京都大会:主催者挨拶

内閣府犯罪被害者等施策推進室長 安田 貴彦

 ただいま御紹介をいただきました内閣府犯罪被害者等施策推進室長の安田でございます。本日は、御多用にもかかわらず、またお足元の悪い中、大勢の方々にお集まりをいただきまして、誠にありがとうございます。私自身昨年1月まで京都で勤務をさせていただきまして、こうして京都で私ども主催の行事を開催することができますことを大変嬉しく思っております。

 犯罪被害者週間京都大会の開会に当たり、主催者として一言御挨拶を申し上げます。

 我が国における最初の犯罪被害者のための法制度である犯罪被害者等給付金支給法が、現在の同志社の大谷實総長などの御尽力もありまして、昭和55年に制定され、本年で35年を迎えました。また、平成16年12月に犯罪被害者等基本法が成立し、11年となります。この間、政府は第1次、第2次の犯罪被害者等基本計画に基づき、犯罪被害に遭われた方々のための施策を総合的、計画的に推進してまいりました。目下、私ども内閣府が事務局となり、来年度からの第3次の基本計画の策定に向けた検討を進めているところでございます。

 この11年で、各方面の御努力により我が国の犯罪被害者等施策の内容は年々充実したものとなり、また地方公共団体においても犯罪被害者等のための支援体制の整備が進んでおります。特に、ここ京都府におきましては、全市町村に犯罪被害者等支援条例が制定され、また犯罪被害に遭われた方々が暮らす地域において、いつでも必要な支援が受けられるよう、自治体、警察、民間被害者支援団体等が相互に連携をし、犯罪被害者支援に取り組んでいただいております。山田知事を先頭に、全国的に見ても非常に充実した被害者等施策を展開していただいていることに対し、心からの敬意を表したいと思います。

 しかしながら、このような各種施策がより実効性を持ち、犯罪被害に遭われた方々が被害から回復し、再び平穏な生活を営めるようになるためには、国や地方公共団体による施策もさることながら、国民の皆様の御理解と御配慮、そしてそれに基づく御協力が不可欠であります。そのため、政府では毎年11月25日から12月1日までを犯罪被害者週間として、国民の皆様に犯罪等による被害について考えていただく機会として呼び掛け、このようなシンポジウム等を各地で開催しております。

 本日の京都大会は、少年犯罪の被害者及びその御家族等に対する途切れのない支援について考えるプログラム構成とさせていただいております。

 ここで本日、私から皆様に三つの点について御理解をいただきたく、お願いを申し上げます。その一つは、「被害者の問題は、私の問題である」ということでございます。先進国の中では最も安全と言われ、犯罪や交通事故も減少傾向にある我が国におきましても、皆さんや皆さんの御家族が一生、犯罪等と無縁で過ごすことは難しいというのが残念ながら現実でございます。また、本日お話をいただく土師さんの事件等も、私もかつて直接、間接にそれらの事件の捜査や支援に関わってまいりましたが、そこで思うことは、犯罪は、被害者の方のそれまでの生活や生き方とは無関係に、ある日突然降りかかってくることがあるということでございます。それが犯罪被害であるということでございます。

 そうした被害についてのお話は、大変重く、また目を伏せたくなるようなこともあるかもしれませんが、どうかこれは御自身にも起こり得ることである、自身や家族あるいは近しい方々が犯罪被害に遭ってしまったら、と想像をされながら、犯罪被害者等の置かれている状況を御自身の問題として御理解いただければと思います。

 二つ目は、ここでお聞きになったお話で、皆さんが共感をされた部分のお話だけでも結構でございます、是非1人でも多くの方にお伝えをいただきたいということであります。御来場の皆様は、犯罪被害者支援について既に御理解をされている方ばかりと存じ上げますが、日本社会全体から見れば、まだまだ被害者問題についての理解は十分とは申し上げられません。それどころか、いまだに誤解や偏見もあり、そのために声を上げたくても上げられない被害者も大勢いらっしゃいます。1人でも多くの被害者の方々に支援の手を差し伸べ、社会全体で被害者を支え、被害者にとって生きるに値する社会を築くため、どうか皆さんが家庭や職場、学校、地域において、今日のこの会を話題にしていただき、被害者に対する理解を広めていただきたいのであります。

 そして、最後に三つ目のお願いですけれども、本大会を是非小さな一歩につなげましょうということでございます。社会全体で被害者を支えようと言われておりますが、社会とは我々一人一人でできているわけでありまして、一人一人が小さくてもできることを実践するということが、社会全体で被害者を支えるということだろうと思います。先ほど申し上げた周りの方々にお話をしていただくというのもその一つかと思います。あるいは、今日もお話いただくボランティア団体でございます京都被害者支援センターに、少しでも御寄附をなさっていただくということも大切な支援になろうかと思います。

 また、インターネットで「内閣府、犯罪被害者」と検索をしていただければ、私どものFacebookが出てまいります。それに「いいね!」としていただければ、最新の被害者等施策について皆さんのお友達にも伝わりますし、私どもも元気を出して仕事ができるということになるのかなと思います。また、学生の皆さんもいらっしゃることかと思いますけれども、例えば被害者支援センターに問い合わせるなどしていただければ、こうしたイベントのお手伝いなどもしていただけることかと思います。

 さらには、自治体や警察などでお仕事として被害者に関わる方々は、大変な力をお持ちであります。そうした方々が、「もし自分が被害者の立場だったら、被害者は私に何をしてほしいと考えるだろうか」という思いを持ってお仕事をしていただければ、きっと大きな支えになることだろうと思います。「自分の問題として受け止める」、「人に伝える」、そして「小さな実践を始める」という、3点を是非どうかよろしくお願いを申し上げます。

 最後になりましたが、基調講演やパネルディスカッションなどで御登壇をされる皆様方、さらにはミニコンサートを行っていただく皆様を始め多くの方々に御協力をいただいていることに関し、心より感謝を申し上げて、私の挨拶とさせていただきます。ありがとうございました。

京都府知事 山田 啓二

 犯罪被害者週間京都大会を開催いたしましたところ、本当に大勢の皆様にお集まりいただきまして、改めて心から御礼を申し上げたいと思います。

 今、安田室長から、この週間の意義、そして様々な取組について御説明がありました。京都におきましては、犯罪の発生状況はかなり改善をされ、私が京都府知事に就任した平成14年は、6万4,000件を超える犯罪がありましたが、昨年は39年ぶりに3万件を下回り、2万8,000件台まで減少しました。そうした面では、皆様の甚大なる御協力も頂いて、安心・安全な京都をつくることについて、一定成果を上げることができたと思っております。

 しかしながら、犯罪の種類をみますと、一番減っているのは窃盗で、あまり減っていないのが詐欺や性犯罪であり、単に物が盗まれたということではなくて、被害者の方の心を深く傷つけてしまうような犯罪はあまり減っていないというのが現状ではないか、と私は思っています。しかも、最近はインターネットとか、いろいろ便利なものが出てまいりましたので、犯罪の手口も巧妙になっており、場合によってはリベンジポルノのような形で、裸の画像データがネットに流出、たくさんの人の目に触れて被害が拡散するなど、非常に陰湿な犯罪が行われるようになりました。それだけに、私たちは今まで以上に犯罪被害者の皆さんに寄り添って、「切れ目のない伴走支援」を続けていかなければならないと考えているところであります。

 京都府では、犯罪被害者の方々への支援を盛り込んだ条例を平成16年に制定いたしました。そして、本年8月には、京都性暴力被害者ワンストップ相談支援センター(京都SARA)を設立いたしまして、ワンストップで性暴力により被害を受けた方々に、長期的、総合的な支援を行う体制を設けたところであります。

 さらに、来年4月には、公益社団法人京都犯罪被害者支援センターのほうで、新たに北部地域に拠点をつくっていただけるとお聞きしており、私どもも、北部の活動をしっかりと支えていくために努力をしていかなければならないと思っているところであります。

 児童虐待も含めた弱い者が被害者になる、又は陰湿化する最近の犯罪の傾向に憂慮する一方で、多くの皆様によって犯罪被害者の方々に対する支援体制も着実に今、厚みを増すことができているのではないかと思っております。それだけに、今回のこの週間、この大会を通じまして、もう一度その意義を確認しながら、皆様とともに犯罪被害者やその御家族、御遺族に対する支援の輪を広げていきたいと思っておりますので、どうかよろしくお願いを申し上げます。

 結びに当たりまして、改めて大会に当たりまして多くの皆様に御支援、御協力を頂いたことに対しまして、心から感謝を申し上げますとともに、とにかく1人でも犯罪被害者が減る世の中をつくるために、皆様と力を合わせて頑張ることをこの場でもお誓い申し上げまして、私の挨拶とさせていただきたいと思います。本日は本当にありがとうございます。

京都府警察本部長 坂井 孝行

 ただいま御紹介いただきました京都府警察本部長の坂井でございます。犯罪被害者週間京都大会の開催に当たりまして、一言御挨拶を申し上げさせていただきます。本日お集まりの皆様方には、平素から警察行政の各般にわたりまして、格別の御理解と御協力を賜っておりまして、この場をお借りして厚く御礼を申し上げます。

 さて、最近の京都府内の治安情勢でございますが、先ほど山田知事からもお話がありましたとおり、刑法犯全体の認知件数は着実に減少してきておりまして、本年も前年同期に比べて大幅に減少を見ております。しかしながら、女性、子供を対象にした性犯罪や、高齢者を対象としたいわゆる特殊詐欺などが依然として数多く発生しているなど、依然予断を許さない状況でございます。また、交通事故でございますが、本年10月末現在では、発生件数、そして負傷者数は前年同期比で減少しておりますけれども、残念ながら死者数につきましては68人ということで、前年同期より15人増加、大幅に増加をしており、非常に憂うべき状況になっております。

 このような状況を踏まえまして、京都府警察におきましては、関係機関と連携しながら各種の対策を強力に推進しているところでございます。皆さんも御存じのとおり、ここ京都におきましては、3年前の4月に、祇園地区、そして亀岡市で多くの死傷者を出す交通事故が発生いたしました。また、2年前には福知山市におきまして死傷者57名に上る花火大会会場での爆発事故というものも起きております。これはほんの一例でございますけれども、このような犯罪あるいは事故が発生をいたしますと、それに伴って心身に深い傷を負い、あるいは大切な御家族を奪われて苦しむ方がたくさん生まれてくるわけでございます。

 そうした中で、警察は犯罪被害者と最初に接する機関でございまして、被害者にとっても最も身近な機関と言ってよろしいかと思います。その意味で、被害者が被る様々な被害の回復や軽減に大きな役割を果たすことができる機関でもあるわけでございます。

 そのような認識を踏まえまして、警察におきましては、一たび事件が発生した場合には、速やかに被害者や、その御家族等の関係者のもとに駆けつけまして、病院への付添いや刑事手続の説明を行うなど被害者の方々にできるだけ寄り添った支援に努めているところでございます。また、被害者の方々の経済的、精神的負担の軽減のために、捜査に必要な診断書料などの公費負担や、臨床心理士によるカウンセリングの実施など、被害者のニーズに応じた組織的かつ効果的な支援活動を推進しているところでございます。

 しかしながら、このような警察による支援のみでは限界があるのもまた事実でございまして、そのような観点から社会全体が被害者をサポートする環境づくりと、被害者のニーズに対応した各種支援活動を効果的に推進することを目的として、平成10年には京都府犯罪被害者支援連絡協議会が設立をされたところでございます。この協議会、結成当時は31機関・団体で構成されておりましたけれども、現在では68機関・団体までそのネットワークは広がりを見せてきております。とりわけ犯罪被害者等早期援助団体であります京都犯罪被害者支援センターでは、極めて大きな役割を果たしていただいておるところでございます。

 警察といたしましては、今後ともこのような関係機関、団体と密接に連携を図りながら、被害者支援の一層の充実に努めてまいりたいと考えております。

 本日の京都大会は、御遺族である土師様からの貴重なお話や、専門家によるパネルディスカッションが予定をされており、被害者や関係者の方々の痛み、苦しみ、被害者支援の重要性について理解を深めることができる大変貴重な機会だと思います。これを契機に、犯罪被害者の方々への理解と支援の輪が一層広がり、社会全体で被害者の方を支えていく気運が醸成されますことを切に願っております。

 結びになりましたが、本日お集まりの皆様方の今後ますますの御健勝と御活躍を心から祈念申し上げまして、私の挨拶といたします。本日はどうぞよろしくお願いいたします。

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