■和歌山大会:パネルディスカッション

テーマ:「犯罪被害者の現状と支援のための連携について」
コーディネーター:
 上野 和久(和歌山県臨床心理士会副会長・紀の国被害者支援センター訓練委員長)
パネリスト:
 山内 久子(秋田看護福祉大学看護福祉学部教授公益社団法人あおもり被害者支援センタ-理事)
 関根 剛(大分県立看護科学大学准教授・全国被害者支援ネットワーク理事)
 池田 義晃(和歌山県警察本部警務部警察相談課長・犯罪被害者支援室長)
 幸前 裕之(和歌山県環境生活部県民局県民生活課長)

上野: それでは、ただいまから第2部のパネルディスカッションに入らせていただきます。

約1時間、山内先生の基調講演をいただきまして、本当にありがとうございます。さまざまな心の動きが皆様にもおありになっただろうと思います。この気持ちを持ちながら、この第2部のパネルディスカッション「犯罪被害者の現状と支援のための連携について」というところにつなげていきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

このパネルディスカッションを終えた後、フロアの皆様も、私どもも含めてですが、何がしか得られるものがあればと思っております。そういった内容にしたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

流れといたしまして、まずパネラーの皆様方に、約10分余り、それぞれのテーマでお話ししていただきます。その後、それぞれのお話を通じて、より深めるご発言をいただきながら、4時半までの予定でお話を進めていきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

まず、先ほど1時間余りご講演いただいた山内先生から、青森の被害者支援センターの理事のお立場も含めて、被害者支援を受けて、被害者や被害者家族にとって役立つ支援とは何かというあたりのところを、ご経験を含めてお話ししていただければと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

山内: 山内でございます。よろしくお願いします。

今お話がありましたように、私が先ほどの講演でもお話ししましたけれども、平成7年、1995年は、まだ犯罪被害者等基本法も制定されておりませんでした。そして、被害者支援センターも青森にはない時でした。ですから、娘を殺人という事件で突然失っても、遺族としてはどこにも相談できず、そして孤立した状態で過ごすということが多くありました。これは、うちの理事長も言っているのですけれども、青森県の県民性、何か非常に困ったことがあっても、すぐ他人に相談しないで、どうしても家族の中だけでそのことを話してしまったり、あるいはそのまま心に秘めてしまったりという、そういう県民性もあるのかなという話をしていることがあったんですけれども、私もそのようなことを自分自身の体験を通して感じました。

何とか、私たち家族、先ほどの写真にも示しましたように、娘が亡くなって4人家族になりましたけれども、何とか毎日泣きながら、そして夕ご飯のときは、最後、娘の話になって、そして加害者に対し罵声を浴びせ、心のうちをそれぞれが出して、そして夕食が終わるという、そういう時期が非常に長くあったように思います。

それで、私がいろいろな体験から感じたことをお話ししたいと思います。

事件が横浜であったということで、青森県の弘前警察署で私たちは初めて、娘が亡くなったということも十分話してもらえず、先ほど言いましたように自殺ではない、あるいは部屋で倒れているというあいまいな言い方をされて、とても困惑しました。夫には「自殺ではない」、私には「部屋で倒れていた」ということでしたので、2人の言葉を総合して、もしかすれば娘はもう亡くなっているのかな、でも倒れているということは、私、看護をしている立場で、部屋に倒れている、意識を失っているとか、そういう意味でとらえる部分もありまして、生命は保たれているのではないかという一筋の望みもありました。

そういう望みを持ちながら弘前から横浜まで新幹線で参ったわけですけれども、そういうふうなそれぞれの警察署で、遺族にとって最もよい状態になるような、そういう説明をしてもらえれば、私たち、ずっと何時間も、もしかすれば亡くなっているかもわからない、いや、亡くなってはいない、その葛藤をしながら横浜まで行ったわけです。ですから、横浜の警察署からは、当然亡くなっているということが弘前の警察署には伝わっていたと思うんですけれども、それをはっきり言ってもらえなかったということが、私たちの苦しみの始まりであったように思います。

ですから、まず1つ目は、何とかそういう警察署間の連携というか連絡というのをとっていただければ、遺族としてもありがたいなと思いました。

それから、あと横浜地方裁判所でいろいろと私たちも傍聴したわけですけれども、その裁判を傍聴するために、私たちは青森県弘前から、夫婦ともまだ勤めておりましたので、その日は勤めて、そして夜行の列車に乗って翌日裁判を傍聴するということを何回か経験いたしました。しかし、突然裁判をあすは延期になりました等と言われまして、せっかく前もってとった列車の切符が無駄になったりとか、あるいは休暇をとってもそれを十分使いこなせなかったり等でしたので、何とかこのような延期や日程変更については被害者の遺族のほうにも連絡していただきたいという気持ちでいっぱいです。そういうための支援というのは、どのようにすればいいのかということを考えていかなければいけないのかと思いました。

これは、その土地で事件が起きたときというのは、余り関係がないのかもわかりませんけども、私たちの事件のように遠くであった事件の場合には、いろいろと思いがけなく、心理的にも、それから経済的にも、時間的にも負担だなということがありました。もちろん、娘が亡くなったという、悲惨さを考えると、そういうことは言っていられないという気持ちで私たちは対応したわけですけども、しかし、もっとスムーズになる方法はあるのではないかと思います。

それから、殺人事件というのは、先ほどのグラフでもお示ししましたように、年間、1995年は727件でしたけれども、大体1,000件いかないという数字です。ですから、身の回りを見渡しても、同じように殺人事件に遭った人を身内で知っているとか、あるいは友人、知人で知っているという体験をした人というのはほとんどいないと思うのです。ですから、どうしても家族内だけでそういう孤立した中で話し合うしかないという状況が続くということも知っていただきたいし、そして家族全体を支えてくれる、そういう人を紹介していただきたいなと思います。

例えば、カウンセラーとか、今は各県に支援センターがありますけれども、相談員とか、あるいは同じような事件で家族を失った遺族など、こういう人たちに、紹介をしてくれる人がいれば、また立ち直りもちょっとは早くなるのかなという気がいたします。

このようなときは、逆に親戚、知人、友人よりも第三者のほうがいいときというのもあります。というのは、きょうのように、恐らく私が友人、知人という方をここの中から探し出すことは不可能なんですけれども、逆に第三者の前だから私の気持ちを言えるということがあるのですよね。ですから、自分の友人とか知人の中には、まだ事件のことを詳しくは言ってないという現状もあります。ですから、身近な人のほうが逆に知らないということもあって、本当は理解してもらうためには、そういう人から言わなきゃいけないのですけども、やっぱり言えないという、そういう心理的なものがあります。

ですから、そういう家族全体を支えてくれる人が、親戚、知人も大事なのですけれども、第三者のほうが逆に言えるということもありますので、今言ったようなことを私からは申したいと思います。

それから、事件当時というのは非常にパニック状態、先ほどのアルフォンス・デーケン先生の12段階というのがありましたけれども、本当にパニック状態になって、何を言っているのか自分でもわからないということがありますし、あのとき何て言ったんだろうということも思い出せないということもあります。ですから、いろいろな慰めの言葉とか、大きな気持ちで私たちの言動を見守ってほしい。後で、あのときの意味がわからなかったよとか、何を言っているのかというふうなことも、何とか心に秘めて、今はこういうふうに変なことを言う時期なのかなとか、そういうふうにパニックになっている状態なのだなという、丸ごと受けとめる姿勢で私たちにかかわっていただければありがたいと思います。

ただ、私のすぐそばに住んでいます夫の姉ですけれども、夫の姉の家族は本当に私たちをいろんな意味で支えてくれました。先ほどもちょっとお話ししましたけれども、事件がわかった直後は1日に何度も訪ねてきまして、母の健康状態を気遣ってくれたり、それから私がちゃんと夕食の準備とかもできないだろうということで、おかずを持ってきてくれたりとか、どこかに行く用事がないかとか、買い物をしなくていいのかということで、こちらからお願いしなくても姉たちのほうから行ってくれて、それに私たちが甘えるという形で過ごした時期というのは、後で考えると非常にありがたいと思いました。

そして、私たちが横浜に行くとき、弘前の警察のほうではっきりと言わなかったもので、幾らかはお金を持って行ったんですけれども、まさか横浜で遺体を火葬するとは思っていませんでした。横浜の火葬、斎場では、私たち弘前にいる者にとっては考えも及ばないくらいの額のお金を支払いまして、弘前では公的な斎場でしたので、1万円以下ぐらいの値段なんですけども、本当に何十万ということで、私も夫もびっくりしました。公的なところはそうでもないと思いますけども、私的な斎場ということで。

それからあと、娘の遺体も、10月2日に亡くなって、実際に火葬したのが10月7日ということで、ちょっと傷みかけていたわけです、遺体自体が。それで、遺体を火葬して、お骨として弘前に連れていこうということに急遽なりましたので、お金も必要になりました。

それからまた何か心づけもしなければいけないみたいなことも言われまして、本当に思いも寄らない出費があることに気づきましたけれども、そういうときに姉夫婦というか、姉一家がワゴン車で弘前から横浜まで来てくれまして、お金も全く私たち、話してなかったんですけども、持ってきて、これ、使いなさいということで貸してくれました。本当にありがたいと思いました。そのお金を借りて、火葬を済ませ、お骨にして弘前まで連れて帰ったのですけども、そういうふうないろんな心遣いとかが、亡くなって直後、全く予測もしないことが次々と起こりますので、後で考えるとありがたいな、ああいうことが本当の意味の支援かなと思っております。

私が今このテーマで言えることは、そういうことが思いつくのですけれども、また後で思い出しましたらお話ししたいと思います。
以上です。

上野: はい、ありがとうございます。さまざまな観点でお話ししていただきありがとうございます。特に孤立、孤独という点が、今の話のすべてのところで関係しており、支援の一つのキーワードになるかなと思っております。

そういったことも含めまして、次のパネラーの大分県立看護科学大学准教授で全国被害者支援ネットワーク理事の関根剛先生にお願いしたいと思います。先生は、全国被害者支援ネットワークの理事で、全国的に活躍されていますが、和歌山県の紀の国被害者支援センターの設立、そして運営に携わっていただいていました。

本日は、ただいまの山内先生の話も踏まえた上で、全国の被害者支援の状況と和歌山の現状、先ほどの県民性という言葉も含めて最初の10分ほどをお話ししていただければと思います。よろしくお願いします。

関根: 今紹介いただきました関根と申します。

山内先生のご体験から、もう15年近くたちまして、その当時と状況はいろいろと大きく変わっていることももちろんあります。ただ、やはりその中で、山内先生の経験を十分に補い切れないような部分もまだまだ実際はあるのかなと思います。

この日本の犯罪被害者支援の現状、状況ということですけども、もともとは1980年ぐらいに警察庁のほうで犯罪被害者の給付制度というものがつくられまして、三菱重工のビル爆破事件というのが東京の銀座でありまして、そのときのご遺族とか被害者の方に対するものから始まったものなんですけれども、そういう中で、少しずつ、犯罪の被害者に対して少しでも経済的な補償をしようというところから始まったかと思います。

それの10周年の記念のシンポジウムのときに、遺族の人のお一人が被害者の心情とか、被害者にもサポートが必要なんだということをおっしゃったことがきっかけになって、犯罪被害者をサポートする部署というもの、それが東京医科歯科大学の山上先生という1人の先生の研究室の中にできたというのが、日本の犯罪被害者支援の一番初めだろうと思います。

ただ、実際問題としては、本当に欧米から比べると20年おくれた形でもってスタートしています。ただ、それも、今2005年、平成17年に犯罪被害者の基本法というものが日本でもつくられました。これは本当に大きなことで、これによって、日本でも犯罪の被害者に対してサポートしなければいけないんだということが、行政に関しても、または国民に関してもそれが明確になったわけです。ですから、本当にその平成17年を境にして、急速に法律とか制度の整備、また支援の窓口の整備なんかも進んできて、この5年間で大きく状況は変わってきています。

例えば、先ほど山内先生が、被害者は加害者に何も言うことができない、またはそういうことも全く裁判の中では伝えることができなかったというものも、新しく意見陳述制度であるとか参加制度なんかができ上がりまして、それでお話をする機会もできてきました。そういう意味では随分大きく変わってきてはいるところです。

ただ、その状況ということを考えますと、今はどんな状況にあって、これから何をしなければいけないのかということです。

まず1点目は、今申し上げたように、さまざまな被害者を支援する団体、または機関というのは物すごくたくさん出てきました。例えば県にもあります、市町村にも窓口が今できています。さらには県警の支援室、また裁判所や検察庁、法務省などにも犯罪の被害者をサポートする担当者が今はいます。それだけではなくて、例えば民間であれば、各県の弁護士会や臨床心理士会、そういうところにも被害者支援の担当者というものが、部署、担当者が必ずほとんどのところでいます。ですから、そういう意味では、非常に多くのところが被害者のために何かをする、そういう仕事または事業、そういう窓口をたくさんつくってきています。ですから、それは物すごく多くあるわけですね。

私どもの全国被害者支援ネットワークの加盟団体も、行政とか県警と連携しながら、被害者に対してなるべく早い時期から、できるだけ総合的な支援、総合的な支援というのは、法律だけとか心理的なことだけではなくて、生活全体を再建していこうという、そういう支援を目指して活動しています。ほかに民間の中では、女性問題とか子供の問題、そういうところに特化した民間の支援団体もありますし、被害者の当事者による団体や自助グループなど、そういうものもたくさんあるわけです。

それで、今のお話にもありましたけど、そういう意味でいうと、お寺とか葬儀社みたいな、一見被害者の支援とは関係がないように見えるようなところでも、実は被害者の方にとってはとても大事なかかわりのある部分も持っているのではないかなというふうに思います。

そうしてみますと、2つ目、連携とコーディネートというものが今大事になってきています。つまり、どういうことかといいますと、各いろんな機関がたくさん出て、被害者を支援するための制度ができました、窓口ができました。いろんなことをやってくれるようになりました。ところが、それはモザイクみたいにあっちこっちにたくさんあるんですけれども、じゃ被害を受けた直後、被害者の方はどうしていいかわからなくなっているというふうに先ほどおっしゃっていただきましたけども、その状態で、どこに行ってどんな支援を受けたらいいか、自分で探し出して、そしてその支援を受けようとすることというのは実は非常に難しい。そういう意味では、一つ一つたくさんの支援策はあるにもかかわらず、そこの窓口まで行けない、せっかくあるいろんな支援が使えなくなってしまうということが実際のところはまだまだあるかと思います。

ですから、そのために今とても大事なのは、被害者の方たちに対するさまざまなたくさんある支援、そういうものを上手に被害者の方とつなぎ合わせていくこと、被害を受けた方がそういう支援をうまく使いながら、絶え間なくずっと支援を受け続けられるようにする、それが今とても大事になってきています。それが、連携をしていくとか、またコーディネートをしていくということではないかなと思っています。

この全国にある被害者の支援センター、和歌山では紀の国被害者支援センターですけれども、ここは法律とか心理の専門家の集まりではありません。けれども、そういうコーディネートをしていく、いろんなところに被害を受けた方をうまくつないでいく、それをメインにやっていく、そういうとても大事なことをやっていくことが、そこの支援センターの大事な仕事だろうというふうに思います。

また、きょうの主催の内閣府のほうでも、どこから始まっても、どこの窓口に行っても、そこから途切れずに支援がずっと続けられるようにということで、犯罪被害者の支援のハンドブック、そういうものもつくられて、各県で今かなり利用されつつあります。つまり、そういう意味で、いかに連携をしていくのか、コーディネートしていくのかということが今次の問題として、またそのせっかくできた支援をいかに生かすかというところが今とても大事になってきているところだと思います。

さらに、私たちの全国被害者支援ネットワークに属している被害者支援センター、民間の団体ですけども、ここの団体の一番重要なポイントは、犯罪被害者等早期援助団体というものがあります。つまり、どういうことかといいますと、犯罪の被害に遭った方たちに対して、かなり早い段階からコンタクトをとって支援をしていけるようになるという、そういうことが公安委員会から認められている団体です。

つまり、被害を受けた人は、直後どうしていいかわからない、そして自分から何とか支援を探そうにもどこに行っていいかわからない。そのときに、従来ですと、その被害を受けた方が被害者支援センターというところをうまく見つけてくれて、電話をしてくれるまで待ちの姿勢で待たなければいけませんでした。ところが、この早期援助団体というものに指定されることで、警察のほうからその被害者に関する情報について、被害者の同意を得た上でいただくことができ、それに基づいて、こちらから被害者のほうにコンタクトすることができるようになります。ですから、早い時期にこちらから被害者のもとに行って、そしてサポートしていくことが可能になってきたということです。

ですから、そういう意味でも、被害者に対してなるべく早い時期からかかわっていく、総合的にかかわっていくということ、それがたくさんあるこの各団体の持っている支援の機能ですね。支援の事業をうまくつなぎ合わせていく上でも、とても大事になってきているし、それを今形成していっている段階ではないかなというふうに思っています。

それで、和歌山県の現状についてです。

全国の現状としては、今法律ができ上がってから、そういう支援をするためのものがたくさんでき上がってきています。和歌山県は、どうかといいますと、和歌山県というのは被害者支援に関してはかなり早い時期から取り組んでいます。私の属しているこの被害者支援のネットワークですけれども、これは1998年ころにでき上がったんですけども、ごく初期のころは本当に小さなネットワークで、全国で8つの団体しかありませんでした。その8つの団体の初期のグループとして、この和歌山の紀の国被害者支援センターはあります。ですから、そういう意味では、被害者支援センターの中では本当に全国の中でも先駆けになるような形でした。

それだけではなくて、とても不幸なことですけれども、カレー事件というものがそのしばらくしたところにありました。ちょうどそのころ、私もこの和歌山県におりまして、臨床心理士会のメンバーとして、また被害者支援センターのメンバーとして、このカレー事件のほうにかかわりました。ですから、そういう意味では、和歌山というのは被害者へのサポートという意味では、かなり早い段階からいろんな形でもってやっています。

ただ、その後、なかなか、どうしても和歌山県の県民性ではなくて多分状況だと思うのです。大阪に近いということが逆にマイナスとしてあるのは、大学がほとんどない。大学がほとんどないということは、いわゆるこういう支援センターなんかに協力してくださるような先生方がほとんど実際いない状態です。ですから、そういう意味で、いろんな専門家の助力を得ることがなかなか難しかったわけです。

それが2007年以降、大きく変わってきまして、今は市町村の行政の窓口も整った段階だと聞いています。さらに、この紀の国被害者支援センターも公益社団法人という形で、組織もかなりきちっとしたものになってきていますし、先ほど申し上げた早期援助団体というものにも今指定される直前の段階にもなっていると聞いています。ですから、そういう意味では、被害者の方への支援とかコーディネートする体制というのが、和歌山の中でもかなり今でき上がってきつつある、またはでき上がって、これからさらに一歩踏み出す場所ではないかな、そういう状況だと思います。

お世辞ではなく、本当に今、紀の国被害者支援センターの組織がうまく整いつつあるだけじゃなくて、人材の点でも非常にうまく回っていると思います。これは、全国的に見ても、とてもうまく機能している団体の一つではないかなというふうに実際思っております。ですから、そういう意味では正直言ってかなりうらやましい状況でもあるかなというふうに思うほど、今、本当にすごく期待が持てる状況になっているんではないかと思います。

その意味で、本当に和歌山県の被害者支援は、行政のほうも体制が整い、また民間の団体も整い、そしてもう一歩、これからさらに進まなければいけないし、もう一歩進んでいける状態の直前まで今来たというところにあるのではないかなというふうに思っています。

上野: はい、ありがとうございます。やはり総合的支援する資源はできたけども、それをコーディネートする力という問題ですね、つなぎ合わせるというところが今のこれからの課題になるかなというところでお話ししていただきました。

では、実際に和歌山県の行政で中心になる県並びに県警察の方のお話を続いてしていただきます。

続いて、和歌山県警察本部警務部警察相談課長、犯罪被害者支援室長、池田義晃様に、和歌山県警察による被害者支援活動の状況等をお話ししていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。

池田: 警察本部で犯罪被害者支援を担当しております池田です。よろしくお願いします。

警察は、県民の安全と平穏を守るというのが仕事であります。犯罪被害者支援についても警察の重要な任務ということをよく認識しております。捜査活動と並行して、被害者の安全の確保に努めて、また、さまざまな場面において被害者支援を行っているところであります。

それでは、警察における被害者支援の流れを説明しますけれども、節目節目に社会の注目を集める大きな事件が発生し、そして、それに伴って、この犯罪被害者支援が進んできているということであります。

今から四十数年前、昭和40年代ですが、市瀬さんという方が息子さんを通り魔殺人で亡くされて、その理不尽さを各方面に訴えて全国行脚したことが、犯罪被害者支援活動の始まりと言われております。その後、先ほども出ましたけれども、昭和49年、東京の三菱重工ビルが爆破されて、8名の方が亡くなり、380人が重軽傷を負ったという事件がありました。

この中でも、先ほどから説明があったように、全く何の補償もされない、単なる通りがかりの人が被害に遭ったということから、この不均衡を是正するために、被害者へ経済的補償をするということで警察庁が検討して、昭和55年に、殺人事件の遺族などに国が給付金を支払うという犯罪被害者等給付金支給法が成立したわけです。これについては、既にもう昭和56年から本県警察においても毎年数件ずつ受理して、給付金の支払い等の手続きを行っております。

その後、平成7年にオウム真理教による地下鉄サリン事件、これも先ほどの基調講演の中にもありましたけれども、12人が亡くなり、5,000人以上が被害に遭った事件でした。この後、平成8年に警察庁が被害者対策要綱を制定しました。

これは、犯罪被害者のための施策ということであります。これに伴って、各都道府県警察においても同様に制定されまして、本和歌山県警察においても、和歌山県警察被害者対策要綱がつくられました。ここからやっと警察組織において本格的に被害者支援が始まったと言えます。

ですから、先ほど山内さんの話の中で、平成7年に娘さんが殺人事件に遭ったときに、警察官が失礼なこと、何か「にやっと笑った。」ということですけれども、まだその警察官にとっては被害者支援という言葉すら知らなかった時代だと思います。しかし、そうだとしても、一般社会人として、そういう場で笑うというのは人間として最低なことであります。同じ警察官としておわびしなければならないと思います。

それから、先ほどから出ています犯罪被害者等基本計画、その前の基本法ですけれども、この法律によって大きく変わりました。私も平成15年に、この犯罪被害者支援を担当しております警察相談課の次席をしておりましたけれども、そのときと比べて今は雲泥の差であります。この法律により、社会全体で被害者を支える気運の醸成が図られ、各種施策が進められて現在に至っているわけです。

ちょっと前置きが長くなりましたけれども、それでは和歌山県警察の具体的な取り組みについて紹介します。

1つ目は、被害者への情報提供支援です。これは、平成8年から実施しておりますが、「被害者の手引き」の配付と被害者連絡制度による情報提供です。

これは、被害者等が受けることのできる支援の内容とか、それからなじみのない刑事手続の流れ、こういうのをわかりやすく記載しております。

被害者連絡制度は、殺人とかひき逃げ事件について、こういう重大な事件・事故の被害者や遺族は事件への関心が非常に強いものがあります。ですから、この事件を担当する捜査員が、捜査状況、それから被疑者を検挙した場合は検挙状況、そして検察庁に送致したというような処分状況、これについて情報提供を行っております。

2つ目は、被害者支援をより効果的に行うための指定被害者支援員制度です。

これは、捜査に従事する者とは別に被害者支援の担当者を指定して、被害者の要望や、病院への付き添い、自宅への送迎、事情聴取の立ち会いといった被害者の支援を行っております。人員については、警察本部及び県下各警察署に、指定被害者支援員を指定しておりまして、事件の都度、この中から担当者を決めて被害者支援に当たっております。

3つ目は、先ほどから出ております犯罪被害者等給付金の支給の手続であります。

何の落ち度もないのに犯罪被害に遭って命を落とす、あるいはけがをする、こういった事件が現在も数多く発生しております。一般の方でも、いつこういった被害に遭うかもわかりません。すべての人がいわば潜在的被害者と言えます。

こうした犯罪被害により不慮の死を遂げた人の遺族や重傷病を負って苦しんでいる被害者の方、または身体等に障害を負わされた被害者の方に対して、ほかの公的給付とか損害賠償が受けられない場合に、国からの遺族給付金、重傷病給付金、それから障害給付金、これらを支給する手続を行っております。昨年度実績ですが、和歌山県警察においては6件の申請を受けて、約1,500万円の支給手続を行っております。全国的に見ますと、全国警察の申請数は656件で、総額12億7,700万円が支給されたと聞いております。

次に4つ目は、犯罪被害者等が受ける精神的、身体的、経済的な負担を軽減する幾つかの公費負担支援です。

まず、性犯罪被害者に対する公費負担です。性犯罪被害者は、緊急に医療機関で受診する必要がありまして、この経費について公費負担を行っております。

次に、犯罪被害者等に対するカウンセリングへの公費負担です。犯罪発生直後の早期の段階で、被害者等の要望により、臨床心理士によるカウンセリング支援を実施しております。

そして、被害者遺族に対する支援で、司法解剖後の遺体搬送費用の公費負担があります。

それからもう一つ、身体犯の被害者の診断書料の公費負担があります。これは、殺人未遂事件とか傷害事件の身体犯被害者の場合、一定の条件のもとに診断書に要する経費を公費負担しております。

次に、5つ目として、部内外に被害者支援を理解・浸透させるための部内教養と部外への広報啓発活動を行っております。

部内教養としては、警察職員に対する職場教養の実施、警察学校における研修等を行っております。部外への広報啓発としては、各種広報誌、交番・駐在所だよりの発行、掲載を行い、それから県、市町村、民間支援団体と協同での街頭啓発活動を県下の主要駅、それから大型量販店等で行っております。そして、県警音楽隊「ふれあいコンサート」における広報啓発活動も定期的に実施しております。

6つ目に、今、中高校生を対象にした「命の大切さを学ぶ教室」を開催しております。

これは、社会全体で被害者を支え、被害者も加害者も出さない街づくりの一環で、将来の社会を担う中高校生に対して、犯罪被害者への配慮、それから協力、こういう意識を涵養するということで、犯罪を犯してはならないという規範意識の向上も図ることを目的に、平成19年から実施しております。

最後に、民間被害者支援団体との連携と支援ですが、民間被害者支援団体による支援は、個々の犯罪被害者等の事情に即した柔軟な対応が可能であること、長期にわたり継続的な支援を提供できることに意義があります。ですから和歌山では、平成9年に民間支援団体として紀の国被害者支援センターが設立されました。

先ほども説明ありましたように、全国的にも早く、6番目ですか、47都道府県の中で早い時期に設立されております。そして、和歌山県警察とともに被害者支援に取り組んでおります。

特に平成10年、先ほども出ましたが、和歌山毒物混入カレー事件、このときには4人死亡されて、63人が砒素中毒になったという事件でございますが、この際には、警察が捜査に没頭する中、センターの方が遺族に寄り添って、公判等への付き添いなど大きな力を発揮していただきました。

警察では、この紀の国被害者支援センターの財政支援のために、県、それから県下の市町村にお願いして財政支援をいただいております。それとは別に、警察職員にお願いして、毎月の給料からの寄附と賛助会員に加入してもらう方法で、年間約二百数十万円の支援を行っております。

紀の国被害者支援センターについては、その活動の公益性が認められて、本年4月1日に公益社団法人に認定されました。

そして、本年度中に犯罪被害者等早期援助団体、これの指定を受けるべく目指しております。この指定を受けましたら、警察からの犯罪被害者に関する情報提供が可能になりますので、より一層充実した被害者支援ができると、このように期待しております。

警察の被害者支援の取り組みについては以上です。

上野: はい、ありがとうございました。さまざまな被害者支援の資源を今ご紹介していただきました。先ほどの山内先生がおっしゃられた孤独感、孤立感を軽減させるために、被害者の方に適切な情報を速やかに伝える形が徐々にでき上がってきているわけですね。ただ、関根先生がおっしゃったように、こういった支援をどのようにつなぐかということが大切になってまいります。そういった点では、地方自治体の役割というのは、これからものすごく大きな役割になると思います。

続きまして、和歌山県環境生活部県民局県民生活課長の幸前裕之様に、和歌山県による犯罪被害者支援についての基本方針と今までの取り組みについてお話ししていただきます。よろしくお願いします。

幸前: 今、ご紹介いただきました県民生活課の幸前です。

冒頭の開会のところで、国がつくられた基本計画の話が出ていましたけれども、その中に、4つの基本方針というものが決められています。1つ目は、犯罪被害者の方々の尊厳にふさわしい処遇を権利として保障すること、そして2つ目には、個々の事情に応じて、支援が適切に行われること、それから途切れることなく行われること、4つ目には、国民の総意を形成しながら展開されることということが定められています。

こういうことを受けまして、和歌山県でも法律が制定されて以降、具体的な取り組みを行ってきたわけですけれども、先ほど山内さんのお話にありましたように、被害者の方というのは、体の不調や精神保健的な問題が一つ起こります。それから、生活上の問題としては、働くことであったり住まいの問題であったり、あるいは医療のことであったり、それから生活資金、子供さんがいれば保育の問題といった生活上のさまざまな問題が起こります。

それからもう一つは、加害者に関することで、また再びその加害者から被害を受けるんじゃないかというような心配とか、加害者が今後裁判でどうなっていくんだろうかということとか、さまざまなことに直面するわけでして、それはそれぞれたくさんの専門的な機関があるわけです。

そのうちで、生活上の問題、あるいは心身の不調に関しては、地方公共団体が受け持つ部分というのは大変たくさんあります。ただ、そういったところは、それぞれ専門の窓口がありまして、日々たくさんの人が訪れるわけですね。そういった職員が、いかにしてそういう来られる方の背景に、犯罪被害者としてそういう問題が起こっているということまで思いをいたせるかどうかというのは、なかなか今まではそういったことが認識されていなかったというのが実情だと思います。

そういったことで、県としては、冒頭、副知事が申し上げましたように、平成18年4月に和歌山県安全・安心まちづくり条例という条例をつくりました。これは、幼い命が奪われるというような事件が全国的にもたくさん起こりまして、そういったことに対して県として取り組んでいこうということで、条例としてつくられたんですけれども、その中に犯罪被害者に対する関係機関の連携、それから県民の理解と協力といったこと、それから最後には情報提供とか助言と、そういった3つの柱をもって、その条例の中に明記いたしました。

それから2つ目としては、ことしの2月に和歌山県人権施策基本方針というものを改定いたしました。これは、平成16年に基本方針を策定したんですけれども、それを改定する作業を進めてまいりまして、その中に新たに犯罪被害者等の人権に関する項目を盛り込みました。その中には、現状と課題、それから基本的な方向、そして基本的な取り組みというようなことを盛り込んでいます。

今申し上げた2つのことが、県として明文化した、オーソライズされた考え方を示しているわけですけども、それを大きくまとめて申し上げますと、途切れのない支援のための連携を強化していくということが第1です。それから、2つ目としては、犯罪被害者等に対する県民の理解を深めてもらう、そして犯罪被害者等の尊厳が守られる社会づくりを推進すると、この2つが大きな基本的な考え方になっています。

そういった考え方に基づいて取り組んでいるわけですけれども、具体的に何を今現在その連携のためにやっているかといいますと、先ほど申し上げましたように、さまざまな窓口があります。特に、市町村はたくさんのサービスを提供しているわけですけども、そこに携わる職員の方々に、犯罪被害者の方々が置かれている立場、あるいはその思いとか、そういう方々へどういうふうに接したらいいかというようなことをわかりやすく解説し、そして、そういった方々が必要としているサービスというのはどういうところにあるかというようなことを網羅的にまとめました犯罪被害者支援ハンドブックを、今年3月に作成いたしまして、それを市町村の職員に対して4月に2回に分けて説明会をさせてもらっています。

それから、先ほど関根先生のほうから、もう準備はできているよ、体制はできているよというふうなことを言っていただきましたけども、なかなか十分にということではなくて、昨年の平成21年の段階では、市町村に担当窓口が、まだ十分にここだという定まってないところも幾つかあったわけです。ただ、県のほうから犯罪被害者支援の重要性を説明しまして、やっとことしの5月には、全部の市町村に対して担当する窓口ができたというふうな状況です。

まだ全国的には半分ぐらいの市町村しか、そういった明確な担当の窓口ができてないというふうに聞いていますので、そういう意味では、和歌山県は一歩進んで対応ができているのかなというふうに思いますけれども、まだまだこれから中身のある連携をしていかないといけないというふうに思っています。

ここで重要なのは、私が思うのは、県としては、条例あるいは人権施策方針に盛り込んでいるわけですけども、やはり先ほど山内さんのお話のように、直接被害に遭われた方の話を聞かないと、なかなかそういった状況がわからないというのが現状だと思うんですね。それをもっと、それぞれの窓口にいる人たちが相手の立場に立って考えられる、そういうふうなレベルまで持っていかなければならないと考えています。

そのためにも、この人権施策の基本方針の中に盛り込んだ意味は大変重要と考えていまして、人権ということは、やはり相手の立場に立って考えるということが一番基本だと思っていますので、そういう意味で、和歌山県はその人権として施策の基本方針に盛り込んで、今後連携の中でも中心的に考えていきたいなというふうに考えています。また、そういうふうに今現在取り組みを進めているところでございます。

上野: はい、ありがとうございます。幸前課長さんからのお話をお聞きしながら、中身のある連携という言葉が心に残ります。実は、被害者の声を聞くということがどれだけ大切かということが、やはり基本的なことと思います。山内先生には大変なエネルギーを使っていただき、先ほど1時間のお話しをいただきました。このような心に響くお話は、各市町村の窓口で対応される職員の方々の対応や支援の質を上げていくと思います。

少し終了時間が気になるのですが、一通りパネリストの方々にお話ししていただきました。より具体的な連携のお話をいただき、お話を深めていきたいと思います。今日のパネルディスカッションは多分、中途半端な形に終わるかもしれません。しかし、それは決して無駄ではなく、そこから質の高い支援が生まれてくると思います。時間の許す限りお話いただきたいと思います。

今、犯罪被害者支援における連携の大切さということまでは、私自身もフロアの皆様方も深められたと思います。それで、より具体的なところをいま一度山内先生にご発言いただき、犯罪被害者における「あるべき連携」「支援に役立つような連携」についてお話いただけるでしょうか。

山内: わかりました。また私のほうからお話しさせていただきます。

私が自分の娘の受けた事件から6年たつまで、本当に家族の中でしか話をすることができませんでした。やっと外に向いて話をするというか、自分の気持ちを伝えたのが、「看護教育」という専門誌がありまして、それに手記という形で投稿したのが6年を過ぎてからです。そのことが地方紙にも取り上げられまして、その地方紙を読んだ、当時大きな、全国的に大きな事件であった武富士事件という、犯人が武富士に行ってガソリンをまいて火をつけ、その結果死傷者が数人出たという事件ですけれども、その事件で娘さんを失ったお母さんから電話がありました。

私、学生と一緒に実習場に出ていましたので、留守電にそれが入っていました。初め、よくわからなかったのです。ほとんど泣き声で、自分のこととかも話はしているのですけど、やっとお名前がわかる、そして武富士事件ということもわかったということで、最後に電話番号も伝えてくれていました。でも、ほとんどがずっと、こらえたものがばっと出て、泣きながら電話は終わっていました。私も早速、その電話番号にお電話をして、会うことになりました。

そういうことで、まず自分の気持ちをほかに向かって話すというのは、非常に個人差があると思います。事件の内容とか、事件で亡くなった人とのかかわりとか、そういうのもあると思いますけれども、私は6年経過して手記を載せた。そしてその後、そのことがきっかけで大きな事件の被害者とも直接話し合うことができました。

初めてその被害者のお母さんと会ったとき、お互いに自分の娘の写真を持ちよりましょうと電話で約束をしました。ある喫茶店で、その喫茶店が10時から始まるのですけども、最初からずっとお話しして、5時か6時ぐらいまで、ふっと時計を見たら、夕方になっていまして、それぞれ主婦ですので、ご飯支度もしなければいけないということで、話をそこで終えて帰ったんですけども、私はそのとき初めて本当に気持ちがすっきりしたという体験を味わいました。

それまでは、小出しでいろんな人に話をしたり、無理にというか、そういう感じで、どうしたの、どうしてそういうふうになったのというふうに聞かれて、非常につらい思いをしながら、何とか話をしたという、そういう経験をずっと持っていたんですけども、その方とお話をしたときは、みずから娘の思い出話をしたり、それから加害者に対する怒りをぶちまけたり、そしてまた自分が今、日常生活でこんなことが困っているとか、あるいは工夫しているということを話しまして、それはほとんど相手の方と同じような状況だったんですよね。

ああ、やっぱり被害者の遺族というのは、こういうふうに同じようなことを経験しているんだな、あるいはまた私が経験しないことも経験していました。例えば、小さいお孫さんがドアのピンポンと鳴るだけで、もう反応するんだそうです。またメディアの人が来た、新聞記者とかテレビの人が来たということで、すごく怖がるということなのです。そういう大きい影響が、もう大人だけではなくて小さい子供さんにも来ているということが、そのお話の中からわかったりしまして、いろんなところで傷ついているんだな、それこそ二次被害だなということもわかりました。

そして、その方と初めて会って、相手の方も、本当にきょうはすっきりした、いろんなことを話せた、事件は全く違いますけども、殺人事件という立場、それからお母さんという立場、娘を殺されたという立場、みんな大きいキーワードが同じなのです。それで、本当にすっきりした気持ちでお別れすることができました。私は後で、これが自助グループ、たった2人ですけれども、これがお互いの気持ちがわかり合えるグループなんだなと思いました。

その後、その方が同じ事件で娘さんを失った別の2人も連れてきて、全部で、私を入れて4人で話し合うことがたびたびありました。本当に共通点がたくさんあって、同じようなことを経験した人の話というのはすごく大切だ、そして心をいやしてくれるということを実感したわけです。

そのようなことを警察の方に話しましたら、別な全く違う事件で奥さんを失ったご主人と、その奥さんのお母さんもちょっと、その会に入れてくれないかということで、私たちは、いいですよということでその方をお迎えしました。それで、また6人でいろいろお話をしたのですけれども、その方の本来の目的は、裁判を起こしたい、それで弁護士さんを、どなたかいい人がわかっていたら知らせてほしいというのが一番大きな気持ちだったということがわかりまして、武富士事件は大きい事件でしたし、その担当の弁護士さんもおりましたので、その弁護士さんをその方が紹介しますよということで、その後に加わったお二人の方にその弁護士さんを紹介いたしました。これは、自助グループから弁護士さんへの連携という形で実際にあったのだと思います。

その後、弁護士さんのオーケーもとれて、そして今度は弁護士さんと、放火事件になるその奥さんを失ったご主人とそのお母さんという人が直接話し合うということで、自然に私たちの話し合いから抜けていったわけですけども、弁護士さんを紹介することで、その方と今度はきちんと連携がとれて、そして裁判を起こすという段階に入ったようでした。その後、特別連絡がないので、恐らく順調にいっているのではないかというふうには思っておりますけれども、これもまた一つの連携の大事な部分ではないかというふうに思います。

それからあと、被害者の立場とか、支援者としては、私自身、実際、先ほどもご紹介にありましたセンターの理事という立場ではあるんですけれども、大学にも勤務しているということで、電話相談とか、直接的な支援という形は自分自身体験しておりません。しかし今のような形で自分がかかわっている中で、連携というのはこういうところにも、小さいけれどもこれが連携ではないかということを感じましたので、ご紹介いたしました。

上野: はい、ありがとうございました。ひとつひとつの「小さい連携」ということが、後の「大きな連携」につながるというところが、大切なポイントだと思います。

続きまして、関根先生、時間も少なくなってきましたので、ここというポイントをお話ししていただきたいと思います。特に、連携の問題点とその必要性です。

これらの点を具体的にお聞かせ願えたらありがたいです。

関根: まず、連携の問題点として、機関として一番やってはいけないことというのは、多分自分のところで抱え込んでしまうことだと思います。つまり、抱え込んでしまえば、これ以上、自分たちはやれることがありませんとか、もうこれ以上何もできませんという形になってしまいます。そうすると、そこでもう支援がストップしてしまう。ところが実際には、ほかの機関であればやれることが実はいっぱいあるわけですね。ですから、そういう意味で、自分のところで抱え込まないということが一番大事だと思います。

そのためにはどうしたらいいかということですね。抱え込むな、抱え込むなというだけではなかなか難しいことなので、そのときに、例えば事件が起きたら110番というのがあるみたいに、被害者の方が自分たちで窓口に来た、そしたら、まずどこに連絡をしたら自分たち窓口をサポートしてくれるかという、そこの場所を1個持つということです。そうすれば、被害者の方が来たときに、そしてそこのところで、まず自分たちはこれができる、それから後、何ができるかというところを、ほかから教えてもらう形によって連携を広げていくことができるということになるかなと思います。

ですから、自分のところで抱え込まない、そして何かあったときにはすぐに連絡する場所を1個きちんと持つことだろうと思います。それは多分、県の窓口であったり、または民間の団体もそれを担当することができると思います。

あともう1点です。県民の役割ということがとても僕は大事だと思います。つまり、連携といいますと機関同士ということばかりが考えになるんですけども、実をいうと一人一人の隣人、市民、県民というものが被害者にとってはとても大事だということです。

まず何が大事かというと、1点目は、支援というのは日常の声かけであるとか、ちょっとした配慮、それがとても役に立つことがあります。先ほどの山内先生のお話の中で、ちょっとした言葉がけで傷つくこともあるとおっしゃられました。でも逆に、ちょっとした配慮でもって非常に助けられることもあります。

ですから、そういう意味では、そういう配慮のある言葉がけをしてくれる、または何かちょっと日常の仕事を手伝ってくれる、買い物であるかもしれません、これ、つくったよというものもあるかもしれません、それから例えば子供の幼稚園の送り迎えみたいなこともあるかもしれません。そういうちょっとしたことが被害者にとって物すごく役に立ったりします。それから、自分は1人じゃない、先ほどの孤立というものから救われることになる。そういう意味では、隣人のちょっとしたものがとても大事ですし、そしてこの隣人のちょっとした支援というのは専門家にはできない支援だということです。ですから、隣人にしかできないものがある。

あともう1点は、隣人は発見者になってくれるということです。つまり、どんなに支援のネットワークができていても、被害者の方がそれの窓口に到達できなかったら支援がスタートできません。ところが、被害者の方は自分の家で、または地域の中でうずくまってしまうわけですね。ですから、その人たちを、支援の窓口がある、あそこに行ったら何かしてくれるんだという形で後押しをしてくれることによって、被害者が支援のネットワークの中に入り込む、それによって支援が始まります。

ですから、そういう意味では、それを見つけられるのは隣人や人権委員、または民生委員さんや保健師さん、そういう人たちもいらっしゃると思いますけども、そういう隣人として活動している人たちがとても大事だろうということです。

この2点ですね。機関としては抱え込まない、あとは県民の役割というものを、それをもっと大事にすることがとても大事じゃないかと思います。
以上です。

上野: ありがとうございます。

今お話ししていただいた機関が抱え込まないというのは、これは大切なことだろうと思います。そして、隣人のちょっとした支援と、隣人は発見者であってほしいというお話は、地域の関係性についてお話されたことで、地方であればあるほど大切だと感じます。ありがとうございました。

続きまして、和歌山県における警察と各機関との具体的な連携について、今のお話も含めて、お気づきの点がありましたらご発言をお願いいたしたいと思います。

池田様、よろしくお願いします。

池田: では、警察から発言させていただきます。

警察による他機関との連携ですけれども、これは警察本部に今事務局を置いております和歌山県被害者支援連絡協議会があります。これは平成9年5月に、被害者の視点に立って行政機関と民間団体との連携を図って、被害者支援活動を効果的に推進するという目的で結成されました。

被害者の方は、生活上の支援を初め、医療、公判、いろいろなことに要望があります。これは、和歌山県の例ではありませんけれども、被害者の方によっては家事ができないということで、買い物をお願いするとか、それから洗濯をしてほしいとか、掃除をしてほしいとか、いろいろな要望があったそうですが、警察でできることとできないことがあり、大変苦労したということを聞いております。ですから、こういう点でも、行政のほうでバックアップできることがあれば、これをやっていただくということが大切だと思います。

現在、この協議会に加盟しているのは、和歌山県で警察初め国の機関、県の機関、それから市の機関、そして民間団体の55機関・団体が入っております。この機関でなければできないということはありますが、先ほども話に出ていますように、警察だけで抱え込まないように各機関に協力をお願いして、被害者支援をしていきたいと、このように考えております。そしてまた、この機関が横断的なシステムでより充実した運用を図っていきたいと考えています。

そして、今現在この協議会を通じてやっている活動ですけれども、広報活動を警察、県、市町村、民間団体で一緒にやっております。これは、先ほども出ました街頭啓発活動ですが、これをいつも各市町村の担当者を交えて、その市町村で場所を設定していただいて、警察、県、紀の国被害者支援センター、そして市町村の担当者が連携して広報啓発活動を実施しています。要するに、1つのことを一緒になってやるということで、より連携の意識が深まって、被害者支援の実効が上がると、このように考えております。
以上です。

上野: ありがとうございます。この協議会が横断的な形で、連携の一つの橋渡しになって、これからもいくことを願って、私どもも参加しております。

さて、和歌山県における被害者支援の連携、少しずつ見えてきたと思うのです。その中で、和歌山県と、先ほどもお話に出ましたが、市町村の関係団体との連携のあり方や今後の取り組みについて、県民生活課長の幸前様からお話しいただきたいと思います。お願いいたします。

幸前: 先ほど私のほうから説明させていただいた中で、ハンドブックをつくったというふうに申し上げたんですけども、犯罪被害者支援をリードしていくのは1つ目は県の県民生活課、そして2つ目が警察の相談課、そして3つ目が民間の支援団体である紀の国被害者支援センターと考えています。

ですから、先ほど関根先生が言われたように、どこかで被害者として支援が必要な人がいるということがわかれば、これらの機関や団体のほうへつないでいただく、そしてつながれた情報をまた我々のほうで、こういう支援がありますよというような、いろんなサービスなり支援のところへまたつないでいくと、そういったことを個々の人というよりは、やっぱりシステムとしてそういうようなものをつくっていくということも必要だと思います。

これは、まだそういった段階まで来ていませんけども、先ほど池田課長さんが言われたような協議会とか、そういったところで、もっとシステム的にそれがつながるような方法ができないかなというようなことも検討していけたらなというふうに思います。それは、やはり今後、さまざまな機関の支援をコーディネートしていくと、そういった機能が求められているという中で、大変重要なことになってくるというふうに思います。

そして、市町村というのは、いろんな、第一次的な窓口になるところですので、そこの職員の方々には来年の1月28日に研修会を開催いたします。今回のこの国民のつどいも内閣府と共催ですけども、1月についても内閣府の支援をいただいて開催させていただくということで、ことしこの2つの大きな取り組みをさせていただくことで、よりまた連携のほうも一段高いところに持っていけるのかなというふうに考えています。きょう、このパネルディスカッションをしているメンバーで、いろいろ話をしている中で気づいたこととか、これからこういうことも取り組まないといけないなということも、たくさん気づかせていただいて、そういったことをこれからも取り組んでいきたいというふうに思います。

上野: ありがとうございます。

パネラーの皆様方が約1時間余り、お話ししていただきました。残された時間で総合的にいろんな視点から、気づかれたことを話していただけたら、私どもが、和歌山県でこの国民のつどいを開いた意味がより明確になると思います。何なりといろいろな角度で気づかれたことをお話ししていただきたいと思います。

特に、この犯罪被害者支援における連携の大切さということを考えたときに、やはり先ほどの山内さんがおっしゃられた孤独感とか孤立をさせないという一つの大きなキーワードがあるかと思います。そのために、被害者の方との適切な関わりができ情報を速やかに伝える中で、小さなつながりがシステム・組織へのつながりになり、それが支援としての効果性を高めることになると思います。

そういった意味も含めて、大体4分ぐらいで今回パネルディスカッションのご感想と被害者の心に、どうつながるかについて山内先生から最後にお願いしたいと思います。それぞれ皆様方に大体4分ぐらいでお願いいたします。

山内: それでは、私のほうからお話しさせていただきます。

孤立感とか、あるいは孤独感というのは、本当にどの被害者、あるいは被害者の遺族、家族も感じるんではないかなということを私自身も感じております。それでも、周りの人の助けというのが非常に私はありがたいと思いました。

私たち夫婦が弘前から横浜まで行って、何日間をそちらで過ごしたわけです。警察もすぐ遺体を返してくれるわけではなくて、いろんな捜査というんでしょうか、それをやりまして、うまくいかなかったからもう一度やらせてくださいなどと言われ、本当に拘束されたという感じがしておりました。でもその間、母のところに私の友達が来てくれまして、泊まり込みで母の世話をしてくれたりとか、あるいはまた先ほど義理の姉の話をしましたけれども、その姉の娘が、私たちが当時、テレビとか、あるいは新聞を見る、などの気持ちを持てない時期がありました。その間の娘の事件に関する記事を全部スクラップブックにしてくれまして、後で渡してくれました。

それは、単に地方の新聞だけではなくて、加害者が石川県ということで、石川県ではどういうふうにとらえているかということで、そちらの新聞も取り寄せてくれたりして、私たちが少し気持ちが落ちついて、見たいと思ったときに、見ることができまして、こういうこともすごい被害者を、そして被害者の遺族を励ましてくれるんだな、ありがたいなと思いました。このような行為は私自身も気づきませんで、受けて初めてそういう行為をありがたいと思いました。

それからあと、ことし青森県でも命を大切にする教室というのが、私が担当したもので5校あります。そのほか、別の交通事故の被害者の遺族の方がお話ししたりして、何人かでやりましたが、私は大学にも1回行ってお話をさせてもらいました。そのときの感想文がどっと送られてきたんですけれども、そういうのを見てみますと、本当に被害者とか遺族になると、自分たちが思わないようなことまで感じるのですね、というふうな内容のものが数多くありました。そして、きょう聞いた話を家族にも伝えて、家族ともみんなで被害者がどんなに苦しんでいるかを話し合いたいというふうに書いてくれた高校生もありました。

私は、その感想文を見まして、私にすれば高校生を主に対象にしてお話をいたしましたけれども、その1人の高校生が家に帰って家族、あるいはまたお友達にお話しするというふうに、いっぱい輪が広がっていくんではないかというふうに考えましたときに、1人の話すことが波のようにだんだん伝わっていけるということは、もしかすれば犯罪被害者や遺族の気持ちを考えてくれるだけではなくて、自分たちが被害者にならないためにはどうすればいいのか、あるいは自分たちが加害者にならないようにどうすればいいのかということにも及んでいってほしいなという思いを込めて、私は読ませてもらいました。

私は、高校生に対しては、きょうのような話が中心にはなりますけども、やっぱり加害者の家族も大変な思いをしているということを伝えまして、一つの事件がおこるということは、被害者や被害者の家族、遺族を生むだけではなく、加害者の家族もつらい思いをしている、もちろん加害者も、それからの人生はすべて大変なものになるだろうということで、高校生が道を踏み外さないようにしてもらえればいいなということでお話をしております。こういったことも、ある意味では支援ということに大きな意味でつながっていくのではないかと拡大解釈しております。

上野: はい、ありがとうございました。

続いて関根先生、よろしくお願いいたします。

関根: ちょっと抽象的な言い方になりますけど、日本の被害者支援というのは、もともと被害者のために何かしなきゃいけない、その思いから始まっています。ですから、何をしていいか全くわからないけど何かしようというところですね。そういう意味ではスピリッツという言い方もしますけども、魂とか精神とか情熱みたいなところから始まったわけです。

それに対して、警察からの援助や日本財団からの援助なんかを通じて、外国からいろんな先生をお呼びしたりしながら、少しずつ技術、スキルですね、2つ目のスキルというものを身につけてきました。そして、だんだん自分たちで被害者を支援することのめどが立つようになって、そして今のような法制度がだんだんでき上がってきているわけです。そういう意味では、スピリッツがあり、またスキルがあり、そして今のシステムという、この3つのSが発展してきたというふうに考えてもいいと思います。

ただ、このときに、システムができ上がったからスピリッツとスキルは要らなくなったのかというと、そういうわけでは全くなくて、スピリッツとスキルとシステム、この3つがそれぞれそろわなかったら被害者の支援にならないということです。つまり、例えばどんなに情熱があって、そして被害者を支援するためのいろんなノウハウがあったとしても、システムが整ってない、法制度がないためにできない限界があります。

つまり、それはシステムがなければいけない。逆にスキルがあってシステムがある、つまり、今いろんな事業が起きてきて、そしてそれに被害者のサポートという形で役割として投入される非常に優秀な方たちがいます。ただ、その方たちが仕事として被害者をサポートしている場合ですね、それは被害者のために何かしなければいけないという、その一番原点になる部分、それがなくてそれをやっていると。仕事として被害者をサポートする形になります。それは、往々にして被害者の方にとって微妙に傷つけることが起きてくるように思います。

というのは、なかなか厳しい言い方なのですけども、あなたたちはどこを向いて支援しているんですかと、被害者を見ているんですか、それとも役所とか警察を見ながらやっているんですかと言われることがあります。つまり、それは事業をどういうふうに成功させるかという視点のほうに目がいってしまって、この目の前にいる被害者をどうサポートするか、目の前にいる被害者の方にどう役立てるかというところ、そこが抜けてしまうと血の通わない支援になってしまいます。ですから、この連携という言い方で言いますと、横のつながりというわけではないですけど、このスピリッツですね、被害者のために何かしなきゃいけない、あとその技術、システム、この3つがあって初めてできるんだというふうに思います。

実際、全国の警察の方たちにお話を聞いても、本当にそういうスピリッツを持って支援をされている警察官の方、本当にたくさんいらっしゃいます。本当に頭が下がる思いでいます。和歌山県警の中にもそういう方はいらっしゃるということを、僕、何回かお聞きしました。そういう意味では、そういうスピリッツを持ってくださる方、そしてそれをどう継承していくかということ、それはとても大事な連携の一つなんではないかなというふうに思っています。
以上です。

上野: はい、ありがとうございます。

県警の池田課長様、お願いします。

池田: 今、関根先生の発言にありましたが、私も実際体験しております。

これは、平成15年に私が警察相談課の次席のときに、犯罪被害者の遺族の集いに出席しまして、警察の取り組みを話したときのことです。私は、自分では一所懸命説明したつもりでしたが、相手にとっては私が得意気になって、「警察がこうこうやりましたよ。こうもやりましたよ。」というふうに聞こえたらしく、最後にその遺族の方から「池田さん、そういうことを言われますけれども、実際、私に何をしてくれたのですか。」と言われました。これは、先ほど関根先生のお話にありましたように、「仕事として被害者支援をやっている。」と遺族の方に思われたようです。遺族の方には、そうとしか伝わっていなかったのです。大いに反省しました。

被害者支援は、口で言うほど易しいものではありません。非常に難しいものです。また、いろいろな考え方の人がおります。ですから自分が、警察職員として、これが一番良いと思うやり方で被害者支援をしたとしても、それは相手にとっては本当の被害者支援になっていないこともあります。

これからも私達警察職員は、いろいろな経験を積んで、もっといろいろなスキルを修得して、被害者支援に取り組んでいかなければならないと、このように考えております。
以上です。

上野: はい、ありがとうございました。

最後になりますけども、県民生活課長の幸前様、お願いします。

幸前: 先ほど被害者の方の隣人とか、周りにいる人の支援が大切だというお話が出ましたけど、孤立という面では、高齢者であったり、子供が虐待を受けるというケースがあって、それを取り巻くさまざまな人が見守っていこうというような取り組み、各地域でされています。ただ、それは場合によっては犯罪被害者の遺族の方を苦しめるものにもなる可能性はあるのかなというふうに、今日感じました。

それで、その支援する側がちゃんと支援するように働くためには、やっぱり相手の立場になって考えていくと、そういうふうなことを息の長い啓発活動といいますか、をやっていく必要があると感じました。それは、その住民の方だけじゃなくて、もちろん行政の職員は真っ先にそれは取り組まないといけないのですけども、幅広くそういった理解を深めていくということが必要と感じました。

上野: はい、ありがとうございました。先程の話の続きになりますが、関根先生よろしくお願いします。

関根: このスピリッツがどうやって出てくるかといったら、やっぱりそれは被害者の方の生の声をまず聞くこと、それが一番大切ではないかなというふうに思います。その中で、何かしなきゃいけない、何かこの人たちのためにできることはないだろうかという思い、それが一番ベースになると思いますし、それが支援を動かしたり、人を動かしていく力になっていくんではないかなというふうに思います。スキルとかシステムは、もちろんあったほうがいいですし、最低限のものはなければ困りますけれども、後からついてくるものでもあるとは思います。

ですから、まずはこのスピリッツを大切にしていただくこと、そこからまず窓口の方に関しても、一般の県民の方に関しても、始めていただけるのが一番大切ではないかなというふうに思っています。そういう意味では、きょうは本当にありがとうございました。

上野: 4人のパネリストの皆さん、本当にありがとうございました。実は、本日のお話をお聞きしながら思っていたのですが、やはり最初に被害者の方の声を謙虚に聞くということがスタートだと感じました。きょうの山内先生のお話をお聞きしながら、その声・言葉を他の人が知るという重要性に今更ながら気づきます。

つまり「聞く」、「知る」、それから「つなぐ」という流れが大切だと言うことを再認識させていただきました。

そういう経験をさせていただきながら、実は今ここで私は、「今日は4時半に終わる」ということを頭の中に置きながら、コーディネータの役割を果たそうとしています。でも、犯罪被害者の方を私達がサポートしていますと時間がとまっているのですよね。この時間を動かすということが、孤独というところから抜け出す一つのキーワードになるのですけども、それがなかなか抜け出せないのです。そこで、被害者の方のお話をお聞きする、そして、知り、そこからつなぐという作業が重要になると思いました。

聞く、知る、つなぐ、こういった意味で、和歌山県は連携を今までもこつこつと積み重ねてきていますが、再度「たが」を締めて頑張っていきたいなと思いました。

本当に、きょうはいろいろな角度からご意見をいただきました。フロアの皆さんも共有できるところが幾つかあったと思います。本当に長い時間、ありがとうございました。

最後に、さまざまな角度から貴重なご意見をいただきましたパネラーの皆様に、再度拍手でお礼の気持ちをお伝えしたいと思います。本当にありがとうございました。

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