北海道大会 in 旭川:パネルディスカッション

 
テーマ:「犯罪被害者を地域で支えていくために ―私たちにできること―」
コーディネーター:
 善養寺圭子(北海道被害者相談室室長)
パネリスト:
 成川毅(旭川弁護士会犯罪被害者支援委員会委員長)
 佐藤由佳利(北海道臨床心理士会副会長)
 渡辺謡子(北海道被害者相談室統括支援活動員)
 犯罪被害者家族(※本人のご希望により氏名は非公開とさせていただきます)

善養寺:こんにちは。ただ今ご紹介いただきました善養寺と申します。どうぞよろしくお願いいたします。

 ちょっと時間が押しております。たくさんのスケジュールの中で松村さんのお話をお聴きしたり、それから力の出る音楽隊を聴いたり、いろいろな企画がありましたが、最後のコマになりました。これから4時半までの間ですね、パネラーの方々にお話をいただきたいと考えております。どのような形で被害者の方の被害者支援の一番の中心は被害者がどのようなことを感じ、どのようなことを思い、どのような支援を求めているかということに尽きるんですが、そのお話を聞きながら、それぞれのお立場でご意見をいただきたいと考えております。

 順番としましては、被害者の当事者の方にお話を伺います。それから成川先生にお話をいただいて、そして由佳利先生にお話を頂いて、最後渡辺さんというふうに考えておりますので、どうぞ皆様、よろしくお願いしたいと思います。

 それでは、犯罪被害者のご家族の方、よろしくお願いいたします。

犯罪被害者家族:家族を代表してまいりました。よろしくお願いいたします。原稿を読まさせていただきます。

 私の長女は通り魔に襲われ、瀕死の重傷を負わされました。それまで私は事件や事故について、テレビや新聞等で存じ上げておりましたが、実際に自分が被害者家族という立場になるまで、被害者の置かれている状況や向き合っている現実が、こんなに厳しいものとは想像もできませんでした。今大会において、私どもが経験したこと、娘を通して現在思っていること、突き当たった現実を皆様にお伝えすることにより、少しでも多くの方に犯罪被害者の現状を理解していただき、犯罪被害者支援が一歩でも進めばという思いから、壇上に上がらせていただきました。

 それでは、犯罪被害の概要ですけれども、私どもが体験した犯罪被害についてお話しいたします。

 私の長女は、平成18年9月の深夜、会社の勤務を終え帰宅の途についていたところ、札幌市内の自宅付近の路上において突然知らない男に刃物で切りつけられ、頭や背中、右肩及び前腕部、右親指、右人差し指等、神経切断に達する大怪我を負わされ、入院62日間の生活を余儀なくされ、治療は全治1年を超える長期に及ぶものでした。

 被害者の家族の気持ちといたしまして、事件から2か月後、やっと犯人は逮捕され、長女はもちろん、家族、町内の方、地域みんなで安堵しました。逮捕後犯人は動機について、被害者と面識は無かったが、むしゃくしゃしていたので一人歩きの女性を狙ったと、全く身勝手な理由を聞き及び、愕然とするとともに、込み上げる怒りから震えが止まりませんでした。

 発生当初から犯人が検挙されるまでの間、娘の命さえ助かればそれでいいという思いと、なぜ、どうしてうちの子なんだろうという答えの出ない疑問、そして私が迎えに行かなかったから、あの時こうだったから被害に遭ったのだという、自責の念を繰り返す日々でした。また、逮捕されるまでの間は、犯人が捕まっていないという恐怖感と、長女以外の我が子を守らなければならないという強い思いを繰り返し、長女の看病との狭間で精神的にも肉体的にもボロボロの状態でした。

 一番近くにいる家族でありながら、それぞれに抱える悩みや思いを推し量ることができずに、ストレートにそれぞれの気持ちをぶつけ合い過ぎてしまい、一時は家族の気持ちがバラバラになり、孤立するような状態にも陥りました。当時はそれぞれが家族を思っていたはずなのに、家族全員が事件のことで傷つき、もがき、苦しみ、分かってもらえない、どうして分からないのという気持ちが交錯していました。互い違いになった家族間の絆が再び一本になり、それぞれの立場で抱える傷や思いを理解し合えるようになったのは、随分時間を要したように思います。今振り返ると、一番近い家族を最も遠くに感じた、辛い時期でもあったと思います。

 犯人が逮捕されるまでの間は、まだ近くに犯人が潜んでいるかもしれないという恐怖にさいなまれ、夫の不在時も事件当初からリビングに布団を並べ、川の字になって子供と眠りました。でも、ぐっすりは眠れませんでした。そんな最中、町内会の催し物が事件により中止となった旨の回覧板が回ってまいりました。中止を知らせる文章を見て、私達のせいで催し物が中止になったと責められているように感じてしまいました。

 また、自宅前の道路のアスファルトには長女の血液が奥までしみ込んでしまった状態で、私自身道路を見るたびに長女の体の痛々しい傷を思い出しました。自責の念に駆られることから何度も何度も血痕をこすり、水で流したのですが、血痕は消えませんでした。そのうち住民の方から、そろそろあれをどうにかしませんかと、道路に残る長女の血痕を消してほしいという要望を打ちかけられた際のその言葉に、深く傷つきました。

 逆に私を励ましてくれたのも、近所の方だったのです。アスファルトの血痕を気にする私どもに対し、「気にしなくていいのよ」と優しく声を掛けてくださったりもしました。私自身も消す努力をしているのにと、当時は追い討ちをかけられるような気持ちになりました。こすっても洗っても消えることのない血痕をどうしたらいいのか、私は担当の女性警察官に聞くと、塗らなければ消えないことを聞き、被害者なのにアスファルトの補修までしなくてはならないのだろうかと途方にくれ、業者に聞こうかと思った矢先、夫を通じこの件について聞いてくださった方が行政の担当者に話をしてくれ、道路自体が古いということも手伝い、道の一部ではなく、通り全体を改修してくれ、本当に助かりました。
 受けた支援について、先ほど道路の改修工事もありましたが、他にも私どもが受けた支援についてお話しいたします。

 事件後、最初に受けた支援は警察によるものでした。担当の女性警察官から病院の付き添いを受けた他、今後の刑事手続き、捜査の進捗状況、犯罪被害給付制度やその他生活について、様々な情報を頂きました。また、民間被害者支援団体である、社団法人北海道家庭生活総合カウンセリングセンターにおいて、カウンセリング・相談等の支援を受けました。誰にも打ち明けられない心の葛藤を聞いてもらい、心の冷静さを保つことができました。

 今後望むこととしては、家族間や自己の精神面において、第三者の介入や支援を望まないようなデリケートな場面もありました。しかし、経済面や社会面においては自己の努力では限界があり、他者、地域、社会全体の支援がなければ、元の生活を取り戻すことが厳しい現状があります。長女は帰宅途中の薄暗い路上で犯罪被害に遭っておりますが、事件後も新興住宅の開発が進んでいる中、道路の照度は変わっていません。長女の事件は新聞等で大きく報道されています。事件後、行政等の窓口の方が、事件発生の時間帯に一度でも訪れていただき道路を見ていただければ、道路の暗さや血痕のついたままの道路に気付いてもらえたかもしれません。

 犯人は事件後、逮捕されれば刑務所等の中で食事・健康等が守られます。しかし、何の面識もない犯人により傷つけられた被害者は、犯人が捕まるまで誰かも分からない人との関係を疑われ、心ない噂に傷つき、落ち度があったのではないかと揶揄されることもあります。他にも、医療費はもちろん、看護にかかる経済的な負担、時間的拘束など、表面には出ない様々な負担を強いられます。被害者個々によってその内容は異なると思いますので、大きな枠でとらえていただき、行政での担当窓口のようなものにより、柔軟に対応していただければいいと思いました。

 最後に、犯罪被害に遭うとそれまでの生活から多くのことが一変します。犯罪被害者本人である長女は、体の体調不良は全快には至っておらず、私自身も事件による心労から現在も通院を余儀なくされており、私達は事件に遭ったあの日から現在もまだ闘いが続いていますが、被害当事者である長女にとって何より辛かったのは、もう二度と戻らない貴重な青年期の時間を奪われたことではないかと思います。

 退院後、何とか復職を果たしたものの、事件を知らない同僚が長女の腕に残る傷を見て、「リストカットしてるの?」と聞かれたそうです。母親として、お腹を痛めた我が子に傷がついてるのを目にすることは大変辛いものがあります。しかし、当事者である長女は、事件後も様々な場面で、犯罪被害に遭ったことを背負って生きていかなければなりません。事件後被害について、長女は多くを語ろうとはしません。ですが、日常会話等から時折感じる長女の痛みを少しでも推し量り、ただそばで支えることしかできませんが、長女の拠り所としていつも見守っていきたいと思います。

 私も事件以降免許を取り、娘たちのお迎えをしております。同時に、他の誰もが長女や私達家族のような辛い経験をしなくていいように、加害者にも被害者にもならない社会になることを祈り、今回この場において私の経験についてお話しさせていただきました。どうもありがとうございました。

善養寺:ありがとうございました。お辛い話を、本当にありがとうございました。あまりにも突然で、そして不条理で、そういうような思いが家族をバラバラにしながらも、今ここまで頑張っていらして、もっともっと頑張らねばならないという思い、真摯に私どもも耳を傾けなければいけないと思います。打ち合わせの時に、「言いたくないけど、聞いてほしいんです」って言った当事者の方のお気持ちが、すごくよく分かるように思います。

 それでは次に、日弁連の犯罪被害者支援の委員もしてらっしゃいます、旭川の成川毅法律事務所の成川弁護士にお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。

成川:今ご紹介いただきました、弁護士の成川でございます。所属は旭川弁護士会でございます。

 先ほどご講演を頂戴いたしました、「あすの会」の松村様のお話、また今このパネラーとしてご登壇されている被害者のお母様のお話をお聞きしますと、会場の皆様も同じ思いだと思いますが、私も何度か「あすの会」の殺人等々のご遺族のお話等も伺いまして、非常に重たい、という思いを率直にしております。

 私ども、犯罪被害者の方々のご支援という立場で、また弁護士という立場でどういったことができるんだろうか、自分のようなものに一体何ができるんだろうか、被害者の方が受けた傷というのは私ども第三者から見ると、これを癒すというのはちょっと生意気かも分かりませんけれども、いい方向に導くということが非常に難しいんではなかろうか、こういった自問自答をしながら、このような場において弁護士としてお話をさせていただくことに、若干心苦しいところがございますが、先ほどの松村様のご講演にもございましたように、「あすの会」の皆様方のご活躍、ご活動が、実際に法改正を導いて、犯罪被害者の方がバーの中、いわゆる法廷の中に入るという制度が、来月、12月1日から施行されます。私は弁護士という仕事柄、裁判所に向けた形での被害者のご支援ということで、このバーの中に入る参加制度、あるいは賠償命令制度について、若干お話をさせていただきたいと思います。

 横道にそれますが、犯罪被害者というこの範囲が非常に広うございます。先ほどの松村様のご講演にございましたように、殺人事件の被害者、あるいは性犯罪の被害者、そして窃盗、あるいは恐喝・詐欺等の経済犯の被害者、あるいは自動車運転過失致死傷、従前は業務上過失致死傷といいましたが、交通事故の被害者、いろんな被害者がおられます。こういった被害者すべてを網羅してお話しすることは非常に困難でございますけれども、くどいようですが、来月から施行されます被害者参加制度、それから賠償命令制度について概観させていただきたいと思います。

 まず犯罪被害者参加制度につきましては、講演を頂戴しました松村様のお話にございましたように、被害者の方が刑事裁判から置き去りにされている、こういった声、この声を核としまして、昨年の6月に刑事訴訟法という法律が改正されました。この参加制度というのは、文字どおり犯罪被害者の方が法廷の中に入って、一定の権利を行使できる刑事訴訟手続き、刑事裁判に参加できるという制度でございます。

 対象となる犯罪は、先ほど範囲が広いというふうに申し上げましたけれども、窃盗だとか詐欺、恐喝といった財産犯は入りません。故意、いわゆるわざと人を殺した、わざと人を怪我させた、それから業務上過失致死傷、自動車運転過失致死傷、要するに交通事故で亡くなられたご遺族、あるいは重篤な傷害を負った方の裁判、それから性犯罪、こういったものを対象としております。

 従前は、自分の身内が、家族が殺された、あるいは自分が性犯罪の被害に遭った、こういった場合に、刑事手続きというのはその被害者の方が、端的にいいますと関与できないところで進行しておりましたが、この参加制度、12月、来月から施行の参加制度につきましては、被害者の方が法廷の中に入る。そして検察官とほぼ隣、あるいは地裁によっては若干法廷の客観的なキャパシティーの関係もございまして、検察官の後ろという地裁もあるようですけれども、基本的には法廷の中に入り検察官のそばで、刑事手続き、刑事裁判に参加するという制度でございます。

 刑事訴訟法上、検察官と弁護人と、こういった対立構造、これを崩すんではなかろうかということで、この参加制度につきましては私ども弁護士会、日弁連の中でも、非常に議論がございましたが、とにかくバーの中に入るという「あすの会」の皆様方の運動が結実して、在廷する権利を導くことができました。

 その中でどういった権利を行使できるかと言いますと、証人に対する尋問権。これは罪体といいまして、犯罪事実ではなくて情状に関する事実に関して尋問する権利、それから加害者である被告人に質問する権利、こういった権利が認められております。ただ、残念ながらというのはちょっと表現的におかしいかも分かりませんけれども、この質問する権利につきましては、検察官、加えて裁判所がOKだと、いいという、相当と認めた場合に限るというふうに限定はされておりますけれども、従前に比べると非常に大きな前進であろうと思っております。

 こういった参加制度が認められるわけですが、大変失礼ですけれども、突然降って湧いた犯罪被害に遭われた方ですので、手続き的にどうしていいか分からないという方が相当おられる、あるいは、それは当然であろうと思います。そういった方々のために、私ども犯罪被害者支援に当たらさせていただいている弁護士が、その被害者の方と一緒に法廷の中に入る、あるいは法廷の中に入るのは委託をした弁護士、被害者サイドに立つ弁護士だけが入る、こういったことも可能です。一緒に入ることも可能、弁護士だけが入ることも可能、こういった制度でございます。

 先ほど法テラスの辻本弁護士からお話ございましたように、弁護士も大変卑近な表現で恐縮でございますが、お金を頂かなければ生活が成り立ちませんので、お金を頂戴するんですけれども、一定の要件、資力要件といいますが、この要件をクリアした場合には、法テラスのほうから、いわゆる従前、被告人の国選弁護、悪いことをした犯人、被告人に国選で公費で弁護人が付きましたが、これと同様に、法テラスと契約している被害者国選弁護、要するに被害者の方にも国選で弁護士が付きますという制度が同時進行しております。こういった制度が12月1日からできます。

 また、これまた松村さんのほうでもお話ございましたように、同時に、損害賠償命令制度というのがございます。ここでご注意いただきたいのは、この損害賠償命令制度というのは、刑事の手続きに出てきた証拠をほとんど利用して、それで賠償の命令を裁判所にしてもらうと。ですから、手続き的に非常に迅速であり、簡単であり、それで、印紙代は2,000円で済みますので費用的にも安いという制度でございます。ところが、この制度につきましては、まだまだ問題があろうかと思っております。

 と言いますのは、先ほど松村様のお話にもございましたように、「絵に描いた餅」になるという話がございました。損害賠償命令制度につきましても、仮に性犯罪の被害者の方がこの賠償命令制度を使いまして、慰謝料を500万請求して500万の賠償命令が出たといたしましても、被告人本人に資力がない場合には「絵に描いた餅」にならざるを得ない。ですから、判決を導くまでの手続きは非常に迅速・簡略化できるけれども、具体的にそれを、表現は生々しいんですが、金にするには、彼の資力にかかっている。殊に殺人事件等の重篤な事件の場合に、「絵に描いた餅」でいいのか。こういった「絵に描いた餅」、例えば3,000万、5,000万という命令が出た場合には、国が一時立て替えて、国が服役する人間から徴収することはできないのか、こういった議論も法制審等ではなされたようですけれども、残念ながらこの命令制度は画餅に帰す可能性が高いのではなかろうかというふうに、内心危惧しております。

 もう一点、この賠償命令制度について付加させていただきたいのは、対象事件につきましては、先ほど申し上げました、被害者がバーの中に入る参加制度と異なりまして、業務上過失致死傷事件、あるいは自動車運転過失致傷事件が入りません。言い換えると、より平たくいうと、交通事故の場合には、参加はできるけれども、この賠償命令制度は使えません。従って、交通事故で然るべき適正な賠償を求めるという場合には、従前の民事の調停、あるいは訴訟に頼らざるを得ないというところでございます。

 ざっと早足で恐縮でございますが、12月から施行されます参加制度・賠償命令制度についてご説明させていただきましたが、本日のテーマは、地域で支えるために、私たちに犯罪被害者の方々のために何ができるかというテーマでございます。冒頭にご挨拶させていただきましたように、私は旭川弁護士会所属でございます。この道北地域、道北地区で被害者の方がおられ、また冒頭に申し上げましたように、非常に重いテーマ、あるいは重い問題を抱えることがあろうかと思いますけれども、私なりに研鑽しながら、法律屋としてできるご支援をさせていただきたいと思っております。

 以上でございます。

善養寺:ありがとうございました。被害者を取り巻く司法制度が大きく前進はしているけれども、中身をきちんと制度に沿ったようにしていくにはまだまだ時間がかかるし、被害者の声に学びながら、一歩一歩行かなければいけないというようなご提案だったと思います。ありがとうございました。

 次に、佐藤由佳利先生にお願いしたいと思いますが、佐藤先生は北海道臨床心理士会の被害者支援委員会の委員長さんをしてらして、主にスクールカウンセラーのスーパーバイザー的なお仕事の中から、子供に関することについてお聞かせいただけると覚えております。よろしくお願いいたします。

佐藤:はい。こんにちは。今、善養寺さんのほうからご紹介いただきましたように、私は臨床心理士という仕事をしておりまして、その中でスクールカウンセラーをやっております。札幌市と北海道と両方の単位で、被害者支援ということを行っております。

 札幌市の場合にはスーパーバイズ制度というのがございまして、小中高、すべての学校にスクールカウンセラーが入っております。何か子供たちに事件や事故に巻き込まれるようなことがありますと、まずはスクールカウンセラーが、子供たち、あるいは先生たち、保護者の方々に対応しますが、それのサポートとして入ることが多うございます。北海道の場合には、スクールカウンセラーがいる地域もいない地域もございますので、スクールカウンセラーがいる場合にはサポートに入る、あるいはそれだけでは足りないときは応援に駆けつけるということもございます。

 札幌市の場合は、昨年度は、一番多かったのは交通事故の被害です。これは犯罪ということを考えても交通事故被害が一番多いのかと思いますが、子供たちの登下校中に車が突っ込むというようなことがございます。そうした時に、そのお子さんの怪我ですとか、あるいは亡くなることもあるんですけども、それを目の当たりにする子供たちというのがたくさん出ます。子供たちは大抵の場合走って行って、先生にこういうことがあったということを告げ、先生たちがそこを走って行く。そうすると、担任の先生ですとか、教頭先生、校長先生もその交通事故の現場を見るということになります。ですから、学校全体がものすごく大きく揺れる。そういったところに呼ばれて行くということがあります。

 今年度に入りまして、これはたまたまなのかよく分からないんですが、非常に性被害の話が増えました。これは市も道もありました。道の場合はあまり交通事故の話は上がってこなくて、これはもちろん無いということではありません。私のところにまで話が来て、来てくれという話になる時にはほとんど殺人事件ですね。で、小学生の場合には被害者ですけれども、長崎のほうで加害者になった事件もありましたが、子供の話の時に非常に難しいのは、特に道で呼ばれる時には過疎地域が結構多うございまして。そうしますと、例えば子供が一人殺されたと。犯人は隣のお家の男性であった。ところが、加害者の男性の、例えば甥っ子さんであるとか、従兄弟さんが、被害に遭った子供と同じ学校にいるということがとても多くあります。そうした場合に、学校は非常に戸惑います。

 つまり、何があったかを子供たちに伝えたい。で、日本の学校の場合には全校集会というのを開いて、そこで説明するんだけれども、その中に加害者の親戚、非常に近い親戚がいる。場合によっては、教育委員会ですとか、役所の方々にも親戚がいるんですね。加害者・被害者の親戚が同じところにいるんですね。そういう時にどうしていくかが非常に難しいということがあります。

 ですから、こっちは悪い人、こっちはいい人っていう説明が先ずできないんですね。全部をひっくるめた形でやっていかざるを得ないというようなことがあって、非常に緊張した場面の中に呼ばれていき、学校に行きますと、私一度、おっちょこちょいなもんですから、間違えて隣の学校に行ったことがあるんです、一度、小学校に。入った途端に、これは間違えたと思いました。つまり、そういった事件、事故のあったところに行きますと、もう雰囲気からして違います。張り詰めたような、もう何ともいえない雰囲気が立ち込めているんですが、私が間違えて入ったところは全然そういう雰囲気がありませんでしたので、これは何か違うと思いましたら、「隣ですよ」と言われたということがありました。

 そのようなところに入っていきまして、まず学校、私は立場的に学校支援をすることが多いんですけれども、先生たちにお話を聞いて、担任をしている子供が亡くなったとか、怪我をしたとかいう時には、担任の先生はほとんど動揺してどうにもならないような状態になっています。ですけれども、自分がやらなければ気が済まないというような状態になってることが多いので、マニュアルを見ますと、担任の先生に関わらせるのは止めたほうがいいと書いてあるんですが、大概の場合そうはいきません。責任感が非常に強く先生たちはありますので、関わってもらいながら、誰がサポートしてくれるのがいいのか、その先生が信頼している方は誰なのかというようなことを探っていって、お友達はいますかというようなこともお聞きして、先生達をまずサポートし、それから保護者の方に会い、被害に遭った、あるいは被害児童を見たという子供たちに会い、というようなことをやっていきます。

 マスコミ被害ということも非常に多くて、ある事件が起こったときに、私アンケート調査をさせていただきまして、小さな学校だったものですから、すべての保護者の方々に、小学校だったので、保護者の方々にアンケートをさせていただきましたら、マスコミがどれだけ行ったかということと、おうちの中で保護者ですとか子供たちがどれだけ動揺したかということは、ほとんど平行線でした。たまたま夏休みだったので帰省していていなかったですとか、その子といろんな繋がりがあって、たまたまマスコミが来たとか、来ないとか、そういうことによってその子供とどのくらい繋がりがあったかということよりも、マスコミがどの程度来たかによって、被害状況が大きく変わっていたということにとても驚きました。

 被害者の、私が関わった中でご遺族の方と関わったこともありますけれども、マスコミの方が私に取材をしたいと。で、私のほうは避けるわけですけれども、あの手この手で何とか取材ができるようにいろいろやってくるということがあって、「この方から聞きました」と言って来られたってことがあって、後で「聞いてきたとマスコミで言ったんですけれども」って言ったら、「私言ってませんよ」って。そこに一堂に何人かかかわった人達がいたんです、スタッフがいたんですけれども、警察の方も含めてですね、教育委員会の方もみんないたんですが、遺族の方もいて、お互いにみんなこっちから聞いたって言った、あっちから聞いたって言った。要するに、全部嘘で、マスコミの方が取材したかったということがありました。

 ですから、今は、もう私達の会では、マスコミ担当者と実際に実動する人は分けていて、だれが実動して支援に入っているかということは伏せるようにしております。そうじゃないと、私達が自由に動けないですし、そういうことに煩わされるのは困るので、マスコミの方にお話をしてもらう人は別なように分けています。

 私達も、どのくらいカウンセラーが保護者ですとか、ですから、被害に遭った子の家族ですね、ですとか、被害者本人とかと関わって、どのぐらいの役に立つのかというのは、本当にある意味心もとないところがあります。先日被害に遭われた子のお母様が、カウンセリングはもういいので、同じような被害に遭われた方のお母さんに会ってみたいっておっしゃって、それは本音の気持ちだろう思いました。どれほど一生懸命話を聞いても、やはり当事者でなければ分からないことというのが絶対にあると思います。かといって、私の仕事が無用だとも全く思っていないんですけれども、できることの限界というのがあって、その時には落ち着いて話を聞いて、いろいろとアドバイスできるところはしていきますけれども、ある程度落ち着かれたときに、ああ、同じような経験をした人に会ってみたい、というお気持ちになられる。そこまで待って?持って、落ち着いていかれるところまでが、私達の仕事なのかなというふうにも思っています。

 今、当事者の方のお話をお聞きしましたけれども、こういったお話はやはり当事者の方でなければできませんし、当事者の方でなければ聞けないお話というのもあるかと思います。是非こういうことを続けていく中で、当事者の方々とも、連携というのは変な言い方のような気がしますが、専門の法テラスの方とか、相談室の方とか、そういう方々だけではなくて、当事者の方々と繋がりを持っていきたいなというふうに改めて思いました。ありがとうございました。

善養寺:はい、ありがとうございました。先ほどの松村さんのご講演の中で、「有ること、無いこと」ではなくて、松村さんは必ず、「無いこと、無いこと」を言われるというふうにおっしゃってたのを、今聞きながら思い出しておりました。報道被害というのは無くならないんだろうと思うし、私も当事者の方から、あなた方が一生懸命話を聞いてくださっても、何も私の心は癒されませんと言われたことがありますね。でも、そうだろうなという思いの中で共有するというか、心を一緒にしていける部分もあるということを、今お話しいただけたと思います。

 次に、私の仲間なんですが、北海道被害者相談室の支援統括をやってます渡辺謡子さんから、支援をする側の意見を頂戴したいと思います。よろしくお願いいたします。

渡辺:北海道被害者相談室の渡辺と申します。よろしくお願いいたします。今日は、民間の被害者支援団体の相談員としての立場で、お話をさせていただきたいと思います。

 まずお話をさせていただく前に、先ほど被害に遭われた方のお母様からのお話がありました。まだ事件から2年しか経ってないんですよね。それが、匿名と言いながら、このように壇上に上がって辛い思いをお話ししてくださった。本当にお話ししてくださってありがとうございますと、まずお礼を申し上げたいと思います。

 それでは、先ず始めに、民間の被害者支援団体の設立の流れについてお話ししたいと思います。

 平成3年の10月3日に、東京で犯罪被害者給付制度の10周年記念シンポジウムというのが開かれました。そこでフロアからの一遺族の発言がありました。18歳の息子さんを酔っ払い運転の車に轢き逃げされて亡くされたお母様がフロアから発言を求めて、次のように述べられました。要約をちょっと紹介したいと思います。

 「被害者の生の声を皆さんにぜひ聞いてほしいと思います。今の日本では、被害者は大きな声で泣くことさえもできず、じっと我慢する他ないのです。日本でも、被害者の精神的サポートをする組織を作ってほしい。どんな協力も惜しみませんから、是非是非、一歩でもいいです、踏み出してください」と、このように発言されました。この発言された方は、現在は東京にあります被害者支援都民センターの事務局長をやっておられます、大久保恵美子さんという方です。

 この大久保さんの発言を、同じ会場に精神科医の山上先生がいらっしゃいまして、そのお話をお聞きになりました。そして被害者の精神的援助の必要性というのを強く感じられまして、平成4年の3月に、先生が勤務しておられます東京医科歯科大学の中に、日本で初めて東京犯罪被害者相談室が開設されました。ですが、この平成4年の時期ですけども、まだ被害者相談室ということがあまり知られていなかったこともありまして、初年度の相談件数はわずかに14件だったと聞いております。その後に平成7年の水戸を始めとして、大阪、石川と続いて、平成9年の5月に全国で5番目に、私たちの北海道被害者相談室が開設されました。平成20年の10月現在で、民間支援団体加盟で組織されております全国被害者支援ネットワークには45団体が加盟して、皆さん活動をしております。

 次に、私が所属しています北海道被害者相談室について少しお話しさせていただきたいと思います。

 北海道被害者相談室は、犯罪や事故の被害に遭われた方、またご家族の方々の心のケアと直接的支援活動を行っている相談室です。現在は、16名の相談員が相談を受けています。相談日は祝日を除く月曜日から金曜日に、午前10時から午後4時まで行っています。それと、メール・ファックス相談も行っています。これは24時間受付けています。また、札幌弁護士会の犯罪被害者支援委員会の皆様のご協力によりまして、毎週木曜日に無料弁護士相談を実施しています。

 次に、相談室には年間大体1,000件前後の相談が寄せられます。そしてそのうち犯罪と分類されるものについては、大体5、6割というところでございます。昨年度は987件の相談がありまして、そのうち犯罪に属するものは508件でした。

 相談に関する詳しい内容につきましては、皆さんにお配りした資料の中に3枚つづりの表が入っております、そこのところにどんな相談が来ているかというのが載っておりますので、後で見ていただきたいと思っております。

 被害者相談室では、これまでは電話相談・面接相談でのカウンセリングを通じて、被害者の悩みや心のケアについて支援してまいりました。その姿勢は今も変わっておりませんが、昨年の3月30日に、北海道公安委員会から犯罪被害者等早期援助団体の指定を受けることができまして、このことによって、警察から早い段階で被害者等に関する情報の提供を受けることが可能になりました。今までの心のケアの支援に加えて、裁判傍聴への法廷付き添いとか、病院・警察署への付き添い、それから自宅訪問、防犯ブザーの供与、貸与などの直接的支援活動、そして犯罪被害者等給付金申請補助業務などを行っていくことができるようになりまして、支援の幅が広がったと考えています。また、同じ年の8月1日には、先ほど嵐田副知事からもお話がありましたように、北海道から「北海道犯罪被害者等総合相談窓口」の委託を受けまして、責任の重さを痛感しております。

 次に、被害に遭う、被害者になるということについてお話ししたいと思うのですが、先ほどの基調講演の松村様のお話、そして被害者のお嬢さんをお持ちのお母様のほうから詳しいお話がありましたので、私の方からは少しだけ、触れさせていただきたいと思います。

 実は今日この会場にいらっしゃってる皆さんに、被害に遭われた方の心の傷を理解していただきたくて、ここに1枚の白い紙を持ってきました。この何の皺もない真っ白な紙、これが犯罪被害者が被害に遭う前の心の状態だというふうに思ってください。想像してください。そして、被害に遭うとちょっと紙をぐちゃぐちゃにしますけど、このくしゃくしゃになって皺になったこの紙、これが被害者の押しつぶされた心だと考えています。そして、いったんついた皺っていうのは、伸ばしてもなかなか元には戻らないと思っています。被害者の心の傷というのはこういうものと理解してもらえたらいいと思います。そして、被害者の意思を尊重して、回復状態を見ながら、あくまでも被害者の求める支援を行うこと、決してやり過ぎないことを心掛けていますし、この皺伸ばしのお手伝いが支援者の役目だと考えています。

 次に、ここにいらっしゃる皆さんは、被害に遭われた方々の内どれくらいの方が、実際に支援を受けてるとお思いになりますか?先ほど松村様のお話の中にその解答が出てきてしまって、私もお話ししようと思っていたので、ちょっと困りましたが…。

 ここに内閣府が行った、平成18年の12月から19年1月にかけて、犯罪被害者に関する国民の意識調査結果というのが新聞に出ていたんです。事故後の被害者支援について、一般の国民の90%は、実際に被害に遭った方が何らかの支援を受けているというふうに考えているんですよね。ですけども、被害に遭った方の44%は、どんな支援も受けることができていないと答えて、国民の認識と現実に大きな差があることがこの調査の結果によって分かりました。

 また、事件後、被害者がさらに傷付くことの中に、二次的被害というものがあります。先ほどの松村様のお話の中にも出てきましたが、私達の日々の相談の中でもそういうお話は聞かれます。捜査とか司法関係の対応・言動、メディアの姿勢、友人・知人の言動、それから近隣の人の中傷など、正しい被害者理解がなされていれば起きないような被害だと思います。そして、例えば本当に、松村様のお話にもありましたが、被害者には何の落ち度もないのに、あたかも被害者のほうにも原因があるかのような発言をしたり、噂を流したり、そして性被害の人には、夜遅くそんな格好をして暗い道を歩いているからそんな被害に遭ったというようなことです。先ほど弁護士の先生からもお話がありましたけど、被害者参加制度など、法的な被害者支援は少しずつ進んでいると思われますが、周囲からの何気ない一言に傷ついて二次的被害を受ける点については、従来と同様、何も変わっていない現実があるといわれています。

 私のような一介の相談員が言うには口幅ったいのですが、やはりこれからの課題は、国民の意識の向上ではないかと思っています。本当にここにいらっしゃる皆様、それから私も含めて、誰もが犯罪被害者になることを否定はできないと思います。ですから、犯罪を人ごととして考えるのではなくて、皆さんが各個人として、自分のこととしてとらえることで、お互いに支え合える社会が築けるのではないかと思っています。国民の正しい被害者理解のために、支援の現場で私達ができることというものの中に、現場でお聞きする被害者の声を代弁すること、それも私達にできる大きな役割と思います。また、被害者の求める支援というのは時間とともに変化していきます。ですから、その時その時の被害者の要望を関係機関に伝えていくことも、大切な役割ではないかと思っています。

 長くなりましたけど、もう少しだけお話しさせてください。実際に直接支援を行い、支援の現場の中で聞かれた、被害者の方とか家族の方の声をお伝えしたいと思います。

 まず、殺人事件で家族を亡くされたご遺族のお宅を訪問したことがあります。最初に感じたのは家の中の様子ですが、靴が玄関で散乱していたりという感じで、人を迎え入れるという感じは本当に全くないと思いました。本来であれば整理整頓という日常的なことができるとは思うんですけども、そういうことができない。それだけの影響を与えた出来事だということを、改めて実感しました。

 それから犯人に対してお父様がおっしゃった言葉なんですけども、「捕まったら税金で食べている。自分の払った税金の一部が犯人に流れていると思うとやりきれない」というふうにおっしゃいまして、それは今でもやはり心に残っています。

 そして性被害に遭われた方の支援をした時には、これは犯人がまだ捕まっていませんでしたので、それについての不安を話されました。犯人が捕まっていないので、変装の意味で度の入っていない眼鏡をかけているという。本当に何も悪くない被害者が、このように自分と分からないように自衛策を取らなければならないということ、このことについて皆さんはどのようにお思いになりますでしょうか。このケースについては、病院付き添いの支援をさせていただきました。

 最後にもう一つご紹介したいんですけども、住居侵入と傷害事件に遭われたご家族からは、警察への要望として次のような要望が相談室に寄せられました。地域の家々に、門灯をつけるように促してほしい。そして、それを相談室から警察に伝えてほしい。そのお母様がお考えになったのは、明るくすることを心掛けることで、その地域は防犯にみんなが関心を持っていると思ってもらうことで、犯罪を減らせるのではないか。お母さんの要望を警察に伝えまして、結果として、町内への回覧として警察の広報誌で呼びかけることができました。本当に小さなことですが、防犯に対して一人ひとりができる身近なことではと考えております。

 以上です。

善養寺:はい、ありがとうございました。実例を交えてお話をいただきました。被害者の方も事件の起こった後は、ご近所の方が必ず玄関外灯に電気をつけて明るくしてくださるっていうような配慮もしてくださったとおっしゃっておられましたね。

犯罪被害者家族:はい、そうです。自分もずっと点けております。

善養寺:そうでしたね。

犯罪被害者家族:はい。それが…。嬉しかったです。

善養寺:そうですね。そういう配慮がご近所にあると思えばまた違うのですね。ご近所の冷たい視線というか、詮索するような、そんなような態度が被害者をまた傷つけてしまう。非常に難しいところだと思いますが、今渡辺さんのほうからもやり過ぎないことっていうお話がありましたけれども、さっき松村さんもお話されたように、遠くから見守り過ぎちゃって何も手が出せない、これじゃ何の支援にもならない。その辺のところが被害者支援の難しいところだと思っております。

 もう一つ、時間の経過とともに被害者の人の心が変わっていくということについてのご発言もありましたけれども、どんどん悪くなってく場合もあるんですね。だんだん難しくなっていくっていう場合もあって、一言では言えない難しさがあると思います。

 パネラーの皆さんのご協力によって、後10分ほど時間がございますので、言い残されたこと、付け加えたいことがございましたら、お願いしたいんですけれども。成川先生、ございませんか。

成川:先ほど犯罪被害者の参加制度、それから損害賠償命令制度についての概観をさせていただいたんですが、私ども犯罪被害者支援委員を担当する弁護士につきましては、万が一そういった被害に遭われた場合のマスコミ等の対応、あるいは取り調べ等への付き添い、こういったこともご支援させていただいていますので、付け加えさせていただきます。

善養寺:はい、分かりました。それぞれのお立場でそれぞれの支援に力を注いでくださっていると思いますが、当事者の方何かございますか。皆さんのお話を聞いたうえで。ここはちゃんとなってなかったですよっておっしゃってくださったりとか。

犯罪被害者家族:なんか個人的感情も入りますが、やっぱり松村先生のおっしゃったとおり、刑は15年とか、そうではなく、もう終身刑というのを日本でも行っていただきたいと思っております。それとあと、裁判員制度が行われるときに精神鑑定は1回だけという記事を最近読みましたが、申し訳ないですけども、精神的病気で事件を起こされた方でも、やっぱり被害者としては失ったものが大きいので、刑に服していただけたらと思っております。すみません、激しくて、すみません。

善養寺:いえいえ。被害者の方の感情としては、精神的な問題があるから、病気を憎んで罪を憎むなというような構えにはとってもなれないと、そういうことですね。成川先生、何かそのことについてはコメントありますか。

成川:私が、やりましょうなんていう立場じゃないんですけれども、当然死刑を含めまして、日弁連の中でも、死刑を存置すべきだという意見と廃止すべきだという意見が対峙しております。その中で、今お話ございました、終身刑というのは、日本の場合無期懲役ってのはありますけれども、終身刑という刑はございませんので、死刑の存置・廃止を含めて、議論も現在しておりますし、犯罪被害者支援委員会の中でもそういったお話を耳にしております。

善養寺:このお話をしていくと尽きないというふうに思いますが、由佳利先生、何かございますか。

佐藤:今のお話を伺っていて、私も病院に勤務していたころは精神鑑定なんかもいたしました。で、精神科医の中でも非常に意見はいろいろで、病気だから、病気のせいで犯罪を犯したという場合と、病気の人が犯罪を犯したという場合とを分けて考えるべきだと考える方と、病気であればもうそれは、責任能力はないんだというふうに考える方と、両方いらっしゃいます。それから、病気であって犯罪を犯して、病気が治った後に、自分が犯したことに愕然として自殺されたという例も知っております。何とも、すごく難しい問題があって、大体被害者の方にしてみたら、もうそれは当然のことだろうと思うんですね。病気だからといって、「だから何?」っていうこと、ものすごくあると思います。そこのところが、すごく私も難しいところだと思いますね。

 何とも、それこそ私も、だから、どうとお答えできるようなものではありませんけれども、精神鑑定の問題っていうのは、特に一人の人を何人もで精神鑑定をすると、その度に違う結果が出てきて、違う病名がついて、かと思うと、一人の精神鑑定で、明らかに病気であるにも関わらず死刑になってしまったりとか、全く基準がないんですね。これは本当にどうしたことかと私自身も思います。はい。

善養寺:ありがとうございました。それでは、ちょっとテーマを、私達にできることに戻しまして、今難しい問題だし、被害者の感情も分かるなというふうなことを思いながら、横に置きまして、私達にできること、このことについて、あと5分ほどしか時間がございませんが、フロアの方から何かご発言ございましょうか。よろしいですか。想像を絶するようないろんな心情をお聞きになって、もっと知りたいということがあったりなんか、それからこういうことをするとどうなんだろうとかいうこと、ございませんか。はい、よろしいでしょうか。分かりました。

 それでは、パネラーの方たちがそれぞれのお立場で、これから目指す犯罪被害者支援、私達にできることをまとめてご発表いただいたという成果だと解釈をいたしまして、これでディスカッションを終わりたいと思いますが、よろしいでしょうか。

 では、パネラーの先生方、ありがとうございました。会場の皆様、ありがとうございました。

 

Copyright (C) National Police Agency. All Rights Reserved.