特集 交通安全対策の歩みと展望

第4節 今後の展望

1 緻密な交通事故分析に基づく効果的な対策の推進

近年、高齢者人口の増加のほか、シートベルト着用率の頭打ちや飲酒運転による交通事故件数の下げ止まりにより、死者数の減少幅が縮小する傾向にある。かつては総合的な交通安全対策の実施により交通事故を大幅に減少させることができたところであるが、死者数が減少しにくい状況となっている中で、今後は、交通事故の直接的な要因を取り除く対症療法的対策のみでは、第10次交通安全基本計画で掲げられた「平成32年までに24時間死者数を2,500人以下とし、世界一安全な道路交通を実現する」という目標を達成することは困難である。

更なる交通事故防止に向けて、効果的な対策を講じていくためには、複雑・多様な交通事故の要因を総合的・科学的に分析し、交通事故の実態を的確に把握することが必要不可欠である。また、国及び地方公共団体は厳しい財政事情にあるため、限られた予算と人員で最大限の効果が得られるよう、これらの交通事故分析に基づく対策を効率的に推進し、その交通事故削減効果及び被害軽減効果について客観的な評価を行い、対策の改善を図っていくことが極めて重要である。

このため、警察庁では、交通事故統計を詳細に分析して交通事故発生の傾向等を浮き彫りにし、都道府県警察では、GISを活用するなどして交通事故分析の高度化・精緻化に向けた取組を推進しているところである。今後、交通事故に関する情報の収集及び交通事故分析を更に充実させ、交通安全対策の方向性を明確にするよう努めるとともに、交通規制や交通指導取締りの実施効果について、交通事故分析の結果等を踏まえて検証するPDCAサイクルを一層機能させることによって、より効果的な対策に向けて不断の見直しを行っていくこととしている。



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