第2章 生活安全の確保と犯罪捜査活動

4 良好な生活環境の保持

(1)風俗営業等の状況

① 風俗営業の状況

警察では、風営適正化法に基づき、風俗営業等に対して必要な規制を加えるとともに、風俗営業者等の自主的な健全化のための活動を支援し、業務の適正化を図っている。

 
図表2-45 風俗営業の営業所数の推移(平成25〜29年)
図表2-45 風俗営業の営業所数の推移(平成25〜29年)
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② 性風俗関連特殊営業の状況

性風俗関連特殊営業の状況についてみると、近年、無店舗型性風俗特殊営業や映像送信型性風俗特殊営業の届出数が増加している一方で、店舗型性風俗特殊営業及び電話異性紹介営業の届出数は減少傾向にある。

 
図表2-46 性風俗関連特殊営業の届出数の推移(平成25〜29年)
図表2-46 性風俗関連特殊営業の届出数の推移(平成25〜29年)
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③ 深夜酒類提供飲食店営業の状況

深夜酒類提供飲食店の営業所数は、近年減少傾向にある。

 
図表2-47 深夜酒類提供飲食店の営業所数の推移(平成25〜29年)
図表2-47 深夜酒類提供飲食店の営業所数の推移(平成25〜29年)
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④ 特定遊興飲食店営業の状況

平成28年に風営適正化法の一部を改正する法律が全面施行されたことにより、深夜に客に遊興と飲酒をさせる特定遊興飲食店営業が、営業所設置許容地域において許可制の下で営業可能になった。29年末現在、特定遊興飲食店営業の許可を受けた営業所数は、305軒である。

MEMO ぱちんこへの依存防止のための風営適正化規則(注)等の改正

特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律の附帯決議において、ギャンブル等依存症対策の強化が求められたことなどを踏まえ、平成28年12月、「ギャンブル等依存症対策推進関係閣僚会議」が開催された。29年3月には、同会議において、「ギャンブル等依存症対策の強化に関する論点整理」が決定され、ぱちんこへの依存の課題として、「出玉規制の基準等の見直し」が掲げられたことなどを受け、警察では、同年9月、過度な遊技の抑制を図るなどするため、遊技機の出玉性能を更に制限することなどを内容とする風営適正化規則及び遊技機の認定及び型式の検定等に関する規則の改正を行った。両規則は、30年2月から施行された。

注:風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律施行規則

(2)売春事犯及び風俗関係事犯の現状

① 売春事犯

売春事犯の検挙件数及び検挙人員は、近年減少傾向にある。最近では、SNSを利用して、売春の周旋をする目的で、人を売春の相手方となるように誘引する事犯や、女性を店舗内の個室に居住させ、不特定多数の男性客を相手に売春をさせる事犯がみられる。

 
図表2-48 売春防止法違反の検挙状況の推移(平成25~29年)
図表2-48 売春防止法違反の検挙状況の推移(平成25~29年)
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CASE

個室マッサージ店経営者の男(55)らは、平成29年8月から同年11月にかけて、風俗営業の許可を受けた営業所を受付場所とし、同営業所に隣接するビルに個室を設け、不特定の男性客を相手に女性従業員が売春を行う場所を提供することを業とした。同年12月までに、同男ら3人を売春防止法違反(場所提供業)等で検挙した(兵庫)。

② 風俗関係事犯

風営適正化法による検挙件数及び検挙人員は、近年減少傾向にある。最近では、繁華街・歓楽街において組織的に客引きを行う事犯がみられる。

また、わいせつ事犯の検挙件数及び検挙人員は、近年減少傾向にある。わいせつ事犯に関しては、近年、インターネットを利用して、わいせつな行為をしている映像を配信する事犯やわいせつな画像情報が記録されたDVD等を販売する事犯がみられる。

さらに、賭博事犯に関しては、いわゆるインターネットカジノを利用した事犯がみられるほか、店舗の内外に複数の監視カメラを設置する、見張り役の従業員を常時配置する、身分確認を行って常連客以外の客を排除するなど警察の取締りから逃れるための対策が巧妙化している。

 
図表2-49 風営適正化法違反の検挙状況の推移(平成25〜29年)
図表2-49 風営適正化法違反の検挙状況の推移(平成25〜29年)
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図表2-50 わいせつ事犯の検挙状況の推移(平成25〜29年)
図表2-50 わいせつ事犯の検挙状況の推移(平成25〜29年)
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CASE

ゲーム機賭博店経営者の男(62)は、29年3月から同年6月にかけて、ゲームセンター等営業の許可を受けた営業所において、ポーカーゲーム機を使用し、不特定多数の客を相手に賭博をしていた。同年7月までに、同男を常習賭博罪で、賭客5人を単純賭博罪等で検挙するとともに、同営業所の営業の許可を取り消した(兵庫)。

(3)人身取引事犯等への対策

① 検挙・保護の状況

警察では、平成26年に政府が策定した「人身取引対策行動計画2014」等に基づき、法務省入国管理局等の関係機関と連携し、水際での取締りや悪質な経営者、仲介業者等の取締りを強化し、被害者の早期保護及び国内外の人身取引の実態解明を図っている。また、関係国の大使館、被害者を支援する民間団体等と緊密な情報交換を行っているほか、被害者の早期保護のため、警察等に被害申告するように多言語で呼び掛けるリーフレットを作成し、関係機関・団体等に配布するとともに、被害者の目に触れやすい場所に備え付けるなどの取組を行っている。

29年中の人身取引事犯の検挙人員は30人で、このうち風俗店等関係者が16人、仲介業者が3人であった。また、警察で保護した人身取引事犯の被害者は42人で、その国籍の内訳は、日本(28人)、タイ(7人)、フィリピン(5人)、ブラジル(1人)及びベトナム(1人)であった。被害者の性別は、女性41人、男性1人であった。

 
図表2-51 人身取引事犯の検挙状況の推移(平成25〜29年)
図表2-51 人身取引事犯の検挙状況の推移(平成25〜29年)
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図表2-52 人身取引事犯の被害者の保護状況の推移(平成25〜29年)
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人身取引事犯対策の広報ポスター
人身取引事犯対策の広報ポスター
 
人身取引事犯の被害者向けリーフレット
人身取引事犯の被害者向けリーフレット

CASE

松葉会傘下組織組長の男(49)らは、28年11月頃から同年12月にかけて、「日本でホステスをすれば月3,000ドル稼げる」などと勧誘してカンボジア人女性を来日させ、スナックの従業員として稼働させた。29年2月までに、同男ら4人を入管法(注)違反(不法就労助長)で逮捕した(群馬)。

注:出入国管理及び難民認定法

② いわゆるアダルトビデオ出演強要問題への対策

詐欺・脅迫的な言動によって、いわゆるアダルトビデオへの出演を強要等される問題に対し、警察では、各都道府県警察で指定されたアダルトビデオ出演強要問題専門官を中核として、各種法令を適用した厳正な取締り、被害防止教育、相談体制の充実等を推進している。

CASE

DVD制作・販売業を営む男(48)は、26年7月、モデル募集サイトを介して応募してきた少女に対し、同少女の意思に反してわいせつ動画の撮影を承諾させた。29年6月、同男を強要罪等で逮捕した(大阪)。

(4)銃砲刀剣類の適正管理と危険物対策

① 銃砲刀剣類の適正管理

平成29年末現在、銃刀法に基づき、都道府県公安委員会から9万4,726人が、19万2,161丁の猟銃及び空気銃の所持許可を受けている。29年中、申請を不許可等とした件数は44件、所持許可を取り消した件数は46件であった。また、猟銃等の事故及び盗難を防止するため、毎年一斉検査を行うとともに、講習会等を通じて適正な取扱いや保管管理の徹底について指導を行う一方、危害予防上支障のない範囲で猟銃等の所持許可に伴う申請者の負担軽減を図るための措置を講じている。

警察では、銃刀法を厳正に運用し、銃砲刀剣類の所持許可の審査と行政処分を的確に行って不適格者の排除に努めるなど、銃砲刀剣類による事件・事故の未然防止に努めている。

 
図表2-53 猟銃及び空気銃の許可所持者の推移(平成25〜29年)
図表2-53 猟銃及び空気銃の許可所持者の推移(平成25〜29年)
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図表2-54 猟銃及び空気銃の許可丁数の推移(平成25〜29年)
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図表2-55 猟銃等所持不適格者の排除状況の推移(平成25〜29年)
図表2-55 猟銃等所持不適格者の排除状況の推移(平成25〜29年)
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② 危険物対策

火薬類、特定病原体等、放射性物質等の危険物の運搬に当たっては、火薬類取締法、感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律、放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律、核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律等の規定に基づき、都道府県公安委員会にその旨を届け出ることとされている。

警察では、これらの危険物が安全に運搬されるよう、関係事業者に対して事前指導や指示等を行うとともに、これらの危険物の取扱場所への立入検査等により、その盗難、不正流出等の防止に努めている。

 
図表2-56 運搬届出・立入検査の状況(平成29年)
図表2-56 運搬届出・立入検査の状況(平成29年)
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(5)環境事犯対策

① 廃棄物事犯(注)

平成29年中の廃棄物事犯の検挙事件数の約半数を、廃棄物の不法投棄事犯が占めている。

警察では、引き続き環境行政部局との人的な交流や情報交換を行うなどし、早期発見・早期検挙に努めている。

注:廃棄物の処理及び清掃に関する法律違反に係る事犯

 
図表2-57 廃棄物事犯の検挙状況の推移(平成20〜29年)
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CASE

産業廃棄物中間処理業者の代表取締役(42)らは、26年1月から28年6月にかけて、山林復旧工事計画事業の土砂埋立区域において、産業廃棄物であるコンクリートくず等の混合廃棄物合計約6万4,700トンを投棄した。29年12月までに、同代表取締役ら3法人9人を廃棄物処理法違反(不法投棄)等で検挙した(神奈川)。

② 動物・鳥獣関係事犯(注)

29年中の動物・鳥獣関係事犯の検挙事件数の約半数を、違法に捕獲等した鳥獣を飼養するなどの鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律違反が占めている。また、犬、猫等を殺傷するなど、動物の愛護及び管理に関する法律違反も引き続き検挙されている。

注:動物の愛護及び管理に関する法律違反、鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律違反等に係る事犯

 
図表2-58 動物・鳥獣関係事犯の検挙状況の推移(平成20〜29年)
図表2-58 動物・鳥獣関係事犯の検挙状況の推移(平成20〜29年)
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(6)探偵業の状況

平成29年中の探偵業法(注1)での検挙件数は5件、行政処分件数は43件(営業廃止命令1件、営業停止命令1件、指示処分41件)であった。警察では、探偵業法に基づき、探偵業者(注2)の業務実態を把握し、違法行為に対しては厳正に対処するとともに、業界の全国組織である一般社団法人日本調査業協会及び全国調査業協同組合との連携の下、研修会等を通じて、探偵業務の運営の適正化を図っている。

注1:探偵業の業務の適正化に関する法律

注2:届出のなされている探偵業者数は5,738(29年末現在)



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