■中央大会:パネルディスカッション

テーマ:「性犯罪被害者支援の現状と今後」
コーディネーター:
 河原 誉子(内閣府犯罪被害者等施策推進室参事官)
パネリスト:
 河原 理子(朝日新聞編集委員)
 小林 美佳(「性犯罪被害にあうということ」著者)
 加藤 治子(性暴力救援センター・大阪 SACHICO 代表)
 千載 久美子(大阪府警察本部刑事部捜査第一課 性犯罪捜査指導係)

河原(参事官): 内閣府の犯罪被害者等施策推進室参事官の河原と申します。本日はご来場いただきましてどうもありがとうございます。

きょうは「性犯罪被害者支援の現状と今後」というテーマで、パネルディスカッションをこれから85分間行いたいと思います。大臣の冒頭のあいさつにもありましたように、現行の犯罪被害者等基本計画の期間が今年度末となっておりますことから、現在、次期計画の策定に向けた検討がなされておりまして、この次期基本計画に性犯罪被害者の方々への施策というのも幾つか盛り込まれております。

ところで、この性犯罪被害というものについては、潜在的には相当数あるものの、その特殊性から表面化されにくいと言われておりまして、その実情は正しく理解されていないところもあるのではないかと思われます。

本日ご講演いただきました糸賀さん、性犯罪被害者の声を聞いて、胸が痛むというお話もなさっていただいたかと思いますが、本日はこのパネルディスカッションで、それぞれのお立場から性犯罪被害者の実情や支援の現状などについてお話しいただきますとともに、性犯罪被害者支援のあり方、今後の課題などについて、パネリストの皆様からご意見をいただき、考えてみたいと思っております。

それでは、まず自己紹介も兼ねまして、それぞれのお立場から性犯罪被害者の実情や支援の現状などについてお話しいただきたいと思います。

では、河原さんのほうからよろしくお願いいたします。

河原: こんにちは。河原です。私、ひょんなことから、性犯罪被害が日本でどんなふうに扱われているかという取材を始めたのが、今から15年ほど前でした。日本が「戦後50年」を迎えるに当たって、戦時下の被害について取材していて、そのなかのひとつで、当時「慰安婦」とされた人たちの話を聞きました。半世紀以上たっているのに、記憶のふたをぱかっと開けたように、きのうのことのように語られる。しかも、通訳の女性が泣いて訳せなくなってしまうようなことを、淡々と語る。そのさまがすごく不思議だったし、衝撃でした。一方でなぜ、こういう性暴力被害の問題は戦後社会できちんと扱われてこなかったのか、今の日本ではどうなっているのか、知りたいと思って取材を始めました。

本には、法廷で「セカンドレイプ」を受けると書いてありましたが、実際の刑事裁判はどんなふうに進んでいるのか自分の目で見たいと思い、空いた時間に東京地裁に傍聴に通うようになりました。そこで見た裁判の実情は、当時はですけれども、やはり私にとっては驚きでした。今のように被害者がつい立てを立てて、傍聴席から見られないように、あるいは被告人の姿を見なくていいようにしながら、証言をするということもできなかったし、ビデオリンクもありません。被害者がそのまま法廷に立って、過去の性体験なども聞かれたりする、そのことにも驚きましたが、一番驚いたのは、強姦被害者というのは、本当に嫌だったら必ず大声を上げて、助けてと叫び、殺される恐怖も省みずに抵抗するはずであるという非現実的な被害者像が、司法の前提になっているということでした。

それで当時見た状況を、1996年に「性暴力を考える」という連載にしました。取材のなかで当事者の考えを知りたかったけれど、当時は話をしてくれる被害経験者を探すのがとても大変でした。それでもたった3本の連載を書いたら、たくさんの手紙をもらいました。記事を書いて、たくさん手紙が来て、またその反響編を載せて、また次のシリーズをやっていくというような形で、結局300通ぐらいのお手紙をもらいました。その中に、被害経験のある方からの手紙が多数ありました。

このいただいた手紙を、私はファイルにしてずっと持っています。きょう話すに当たって、きのうの夜、もう一回読み返してみました。当時とは違った視点で、また気がついたことがありました。手紙は、わかっている限りでは、上は多分70代、下は中学生ぐらいから来ていました。

私は当時の性犯罪をめぐる裁判の状況などを書いたわけですが、一般的な憤りはあっても、「私の場合は…」と裁判のことを書いた手紙はほとんどありませんでした。何人か、「警察に行ったけれど、何度も何度も聞かれてつらい思いをした」とか捜査についての感想がありました。けれども、圧倒的多くの人は、それが何十年前の被害であっても、直近の被害であっても、だれにも言えなかった、と書いていました。

当時は、ほとんどが手紙、若干、ファックス、電話でしたが、見返してみると、かわいい柄の便せんに書いてきた高校生、10代の女の子からの手紙がたくさんありました。それから原稿用紙やレポート用紙、あるいははがき一枚に鉛筆で書いてきた子どもたちの手紙もありました。男の子からの手紙もありました。「男なのに被害にあいました。だれにも言えません。家の人が来たらだめなので、急いで書きました。」それだけはがきに書いて送ってきた子もいました。

こんなにも多くの人が、やっぱり被害を抱えているんだと、私自身、目を開かれる思いでした。職場の同僚や上司たちも、当時男性が圧倒的に多かったわけですけれども、「性犯罪被害というのは実はすごく深刻で、見えないけれど、たくさんあるんだ。河原が勝手に言っているわけではなくて、本当にそうなのだと、この手紙の束を見てわかった」と言っていました。

そのころはまだ、性暴力に関しては、新聞にたった3回の連載を載せることも大変でした。警察庁がちょうど犯罪被害者支援に―当時は対策と言っていましたけれども―乗り出したころで、一つの焦点が性犯罪被害者への対応を改め、潜在化を防いでいくことでした。そのきっかけがあって、何とか記事にすることができました。

それから15年ぐらいたって、捜査にかかわること、刑事裁判にかかわる手続は、かなり変わりました。それから、性犯罪の傷は目に見えないけれども、深刻な被害なのだということは、かなりスタンダードに理解されるようにはなってきたと思います。けれど、15年前よりは話しやすくなったと思いますが、それでもたぶん、多くの人は、だれにも言えないと思ったり、近くの人に話してみてもその対応に傷ついたりしているのではないでしょうか。多くの人は裁判まで進まない。警察にも行かない人、行けない人がたくさんいる構造は、今もあまり変わらないのではないでしょうか。

この10年ほど、刑事司法手続を中心に改善が進んできたわけですけれども、これからは、今はだれにも言えない人、警察などにも行かれない人たちも、今より回復していけるように、その地域で生き続けていくことができるように、私たちが何をするのかを考えなければいけないのではないかと思います。

最初のお話はここまでにしたいと思います。ありがとうございました。

河原(参事官): 河原さん、ありがとうございます。

河原さんには長い取材の経験というか、取材で見てきたものということで、導入としてこの性犯罪被害者をめぐる時代状況の変化についてお話をいただいたわけなのですが、次に被害当事者である小林さんのほうから、どんな被害だったのか、あるいはその被害後、どんな心身、心や体の状態になったのかですとか、どんな変化があったか、その辺のところについてお話しいただけますでしょうか。

小林: こんにちは。小林美佳といいます。

今、隣の河原さんも、司会の河原さんも言ってくれたように、当事者、ただの当事者なのですが、今、隣で河原さんのしてきた取材の中でこんな手紙があったというのを聞いていただけで苦しくなって涙が出てきそうになって、どうしようかなと考えていたぐらい、ちょっと今どきどきしています。

私の被害はもう10年も前のことです。男の人2人が乗った車から、道を聞かれて道を教えようと思って、近づいたところ、車に引き込まれて強姦をされました。たったそれだけのことです。犯人も捕まらず、時効を迎え、社会的には私の事件はもう終わったということになりました。私はただそのたった20分ぐらいの強姦という出来事から、人生が変わってしまったとそのときから感じていて、車を降ろされたその後から、生活がすごく変わったのです。

被害のことやっぱり性犯罪被害というと、皆さんクローズアップしてくれるのは、その20分の出来事がどんなにむごかったか、ひどかったかというところに焦点が当たると思うのですが、被害当事者にとってその後の生活というのは、とても窮屈で、今、言えない気持ち、言えない社会、言えない環境があるというお話があったように、私も車を降りた直後からだれにも話してはいけない、恥ずかしい存在になった、汚い存在になったということを感じました。男性が隣に立つのも怖い、そこまでは皆さん想像ができるかもしれないんですが、私は女性さえ怖かったんです。自分が汚いものになってしまって、普通の生活で出会う女性たちすべての人がとてもきれいに見えて、輝かしく見えて、自分が同じ女性であることをその場にいることというのが、自分の存在がとても社会にとって迷惑になってしまったと感じました。

ほかにも性的なものに触れるだけで、例えば映画を見ていたりでも、テレビを見ていたり、ニュースを見ていたりでもそうです。事件のことや、あとは新聞の見出し、スポーツ新聞の見出しや、週刊誌の見出しの中に、レイプや集団強姦という言葉を見るだけで、気分が悪くなって、嘔吐してしまったり、その場で倒れてしまったり、記憶がなくなったまま何時間も過ごしてしまったり、もちろん眠れなかったり、食べられなかったり、そういう生活が始まったんです。

一方で、言えない社会というのをすごく感じていて、すごく近くにいた家族に打ち明けたときも、ほかの人にはもう言わないで、言ってはいけない、言ったらみっともないよというような言葉をかけられて、より自分の中ですべてを抱え込んで生きていかなくてはいけないという気持ちを抱きました。

そう感じているのは自分だけなのだ。本当に世の中であまり性犯罪に遭ったという人たち、お友達にも出会える機会というのがなかったので、自分がそういう目に遭ったのがいけない、またそういうふうに自分が悪かったと思っているのは私がおかしいのだと思って、何とかそれまでの生活を取り戻してはみたんですが、どうにもこうにも納得がいかない。私は道を教えようと思って近づいただけなのに、どうして強姦されなければいけなかったのか。またその強姦というものによって受けるショックというのが、なぜ生活のペースまでを変えなくてはいけない、変わらなくてはいけないようなダメージを受けるのかというのもわからなくて、インターネットやある限られた空間の中で、自分の被害を打ち明けるようになりました。

そういう場で出会った被害経験を持っている当事者たちというのは、私と同じような気持ちを抱えている。たとえ未遂であろうが、既遂であろうが、痴漢であろうが、セクハラだろうが、そのショックというのは共通しているのです。ところがそこをケアしてくれるものというのに出会えない人たちが多過ぎて、それぞれはみんな自分の中に抱えて生活をしているというのが見えてくるようになったんです。

それをあるこういう公の場で、私はいろいろな人の支えを受けて話をする機会をいただいたのですが、実際、こうやって顔を出して名前を出して、自分の被害を語ってみると、想像以上に私も実はそういう経験があるのですとか、あなたのことをもっときちんと聞かせてくださいという人に出会えるようにもなったのです。またその後もチャンスに恵まれて、自分が当時被害後に理解してもらえなくて書きためていた日記というか、手記のようなものを、隣にいる河原さんに取材を受けて、話すのが嫌で、これを見てくれと見せたところ、それが本になって、「性犯罪被害にあうということ」として、世に出ることになったのです。表紙にも私の顔が写っていて、どうにもこうにも、家族にも迷惑をかけるのだろうなと思って、それでも何とか社会に問いかけてみたかったんです。私はみっともないですか、恥ずかしいですか、ほかに被害者はいませんかって、問いかけてみたくて、その本を出してみたところ、予想を超えるたくさんの被害者から声をもらうようになりました。

さっき河原さんが記事に載せたことで、たくさんのお手紙をもらったという話がありましたが、私も全くそれと同じで、毎月100人ぐらいのペースで、私も被害に遭った、僕も被害に遭ったという人が、私に声を届けてくれるのです。顔がわかる小林さんだから、名前も出しているし、自分の被害も書いているし、同じだと感じるところがたくさんあったからと、声を届けてくれた被害者、本を出してから2年半、3年近くになりますが、3,000人を超える被害者、被害経験を持っている人たちからの声を集めることができたのです。

みんなに了承を得た上で、その声を全部拾って数えて、どれだけの人がどういう気持ちを抱えているのだろうというのを、グラフや数字にしてみたところ、8割ぐらいの人が話してもだれにもわかってもらえない。そもそも話ができていない人が6割近くいるのです。何で性暴力、性犯罪、性的な暴力を受けた被害者というのは、言えないのかというのは、私にも今でもわかりません。でも、実際、言えないと思って、理解してもらえないと思っている人たちがこれだけいるのだと私は知ることができて、この声は3,000人の代弁ではないですが、社会にきちんと伝えるべきだと思って、こういう場にも出ることにしました。

犯罪被害者支援というのが、私が事件に遭った10年前と比べて、少しずつは注目されるようになってきて、警察の対応だとかも変わってきたと思うのですが、政策が変わろうと、機関の取組が変わろうと、被害者の気持ちが変わっていない、言えていないというところは変わっていないのが現状だと私は感じています。では、それをどう拾うべきか、どう支援していくべきか、どうしたら言える環境ができ上がるかというのは、きょうこの場で皆さんと一緒に考えていけたらなと思っています。

パネルディスカッションということなので、多分、これから皆さんが少し光を見せてくれる―答えは出ないかもしれないけれども、考える時間、考えることができるだけでも、性犯罪の被害者、性暴力の被害経験を持っている人たちのちょっとの救いになればと思っています。

なので、これからの時間、少しよろしくお願いします。

河原(参事官): 小林さん、どうもありがとうございました。

実名とそれとお顔を出してお話をいただくという、そしてその小林さんに対する信頼のもとにたくさんの声が寄せられる。その小林さんがこういういろいろな場でお話しいただくという、大変大きな存在で、これから後半のところでまたいろいろと小林さんからも伺いたいと思います。次にSACHICO、ことし5月から運営が開始されましたSACHICOの代表であられます加藤さんのほうから、どうしてこういったことを始めるようになったのかですとか、その概要とか、半年ほどやってみてのどんな状況かというようなお話を、資料、パワーポイント(性暴力救援センター・大阪(SACHICO)開設後半年の現況 (PDF形式:252KB)別ウインドウで開きます)を使いながらご説明お願いします。

加藤: 大阪から参りました加藤治子です。私は、大阪府松原市というところにあります人口11万ほどの小さな市なのですけれども、そこに地域の総合病院として、1973年から開設された阪南中央病院というところで35年産婦人科の医師をやっております。産婦人科ですので、たくさんのお産に立ち会い、婦人科の病気、筋腫だとか、子宮がんとかの病気の患者さんをたくさん診せていただく中で、女性への暴力の問題が心と体の健康に大きな影響を及ぼしているということをずっと感じながら、今まで仕事をしてまいりました。

産婦人科医としてなすべきことがあるとは思いながらも、非常に中途半端な形でできるかかわりというのをスタッフと一緒に考えてきたのですが、このたび、院内のスタッフ、それから大阪でずっと草の根の運動をしてきた女性団体の人たちと一緒に、性暴力の問題に本格的に取り組めるネットワークと、それの拠点づくりをしようと、1年間、議論を積み重ねまして、準備をしまして、この4月から性暴力救援センター・大阪というのを立ち上げることができました。

まだまだ走りだしたところなのですけれども、本日はそれを紹介させていただこうと思います。性暴力というのは、レイプ、強制わいせつなどの、いわゆる性犯罪被害と言われる性暴力だけでなく、DVの中の性的な暴力も性暴力であり、それから子どもへの親しい関係の人、父親だとか兄だとか祖父だとか、そういった保護的な立場にある人からの性的な行為を、性虐待というふうに定義するわけですけれども、それも性暴力です。そのほか、ポルノだとか盗撮だとか、セクハラも含めまして、いろんな性暴力があります。その中でも産婦人科医療として、しばしばかかわる性暴力は、この三者と考えられます。全部お話しするととても時間が足りませんので、本日はレイプ、強制わいせつなどの性犯罪被害といえる性暴力について、少しお話をさせていただきます。

このSACHICO、性暴力救援センター・大阪を立ち上げるまでにも、しばしば、といってもそんなに多くはないのですが、診療の場で性暴力被害の人を診る機会はありました。年間大体、10例前後ですね。4年間で32例ぐらいの方々ですけれども、その人たちの様子を見ますと、まず、10代が多い。被害に遭った時間帯は、深夜帯も多いのですが、昼間だとか、まだ明るい時間帯の被害というのも決して少なくないという状況です。被害に遭った場所は、外に限らず、自宅にいて被害に遭うということも珍しくないです。かぎを開けて入ろうとしたら、後ろから押し込まれて、自宅で被害に遭う。あるいは、マンションのベランダに物干しに出て、そして入ってきてかぎをかけていなかったら、ベランダから入ってきて襲われるといったような、一番安全であるべき自宅が、そういう被害に遭う場所になってしまうということも珍しくありません。それから、駅で降りて歩いていたら、車が寄ってきてそこに入れられてというようなこともあるという状況でした。

ここには出しておりませんけれども、この32例中、7例が妊娠してきたのです。1回の性被害に遭って、妊娠することは非常に少ないのですけれども、病院に来る被害者の中で、妊娠をして来られる方が32例中7例ということになると、非常に高い確率です。ということは、裏返せば、病院というところは行きたいところではないけれども、妊娠したからやむなく行くということだと思います。7人のうち、2人は見つかったのが7カ月とか10カ月で、中絶できない時期で、産まざるを得なかった。2人は初期の中絶、2人は中期の中絶、1人は流産というような経過でした。こういった性暴力被害者に対し、医療にできることをまとめてみますと、女性にとっての救急医療として取り組むことが必要ではないかというふうに考えられます。特に、被害から72時間以内に緊急避妊のためのホルモン剤を飲むことによって、妊娠を98%ぐらいは避けることができます。この知識がまだまだ普及していなくて、何日もたってからようやく病院に来られるという場合があるわけですけれども、この72時間以内というのがとても大事なのです。

それから、STDと書いていますのは性感染症ですけれども、もらってしまう場合がありますので、その性感染症の検査、それから外傷の診察、それから妊娠している場合には中絶の処置ということが、女性の心と体への緊急医療としてする必要があります。同時に、心が非常に打撃を受けておりますので、心へのケアを始めるということが必要です。

それから被害を受けたすぐであれば、体に残っている証拠物を採取するということも可能なわけですね。といったことが産婦人科医療として、救急医療としてすることができるわけです。

それからもう一つ、自分で選ぶ、決めるということができない、すなわち自己決定権を奪われる被害というのが性暴力被害なわけですね。ですから、自分が選び、自分で決めることで、自分に必要なケアを受け取っていくという状況をつくる。それから、あなたは悪くない、あなたはけがれていない、汚れていないということを、しっかりと伝える。それからほかの機関との連携をつくっていくということが考えられます。

そういった被害直後からの総合的な支援を目指して、Sexual Assault Crisis Healing Intervention Center Osaka、そのまま訳しますと、性暴力の危機に治療的に介入するセンター大阪、頭文字をとって、SACHICOと名づけました。

人の名前のサチコさんは、KOですけれども、センター大阪ですので、COなのです。これをくれぐれも覚えておいてほしいのですけれども、スタートした時点で、世のサチコさんからクレームがたくさんきまして、性暴力みたいな、何か怖い名前のついたところに私の名前をつけないでくれというお電話やお手紙をもらいました。

その危機に治療的に介入するというところを救援という言葉でまとめまして、性暴力救援センター・大阪というふうに名づけました。私の働いております病院のほうが非常に理解を示してくれまして、事務室及び事務長室を明け渡して、そこにつくってくれました。これを取り囲むネットワークを大阪府内につくりました。

性暴力の被害者がこのSACHICOにいる支援員に電話をかけてくる。電話でお話を聞いて、それで終わる場合も多いです。中にはぜひ一度お越しくださいということで、来ていただいてお話をします。電話を聞いた支援員がそこにはおりまして、必要であれば産婦人科の医療を受けられますよということをお勧めして、了解が得られれば、医師の診察をします。これは産科のある病院ですので、常に産婦人科の医師はおります。できるだけ女性の医師が診るということをしておりますので、男性医師が当直のときは待機の女性医師が出てくるという形で診ております。さらに必要なカウンセラーや精神科の医師などにつないでいくということができます。ご本人が希望されれば、警察に通報するということをします。すると大阪府警との連携ができておりまして、その所轄の警察から、SACHICOへ来てくれます。事情聴取をしてもらいます。すぐには言えない場合は、証拠採取して保管しておきます。現在、性暴力に関する法律はありませんので、DVのように相談の窓口が今はどこにもないわけですね。被害者は飛び込むところというと、警察しかないのです。警察からSACHICOのほうに連れてきていただくという場合も少なくありません。 さらに必要な大阪府下の団体と連携をしております。大阪産婦人科医会の支持をもらっております。それから大阪の弁護士さんたちが手を挙げてくれまして、23人、そのうち、男性弁護士1人入っているのですけれども、23人の弁護士さんが、2人ずつ2週間ごとのシフトを組んで、その2週間はこの弁護士に相談をかけていいという形での弁護士の支援もあります。

それからこれが「ウィメンズセンター大阪」。もう25年やっている草の根の女性団体なのですけれども、このメンバーがほとんどこの支援員をやっております。24時間ですので本当に大変なのですけれども、泊り込んでやっております。同時に、支援員を養成しております。現在、二十四、五人の支援員で回している。それから「性暴力を許さない女の会」ももう二十数年の歴史があるのですけれども、支援員として入ってくれているという状況です。

中の写真ですけれども、これが待合室で、別の場所、産婦人科の外来があるのですけれども、それとは別の場所で、ほかの患者さんたちと一緒に待つということ自体がとても苦痛ですので、別の場所に別の待合室をつくりました。このドアを入りますと、ここが面談室で、ゆっくり横にもなれるという状況でお話を聞いております。これがホットラインを受けつけている作業スペースですね。この支援員がホットラインでお話を聞いております。この奥に見えておりますのが診察室で、子どもの場合はベッドで寝転ぶ形で、それから内診する場合はこれが開いてという形で診察をします。ここで医者と被害者の方がお話をします。この頭の側にトイレとシャワーがあります。

スタッフは今言いましたように、ウィメンズセンター大阪が養成して、現在第2回の養成講座を開催しております。

資金は、今のところ全く公的な資金が得られておりませんので、すべて寄附で賄っております。基金をつくり、カウンセリングの費用をこの基金から出し、あるいは医療費が出せない場合には補助をするといったようなことをしております。

他の機関との連携、これは後で千載さんが話してくれますが、大阪府警との協力関係がかなり密にできるようになりまして、先日も合同の研修会を府警が主催してやってくれました。この半年間を振り返っての議論というものもできました。それから弁護士とか、児童相談所との連携もできまして、大阪府、大阪市、堺市、奈良県、滋賀県などの児童相談所から、子どもさんを連れて、滋賀県から1時間余りかけて走って連れてこられているというような状況です。

6カ月たちまして、電話相談が大体、最初は100件もなかったのですけれども、この6月ぐらいから百数十件あるようになって、6カ月で700件余りの電話相談、この多くは過去に被害に遭って、やっとお話ができたと、電話でお話ししただけでも、ちょっと気持ちが楽になりましたという方が多いです。それからリピーター、何回もお電話をしてくださる方もおられるし、無言電話を何回かして、やっと声が出るというような方もおられます。実人数はですから456人です。その中で実際来られた人数は138人という状況です。

その中でも本当に最近の被害で、何らかの医療的なケアが必要な新しい被害の方は、レイプ、強制わいせつの方が39人ですね。SACHICOスタートまでは、年間10人あるかなしかで、4年間で32人だったのですけれども、半年でもう既に40人近くの方が利用していただいているという状況です。それから性虐待の子どもたちも19人というふうに、これは今までのペースよりもちょっと多いペースで来てくれております。

この39例のレイプ事例を年齢で見ますと、やはり20歳未満が多いです。この39人が警察へどの程度通報しているかといいますと、警察に通報してから来られているのが36%、来られてから警察へ通報できたのが20%ですね。残りの44%はやはり警察には言えない。もう言う気持ちにはなれないということで、通報がされておりません。

早い時期に来てくれていますので、いろいろな対応ができております。緊急避妊が処方できたのが17人ですね。性感染症の検査ができたのが31人。証拠採取、これは警察には通報していない場合でもご本人が同意されれば採取して保管しておきます。あなたがその気持ちになれたときには、ここに保管していますからねということで、証拠採取をできたのが20人、中絶をしているのが4人、これも多いですね。39人中4人が妊娠して来られているというのは、やっぱり確率的には多いと思いますね。来られたらその場で妊娠の診察もできるし、中絶のための手続もすぐに始めることができるという状況があります。それから中絶以外で入院、食べられない、眠れないといったような状況で入院されたケースが1人、弁護士紹介が3人でした。

39人の加害者のうち、知人、顔見知りが27件でした。これは内閣府の調査でもそうですけれども、やはり顔見知りが多いですね。それがゆえに警察に言えないという理由になっているわけです。それから集団レイプが7件、うち、通報できているのが5件です。この中で捕まったのが1件だけですね。もうすぐ捕まえると言って府警が今頑張っておられるのが1件で、残りはほとんど手がつけられていない状況です。薬物使用は3件でした。

半年やってみて今確認できていることは、やはり24時間体制のホットラインの意味があると考えております。やっと電話をつかんで電話をして、その電話が通じないという場合には、その気持ちが萎えてしまうわけですね。だから言いたい気持ちになったときにつながるという意味で、24時間体制のホットラインが必要だと思います。しかもそこに、お話を聞いてくれた、電話で聞いてくれた人がいる。あるいは勤務がかわっていますと別の支援員がおるのですが、それがちゃんと電話事例のシートになって書けていますので、ほとんどわかる状況でそこに支援員がいるというようなことが大事かと思います。しかもその支援員のいるところで、産婦人科の診療を受けることができるということが、やはり意義があるかなというふうに感じております。

同時に、今後の課題としましては、事例ごとに非常に重い内容ですので、私たちの力不足、経験不足などから、十分支援し切れていないケースというのはたくさんあります。それから警察との連携の問題もありますね。やはり警察は、加害者を捕まえるということが仕事です。だから警察にとって必要な情報は、いつどこでだれがどんなふうに、証拠はどうでということが、当然なのですけれども、求められるわけですよね。支援する側、あるいはご本人にとっては、どんな被害を受けて、私の心はこんなに痛んでいて、体はこう痛んでいて、そして安全な場所でこれから生活できるのか、サポートしてくれる人はだれなのか、仕事はどうするのか、学校はどうするのか、あしたからの生活はどうするのか、心のこのしんどさをどうするのかといったことは、被害を受けた人にとっては大事であり、それを支援するということが必要なのです。そこのギャップがどうしてもできてきまして、警察に言うということの、言ってみてしんどくなってしまった方もおられますので、そこが一番難しいところかなと思います。

それから、医療費の問題、それから支援員の力量をつけていくためにも、支援員の研修というのはかなり続けていかなければいけないという問題ですね。それから産婦人科医というのは、非常に忙しい生活をしております。その中でこういった問題に理解を持って、今私のところの病院では、5人の女性の医者が協力して、夜でも昼でも診察をしているのですけれども、実際はとても大変なのです。これ以上、被害の方が来られたらとても診切れないという声を出している状況なのです。この問題に理解のある医者をふやす、それは病院にも理解をとりつけるということが大事で、やはりその裏づけになる公的支援というのが必要だと思います。

今のところ、原則ボランティアの人たちに支えられてやっていますが、公的な支援がなければ続けられるものではないと思っております。

河原(参事官): どうもありがとうございました。半年間の具体的な取り組みをお示しいただいて、いろいろと今後考える参考にもなるお話だったと思います。

今のお話にもありましたが、大阪府警との取り組みなどということで、千載さん、捜査第一課性犯罪指導係というお立場で、今大阪府警で指導的な立場で、いろいろな具体的なことをやっていらっしゃると思いますので、そういった取り組みですとか、またご自身は捜査官として捜査もしていたということだと思いますので、いろいろお話を伺えればと思います。 お願いします。

千載: 初めまして。大阪府警の捜査一課で性犯罪の捜査に従事しております千載と申します。きょうはよろしくお願いいたします。

今、ご説明いただいたとおり、今から、性犯罪の被害に遭った場合、警察に届け出たらどういった配意がなされているのかというようなことと、そして、私自身が刑事として現場に携わってきて、被害者の声だとか、どういうふうに本当に生のところを感じているのかというところを、今後何かのお役に立てばと思って、お伝えさせていただきたいと思います。

まず、性犯罪の申告率の低さというのが先ほどから言われていますけれども、「被害をだれにも言えない」とか、「被害後に誰か助けてほしい」という思いを持っていても、なかなか言えないという現状がある中で、やはり警察としては「何とか泣き寝入りせずに届け出てほしい」というところがあります。そうすることで、被害者の方にとって、犯人が捕まるということと、捕まっていない状態が続いているということでは、その後のご本人の回復にも大きく影響すると思っていますし、また、どこにも言えないまま孤立してしまうということも防ぐ。そういう意味でも届け出ていただきたい。さらに、警察としましては、次にこのような被害者の方が出ないために、何としても早く捕まえたいということもあり、勇気を出して届けていただいた方の支援と、そして、その届け出ていただいた声を最大限に活かして、何とか犯人検挙に結びつけていきたいというところです。

では、届け出ていただくためには、やっぱり安心して届け出ていただく環境をつくっていかないといけないと思っており、その中でなされていることを順次ご説明いたします。

まず、警察へ届け出たらどうなるのという不安があると思うのですが、最初はいろいろな事情聴取があり、必要があれば病院に一緒に行かせていただく。捜査のご協力をお願いする。各支援団体への引き継ぎや、支援制度で各支援に結びつける。この各段階においても様々な不安があると思います。110番されたら、警察が来る。そうしたら制服のお巡りさんがたくさん来るとか、パトカーがいっぱい家の周りに停まっていたら、近所の人に知られてしまう。そういう不安があるかと思います。今では、110番されましたら制服のお巡りさんが伺っていいかということもお聞きしますし、「女性警察官がいいですか、男性がいいですか」―必ずしも女性を希望されるとは限りません。「いいえ、男性のほうがいいです」と言われる方も中におられますので、被害者のご希望をお伺いして行かせていただく。そういったことで少しでも不安を解消していただくということをしております。

では、実際に病院へ行く、いろいろな検査とか不安だと思いますが、先に協力病院のほうへご連絡をいたしまして、本人さんのご了承を得たうえで、先に警察からお医者さんに被害の内容をご説明させていただく。なので、中に入ってもう一度被害者の方がすべてを説明していただかなくていいようにしています。また、女医さんに診ていただきたいという方もおられますし、ほかにも、待合室はやはり一般の方と別にしてほしい、シャワーをすぐ浴びたいんです、そんな不安をたくさんお持ちだと思いますので、できるだけそういうニーズに応えていただける病院を手配して行かせていただくようにしています。なので、大阪府警では府下のそういった協力病院について、ここの病院は待合室を別にしてくれます、ここの病院は女医さんが対応してくれます、そういう病院を一覧表にして各警察署に配っており、被害者の方のご要望を聞いて一覧表から病院を探して行かせていただくというようなことをしています。

また、病院に関しては、先ほど加藤先生のお話でもありましたけれども、72時間以内の緊急避妊薬であるとか、あと性感染症の検査について、すべてではありませんが、公費で支出されるという制度もあります。

では、捜査についてですが、「事情聴取とか裁判のことを考えると不安だ」ということをよく口にされます。今では被害者の方の個人情報を守る法制度の整備が整いつつありますので、そういったことで工夫をして個人情報を守ったり、「顔を知られてしまうんでしょうか」という不安についても、先ほど河原さんのほうからもあったように、遮へい措置であるとか、写真でも顔が表に出ないよう、できるだけ一つでも不安材料を解消して、捜査にご協力していただくように工夫をしています。

次に、各支援についても、様々な不安がおありだと思います。捜査に協力していただいて、非常に不安で、精神的にも負担になる部分もあるかと思います。そういった場合に、希望されれば、臨床心理士の方のカウンセリングを受けていただくという制度もありますし、その方のニーズに合わせてSACHICOやその他、いろいろな支援団体へ連絡し、その後の支援をお願いするということをしております。その引き継ぎにおいても、被害に遭った直後には、被害者にとって担当者がかわるということは非常に負担になりますので、その団体へ行くときに、ご希望されれば一緒に同行したり、事前にその団体とのコミュニケーションをきちんととって、顔の見える関係を築いて、安心して被害者の方にそちらに行っていただけるような環境づくりに努めています。

また、他にも住居について言えば、例えばお家で強姦の被害に遭われたときなどには、その家にまた住み続けるというのは非常に苦痛ですので、大阪では府営住宅を手配して入居できる制度等もあります。
今のお話は、警察に届け出ていただいた方に対して、できる限りの支援をするなどの配意事項や具体的な内容となりますが、その他に、今年力を入れましたことがあり、それは、誰にも言えないという被害者の方の場合、警察には届け出ないけれども、産婦人科には行くという方がおられると思います。こういう方で、産婦人科に行った後、1カ月、2カ月して、やっぱり許せない、やっぱり警察に届け出たいと言われる方も中にはおられます。その段階で届け出ていただいても、もちろん、捜査を進めていくこともできますけれども、できれば証拠というのがあった方が、その後の裁判で犯人につながりやすいですし、被害者の方の裁判での負担というのも軽くなります。ですので、そういったことを何とかできないかということで、今年、大阪府下の産婦人科のお医者さんに、こういう方がもし来られた場合に、こういう情報を提供していただきたいという内容であるとか、性犯罪の被害者への対応や特質、また、証拠採取のご協力依頼、支援情報、被害者個人ではなかなか知ることが困難な情報なんかを、病院を通じてしていただけませんかということについて、そういう冊子を作って、産婦人科のお医者さん1,200名に配らせていただきました。

それをお配りしてまだ半年ですけれども、数件、産婦人科から問い合わせが入っております。「こういう被害者の方が来られていますけれどもどうしましょう」ということで、その都度アドバイスをしたり、まだ1件ではありますが、実際に警察へまだ届け出ないが、産婦人科へ先に行かれた方もいらっしゃいます。その冊子を見て証拠を採取していただいていた産婦人科もありました。しばらく悩んで、いろいろなことを悩んでから、やっぱり届け出ますということで、その後、警察に初めて届け出られたときに、事前に産婦人科でとってもらった証拠も一緒に提出していただいた。その産婦人科でとっていただいていた資料というのが非常に貴重な証拠となりましたし、犯人が逮捕されたということで、少し被害者の方も安心されたというようなこともおっしゃっていました。こういったことを今大阪では取り組んでおります。

そういったように被害に遭われても警察へ届け出ずに産婦人科に行った場合は、こういうフォローをしていただきたいというようなことをお医者さんにお願いしています。しかし、それでも警察に届け出ることができないという方もたくさんおられます。そのため性犯罪被害の相談電話というのを設けたりとか、女性相談の交番というのを設置しておりまして、できるだけ相談を受けやすい、しやすい環境を整えています。また、ご相談を受ける中でも「すぐに犯人を処罰してほしいのです」という気持ちになられる方というのは多くなく、そんなにすぐに決められるものではありません。ですので、まずは本人さんの心と体の安全を第一に考えた方法であるとか、情報を提供させていただく。そして、それプラス、やはりもう少し考えていただいて、何とか後に届け出したいというときのために、「証拠を確保してほしいんです」ということもお願いをしています。それは被害者さんそのものではなくても、第三者の方、実は私の知り合いがというご相談であっても、「まず証拠をちょっととっておいてもらえませんか」と。「落ちついてからで結構ですので、少し考えていただきたい」と。その間に、こんな支援団体もありますので、おつなぎすることもできますよというような形でお話し、すぐに届け出を出してください、出してくださいというようなことは言わないようにしております。捜査の協力をそういった形で、周りの方にもお願いをしております。

例えば、被害に遭われた方が周りにおられた場合に、証拠というのが服や体についていたりというのが実際あります。なので、どうしたらいいか。例えば洗濯をしないとか、触りまくって証拠がなくなってしまうことを防ぐために、できるだけその着衣を脱いで新品のゴミ袋で結構ですので入れておいて、口をしっかりふさいでおいてもらう。そして後に届け出をしたいというときに、一緒に持ってきていただく。そういうちょっとした配慮で、後の裁判での被害者の方の負担というのが本当に変わってきますので、ご協力をお願いしております。

これらが具体的に配意させていただいていることですが、実際にいろいろな制度が整っていても、被害者の方にとって一番の不安は、やはりどんな目で、目の前に来た警察官が私の話を聞いてくれるんだろうということが一番不安かと思います。やはり対応する一人一人の警察官が、性犯罪に対する理解であるとか、この被害者の方が何を今困っていて、どういうことを求めておられるのかというのを、本当に目を見て理解して、何とか方法を探ろうとする、そういう警察官が目の前に来ないと、幾ら制度があっても形だけで終わってしまう。そういうふうなことが本当に大切だと思っており、今、一人一人の警察官に対しても、被害者の方の心理というものの理解が必要だと思い、先月も小林さんに大阪府警に来ていただいて、警察官の前でご講演をしていただきました。その後、一人一人の刑事からのアンケートなども届きまして、その被害者の方の生の声というのは、自分たちにとっても本当に考えさせられるものがあって、目の前に来た被害者の方に対してどう接していくべきかというのを、本当に考えさせられたということでした。まだまだ最近でも、警察からの二次被害があるとの声も上がっていて、そういう不十分な点はあるのですけれども、そうやって少しでも現場の考え方とか意識というのを変えていこうということを、今、取り組みでさせていただいています。

今までのお話が、警察での具体的な配意事項ですが、他にも現場で感じていることなんかに関しましては、ディスカッションさせていただきます。

河原(参事官): 千載さん、ありがとうございました。

それでは、残りの時間、わずかではありますが、少し皆様と意見を交換したりして考えてみたいと思います。先ほど小林さんのほうから、問題提起をしていただいたと思っております。声を上げられない人がたくさんいるが、どうして言えないのか。それが警察に言えないというだけではなくて、周囲の人にすら言えない。それはどうしてなのかわからないけれども、どうしたら言えるのかというようなこと。そして、河原さんのほうからは、捜査や公判というのはいろいろと進んできたけれども、地域で今後どうしていくのかというようなことをおっしゃっていただいたと思います。

また、加藤さんのほうからは、捜査という立場と、それから支援にはなかなかギャップがあるというような問題提起もあって、このあたり現場でまさに捜査をしつつ、被害者の方に接している千載さんが苦しんでおられるところなのかもしれないと思っております。

そこで、どうしたらいいのかということを考えるためにも、ちょっと河原さんのほうから取材者として性犯罪被害の方々のお声あるいは見てきた社会とか、そういったもののどんなところが言えない原因なのかとか、あるいは言えないと言っている人はどうして言えないと言っているのかとか、そんなところをちょっと簡単にお話しいただけますでしょうか。

河原: どうして言ってはいけないことだと思うのか。私自身も知りたいことで、小林さんにも聞いたし、今までいろいろな人にも聞きました。説明をしてしまえばいろいろあるのですけれども、一般の人、例えば学校や勤務先、自分の仕事先の人に知られたくないというのは、多くの人が理解してくれると思いますが、近い人にも言えない時がある、大切な人だから言えないことがありますよね。先日、性犯罪の裁判員裁判を傍聴していたら、若い一人暮らしの女性が被害にあった事件で、裁判員の女性が「どうしてお母さんに言えないのか、被害にあったらまず親に相談するのではないですか」と被害者に質問していました。これがやっぱり一般の人の感覚なのだなと思いました。私も、聞いてなるほどと思ったのは、お母さんが自分のことをただでさえ心配しているのに、こんな被害にあったとは言えない、ということもある。親子関係が必ずしもうまく行っていない場合もある。そうやって近い人にも言えないことがあります。

それから、身近な人からの被害は、私もきのう手紙を読み返してみて意外に、自分の記憶よりも多かった。お兄ちゃんだったり、義理のお父さんだったり、いとこだったり、おじさんだったり。その場合、自分が言うと、目の前の人間関係が壊れてしまうということがあります。

ただ、小林さんのところに3,000人からの連絡があった。それから愛知県で性犯罪に遭って、そこから生きてきた日々を「STAND」という素敵な曲にしているPANSAKUさんという女性デュオがありますけれど、彼女のブログにも、被害者やその友人からたくさんメールが寄せられているそうです。それに、SACHICOがオープンすると、半年で過去4年分の人が来た。「ここに行っても大丈夫」「ここだったら聞いてもらえるかもしれない」、ここに耳があるのだとわかったら、これだけの数の被害体験が寄せられる。そこから考えると、言えないのはやっぱり「受けとめてもらえない」と思っている、理解されないと思っているからではないでしょうか。

河原(参事官): 小林さんはいろいろな方のお話を聞いていると思うのです。どうして言えなかったのかとか、あるいはこんなことがあったらよかったのにというのは、やっぱり安心して聞いてもらえるというところでしょうかね。どんなことを皆さんおっしゃっていますか。

小林: 私もこういう場に出るようになって、何が足りないかとか、どうして言えないのだとか聞かれるのですが、とても苦しい質問で、わからないけど言えないと思ったんだもん、というところがざっくりと、本当にそれが多分被害者の気持ちなのだろうなと思うんですが、みんなの声を聞いていても、やっぱり今お話にあったように、身内からの暴力だとやっぱり言いにくいというのがあるのと、あとは性生活というものは一般的に楽しむものなのだと、アダルトビデオがあったりとか、私がさっき言ったように、電車や新聞で、見出しとして注意を引くために性的な言葉が載せられることが多い。そういうのを容認している世の中だとすると、楽しんで当たり前のものなのに、自分は窮屈な思いをしているし、自分はこんなに嫌な思いをしているけれども、周りは楽しんでいるものなのだから、言ったら自分が苦しんでいることさえばかなのだと思っている人が、感じている被害者というのがすごく多いなと思うんです。

だから、すごく答えとしてさくっと出すのが難しいのですが、オープンであるというか、暴力的な性の表現とか、そういうものを公に許しているわけではないんでしょうが、それを置いているコンビニに、いやらしい雑誌があったりとかするのも結構気になるという被害者が多いので、楽しまなくてはいけないというその風潮が、被害者を言いづらくさせている被害状況、楽しくないこととして性のことを言わなくてはいけないので、それはすごく窮屈なのだろうなというのは感じることがあります。

あと、女性だったらもしかしたらわかるかもしれないのですが、婦人科の診察台に初めて乗る10代の子たちとか、若い子というのはとっても嫌がる、診察台で足を開かなくてはいけないということに抵抗を感じる、それと同じだと思うんです。自分がされたこと、それをまた好奇の目で見られるのではないかという恐怖から、言い出しにくい、言えないというのは、被害を受けた人であれば、言えなくて当然だろうと思うのです。私は被害を受けてしまったせいで、それが当然のこととして理解できるために、それがなぜなのかというところを皆さんにきちんと説明できないのがもどかしいところです。すみません。

河原(参事官): ありがとうございます。

やはり社会の意識というか、文化があるのかもしれません。性というのが楽しむもの、あるいはなぜか犯罪被害という言葉だけでも何か特別なもので、何かふっと引いてしまうような方がまだいらっしゃるかもしれないと思っている中で、先ほどSACHICOの加藤さんのお話でしたでしょうか、サチコの名前が性犯罪などという怖いものにというようなお話があって、そういったやっぱり何か特別、何かちょっと違うのだという、ふたをするような、何かそんなものがあるのかなというような気はしておりまして、やはり繰り返し繰り返しいろいろな場で、声を上げてくださる方や、その声を聞いている方たちが言ってもらうことが大事なのかなというふうに思っております。

ちょっと話は飛ぶのですが、千載さん、先ほどいろいろと現場で思うこともあるというお話でしたので、ちょっとそこら辺を、今ともちょっとまた飛ぶ話だと思いますけれども、お話しいただけますか。

千載: 110番なんかで現場に行きますと、被害者の方がどんな状態になっているかというと、すべての被害者ではないとは思いますが、その被害者の方はもうガタガタ震えており、「そっちへ行ってもいい」と聞いても応答がなく、どうしようかと思って、近づいていって、お部屋の中だったんですけれども、ああ震えている、どうしようと思ったんですけれども、のぞき込むともう白目をむいてガタガタ、震えるというよりも痙攣みたいになって、正気を保っていられないような状態の被害者の方もおられました。そのときに結局、現場に駆けつけた警察官として本当はその証拠とかを確保するというのもあるのですけれども、もう本当にぎゅっと抱きしめて、何とかそこから安全な場所へ、彼女が安心できる場所へということを考えたりして対応をさせていただいたりしたことがありました。

それがもう数年前の話で、当時は、ちょっと落ち着かれてから産婦人科にはすぐ行きました。その後、心のケアなんかの病院に行き始めたのですけれども、被害者の方は、その病院にはそういう犯罪に遭ったとは、よう言わん、話せないということでした。それで、眠れない日が続くので、眠れるような薬だけもらっていますとのことでした。

このように被害直後の、本当に命も脅かされるのではないかなというぐらいの精神状態にある被害者を目の当たりにしてきました。そういう状態の被害者の方を急性期と言われるのですかね、このような被害者の手当をどうしたらいいかということで、今でこそ、去年も加藤先生にお世話になったりして、適切な支援につなげていけるところがあります。警察では、捜査ももちろんですが、被害者が全然違う方向の医療の診察を受けたりしてしまわない支援ということにつながっています。このような急性期、被害直後の被害者の方の心の状態がどんな状態にあるかというのは社会には本当に伝わりにくい、外に出にくい内容だとは思うんですが、それを理解をして社会全体で支えていかなければ、被害後に時間が経ってから、後にいくらケアに入ろうと思っても、手遅れの場合もあると思います。現場で、被害直後の被害者と接してきて、そういうことを感じます。なので、被害の現場には捜査と、支援と、きちんと2本立ての支援が最初から入るようなことがなければ、なかなかこの申告率というものも上がらないですし、孤立していく方も多いですし、被害者の方に、なかなか支援が届かないと感じています。

河原(参事官): ありがとうございます。

捜査と支援、2本立て、こういうことをしようと思うとネットワークというか、連携が非常に大切になってくると思うのですが、これから加藤さんにワンストップのことをお聞きしたいとは思うのですけれども、その前に一つ、ちょっと私のほうからも申し上げたいのが、私、検事なのですけれども、加害者を捕まえる、処罰するという側と、それから支援というギャップがあるというお話について、本当にうーんと思ってしまうところです。我々捜査、裁判に携わる者としては、やはり悪いことをやったやつは悪いのだと、世の中にそのままにしてはいけない、きちんと処罰を受けさせなければいけないというふうに思ってやっております。そういったことできちんと処罰を受けさせることが、ある一定の被害者の方々には何がしか一歩二歩踏み出すことになってくれているのではないかということを信じてやっているところです。ただ、限られた時間の中で、そして証拠というものを集めるという過程において、恐らく傷つけたりすることがたくさんあるのだと思います。

ですので、そういった制度に携わる者が、やはり虚心坦懐に気持ちとそして技術、そういったものをきちんと身につけること、そしてシステムとして、やっぱり支援ときちんと連携できていくようないろいろな模索というのはしていかなければいけないのかなというふうに思っているところです。

加藤さんに伺いたいのは、ワンストップ支援センターを6カ月ほどやられてみて、ワンストップ支援センターというのは、別に定義があるわけではないんですが、一応、我々内閣府のほうの基本計画では、事情聴取、証拠採取などの警察の活動と医療と相談、これが一つの場所でできるようなところということで、その設置・促進などをやっていこうとしているのですが、実際にやられてみて、そのあたり、ワンストップは何が必要とか、あるいは支援全体で何が必要とお考えでしょうか。

加藤: 始める前からそうかなと思っていたんですけれども、半年やってみて、常に警察官に居てもらいたいという感じを持ったことはないんですね。呼べば来てくれたらもう十分だと思っております。今現在、府警からもそういうふうに動いてもらえているから、もうそれで十分かなと思います。というのは、言えないという理由の中に、ご本人が本当におぞましいというか、屈辱的な被害について、思い出すことすらとても嫌なのですけれども、警察の事情聴取というのは、やはりそれを繰り返し思い出して、正確に伝えないといけないという、そういうことなのですね。それはやはり被害者がかなり力を取り戻せて、そして犯人への怒りも大きくなってきて、その上でないとなかなか事情聴取ということには耐えるのがとても難しいです。怒りに任せてというか、周りもそう言えというから、警察に言って事情聴取にも来てもらいましたが、その後でさらに苦しくなってしまわれる、しんどくなってしまわれる方というのは何人もこの間におられましたので、やはりその辺はとても慎重に考えないと、まずこの人をいかに支えるのかというところから、それが警察にも通報するということにつながっていけばいいかなと思います。

もう一つは、性被害は親告罪ということもありまして、本人が被害届を出さないといけないわけですね。ということになると、顔見知り、あるいは知り合いという相手だけに、被害届を出して捕まえると、その人の、当然なのですけれども、人生が変わってしまうわけですよね。捕まるということで。しかも家族も加害者の家族になるわけです。本人は自分が言ったためにそういうことになったということで、また苦しむわけです。集団で複数の知っている相手からレイプを受けたケースなんかでもずっと迷っている。もうすぐ相手の奥さんに子どもができるというのを知っているわけですね。そういう状況の中で私は被害届を出すことはできないと言って我慢しているというようなケースもあるわけです。その辺がとてもしんどいなと思います。

それも含めて、その人のしんどさ、心のしんどさに寄り添えるような場所がとにかく必要だというふうに思います。それで、その中で、ですから1回来たらいいわけではないのです。医療機関に1回来て、そのときに診察をして終わりではない。1回診察しても、そのときの検査というのは、被害直後であれば、例えばクラミジアに感染しているかどうかというと、もうすぐには出ないのです。ですから、そのときの検査結果は、もともとその人が持っているかどうかということを検査しているだけで、実際被害に遭って移されたかどうかは、3週間ほど先にもう一回検査しなければわからないわけですね。エイズのHIVなんかは9週間たたないと抗体に出てこないんです。検査に出てこないんですね。だから、初診のときに1度検査して、そして3週間ほどしてからその検査結果を聞くと同時に、もう一回検査をして、さらに9週間後にはもう一回HIVも含めての検査をして、さらにその結果を2週間後に聞きに行くという、4回か5回は診察というか、行く必要があるわけですね。その間にずっと心のほうもケアをしていくということで、初期に対応することによって、将来のPTSDの発生も減るし、軽くなるということはデータとして出ておりますので、やっぱりそういった意味の、初めから、直後から、継続的なケアができる、そして必要な連携ができるという、そういった意味のワンストップセンターというものが必要ではないかというふうに思います。

河原(参事官): ありがとうございます。河原さん、先ほどもここにいても大丈夫だと、ここに耳があるというような、受けとめてくれるところが必要だというようなお話をなさっていたんですが、これからどんな問題があるかですとか、どのような事が課題としてあるかというような、ちょっとまとめ的な話になってきますけれども、どうでしょうか。

河原: そうですね。一つはここに至るまでの歴史を振り返って考えると、やっぱり長い間、日本で性暴力あるいは性犯罪被害というのは「伏せるべきこと」だとみなされてきて、このように中央大会でテーマに掲げられること自体が、画期的だと思います。

しかしながら、今もなお、一人で抱えている人たちがたくさんいる。だれかに言わなければいけないのかというと、言わなければいけないということではないと思います。まず、被害自体がとてもつらい体験で、言葉にできないということもあるでしょう。だけれども、私が思うのは、一人で抱えてずっと生きていくには余りにも重い荷物ではないかなと。それを何とかもう少し軽くできる努力を、社会のいろいろな仕組みでつくっていかなければいけない。それには、一つは、SACHICOのような、例えば医療機関や病院はとても役に立つ、しかし今は寄附で運営していて、このままではSACHICOも運営できなくなってしまうという状況では困るのです。

もう一つは、理解をどうやって深めるかというのは難しいけれども、性犯罪、あるいは性暴力の被害は、残念だけれどもあり得ることで、もしも被害に遭ったらどうしたらいいのか、それから被害者というのはどんな回復の過程をたどるのかということを知る機会を、学校教育のどこかの過程で得ることが必要だと思います。

河原(参事官): ありがとうございます。小林さんはご自身、当時のことですとか、あるいはこういった機会でいろいろな方たちとお話しする中で、こうあったらいいとか、あるいはこういうものが必要ではないかとか、どんなふうにお考えになっていらっしゃいますか。

小林: 何が必要かというのもすごく難しい質問で、私もその3,000人の声を届けてくれた人たちに、私が何を求めているかというのは全然わからないので、みんなは何を求めていたんだろうというのをみんなに聞いてみたことがあったんです。そのときに、みんながくれた答えは、理解してくれる人に出会いたい、誰かにわかりたいと思ってほしかった。わかってあげたいと思う人に出会いたかった。

理解というのは別に同じ経験をして同じことを感じてほしいということではなくて、今、河原さんもおっしゃっていたように、性犯罪というものに対する偏見をなくして、そういう被害に遭うとどんな気持ちになるのか、どんな症状が起こり得るのかということを、きちんと知識、情報として得た上で、偏見なく接してくれる人にいてほしいということだと思うのですね。せっかくきょうは国民のつどいということなので、ここにいらしている皆さん一人一人にも知っていただきたいというか、一番お願いしたいことというのが、私の事件自体も犯人が捕まっていなくて、ではさっきの千載さんのお話だと、犯人を捕まえられないと被害者は回復できないのかと言われたら、そうではないのです。

私を救ってくれたのは、こういういろいろな人たちとの出会いだったり、その痛みを分かち合えるある一人の被害当事者、被害経験を持っているお友達との出会いだったのです。要は理解に接することができた、理解を示そうとしてくれる人たちに出会えたということが、私の立ち直りにはとても大きな影響を与えていて、その3,000人の被害者たちもそれを求めて多分私のところに連絡をくれると思うのですね。ただ、身近にそう思える人がいなかったから私のところに来てしまうので、それはすごく悲しいことで、性暴力の被害者というのは、人に裏切られたという大きなダメージと経験を持っているのです。その人たちに信じてもいい、信頼できる人がいるということを示すのは、本当に前に進む大きなきっかけとして、立ち直っていく過程に大きな影響を及ぼすので、皆さんにはそういう人になってほしい、聞いてほしい、受けとめてほしい、身近にそういう人がいるかもしれない。本当に私は意図しなくてこんな3,000人の人と出会ってしまったんですが、その3,000人がそれぞれ一人ずつにきちんと近くにいて理解してもらえる人に出会っていれば、私もこんなに毎日、被害者とやりとりをしなくて済んだというと嫌ですけれども、もっと近くに支えてくれる人たちがいたら、その子たちも、その人たちも、長年抱えていかなくても済んだし、もしかしたらSACHICOの加藤先生の負担も減るかもしれないし、警察の捜査というのも、警察は捜査だけをしていればよくなるかもしれない。なので、心のほうのケアはできれば皆さんにもちょっとずつ重たい荷物に手を貸すぐらいの思いやりを示していただけたらなと思います。

それが多分その性犯罪というものに対して、好奇の目でなく、起こり得る被害であって、被害者が悪くない、落ち度を責められるのは被害者ではなくて、暴力を振るった加害者のほうを責めるべきなので、でもその責める部分は警察に任せて、では皆さんはやっぱり被害者一人一人と向き合っていただきたいと思っています。それが多分、皆さん一人一人がちょっとずつ気持ちを変えてくれれば、社会も変わっていっていい方向に向くのかなと漠然と期待をしています。

河原(参事官): ありがとうございます。小林さんのほうから、この会場の方々、またそこを通じてのいろいろな方々へのメッセージをいただけて、ありがとうございました。時間もそろそろ押してきておりますので、加藤さん、千載さん、河原さんから最後に一言、お言葉をいただけたらと思います。

加藤: 皆さん言われたことなのですけれども、やはり今の社会は性暴力を許さないという、まだ意識が少ないと思いますね。性暴力を何か容認している。性暴力を許さない、これは犯罪なのだ、これは許してはいけない。そういう性暴力をする人をつくらない。加害者対策というとやった人を捕まえるというのも大事なのだけれども、そういう人にならないということをしていかないといけないということは教育になるわけですけれども、本当に10代の子たちが被害に遭い、10代の子たちが加害者になっているという状況から考えると、世の中が性暴力を許さないという、そういう世の中になっていかないといけないというふうに思います。

河原(参事官): ありがとうございます。千載さん、お願いします。

千載: 加藤先生がおっしゃったように、本当に性犯罪の犯人、被疑者を絶対許したらあかんというところは大前提なのですが、被疑者を処罰する負担を被害者一人に押しつけてはいけないと思います。捜査現場でもそうですし、それは捜査現場からいろいろな支援に近づけていくと、つなげていくということも一つ、警察の大きな責任だと思いますし、今ではそうして捜査と支援を現場で警察が両方やろうとすると、被害者の方が混乱する。なので、将来的には本当に支援と捜査、その二輪がきっちりタッグを組めるような、何かシステムなり、基盤なりというのが本当に必要だと感じています。

河原(参事官): 河原さん、お願いします。

河原: 捜査や裁判はもちろん大切です。だけど、いつかは終わる。性被害の場合、裁判に至らない人も多いし、被害者はその後もずっと生きていかないといけません。私は小林さんに初めて会ったのは3年ぐらい前ですけれど、その時、彼女は「欲しいのは、ただ理解だけなのだけれど…」と言いました。その言葉がずっと私の耳に残っています。

小林さんがさっき言ったような、一人一人の人がちょっとずつ荷物を持つということができたら、それだけでもう5年後、10年後、もう一回このテーマでシンポジウムをやったら、もうちょっと温かく被害者が生きられる社会ができているのではないか、そうなったらいいなと思います。

河原(参事官): ありがとうございます。

そろそろ時間でありますので、これで終わりにしたいと思います。本日はここに来ていただいている方は、一般の方、それから被害に遭われた方や、それから支援している方、それから国や自治体で制度を作ったり運用する側にいる方等と、いろいろな立場の方にお越しいただいていると思います。

私ども内閣府犯罪被害者等施策推進室、このテーマをやりまして、何よりも伝えたかったことは、まずそれぞれが声を聞く、そしてそれぞれの立場でそれを受けとめてこれからに活かしてもらう。そして今日のこういう場があったこと、また4人の方々がそれぞれおっしゃったことなどが、何らかの形で、いまだ声を上げられない性犯罪被害者、性暴力被害者の方々に届いて、まだまだこれからなのだけれども、声を聞いてくれる人はいる、システムや制度も少しずつあるということが少しでも届けばなというふうに思っております。


パネルディスカッション資料:性暴力救援センター・大阪(SACHICO)開設後半年の現況 (PDF形式:252KB)別ウインドウで開きます

パネルディスカッション資料:性被害、警察届けるのは不安… どんな配意がなされてるの?
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パネルディスカッション資料:性犯罪被害を考える資料
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