被害を受けた後、保護のための機関等に対し、当該被害から逃れるため施設への収容等の保護を求めたり、捜査機関等に対し、捜査・公判等を通じて当該被害を受けた事件の真相解明や適正な処罰が実現されることを求める。また、犯罪被害者等は、公判が行われることによりプライバシーにかかわる事項が第三者の目にさらされることを恐れるなどの理由で、捜査や訴追が行われることを望まなかったとしても、処罰の必要性という公益上の理由から行われる捜査・公判の過程で、必要な協力を求められることがある。ところが、そうした保護、捜査、公判等の犯罪被害者等が必要的にかかわらざるを得ない手続の過程で、また治療や回復の過程でかかわらざるを得ない関係機関において、配慮に欠けた対応をされることによって、二次的被害を受けることがある。近年、これらの過程における犯罪被害者等への対応は一部において相当改善されてきているものの、依然として不十分であり、二次的被害を与えることを防止するための取組が更に必要であるとの指摘がある。

[基本法が求める基本的施策]

基本法第19条は、国及び地方公共団体に対し、犯罪被害者等の保護、その被害に係る刑事事件の捜査又は公判等の過程において、名誉又は生活の平穏その他犯罪被害者等の人権に十分な配慮がなされ、犯罪被害者等の負担が軽減されるよう、

を講ずることとしている。

[犯罪被害者等の要望に係る施策]

犯罪被害者団体等からは、
<1> 関係職員への研修の充実
<2> 関係職員の対応・施設の改善
<3> 弁護活動における配慮等
に関する種々の要望が寄せられている。

[今後講じていく施策]

(1) 職員等に対する研修の充実等

ア 警察において、採用時及び上位の階級又は職に昇任した際に行われる教育、専門的知識を必要とする職務に従事する実務担当者に対する教育・研修、被害者・遺族等を招請して行う講演会、被害者対策室担当者による各警察署に対する巡回教育、被害者支援の体験記の配布等、職員の犯罪被害者等への適切な対応を確実にするための教育・研修等の充実を図り、職員の対応の改善を進める。【警察庁】

イ 法務省において、検察官、検察事務官に対する各種研修の機会における「犯罪被害者支援」等のテーマによる講義の実施、犯罪被害者等早期援助団体への検察官の派遣、矯正施設職員に対する犯罪被害者団体等の関係者を招へいしての講義等の実施、更生保護官署職員に対する被害者支援の実務家等による講義、地方検察庁に配置されている被害者支援員を対象とする研修における犯罪被害者等に関する諸問題についての講義・講演及び討議の実施など、職員の犯罪被害者等への適切な対応を確実にするための教育・研修等の充実を図り、職員の対応の改善を進める。【法務省】(再掲:第4、2.(11)イ)

ウ 法務省において、検察幹部が犯罪被害者等の心情等に理解を深めるとともに、市民感覚を失い又は独善に陥ることを防止することに資するためのセミナーの実施、検察官に市民感覚を学ばせるため、公益的活動を行う民間団体や民間企業に一定期間派遣する研修の実施等、研修内容を検討しつつより効果的な研修を実施し、職員の対応の改善に努める。【法務省】

エ 法務省において、検察官に対し、児童や女性の犯罪被害者等と接する上での留意点等を熟知した専門家等による講義を実施し、児童及び女性に対する配慮に関する科目の内容の一層の充実を図っていく。【法務省】(再掲:第3、1.(18)及び第4、2.(11)ア)

オ 法務省において、副検事に対する研修の中で今後とも、交通事件の留意点等を熟知した専門家等による講義を行うとともに、被害者及び被害者遺族の立場等への理解を深めるための機会を設けるなど、交通事件をテーマとした科目の内容について一層の充実を図る。【法務省】(再掲:第3、1.(15))

カ 厚生労働省において、平成8年度から実施している医師、看護師、保健師及び精神保健福祉士などを対象とした「PTSD対策に係る専門家の養成研修会」、平成13年度から実施している医師、看護師、保健師、精神保健福祉士、児童相談員などを対象とした思春期精神保健の専門家の養成研修の活用を含め、犯罪被害者等の治療、保護等を行う施設の職員の犯罪被害者等への適切な対応を確実にするための研修等の充実を図る方向で検討し、3年以内に結論を得て、犯罪被害者等の治療、保護等を行う施設の職員の対応の改善を進める。【厚生労働省】

キ 厚生労働省において、看護教育の充実及び資質の向上を図るため、平成17年度から看護基礎教育のカリキュラム等改正に係る検討を行い、当該検討を踏まえた教育の実施等により、看護に関わる者の対応の改善を進める。【厚生労働省】

ク 厚生労働省において、民生委員に対し、犯罪被害者等への適切な対応を確実にするための守秘義務の遵守等について指導を実施していく。【厚生労働省】

ケ 厚生労働省において、公的シェルターにおける犯罪被害者等への適切な対応を確実にするための研修及び啓発を実施していく。【厚生労働省】

(2) 女性警察官等の配置

警察庁において、性犯罪被害者への対応等に資するよう、警察本部や警察署の性犯罪捜査を担当する係への女性警察官等の配置に更に努める。【警察庁】

(3) ビデオリンク等の措置の適正な運用

法務省において、裁判所におけるビデオリンク装置の配備の進展等を踏まえ、ビデオリンク等の犯罪被害者等の保護のための措置について周知徹底を図り、一層適正に運用されるよう努めていく。【法務省】

(4) 民事訴訟におけるビデオリンク等の措置の導入

法務省において、民事訴訟においても、遮へい措置、ビデオリンク、付添いを民事訴訟法(平成8年法律第109号)上認めることについて検討を行い、2年以内を目途に結論を出し、その結論に従った施策を実施する。【法務省】

(5) 警察における犯罪被害者等のための施設の改善

警察において、これまでに整備された被害者専用の事情聴取室の活用のほか、被害者対策用車両の整備を進めるなど、施設等の改善に努める。【警察庁】

(6) 検察庁における犯罪被害者等のための待合室の設置

法務省において、庁舎の建て替えを予定している検察庁では、被害者専用待合室を設置し、それ以外の検察庁については、スペースの有無、設置場所等を勘案しつつ、専用待合室の設置について検討をしていく。【法務省】

 

第3 刑事手続への関与拡充への取組

犯罪被害者等がその被害に係る刑事に関する手続に適切に関与することができるようにすることが必要であり、基本法は、第18条において「刑事に関する手続への参加の機会を拡充するための制度の整備等」に係る必要な施策を講ずることを求めている。

1.刑事に関する手続への参加の機会を拡充するための制度の整備等(基本法第18条関係)

[現状認識]

「事件の当事者」である犯罪被害者等が、被害を受けた事件の捜査・公判等の刑事に関する手続や、少年保護事件の調査・審判等の手続に対し、それを通じて事件の真相を知ることができ、名誉が回復され正義が実現されるものと期待し、その推移及び結果に重大な関心を持つのは当然である。刑事に関する手続や少年保護事件の手続についての情報提供を欲するのみならず、加害者側に偏向した結果となることを心配し、自ら手続に関与することを望む犯罪被害者等も少なくない。

情報の提供に関しては、警察、検察庁、海上保安庁による各種情報の通知制度が実施されている。また、刑事に関する手続への参加の機会を拡充する制度としては、平成12年に行われた刑事訴訟法(昭和23年法律第131号)の改正により、被害者等の意見陳述制度が導入されたほか、検察審査会への申立権者の範囲が拡大されるなどしている。少年保護事件の手続に関しては、同年の少年法(昭和23年法律第168号)の改正により家庭裁判所による被害者等の意見聴取の制度が導入されるなどしている。

しかしながら、犯罪被害者等からは、現状について、犯罪被害者等は証拠として扱われているに過ぎず、「事件の当事者」にふさわしい扱いを受けていないという批判があり、刑事に関する手続及び少年保護事件の手続に関し、一層の情報提供と参加する権利を認めるよう要望する声が多い。

[基本法が求める基本的施策]

基本法第18条は、国及び地方公共団体に対し、犯罪被害者等がその被害に係る刑事に関する手続に適切に関与することができるようにするための施策として、

[犯罪被害者等の要望に係る施策]

犯罪被害者団体等からは、
<1> 起訴への関与等
<2> 公訴参加制度の導入等
<3> 公的弁護人制度の導入
<4> 少年保護事件への参加等
<5> 刑事司法手続に関する情報提供の充実
<6> 捜査に関する情報提供等の充実
<7> 不起訴事案に関する情報提供
<8> 判決確定後の加害者情報の提供
<9> 加害者の処遇に関する意見陳述等
<10> 犯罪被害者等に関する情報の加害者への伝達等
<11> その他刑事司法の充実等
に関する種々の要望が寄せられている。

[今後講じていく施策]

(1) 犯罪被害者等が刑事裁判に直接関与することのできる制度の検討及び施策の実施

法務省において、刑事裁判に犯罪被害者等の意見をより反映させるべく、公訴参加制度を含め、犯罪被害者等が刑事裁判手続に直接関与することのできる制度について、我が国にふさわしいものを新たに導入する方向で必要な検討を行い、2年以内を目途に結論を出し、その結論に従った施策を実施する。【法務省】

(2) 冒頭陳述等の内容を記載した書面の交付についての検討及び施策の実施

法務省において、犯罪被害者等の希望に応じ、公訴事実の要旨や冒頭陳述の内容等を説明するよう努めるとともに、事案並びに必要性及び相当性にかんがみ冒頭陳述等の内容を記載した書面を交付することについて必要な検討を行い、1年以内を目途に結論を出し、その結論に従った施策を実施する。【法務省】

(3) 公判記録の閲覧・謄写の範囲拡大に向けた検討及び施策の実施等

ア 法務省において、公判記録の閲覧・謄写の範囲を拡大する方向で検討を行い、2年以内を目途に結論を出し、その結論に従った施策を実施する。【法務省】(再掲:第1、1.(5))

イ 法務省において、公判記録の閲覧・謄写に関する現行制度を周知徹底させる。【法務省】(再掲:第1、1.(7))

(4) 犯罪被害者等と検察官のコミュニケーションの充実

ア 法務省において、犯罪被害者等の意見等をより適切に把握し刑事裁判に適正に反映させるため、犯罪被害者等と検察官のコミュニケーションをより一層充実させ、被害状況等の供述調書等による証拠化並びに被害者等の証人尋問及び意見陳述の活用等により、被害状況の的確な立証に努めていく。【法務省】

イ 法務省において、刑事裁判の公判期日の決定について、検察官が犯罪被害者等と十分なコミュニケーションをとり、必要に応じ、犯罪被害者等の希望を裁判長に伝えるよう努めていく。【法務省】

(5) 国民にわかりやすい訴訟活動

法務省において、検察官による視覚的な工夫を取り入れた国民に分かりやすい訴訟活動を行うよう努めていく。【法務省】

(6) 保釈に関しての犯罪被害者等に対する安全への配慮の充実

法務省において、加害者の保釈に関し、検察官が、犯罪被害者等から事情を聴くなどによりその安全確保を考慮して裁判所に意見を提出するよう、適切な対応に努めていく。【法務省】(再掲:第2、2.(7))

(7) 上訴に関する犯罪被害者等からの意見聴取等

法務省において、検察官が、被害者のある犯罪について、判決に対する上訴の可否を検討する際に、事案等を勘案しつつ、犯罪被害者等から意見聴取等を実施するなど、適切な対応に努めていく。【法務省】

(8) 少年保護事件に関する意見の聴取等各種制度の周知徹底

法務省において、少年保護事件に関する意見の聴取、記録の閲覧・謄写及び審判結果等の通知の各制度について、周知に努めていく。【法務省】

(9) 少年保護事件に関する犯罪被害者等の意見・要望を踏まえた制度の検討及び施策の実施

法務省において、平成12年の少年法等の一部を改正する法律(平成12年法律第142号)附則第3条により、同法施行後5年を経過した場合に行う検討において、少年審判の傍聴の可否を含め、犯罪被害者等の意見・要望を踏まえた検討を行い、その結論に従った施策を実施する。【法務省】

(10) 公的弁護人制度の導入の是非に関する検討

公的弁護人制度の導入については、現行及び今後実施する損害賠償請求の適切・円滑な実現を図るための諸施策及び刑事に関する手続への参加の機会を拡充するための諸施策並びに犯罪被害者等の経済的負担軽減のための諸施策を踏まえ、更に必要かつ相当であるかを検討することとし、具体的には、犯罪被害者等に対する経済的支援制度に関して設置する検討のための会において、社会保障・福祉制度全体の中における犯罪被害者等に対する経済的支援制度のあるべき姿や財源と併せて検討する。【内閣府・警察庁・法務省・厚生労働省】

(11) 日本司法支援センターによる支援

ア 日本司法支援センターによる民事法律扶助制度の活用によって、弁護士費用及び損害賠償請求費用の負担軽減を図る。【法務省】(再掲:第1、1.(4)ア)

イ 日本司法支援センターにおいて、犯罪被害者等のために、その支援に精通した弁護士の紹介なども含めた様々な情報を速やかに提供する。【法務省】(再掲:第1、1.(4)イ及び第4、1.(27)ア)

ウ 日本司法支援センターの具体的な業務の在り方について、犯罪被害者等やその支援に携わる者の意見を踏まえて準備作業を進める。【法務省】(再掲:第1、1.(4)ウ及び第4、1.(27)イ)

エ 日本司法支援センターによる犯罪被害者等支援について、警察庁その他関係機関及び日本弁護士連合会等と十分な連携を図る。【法務省】(再掲:第1、1.(4)エ及び第4、1.(27)ウ)

オ 日本司法支援センターの機能及び犯罪被害者等支援に関する具体的情報を十分に周知させる。【法務省】(再掲:第1、1.(4)オ及び第4、1.(27)エ)

(12) 刑事の手続等に関する情報提供の充実

ア 警察庁及び法務省において連携し、犯罪被害者等の意見・要望を踏まえ、刑事に関する手続及び少年保護事件の手続並びに犯罪被害者等のための制度等を分かりやすく解説したパンフレット等の内容を充実し、パンフレットの配布等の工夫も含め、犯罪被害者等への早期の提供に努めていく。【警察庁・法務省】(再掲:第4、1.(23)ア)

イ 警察庁及び法務省において連携し、検視及び司法解剖に関し、パンフレットの配布等の工夫も含め、遺族に対する適切な説明及び配慮に努めていく。【警察庁・法務省】

ウ 警察において、都道府県における外国人犯罪被害者等の多寡等の実情を踏まえて作成・配布している外国語版の「被害者の手引」について、今後とも適切に作成・配布されるよう努めていく。【警察庁】(再掲:第4、1.(20)イ)

エ 法務省において、犯罪被害者等に対し、犯罪被害者等の保護と支援のための制度の更なる情報の提供を行うため、外国語によるパンフレットやホームページの作成等による情報の提供を行う。【法務省】(再掲:第4、1.(23)イ)

(13) 捜査に関する適切な情報提供

ア 警察において、捜査への支障等を勘案しつつ、「被害者連絡制度」等を周知徹底・活用し、犯罪被害者等に対し、適時適切に、捜査状況等の情報を提供するよう努めていく。【警察庁】

イ 警察庁において、一定の犯罪被害者等に対し「被害者の手引」を配布・説明する制度及び「被害者連絡制度」の改善策について、犯罪被害者等の要望を踏まえた検討を行い、1年以内を目途に結論を出し、必要な施策を実施する。【警察庁】(再掲:第4、1.(21))

ウ 法務省において、捜査への支障等を勘案しつつ、犯罪被害者等に対し、適時適切に、捜査状況等の情報を提供するよう努めていく。【法務省】

(14) 交通事故捜査の体制強化等

警察本部による事故捜査体制の強化を図るとともに、科学的捜査を推進するため、交通事故捜査員に対する各種捜査研修を実施するほか、交通事故自動記録装置を始めとする捜査支援機器の整備・活用を図るなど、一層の交通事故捜査の充実に努める。【警察庁】

(15) 交通事件に関する講義の充実

法務省において、副検事に対する研修の中で今後とも、交通事件の留意点等を熟知した専門家等による講義を行うとともに、被害者及び被害者遺族の立場等への理解を深めるための機会を設けるなど、交通事件をテーマとした科目の内容について一層の充実を図る。【法務省】(再掲:第2、3.(1)オ)

(16) 不起訴事案に関する適切な情報提供

ア 法務省において、不起訴記録の弾力的開示を周知徹底させる。【法務省】(再掲:第1、1.(7))

イ 法務省において、不起訴処分について、犯罪被害者等の希望に応じ、検察官が、捜査への支障等を勘案しつつ、事前・事後に、処分の内容及び理由について十分な説明を行うよう努めていく。【法務省】

(17) 検察審査会の起訴議決に拘束力を認める制度の運用への協力

法務省において、平成16年の検察審査会法(昭和23年法律第147号)改正により導入され平成21年までに実施される一定の場合に検察審査会の起訴議決に拘束力を認める制度について、公訴権の実行に関し民意を反映させてその適正を図るという趣旨の実現に向けた必要な協力をしていく。【法務省】

(18) 検察官に対する児童又は女性の犯罪被害者等への配慮に関する研修の充実

法務省において、検察官に対し、児童や女性の犯罪被害者等と接する上での留意点等を熟知した専門家等による講義を実施し、児童及び女性に対する配慮に関する科目の内容の一層の充実を図っていく。【法務省】(再掲:第2、3.(1)エ及び第4、2.(11)ア)

(19) 判決確定後の加害者情報の警察に対する提供の充実

法務省において、再被害防止のため、警察の要請に応じ、行刑施設、地方更生保護委員会及び保護観察所が警察に対して行う釈放予定、帰住予定地及び仮出獄中の特異動向等の情報提供、再度の加害行為のおそれを覚知した検察官、行刑施設、地方更生保護委員会及び保護観察所による警察への当該情報の連絡について、関係者に周知徹底させ、一層円滑な連携を図っていく。【警察庁・法務省】(再掲:第2、2.(1)ア)

(20) 判決確定後の加害者情報の犯罪被害者等に対する提供の拡充

法務省において、加害者の仮出獄の時期、自由刑の執行終了による釈放予定時期、釈放後の住所についての情報を適切に提供していくほか、さらに、更生保護官署が、保護司との協働態勢の下、犯罪被害者等に対し、加害者の収容先、加害者の処遇に関する情報、加害者の釈放予定等を含む刑事裁判終了後の加害者に関する情報を提供できるよう、更生保護官署に被害者支援専任の担当者を配置することを含め、検討を行い、2年以内を目途に必要な施策を実施する。【法務省】(再掲:第2、2.(1)イ)

(21) 保護処分決定確定後の加害少年に係る情報の提供に関する検討及び施策の実施

法務省において、犯罪被害者等に対し、保護処分決定確定後の加害少年に関する情報を適切に提供できるよう検討を行い、2年以内を目途に必要な施策を実施する。【法務省】

(22) 犯罪被害者等の心情等を加害者に伝達する制度の検討及び施策の実施

法務省において、更生保護官署が、保護司との協働態勢の下、犯罪被害者等に対し、刑事裁判終了後の加害者に関する情報を提供できるよう、更生保護官署に被害者支援専任の担当者を配置することを含め、検討を行う(上記(20))ことと併せ、犯罪被害者等が置かれた状況及び心情等を矯正施設に収容されている加害者又は保護観察中の加害者に伝える仲介をすることについて検討を行い、2年以内を目途に必要な施策を実施する。【法務省】

(23) 受刑者と犯罪被害者等との面会・信書の発受の適切な運用

法務省において、受刑中の加害者との面会・信書の発受を希望する犯罪被害者等に関し、刑事施設及び受刑者の処遇等に関する法律(平成17年法律第50号)に基づき、受刑中の者と犯罪被害者等との面会・信書の発受が適切に運用されるように努める。【法務省】

(24) 犯罪被害者等の意見等を踏まえた適切な加害者処遇の推進

ア 法務省において、矯正施設に収容されている加害者に対し、被害者の心情等を理解させるため、「被害者の視点を取り入れた教育」について、犯罪被害者等やその支援に携わる者の意見を踏まえ、内容の一層の充実に努めていく。【法務省】(再掲:第2、2.(12)ア)

イ 法務省において、保護処分の執行に資するため、少年の身体的・精神的状況、家庭環境、施設内の行動及び処遇の経過等に関する必要な記載がなされている少年簿について、関係機関と連携し、犯罪被害者等に関する事項について必要な情報を収集し、適切に記載するよう努めていく。【法務省】

ウ 法務省において、犯罪被害者等の意向等に配慮し、謝罪及び被害弁償に向けた保護観察処遇における効果的なしょく罪指導を徹底していく。【法務省】(再掲:第2、2.(12)ウ)

(25) 犯罪被害者等の視点を取り入れた交通事犯被収容者に対する更生プログラムの整備等

ア 法務省において、犯罪被害者等の視点を取り入れ、交通事犯被収容者に対する罪の意識の覚せいを図る指導、交通安全教育等を推進し、遵法精神、責任観念をかん養し、交通犯罪に対する道義的な反省を積極的に促すとともに、交通法規を守って、人命を尊重し、安全第一を信条とする社会人として更生させることに努める。【法務省】

イ 法務省において、「被害者の視点を取り入れた教育」研究会の成果を踏まえ、犯罪被害者等や支援団体から直接話を伺うゲストスピーカー制度の拡大や教材の開発、標準的なプログラムの策定に取り組むなど、被害者の心情等を理解させるための指導の一層の充実を図り、交通事犯被収容者の更生のためにより有効なプログラムの整備に努める。【法務省】

(26) 仮釈放における犯罪被害者等に対する安全への配慮の充実

法務省において、仮釈放に際し、地方更生保護委員会が、事案に応じた犯罪被害者等の安全確保に必要な遵守事項の適切な設定に努め、保護観察所が、当該遵守事項を遵守させるための加害者に対する指導監督を徹底していく。【法務省】(再掲:第2、2.(12)イ)

(27) 犯罪被害者等の意見を踏まえた仮釈放審理の検討及び施策の実施

法務省において、仮釈放の審理をより一層犯罪被害者等の意見を踏まえたものとすることについて、犯罪被害者等による意見陳述の機会を設けることを含め検討し、2年以内を目途に必要な施策を実施する。【法務省】

(28) 矯正施設職員及び更生保護官署職員に対する研修等の充実

法務省において、矯正施設職員及び更生保護官署職員に対する犯罪被害者等やその支援に携わる者による講義の実施等犯罪被害者等の置かれている現状や心情等への理解を深める研修の充実を図っていく。【法務省】

 

第4 支援等のための体制整備への取組

犯罪被害者等は、犯罪等により受けた被害を回復し、軽減し、再び平穏な生活を営むことができるようになるために、様々な困難に立ち向かっていかなければならない。しかし、犯罪等により受けた精神的・身体的被害により、本来有している能力が阻害され、他者の支援を必要としている。犯罪被害者等が必要とする支援は、具体的な被害の状況・原因、犯罪被害者等が置かれている状況等によって極めて多岐にわたるが、そうした支援を、誰でも必要なときに必要な場所で受けられるようにするためには、支援のための十分な体制整備が必要である。

基本法は、第11条において「相談及び情報の提供等」、第21条において「調査研究の推進等」、第22条において「民間の団体に対する援助」に係る必要な施策を講ずることを求めている。

1.相談及び情報の提供等(基本法第11条関係)

[現状認識]

思いがけず被害に見舞われた犯罪被害者等は、被害直後から、保護、診療、葬儀、告訴、事情聴取等の捜査への協力、公判への証人等としての出廷、公判の傍聴、少年審判への出席、損害賠償の請求、民事訴訟の提起・遂行、犯罪被害者等給付金の申請、福祉制度の利用のための申請、各種保険制度の給付申請、被害者支援団体への支援の要請など、様々な場面に遭遇し、その都度、判断し、行動しなければならない。しかし、多くの犯罪被害者等は、経験や十分な知識があるべくもなく、直面している状況を十分に理解できず、行うべき判断やとるべき行動の指針も見つけられず、困惑するとの指摘がある。また、性犯罪や家庭の中の暴力に係る犯罪被害者等の中には、被害そのものを明らかにすることができないため、捜査機関等とのかかわりすら持てず、相談や支援を要請する方法も分からないまま、困難な状況に陥っている者も存在するとの指摘がある。

「犯罪被害者実態調査報告書(犯罪被害実態調査研究会。平成15年)」によると、犯罪被害者等に対する援助に関して、「そばで話を聞いてくれること(とりあえずの相談相手)」を必要とした者の割合が最も高くなっている(79.4%の者が被害直後に必要とし、被害後数年が経過したアンケート調査時現在においても37.9%の者が必要としている。)。また、犯罪被害者等が提供を求める情報については、刑事手続に関する情報の提供を求める者の割合が高い(例えば、犯人の検挙情報や捜査の進み具合は、おおむね9割の者が情報提供を望んでいる。)が、「犯罪被害給付制度」、「援助を受けることができる組織、団体等の紹介」、「弁護士の選任方法や弁護士会の相談窓口」、「被害回復の方法」、「保険金の受け取り申請の手続」などについても5割を超える者が情報提供を望んでおり、様々な情報提供が求められていることがうかがわれる。

犯罪被害者等にとって、必要な情報が与えられることは、犯罪被害者等支援の基礎であり、むしろ、犯罪被害者等があえて求めずとも必要な情報が得られることが望ましいとの指摘がある。また、捜査・公判等の過程で発生する二次的被害については、相談や支援を求めることに特に困難があるとの指摘もある。さらに、こうした相談・情報提供等の支援は、被害後の経過に応じ、病院への付添い、家事・育児の手伝い、カウンセリング等その他の直接的な支援と連動して行われるべき場合が少なくないと考えられる。

[基本法が求める基本的施策]

基本法第11条は、国及び地方公共団体に対し、犯罪被害者等が日常生活又は社会生活を円滑に営むことができるようにするための施策として、

を講ずることとしている。

[犯罪被害者等の要望に係る施策]

犯罪被害者団体等からは、
<1> 犯罪被害者等支援窓口の一本化
<2> 日本司法支援センターの相談窓口としての機能充実
<3> 犯罪被害者等支援に関する情報取得の利便性向上
<4> 犯罪被害者等に提供する情報の内容の充実
<5> 早期支援体制の確立
<6> 長期支援体制の確立
<7> 犯罪被害者等支援のコーディネーターや専門的チームの育成
<8> その他相談及び情報提供等の充実
に関する種々の要望が寄せられている。

[今後講じていく施策]

(1) 地方公共団体に対する総合的対応窓口の設置等の要請等

ア 内閣府において、都道府県犯罪被害者等主管課室長会議を開催し、地方公共団体に対し、犯罪被害者等に関する適切な情報提供等を行う総合的な対応窓口の設置等について要請する。【内閣府】

イ 内閣府において、関係窓口一覧や犯罪被害者等基本計画等の広報を含めたパンフレットを作成し、上記ア記載の会議において配布するなどの情報提供を行う。【内閣府】

(2) 相談機関等リストの作成による総合的情報提供

内閣府において、都道府県別の相談機関等リストを作成し、インターネット等を通じて総合的な情報提供を行うことにつなげられるような事業を実施する。【内閣府】

(3) どの関係機関・団体等を起点としても、必要な情報提供・支援等を途切れることなく受けることのできる体制作りのための検討及び施策の実施

各地域における犯罪被害者等支援に係る諸機関・団体等の連携・協力を更に促進し、犯罪被害者等が、どの機関・団体等を起点としても必要な情報の提供、支援等を途切れることなく受けることのできる体制作りが行われるようにするため、推進会議の下に、有識者並びに内閣府、警察庁、総務省、法務省、文部科学省、厚生労働省及び国土交通省からなる検討のための会を設置し、地域における関係諸機関・団体等の連携・協力の実情の把握等必要な調査を行い、2年以内を目途に結論を出し、その結論に従った施策を実施する。【内閣府・警察庁・総務省・法務省・文部科学省・厚生労働省・国土交通省】

(4) 犯罪被害者等支援のコーディネーター等の育成の在り方についての検討

犯罪被害者等支援のコーディネーターや専門的チームの育成の在り方について、各地域における犯罪被害者等支援に係る諸機関・団体等の連携・協力の促進に関して設置する検討のための会において、どの関係機関・団体等を起点としても必要な情報提供、支援等を途切れることなく受けることのできる体制作りと併せて検討する。【内閣府・警察庁・総務省・法務省・文部科学省・厚生労働省・国土交通省】(再掲:第4、2.(8))

(5) 警察と関係機関・団体等との連携・協力の充実・強化及び情報提供の充実

警察において、他の犯罪被害者等支援に係る諸機関・団体等との連携・協力を充実・強化し、それらの諸機関・団体等の犯罪被害者等支援のための制度等を説明できるよう努めていくとともに、さらに、犯罪被害者等支援のための諸制度を所掌する府省庁の協力を得て、当該制度に関する案内書、申込書等を常備し、提供等していく。【警察庁】

(6) 被害者支援連絡協議会及び被害者支援地域ネットワークにおける連携の推進

警察において、法務省、文部科学省、厚生労働省及び国土交通省の協力を得て、各都道府県警察・警察署レベルで設置している知事部局、地方検察庁、弁護士会、医師会、臨床心理士会、犯罪被害者等の援助を行う民間の団体等をメンバーとする被害者支援連絡協議会及び被害者支援地域ネットワークについて、メンバー間の連携が図られ、総合的な被害者支援が実施されるよう努めていく。【警察庁】

(7) 警察における相談体制の充実

警察において、全国統一の相談専用電話「♯9110番」や性犯罪相談、少年相談等の個別の相談窓口において、犯罪被害者等の住所地等にかかわらず、また、匿名であっても相談に応じるとともに、犯罪被害者等の要望により、当該都道府県又は警察署の被害者支援連絡協議会等ネットワークに参画する機関・団体等の情報提供等や、他都道府県又は他警察署のネットワークの活用にも配慮していくほか、性犯罪相談窓口について女性警察官の配置に努めたり、精神的ケアを望む相談に対し、カウンセリング専門職員の電話によるカウンセリングを実施したり、精神科医や臨床心理士等による専門的ケアが行える機関を紹介するなど、犯罪被害者等のニーズに応えられるよう努めていく。【警察庁】

(8) 「指定被害者支援要員制度」の活用

警察において、指定された警察職員(指定被害者支援要員)が、事件発生直後から犯罪被害者に付き添い、必要な助言、指導、情報提供等を行ったり、被害者支援連絡協議会等のネットワークを活用しつつ、部外のカウンセラー、弁護士会、関係機関又は犯罪被害者等の援助を行う民間の団体等の紹介・引継ぎを実施するなどする「指定被害者支援要員制度」について、法務省、文部科学省、厚生労働省及び国土交通省の協力を得て、その積極的活用を図るとともに、それらの警察職員に対し、犯罪被害者等に対する支援に必要となる知識等についての研修、教育等の充実に努める。【警察庁】

(9) 交通事故相談活動の促進

内閣府において、相談内容の多様化・複雑化に対処するため、交通事故相談活動に携わる交通事故相談所等の相談員に対して、研修等を通じてその資質の向上を図るなど、地域における交通事故相談活動を推進する。【内閣府】

(10) 警察における被害少年が相談しやすい環境の整備

警察において、少年サポートセンターや各警察署の少年係等、少年からの悩みごと、困りごとの相談を受け付けるための窓口が、関係機関への十分な引継ぎを含め、相談者の立場に立った対応をするよう努めていくとともに、「ヤング・テレホン・コーナー」等の名称での電話による相談窓口の設置や、フリーダイヤル、電子メールによる相談の導入等により、被害少年が相談しやすい環境の整備を図っていく。【警察庁】

(11) ストーカー事案への適切な対応

警察において、ストーカー事案の担当者に対し、ストーカー行為等の規制等に関する法律(平成12年法律第81号)の運用のみならず、被害者からの相談を受ける際に必要な能力を修得させることを含む専門教育を実施していくとともに、関係機関との連携を強化し、ストーカー事案への適切な対応に努める。【警察庁】

(12) 検察庁の犯罪被害者等支援活動における福祉・心理関係の専門機関等との連携の充実

法務省において、検察庁における犯罪被害者等支援活動に際し、刑事手続に関する専門的な法的知識、捜査・公判の実務経験に基づき、犯罪被害者等の立場を理解し適切に対応するとともに、福祉・心理関係の専門機関等との連携の充実を図る。【法務省】

(13) 検察庁における被害者支援員と関係機関・団体等との連携・協力の充実・強化及び情報提供の充実

法務省において、被害者支援員と犯罪被害者等支援に係る諸機関・団体等との連携・協力を充実・強化し、検察庁に相談窓口を求める犯罪被害者等に対し、被害者支援員等の連絡先等の一層分かりやすい提供や、犯罪被害者等支援に係る諸機関・団体等の犯罪被害者等支援のための制度等を説明できるよう努め、さらに、犯罪被害者等支援のための諸制度を所掌する府省庁の協力を得て、当該制度に関する案内書、申込書等を常備し、提供等していくことを含め、必要な情報が提供できるよう努めていく。【法務省】

(14) 「子どもの人権110番」及び「子どもの人権専門委員」の活用・充実

法務省において、法務局・地方法務局に設置されている専用相談電話「子どもの人権110番」及び「子どもの人権専門委員」の活用・充実を図っていく。【法務省】

(15) 教育委員会と関係機関・団体等との連携・協力の充実・強化及び学校における相談窓口機能の充実

文部科学省において、学校で児童生徒が犯罪被害者となる重大事件が発生した場合に、当該児童生徒の相談等の窓口として学校が有効に機能することを支援するため、教育委員会が、警察署、児童相談所、保健所、弁護士会、医師会等の関係機関と連携・協力を充実・強化し、犯罪被害者等支援に係る諸機関・団体等の犯罪被害者等支援のための制度等を説明できるよう努め、さらに、犯罪被害者等支援のための諸制度を所掌する府省庁の協力を得て、当該制度に関する案内書、申込書等を常備し、提供等していくことを含め、当該児童生徒及びその保護者等への対応等を行うことを促進する。この場合において、加害者が教員・生徒等当該学校内部の者であった場合は、犯罪被害者となった児童生徒の状況にかんがみ、適切な者が相談等の窓口になるよう十分配慮する。【文部科学省】

(16) 学校内における連携及び相談体制の充実

文部科学省において、犯罪被害者等である児童生徒及びその保護者の相談等に対し、学校で、学級担任、生徒指導担当教員、教育相談担当教員、保健主事、養護教諭、スクールカウンセラー等が連携し、適切な対応ができるよう、必要に応じ、教員加配、スクールカウンセラーの配置をするなど学校内の相談体制の充実を図っていく。【文部科学省】

(17) 学校における相談対応能力の向上等

文部科学省において、学校の教職員が犯罪被害者等である児童生徒の相談等に的確に対応できるよう、犯罪等の被害に関する研修等を通じ教職員の指導力の向上に努めるとともに、スクールカウンセラーや「子どもと親の相談員」の配置など教育相談体制の充実等に取り組んでいく。【文部科学省】(再掲:第4、2.(13)及び第5、1.(15)ア)

(18) 相談及び情報提供のための教育委員会による取組の促進

文部科学省において、犯罪被害者等である児童生徒を含む児童生徒に対し、教育委員会が、心理学、教育学等に関する知識を有する専門職員や臨床心理の専門家等を教育センターや教育相談所等に配置し、相談窓口を設けるとともに、少年サポートセンター、児童相談所、福祉事務所、保健所等の地域の関係機関についての情報を当該児童生徒及びその保護者に提供することを促進する。【文部科学省】

(19) 各都道府県警察に対する犯罪被害者等への情報提供等の支援に関する指導・督励及び好事例の勧奨

警察庁において、情報提供を始めとする基本的な犯罪被害者等支援策が確実に実施されるよう、各都道府県警察を指導・督励するとともに、好事例を勧奨していく。【警察庁】

(20) 「被害者の手引」の内容の充実等

ア 警察において、刑事手続の概要、犯罪被害者等に役立つ制度、犯罪被害者等支援に係る諸機関・団体の連絡先等を記載したパンフレット「被害者の手引」について、関係機関による被害者支援策の紹介を含め、その内容の充実、見直しを図りつつ、その確実な配布を更に徹底するとともに、それらの情報をウェブサイトにおいても紹介していく。【警察庁】

イ 警察において、都道府県における外国人犯罪被害者等の多寡等の実情を踏まえて作成・配布している外国語版の「被害者の手引」について、今後とも適切に作成・配布されるよう努めていく。【警察庁】(再掲:第3、1.(12)ウ)

(21) 「被害者連絡制度」等の改善

警察庁において、一定の犯罪被害者等に対し「被害者の手引」を配布・説明する制度及び「被害者連絡制度」の改善策について、犯罪被害者等の要望を踏まえた検討を行い、1年以内を目途に結論を出し、必要な施策を実施する。【警察庁】(再掲:第3、1.(13)イ)

(22) 犯罪被害者等の保護・支援のための制度の周知

損害賠償請求制度の概要その他犯罪被害者等の保護・支援のための制度について紹介した冊子・パンフレット等について、警察庁及び法務省において連携し、一層の内容の充実を図るとともに、十分に周知させる。【警察庁・法務省】(再掲:第1、1.(6)ア)

(23) 刑事の手続等に関する情報提供の充実

ア 警察庁及び法務省において連携し、犯罪被害者等の意見・要望を踏まえ、刑事に関する手続及び少年保護事件の手続並びに犯罪被害者等のための制度等を分かりやすく解説したパンフレット等の内容を充実し、パンフレットの配布等の工夫も含め、犯罪被害者等への早期の提供に努めていく。【警察庁・法務省】(再掲:第3、1.(12)ア)

イ 法務省において、犯罪被害者等に対し、犯罪被害者等の保護と支援のための制度の更なる情報の提供を行うため、外国語によるパンフレットやホームページの作成等による情報の提供を行う。【法務省】(再掲:第3、1.(12)エ)

(24) 民事の手続に関する情報提供の充実

法務省において、犯罪被害者等の損害賠償請求に係る民事訴訟手続に関する情報の提供につき、説明資料の作成を含め検討し、早期に結論を出し、必要な施策を実施する。【法務省】(再掲:第1、1.(6)イ)

(25) 医療機関等と関係機関・団体等との連携・協力の充実・強化及び医療機関における情報提供等の充実

ア 厚生労働省において、医療機関が犯罪被害者等支援に係る諸機関・団体等と連携・協力し、犯罪被害者等の支援等に関する情報提供を適切に行うことを促進する。【厚生労働省】

イ 厚生労働省において、精神保健福祉センター、保健所等が犯罪被害者等支援に係る諸機関・団体等との連携・協力を充実・強化し、犯罪被害者等支援に係る諸機関・団体等の犯罪被害者等支援のための諸制度に関する案内書、申込書等を常備し、提供等していくことを含め、犯罪被害者等の支援等に関する情報提供、相談等を適切に行うことを推進する。【厚生労働省】

(26) 性犯罪被害者による情報入手の利便性の拡大

ア 警察において、現行の「性犯罪110番」の相談電話及び相談室の設置、これらの相談窓口に関する広報、性犯罪被害者用の「被害者の手引」の交付等に加え、性犯罪被害者の要望を踏まえ、性犯罪被害者が情報を入手する利便性の拡大に努めていく。【警察庁】

イ 法務省において、性犯罪被害者の要望を踏まえ、性犯罪被害者が情報を入手する利便性の拡大に努めていく。【法務省】

ウ 厚生労働省において、性犯罪被害者の要望を踏まえ、性犯罪被害者が情報を入手する利便性の拡大に努めていく。【厚生労働省】

(27) 日本司法支援センターによる支援

ア 日本司法支援センターにおいて、犯罪被害者等のために、その支援に精通した弁護士の紹介なども含めた様々な情報を速やかに提供する。【法務省】(再掲:第1、1.(4)イ及び第3、1.(11)イ)

イ 日本司法支援センターの具体的な業務の在り方について、犯罪被害者等やその支援に携わる者の意見を踏まえて準備作業を進める。【法務省】(再掲:第1、1.(4)ウ及び第3、1.(11)ウ)

ウ 日本司法支援センターによる犯罪被害者等支援について、警察庁その他関係機関及び日本弁護士連合会等と十分な連携を図る。【法務省】(再掲:第1、1.(4)エ及び第3、1.(11)エ)

エ 日本司法支援センターの機能及び犯罪被害者等支援に関する具体的情報を十分に周知させる。【法務省】(再掲:第1、1.(4)オ及び第3、1.(11)オ)

オ 日本司法支援センターにおいて、国(捜査機関、裁判所を含む。)、地方公共団体(捜査機関を含む。)、弁護士会、犯罪被害者支援団体等の種々の専門機関・団体と連携・協力してネットワークを構築し、犯罪被害者等の相談内容に応じた最適の専門機関・団体や犯罪被害者等の支援に精通した弁護士を紹介するコーディネーターとしての役割を果たすよう努める。【法務省】(再掲:第4、3.(8))

(28) 「NPOポータルサイト」による情報取得の利便性確保

内閣府において、特定非営利活動法人としての法人格を有する犯罪被害者等の援助を行う団体等の情報について、平成17年度に開設する予定の「NPOポータルサイト」での検索により取得可能とする。【内閣府】

(29) 犯罪被害者団体等専用ポータルサイトの開設

内閣府において、犯罪被害者等同士が出会うための情報の整理等を行い、自助グループを含む各犯罪被害者団体等における活動等を紹介するため、新たに、犯罪被害者等の間のネットワーク作りを円滑に行えるような犯罪被害者団体等専用ポータルサイトを開設する。【内閣府】

(30) 自助グループの紹介等

警察において、犯罪被害者等の援助を行う民間の団体との連携を図りつつ、犯罪被害者等の要望を踏まえ、犯罪被害者等に対し、自助グループの紹介等を行っていく。【警察庁】

(31) 犯罪被害者等施策のホームページの充実

内閣府において、犯罪被害者等施策のホームページについて、関係法令の整備その他必要な情報の更新を行い、充実を図っていく。【内閣府】

(32) インターネット以外の媒体を用いた情報提供

犯罪被害者等に対して情報提供を行う際、各府省庁において、インターネット以外の媒体を用いて必要な情報が提供されることを通じて、インターネット等で情報を得ることができる者とそうでない者との間に不公平が生じないよう配慮するとともに、積極的な情報提供に努める。【内閣府・警察庁・総務省・法務省・文部科学省・厚生労働省・国土交通省】

(33) 犯罪の発生直後からの総合的・横断的な支援活動の展開

警察において、指定された警察職員が事件発生直後から犯罪被害者等に付き添うなどするとともに携帯電話等により当該犯罪被害者等からの相談等に対応する「指定被害者支援要員制度」の積極的運用、部内のカウンセラー等による相談・精神的ケアや部外の精神科医等への紹介、犯罪被害者等早期援助団体が積極的に介入することを可能とするための当該団体への情報提供、及び生活・医療・裁判等多岐にわたる分野の関係機関・団体等による横断的な支援活動を実施するための被害者支援連絡協議会の活用等により、犯罪の発生直後から、被害の回復・軽減、再発防止等のための支援活動が総合的・横断的かつ充実して展開されるよう努める。【警察庁】

(34) 更生保護官署と保護司との協働による刑事裁判終了後の支援についての検討及び施策の実施

ア 法務省において、更生保護官署が、保護司との協働態勢の下、犯罪被害者等に対し、その被害に係る刑事裁判が終了した後の支援を行うことについて、犯罪被害者等の支援に適する保護司の配置も含め検討を行い、2年以内を目途に結論を出し、その結論に従った施策を実施する。【法務省】

イ 法務省において、上記アの検討の際に、地域社会における関係諸機関・団体等の連携・協力の在り方についても、併せて検討する。【法務省】

(35) 犯罪被害者等である児童生徒が不登校になった場合における継続的支援の促進

文部科学省において、犯罪被害者等である児童生徒が不登校になった場合、当該児童生徒に対し、教育委員会が設置する教育支援センター(適応指導教室)が行うカウンセリングや学習指導等による学校復帰等のための継続的な支援を促進する。【文部科学省】

(36) 犯罪被害者等である児童生徒が問題を抱えるに至った場合における継続的支援の促進

文部科学省において、犯罪被害者等である児童生徒が問題を抱えるに至った場合、当該児童生徒に対し、学校、教育委員会、警察署、児童相談所、保健所等の関係機関の実務担当者がサポートチームを形成するなど連携して継続的に行う対応を促進する。【文部科学省】

(37) 日本司法支援センターによる長期的支援

日本司法支援センターにおいて、被害を受けたときからの時間経過の長短を問わず、情報等の提供を通じた支援を行う。【法務省】

(38) 海外における邦人の犯罪被害者等に対する情報提供についての周知

外務省において、海外で邦人が犯罪等による被害に遭った場合、在外公館(大使館、総領事館)が当該犯罪被害者等の要請に応じて行っている現地における弁護士や通訳・翻訳者等に関する情報提供について、更に周知させる。【外務省】

 

2.調査研究の推進等(基本法第21条関係)

[現状認識]

犯罪被害者等に対する適切な支援のためには、犯罪被害者等の心理、置かれている状況を正確に理解することはもとより、犯罪被害者等の心身の健康を回復させるための方法等に関する専門的知識・技能が求められる。しかるに、犯罪被害者等の支援に携わる者たちについて、熱意はあっても必要な知識・技能が不足し、適切な支援ができない場合があるとの指摘がある。犯罪被害者等の支援に携わる者が共有し、修得すべき知識・技能に関する調査研究を進めることや諸外国における犯罪被害者等のための施策に関する情報を収集すること等が必要であり、そうした調査研究や情報収集等の成果を活用して人材の養成等を行っていく必要がある。

[基本法が求める基本的施策]

基本法第21条は、国及び地方公共団体に対し、犯罪被害者等に対し専門的知識に基づく適切な支援を行うことができるようにするための施策として、

を講ずることとしている。

[犯罪被害者等の要望に係る施策]

犯罪被害者団体等からは、
<1> PTSDに関する調査研究及び専門家の養成
<2> その他人材の養成等
<3> 犯罪被害実態等に関する調査研究の充実
<4> 犯罪被害者等支援に関する研究・教育・研修を行う国公立の「犯罪被害者総合支援センター」の設立
に関する種々の要望が寄せられている。

[今後講じていく施策]

(1) 重症PTSD症例に関するデータ蓄積及び治療法等の研究

文部科学省において、平成17年度の科学技術振興調整費「重要課題解決型研究等の推進」プログラムにおける課題「犯罪・テロ防止に資する先端科学技術」の中で新規採択した「犯罪、行動異常、犯罪被害者の現象、原因と治療、予防の研究」における犯罪被害による重症PTSD症例に関するデータ蓄積及び治療法等の研究成果を得、犯罪被害者等支援の実践への活用を目指していく。【文部科学省】

(2) 犯罪被害者の精神健康の状況とその回復に関する研究

厚生労働省において、犯罪被害者の精神健康についての実態とニーズの調査、医療場面における犯罪被害者の実態の調査、重度PTSDなど持続的な精神的後遺症を持つものの治療法の研究、地域における犯罪被害者に対する支援のモデルの研究などを継続的に行い、その研究成果を得、高度な犯罪被害者等支援が行える専門家育成や地域での対応の向上に活用していく。【厚生労働省】

(3) 犯罪被害者等の状況把握等のための継続的調査の実施

内閣府において、警察庁、法務省及び厚生労働省並びに犯罪被害者団体等の協力を得て、犯罪被害類型別、被害者との関係別に、犯罪被害者等の置かれた状況や当該状況の経過等を把握するため、犯罪被害類型等ごとに、一定の周期で継続的な調査を行う。【内閣府】

(4) 配偶者に該当しない交際相手等からの暴力に関する調査の実施

内閣府において、平成11年度以降実施している女性に対する暴力による被害の実態把握に関する調査の中で、平成17年度に、配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律(平成13年法律第31号)における配偶者に該当しない交際相手等からの暴力についても、調査を実施する。【内閣府】

(5) 警察庁における犯罪被害の実態等についての継続的調査研究

警察庁において、犯罪被害の実態等についての調査研究を継続的に実施し、警察の行う被害者支援の更なる充実に活かしていく。【警察庁】

(6) 法務省における「犯罪被害実態調査」の調査方法に関する検討

法務省において、これまでに行った「犯罪被害実態調査」と同種の調査を継続的に実施する方向で検討するとともに、性的暴行被害等についてより一層精緻な数値を得られるよう調査方法の検討を早期に行い、その結果を同調査に反映する。【法務省】

(7) 脳死及び臓器移植に関する犯罪被害者等への配慮

厚生労働省において、臓器提供者(交通事故被害者を含む。)の家族に特有な心理的な問題等について、「脳死下での臓器提供事例に係る検証会議」の下に設置された「ドナー家族の心情把握等作業班」により、現状把握に努める。【厚生労働省】

(8) 犯罪被害者等支援のコーディネーター等の育成の在り方についての検討

犯罪被害者等支援のコーディネーターや専門的チームの育成の在り方について、各地域における犯罪被害者等支援に係る諸機関・団体等の連携・協力の促進に関して設置する検討のための会において、どの関係機関・団体等を起点としても必要な情報提供、支援等を途切れることなく受けることのできる体制作りと併せて検討する。【内閣府・警察庁・総務省・法務省・文部科学省・厚生労働省・国土交通省】(再掲:第4、1.(4))

(9) 警察における被害者支援に携わる職員等への研修の充実

警察において、 <1>採用時及び上位の階級又は職に昇任した際に行われる犯罪被害者等支援に関する基礎的な研修、 <2>被害者支援担当部署に配置された職員に対する犯罪被害者等支援の実践的技能を修得させるための臨床心理士によるロールプレイ方式による演習等を含む専門的な研修、 <3>カウンセリング業務に従事する職員等に対する基礎的な教育及び実践的・専門的な教育等の充実を図っていく。【警察庁】

(10) 犯罪等による被害を受けた児童の継続的な支援を行う警察職員の技能修得

警察において、犯罪等による被害を受けた児童の継続的な支援を行う少年補導職員、少年相談専門職員について、講習・研修等により、カウンセリングの技法等必要な専門技術等を修得できるよう努めるとともに、専門的能力を備えた者の配置に努めていく。【警察庁】

(11) 法務省における犯罪被害者等支援に関する職員研修の充実等

ア 法務省において、検察官に対し、児童や女性の犯罪被害者等と接する上での留意点等を熟知した専門家等による講義を実施し、児童及び女性に対する配慮に関する科目の内容の一層の充実を図っていく。【法務省】(再掲:第2、3.(1)エ及び第3、1.(18))

イ 法務省において、検察官、検察事務官に対する各種研修の機会における「犯罪被害者支援」等のテーマによる講義の実施、犯罪被害者等早期援助団体への検察官の派遣、矯正施設職員に対する犯罪被害者団体等の関係者を招へいしての講義等の実施、更生保護官署職員に対する被害者支援の実務家等による講義、地方検察庁に配置されている被害者支援員を対象とする研修における犯罪被害者等に関する諸問題についての講義・講演及び討議の実施など、職員の犯罪被害者等への適切な対応を確実にするための教育・研修等の充実を図る。【法務省】(再掲:第2、3.(1)イ)

(12) 日本司法支援センターが蓄積した情報やノウハウの提供

日本司法支援センターにおいて、犯罪被害者等支援業務の実施を通じて日本司法支援センターが蓄積した情報やノウハウについて、研修や講習を通じて犯罪被害者等支援に携わる関係者に提供していく。【法務省】

(13) 学校における相談対応能力の向上等

文部科学省において、学校の教職員が犯罪被害者等である児童生徒の相談等に的確に対応できるよう、犯罪等の被害に関する研修等を通じ教職員の指導力の向上に努めるとともに、スクールカウンセラーや「子どもと親の相談員」の配置など教育相談体制の充実等に取り組んでいく。【文部科学省】(再掲:第4、1.(17)及び第5、1.(15)ア)

(14) 臨床心理士による犯罪被害者等に対する支援活動についての調査研究の実施

文部科学省において、犯罪等による被害への精神的支援の重要性を踏まえ、財団法人日本臨床心理士資格認定協会に委嘱している「臨床心理士の資質向上に関する調査研究」において、犯罪被害者等に対する支援活動についての調査研究を実施する。【文部科学省】

(15) 虐待を受けた子どもの保護等に携わる者の研修の充実

厚生労働省において、虐待を受けた子どもの保護及び自立の支援を専門的知識に基づき適切に行うことができるよう、児童相談所及び児童福祉施設等関係機関の職員、市町村職員及び保健機関等の職員の資質の向上等を図るための研修の充実を図っていく。【厚生労働省】

(16) 民間の団体の研修に対する支援

警察、法務省、文部科学省、厚生労働省及び国土交通省において犯罪被害者等の援助を行う民間の団体に対し、それらの団体が実施するボランティア等の養成・研修への講師の派遣等の支援に努めていく。【警察庁・法務省・文部科学省・厚生労働省・国土交通省】

 

3.民間の団体に対する援助(基本法第22条関係)

[現状認識]

我が国における犯罪被害者等に対する支援に関する民間の団体の活動は、昭和40年代にその嚆矢が見られ、平成になってから、全国的な展開が進んでいる。これらの民間の団体は、犯罪被害者等がいつでもどこでも支援が受けられる体制の整備に不可欠であるとともに、自らも犯罪被害者等である者や様々な経験・能力を持った者が参加することにより、犯罪被害者等が有する多様な事情に応じたきめ細かな対応を可能とするものである。こうした民間の団体は、善意の寄付やボランティアに支えられ、懸命に活動しているが、そのほとんどが財政面、人材面等における困難を抱え、犯罪被害者等の多様・多量のニーズに比べると、依然として質・量ともに大きく不足しており、大幅な拡充が必要であるとの指摘がある。

[基本法が求める基本的施策]

基本法第22条は、国及び地方公共団体に対し、犯罪被害者等に対して行われる各般の支援において犯罪被害者等の援助を行う民間の団体が果たす役割の重要性にかんがみ、その活動の促進を図るための施策として、

を講ずることとしている。

[犯罪被害者等の要望に係る施策]

犯罪被害者団体等からは、
<1> 民間の団体に対する財政的援助の充実
<2> その他の必要な施策
に関する種々の要望が寄せられている。

[今後講じていく施策]

(1) 民間の団体に対する財政的援助の在り方の検討及び施策の実施

犯罪被害者等の援助を行う民間の団体に対する国による財政的な援助を現状よりも手厚いものとする必要があることを前提に、被援助団体となる対象、援助されるべき事務の範囲、援助の経路や財源等の総合的な在り方を検討するため、推進会議の下に、有識者並びに内閣府、警察庁、総務省、法務省及び厚生労働省からなる検討のための会を設置し、必要な調査を行い、2年以内を目途に結論を出し、その結論に従った施策を実施する。【内閣府・警察庁・総務省・法務省・厚生労働省】

(2) 民間の団体への支援の充実

ア 警察及び厚生労働省において、犯罪被害者等の援助を行う民間の団体への財政的援助の充実に努めるとともに、それらの団体の活動に関する広報、犯罪被害者等の援助に携わる民間の者の研修に関する講師の手配・派遣、会場借上げ等の協力等の支援を行っていく。【警察庁・厚生労働省】

イ 法務省、文部科学省及び国土交通省において、犯罪被害者等の援助を行う民間の団体の活動に関する広報、犯罪被害者等の援助に携わる民間の者の研修に関する講師の手配・派遣、会場借上げ等の協力等の支援を行っていく。【法務省・文部科学省・国土交通省】

(3) 民間の団体で支援活動を行う者の養成・研修等の在り方についての検討

犯罪被害者等の援助を行う民間の団体で支援活動を行う者の養成及び研修の内容並びに費用の弁償、災害補償、信頼性の確保等それらの者が行う適切な支援活動を助長する仕組みの在り方について、各地域における犯罪被害者等支援に係る諸機関・団体等の連携・協力の促進に関して設置する検討のための会において、どの関係機関・団体等を起点としても必要な情報提供、支援を途切れることなく受けることのできる体制作りと併せて検討する。【内閣府・警察庁・総務省・法務省・文部科学省・厚生労働省・国土交通省】

(4) 民間の団体等に関する広報等

内閣府及び警察庁において、総務省、法務省、文部科学省、厚生労働省及び国土交通省の協力を得て、政府広報等とも連携し、様々な広報媒体を通じて、犯罪被害者等の置かれた状況やそれを踏まえた施策実施の重要性、犯罪被害者等の援助を行う団体の意義・活動等について広報する。【内閣府・警察庁】(再掲:第5、1.(11)ア)

(5) 特定非営利活動促進法(NPO法)の適切な運用

内閣府において、特定非営利活動促進法(平成10年法律第7号。NPO法)に基づく犯罪被害者等の援助を行う団体等を含む民間非営利団体からの法人格の取得申請に対し、同法の適切な運用に努める。【内閣府】

(6) 全国被害者支援ネットワークに対する協力

警察において、全国被害者支援ネットワークの運営及び活動に対し、協力していく。【警察庁】

(7) 警察における民間の団体との連携・協力の強化

警察において、犯罪被害者等の援助を行う民間の団体との連携を一層強化し、支援を行っていくとともに、生活・医療・裁判等多岐にわたる分野の関係機関・団体等による横断的な支援活動を実施するための被害者支援連絡協議会における相互の協力及び緊密な連携を図っていく。【警察庁】

(8) 日本司法支援センターによるネットワークの構築とコーディネーター機能の発揮

日本司法支援センターにおいて、国(捜査機関、裁判所を含む。)、地方公共団体(捜査機関を含む。)、弁護士会、犯罪被害者支援団体等の種々の専門機関・団体と連携・協力してネットワークを構築し、犯罪被害者等の相談内容に応じた最適の専門機関・団体や犯罪被害者等の支援に精通した弁護士を紹介するコーディネーターとしての役割を果たすよう努める。【法務省】(再掲:第4、1.(27)オ)

 

第5 国民の理解の増進と配慮・協力の確保への取組

犯罪被害者等が、犯罪等により受けた被害から立ち直り、再び地域において平穏に過ごせるようになるためには、国及び地方公共団体による施策を十分に措置することのみならず、地域の全ての人々の理解と配慮、そしてそれに基づく協力が重要である。このため、これまで議論してきた個別具体的な施策の総合的な展開に併せ、これと「車の両輪」の関係にあるとも言える、国民の理解と配慮・協力を促す施策を講じていくことが必要である。基本法は、第20条において、教育活動、広報活動等を通じた「国民の理解の増進」に係る必要な施策を講ずることを求めている。

1.国民の理解の増進(基本法第20条関係)

[現状認識]

平成12年に内閣府が実施した「犯罪被害者に関する世論調査」によると、国民の57.4%が犯罪被害者等の支援を行っているボランティア活動に協力したいと考えている。その一方、身体犯被害者や遺族の約35%が「近所の人や通行人に変な目で見られた」ことがあり、そのうちの約80%がそれらを事件の被害の一部だと考えている実状がある(注1)。半数を超える国民が、犯罪被害者等支援に対して積極的な意志を持っていながら、現実の社会は、必ずしも犯罪被害者等にとって平穏に暮らしやすい環境とは言い難い状況にある。

この不一致については、犯罪被害者等からの要望によれば、国民が持つ犯罪被害者等に対する誤解や偏見、犯罪等による被害の深刻さや命の大切さに対する理解不足、犯罪被害者等が必要とする事項に対する知識の不足等がその根底にあると考えられる。

現状について、国民が、犯罪被害者等に接し、犯罪被害者等の置かれている状況やニーズ等を知る機会に乏しいとの指摘がある。また、民間の調査(注2) では、小・中学生・高校生の5人に1人が「人は生き返る」と回答しているなど、犯罪等による被害の深刻さや命の大切さに対する理解が十分でないこともうかがえる。

(注1) 辰野文理「2次的被害の認識」宮澤浩一・田口守一・高橋則夫編『犯罪被害者の研究』(第1部第1章「犯罪被害の心理」第4節) 成文堂、1996年、pp66-70による。
(注2) 中村博志日本女子大学教授(肩書は当時)らによる「児童の健全育成における青少年の生きる意識についての調査研究」より(財団法人こども未来財団平成15年度児童環境づくり等総合調査研究事業報告書pp17-21を参照。)。

[基本法が求める基本的施策]

基本法第20条は、国及び地方公共団体に対し、

を通じて、

について国民の理解を深めるよう必要な施策を講ずることとしている。

[犯罪被害者等の要望に係る施策]

犯罪被害者団体等からは、
<1> 教育活動を通じた理解の増進
<2> 広報・啓発活動の実施
<3> 犯罪被害者等の置かれた状況等についての国民理解の増進
<4> 犯罪被害にまつわる偏見のない社会の形成
<5> その他、社会における配慮の促進
<6> 報道機関等における配慮
<7> その他の必要な施策
に関する種々の要望が寄せられている。

[今後講じていく施策]

(1) 学校における生命のかけがえのなさ等に関する教育の推進

ア 文部科学省において、学校教育の中で、自他の生命のかけがえのなさ、誕生の喜び、死の重さ、生きることの尊さなどを積極的に取り上げる教育を推進するため、「児童生徒の心に響く道徳教育推進事業」を実施し、教材の開発などの実践研究を進め、成果の普及を図る。【文部科学省】

イ 文部科学省において、かけがえのない生命について考えさせるなど道徳の内容をわかりやすく表した「心のノート」のすべての小・中学生への配布を進める。【文部科学省】

(2) 学校における体験活動を通じた命の大切さの学習についての調査研究の実施及びその成果の普及

文部科学省において、児童生徒の社会性や豊かな人間性を育むため、「豊かな体験活動推進事業」を実施し、学校における自然体験活動や社会奉仕体験活動の充実を図る中で、命の大切さを学ばせることに有効な体験活動について調査研究を実施し、その成果を取りまとめ、全国の教育委員会や学校に普及する。【文部科学省】

(3) 学校における犯罪被害者等の人権問題も含めた人権教育の推進

ア 文部科学省において、人権教育及び人権啓発の推進に関する法律(平成12年法律第147号)に基づき、犯罪被害者等の人権問題も含め、学校教育及び社会教育における人権教育の一層の推進に努める。【文部科学省】

イ 文部科学省において、学校教育について、自分の大切さとともに他の人の大切さを認めることができるような児童生徒の育成を目指した人権教育の指導方法等に関する調査研究の成果(平成16年6月に第一次とりまとめを公表)を普及するとともに、更に検討を進める。【文部科学省】

(4) 学校における犯罪抑止教育の充実

文部科学省において、平成16年度に警察庁と共同で作成し、教育委員会等へ配布した、犯罪被害者等の体験談を取り入れた学習の事例等を含む非行防止教室等プログラム事例集の活用を教育委員会へ促すなど、犯罪抑止教育の充実を図る。【文部科学省】

(5) 子どもへの暴力防止のための参加型学習への取組

文部科学省において、子どもがいじめ・虐待・暴力等から自らの身を守るための態度やスキル等を育成することを目的として、被害者となることを防止するための教育について、地域の実情に応じた取組がなされるよう教育委員会に促す。【文部科学省】

(6) 家庭における命の教育への支援の推進

文部科学省において、家庭における命の教育への支援を推進するため、命の大切さを実感させる意義などを記述した子育てのヒント集として「家庭教育手帳」を作成し、小学生等を持つ全国の保護者全員に配布することにより、子育て講座等での学習の充実を図る。【文部科学省】

(7) 生命・身体・自由の尊重を自覚させる法教育の普及・啓発

法務省において、学校教育を中心として法教育の普及・啓発を促進し、法や司法によって自らを守り、他者を等しく尊重する理念を体得させることを通じ、他者の生命・身体・自由などを傷つけてはならないことを自覚させることにもつながるよう、文部科学省、最高裁判所、日本弁護士連合会等の協力を得て、平成17年5月に発足した法教育推進協議会を通じた取組に努める。【法務省】

(8) 「犯罪被害者週間」にあわせた集中的な啓発事業の実施

内閣府において、警察庁、総務省、法務省、文部科学省、厚生労働省及び国土交通省の協力を得て、「犯罪被害者週間(11月25日から12月1日まで)」を設定し、当該週間にあわせて、啓発事業を集中的に実施する。【内閣府】

(9) 犯罪被害者等施策の関係する特定期間における広報・啓発事業の実施

ア 内閣府において、全国交通安全運動の期間を中心に、各種の啓発事業が交通事故被害者等の視点も踏まえ展開されるよう努める。【内閣府】

イ 法務省において、人権週間を中心に、様々な広報媒体も通じつつ、犯罪被害者等の人権問題に対する配慮と保護を求めるため講演会・研修会等の啓発活動を実施する。【法務省】

ウ 厚生労働省において、児童虐待の範囲、現状やその防止に向けての取組を広く国民に周知させるため、様々な媒体を活用した広報活動を行うとともに、11月の児童虐待防止推進月間に、ポスター等の作成及び全国フォーラムの開催など集中的な広報啓発活動を実施する。【厚生労働省】

(10) 犯罪被害者等の置かれた状況等について国民理解の増進を図るための啓発事業の実施

内閣府において、犯罪被害者等の置かれた状況について国民が正しく理解し、国民の協力の下に関係施策が講じられていくよう、国民が犯罪等による被害について考える機会として、毎年、東京及び複数の地域で、犯罪被害者等や、犯罪等による被害についての識見を有する者、犯罪被害者等の援助等に携わる者等とその他の国民が一同に会し、犯罪被害者等に係る様々なテーマを議論する啓発事業を開催するとともに、事業の結果について、インターネット等で国民向けに情報提供を行う。【内閣府】

(11) 様々な広報媒体を通じた犯罪被害者等施策に関する広報の実施

ア 内閣府及び警察庁において、総務省、法務省、文部科学省、厚生労働省及び国土交通省の協力を得て、政府広報等とも連携し、様々な広報媒体を通じて、犯罪被害者等の置かれた状況やそれを踏まえた施策実施の重要性、犯罪被害者等の援助を行う団体の意義・活動等について広報する。【内閣府・警察庁】(再掲:第4、3.(4))

イ 警察において、各都道府県警察が民間被害者支援団体等と連携し、マスコミ広報、街頭キャンペーン、各種討論会の開催、各種会合での講話等を実施することにより、犯罪被害者等が置かれている実態や警察、関係機関、民間被害者支援団体等が取り組んでいる犯罪被害者等支援についての広報啓発活動を一層促進する。【警察庁】

ウ 警察庁において、広報啓発用の冊子「警察による犯罪被害者支援」の作成、ウェブサイト上での警察の犯罪被害者等支援策の掲載等により、犯罪被害者等支援に関する国民の理解増進に努める。【警察庁】

(12) 交通事故被害者等の声を反映した国民の理解増進

ア 警察において、交通事故の被害者や遺族等の手記を取りまとめた冊子やパンフレット等を作成し交通安全講習会で配布することや、交通安全の集い等における被害者等の講演を実施し、交通事故の被害者等の現状や交通事故の惨状等に関する国民の理解増進に努める。【警察庁】

イ 警察において、各都道府県警察での運転者に対する各種講習において、交通事故の被害者等の切実な訴えが反映されたビデオ、手記等の活用や、被害者等の講話等により被害者等の声を反映した講習を実施していく。【警察庁】

(13) 国民の理解の増進を図るための情報提供の実施

内閣府において、犯罪被害者等や犯罪被害者等の援助に精通した有識者等を招き、関係省庁の職員を対象とする「犯罪被害者等施策講演会」を開催するとともに、その概要をインターネット等で国民向けに情報提供する。【内閣府】

(14) 調査結果の公表を通じた犯罪被害者等の置かれた状況についての国民理解の促進

ア 内閣府において、犯罪被害類型別・被害者との関係別に行う、犯罪被害者等の置かれた状況や当該状況の経過等に関する基礎的な事項を把握するための継続的な調査(上記第4、2.(3))の結果を、統計処理の上、実例等も参照する形で公表し、様々な犯罪被害者等の置かれた状況についての国民レベルの基礎的な理解を促進する。【内閣府】

イ 内閣府において、犯罪被害者等の置かれた状況等に関する国民の理解の程度や必要な配慮の程度、心無い言動等からくる二次的被害に対する認識等について、研究調査を行い、その結果を、青少年に対しては、利用しやすい教材等の形に加工し広く提供するとともに、成人に対しては、統計処理後の公表物の形で啓発に利用する。【内閣府】

(15) 学校における犯罪被害者等である児童生徒への的確な対応のための施策の促進

ア 文部科学省において、学校の教職員が犯罪被害者等である児童生徒の相談等に的確に対応できるよう、犯罪等の被害に関する研修等を通じ教職員の指導力の向上に努めるとともに、スクールカウンセラーや「子どもと親の相談員」の配置など教育相談体制の充実等に取り組んでいく。【文部科学省】(再掲:第4、1.(17)及び第4、2.(13))

イ 文部科学省において、犯罪被害者等である児童生徒に対する心のケアについても、大学の教職課程におけるカウンセリングに関する教育及び教員に対するカウンセリングに関する研修内容に含めるなどその内容の充実を図るよう促す。【文部科学省】(再掲:第2、1.(18)ウ)

ウ 文部科学省において、虐待を受けた子どもへの対応の問題を含め、養護教諭が行う健康相談活動の進め方等についてまとめた参考資料も活用しながら、養護教諭の資質の向上のための研修の充実を図る。【文部科学省】

エ 文部科学省において、「臨床心理士の資質向上に関する調査研究」の中で、犯罪被害者等に対する支援活動についての調査研究を実施し、その結果に基づき、財団法人日本臨床心理士資格認定協会等に働きかけ、犯罪被害者等に関する専門的な知識・技能を有する臨床心理士の養成及び研修の実施を促進する。【文部科学省】(再掲:第2、1.(12))

(16) 犯罪被害者等に関する個人情報の保護

警察による被害者の実名発表、匿名発表については、犯罪被害者等の匿名発表を望む意見と、マスコミによる報道の自由、国民の知る権利を理由とする実名発表に対する要望を踏まえ、プライバシーの保護、発表することの公益性等の事情を総合的に勘案しつつ、個別具体的な案件ごとに適切な発表内容となるよう配慮していく。【警察庁】(再掲:第2、2.(2)エ)

(17) 犯罪被害者等に関する個人情報の保護に配慮した地域における犯罪発生状況等の情報提供の実施

警察において、被害者が特定されないよう工夫した上で、ウェブサイト上等に性犯罪を含め身近な犯罪の発生状況を掲載するなどにより、都道府県警察が地域住民に対し、住民自らが積極的に防犯対策を講ずる契機となりうるような情報提供に努める。【警察庁】

(18) 交通事故の実態及びその悲惨さについての理解の増進に資するデータの公表

警察において、国民に対し、交通事故の実態やその悲惨さについての理解の増進が十分に図れるよう、事故類型や年齢層別等交通事故に関する様々なデータを公表し、その実態等について周知を図る。【警察庁】

▲ このページの上へ



警察庁ホーム > 犯罪被害者等施策 > もっと詳しく知りたい:犯罪被害者等基本計画 > 犯罪被害者等基本計画