第1章 変ぼうする地域社会と警察の対応

-安全で住みよい地域社会を目指して-

 都市化の進展、産業構造の変化、経済の仕組みの複雑化等による社会の変化は、我々の家庭生活や地域社会を大きく変ぼうさせた。我々は、旧来の人間関係や慣習による束縛も少なく、自由で豊かな生活を営むことが可能になった。それはまた、地域社会の連帯意識の希薄化、家族構成の変化等により家庭、地域社会が伝統的に有していた自律的問題解決機能、相互扶助機能、犯罪抑止機能等の低下をも招いた。
 このため、警察には様々な困りごとや悩みの解決を求めて住民から日々多くの切実な相談や訴えが寄せられている。それは、近隣騒音、サラ金や訪問販売等消費生活にまつわるトラブル、子供の非行の悩み、家庭不和、駐車、放置自転車問題、さらには、身近な犯罪への不安等日常生活のありとあらゆる事項にわたっている。これらの困りごと、悩みのなかには、そのまま放置すれば、犯罪や事故につながり、あるいは、自殺、家出等の不幸な事態に立ち至るおそれのあるものも少なくない。
 警察は、昼夜を問わず、派出所、駐在所を拠点として、地域社会に密着した活動を行っている身近な存在であるところから、地域住民が日常生活に伴い生ずる困りごとの解決を警察に求めることは今後ますます増大するものと思われる。

 安全で住みよい地域社会をつくるためには、住民の困りごと、悩みが解決され、個々の問題が病理現象として社会にまん延する前に、その芽が摘み取られることが必要である。警察では、住民の困りごとの適切な解決に努めるとともに、地域住民の活動と連携して、地域社会の抱える問題を解決し、安全で住みよいまちづくりを進めていく必要がある。


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