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平成21年度
「犯罪被害者週間」国民のつどい 
実施報告

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■中央大会:パネルディスカッション

テーマ「犯罪被害者等施策の進展を振り返る」

コーディネーター
 長井 進(常磐大学大学院被害者学研究科教授)
パネリスト
 酒井 肇(大阪教育大学付属池田小学校児童殺傷事件 犯罪被害者遺族)
 阿久津 照美(社団法人被害者支援都民センター相談支援室長)
 瀬戸 真一(内閣府犯罪被害者等施策推進室参事官)
 たかぎはやと (警察庁長官官房給与厚生課犯罪被害者支援室長)
 佐々木 聖子(法務省大臣官房参事官)
 青木 健一(京都府府民生活部安心・安全まちづくり推進課参事)
 

(長井) こんにちは、よろしくお願いいたします。今日、今から4時半ということになっておりますけれども、1時間半ほど使いまして、「犯罪被害者等施策の進展を振り返る」ということを行いたいと思います。すべて総括的にということではありません。まず最初の30分ほどをサブテーマ1「池田小事件から見た被害者施策」ということで時間を使わせていただきます。残りの45分をサブテーマ2、「今後の施策の展望」に充てたいと考えております。

 まず、サブテーマ1、「池田小事件から見た被害者施策」ですが、ご発言の順を次のようにさせていただきます。先ほどの基調講演を受けて、これまでの被害者施策の進展に関しまして、内閣府、警察庁、法務省の順でご発言いただきます。その後に地方公共団体における取組ということで、京都府からお話しいただきます。さらに民間支援団体の役割ということで、被害者支援都民センターからご発言いただきます。

 その後、当時から見て、現在の被害者施策に関して思うところを酒井さんにご発言いただき、その後、ほんの少しの時間ですが、パネリストの間で話し合いができればと考えております。それでは、まず内閣府からよろしくお願いいたします。

(瀬戸) 内閣府犯罪被害者等施策推進室参事官の瀬戸と申します。まず話を始める前に、本日、貴重なご講演をいただいた酒井様にこの場を借りて感謝申し上げます。

 さて、お手元にパネルディスカッション用の資料を配布していると思います。その4ページ以下の資料に基づいて、お話しさせていただきます。下の段に、犯罪被害者等施策の経緯がありますけれども、犯罪被害者等基本法ができたのが平成16年12月1日です。これはご承知の方も多いかと思いますけれども、総合的な取組を求める犯罪被害者の方々の声に応えるべく、議員立法で成立したものです。そして、この犯罪被害者等基本法に基づきまして、平成17年4月から犯罪被害者等基本計画の検討会が随時開催されまして、最終的に同年12月に犯罪被害者等基本計画が閣議決定されました。この基本計画の内容については、4つの基本方針と5つの重点課題が設定され、さらに具体的な258の施策が記載されております。

 5ページ目の上が「基本計画の概要」となっておりますが、4つの基本方針と5つの重点課題。この4つの基本方針の3つは犯罪被害者等基本法に書いてある基本理念の3つに基づいているものです。4つ目は、「国民の総意を形成しながら展開されること」とされています。図の下のほうにピンクで書いてありますけれども、この基本計画の計画期間は約5年となっておりまして、平成22年度末までとなっております。

 それから、4ページにお戻りいただきまして、この基本計画が閣議決定されたのが平成17年12月27日なのですが、すべての施策についてこの基本計画の中で確定したわけではなくて、幾つかの重要な課題については、さらに「3つの検討会」を設置して、そこでさらに議論が続けられました。3つ目の丸に書いてあるとおりでありますけれども、「経済的支援に関する検討会」、「支援のための連携に関する検討会」、「民間団体の援助に関する検討会」の3つの検討会において検討が続けられ、最終的に平成19年11月に最終取りまとめがなされました。ここですべての具体的な施策が出揃った形になります。

 資料の5ページ以降は、基本計画の概要について書いてあります。ここでは、時間がありませんので、一つひとつ取り上げることはいたしませんが、後で時間があるときにお読みいただければと思います。そして、8ページ目でありますけれども、基本計画の258施策でありまして、最も遅いものでも20年12月までには検討、実施されることとなっております。

 それから、3つの検討会の最終取りまとめの概要につきましては、8ページの下と9ページの上にそれぞれ記載しています。8ページの下が3つの検討会のうちの経済的支援に関する検討会の提言でありまして、犯給制度の拡充、民間浄財の基金による支援、刑事裁判への参加制度導入に伴う公費による弁護士選任についてそれぞれ提言がなされているところです。

 それから、9ページ目の上の部分は、支援のための連携に関する検討会、それから民間団体の援助に関する検討会の提言の最終取りまとめの概要が記載してあります。犯罪被害者支援ハンドブックや研修カリキュラムのモデル案を作成すること等が提言され、それぞれ、既に平成20年度に作成済となっております。

 犯罪被害者支援ハンドブックについては話し始めると長くなってしまうので、ここでは詳細は割愛させていただきますけれども、これは主に犯罪被害者支援に携わる各機関・団体の方々に、相互の連携に用いるツールとして使っていただくためのモデル案であり、各県や各市町村において、その自治体に応じたものを作成していただくためのものです。研修カリキュラムは、民間支援団体の方々の研修等に用いていただくためのものです。

 最後の9ページ目の下でありますけれども、検討課題とされた施策のうち、どのようなものがあるかというのがこの5つ、これがすべてではありません、主なものとして犯罪被害給付制度の拡充や被害者参加制度、損害賠償命令制度の創設等、5つの施策が実現しています。これまでの進捗状況は以上のとおりであります。

(長井) ありがとうございました。それでは、続いて警察庁、お願いいたします。

たかぎ) それでは、警察の施策の進展状況についてご報告をさせていただきます。配布資料の10ページをご覧いただきたいと思います。被害者支援については、大きく分けまして経済的支援と精神的・実際的支援の2つに分けることができようかと思いますけれども、その1つ目の経済的支援につきましては、警察は昭和56年に施行された犯罪被害者等給付金支給法に基づいて、被害者に対して給付金を支給するという業務を行ってまいりました。2つ目の精神的・実際的支援について、警察が組織として本格的に取り組み始めたのは平成8年、すなわち1996年のことでありました。警察庁は、この年の2月に被害者対策要綱という通達を全国警察に示しまして、被害者の視点に立った各種の施策を総合的に推進することにいたしました。具体的には、まず捜査過程における被害者への対応改善を図るなどによって、被害者の負担を軽減して二次被害の防止を図るといったこと、あるいは被害者への情報提供を充実すること、あるいは被害者の精神的被害の回復を支援するための相談カウンセリング体制を整備していくこと、あるいは被害者が再び被害に遭うことがないように、その安全を確保することなどの施策であります。こうした取組は被害者対策要綱を受けて緒についたものでありますが、その後、次第に充実を図ってきたものです。そして、現在においても、こうした施策が基本的な柱となっております。その具体的な内容につきましては、展示スペースにおきまして、警察による犯罪被害者支援というパンフレットを配布しておりますので、そちらをご参照いただきたいと存じますけれども、本日はこうした各種の施策の中で、指定被害者支援要員の制度についてご紹介させていただきます。

 警察は事件捜査を行いますけれども、この事件捜査とは別に被害者の支援ということ自体を職務とするのが被害者支援要員であります。この制度は、事案の内容から判断して必要な場合に捜査員、これは当該事案の真相の解明を主たる任務とする者ですけれども、こうした捜査員とは別の警察職員を指定して、その者が被害者に寄り添って、被害者のニーズに応じて、その権利利益の実現をサポートするといったものです。この被害者支援要員は、なるべく早期に被害者に接触して、自己紹介して、自分の役割を説明し、できるだけ被害者に安心していただく、といったことから活動を始めます。その後、どのような支援を行っていくかというのは、被害者の話をよく聞いて、あるいはさらにより積極的に被害者の立場に立って、そのニーズを酌み取って、ケース・バイ・ケースで行うものでありますけれども、例えば、警察署と自宅の間の送迎であるとか、あるいは病院への付添いであるとか、あるいは被害者が利用可能な各種の制度がありますけれども、こういった制度を説明し、それを利用する場合にその手続を助けるなどの支援を行うわけであります。

 以上、指定被害者支援要員制度をご紹介させていただきましたけれども、その活動の一端につきましては、展示スペースで配布しております警察職員の手記といったものもありますので、ご参照いただければ幸いです。

 では、10ページに戻っていただきたいと思いますけれども、平成13年には、法改正によって犯罪被害給付制度を拡充いたしました。それと併せて、民間の被害者支援団体と連携して、被害者支援を充実していくための仕組みであります犯罪被害者等早期援助団体の指定の制度を創設いたしました。これは、被害者支援を適切に行っていただけると認められる非営利法人を指定して、こうした団体に対して警察から情報を提供し、警察とこうした団体とが連携して被害者支援を実施していこうという制度であります。その後、平成17年に基本法が施行され、基本計画が策定されたわけですけれども、当然、警察としましてもこの計画に基づいて各種の施策の充実に努めてまいりました。具体的には、性犯罪被害者の緊急避妊などに要する経費、あるいは身体犯被害者の初診料、診断書料などを公費で負担する制度を導入したりいたしました。また、法律などの制度改正にも取り組んで、その新たな制度は昨年7月から施行されています。資料の11ページをご覧いただきたいと思いますけれども、こうした制度改正の内容をこれで説明しております。改正内容の1つ目は、犯罪被害給付制度の一層の充実であります。ごく簡単に申し上げますと、給付金の最高額を自賠責並みの金額にするなどして、給付金の内容を充実したというものです。

 制度改正の2点目は、民間被害者支援団体の活動の促進でありまして、都道府県公安委員会が民間団体の自主的な活動を促進するために必要な助言、指導等の措置を講ずるように努めなければならない、ということにされました。また、こうした公安委員会が行う助言・指導に関しては、国家公安委員会がガイドラインとして犯罪被害者等の支援に関する指針といったものを策定いたしました。このガイドラインの概要については資料の12ページから15ページに掲げてあるとおりであります。

 制度改正の3点目ですけれども、広報・啓発活動の推進でありまして、今回の法改正によりまして、国家公安委員会、都道府県公安委員会、都道府県警察本部長、警察署長がそれぞれの立場において、被害者支援に関する広報・啓発活動を行うように努めなければならないこととされました。制度改正の4点目ですけれども、この法律の題名に被害者等の支援に関する法律である旨を付け加えまして、さらに目的規定に「犯罪被害者等が再び平穏な生活を営むことができるように支援すること」といったことを追加いたしました。このようにして、基本理念を明らかにしたということであります。

 最後に、オウム真理教犯罪被害者救済法の施行について申し上げます。配布資料の16ページをご覧いただきたいと思いますけれども、この法律は地下鉄サリン事件、松本サリン事件など一連のオウム真理教による犯罪によって被害を受けられた方に対して、国から給付金を支給するものであります。法律の施行から概ね1年が経過いたしましたけれども、約6,600人の被害者を把握して、その93%の方には個別の通知により制度をお知らせして、既に75%の被害者からは申請を受け付けしております。申請の期限はあと1年間でありますので、該当する方は、是非お住まいの都道府県警察本部にご相談いただきたいと考えております。また、展示スペースにパンフレットも配布しておりますので、ご活用いただければと思います。以上、最近までの警察の施策についてご紹介をさせていただきました。

(長井) ありがとうございました。それでは、続いて法務省、よろしくお願いいたします。

(佐々木) 私からは基本法成立以降の法務省におけます犯罪被害者等施策の進展状況について、ご説明いたします。特にここ数年、関連いたします新しい制度が成立あるいは施行されておりますので、今日のこの貴重な機会にご紹介させていただきたいと思います。

 法務省、そして検察当局におきましては、犯罪被害者の方々のために様々な施策を行っております。そのうちの一つに「被害者等通知制度」がございます。先ほど酒井さんからも「何があったのか、本当に知りたい」というお話をいただきましたけれども、犯罪被害者の方々あるいはそのご家族の皆さん方、事件の内容、それから加害者のことも含めて、事件の処分がどうなったのか、あるいは裁判はどのように進んでいるのか、どのような判決が下ったのか、加害者が刑務所でどのようなことをしているのか、などについて大変なご関心を持たれるのは当然のことと思います。このことに関しましては、実は基本法の成立以前から起訴・不起訴などの処分結果、あるいは刑事裁判の結果などについては通知が行われておりましたけれども、平成19年12月にそうした提供する情報の範囲を拡充いたしまして、加害者の刑務所等における処遇状況、あるいは刑務所等からの出所時期などに関します情報についても、被害者あるいはそのご家族などに対してご提供しているところでございます。

 また、公判記録の閲覧あるいはコピーにつきましても、19年12月にその範囲を拡大しております。犯罪被害者の方々にとって、被害に遭われた事件がどのような事件だったのか、これは重要な事項の一つだと思います。これも、以前は裁判が進行中の刑事事件につきましては、その公判記録を一般の方が閲覧したり、コピーしたりすることはできませんでした。しかし、これにつきましても犯罪被害者支援の観点から、平成12年から、損害賠償請求のために必要であるなど、正当な理由があり、かつ、関係者の名誉等の事情を考慮して相当な場合には、被害者等の皆様には公判記録を閲覧・コピーしていただけるようになり、さらに平成19年12月、刑事事件の被害者等の皆様につきましては原則として公判記録の閲覧あるいはコピーをしていただくことが可能となっております。

 それから、昨年12月から新しい制度が開始されております。正に12月1日、施行日でございましたので、今日がその1年後ということになります。具体的に申しますと、被害者参加制度、あるいは被害者参加人のための国選弁護制度、そして損害賠償命令制度がございます。これらの新制度を通じまして刑事司法制度における被害者支援の体制が確実に強化されていると申し上げられると思います。概略についてご説明申し上げていきたいと思います。

 まず、被害者参加制度です。お手元の資料の17ページの下をご覧いただきたいと思います。新制度ができます以前も、犯罪の被害に遭われた方々が証人として採用されたという場合には、ご自身の気持ちあるいはご意見を裁判官や被告人などに直接伝えることができました。しかし、自ら主体的に裁判に直接関与することは認められていなかったことから、被害者の皆様方から「もっと事件の当事者として刑事裁判手続に関わりたい」というお声をいただいておりました。この新しい制度によりまして、一定の事件の被害者あるいはそのご遺族の方々が刑事裁判手続に直接に関与することができるようになりました。具体的に申しますと、そうした被害者等の方々は、検察官を通して申出をして、裁判所の許可があった場合には、被害者参加人として裁判の日に法廷の中のいわゆるバーの内側に実際にお座りいただきまして、裁判に出席することができるほか、刑事訴訟法上の検察官の権限の行使に関して、ご自分の意見をお述べいただいたり、検察官に説明を求めることができます。

 また、このフローチャートにもありますように、起訴状朗読の後から始まります証拠調べ手続での情状に関する証人尋問の際に、証明力を争うための尋問、つまり量刑あるいは判決のための判断材料となります被告人やその親族による示談や謝罪の状況などの犯罪事実に関係しない、いわゆる一般情状に関する証言などについて、それが信用できる証言なのかどうかということを直接に証人に対して尋問することが認められております。さらに被告人質問が終わった後に、検察官の意見陳述が行われますが、その後で、実際に起訴状の公訴事実欄に記載された犯罪の具体的事実の範囲内でという条件はあるのですが、事実又は法律の適用についての意見を陳述することができることとなっています。さらには、その意見を陳述するために必要と裁判所が認めた場合には、論告求刑の前に行われる被告人質問におきまして、犯行の状況あるいは動機に関することなど、その意見陳述に必要な事項について、ご質問していただくことができるようになりました。これが被害者参加制度の概要でございますが、この制度ができます以前は、正に法廷のバーの外側から裁判を見つめられていた被害者の皆様方が、裁判所の許可を受けて自ら裁判に参加されることができるような仕組みになってございます。

 次に、被害者参加人のための国選弁護制度についてご説明いたします。資料の18ページの上の絵をご覧いただければと思います。これは、ただいまご説明いたしました被害者参加制度に実際に参加する方々が、刑事裁判への参加を適切かつ効果的に行えるようにするために、たとえ資力が貧しい方であっても弁護士の援助が受けられるよう、裁判所が援助を行うための弁護士を選定し、国が弁護士の報酬などを負担するなどする制度です。左上のピンクの吹き出しに記載されておりますように、この国選の被害者参加弁護士を依頼するためには一定の要件がございます。具体的に手順を簡単にご説明いたしますと、まず国選被害者参加弁護士を希望する被害者参加人の方は、自らが、こうした要件に合致しているという旨の申告書などをご準備いただきまして、日本司法支援センター、これは通称といたしまして「法テラス」と呼んでおりますが、ここに対して参加弁護士の選定を請求していただきます。請求を受けた法テラスは、被害者参加人からの、例えば以前からこの特定の弁護士さんによく相談しているので、この方にお願いしたいといったような候補についてのご意見を伺った上で、裁判所に対して弁護士の候補などを指名するとともに、請求があったことを通知いたします。裁判所は法テラスからの通知を受けて、国選被害者参加弁護士を選定するというような手続となっております。このようにして、裁判に参加したいと思われる被害者等が安心してこの手続に参加していただけるような体制を整えているというわけです。

 最後にもう一つ、損害賠償命令制度についてご説明申し上げます。

 今、ご覧いただきました18ページの下でございます。これは、被害者、ご遺族の方々による損害賠償請求に関わります裁判手続の特例として、刑事手続に付随した民事上の紛争を刑事手続の成果を利用して、簡易にかつ迅速に解決するために設けられた制度です。

 ご覧いただきますと、その図の青色の部分が刑事裁判、右側が民事裁判でございますけれども、これまでは全く別個の裁判であったために、刑事事件が進行して、民事裁判を行うためにもう一度、被害者が自ら損害賠償請求の訴えを申し出て、必要な記録を貸し出ししていただいたりという手続が必要になっていました。そこで、この真ん中の黄色の部分でございますけれども、この制度を新たに設けまして、刑事裁判所が、被害者等から被告人に対する損害賠償請求についても、刑事裁判に引き続いて審理を担当し、刑事裁判の記録をその審理でも職権で取り調べるなどすることによって、そのような、いわば煩雑な手続を簡単に済ますことが可能となったことに加えまして、この申立手数料も2,000円となっておりますので、比較的安価であることから、利用しやすい制度となっていると思います。

 19ページに、今日ご紹介できませんでしたその他の施策も記載させていただいております。

 6階の展示ブースにパンフレットなど備えてございますので、これらにつきましても是非ご理解をいただけますよう、ご利用いただければと思います。私からは以上です。

(長井) ありがとうございました。それでは、地方公共団体のお立場から京都府、よろしくお願いいたします。

(青木) 皆さん、こんにちは。京都府庁で犯罪被害者支援を担当しております青木と申します。よろしくお願いします。  
 京都にとりましては、この12月というのは非常につらい月でございまして、平成11年の日野小事件、それから平成15年の宇治小事件、そして、平成17年の宇治学習塾事件、これら3つの事件は、いずれも小学生が犠牲となり、私自身にとっても同僚でもあります方のお子さんが亡くなられるなど、非常に痛い記憶として残っているところです。これらの事件と京都府の被害者支援施策は、決して偶然の産物ではないと思っております。

 そこで京都府の取組についてご説明申し上げます。資料20ページをご覧ください。京都府では平成20年1月に、犯罪被害者のサポートチームを発足させていただきました。これは知事部局におけるサポートチームでございます。基本的な仕組みですけれども、事件の発生を受けまして、府でコーディネーターをお願いしておりまして、3名でございますが、そのコーディネーターが被害者の方のお話をしっかりと聴いていただく。このコーディネーターは、一人は子どもさんを犯罪により亡くされたケースワーカーでございまして、かつ犯罪被害者支援を勉強されておられます。それから、もう一人は、京都府の臨床心理士会の被害者担当理事でございます。これらの方が一緒に被害者の方からお話を聴くということで、ある種、当事者性を持ちつつ、なおかつ客観性にも配慮した支援に取り組んでいるところでございます。

 また、このサポートチームは、庁内はもとより府内市町村や関係機関・団体と緩やかな連携を保っております。平成20年1月にサポートチームの実務はスタートしたわけですけれども、19年度から3ヶ年に亘り、京都府が呼びかけて市町村の担当窓口の方々への研修を続けております。そして、その場に弁護士会ですとか、司法書士会、臨床心理士会はもとより、いろいろな機関・団体の方々に、オブザーバー参加もお願いしておりまして、そういった研修の機会に市町村と警察、団体等の皆さん方がお互いに顔の見える関係づくりをしていただけることを願っています。こうすることで、サポートチームに関わる全ての関係者が普段から知り合いになっていただければ、いざというときには京都府を介することなく、相互の信頼関係をベースにして、機敏な対応ができるのではないかと期待しているところでございます。サポートチームがスタートして19ヶ月ほど経過したところの集計では、相談そのものは130件くらい、面接も十数件です。私どもは、庁内各課やマスコミのご協力の他は特段の広報予算を確保しておりませんけれども、サポートチームの仕組みが皆さん方に受け入れていただき、口コミで広がればと願っているところです。以上です。

(長井) ありがとうございました。それでは、民間支援団体の役割につきまして被害者支援都民センター、よろしくお願いいたします。

(阿久津) 私のほうからは、基本法を受けて変化している部分もあると思いますが、民間支援団体の役割について幾つか述べさせていただきます。

 被害後、被害者は刑事手続だけでなく生活面・精神面など様々な問題を抱えます。基本法、基本計画では、それらの問題に対処する様々な機関での取組が示され、制度が整ったことは被害者支援にとってとても大きなことであると感じています。ただ、制度が整っても、そこに被害者が辿り着くことができなければ意味がありません。また、様々な支援を受けるために、被害者がそれぞれの機関へ個別にアクセスし、その都度説明をしなければならないというのは負担が大きいかと思います。民間支援団体の支援者は、いち早く被害者とつながり、支援計画を立て、支援の中核となって諸問題に対応する関係機関と連絡調整を図り、協力を得ながら支援体制を整えていく、コーディネーターの役割を担っていかなければなりません。基本法に書かれている「途切れない支援」を実行するためには、コーディネーターの存在は不可欠であり、その役割はとても重要だと重く受け止めております。

 また、それは被害者にとってだけでなく、関わる機関にとっても意味のあることであると思います。もともと被害者との接点があった司法機関と違って、その他の機関では、被害者支援という、いわば新しい分野に関わることになり、自分のところでどんなことができるのだろうか、どのように被害者に接したらいいのだろうかと戸惑われている様子が見られるように思います。被害者の要望を伝え、二次被害を受けないよう、心情や対応の際に注意すべきことなど、私たちがこれまでの経験から学んだことを伝えていくことも大切かと思います。

 現在、自治体や教育関係機関など、基本法成立前まであまり連携のなかった機関からも、研修の際、お話をさせていただく機会が増えてきました。私たち民間支援団体は、正に被害者支援を専門に行っている機関なわけですから、まだ取組が進んでいないところへは支援の必要性を伝え、取組を活発化するような働きかけを行っていかなければならないと感じています。

 その方法としては、研修なども一つですが、より有効と感じたのは事例を通じて、その必要性を訴えることではないかと考えています。例えば、事件直後から支援を行った事例の中で、自宅で犯罪被害に遭った被害者の方が散見されます。そのような場合には、恐怖感などからそこに住み続けることができないとか、一時的にどこかに避難する場所が必要になります。被害者が安心して生活できるよう、環境を整えることは最優先に行わなければならない事柄です。公的な住居の抽選時期を待って、というような時間的な猶予はなく、緊急に対応する必要があります。この住居の問題は、現在の制度だけではなかなかうまくいかないのが現状ですが、都民センターで関わったある事例では、被害者が居住している地域の役所に、置かれている状況と転居の必要性を説明し、早急に対応していただくことができました。このように、具体的な事例を通じて関係機関の担当者と連携できたことは、今後につながる大きな収穫であったと実感しています。

 今後も被害者を取り巻く支援体制がより充実するよう、働きかけていきたいと思っています。

(長井) ありがとうございました。それでは、酒井さん、今までの他のパネリストのご発言をお聞きになって、事件発生の2001年の時点から見た場合、どういう思いをされているのか、少しお話しいただけますでしょうか。

(酒井) はい。改めて思いましたのは、犯罪被害者支援の根幹となります法律、私は事件以後、被害者を救う法律が必要ということを訴え続けてきましたが、基本計画の4つの基本方針という存在の大きさを今さらながら感じました。それがすべてのベースになって、今、様々行政ですとか、民間機関の被害者支援の仕組みというのが、そこをベースに立体的にでき上がっているのではないかという印象を抱きましたので、やはり基本法の存在は非常に大きいなと。

 しかしながら、同様に、そういった優れた仕組みがあっても、当時の私のような「被害者支援って一体なに?」とか、愛する子どもが死んでしまったのに支援も今さら要らないと思う人もいるかもしれないので、それは正に基本法が目指しています、こういった啓蒙的な活動というものが同時にないと、そもそも被害者は「そんなもの要らない」と思っていたら、せっかくつくられた良い仕組みも生きてこないので、誰でも犯罪被害者になる可能性があるというこの世の中においては、そういった啓蒙も必要ではないかというふうに感じました。

(長井) ありがとうございました。私、受け取ったばかりの質問用紙を配ったり、読んだりしていて、酒井さんのご発言に集中できていなくて申しわけありませんでした。ともかく、酒井さんの事件発生当時からしますと、国も基本法をつくり、また基本計画に基づきまして、鋭意努力して今日に至っているということがよくわかった次第です。

 それでは、後半の、今後の施策の展望のところに入りつつ、フロアからのご質問に対してお答えいただくべきパネリストの方に用紙をお渡しいたしましたので、ご発言の際に含めてお話をいただければというふうに思っております。これまでの歩みにつきましても、今後の展望ということでありますが、ご発言の足りない部分は含めてご発言いただければと思います。酒井さんにも一つ質問が来ていますが、後で用紙をお渡しいたします。

 それでは、サブテーマ2、後半のところですが、同様に施策の進展を見てきた感想、あるいは足りないと感じる点、今後期待したい点等を含めて、続いて酒井さん、ご発言をお願いいたします。


(酒井) 私の先ほどの基調講演の中で触れたとおりで変わりはないのですか、やはり支援というのは、様々な立場の方が中長期的に関わってくるという観点において、支援の連携というのは重要だなというふうに感じます。それを今後、改善していく上でも、被害者・支援者の双方にとって有益な支援の検証をどういうふうにしていくのかというのが、非常に難しいテーマであるとは思うんですが、何とか糸口を見つけて、少しずつ前進していけたらいいのではないかというふうに思います。

(長井) ありがとうございました。

それでは、酒井さんのこれまでのご講演及びご発言を受けて、地方公共団体及び民間支援団体のお立場から、支援の検証、評価等を含めて、まず京都府にご発言をお願いいたします。よろしくお願いいたします。

(青木) 経験の浅い私ども京都府からしますと、なかなか深遠で難しいテーマだと思いながらお伺いしていたのですけれども、京都府での支援の歴史は、具体的なアクションが始まりましたのは平成20年1月からです。そして、それ以前ということで申しますと、平成16年12月に基本法成立と、たまたま時を同じくして条例ができ、翌年に府の基本計画ができ、翌々年にアクションプランをつくっていくという流れで進めてきたわけですけれども、この過程で私どもが被害者支援というものに対して、どういうスタンスで臨まなければいけないのかということを学識者なり、被害者の方から何度もお伺いさせていただきました。

 先ほど酒井さんからお話を伺っている中でもありますように、結局は、支援する側のみの一方通行で終わっては本当に必要な支援とはならないのではないかという想いがありまして、要はそこに支援される側とのコミュニケーションが欠かせないという意味合いで、これは私どもが目指すべきことであり、なおかつものすごく難しいと知りつつも、そこを避けてはいけないのだと思っているところです。

 それに対する私どもなりの一つの答えとして提案させていただきましたのが、支援コーディネーターに被害者の方も含むチームでの相談対応ということになるかと思っております。ですから、一つひとつのケースについて相談を受ける際は一人では対応いたしません。必ず複数人で対応し、私どものチームで個々の対応がどうであったのか、これは外には出しませんが、中でいろいろ相談しながら進めているところでございます。また、年に数回でございますけれども、また違う大所高所からの第三者のご意見をいただくという仕組みも存在しております。その中で、私どものスタンスそのものがいいのかどうかについても、私どもなりに客観性を持たせるべく努力しているところでございます。

 経験年数はまだ2年に足りておりません。まだまだ試行錯誤中でございますけれども、私どもは被害者の方からのご意見をお伺いしながら共に支援方法を考えるという姿勢を外してはいけないと思っているところでございます。以上です。

(長井) ありがとうございました。それでは、都民センター、お願いいたします。

(阿久津) 自分たちの支援活動が被害者の要望に沿っているのか、回復に役立っているのかということについては、事例検討などの場で支援方針、方向を検討する際に、相談員レベルで考えたり、指導者を交えて検討などを実施しています。ただ、それはあくまでも支援者側の考えで行われるものですので、私たちが掴みきれていないことがあるようにも思っています。支援活動の場で聞いた被害者の声をその後の支援に反映させていくことが必要ですが、特にマイナスの評価についてはなかなか把握するのが難しいと感じています。自分たちの改善点を知るためには、関わった関係機関同士でお互いの支援に対して率直な意見交換の場を持つことも必要かと思います。

 また、都民センターでは、被害者遺族に対して何度かアンケート調査やインタビュー調査等を行っています。このように、支援活動以外の場で被害者の声を聞くことも有意義なことであると思います。そこで得られた結果から、今後の支援について学んだこともたくさんありました。ただ、先ほどお話ししたように、改善点を知るという意味では、私たちが行う調査では十分でないのかもしれないとも感じています。本当は、うまく支援につながらなかった被害者について、その原因を調査するであるとか、そういう方法があるといいなと感じています。

 先ほど酒井さんのほうからも、「被害者と支援者で共に支援を検討していく」というようなご発言があったと思いますが、本当にそれができることが望ましいと思います。ただ、なかなか発言できない被害者の方もいらっしゃるということを含めると、すごく難しい点もまだ残されているなと感じています。

 私たちの支援が自己満足の支援にならないように、常に自分たちの支援活動に対して、厳しい目を持って検証、検討、評価をしていく姿勢が求められているのは確かだと実感しております。

(長井) ありがとうございました。それでは、今度は政府のお立場として、警察庁、法務省、それから内閣府の順でご発言をよろしくお願いいたします。

たかぎ) 警察における施策の検証、評価の状況についてご説明いたします。警察では、従前から被害者施策を網羅的に掲げた被害者支援推進計画といったものを毎年度定めまして、その推進状況をフォローアップした上で新たな計画を立てて推進する、ということを行ってまいりました。特に平成18年度からは、当時、基本計画が定められましたので、こういった内容も反映した計画として推進してまいりました。

 また、今年度は特別の取組としまして、警察庁の職員が各都道府県警察に出向いて、県警における施策の推進状況を確認していくという業務監察といったものを、被害者支援をテーマに取り上げて実施いたしました。あるいは警察による主な施策について、その効果を検証するために、現在、アンケート形式の調査研究も実施中でありまして、その結果は来年3月ごろには取りまとめられる見込みであります。

 このように、警察においては各種の施策の実施状況について検証、評価をしながら進めているわけではありますけれども、いずれにしても全国の都道府県警察の現場において、被害者のための多岐に渡る各種の施策が確実に実施されていくといったことは非常に困難な課題でもあります。特に、こういった中で警察職員に対する教育は重要であって、その点についての不断の努力が必要であると認識をしております。

 今後の施策の展望について、その他の課題としまして、2点ほど申し上げます。

 その1点は、ご指摘のありました関係機関団体との連携の強化についてであります。現実的に、多くの場合には被害者が最初に接触する機関は警察でありまして、初期の段階で被害者に対応する警察の責任が重大であるということはもちろんであります。しかしながら、特に時間の経過とともに、被害者のニーズは極めて多岐に渡って、その中には警察が対応することができない、あるいは警察が対応することが必ずしも効率的でないようなものも相当量含まれるというのが実情かと思います。それだけに、被害者のニーズに的確に応えていくためには、多くの機関、団体との連携が大変重要であると感じております。警察は、いわば支援の連携の起点となるわけですので、その後の連携による支援がうまく進むように配慮していかなければならないと認識しております。また、連携の強化のためには、今後、特に民間被害者支援団体の役割が重要であると考えています。民間団体は、その活動自体で被害者のニーズに応えるサービスを提供するというだけではなくて、様々な機関・団体、それは必ずしも被害者のための特有の制度ではない、広く住民、国民一般を対象とするようなサービスを扱っている機関・団体があるわけですけれども、民間団体の支援員が被害者のニーズを酌み取って、被害者と機関・団体との間をつないで、被害者が必要なサービスを受けられるように支援するということは非常に重要だと考えています。

 こうした観点から、先ほど申し上げましたとおり、昨年の法改正において「警察において民間団体の活動の促進を図るべし」とされたところでありますが、具体的には、民間団体の活動基盤の強化や、民間団体で活動する支援員の能力向上のための研修の充実などについて、各民間団体あるいは全国被害者支援ネットワークと連携して進めてまいりたいと考えています。これらの具体的な措置内容については配布資料の中の「犯罪被害者等の支援に関する指針」にも示されているところでありますのでご参照いただきたいと思います。

 最後に、もう一つの課題が広報・啓発であると考えています。警察においては、「社会全体で被害者を支え、被害者も加害者も出さないまちづくり」と題しまして、被害者支援に関する広報・啓発活動を展開しているところであります。具体的に申し上げますと、ご遺族などにご講演していただいたり、中高生を対象にした「命の大切さを学ぶ教室」であるとか、大学生を対象にした被害者支援に関する講義を行ったりするなどを通じまして、国民一人ひとりが犯罪被害の実態や被害者が受ける痛み、命の大切さを実感する、こうしたことによって社会全体で被害者を支えようという気運を醸成して、被害者支援の充実を図っていこうといったものでありますが、こうした被害者支援に関する広報・啓発は、究極的には犯罪のないまちづくりにまでつながっていくものと考えているところでありまして、いろいろと工夫して取り組んでまいりたいと思っています。以上です。

(長井) ありがとうございました。それでは、法務省、よろしくお願いいたします。

(佐々木) それでは、これまでの検証と将来展望ということですので、そうした観点からお話をさせていただきます。

 先ほどご紹介をさせていただきましたように、刑事司法制度で犯罪被害者支援という観点からの新しい取組、19年始まりであったり、20年始まりであったり、比較的最近できた制度でありますので、将来に渡ってどういう方向性に進んでいくかということにつきましては、もう少し実績を積んで検証を継続的にしていかなければいけないと思っています。ただ、これまでのところの制度の活用状況ですとか、あるいはそれぞれの制度に寄せられたお声などについてご紹介しつつ、今後の取組をお話ししてみたいと思います。

 まず、被害者等通知制度でございますけれども、先ほど申しましたように、以前よりももっと幅広い情報をご提供するような仕組みになっているというお話を申し上げましたが、平成20年度におけます通知希望者数は、もっともこれは被害者等の方からのお申し出によってご通知申し上げるものですが、通知希望者数が55,330人、そして具体的な通知件数が91,818件となっております。この制度につきましては、被害者などの皆様にご提供する情報として、やはり不十分なのではないかというご意見もいただいております。お伝えする項目が決まっておりますけれども、さらに多くの事項を通知するという制度にするため、さらに新たな枠組みをつくる必要があるか否かにつきましては、さらなる運用状況の検証、それから個人のプライバシーの問題などを総合的に考慮した上で、慎重な検討が必要だと考えております。今後、運用状況を見ながら、さらに考えていきたいと思っております。ただ、今、申しましたように、まず大事なことは、この制度を知っていただいて、被害者の方に申し出ていただく、あるいはご相談いただくためにも、この制度に関する広報を積極的に継続していきたいと考えております。

 それから、被害者参加制度ですけれども、昨年12月の制度開始から半年経過した時点での統計でございますけれども、新しい制度で裁判への参加を許可された方が206件、321名という実績でございます。この被害者参加制度につきましては、これを利用することによって、例えば被告人から暴言を吐かれるとか、参加した方々に対しての二次被害の恐れがあるのではないかというようなご意見もいただいていたところではあります。もちろん、法廷におきましてそういう事態が想定されるような場合には、裁判所に対して的確な措置を発動していただくというように適切に対応していると思いますし、もちろん被告人の言動そのものが犯罪に当たるということでありますと、刑事事件としての立件も含めて厳正に対処していくものでございます。それから、実際に被害者の方が裁判に参加していただくに当たりまして、少しでも精神的な苦痛を和らげていただくために、公判の打ち合わせの機会などを利用いたしまして、検察官が十分なコミュニケーションを図っていくということはもとより、恐らく、大変な緊張の中で裁判に参加されることだろうと思いますので、そうした不安や緊張を和らげるために、ご家族などが被害者参加人のそばに付き添っていただく、あるいは被告人の面前で質問などをすることで緊張される、精神的な負担を持たれるということを少しでも軽くするために、被告人と傍聴人との間に衝立を置くというようなことができることになっております。参加人の方のプライバシーなどの保護を念頭に置いて、適切な対応に努めているところでございます。

 ご質問いただいた中に、本当に被害者の参加というのが、その方々の心情を酌めるようなものになっているのかというご質問をいただいておりますけれども、今ご紹介申し上げましたような手段でもって、それを少しでも和らげ、思いの丈を語っていただけるような、そんな裁判にするべく努力しているところでございます。

 それから、先ほどご説明いたしました、被害者の方が裁判に参加するための国選弁護制度についてでございますが、去年の12月1日始まりで、正に今日、法テラスがプレスリリースをしておりますが、制度発足から今年の10月末までの11カ月間で128件、151名の方にこの国選弁護制度をご利用いただいているところでございます。これにつきましても、先ほどご紹介しましたように、一定の資力要件というものがかかっておりまして、それが厳しすぎるのではないかと。もう少し緩和することによって、この国選弁護制度をより活用していただいたほうがいいのではないかというお声もいただいているところではあります。もっとも、これは、現在の財政事情などの下で、今後考えていかなければいけないと思いますし、あるいは民事上の法的援助を行っている民事法律扶助制度など、ほかの制度との均衡、あるいは弁護士さんによる法的サービスを求めていらっしゃる、他の国民の方々との均衡なども考慮しつつ、さらに検討していく必要があると考えております。

 あと、ご質問の中で、「法務省の役割は何なのだろう」ということをいただいておりますけれども、まず、事件、加害者、しかも裁判の時だけというのではなくて、この全容について被害者の皆様にできるだけ正確に知っていただくためのご支援、それから正に先ほど酒井さんのお話の中に「思いの丈」というお言葉がありましたけれども、裁判に参加していただくことによりまして、その「思いの丈」をお話しいただく、そのことによって裁判自体を適切なものにしていく、そうしたことのご支援をすることが法務省そして検察当局の役割だと、このように考えております。以上でございます。

(長井) ありがとうございました。あと、いただいている質問用紙等ございます。恐らくお答えいただくという点では、内閣府にお答えいただくのが適切かなという質問が一つまいってございます。それから、警察庁、それから酒井さんというふうに一つずつお渡しいたしましたが、簡潔にお答えいただければと思います。

(瀬戸) 内閣府にいただいた質問は、「被害者支援には、国、地方、民間とで支援の仕方が異なると思いますけれども、現状の問題点は何だとお考えでしょうか。改善はどのような点にあると思われますか」ということであります。これは、サブテーマ2の「今後の施策の展望」ということとほとんど重なるので、併せてお話ししたいと思います。国、地方、民間で支援の仕方が異なるということで、それはそれとして、大事なのは各機関団体が連携して被害者の方々のニーズに対応していくということにあると思います。

 国、地方公共団体、民間支援団体、それぞれスキルというか、個別の権限をお持ちです。個別のスキルを持っておられるのですけれども、被害者の方々が求めているニーズは必ずしも一つではなくて、多種多様です。しかも時期によっても大きく変わります。そういうニーズに対応するためには、一つの機関・団体だけではできません。したがって、幾つかの公共団体や民間団体等が連携して、支援に当たる必要があります。連携して支援に当たる体制をつくるためには、連携のネットをつくることも大事なのですが、それぞれの機関・団体が一定レベルの技量、スキルを持っていないと、そもそも連携することができないわけです。

 そういうことで考えていくと、内閣府では継続調査や国民意識調査など、様々な調査をしているわけですけれども、例えば、司法関係者から二次被害を受けている方々もまだ少なくないということもありますし、世間の、例えばインターネット上の意見や地域の人々によって同じように二次被害を受ける被害者の方も少なくない、そういう問題もあります。また、民間支援団体におかれては財政的な問題もお持ちであるとか、例えば研修をするといってもなかなか全国一律的なレベルアップ、底上げをするための研修ができないとか、そういう問題も抱えておられる。国においても、やはり広報啓発、先ほどの社会の人々の誤解や無理解というのは、それによって克服していくしかないと思うのですが、そういう活動を展開していく必要がある。それから、地方公共団体におかれては、やはり取組の進捗状況をもう少し向上させていただく必要があるかと思っています。

 先ほど、酒井さんの講演の中で、都道府県、市町村の相談対応窓口や担当部局の設置についてのある程度の数字を話していただいたところであります。担当部局の設置自体は、担当部局ができれば、それで支援が全うできるという性質のものではありませんけれども、まず支援の第一歩として、指標としては、それなりに重要性を持っているものと考えております。先ほどの酒井さんの数字よりも直近の平成21年4月時点のデータでは、都道府県では担当部局の設置はすべて完了しています。ただ、相談対応窓口の設置率は約8割です。それから、市町村においては担当部局の設置率は約8割、それに対して相談対応窓口は約4割という数字になっています。この数字、各地方公共団体においては、それぞれ乏しい人員とか財政の中で頑張っていただいていることは重々承知しておりますけれども、さらにご努力をお願いしたいということです。

 それぞれ、今、お話ししたような各機関・団体で問題点を抱えておられるところであります。それについては、内閣府ないしは政府としても、広報啓発に加えて、例えば民間団体の研修については研修カリキュラムモデル案を作って後支えを行っているところであります。連携については、ハンドブックモデル案という、先ほどもちょっとお話しさせていただいた支援に携わる方々が用いるためのツールも、モデル案として作成しているところでありますので、そういうものをご利用いただきたいと思います。

 これからの改善についてですが、現在の基本計画は、先ほどお話しさせていただいたとおり、平成22年度末までがその計画期間です。それまでには基本計画の見直しが必要ということになります。その基本計画の見直しについて、詳細なスケジュールや手法についてはまだお話しできる段階ではございませんけれども、見直しに備えて、内閣府では全国各地で被害者団体や支援団体等から要望聴取を行っているところであります。そこで挙げられた要望の詳細はまだここでお話しできる段階ではありませんが、その中でも、例えば性犯罪被害者に対する支援施策の充実とか、犯罪被害者に対する経済的支援制度のさらなる拡充、それから刑事手続への関与のさらなる拡充、民間団体への経済的支援の拡充などが挙げられているところです。これらを始めとした多数の要望については、見直しにおいて貴重なご意見とさせていただくことになると思われます。以上です。

(長井) ありがとうございました。それでは、警察庁、お願いいたします。

たかぎ) ご質問いただいた内容は、「報道被害をなくすためにマスコミとの間の調整役となる支援は警察、民間、弁護士など、どういった組織による支援が適切か」といったものです。

 結論的に申しますと、最適なのは弁護士ではないのかなというふうに私は思っております。警察は、被害者の方々のご要望等受けまして、それをマスコミにお伝えするといったことはできますし、現にやっているかと思いますけれども、むしろこの調整役というのは、被害者の代理というか、正に被害者の立場に立って、その権利を擁護するという立場ですので、弁護士が最適ではないかなというふうに考えていますが、いずれにしましても、そういった被害者の方の要望であるとか、そういった状況をまず最初に寄り添っている警察が把握いたしまして、被害者の方とお話し合いをした上で、必要な場合に弁護士であるとか、あるいは民間団体につないでいくといったことが警察として求められる役割ではないかと考えております。以上です。

(長井) ありがとうございました。心理的な問題につきまして、酒井さんのほうに質問が寄せられておりますが、先にお答えいただけますでしょうか。

(酒井) 私への質問は、犯罪被害者遺族の私への質問で、俗に言う遺族の心のケアについて、「被害直後、それから被害から数日後、また数カ月、数年後において、どのような心のケア、グリーフケアが必要であると思われますか」と。 

 ご存じのように、池田小学校事件というのは、亡くなった子どもが8人、当然、その一人ひとりの子どもに両親、2人ずつおりましたので、16人という、子を亡くした親がいまして、16人という中でも様々なタイプのケアが必要だったのかなというふうに横で見ておりました。ですので、一般論としては、家族とか友人のような身近なケアの仕組みと、長井先生のような臨床心理士のような方とか精神科医であるような専門家の方々との立体的な支援というか、サポートの仕組みが必要だと思います。

 ただ、16分の1であります私個人に限定して言いますと、さっきいろいろ振り返ったのですが、私たちの場合ですと、事件と向き合わなければいけない、子どものことがわからないので子どものことを調べようとしているとか、署名活動をしたり、裁判で警察調書から検事調書から作らなければいけない。刑事公判が始まる。池田小学校とは、事件の様子がわからないので事件調査報告書の作成に関わる、校舎改築問題では校舎改築委員会を設立して、そこの委員会に傍聴に行ったりいろいろしている。それから、教育大学とは様々な打ち合わせがあって、教育大学とは埒が明かなかったので、文部科学省に行って打ち合わせをする。そして、様々な支援者の方と現実に生きていく上の相談をしなければいけないということで、事件発生からずっと年表みたいなのを見ていきますと、2年半くらいは、ほとんどそういうことに忙殺されていたといいますか。

 私自身も振り返ってみますと、テレビでイメージするような専門家の先生に話を聞いていただくような、俗に言うカウンセリングみたいな形も経験したことがないので、こういうことについて自分自身は疎いのですが、私自身で言うと、悲しみを向ける方向よりも、目の前のことに日々対処していくことが結果的に私なりのグリーフケアにつながっていって、長い年月、2年半、3半年、4年半とか経っていく間に、自然治癒力がある程度追いついてきて、少しは心が丈夫になったかなと。さっき、私が講演でエンパワーメントと言いました、自分の人生に向き合っていく力を私自身が取り戻して、失われてしまった人生を取り戻してきたのかなというふうに思います。

 そういった意味では、私はこういった本を書いたり、こういった講演に呼ばれて、支援体験を話してくださいというふうに、自分自身の内側を見つめ直すことが結果的に自分自身のケアというところに、私自身の場合はつながったのかなと思っております。一般論ではなくて、すみません。

(長井) ありがとうございました。酒井さんの今のご発言を受けて、ちょっと連想していることを私からほんの短く申し上げますが、付属池田小の遺族支援をしていて、私からPTSD等の説明をしたことは一度もございません。自分からその話題を切り出したことは一度もありません。聞かれたときに説明はしますけれども、それ以外は、ともかく目の前の現実の問題、何に困り、何をどのように考え、全体をどのように調整すれば一歩でも被害者の方々が前に進めるのか、これをいつも中心に活動していました。

 裁判、刑事、民事等が終わって初めて、心の問題が出てきやすいわけですし、そういう点では未解決事件の方に終わりはないわけでして、それぞれの事件で被害者等の方々、本当に複雑な思いをずっと持ち続けられます。

 時間が押しておりますが、一点、私のほうから京都府の青木さんに質問です。必ずしも京都府内あるいは住民の住んでいる地区で被害を受けるとは限らない。そういう場合の支援の仕方としての柔軟性についてはどういうふうに考えていらっしゃるのか。それから、被害の罪種によりましては、小さな地区に住んでいらっしゃる方には、地元の警察に被害届を出したくない、ということも大いにあろうかと思いますが、どのように対応していらっしゃるのか、短くお答えいただければありがたいです。

(青木) 事例があるなしではなく、私どものサポートチームの運営の基本的な考え方ということでお話しさせていただきますと、事件の発生を受けますと、被害者の方もしくはご家族なりご遺族なり、事件を契機として心の痛みを抱えられた方は、まず相談しやすいところを探されるであろう。その心情に応えるためにはどうしたらいいのかということでサポートチームの仕組みをつくらせていただいているというスタンスでございますので、相談の対象範囲を京都府内の発生事件ですとか、被害者が京都府民であるとか、そういう仕切りには最初からそんなにこだわってはおりません。それと、それぞれの地域におかれては、地元の市町村役場に行けば、例えば顔がさすとかでどこにも気軽に相談できるところがないと悩んでおられる方も当然おられるだろうと想像できますし、そういった方々には、匿名で結構ですから京都府サポートチームにお電話していただければ、「一緒に考えませんか」というスタンスで対応させていただきたいと思っております。京都府では、3年前から京都府が呼び掛けて市町村職員向けの研修を続けていますが、そういった場には近隣の府県庁・市役所の方々にもご案内し、オブザーバーで出席していただいてもおります。府県域の枠があるから相談は受け付けません、というスタンスは取りたくないなと思っています。

(長井) 都道府県レベルでの了解といいますか、共通理解なるものはいかがなものでしょうか。

(青木) これは、まだまだです。むしろ府県の知事部局としては、これからお互いに情報交換も含めて、いろいろなノウハウの交流も含めてやっていかなければいけないことだろうなというふうに思っています。

(長井) ありがとうございました。かなり残りの時間、少なくなってきておりますけれども、絶対にこれだけは発言しておかなくてはと思われるパネリストの方、どなたかいらっしゃいますか。

 それでは、私のほうから、一つフロアからの質問にお答えいたします。

 「知り合いを犯罪で亡くしました。ニュースで知って驚き、また心にぽっかり穴が空いたような虚しさを感じた」ということで、「知り合いを亡くした後、私が知り合いや知り合いの関係者のためにできることはありますか」と、こういうご質問です。これは、いわゆる犯罪被害者支援先進諸国におきましては、犯罪被害者の当事者、遺族、家族だけではなくて、友人等もケアの対象に含まれると、いろいろな書類といいますか、文書に書かれていますけれども、実に一つの犯罪によって極めて多くの人々にいろいろな種類の被害が及びます。

 この方への大まかな回答ですけれども、実際の案件、少年事件の場合もありますし、それ以外の事件もありますけれども、交通事故・事件、全部含めますが、被害者遺族にとって一番お辛いことは、被害者がこの世に存在しなかったかのように他の人たちが思っているのではないか、と思われることが一番辛いことでして、生前中、こういう人がいて、自分はその友人で、親族で、何とかでという立場で、何年経っても被害者の生前中のことを覚えていますよと。あの時は、こういう楽しい思い出がありましたねと、“語り部”という表現は私はあまり好きではありませんが、遺族の方々に伝え続けられるとよいと思います。遺族の方々にいろいろな機会があるごとに連絡されたり、カードを出されるだけでも構いません。電話というのは遺族の方にとっては対応するのが非常に辛い連絡の手段になりますので、実際に赴かれたり、あるいはカード等でも十分心は伝わると思います。「何年経っても、私は亡くなった方のことを忘れてはいませんよ」というメッセージが遺族に伝わるという、これがとても大切だと思います。このメモ(質問)を書かれた方はそれを十分できるお立場にいらっしゃる方です。ご遺族も、生前中の家族の思い出、日常的な出来事等、みんな知っているわけでは決してありません。学校、職場、友人関係の中で経験したことを、すべてそれぞれが他の家族に報告し合っているわけではありませんので、友人として思い出されるいいエピソードについてお話しいただければ、それでご遺族の心は十分和むのではないかと思います。

 また、ご自身、非常にお辛いことにつきましては、被害者支援の関連窓口にご相談され、一番自分に合うであろうと思われる、必ずしも精神医学、心理臨床の専門家とは限らないかもしれませんが、適切な方との出会いがあり、また個別の相談等ができるのがよろしいのではないかと思います。

 私のほうから、あと残りの時間で申し上げたいこととしましては、先ほどのパネリストのご発言の中で、酒井さん、阿久津さん等が「被害者と支援者の両方の協力的な検討が重要だ」ということをおっしゃっていました。私もそれはそうだと思います。私も発言の用意をしておりましたけれども、支援について、良い、悪い、どのようなコメントも支援を受けた者が支援の関係者にちゃんとフィードバックできるような関係を、最初からずっと意図して作り続けないと、これはなかなか難しいと思います。

 実際、犯罪被害者等の方々は、自助グループに関わっていらっしゃる方もいらっしゃいますけれども、一所から情報を得るということはむしろ少ないかもしれません。非常に関心ある方は、幾つもの情報源から、複数の自助グループ、自助組織等に入って、また支援センターとも関わり、立体的な情報を入手するようにされています。そういう国、地方自治体、あるいは民間支援団体等に協力的な方がいらっしゃると思いますので、支援者として支援対象の被害者自身から情報を直接フィードバックされなくても、いろいろな複数の情報源を持っていらっしゃる方とうまくいい関係をずっと持っていただくと全体状況が立体的に見えてきますので、いい関係をずっと維持することを最初からずっと心がけていただきたいというふうに思う次第です。

 それから、これも立場は度外視してといいますか、国も自治体も民間の方々も、あるいは一般住民、親族等の方々におかれましても、一回の対応で確実に、低く見積もっても半永久的な影響を被害者等に与えるだけの影響力を実は持っています。非常に深く二次被害で傷ついたということを、常にその傷を与えた人にフィードバックできる人ばかりは揃っていません。したがって、被害者に特に関わる方には、自らの対応がいずれ被害者自身の記憶にどのように定着するであろうか、ということを考えつつ、毎日の対応に心がけていただければと思う次第です。

 それから、最終的なコメントとしましては、被害者問題は特殊な人のための特殊な活動のように、ともすれば思われがちかもしれませんけれども、被害者問題、被害者支援を通して学ぶ認識、態度、あるいは配慮等の大切さといいますのは、十分、汎用性を有しているものでございまして、被害者に対してのみ学ぶべきことだとは、私、考えておりません。被害者支援で培われる配慮、気遣い等は、ありとあらゆる人間関係に通用するものだと考えておりますので、そのように一般性のあるものだという認識を持っていただき、是非とも今日の標語にもありましたように、命の大切さについて、尊さについて、国民全体で考えていただくような機会になればということを心から願っている次第でございます。

それでは、時間になりましたので、パネリストの皆様、これで終わらせていただきますけれども、ご協力、大変ありがとうございました。またフロアの皆様からもいろいろご意見をお寄せいただきまして、誠にありがとうございました。本日のパネルディスカッションをこれで終了させていただきます。

>資料:犯罪被害者等施策の進展を振り返る1(酒井氏) [PDF:139KB]

>資料:犯罪被害者等施策の進展を振り返る2(内閣府) [PDF:479KB]

>資料:犯罪被害者等施策の進展を振り返る3(警察庁) [PDF:474KB]

>資料:犯罪被害者等施策の進展を振り返る4(法務省) [PDF:340KB]

>資料:犯罪被害者等施策の進展を振り返る5(京都府) [PDF:73KB]

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