犯罪被害者等に関する青少年向け啓発用教材
「私たちに出来ること ―痛みをうけとめるために ともに生きるために―」

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インタビュー

山上皓さん大久保恵美子さん阿久津照美さん

「『犯罪被害者支援』って何ですか?」

NPO法人 全国被害者支援ネットワーク 理事長 山上 皓さん
NPO法人 全国被害者支援ネットワーク 理事長 山上 皓さん 東京医科歯科大学教授。精神科医でもある山上皓さんにとって、連続幼女殺人事件(1988~89)発生後、アメリカに調査に行った際、犯罪被害者支援の充実ぶりを目にしたことが、この問題に関わる最初となった。また帰国後、この小冊子でも紹介した大久保恵美子さんと出会ったことも国内における犯罪被害者支援に動き出すきっかけとなったという。1992年、自身の研究室の一角に「犯罪被害者相談室」を設置し、これが後に現在の被害者支援都民センターへと発展した。

支援団体はどんな活動をしているのですか?

犯罪被害者の方たちは非常に傷つきやすく、もろくなっています。その支え方もなかなかむずかしいところがある。ですからある程度トレーニングを積んだ方たちのほうが有効な援助ができます。 援助にあたっては、とくに事件発生直後が大切なので、早期の援助に取り組む体制をつくってきています。事件の発生を最初に知るのは警察ですが、都道府県公安委員会から「犯罪被害者等早期援助団体」の指定を受けた団体が、警察と連携して駆けつけられるようになりました。現在は全国で13団体が、「早期援助団体」の資格をもって活躍しています。

そうした援助は、どこで犯罪にあっても受けられるのですか?

現状としてはなかなかそうはいかないのがむずかしいところです。援助の内容やレベルは様々で、予算が足りず人材も整わないところもあれば、豊かで大きなところもあります。民間の団体としては、1998年に、全国8団体で「全国被害者支援ネットワーク」として連携するようになりました。そして、全国どこで被害者が生まれても同じ支援ができるようにするという目標をもって、各都道府県に支援団体をつくり、いま努力しているところです。ある県で生じた事件の裁判所が、あるいは家族の実家が遠方にあったりすれば、そこの団体と協力するようなこともあります。 全国被害者支援ネットワークでは、全国の組織がきちんと十分な援助ができているかどうか検証したり、全国一体で行う被害者支援のキャンペーンもやっています。そうした活動で、犯罪被害者等基本法制定にも貢献できたと考えています。

犯罪被害者等基本法について教えてください。

犯罪被害者等基本法というのは、制定の過程でこの問題に関心をもつ国会議員が非常に熱心に取り組んでくれたものです。被害者支援にかかわる人々の意見をできるだけくみ上げて、それが実現されるように方向付けまでして出された、非常にすぐれた法律だと思います。 その基本法の第3条には「基本理念」があり、「第一に、犯罪被害者はその個人としての人権を尊重され、それにふさわしい処遇を受ける権利を有する」と書かれています。この「権利を認める規定」に沿って従来の制度を振り返ってみると、いろいろなところが変えられなければならないことがわかります。基本法の精神の下、いま、これまでの制度や仕組み、その全体について、国の取り組みが変わってきているところなのです。 基本理念の第二、第三の項目としては、「犯罪被害者等への支援は、状況に応じて適切に講じられること」、「それが被害者の回復に至るまで続けられること」と決められています。この基本理念を実現するよう、社会が被害者を支援すれば、事件がどこで起こっても、被害者は等しく必要な援助を受けられます。その回復につながるところまで、社会は支える義務があるわけです。

私たちにもできる支援はあるのでしょうか?

大切なことは、「ひとりにしない」ことです。孤立しているなかでしだいに気持ちが曇り、病んでいくことが多いのです。わかってくれる人、気持ちが通じる人、理解してくれる人がそばにいるということは大きな支えになります。

助けるつもりがかえって傷つけることになるのではないかと心配ですが?

ひとりひとりの被害者によって、傷つき方も、立ち直り方も、支援する人との関係も違います。また確かに被害にあった方は、過敏になったり、感情的になったり、一時的にふだんとちがう状況を見せます。専門家の支援がきちんとついているなら、どんなふうにしているのか、学びながら支えるのもいいかもしれません。いずれにしても、そういう被害者の方たちのことを心から思って、温かい気持ちでそばにいれば、それは傷ついた被害者の方たちにも通じることだと思います。

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