第2章 生活安全の確保と犯罪捜査活動

7 良好な生活環境の保持

(1)風俗営業等の状況

① 風俗営業の状況

警察では、風営適正化法(注)に基づき、風俗営業等に対して必要な規制を加えるとともに、風俗営業者等の自主的な健全化のための活動を支援し、業務の適正化を図っている。

注:風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律

 
図表2-51 風俗営業の営業所数の推移(平成26~30年)
図表2-51 風俗営業の営業所数の推移(平成26~30年)
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② 性風俗関連特殊営業の状況

性風俗関連特殊営業の状況についてみると、近年、無店舗型性風俗特殊営業の届出数が増加している一方で、店舗型性風俗特殊営業及び電話異性紹介営業の届出数は減少傾向にある。

 
図表2-52 性風俗関連特殊営業の届出数の推移(平成26~30年)
図表2-52 性風俗関連特殊営業の届出数の推移(平成26~30年)
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③ 深夜酒類提供飲食店営業の状況

深夜酒類提供飲食店の営業所数は、近年減少傾向にある。

 
図表2-53 深夜酒類提供飲食店の営業所数の推移(平成26~30年)
図表2-53 深夜酒類提供飲食店の営業所数の推移(平成26~30年)
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④ 特定遊興飲食店営業の状況

平成28年に風営適正化法の一部を改正する法律が全面施行されたことにより、深夜に客に遊興と飲酒をさせる特定遊興飲食店営業が、営業所設置許容地域において許可制の下で営業可能になった。平成30年末現在、特定遊興飲食店営業の許可を受けた営業所数は、379軒である。

(2)売春事犯及び風俗関係事犯の現状

① 売春事犯

売春事犯の検挙件数及び検挙人員は近年減少傾向にあり、そのうち周旋及び契約の検挙件数の減少が顕著である。最近では、出会い系サイト(注)を利用して、売春の周旋をする目的で、人を売春の相手方となるように誘引する事犯や、マッサージ店を仮装して、不特定多数の男性客を相手に売春をさせる事犯がみられる。

注:面識のない異性との交際(以下「異性交際」という。)を希望する者(以下「異性交際希望者」という。)の求めに応じ、その異性交際に関する情報をインターネットを利用して公衆が閲覧することができる状態に置いてこれを伝達し、かつ、当該情報の伝達を受けた異性交際希望者が電子メールその他の電気通信を利用して当該情報に係る異性交際希望者と相互に連絡することができるようにする役務を提供するウェブサイト等

 
図表2-54 売春防止法違反の検挙状況の推移(平成26~30年)
図表2-54 売春防止法違反の検挙状況の推移(平成26~30年)
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個室マッサージ店経営者の女(48)は、平成30年3月、同店において、不特定の男性客を相手に女性従業員が売春を行う場所を提供した。同年4月、同女を売春防止法違反(場所提供業)等で検挙した(新潟)。

② 風俗関係事犯

風営適正化法による検挙件数及び検挙人員は、近年減少傾向にある。最近では、繁華街・歓楽街において組織的に客引きを行う事犯がみられる。

また、わいせつ事犯の検挙件数及び検挙人員は、いずれも増減を繰り返している。わいせつ事犯に関しては、近年、インターネットを利用して、わいせつな行為をしている映像を配信する事犯やわいせつな画像情報が記録されたDVD等を販売する事犯がみられる。

さらに、賭博事犯に関しては、インターネットカジノを利用した事犯がみられるほか、店舗の内外に複数の監視カメラを設置する、見張り役の従業員を常時配置する、身分確認を行って常連客以外の客を排除するなど、警察の取締りから逃れるための対策が巧妙化している。

 
図表2-55 風営適正化法違反の検挙状況の推移(平成26~30年)
図表2-55 風営適正化法違反の検挙状況の推移(平成26~30年)
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図表2-56 わいせつ事犯の検挙状況の推移(平成26~30年)
図表2-56 わいせつ事犯の検挙状況の推移(平成26~30年)
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インターネットカジノ店経営者の男(39)らは、平成28年5月頃から30年6月にかけて、不特定多数の客に対し、同店に設置したパーソナルコンピュータ等を使用して、インターネットを利用したゲームによる賭博をさせていた。同月、同男ら2人を常習賭博罪で、客2人を単純賭博罪で逮捕した(神奈川)。

(3)人身取引事犯等への対策

① 検挙・保護の状況

警察では、平成26年に政府が策定した「人身取引対策行動計画2014」等に基づき、出入国在留管理庁等の関係機関と連携し、水際での取締りや悪質な経営者、仲介業者等の取締りを強化し、被害者の早期保護及び国内外の人身取引の実態解明を図っている。また、関係国の大使館、被害者を支援する民間団体等と緊密な情報交換を行っているほか、被害者の早期保護のため、警察等に被害申告するように多言語で呼び掛けるリーフレットを作成し、関係機関・団体等に配布するとともに、被害者の目に触れやすい場所に備え付けるなどの取組を行っている。

平成30年中の人身取引事犯の検挙人員は40人で、このうち風俗店等関係者が7人、仲介業者が1人であった。また、警察で保護した人身取引事犯の被害者は25人で、その国籍の内訳は、日本(18人)、フィリピン(4人)及びタイ(3人)であった。被害者の性別は、女性24人、男性1人であった。

 
図表2-57 人身取引事犯の検挙状況の推移(平成26~30年)
図表2-57 人身取引事犯の検挙状況の推移(平成26~30年)
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図表2-58 人身取引事犯の被害者の保護状況の推移(平成26~30年)
図表2-58 人身取引事犯の被害者の保護状況の推移(平成26~30年)
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人身取引事犯対策の広報ポスター
人身取引事犯対策の広報ポスター
 
人身取引事犯の被害者向けリーフレット
人身取引事犯の被害者向けリーフレット

CASE

風俗店経営者の男(30)は、仕事を探していた少女を同店で稼働させようと考え、平成30年3月から同年4月にかけて、SNSを使用し同少女に対し、「アロママッサージの仕事をすれば、日払いで3万円くらい出る」などと虚偽の事実を告げて誘惑し、営利の目的で同少女を誘拐した。同年6月、同男を営利目的誘拐罪で逮捕した(茨城、長崎)。

② アダルトビデオ出演強要問題への対策

詐欺・脅迫的な言動によって、アダルトビデオへの出演を強要等される問題に対し、警察では、各都道府県警察で指定されたアダルトビデオ出演強要問題専門官を中核として、各種法令を適用した厳正な取締り、被害防止教育、相談体制の充実等を推進している。

(4)銃砲刀剣類の適正管理と危険物対策

① 銃砲刀剣類の適正管理

平成30年末現在、銃刀法に基づき、都道府県公安委員会から9万3,034人が、18万8,554丁の猟銃及び空気銃の所持許可を受けている。平成30年中、申請を不許可等とした件数は48件、所持許可を取り消した件数は44件であった。また、猟銃等の事故及び盗難を防止するため、毎年一斉検査を行うとともに、講習会等を通じて適正な取扱いや保管管理の徹底について指導を行う一方、危害予防上支障のない範囲で猟銃等の所持許可に伴う申請者の負担軽減を図るための措置を講じている。

警察では、銃刀法を厳正に運用し、銃砲刀剣類の所持許可の審査と行政処分を的確に行って不適格者の排除に努めるなど、銃砲刀剣類による事件・事故の未然防止に努めている。

 
図表2-59 猟銃及び空気銃の許可所持者の推移(平成26~30年)
図表2-59 猟銃及び空気銃の許可所持者の推移(平成26~30年)
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図表2-60 猟銃及び空気銃の許可丁数の推移(平成26~30年)
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図表2-61 猟銃等所持不適格者の排除状況の推移(平成26~30年)
図表2-61 猟銃等所持不適格者の排除状況の推移(平成26~30年)
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② 危険物対策

火薬類、特定病原体等、放射性物質等の危険物の運搬に当たっては、火薬類取締法、感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律、放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律、核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律等の規定に基づき、都道府県公安委員会にその旨を届け出ることとされている。

警察では、これらの危険物が安全に運搬されるよう、関係事業者に対して事前指導や指示等を行うとともに、これらの危険物の取扱場所への立入検査等により、その盗難、不正流出等の防止に努めている。

 
図表2-62 運搬届出・立入検査の状況(平成30年)
図表2-62 運搬届出・立入検査の状況(平成30年)
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(5)環境事犯対策

① 廃棄物事犯(注)

平成30年中の廃棄物事犯の検挙事件数の約半数を、廃棄物の不法投棄事犯が占めている。

警察では、引き続き環境行政部局との人的な交流や情報交換を行うなどし、早期発見・早期検挙に努めている。

注:廃棄物の処理及び清掃に関する法律(以下「廃棄物処理法」という。)違反に係る事犯

 
図表2-63 廃棄物事犯の検挙状況の推移(平成21~30年)
図表2-63 廃棄物事犯の検挙状況の推移(平成21~30年)
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平成29年8月、山の斜面から土砂が自動車道に流れ込み、複数人が重軽傷を負う事故が発生した。土砂を調査した結果、陶磁器原料の製造に伴い発生する産業廃棄物が大量に含まれていることが判明したため、不法投棄事犯として捜査を行った結果、現場付近に所在する陶磁器原料製造会社の役員の男(66)らが、平成25年12月頃から29年7月頃までの間、陶磁器原料の製造に伴い発生した産業廃棄物約559トンを同社敷地内に埋め立て投棄するなどしていたことが明らかとなり、平成30年11月までに、同男ら1法人6人を廃棄物処理法違反(不法投棄)等で検挙した(岐阜)。

② 動物・鳥獣関係事犯(注)

平成30年中の動物・鳥獣関係事犯の検挙事件数の約4割を、違法に捕獲等した鳥獣を飼養するなどの鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律違反が占めている。また、犬、猫等を殺傷するなど、動物の愛護及び管理に関する法律違反も引き続き検挙されている。

注:動物の愛護及び管理に関する法律違反、鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律違反等に係る事犯

 
図表2-64 動物・鳥獣関係事犯の検挙状況の推移(平成21~30年)
図表2-64 動物・鳥獣関係事犯の検挙状況の推移(平成21~30年)
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(6)探偵業の状況

平成30年中の探偵業法(注1)での検挙件数は3件、行政処分件数は40件(営業停止命令1件、指示処分39件)であった。警察では、探偵業法に基づき、探偵業者(注2)の業務実態を把握し、違法行為に対しては厳正に対処するとともに、業界の全国組織である一般社団法人日本調査業協会や認可法人全国調査業協同組合等との連携の下、研修会等を通じて、探偵業務の運営の適正化を図っている。

注1:探偵業の業務の適正化に関する法律

注2:届出のなされている探偵業者数は5,852(平成30年末現在)



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