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平成21年度
「犯罪被害者週間」国民のつどい 
実施報告

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■神奈川大会:パネルディスカッション

テーマ「途切れない支援と関係機関の連携のために」

コーディネーター 
 村尾 泰弘(立正大学社会福祉学部教授)
パネリスト
 岡本 真寿美(全国犯罪被害者の会(あすの会)会員)
 榊原 高尋(特定非営利活動法人神奈川被害者支援センター理事長)
 白石 美奈子(横浜弁護士会犯罪被害者支援委員会副委員長)
 高森 節子(自助グループ「ジュピター」家族会代表)
 瀬戸 真一(内閣府犯罪被害者等施策推進室参事官)
 尾澤 仁(横須賀市市民安全部地域安全課長)
 青木 正純(神奈川県警察本部警務部警務課被害者対策室長)
 川合 充(神奈川県安全防災局犯罪被害者支援担当課長) 


(村尾) それでは、ただいまからパネルディスカッションを開催したいと思います。

 本日のテーマは「途切れない支援と関係機関の連携のために」というテーマで行います。

 思い起こしますと、昨年は「それぞれの立場から始める犯罪被害等支援」ということで、自分たちが自分の立場で何ができるかを考えてみようというテーマでディスカッションを行いました。今回は、さらにそれを深めまして、連携、しかも具体的にどのように連携したらいいのだろうか。あるいは、そのために何が今課題になっているのかといったことを浮き彫りにできたらいいなというふうに思っております。

 それでは、パネリストの方から、まずはご自身の被害者支援を行った経験、あるいは行っている経験の中で感じたことについて、お1人3分ぐらいで話題提供していただければと思います。それでは、まず岡本さんからお願いいたします。

(岡本) 先ほどはありがとうございました。

 自分自身が被害に遭って支援を行っていること、そうですね、私の事件当初は、犯罪被害者支援とか対策室とか全くありませんでした。どこに相談していいかというのが全くわからず、ましてや自分が犯罪の被害者であるということも、事件を負ったことで初めて知ったわけですね。加害者からの報復の可能性が大きいということで、外に出るのも当初は怖かったというのもあります。外に出れば、また世間の目もありましたし、手さぐりの状態で支援のお願いをしたというのも正直なところであります。

 あすの会に入ってから、あすの会の会員の皆様から本当に支えていただいて、何気ない一言というのもあるんですけれども、本当に言葉の配慮と、「同じ被害者なんだから」という言葉とか、「もう我慢することないんだよ」、いろいろなことで支えていただきました。それこそ本当の直接的支援という事を知ったわけです。これからも、行政関係との連携をしていただきたいと思います。形に見えるものじゃなく、ほんとに心の支えって大きなものだと思います。

 また、当時の被害者支援対策室の方が迅速的にすぐ動いてくださり見回りや連絡など、連携が本当に良かったと思います。

(村尾) ありがとうございました。それでは、次に、神奈川被害者支援センターの榊原さんのほうからお願いいたします。

(榊原) ご紹介いただきました神奈川被害者支援センターの榊原と申します。

 私自身、相談員でもないし、支援の事務を担当しているのでもないので、自身の支援を行った経験からとか、日頃感じていることから何かということで最初の発言はというのですが、ちょっとそれはほとんど経験がないということで申し上げにくいのですが、私自身はいろいろな団体と関係しておりまして、「いのちの電話」であるとか、あるいは精神障害者の地域作業所の運営などということを手がけております。そのようなことから、被害者支援のセンターというところに関係しておりまして、しかも、今回の大きなテーマが「途切れない支援はいかにすべきか」と。しかも、県下全体にわたる云々というようなことを考えますと、どうなっていくかということを今日のテーマとして自分自身考えていきたいと思います。

 今、相談窓口をどう設定するかということが大事だと思っております。幸い、6月1日から、ちょうど横浜駅、ここと反対側ですが、西口に出たところの県民センターという建物の中に相談窓口を一括して、あらゆる相談がワンストップでできるという支援ステーションをつくりました。これは大変結構だと思いますが、900万からの県民のすべての方が利用するには、1カ所で足りるのだろうかという心配を私自身は持っております。

 神奈川県の人口がほとんど横浜に、370万横浜におるということで、それでいいんじゃないかというわけにいかないだろう。いかに県域全体に相談しやすい方法をつくり上げるかということがこれからの問題だろう。そうすると、県域全体でどういうふうに相談しやすい窓口を設定していくかということが、これから先の問題になっていくだろう。「途切れない支援のあり方」という中に、考えていくべき大きな問題が残るのではないかと考えています。横浜以外の場所に窓口を増やしていくかということは、これから先の問題の一つであろうなどと考えています。3分にまだなっていないと思いますけれど、人数が多いので、次に渡したいと思っております。

(村尾) ありがとうございます。窓口を県全域に広がりをというような話だったかと思います。

 それでは、次に、弁護士の白石さん、よろしくお願いいたします。

(白石) 私のほうからは、2点ほど感じたことを申し上げたいと思います。

 まず1点目は、捜査段階において、被害者の方、それからご遺族の方は、警察官からの事情聴取、検察官からの事情聴取、さらには実況見分、犯行被害再現ですね。同じような話を何度も何度も繰り返させられてしまうという場面があると思います。その上で、病院であるとか、カウンセリング、さらに弁護士相談に至るまで、また繰り返し同じことを聞かれるというのは相当なご負担であると思いますので、できる限りそのご負担を減らせるように、関係機関が連携して、情報を共有できる範囲で共有をして、そういう負担を減らせていけたらというふうに考えています。今、弁護士、私たちのほうでは、被害内容について具体的に聞き取るということはなるべくしないようにして、被害状況については、聞ける範囲で県警から情報をいただく等の対応をとっているところです。

 2点目ですけれども、先ほどの基調講演、岡本さんからのお話でもありましたけれども、被害者の方、それからご遺族の方への対応は、マニュアルどおりにはいきません。ですから、関係機関の連携についても、マニュアルを作って、それに基づいてマニュアルどおりに進めるということではなくて、柔軟な対応ができるような連携をしていきたいというふうに考えております。以上、2点でした。

(村尾) ありがとうございました。被害者が何度も同じ話を繰り返し聞かれるということの問題点のご指摘、それから情報の共有のこと、柔軟な対応といったようなことをご指摘いただいたかと思います。

 それでは、次に、自助グループ・ジュピターの高森さん、よろしくお願いいたします。

(高森) 自助グループ「ジュピター」の高森と申します。皆さんがお入りになっていらっしゃいました入口近くにこういったものが置いてありますので、どうぞお帰りの際には、ジュピターを知っていただくためにも、ご覧になっていただきたいと思っております。よろしくお願いいたします。

 先ほど岡本さんからお話もありましたけれども、事件や事故に遭われてしまった犯罪被害者は、特別な人格の人ではありません。今の今まで普通の生活をしていた、普通の人なんです。ということを本当にまずわかっていただいて、その上でちょっと感じていることをお話しいたします。

 私は被害者でもありますけれども、神奈川被害者支援センターで直接支援をしております。その中で、支援員の質の向上というのが求められています。それには、やっぱり研修の充実しかないのかなというふうに思います。

 あと、2点目には、被害者と速やかに信頼関係を構築することで、本当に何を望んでいらっしゃるのか、それをいかに素早く理解できるかで、本当に適切な支援が可能と思っています。

 あとは、裁判所、検察庁とか警察、弁護士事務所へ付添い支援とかいたします。ご自宅訪問もいたします。その際には、絶対に守らなければならないことは守秘義務だと思っておりますので、それだけは絶対に守るということを皆さんにお約束します。

 あと、県とか市町村に協力して、安心で安全な住居を確保する。被害者の方というのは、周囲から風評被害を受けられるし、人間関係がどうしても悪化するんですね。そういうときに、私たちがどうやって二次被害を避ける手当をできるかということは、とても大事なことだと思っております。以上です。

(村尾) 「自助グループ」というのを皆さんご存じでしょうか。被害者の方々自身がグループをつくって話し合いをしたりして支え合っていくという、そういうグループでございます。我々は素人の専門家、「レイ・エキスパート」と呼んでおりますが、お集まりの被害者自身は、医者でもなければ弁護士でもない、いわば素人ですが、被害に遭ったという点では本当に専門家で、そういう方々が生きる知恵を出し合って支えていくという、そういうグループの大切さ、そういったことも是非皆さんにご理解いただければなというふうに思います。それでは、次に、内閣府の瀬戸さん、よろしくお願いいたします。

(瀬戸) 内閣府の犯罪被害等施策推進室参事官の瀬戸でございます。

 まず最初に、先ほど貴重なご講演をいただいた岡本様には、この場を借りて御礼申し上げます。それから、また、本日ご多忙のところ、この国民のつどい神奈川大会にご参加いただきまして、皆様方にも併せて感謝申し上げます。

 まず、内閣府でありますけれども、内閣府の事業の内容というのは、犯罪被害等基本計画に策定された施策の一部を担当するとともに、各省庁が担当している施策の総合調整機能等を担当しております。それで、今まで被害者施策に関与してきて感じるところということでありますけれども、内閣府は、今お話ししたように、犯罪被害者施策全体を見ておりますので、より効果的な広報啓発とか、幾つかの点があるのでありますけれども、本日は地方公共団体関連のことということで取り上げさせていただくと、内閣府は基本計画策定後、神奈川県を始めとする各地方公共団体に対して、被害者施策担当部局の設置、さらには総合相談窓口の設置をお願いしてまいりました。

 各自治体におかれまして、そのご理解をいただいて、それぞれの設置率も向上してきたところです。なお、担当部局というのは、いわゆる被害者施策の担当部局ということで、総合相談窓口の設置というのは、それよりさらに一歩進めて、被害者の方々がご相談に来たときにそれに対応できる窓口を設置しているという意味で、二つ取り上げてお願いしているところです。

 では、この設置率の向上について、平成21年4月の時点では、都道府県と市町村で2つに分かれるんですけれども、都道府県における担当部局の設置率は100%です。それから、総合相談窓口の設置率は約87%。これに対して市町村のほうはやや落ちるのでありますけれども、担当部局の設置率は約86%で、総合相談窓口の設置率は約44%となっております。これも各地方公共団体等におかれて施策を進めていただいたところでありまして、この場を借りて感謝申し上げます。

 ただ、これを見ていて若干気になっている点の1つとしては、基本計画が閣議決定されたのは平成17年12月27日でありますけれども、約4年が経過しようとしております。その中で、地方ごとの差が若干生じつつあるところがちょっと気になっているところです。例えばですけれども、先ほどの市町村レベルにおける担当部局の設置率についてでありますが、全国平均の数を先ほど申し上げましたけれども、地方ごとに見てみると、九州とか東北、北海道といった地方は、約95%弱の市町村が担当部局を設置しているのですけれど、例えば中国・四国とかは75%ぐらいにとどまっているということで、ちょっと地方差が出ているのかなと。もちろん中国・四国の中にも、岡山県のように県内の市町村が100%設置しているところもあるのですけれども、あくまで地方的に平均を取ると、そういう差異が生じつつあるのが若干気になっているところであります。以上です。

(村尾) 総合相談窓口あるいは担当部局の設置についてご発言いただきました。どうもありがとうございました。それでは、次に、横須賀市の尾澤さん、よろしくお願いいたします。

(尾澤) 横須賀市の尾澤でございます。私のほうからは、横須賀市の現状と市町村レベルの取組の全国的な状況について、一部、内閣府の瀬戸様と重なる部分があるんですが、ご説明をさせていただきたいと思います。

 横須賀市においては、犯罪被害者等の支援を目的としまして、総合相談窓口を平成18年に、当時、市民安全課という課がありまして、そこに設置をしております。窓口には警察OBの方に非常勤として来ていただいて、そのほかに常勤2名をつけて、担当者3名といっても兼任で、犯罪被害者の窓口だけではなくて、ほかの防災業務も併せて業務をするという形で配置をしております。

 犯罪被害者の相談窓口の開設に当たっては、やはり広報が大事だということで、「広報よこすか」ほか、様々な媒体を使ってPRするとともに、案内のパンフレットを配布いたしました。本年度で窓口を開設して4年目になるんですけれども、実際、相談件数は毎年度1桁、一番少ない年では1件という状況でございます。

 なぜ少ないかということですが、一つには、横須賀市において平成14年をピークに、おかげさまで防犯パトロールとかが盛んに行われていることによって犯罪件数が落ちてきているということがあるということと、まだ私たちが犯罪被害者の窓口について市民に対してのPRが不十分で、市民に浸透してない部分がありますので、今後もPRを続けていかなければならないかなと思っています。

 実際、うちの窓口に来ている相談は、内容的には事務的な話が多いので、基本的には所管の警察署の方と連携して十分に対応できているんですが、しかし、内容によっては、当然、カウンセリングが必要なものとか、あと法律相談、裁判関係、そういう専門性の高いものについては、正直なところ、現行の体制でどこまでできるかというと非常に不安なところがあります。

 職員については、神奈川県の支援センターさんの研修等を受けさていただいて、職員のほうもかなり成長してきているんですが、それでも複雑なカウンセリングを行うには、豊富な知識と経験がどうしても必要だということで、これをすべての市町村で行うことはかなり難しい状況だと実感しておりまして、それらについては県のサポートステーション等との連携は不可欠だと思っています。

 市町村の全国的な取組を見ますと、独自の支援計画を策定して経済的な支援を行うようなところも出てきている反面、先ほど、内閣府の瀬戸さんからお話があったとおり、まだ窓口を設置していないところも半数以上ございます。実際のところ、担当課も、防犯をやる担当課、私たちは防犯の担当なのですが、広報広聴をやる担当、相談窓口が中心なので、それらの課のどちらがやるかということが、なかなか決まらなかったという話もいろいろな自治体から聞いていて、そういう意味では、犯罪被害者の関係の事務の処理には非常に難しい問題があると思っております。そういうことで、自治体間によってかなりばらつきがありまして、その取組はさらに今格差が広がっているということが、この制度において今後大きな課題になっていくのではないかと思っております。以上です。

(村尾) ありがとうございました。横須賀市は非常に積極的に取り組んでおられるんですね。その中で、市町村レベルの支援の課題であるとか、あるいは市町村の具体的な役割がわかりにくいとか、そういった非常に突っ込んだご指摘があったかというふうに思います。

 それでは、次に、神奈川県警の被害者対策室長の青木さん、よろしくお願いいたします。

(青木) それでは、私のほうは被害者支援を通じて感じたことということで、2点ほどお話ししたいと思います。

 まず1点ですけれども、これは被害発生当初の被害者の方への適切な対応ということでございます。先ほど、白石先生のお話の中にもありましたけれども、被害者支援というのはマニュアルどおりにはいかないというのは、正にそのとおりだと思います。犯罪被害が発生した場合、警察は、現場で被害者の方にまず第一に接する立場にあります。そんな混乱の中にある被害者の方にとって、まず何が必要な支援なのかということを見極める情勢判断能力が非常に重要になってくると思います。確かに以前の警察というのは、被疑者の確実な検挙、そして処罰ということがどうしても前面に出まして、それが被害者の方のニーズにもなっているという意識も強かったと思います。私自身もこの世界へ入った頃はそういう思いがありました。ただ、被害者対策という仕事に従事いたしまして、実際、被害者の皆さんが望んでいるのは、犯人の検挙、処罰はもちろんですけれども、それと同等のレベルで、当事者としての敬意と配慮のある対応を求めているということをひしひしと感じております。本日の岡本さんのご講演等を聞きましても、そういった意を強くしております。そういった面で、職員に対する、特に事件発生直後の初期対応ということで、被害者の方にとって何が必要な支援かを見極める力を高めていくことを今後とも重要視していきたいと思います。混乱した現場で、事情聴取あるいは証拠の採取というたて込んだ中で被害者支援活動を適正に実施していくために、職員一人ひとりにそういった被害者支援に対するしっかりした考えを浸透させるということを今後とも進めていきたいと思っています。

 もう一つは、安心して相談できるシステムの理解と促進を図っていくということでございます。これは、現在、警察署に相談システムとして平成13年から警察安全相談制度というのがあり、住民相談係というところで担当しております。警察には、先ほどお話しした現場対応のほかに、様々な形で犯罪発生の申告というのがあります。その一つとして、住民相談係に相談という形で支援を求めてくる場合もあります。そういった場合も含めて、犯罪の発生件数に比較して、まだまだ支援を求める件数というのは少ないのではないかと思います。警察署に足を踏み入れたり連絡するというのは、ある意味では、被害者の方にとっても非常に勇気の要ることかもしれませんが、泣き寝入りをしないで、少しでも被害を軽減していけるように、安心感を与えられるような相談窓口を備えていきたいと思っています。

(村尾) ありがとうございます。警察としての被害者支援のあり方、初期対応、あるいは部内への理解の浸透、それから安心して相談できるようなシステムの構築というようなことがお話しいただけたかというふうに思います。

 次に、神奈川県安全防災局犯罪被害者支援担当課長の川合さん、よろしくお願いいたします。

(川合) おかげさまで、今年の4月に犯罪被害者等支援条例、神奈川県の条例ができまして、先ほど来、何回かご披露されていたように、6月に犯罪被害者サポートステーションがオープンをしまして、半年経ったところです。

 今、感じているところでは、この半年間、いろいろな支援に取り組んできまして、サポートステーションの中、警察、支援センターさん、我々県ということで、概ね順調に支援に取り組んできているかなというふうに感じております。また、支援はサポートステーションだけでは当然できませんので、国の機関であるとか市町村さんへ何回か足を運びまして、いろいろお願いしてきておりまして、サポートステーションではできない支援の部分も、ある意味、ネットワークで連携して支援をすると。そういう枠組みについては、県内の取組はできているのかなというふうに感じております。

 今思っているのは、一つ事例としてあったのですけれども、ことしの6月ですから、サポートステーションがオープンして直後の事件でしたけれども、車同士の衝突事故、交通事故のあおりをくって、いっぺんに3人の方がお亡くなりになったという交通事故がありました。その3人の方、お住まいが、お二人は神奈川県内だったんですけれども、お一人は東京都にお住まいの方で神奈川県内に通勤されている方ということだったんですけれども、条例ができて、その条例に基づく支援というのは、我々が制度をつくるときにどうしても県民の方を対象にということで制度設定をいたしますので、今触れた例ですと、東京にお住まいの方は、条例に基づく支援はできませんということになってしまったわけなんです。

 ということで、今後の課題なんですけれども、自治体ごとに制度をつくるというのはいいとしても、自治体間の連携ですね。今の例ですと、東京の方が神奈川県内で被害に遭った場合には、東京都のほうに連絡をしてスムーズに支援をしていただく、そういう都道府県間の広域的な連携が必要かなと、現在感じているところです。以上です。

(村尾) ありがとうございます。本年6月に、警察と県と民間の被害者支援センターが同じフロアで「かながわ犯罪被害者サポートステーション」ということで仕事を始めた、これは画期的なことかと思います。そのご紹介やら、あるいは県レベルでの対応での課題といいますか、神奈川県で被害を受けた、しかし東京在住の方への支援が難しいというような具体的な課題などもお話があったかというように思います。どうもありがとうございました。

 続きまして、今度は、今日のテーマでもあります「途切れない支援」ということに関係しますが、皆様方から、今後途切れない支援を強化するためには、どのような活動の充実が必要か。どのような活動を図ればよいか。何が必要なのか。こういったことについて、それぞれのお立場からご発言をいただきたく思います。よろしくお願いいたします。それでは、あすの会の岡本さんからお願いいたします。

(岡本) 私が体験した上で、正直、結構ありました。最初は入院生活が長く受けるに当たって、当時は「犯罪被害者の方には適用しない」国民健康保険は適用されませんでした。それは交通事故の場合は適用されますが、犯罪の被害者には適用されませんということで、本当に不思議でならなかったですね。

 それと、病院にソーシャルワーカーとかケースワーカーの方が、今は結構全国的にいらっしゃると思います。当時はなくて、自分で手続を行わなければならなず、なかなか認めてもらえないというのも大きな難点で。

 あと、就職ですね。そこで、事件によって重体の被害者の場合は、長期期間入院しなければいけない場合、全て職さえも奪われます。その一方加害者は罪を犯し、刑務所内で社会復帰のため資格を得るんですよ、皆さんが納めている税金で賄われています。それはおかしくないですか。なぜ被害者は自己負担なんでしょう。私は、手に職がなかった為、自分で払って資格を得るんです。本当に資格を取るまでどんなに大変か。でも、それは本当に矛盾ですね。

 また、生活保護ですね。都道府県によって支給は、違いますが決して裕福な生活ではありません。ほんとにつらい状況です。世間では、楽な生活ができる等と声を聞きますがそんなことありません。

 また、支援というのは、どこまでが支援なのかというのが私は分かりません。被害者がどれまで、どこまで平穏な生活に戻れて、ほんとに笑顔が出て、もう大丈夫というところまでというのは、決して誰にもわかりません。

(村尾) ありがとうございました。医療費、あるいは生活保護費、それから就職の問題、非常に生々しいお話だったように思います。

 では、次に、神奈川県被害者支援センターの榊原さん、お願いいたします。

(榊原) 先ほど、私は相談窓口の設置を県内もっと増やしたらどうかというようなことをちょっと申し上げたんですが、幸い、私ども神奈川被害者支援センターは、県の公安委員会から早期支援団体としての指定を受けました。ということで、犯罪の事例が生じたときには、その状況を早く警察から情報を得ることができ、早期にこちらから積極的に被害者の方のところにタッチといいますか、接触できるようになりました。そういうことで、情報を早くキャッチできるという立場になったということは、大変ありがたいことだと思っております。

 しかし、それとは別に、被害を受けた方が、あるいはそのご家族が、何か問題があったときに、どこに相談をするかというところは、窓口があまりにも少ないんではないかということを私は申し上げたいと思っております。

 例えば、今、横浜にサポートステーションができたということは大変な結構なことです。しかし、あとは市町村レベルといいますか、市町村窓口は、今日お見えになっています横須賀市がお持ちです。それから伝え聞くところによりますと、茅ヶ崎市が設置したというふうに聞いております。それぞれのところで相談員はどういう形になっているかということはまた別な問題といたしましてそのほかは、まだどこの市にあるというのは聞いておりません。

 私の考えているところでは、これをもう少し県西のほう、すなわち小田原・西湘方面、あるいは山北とか松田方面、あるいは人口の多い点で恐らく来年は政令指定都市になるであろうと思われている相模原方面、あるいは既に指定都市になっております人口100万を超えております川崎市にもあってもよろしかろうというふうに考えております。そういうところに相談窓口が設定されれば、相談件数はもちろん増えるでしょうし、またそうなったときに,相談者の情報を現在の横浜のステーションにどう連携をとるか、また別途、個人情報をどういうふうに伝えるかという問題。先ほども出ました、同じ話を何回も一人の人がしなければならないかというようなことのないような工夫をもう一度しなければならないということが起きると思います。

 そして、そういう相談の内容によっては、今度は面接の問題が出てきます。これはカウンセリングの問題、あるいは弁護士さんの相談が必要な場合、いろいろ出てくると思います。あるいは、精神科医がその場に行ってあげる必要が出てくるかもしれない。そういった場合に、面接の場所を横浜だけにするのか、各地域にするのかという問題があります。

 同じようなことを、福岡県で福岡の支援センターが福岡県と福岡市と北九州市とのお金の出し合いの中から委託事業を受けまして、福岡市内と北九州市内に面接室を設定して、実際に電話相談は福岡の支援センターが受けて、面接の場所を2つの指定都市の中につくって現実に行っているという事実がございます。そういうところもあるということを念頭に入れながら、県内でも何カ所かそういうことができるような形にしたいなというふうに私は今のところ考えています。これが地域の連携につながる問題ではないかと考えているのが現状です。あとは次の方にお願いします。

(村尾) ありがとうございました。被害者支援センターとしては、今活動拠点が横浜の1カ所だけですので、窓口をどういうふうに考えるか、その問題のご指摘だったかと思います。

 それでは、次は、横浜弁護士会の白石さん、よろしくお願いいたします。

(白石) 「途切れない支援と関係機関の連携」について、本当に難しい問題だと思いますけれども、私のほうからは3点述べさせていただきたいと思います。

 まず1点目は、何よりもまず広報活動が必要と考えております。被害者の方、それからご遺族の方が途切れない支援を受ける機会を得られるように、幅広い広報活動をこれからしていく必要があるというふうに考えております。

 第2点目なんですけれども、現在、神奈川県サポートステーションがありまして、県、県警、神奈川被害者支援センター,そして横浜弁護士会も関わらせていただいて、お互い、顔の見える関係でスムーズな連携が取れているというふうに自負しております。しかしながら、県の担当者の方、それから県警の方、これから異動、転勤等で人が替わることが予想されます。そのような場合に、今行うことができているスムーズな連携が途絶えてしまうということであれば全く意味がありませんので、担当者が交替してもスムーズな連携ができるようなシステムをつくっていくこと。定期的に意見交換会等を行うなどして、お互いに連携していくことが必要ではないかというふうに思っております。

 それから、3点目なんですけれども、先ほどの話と重複しますけれども、担当する各機関の役割分担というのはもちろん必要だと思うんですけれども、各機関がそれぞれの役割、「ここまでやったからうちの仕事は終わりですよ」ということではなくて、柔軟な対応をして、必要によっては担当分野をちょっと越えてもいいと思うのですけれども、管轄を越えた支援というのも行う意欲、それからそういう姿勢が必要ではないかというふうに考えております。

 関係機関、今うまくいっていますけれども、関係機関がお互いに責任を押しつけ合うなどして、本当に被害者の方、ご遺族の方が困ってしまうような事態に陥ることだけは絶対に避けたいというふうに考えております。以上です。

(村尾) ありがとうございます。広報の必要性、それから担当者が交代してもスムーズに連携ができるようなシステムの構築、そして各機関の役割分担、あるいはその役割分担を超えたところでの柔軟な対応の必要性、そういうところのご指摘があったかと思います。

 それでは、次、自助グループ・ジュピターの高森さん、お願いいたします。

(高森) 先ほど岡本さんから、「支援というのは、どこまでが支援なのか」ということを話されました。先ほどの岡本さんのお話によりますと、「平穏で笑顔が戻るまでを支援というのか」とか、いろいろ考えさせられることがありました。今後の支援員としての活動にはすごく重みのあるご意見だったと思います。 

 それから、裁判所へこれはお願いなんですけれども、関心の高い公判は、どうしても傍聴席をめぐって抽選になります。被害者ご遺族の席はもちろん用意してくださるのですけれども、支援員にも特別傍聴券がいただければと思います。被害者の方は、支援員が抽選に外れて同席できないのではないかと、とても不安になるんですね。ですから、大変恐縮ですが、この場をお借りしてお願いいたします。

 隣に瀬戸さんがいらっしゃるので、ちょっとお願いがあるのですけれども、事故がどこで起きたかとか、事件がどこであったとか、どこに住んでいるのかと、何でも縛りがあるのですね。その中で、やはり「地元の自助グループには参加したくない」とおっしゃる方が特に暴行事件、性犯罪被害者等では、かなりいらっしゃるんです。ですから、どこに住んでいても参加できるような自助グループがあればと思います。いつ、どこからであっても気楽に参加できて、温かい気持ちで、誰でも私たちが自助グループとして迎えることができる場があったら、とっても素敵なことだと思っております。以上です。

(村尾) ありがとうございます。気楽に参加できるような自助グループの必要性、あるいはまたご自身が支援活動をされておりますので、その観点からのいろいろなご指摘があったかと思います。 それでは、次に、内閣府の瀬戸さん、お願いいたします。

(瀬戸) 「途切れのない支援のための施策」ということですけれども、どうしても国の人間が話すので、一般論的な、抽象的な話になって恐縮なのでありますけれども、まず、良い連携が成立するためには、その連携に携わる各機関・団体のいわゆる支援のレベルといいましょうか、技量というか、そういうのが一定以上のものでなければなりません。その上で、きちんとした連携を構築していかないと良い連携にはならないだろうと考えています。

 それについて国としては、どういうことをしているのかですが、問題点としては、各機関・団体のレベルや技量の底上げと、それから連携の構築という2つの問題があるのですけれども、底上げとして国が行っている施策として、まず、地方自治体職員の方々を対象にした研修をブロック別にやっております。関東では、今年は埼玉県でやりました。全国を6ブロックに分けて、そのブロックごとに都道府県と開催県の市町村等に参加を呼びかけて実施しています。

 それから、同じく底上げというか、技量の向上のためには、民間の支援団体の方々に研修で使っていただきたい研修カリキュラムというのがあるのですけれども、そのモデル案を昨年度に作成しました。これはホームページにも載せています。全国的な統一的な研修をこのカリキュラムをもとに行っていただくことよって技量の向上を図っていただきたいと。作成は、もちろん政府の人間だけでつくったわけではなくて、民間の支援団体とか有識者の方々のご意見を反映させて作成したものです。

 それから、連携の構築のための施策としては、これも昨年度の事業になりますが、平成20年12月、ちょうど今から1年前に作成したものでありますけれども、ハンドブック・モデル案を作成しました。このハンドブックというのは、行政の方はご存じの方が多いかもしれませんが、犯罪被害者施策について、例えば被害者の方に接するときの心構えなどの基礎知識とか、刑事手続や民事手続の流れ、それから各機関・団体でどのような権限を持っていて、どのような仕事ができるかというのが記載されて一冊の本になっているものです。これはもちろんモデル案なので、各県、各市町村でそれを基にさらに応用して、各県、各市町村でより実態に即したハンドブックというものをつくっていただくことを想定しています。

 これを使うことによってどのような効果があるかというと、例えばA機関に被害者の方が来たけれども、A機関では対応できない被害者の方々のニーズもあります。それに応えるために、A機関の人は、そのハンドブックを使って被害者のニーズを満たせる機関を探して、その満たせる機関の方に、そちらのB機関やC機関につなげていく。それによって連携を図っていく。そういう連携を図るためのツールとしてのハンドブック、そのモデル案というのを国でつくらせていただきました。これも同じくホームページにアップされていますので、主に行政機関や被害者支援に携わる団体の方々の手元に置く本でありますけれども、それを基に実態に即した、実地に即したハンドブックを作成していただいて、それをご利用いただければと思います。

 国としては、連携のためにはそのような施策を講じています。

(村尾) 先ほどもご指摘ありましたが、県によって取組はばらつきがあるようですね。そういう中にあって、支援レベルの底上げ、あるいはハンドブックのモデル案、大変重要なご指摘をいただいたかと思います。

 では、次に、横須賀市の尾澤さん、よろしくお願いいたします。

(尾澤) 市町村レベルにおいては、犯罪被害者支援の相談窓口をいかに充実させていくかということが重要であるというふうに思っています。犯罪被害者の方々が直面している悩み事とか困り事、それらについて各種相談機関や窓口の紹介、斡旋などの役割を果たしていくということが求められています。つまり犯罪被害者等の方が希望されているもので、市で実施しているサービス、市で対応できるもの、例えば、今までも話が出ている生活保護とか身体障害者手帳の交付を受けたいんだけど、ということがあれば、単にうちの窓口が「生保は福祉事務所のほうです」というようなことで回すのではなくて、市の関係部署へ一緒に行って案内して、当該サービスの申請手続を一緒に手伝う。そのときも、あくまでも犯罪被害者の方の立場に立ってそういう手続を進めるということが非常に重要であり、要は、うちの窓口に来たときには、たらい回しにしないで最後まですべてワンストップで面倒を見る、そういう体制づくりが必要だと思っています。

 当然、市のほうだけではできないものもありますので、それらについては、県のサポートステーションを始めとして、関係機関と連携を取りながら、その橋渡しをするとともに、希望に応じて職員が同行して、ご本人の話を、本人が何回も何回も話を繰り返す必要がないように、こちらのほうできちっと説明して話をつなげるというようなことを市としてはやっていきたいと思っています。

 そのためには、今後も最寄りの警察署の方と密接な連携を図るということが重要であるとともに、県のサポートセンター、今後かなりここが重要な役割を担っていただくと思いますので、連携強化を図っていきたいと考えています。以上です。

(村尾) 市町村レベルの支援、市でしかできないような支援、いろいろあるかと思うのですね。その一つが生活保護の受給等であるかと思いますが、そういう市町村レベルの支援、そしてまた市ではできないこと、それを県あるいはその他の機関とどのように連携していくかというような問題提起もあったかと思います。それは正しく今日の「連携を深める」というテーマの一つでもあるかと思うんですが、またそのへんを今後ちょっと深めていきたいというふうに思っております。

 それでは、次に、県警の被害者対策室の青木さん、よろしくお願いいたします。

(青木) 私のほうから「活動の充実」ということで2点申し上げたいと思います。

 まず1点目は、先ほど来出ておりますサポートステーションの立ち上げが今年の6月1日からということで、これをいかに軌道に乗せるかということです。お互いの顔の見える関係、いわゆるコミュニケーションを平素から取り合ってないと、いざ情報を共有化するといっても、なかなか信頼関係が築けないという部分もあると思います。それと、システムの内容に関しまして、個人情報の保護という面で安心感を持たせるような教示のあり方も大切になってくると思います。いずれにしても、せっかくのこういう制度ですから、先ほど来、情報の共有化等で行政のほうからもお話が出ておりますが、趣旨にのっとりできる限りやっていきたいというふうに考えております。

 それと、もう1点。これも先ほどのお話とちょっと重複しますが、こういう制度があるという広報・啓発がまだまだ足りない部分があると思います。現在県警察では、県下各警察署に市区町村、医療機関等で構成する地域レベルの被害者支援ネットワークというものを設けておりますが、こういった活動に我々も参加していろいろお話しをしますと、例えば被害者の方々の精神的サポートをする場合にどうしたらいいのか、あるいは財政的な支援をネットワーク単位でやるにはどうしたらいいか等の前向きな質問が寄せられたり、中には、ボランティア講座を受講させるための啓発活動を積極的にやっていたり、会員の皆さんの熱意をひしひしと感じております。さらにすそ野を広げてもらって、地域全体でそういった支援の輪を広げるというのは、やはり大切なことではないかと痛切に感じております。

(村尾) 警察署における被害者支援ネットワークの充実と、その効果的な活用の必要性、あるいは広報・啓発活動をより一層強化しなくてはいけないのではないかというようなお話だったかと思います。

 それでは、次に、県のお立場から、川合さん、お願いいたします。

(川合) 先ほど、榊原理事長さんのお話で、市町村の窓口のお話がありましたので、ちょっとそれにお応えする形でお話をさせていただきたいんですけれども、現状では神奈川県内33の市町村があって、専用の窓口を設けているところが、今いらっしゃる尾澤課長さんのところの横須賀市さんと、あと川崎市が専用の窓口を設けて専門の方を配置しております。そして、常設ではないんですけれども、三浦市さんが今年6月に窓口を設けて、8月に茅ヶ崎市さんが窓口を設けたということで、合わせるとまだ33分の4市だけなんですね。そのほかの市は相談をやってないかというと、当然、市民相談室などで相談はお受けするということなのですけれども、一般的な市民相談室ですので、当然、専門的なご相談、アドバイスができないということで、我々はまず途切れない支援の強化ということでやっていかなければいけないのは、各市町村さんに専用の窓口を設けていただくということで、現在取り組んでいるところです。

 窓口を設けるだけでなく、先ほど来お話があったとおり、被害者さんから実際に相談があればサポートステーションに情報をつなげていただいて、もちろん被害者さんの個人情報が入りますので、本人のご了解の下になりますけれども、サポートステーションに橋渡しをしていただくと。その逆もあって、サポートステーションに生活保護などの相談が来ることもあるんですけれども、生活保護は市町村さんが主体でやっておりますので、我々のほうから市のほうにご連絡をして、スムーズに橋渡しをして、被害者の方が同じような話を何度もしないような形で今取り組んでおります。

 そして、今お話ししたのが県内での取組で、県外に対しては、先ほど、私が触れたとおり、神奈川県だけで条例を設けて取り組んでいても県外の方への支援がなかなか難しいということなので、広域的な、理想は47都道府県が連携を組んで、どこに住んでいても、どこで被害に遭われても、同じような支援を受けられる、そういう仕組みをこれから設けていかなければいけないなというふうに考えております。以上です。

(村尾) 今のお話では、市町村で専用窓口、相談窓口を設置しているのが、横須賀市、川崎市、三浦市、茅ヶ崎市と、4つの市であると。4つしかないのがまた現状ということのようですね。市町村レベルの支援と県レベルの支援というのは恐らく違うと思います。また、被害者支援センター、民間の支援センターの支援と、県の支援、警察での支援、これもいろいろ異なった側面があるかと思うのですね。いろいろお話を聞いていますと、いろいろわかりにくい部分やら、いろいろ見えてきたかと思います。

 そういう中にあって、本年の6月にサポートステーションができたということですね。このサポートステーションの意義みたいなものをどのようにお考えになっているのか。まず支援センター、県警、県と、この三者の方からお聞きしたいと思うのですが、神奈川被害者支援センターのほうではいかがでしょうか。サポートセンターがつくられたことの意義といったようなことをどのようにお考えになっていますでしょうか。

(榊原) サポートステーションができたということの大きな意義というんですか、これは先ほどからいろいろな方々がお話しなさっている中で一つ出てきているのは、"ワンストップ"という言葉がよく使われています。あちこち行かないでも済むところ、あちこちに電話をしないでも済むように、1カ所で被害者支援に関するいろいろな情報、あるいは相談、それから最初の相談から始まって、その後引き続いていろいろな問題に関してカウンセリング、あるいは直接支援にまで結びついていくような問題、あるいは費用に関する事務手続まで一貫した支援がそのまま続けられるというようなところに特徴があるというふうに私は考えております。これが非常に大きな進歩だなと思っております。

 ただ、こういうところが県内1カ所、これは大変いいことだと。これだけのことができるのは、当然、県内1カ所でよろしいかと思います。ただ、そこへつなげるまでの道筋がもっと枝が広がって、末端の受け口がもっと数多いほうがよろしいかなという考え方で、先ほどからいろいろなことを申し上げていたというわけでございます。

(村尾) ありがとうございます。それでは、県警のほうはいかがでしょうか。

(青木) 意義ということですけれども、一緒のフロアに県とセンターの方がいることにより、被害者の方々への支援提供のスピードが速くなったことがあげられます。それと、いわゆる支援の受け皿を広げることができたのではないかと感じております。直接支援にしても、法律相談にしても、あるいはカウンセリングにしても、警察から情報が入り、被害者の態様に応じて県や神奈川被害者支援センターが行う支援につなぐというケースもありますし、その逆もあります。そういった多様性が出ています。それと、一番は、やはり被害者の方から何回も同じことを聴取しないで、ワンストップという形態を構築できたということが大きいと思います。

(村尾) ありがとうございます。では、県のほうはいかがでしょうか。

(川合) 同じようなお話になるんですけれども、被害者の方、従前はいろいろな相談窓口、支援する体制はあったとしても、いろいろな相談窓口で同じような話を何回もしなければいけなかったというところが、サポートステーションができたことで、一回サポートステーションにお話なり情報をいただければ、サポートステーション、警察支援センターさん、あるいは我々県の事業で支援をいたしますということが一つ。

 もう一つ、これは重要な要素でして、サポートステーションの三者でできない支援がたくさんあります。そういう支援についても、一元的にサポートステーションのほうから橋渡しをして、単なる紹介ではなく橋渡しをして支援をするというところがミソでして、そういう意味では、6月にできたサポートステーションの意義は大変大きいのかなというふうに感じています。

(村尾) これは私からの質問なのですけれども、県、警察、支援センターというこの三者で、それぞれの被害者の方の支援活動について協議をなさるようなことというのはあるんですか。いかがなんでしょうか。

(川合) 個別のケースについてということであれば、大体が警察署から被害者さんの情報が来ます。来ましたら、被害者さんがどういう支援をご希望なさっているのか、それについてどういう形で支援していこうかというのをすぐ、同じ場所で仕事をしているものですから、我々「支援調整会議」というふうに言っておりますが、三者で会議をしまして、じゃ、こういう支援をしましょうと。一つの支援だけご希望の方がいらっしゃるわけじゃなくて、例えば「カウンセリングと法律相談を希望します」と、複数の支援を希望される方がいらっしゃるんですけれども、それぞれ支援の担当、法律相談ですと県であるとか、カウンセリングですと支援センターさんというふうに分かれているのですが、一回、調整会議をすれば、その後は計画的に支援ができるということで、非常に迅速・効率的に支援してきているのかなというふうに思っています。

(村尾) こういう民間センターも含めて、県と警察と民間支援団体、同じフロアで連携を取りながら支援していくというような取組というのは、恐らく日本で初めてなんでしょうね、これは。

(川合) そうですね。民間と行政、二者で一体となっているところはあるかもしれませんけれども、警察、行政・県、そして民間、三者が同じ場所で支援しているというのは初めての取り組みです。

(村尾) 県警の方にお伺いしますけれども、民間支援センターと県警が情報のやりとりができるというのは、これは先ほど理事長のほうから説明があった、公安委員会のほうから早期支援団体に指定されたと、これが根拠になるわけですね。

(青木) はい、そのとおりです。

(村尾) これが指定されたのが、昨年の3月か4月ぐらいでしたでしょうか。

(青木) 昨年の3月26日に指定されています。

(村尾) そういう形で、非常にこの連携を強化し、また支援に対して積極的に取り組むような姿勢、準備ができつつあるということかと思います。先ほど岡本さんのほうから、苦難の歴史といいますか、非常に苦しい思いをされたことが述べられましたけれども、例えば、住むところがないなどというような状況だったとします。そうすると、三者でいろいろ検討されると、例えばどういう支援が現段階では考えられるのでしょうか。

(川合) 現状、本県の、そういう住むところがない、あるいは自宅が犯罪の現場になって自宅に戻れないというような方については、短期的にはホテルの提供ということで、ビジネスホテルになりますけれども、3日以内という縛りはあるのですが、泊まっていただいて、その宿泊費は県が負担させていただくという支援事業が1つあります。また、長期に及ぶ場合は、我々、県営住宅を一部屋押さえておりまして、長期にわたる方につきましては県営住宅に移っていただく。県営住宅の賃貸料については、他の入居者と同じように、これはご本人の負担になるのですけれども、そういう形で住居の提供ということで支援メニューはご用意させていただいているところです。

(村尾) あと、被害に遭われて、要するに経済的に困窮してしまって生活費もままならないと。こういった状況の場合というのは、どういった支援が現段階では考えられるのでしょうか。

(川合) 従前の国の制度で、犯罪被害者等給付金という制度があるのですが、これ、実態として、ご本人にお金が支給されるまで長期、期間がかかるということで、当座の生活資金にお困りの方につきましては、県独自の事業としまして、生活資金の貸付制度というのを今年度スタートいたしました。この制度はメニューが2つありまして、1つは、今申し上げた国の給付金の対象となる方につきましては、上限100万円まで、当面の医療費であるとか生活費をお貸しします。貸し付けなので返していただくことになるんですけれども、そういうのが一つ。あと、給付金の対象にならない比較的軽い傷害事件等の被害者さんにつきましては、上限30万円ということでお貸しするという支援メニューをご用意させていただいております。

(村尾) こういった県レベルでの支援、そして警察支援センターが一体となった取組というのは、かなり前向きに前進しているんじゃないかなという印象を持っております。生活保護やなんかは市町村レベルの支援ということになりますけれども、横須賀市さんにちょっとお伺いしますが、市町村レベルの支援において県との連携、あるいは警察との連携、そういったときに一番課題になるということは一体何なのでしょうか。

(尾澤) 当然、連携していく上で、犯罪被害者の方の個人情報をそれぞれ県さんまたは県警さんに出していく、または、逆にそれらの方から個人情報の提供を受ける必要がありますが、ご存知のとおり、今、プライバシーの侵害を防ぐために、それぞれの機関については個人情報保護条例があって、個人情報についてはかなり厳格に管理をされています。これは当然のことで、特に犯罪被害者の方の個人情報についてはセンシティブな情報ということで、市もかなり神経質になるほど個人情報の保護については力を入れているという関係で、お互いに連携していく中で、どういう形で個人情報を相手方に出していくのか、また、個人情報をもらっていくのかということで、個人情報の条例の壁がなかなか乗り越えられない部分も出てきています。  

 ただ、一つ例外の規定で、「本人同意」というのがあって、ご本人がその個人情報を相手方に提供することについて同意ができている場合、例えばこの情報を、今回、県のほうにお出しします、というのは、この情報がないと、県のほうではこういうサービスが受けられませんよということがあれば、本人の同意が取れれば個人情報を提供することができます。しかし、同意がなされないようなケースも出てくるということで、そういう意味で、個人情報の提供にあたっては個人情報条例、一つ大きな壁になってきているということはあると思います。

(村尾) 今、連携を考える上で最も大きな課題になっているのが個人情報の取り扱いではないかなというふうに思います。個人情報を守るということは非常に大切なことなんですけれども、また、この守秘義務等の個人情報の壁があるがゆえになかなか連携が進まないという面もありまして、ここのところが複雑な問題があります。これは被害者支援だけでなくて、今の支援活動、いろいろなところで個人情報の管理の問題というのは大きな問題ではないかなというふうに思います。

 例えば、被害者であるというふうに市町村に訴えてこられたと。しかし、本当に被害に遭ったかどうかというのは、市町村としては情報としては持ち合わせておられないわけですね。

(尾澤) 市のほうでは、ご本人が「犯罪被害者です」と言われても、実際に本当にその方が犯罪の被害を受けておられるかということについて判断するための情報というのは持ち合わせておりません。

(村尾) そうすると、そこでそのことをどういうふうにして確かめていくかということが問題になるわけですが、岡本さん、先ほどお話になって、生活保護を受給するときに非常にご苦労されたということなのですが、当時は被害者であるかどうかということを窓口で問題にされたんですか。

(岡本) そうですね。相談しまして、担当者の方にも「お願いします」と言ったんですけれども、なかなか相手にしてもらえずに、犯罪被害者ということで断られたというのが実情でした。私はそれをお伺いしたいなというのもありますし、生活保護担当者を初め行政機関は、めんどうな相談や手続き等は相手にしてもらえず、マニュアル通りを優先されることが多かったですね。当時、警察と福祉とは連携がなかった為、特に本人としては手続き、説明はとても困難でした。

(村尾) 大変厳しい状況をまた語られましたが、当時は、現在行われている支援よりも非常に遅れた支援であったかと思うんですね。そういう意味において、生活保護の問題についても、本人の同意があれば被害者であることの確認というのは連携していくことは可能であると、こういうことですか。横須賀市さん、どうですか。

(尾澤) 要は、本人が自分の個人情報について、例えば県さんとか県警さんのほうに情報提供していいですよということの同意がとれれば、その提供ができます。問題は、逆に、「この方が犯罪被害者の方ですか」という情報を県警さんからもらう、またはサポートセンターさんからもらうというようなときに、今度、相手方の話になるんですけど、そちらのほうで同意がとれていれば、たぶん提供ができると思うんですけど、そのへんについてはうちのほうではまだ確認できていない部分です。

(村尾) 個人情報の問題は非常に複雑な意味を持っておりまして、先ほど岡本さんも、自分の個人情報を漏洩されたということで非常に傷ついたお話がございました。この個人情報の問題というのは非常にデリケートな問題です。しかし、こういう連携が進んでいく中で、また支援に向けて、一歩前進、二歩前進というところなんじゃないかなというふうに思いますけれども、県のほうはいかがですか。この個人情報の取り扱いについて、いかがでしょうか。

(川合) 今の横須賀市さん、尾澤課長さんから出た話でいきますと、サポートステーションに流れてくる情報については、当然、警察署のほうでご本人の了解をいただいたものが流れてきます。それは、サポートステーションの中で支援していく分には、三者の間では当然ご本人さんの了解をいただいておりますので問題ないんですけれども、例えば福祉関係、生活保護を市町村さんがやっておりますので、そちらに情報を流すときには、まだ具体のケースはそれほどないですけれども、ご本人にご連絡をして、あなたの情報を地元の市のほうに伝えてよろしいですかと、必ずそういう確認をとって、それから市町村のほうに連絡をとっているのが実態です。

(村尾) ありがとうございます。このように、連携の上で今最大の問題は、やはり情報の共有化、個人情報の問題ということになろうかと思います。この点について、我々ももっといろいろ検討を進めていかなければいけない大きな課題ではないかなと思います。

 それでは、今度、弁護士のお立場から、サポートステーションとの連携を、今どんなふうな連携が可能か、しなくてはいけないかということをお考えでしょうか。

(白石) 現在、サポートステーションに、被害者の方、ご遺族の方からご相談が入った場合には、県のほうから弁護士会のほうに連絡がありまして、「法律相談をご希望の方がいらっしゃいます」というふうに情報をいただいております。弁護士会のほうで担当の弁護士を決めて、「この弁護士になりました」ということでご連絡すると同時に、被害者の方、それからご遺族の方との相談を行うという形を取らせていただいております。

 実際に相談をしていく中で、最近とても多いのが裁判ですね。加害者の裁判を傍聴したいのだけれども一人では行けないと。そういう場合には、弁護士が付添いを行うことにしておりますけれども、弁護士だけでは、一人一緒に行っただけでは足りないという場合には、被害者支援センターの方に一緒に行っていただいて、2名、3名の体制で法廷傍聴の付添いを行うということも行っております。

 また、最近、「被害者参加」というものも始まりましたので、被害者参加の場合には、被害者の方、法廷の中に入りますけれども、弁護士と被害者の方、あと希望すれば付添いというのをもう一人付けることができるんですね。その付添いについては、県警の相談員さんに付添いを行っていただくなどの方法によって、お互い協力しながら裁判傍聴や被害者参加に行っているというような状況で、スムーズにうまくいっているのではないかというふうに思っております。 

(村尾) 今、被害者の裁判への参加の問題、それから傍聴の際の付添い等のお話がありましたが、被害者支援の今最もホットなところというのは、こういった直接支援活動ではないかなというふうに思います。今まで、民間の被害者支援センターは、電話相談やら、あるいはカウンセリングやら、そういった相談活動はやってきましたが、いま一歩踏み込んで、傍聴への付添い活動、あるいは関係機関へ行くときの付添い、病院での生活支援といいますか、そういった直接支援へ今神奈川の被害者支援センターも力を入れようとしているのではないかなというふうに思います。

 そういう意味では、直接支援活動をやっていくということにおいて、連携というのは非常に重要な意味を持つのではないかと。法律の専門家である弁護士からいろいろと指導を受けながら直接支援活動、司法手続への参加への支援を支援センターで考えていく。あるいは、臨床心理士会もカウンセリングをしながら、本人の同意を得ながら、そういった裁判手続への参加について、心理の面から支援センターのほうにいろいろとアドバイス等もこれから必要になってくるのでないか。そういう意味でも、時代は「直接支援へ」という方向に来ているのではないかなというふうに感じております。

 もう時間がなくなってきましたので、県のほうから、先ほど、神奈川県で被害に遭った、しかし東京でお住まいの方というのは支援ができないというようなことをおっしゃいました。こういった場合というのは、神奈川と東京での連携ということが必要になるのではないかと。これも新しい視点ではないかなと思うんですね。県と県との連携をどう考えていくか。そうなりますと、こういう視点で必要になってくるのは、国にリーダーシップをとっていただかなければならない側面も出てくるのではないかなと思うんですが、内閣府のほうでは、この点についてはいかがでしょうか。

(瀬戸) 内閣府のほうでは、いわゆる県同士の連携に役立つものとして、現在やっているものとしては、例えば内閣府のホームページに各都道府県の担当窓口を記載させていただいていると。あと、毎年5月に、都道府県の担当者、それから政令市の担当者の皆さんに集まっていただいて、主管課室長会議というのをやっていると。そのほか、各都道府県ないし政令市の被害者施策について、毎月1回、メールマガジンということで出させていただいております。ただ、今お話しした3つの施策は、これで県同士の連携が図れる、十分であると考えているわけではなくて、あくまで県と連携、県同士が連携を図る際に利用可能な制度としてこういうのがあるのではないかということで紹介させていただきました。

 今言われたとおり、今までは各都道府県ないしは市町村において被害者施策を進捗させていただきたいということで内閣府のほうからお願いしてきたわけでありますけれども、基本計画も4年を過ぎようとする段階になって、今言われたように新しい局面に入るというか、県同士の連携というのは今後の論点となり得るのかなとは考えております。

(村尾) ありがとうございます。今、連携について、いろいろメリットあるいは課題が見えてきたかと思うんですね。こういうお話をお聞きになりまして、被害者の立場で、岡本さん、一言、最後に感想をいただけますでしょうか。

(岡本) 支援、被害者を守ろうということで、何をどうしたらいいかということで皆さんで議論していただくというのは本当にありがたいです。今後は、被害者の二次被害、三次被害、それ以上の被害を出さないために、まだまだ犯罪は悪質になっていますので、どんどんエスカレートしてしまうんじゃないかという、その怖さがあります。是非守っていただきたいと思います。いかに被害者にとって悪いのは加害者ということを考えていただきたいと思います。今日はありがとうございました。

(村尾) 司会の不手際でなかなか突っ込んだ議論ができなかったかもしれませんが、今日ここでいろいろ討論いたしまして、警察と、県と、民間支援センターが同じフロアで集ったサポートステーションができた。これは被害者支援においては一歩も二歩も前進ではないかなというふうに感じております。その一方で、連携をするための課題、あるいはこれからやっていかなければいけないこと。そういったことが、今日の話の中で少し見えてきたかなと。県民の皆さん方にもご理解いただけるように見えてきたかなというような気がしております。

 それでは、時間もまいりましたので、以上をもちましてパネルディスカッションは一応終了させていただきたいと思います。どうもご清聴ありがとうございました。

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