京都大会:活動紹介

京都府における被害者支援に係る活動紹介

内藤 みちよ(京都府犯罪被害者支援コーディネーター)

 この度、京都大会の開催で京都の活動報告をする機会を与えられましたコーディネーターの内藤です。サポートチームの業務内容を紹介させていただくに当たり、単なる業務報告だけでなく、御縁あって発足以来、サポートチームの活動に関わってきた経験を交えてお話ししようと思います。

 平成20年1月30日、府、市町村、国や警察などの公的機関のほか、民間機関・団体を含めた犯罪被害者等への総合的な支援のためのネットワークシステムである「京都府犯罪被害者サポートチーム」が立ち上がりました。

 サポートチームの3つの特徴は、ネットワークの構築、京都府犯罪被害者支援コーディネーターの配置、犯罪被害者のための専用電話の設置です。平成20年1月の発足時は、当時の事務局担当者の言葉を借りると、「木製看板1枚と専用電話1本」からスタートした状態でした。私などは当初、具体的に何をしていいのか、既に活動されていた京都犯罪被害者支援センターさんとの違いもよく分かっていませんでした。業務内容も当初から具体的に決まっていたのは、専用電話相談と研修計画ぐらいなもので、そこから手探りで皆で作り上げてきたものでした。

 サポートチーム発足に先立つ準備期間に、幾つかの研修が実施され、そこで後にコーディネーターとして御一緒することになった岩城さんと私は初めて顔を合わせることになったのでした。そのときの研修内容は、前半に息子さんを犯罪被害によって亡くされた御遺族で、社会福祉士でもある岩城さんが「被害当事者のお話」をされ、後半は臨床心理士の私が「被害者の心理的理解」という話をする構成になっていました。初めてのコラボでしたが、私たちは同じように相互尊敬と信頼感が持てたのでした。当時の企画者からは、「コンビ結成だね」と言われました。具体的な体験談が先にあったことで、専門的な話により現実味が帯びたと私が感じたと伝えると、岩城さんも、当事者といっても自分の話は個別過ぎなのではないかという不安があったが、後から専門的に援護してもらえたようでうれしかったとおっしゃったのでした。そして、このスタイルが被害者理解のための研修には有効ではないかということになり、以後、基本スタイルの一つとして研修に取り入れられることになったのでした。

 発足当初に我々が行ったのは、まず府下26市町村現場の担当者のところへ直接出かけて、顔を突き合わせてお話を伺うことでした。府警から派遣で2年ごとに就任される事務局担当者とコーディネーターの岩城さんと私の3人は、特別な会議形式の時間はなかなかとれないので、移動中の車中や食事をとりながら、合間を見つけては寸暇を惜しんで話し合ってきました。そこに当事者、警察、臨床心理士という三者の立場が入っていたことは、とても重要だったと思います。窓口回りに始まる初期の体験は、被害者支援において最も重要な支援者の基本姿勢に通じるものがあると、研修などでいつも強調しています。

 つまり、顔の見える関係作りを大切にすることと、支援は「知ることから」始まる。自分は「分からない、知らない」のだということを自覚し、何とか知ろうとすること、そのために相手の話を聞き、現状を直接見聞きすることが重要だと考えます。被害者支援に何ができるかと問われるなら、まず知ること、被害者の話を聞くという支援があると答えています。

 しかし、当時まだまだ今以上に人手不足や周知不足の状態だったこともあってか、「被害者がいらっしゃらない」という言葉をよく耳にしました。実際、その地域で事件は起こっているのに「被害者がいない」というのは、私たちが「知らない」ということなのだと強く感じ、広報の重要性や、関心を持つことから見えてくる実際を研修では強調することの重要性に気付かされました。

 行政担当者への研修は、こうした経験に基づく試行錯誤を重ねるとともに、警察署、支援センターや保護観察所などの各関係機関の参加を得て、一緒に研修することが、顔の見える連携と、より実践的な研修ニーズを知ることにつながったと思います。また、平成26年4月に、府下全市町村で条例が施行されましたが、事例研修を通して条例制定への情報提供や刺激、支援の場になった面もあると思います。

 最近の研修の基本スタイルは、年間2回実施で、前期に当事者の話を聞いていただく形やシンポジウムの形式などでの全体会、後期では北部と中南部の2カ所に分けた開催で、事例に基づくグループ討議など、より実践的な内容から構成され、担当者が顔を合わせる機会としても重要な場になっていると考えています。

 また、そのほかのサポートチームの活動も発足時から進化発展しています。平成23年度からは、府下の公立、私立を含む中学、高校の生徒や教職員、保護者を対象とした啓発事業として、「いのちを考える教室」が毎年開催されるようになりました。これは、まず被害当事者のお話を聞いてもらい、続いてアフターケアのお話と、警察や支援センターのお話などを入れ、後刻、教室に戻ってから感想文を書いてもらう短時間パターンと、講演などの後半にグループディスカッションを入れる長時間パターンなどがあります。こうした啓発活動は、昨今では全国的に展開されているようですが、京都府が開始当初から最も大切にしているのは、開催を希望される学校へ事前に事務局が赴き、その学校の理解、教育理念、在校生徒や学校史上の事件体験の有無などの確認や要望を伺うとともに、事前・事後の学習をしていただくことです。実施回数を増やすことを目的とするのではなく、犯罪被害者への理解がじっくり理解が浸透することや、お話をされる当事者の負担、二次被害への配慮を図ることも重視しております。その成果か、ありがたいことに毎年実施を希望される学校は少なくありません。

 さらに、平成25年7月に「京都府大規模事件・事故地域ケアチーム」の発足があります。事件や事故の重大性に大小はつけられませんが、規模の大きさは、個人的ケアを想定した体制では対応しきれません。京都府では、平成24年に祇園や亀岡での交通事故による重大被害事件など切実な経験があり、ケアチームの必要性が高まる背景がありました。奇しくも平成25年8月の福知山花火大会爆発事故が発生し、「福知山花火大会爆発事故地域ケアチーム」が設置され、初出動することになりました。日頃の研修会などでの顔つなぎや個人的つながりをベースにしつつ、現地への先遣隊派遣以降、府と市の合同協議会を持ち、相談体制づくりの支援など後方支援の重要性を思い知らされました。

 行政では、年度で担当者が替わったり、条例内容に相違がありますが、被害者が場所や担当者によって、同等の支援が受けられないなどの不利益は「二次被害」だと思います。支援内容や質の均一化は不可能でも、平均値ではなく最低値を底上げするには、行政窓口対応が充実することや、学校教育の中に被害者理解が浸透することがとても重要だと思います。

 我々は、これまでの研修や啓発事業で少しずつではありますが、手応えを感じております。そして、これからも京都府のサポートチームは上位機関として指導するのではなく、被害者の居住する現地行政や地域への協働的サポーターとして、当事者が中心にいる同心円を何重にも築く「支援者の支援」の環を広げつなぐことに貢献できるよう、更なる努力と研鑽を積みたいと思います。

 最後に、今回のテーマでもある「途切れない支援」のために、我々の発足以来の活動経験から提案させていただきます。支援者間で支援経験や意識と関心をいかにつなぎ、途切れさせないかということは、本当に重要だということです。そして、それを理解し実現するには、日頃から支援者同士が、できるなら当事者を含めて何度も何度も話し合い、知り合う様々な機会を持つことが重要だと思います。そして、そういう機会をコーディネートする役割の存在が常設されていることも重要ではないかと思います。

 以上、短時間の制約の中で、随分端折った拙い報告になってしまったと思いますが、まとめるに当たり、改めて人は被害者も支援者も、自分は1人ではない。話せる相手、分かり合える仲間がいるんだという実感が、人を強くしてくれるのだなあとつくづく感じました。そして、施策や制度を使うのも人、人によって傷ついた被害者が最も必要とされているのは支援者という人なのだと思いました。

 御清聴ありがとうございました。

冨名腰 由美子((公社)京都犯罪被害者支援センター事務局長)

 皆様、こんにちは。京都犯罪被害者支援センター事務局長の冨名腰と申します。

 当センターは、今年の5月27日で設立から17年目を迎えました。平成10年、任意団体として理事9名、ボランティア17名で電話相談から始まりました。今では、平成23年に京都市の犯罪被害者総合相談窓口として業務委託を受け、公益社団法人となり、電話相談だけではなく、面接相談や直接支援を行っています。

 当センターは、犯罪被害者等早期援助団体と申しまして、京都府の公安委員会から指定をされて、警察から被害者にまつわる情報を頂ける団体として認められています。電話相談で当初は待つばかりでありましたけれども、早い段階からその情報に基づいて必要な支援の体制に入れるという団体として指定され、これまで累計で情報提供件数は160件を超えました。

 当初から行っている電話相談は月曜日から金曜日までの午後1時から6時まで、ボランティアによって相談をさせていただいています。電話番号は2つあり、当初からありますのが075-451-7830、京都府の補助を受け設置されましたダイヤルが0120-60-7830でフリーダイヤルとなっています。

 平成23年、京都市が犯罪被害者の支援に特化した条例を制定したことにより京都市の業務委託を受け、その条例にうたわれている犯罪被害者の優先入居、通訳の派遣、経済的な支援などのサービスを受け付けています。

 この2つの番号を合わせ、平成26年度では681件、相談をさせていただきました。中でも多い相談内容は、傷害事件、交通犯罪、性犯罪です。これらのほかにも、近隣のトラブル、いじめの問題や経済的な被害に関わるものもお電話頂いていますが、私どもでできる限りのことはお受けして、相談に応じています。

 さらに、電話相談にかかってきた内容の中で、カウンセリングを希望される方、弁護士につなぐ必要があると思われる方など次のステップが必要な場合には、一度センターに来ていただき面談をした上で、実際に必要なこと、当センターでできること、他の機関に御依頼しないといけないものなどを整理して、一緒に考えるようにしています。

 これが初回の面接で、このほか面接相談にはカウンセリングや、法律相談、私どものボランティアの相談員がお話を伺うことも入っています。さらに、その初回の面接によって、カウンセリング、弁護士による法律相談、さらに裁判などへの付添いなどすることを直接支援と言います。

 裁判になっても、実際に自分自身は裁判に行けないという方のためには、どういうことを聴いてきてほしいかということを最初に伺っておいて、代理傍聴をして、その報告をするということも行っています。

 面接相談は、平成26年度では134件ありました。付添いなどの直接支援は、平成26年度は314件ありました。相談や支援業務はトータルで、平成26年度は延べ1,129件です。

 あるとき、孫娘さんが性被害を受けたおじいさん、おばあさんからお電話を頂きました。電話相談から始まって、初回面接、その後、法律相談、裁判の付き添いなどをしたことがあったのですが、今年になってこのおばあさんが電話をしてこられました。事情があっておじいさん、おばあさんがお孫さんたちを育てており、その被害に遭った方のほかに御兄弟もありました。近況として、その被害に遭われた御本人が、学校を無事に卒業して社会人になったということと、その下におられた御兄弟も無事にそれぞれ進学し一区切りついてほっとしたとの御報告を頂きました。私たちもそれによって安堵し、思い出してお電話頂けたというのが、何よりの励ましになったと思っています。

 被害に遭った後、被害者や御遺族が抱える困難というのは様々で多岐にわたります。また、時間経過とともに、関わる機関も変わってまいります。当初は警察の方が事情を聞いたりしますけれども、いつまでも関わるということは困難です。そこに当センターのような民間の支援センターが関わり、適切な機関へつなぐ役割をし、そこに行くときに付き添いをする、このようなことを大切に考えています。

 被害者や御遺族が暮らしを取り戻すためには、誰か1人、どこか一つの機関だけで支えることは不可能です。様々な人や様々な機関が関わり、元通りにはいきませんが、暮らしを取り戻すということになります。

 私ども支援に関わる者でも、時にどうしてよいか分からないこと、困ったり迷ったりすることがありますが、そんなときには専門家にアドバイスを受けながら支援を進めています。それから、一番大事なことは、二次被害を与えてはいけないということですので、そのために毎月、研修を行っております。

 また、京都府では、全市町村で犯罪被害者支援に特化した条例ができており、行政の中に支援の担当者窓口があります。私どももその行政の担当者、警察署の方々と密接なつながりを持って、具体的な事案が起こりましたら、相談や連絡をしながら支援し、日頃から顔の見えるようなつながりを大切にしています。

 事件や事故は突然に起こります。被害者にならないとは絶対に言えません。私には関係ないとは本当に言い切れないことです。被害に遭うということは、社会や人に対する信頼を壊されることで、人間関係をもう一度作り直すことが強いられると言われています。御遺族は、人から傷つけられた心は、やはり人によって癒されるしかないとおっしゃっています。

 また、私どもが加盟しております全国被害者支援ネットワークの研修において、交通事故死された息子さんのお母さんが、ただただ黙って自分の話をずっと聞いてくれた民間支援センターのボランティアの存在がとてもありがたかった、精神的な回復の一歩になったということを言われました。専門家が出る場面は出てきますけれども、最初にそのように聞いていただくボランティアの方がありがたかったということです。これが私ども市民ボランティアによる支援の意味であり、原点であると感じました。

 当センターは、現在では、正会員や賛助会員の方、賛助会員の団体・法人による会費によって支えられ、御寄附や、公的な補助金や助成金を頂きながら運営しており、支援は無償のボランティアが携わっています。京都府の北部においてもこのような支援が展開できるように、平成28年度には北部での拠点を設けることが決まっており、そのためのボランティアは、舞鶴市や福知山市を中心に、現在養成を進めているところです。

 まずは被害者の置かれた実情をよく知っていただき、そして被害者支援というものに関心を持っていただきたいと思っています。さらに、当センターへの関心もお持ちいただけたらありがたいです。今後とも御理解と御支援をよろしくお願い申し上げます。

警察庁 National Police Agency〒100-8974 東京都千代田区霞が関2丁目1番2号
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