中央大会:政府からの報告

 
内閣府犯罪被害者等施策推進室長 殿川一郎

 内閣府の殿川と申します。今日は、大勢の皆さん、この中央大会にご出席をいただきましてありがとうございます。主催者として心から御礼を申し上げます。

 それでは、この時間は、私ども政府のほうからいろいろな現在の施策の取組状況を報告するということで、始めに全体の取りまとめ役を担当しております立場として、内閣府から基本的なところをご報告させていただきたいと思います。

 ただ今、本村さんから極めて的確に、被害者の立場に立ちながら最近の動きを非常に分かりやすく、ポイントを突いたご説明がございました。そういう意味では、それを若干補足するという形で私からはお話をさせていただければと思っております。

 先ほど本村さんのお話にもありましたように、平成16年12月に基本法が出来ました。そして、翌17年12月に基本計画が出来ました。

 これは、偶然かもしれませんけれども、12月というのが犯罪被害者施策の最近の大きな動きの節目になっておりまして、ちょうど今から3年前にこの基本計画が出来たということでございます。

 そしてこの基本計画の中で、経済的支援の問題等を含めて3つの、非常に重要なテーマであり基本計画の段階で具体的に方向性が決められない部分について、関係省庁や被害者の皆さんに知恵を出していただいて、その具体的な方向性を検討しようということで「3つの検討会」が設けられました。そこで様々なことが検討されまして、平成19年の11月にその最終取りまとめが出されました。

 したがって、現在の段階では、元々あった基本計画と、ややペンディングになっていた検討会の検討テーマの結論も出まして、ここ1年は正にその計画、検討したことを実行に移すという段階でやってまいりました。

 基本計画には4つの基本方針があって、その中で5つの重点課題に分けております。合計で計画に取り上げられた施策は258でございます。この中には、今ご紹介があったような非常に大きな法制度、刑事裁判への参加というものから、いわば関係職員の内部的な研修を行うことなど、そういうやや細かい話も含めてでありますけれども、数としては258という数の施策の計画を立てました。そしてこれは、平成17年からの5年計画になっておるということでございます。

 今、この5年計画のうちちょうど3年が過ぎたという段階でありまして、この段階で258の施策のすべてについて、これから正に実現の段階、概ねそういう段階になってきているということでございます。もちろんまだ検討中というものもございますけれども、何らかの形で実現に向けてすべてのものが動いているということでございます。

 後ほど警察庁あるいは法務省の方から、特に大きな制度についてはご説明があろうかと思いますので、私のほうからはその辺のお話は省略をさせていただきまして、私ども内閣府のほうで直接携わっておるところだけ少し触れさせていただきたいと思います。

 その一つは、「支援等のための体制整備への取組」の中の「犯罪被害者支援ハンドブック・モデル案の作成」でございます。

 これは、先ほど本村さんのほうからご紹介をいただきました。本村さんにも作成委員に加わっていただき、お忙しい中、大変的確なアドバイス等いただいておるわけですけれども、これを作るねらいにつきましては、やはり関係機関の皆さん、警察を始め、行政、医療機関、福祉機関等ございますが、そういった皆さんが、犯罪被害者が求めている多様なニーズというものを、ある程度のことはご認識があると思いますが、具体的に良く知っているかというと必ずしもそうでもないということがございます。

 それから、犯罪被害者の置かれているいろいろな状況を正しく理解をして、例えば相談にどういう姿勢で応じたらいいのかということについても、ご存じの人もいるかもしれませんけれども、多くの人は、なかなか直接そういうことについては経験が無いと思います。

 したがって、そういった人たちに必要な、ある意味では最低限度の知識なり心構えというものを、このようなハンドブックを手元に置くことによって理解をいただけないかということで、私どものほうでモデル案を作り、それを基にして各地域あるいは職域で更に相応しいものを作っていただければというようなねらいで、こういった取組をしているところでございまして、これが近く出来上がる予定になっております。

 それから、最後の「国民の理解の増進と配慮・協力の確保への取組」ということで、ここはもちろん政府全体でやらなければいけないところなのですが、私ども内閣府が特にその中でも果たす役割は大きいと思っております。正に、今日のようなこの犯罪被害者週間の中の「国民のつどい」の開催というのも、その一つとしてやっておるわけです。

 けれども、ここで今、私どもとして問題意識を持っておりますのは、先ほどからの話にもありましたように、やはり社会全体で犯罪被害者を支援する、そういう輪を広げ、また基盤をしっかりと作っていくということが最終的な目標であろうかと思います。

 そういう意味から言うと現状というのは、先ほどお褒めの言葉もいただきましたけれども、確かに様々な制度が出来てはいるのですが、社会全体として、それを支えようという雰囲気が国民の間に本当に定着して正しい理解が得られているだろうかというと、そこはまだまだ不十分ではないかなということを率直に私どもとしても感じております。それは、私どもの責任もあるかもしれませんし、まだ努力不足というところがあるのではないかなと思っております。

 特に、これからも大事になってくるのは、やはり民間の支援団体というのが、これも全国ほぼ出来ているのですけれども、どこの団体も非常に財政事情が厳しいという問題があります。そういった点について、これは話すとこれだけで長くなってしまいますので、ごく結論的なことだけ申し上げさせていただきますと、やはりどうしても、一般の国民の皆さんの理解とある程度のご協力が必要になってまいります。

 そういうことを考えた時に、果たして犯罪被害者の支援ということについての理解が本当に十分であるだろうかというふうに思うわけでございます。私もいろんなところで、いろんな形で、いろんな分野のこういった取組にも参加をさせていただいております。やはりその中でも、犯罪被害者の置かれている特に厳しい状況、あるいは、いろんな、多様なニーズがあるんだというところを正しく理解されているかというと、やや心配な部分がございます。いろいろニュース等があっても、何か犯罪被害者の問題というのは特定の人の問題だと。たまたま被害に遭ってしまった特定の人であるという認識、何となくそういった感じがあるのかなということを感じないでもありません。

 これは、犯罪被害者という言葉の概念で言うと、今、年間で何百万件も事件は起きていますから、その数は多いのですが、正に今日お話があったように、支援を必要とする犯罪被害者っていうのは、一体何人ぐらいいらっしゃるかということになると、案外身近にそういう人を知っている方は逆に少なくなるということも一つあるかもしれません。

 あるいは、むしろこういう制度が出来ているが故に、被害者のことはそうやって制度が出来ているんだから、それで特に私達には関係無いじゃないかと思っている人もいるのかもしれませんし、その辺りの周知がまだまだかなというふうに私などは思っております。

 したがって、こういった取組については、やはり引き続き努力をしなければならないと思っておりまして、そのためには、犯罪の被害者の皆さん、あるいはそれを支援しようとする団体で活動されている皆さんの実情なり実態を私どもとしましても今後とも継続的にしっかり把握をして、そういう状況を基に、我々としてまた新たな施策が必要なものについては講じなくてはいけないと思いますし、国民の皆さんにそういう状況を理解していただくということについては、また新たにそういった問題点を逆に発信していくというような取組が私どもとしても必要なのかなと感じております。

 こういった意味で、「国民の理解の増進と配慮・協力の確保」ということは、正に今日お集まりの皆さんのような理解のある皆さんが1人でも多くなるようにということで、私どもとして引き続き努力をしていきたいと考えております。

 そして目指すべきは、特定の機関だけではなく、文字どおり社会全体で被害者を支援できるような、そうした支援をする基盤が整っているような、そういう社会を目指していかなければいけないと、こんなふうに考えておるところでございます。

 よろしくお願い申し上げます。ご清聴ありがとうございました。



 
警察庁長官官房給与厚生課犯罪被害者支援室長 高木勇人

 警察庁の高木と申します。どうぞよろしくお願いいたします。

 最近の警察の取り組みとしまして2点報告をさせていただきます。

 1点目は、犯罪被害者等給付金の支給等に関する法律の改正などについてでありますが、先ずその経緯についてご説明申し上げます。

 基本法に基づく基本計画が策定されたのは、先ほど来、出ておりますように平成17年12月ですが、その時点で更なる検討を加えるべきものと判断された事項に関しては、これを検討するための有識者会議が3つ設けられました。この3つの検討会の最終取りまとめがなされたのが昨年の11月でありました。

 警察庁におきましては、3つの検討会の提言を踏まえまして、所要の施策を実施するために法律改正案を立案いたしまして国会に提出いたしました。そして、今年の4月にその法律の成立を見ました。関係政令、規則の整備を行いまして、改正された制度は7月に施行されました。

 次に、今回の制度改正の概要について申し上げます。

 今回の改正の最も大きな事項は、犯罪被害給付制度の拡充であります。そもそもこの犯罪被害給付制度というものは、殺人等の故意の犯罪行為によって重大な被害を受けられた、それにもかかわらず加害者からの損害賠償は得られず、また、ほかに公的救済も受けることができない犯罪被害者あるいはその遺族に対しまして、社会全体として救済をするべきだという、いわば連帯共助の精神に基づく制度でありまして、昭和55年に創設され、その翌年から施行されたものであります。

 具体的には、犯罪により死亡された方のご遺族、あるいは犯罪によって重傷病となった、あるいは障害を負った犯罪被害者に対しまして国が給付金を支給する。こういったことによりまして、犯罪被害者等の精神的・経済的被害を軽減しようというものであります。

 今回の犯罪被害給付制度の拡充という内容の制度改正は、先ほど申し上げました3つの検討会のうちの経済的支援に関する検討会の提言を受けまして給付金の内容あるいは額を拡充したものであります。

 具体的に申しますと、重傷病給付金につきましては、被害者が犯罪被害によって仕事ができなかったというような場合に休業損害を上乗せするということであります。

 それから障害給付金につきましては、特に深刻な状況に置かれた重度の後遺障害者に対しての給付金の支給額を引き上げました。その結果、最高では自賠責に近い額が支給されるようになりました。

 3つ目の遺族給付金につきましては、死亡した犯罪被害者の収入によって生計を維持していたという点で特に深刻な状況に置かれた遺族に対する支給額を引き上げまして、最高では自賠責に近い額が支給されるようにいたしました。

 続きまして、給付金の制度以外の改正について申し上げます。

 その1は、民間被害者支援団体の活動の促進であります。今回の法改正によりまして、都道府県公安委員会が民間団体の自主的な活動を促進するために必要な助言、指導等の措置を講ずるように努めなければならないということにされました。

 また、都道府県公安委員会による助言、指導等の措置に関しましては、国家公安委員会がガイドラインを策定することとされました。このガイドラインは、先般、「犯罪被害者等の支援に関する指針」として制定をされました。
 その他の改正のその2の広報啓発活動の推進であります。

 今回の法改正によりまして、国家公安委員会、都道府県公安委員会、それから都道府県警察の本部長あるいは警察署長は、それぞれの立場において犯罪被害者等の支援に関する広報啓発活動を行うように努めなければならないこととされました。

 これを受けまして警察においては「社会全体で被害者を支え、被害者も加害者も出さない街づくり」といった観点でいろいろ活動をしております。

 その内容を具体的に申しますと、例えば犯罪被害者あるいはご遺族の方々に講演をしていただいたり、中高生を対象とした命の大切さを学ぶ教室、あるいは大学生を対象にした被害者支援に関する講義を行ったりする、こういったことを通じまして、国民一人ひとりが犯罪被害の実態あるいは犯罪被害者の方が受けた痛み、あるいは命の大切さといったことを実感していただこうとするものでありまして、その結果、被害者支援の充実が図られるとともに、犯罪を犯してはならないという規範意識の向上、さらには犯罪を許さないという地域社会における機運の盛り上げを図ろうというものであります。

 以上のような法律の内容の充実に併せまして、法律の目的に「犯罪被害者等が再び平穏な生活を営むことができるよう支援すること」が追加されましたし、法律の題名も略称で申しますと犯罪被害者支援法と改められました。

 報告の2点目として、オウム真理教犯罪被害者救済法の施行について申し上げます。

 この法律は、与野党の合意により議員提案され、今年の6月に成立したものでありますけれども、その施行は警察庁が担当することとなりました。

 法律の内容は、地下鉄サリン事件、松本サリン事件など、一連のオウム真理教の犯罪によって被害を受けられた方に対しまして国から給付金を支給するといった内容であります。

 給付金の支給を受けるためには、被害者から現在お住まいの都道府県の公安委員会に対して申請をしていただく必要がございます。各県の警察本部に相談のための電話あるいは相談のための窓口を設けておりますので、まずはそちらにご連絡いただくのが最も便利かと考えております。

 この法律の施行は今月の18日でありますが、それ以前でももちろん相談等はお受けすることとしております。

 この法律の内容は、12年前の犯罪被害を要因とする給付でありますので、被害者の方々への周知が非常に重要であると認識しております。パンフレットも用意させていただいておりますので、皆様方のご協力もいただければ幸いに存じます。

 警察からの報告は以上であります。ご清聴ありがとうございました。


 
法務省大臣官房審議官 三浦守

 法務省の三浦と申します。よろしくお願いいたします。

 私のほうからは、この1年間の法務省の施策を中心にご説明をさせていただきたいと思います。

 ただ、先ほど本村さんから、私がお話をさせていただきたいと思っていた事項の主なところについて非常に適切にお話をしていただきましたので、少し話の予定を変えまして、本村さんのお話しになったところを補足する形でご説明をさせていただきたいと思います。

 数枚の物でありますけれども、法務省の資料[PDF:196KB]の束がお手元にあるかと思います。それをご覧いただきながらお聞きいただければと思います。

 その1枚目と2枚目に被害者参加制度、それから損害賠償命令制度ということについてのチャート図がございます。先ほどお話にありましたように犯罪被害者の方々が刑事裁判に参加する制度、それから簡易・迅速に損害賠償請求ができる制度、これらはいずれも本日施行になりました。今日以降起訴された事件が対象になるということでございますので、今後そういう形で該当する事件に遭われた被害者、遺族の方々がこれを利用できるということになったわけであります。

 参加制度につきましては、先ほど本村さんがお話しになったとおりでありまして、実際に参加を許された被害者参加人の方々は、このチャート図にありますように公判期日に出席をして、証人尋問、被告人質問、更には事実または法律の適用について意見を述べるということができるようになります。

 若干補足して申し上げますと、その証人尋問と被告人質問のところに、下に説明が書いてございます。

 証人尋問につきましては、先ほどお話がありましたようにいわゆる「情状」というものについての証言について尋問をすることができるとなっております。

 それに対しまして被告人質問のほうですが、こちらは「情状」についてという限定が外れておりまして、参加人の方が「意見を陳述するために必要な場合に質問ができる」となっておりますので、被告人に質問する場合には、いわゆる情状に限られないということになります。犯行の状況に関することであったり、動機に関することであったり、それが参加人自身のご意見を述べていただくために必要な事項であるということであれば検察官に申し出ていただいて、それを裁判所に申請をして許可された場合に質問ができると、そういう流れになっているということでございます。

 この制度を円滑に実施する、被害者参加人の方にとりましては効果的に裁判に参加するというためには、やはり検察官と十分密接なコミュニケーションを図るということが大変重要だろうと考えております。被害者参加人の方々に事件の内容をあらかじめ十分把握した上で適切な活動を行っていただくという観点から、検察庁のほうでも参加人の方々に対しまして、事件の内容を具体的に説明をするという努力をしなければなりませんし、ご要望がある場合には、起訴後、第1回公判期日の前であっても、検察官が請求する予定の証拠について原則としてこれを見ていただくという運用を行うこととしているところでございます。

 次の損害賠償命令のチャート図をご覧いただきたいと思います。これも先ほどご紹介があったとおりですが、刑事裁判で有罪判決があった後、その黄色い部分になりますけれども、同じ裁判所が被害者の方々の損害賠償請求についての審理を行います。4回程度の口頭弁論あるいは審尋といった形で審理を行って損害賠償命令を出すということになります。

 この出された命令に対して両方の当事者に異議が無いという場合には、その下にあるように確定判決と同一の効力ということで、正に民事裁判をやったのと同じ結果になるというわけです。

 異議の申立てがありますと、右側の赤い本来の「民事裁判」という方に手続が移行していくことになりますが、その場合でも刑事裁判で使われた記録を裁判所が民事裁判のほうに送るという手続が取られることになりますので、民事裁判という形になった場合でも被害者の方々のご負担は軽くなるという制度になっているところでございます。

 次の紙でございますが、これも先ほどご紹介がありましたけれども、被害者参加人のための国選弁護制度というものでございます。本年4月にこの制度を導入する法改正が行われまして、この制度も本日から施行されているところでございます。

 これは、被害者参加人の方々の資力が十分でなく、弁護士さんをご自分で依頼するということができないという場合に、裁判所が弁護士さんを選定して国がその弁護士さんの報酬などの費用を負担するという、そういう制度であります。

 具体的には、そういった弁護士さんを依頼したいという参加人の方が一定の資力が無いということを申し出ていただきまして、日本司法支援センター、いわゆる法テラスを経由いたしまして被害者参加弁護士の選定の請求を裁判所にしていただくということになります。

 どういう資力の状態にある方に認められるかといいますと、参加人の方がお持ちの現金あるいは預金といった一定の流動性の高い資産の合計額から治療費など請求の日から3カ月以内に犯罪行為を原因として支出する見込みのある、そういう費用をその資産の合計額から差し引いた額、それが150万円未満という方についてはこの弁護士の選定の請求ができるということになっておりまして、選定請求書と資力などの申告書を法テラスに提出していただくことになります。

 実際には、その記載をする際に法テラスの職員のほうで手助けをするということになると思いますが、その際にどういった弁護士さんを希望されるかといったご希望を伺った上で法テラスが被害者参加弁護士の候補を指名して裁判所に通知をする、その上で裁判所が選定をするという手続の流れになっているものでございます。被害者参加人の方にとって弁護士さんの援助というのは大変重要でありますので、是非この制度もご利用いただきたいと思います。

 次の紙でございますが、これは少年法の改正で、これも今年の6月に改正が行われたところでございます。

 改正法の中身は、右のほうに5項目ほど挙がっておりますが、まず1点目は、被害者の方々による少年審判の傍聴制度を創設するというものでございます。少年審判は非公開の手続でありますが、殺人など重大事件におきまして、被害者の方々、遺族の方々から、是非その審判のやり取りを自らその場で直接見聞きしたいといったような強いご要望があったところでございます。

 そこで、今回のこの法改正によりまして、家庭裁判所は、少年の健全な育成を妨げるおそれがなく相当と認める場合に、殺人あるいは強盗致死傷、自動車運転過失致死傷など一定の重大な事件の被害者、遺族の方々にその傍聴を許すことができるとされたものであります。

 2点目でありますけれども、家庭裁判所による審判の状況の説明制度というものが始まります。審判を主宰する家庭裁判所におきまして、適宜の時期ということになりますが、審判の状況について被害者の方々に説明を行うというものであります。これも、傍聴とともに被害者の方々の審判の状況を知りたい、情報を得たいというご要望に応えるものということができると思います。

 3点目は、記録の閲覧及び謄写の範囲の拡大であります。

 少年保護事件の記録の閲覧・謄写は、これまでも少年法で一定の場合に認められていたわけでありますけれども、とにかく事件の内容を知りたいという被害者の方々のご要望というものは非常に強いわけでありまして、今回の法改正で被害者の方々に対し原則としてその記録の閲覧・謄写を認めるという形で要件が緩和されましたし、更にこれまで閲覧・謄写の対象とされていなかった少年の身上に関する供述調書あるいは審判調書などについてもその対象に含まれるということになったものでございます。

 4点目は意見聴取の対象者の拡大でございます。これは、これまで被害者の方が死亡した場合には、配偶者などのご親族の方が意見聴取の対象とされていたところですが、今回の法改正で被害者の方が心身に重大な故障があるというような場合にも配偶者などのご親族の方から意見を伺うこととし、意見聴取の対象者が拡大されたというものでございます。

 以上が少年法の関係でございます。

 更にもう一つございますが、これは後から配付になったかと思いますが、法務省保護局の『犯罪被害者の方々へ』というリーフレットがあるかと思います。こちらの関係について若干ご説明をいたします。

 更生保護における犯罪被害者の方々への保護支援の施策でありますけれども、これもちょうど1年前、平成19年12月1日に新たな施策がスタートしております。このリーフレットにありますように、仮釈放等の審理における意見聴取、保護観察対象者に対する心情伝達、加害者の処遇状況に関する通知、そして相談・支援ということでございます。

 意見聴取につきましては、加害者の刑務所などからの仮釈放あるいは少年院からの仮退院という、そういう審理を地方更生保護委員会というところで行っているわけですが、その場合に、仮釈放・仮退院に関するご意見あるいは被害に関するお気持ちなどについて伺うという、そういう制度であります。

 こういった制度につきましては、正にその仮釈放・仮退院の判断において考慮されるほか、実際に仮釈放を許すという場合にも、その仮釈放者、加害者が保護観察中に守らなければいけない約束事の設定などで考慮されるところでございます。

 それから、心情伝達の制度は、保護観察所が申出をされた方々から被害に関する心情や加害者の生活や行動に関するご意見をお聴きして、これを保護観察中の加害者に伝達をするというもので、そういった被害者の方々の被害の実情を加害者に直視させて反省や悔悟の情を深めるという形で指導監督を行うというものでございます。

 また、加害者の処遇状況に関する通知につきましては、従来、検察庁のほうで被害者の方々に対して事件の処分ですとか裁判の結果などについて通知を差し上げていたところでありますけれども、これもちょうど1年前、制度を拡充いたしまして、関係機関が連携いたしまして、加害者の刑務所での処遇状況、あるいは少年院での処遇状況、保護観察の状況などについて関係する機関からご希望の被害者の方々にお知らせするという制度が運用されているというところでございます。

 こういったいろいろな更生保護の施策を実施するために、全国50ヶ所ございます保護観察所には、犯罪被害者等の方々に専門に対応する担当官あるいは保護司というものを配置しているところでございまして、今後ともこういった制度の円滑な運用に取り組んでいくこととしているところでございます。

 法務省といたしましては、今後とも被害者の方々の支援というものを充実させるために引き続き各種の施策に取り組んでまいりたいと考えているところでございます。よろしくお願いいたします。ありがとうございました。
 

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