中央イベント:閉会の挨拶

内閣府犯罪被害者等施策推進室長 安田 貴彦

改めて、安田でございます。本日は長時間にわたりまして、またお忙しい中、犯罪被害者週間中央イベントに御参加いただきまして、誠にありがとうございます。

犯罪被害者等基本法が成立してから本日がちょうど10年ということでございます。そういった節目の日に、山上皓先生からはこれまでの犯罪被害者支援の歩みと、今後の課題についての御講演を賜りました。また、今後の課題の1つとして、潜在化しやすい被害者の支援はどうあるべきかということで、パネルディスカッションで御議論を賜りました。

このテーマ選定をさせていただくに当たって、我々内閣府の犯罪被害者等施策推進室の中でもいろいろ議論をいたしました。先ほど山上先生からもお話がありましたように、この20年、犯罪被害者等基本法ができてから10年の間に犯罪被害者に対する理解、支援といったものが随分進んできたことは事実でございます。私も度々かかわる機会を与えられてきた1人でございますけれども、しかしながらそうした中でまだまだ光が当たっていない被害者がたくさんいらっしゃるのではないだろうかということを是非この機会に考えたい、また、平成28年度からの第3次基本計画を検討していかなければなりませんので、そういった中の1つのテーマになり得るのではないかとの思いをもって、このテーマを選ばせていただいたわけでございます。

やはり、どのように声のない被害者の声を取り上げて、パネルディスカッションをしていただくかということについては、随分苦労をしました。パネリストの方々には本当に短い時間の間でお願いをして、今日御登壇をいただいたわけでございますけれども、大変実りあるお話をいただいたと思います。我々にとって非常に大きな示唆を与えていただいた貴重な機会であったと思うわけでございます。  今日のディスカッションの中でも、被害を訴えることができないいろんな被害者の属性と申しますか、子供であったりあるいは女性であったり、あるいは障害者のお話もございました。そのほかにも、例えば高齢者の方であるとか、あるいは外国人の方などにも、なかなかその被害を訴えにくいという立場の方がいらっしゃいますし、まだまだほかにもあるかと思います。

また、犯罪の類型という意味で考えても、性犯罪はその典型であろうかと思います。今日はお話が出なかったですけれども、性犯罪の中でも例えば男の子の被害というものは女性以上に、まだ隠された部分があるのではないかということも言われているわけであります。

また、言えない事情というのも様々で、今日もいろんなお話をいただきましたが、声を出す、そもそもそういった力といいますか能力を備えていないような被害者の方もいらっしゃるわけですし、あるいは被害によって声も出ないくらいの大きな心身のダメージを受けておられるという方もいらっしゃるわけであります。そのほかに、例えば社会的なタブーというようなものが支障となって声が上げられないとか、あるいは加害者との人間関係や、あるいは被害者を取り巻くいろんな社会関係とか経済関係とか、もっと言えば社会集団の中での権力関係とか、そういったものの中で言えないような被害者もいらっしゃることだろうと思います。また、今日もお話がありましたけれども、そもそも被害であるということの認識ができないというようなこともあるわけでございます。

私ども日本の国に暮らしていて、いろんな災害の被害もございますが、例えば地震などの災害でも、被害直後ですと、あまりにも甚大な被害を受けている地域については、当初何の情報も得られないということがあるわけです。情報のないところは被災していないのではなくて、情報のないところほどもっと深刻な被害を受けているということがあるわけであります。そういったものに対して、形なきを見る、あるいは声なきを聞くという姿勢で、行政も含めて支援の側にある人間や組織が、もっともっと気づきを得ていかなければならないのではないかと思います。

災害の現場では「サイレントタイム」というものを設けることは皆さんご存じかと思います。災害の現場は、救助のためにヘリが飛んでいたりとか、あるいは掘削機を使っていたりとかしてものすごく大きな音が出ているわけなのですね。そういった騒音の中に埋もれてしまって被災者の方々の声が聞こえないということがあります。そういったことで、何度か時間を置いて、全部の活動をとめて静かにしてみて、本当に小さな、かすかな、弱々しいかもしれませんけれども、本当に助けを求めている声を聞くという時間を設けているということがあります。私たちもまたそういった意味で心を澄ませて、耳を澄ませて小さな声に耳を傾ける、そういった姿勢が必要なのではないかなと思っているところでございます。

このイベントでいただいた示唆を、今後、私どもとしていろんな機会で活かしていけるように努力をしてまいりたいと思います。皆様が本日の犯罪被害者週間の中央イベントを通じて、社会全体で犯罪被害に遭われた方々を支えていく機運というものを高めていく、その一端を担っていただきますよう心からお願い申し上げまして私の閉会の挨拶とさせていただきたいと思います。

本日は本当にお忙しい中、ありがとうございました。

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