4 被害の構造に関する考察

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【要旨】

事件以外の一般的な健康上・精神上の問題と、事件に関連する健康上・精神上の問題では、健康や精神に与える影響の大きさが顕著に異なるため、両者を峻別して分析する必要がある。健康上の問題と精神上の問題は、相互に密接に関連・影響しており、事件との関連の有無により影響の深刻さが増減していることがうかがえる。

また、事件に関連して生じたと思う精神上の問題を抱えている人のK6得点を見ると、事件に関連して生じたと思う精神上の問題を抱えている人の半数近くが合計値13点以上となっている。さらに、日常生活が行えなかった日数について、K6の合計値で13点以上の一般対象者と被害者を比較すると、被害者の方が仕事や日常生活を行えなくなった日数が約100日多くなっており、同じ重症精神障害相当の状態でも、被害者の方が程度の深刻さが顕著であることがわかる。

精神・健康状態と事件経過後の時間との関係を見ると、事件経過後3年未満で問題を抱えている人の割合は4割前後となっているのに対して、事件経過後3年以上で問題を抱えている人の割合は2割半ばにとどまり、10%から20%の差がある。このことから、時間の経過が事件と関連する健康上・精神上の問題を軽減する作用を有していることが示唆できる。しかし、重症精神障害相当の状態にある人(K6で13点以上)とそれ以外の人との割合については、事件後経過時間によって大きな差はみられない。

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