特集 交通安全対策の歩みと展望

第1部 特集・トピックス
特集 交通安全対策の歩みと展望

特集に当たって

本年の警察白書の特集テーマは、「交通安全対策の歩みと展望」です。

交通事故は、国民の生命、身体及び財産に重大な被害を与えるものであり、警察では、交通事故の被害から国民を守るため、関係機関・団体等と共に交通安全対策に取り組んでいます。

これまでの累次にわたる道路交通法の改正、交通安全教育の充実、交通安全施設等の整備、交通指導取締りの推進等の警察の取組に加え、関係機関において必要な対策が講じられてきたことや、政府のみならず、国民一人一人が交通事故防止に向けて積極的に取り組んできたことによって、交通事故死者数が年間1万人を超えて「交通戦争」と称された時期に比べて、大幅に状況が改善されました。

しかしながら、今なお多くの尊い命が交通事故で失われていることには変わりなく、近年では、高齢者人口の増加等を背景として、交通事故死者数の減少幅が縮小する傾向にあるなど、交通事故情勢は依然として厳しい状況にあります。

こうした中、平成28年3月に作成された第10次交通安全基本計画においては、政府として、「人優先」の交通安全思想の下、究極的には交通事故のない社会を目指しつつ、「平成32年までに24時間死者数を2,500人以下とし、世界一安全な道路交通を実現する」という目標を掲げ、交通安全対策を一層強力に推進することとされました。この目標を達成するためには、従来の施策の深化はもとより、あらゆる知見を積極的に取り入れた新たな時代における対策が求められています。

こうした対策を企画・立案する上で前提となるのが交通事故分析であり、高度かつ精緻な分析を行い、その結果に基づき、地域の実情を踏まえたきめ細かな交通事故防止対策を実施するとともに、その効果を検証し、検証結果を次の対策に反映する、いわゆるPDCAサイクルにより、交通事故防止対策を一層効果的かつ効率的に推進していかなければなりません。

また、交通事故死者数全体に占める高齢者の割合と共に、交通死亡事故件数全体に占める高齢運転者によるものの割合も増加しており、超高齢社会が到来した我が国において、その対策は喫緊の課題となっています。

さらに、近年、国内外において、自動運転に関する技術開発が進展しており、更なる交通事故防止を図り、交通事故のない社会を実現するためには、交通安全の確保に資する先端技術の普及活用を促進していくことが極めて重要です。

この特集では、まず第1節で交通事故情勢の推移を概観しつつ、交通事故の現状と交通安全対策における新たな目標について紹介し、第2節でこれまでの交通安全対策の変遷を振り返り、第3節で安全かつ快適な交通の確保に向けた警察の取組について紹介します。そして、第4節で今後の交通安全対策の展望について記述します。

悲惨な交通事故を根絶するためには、警察による取組だけでは十分ではなく、関係機関・団体等はもとより、国民一人一人の理解と協力を得て、社会が一丸となって交通安全対策を推進することが不可欠です。この特集が、国民の皆様の警察の取組に対する理解を深めるとともに、今後の交通安全対策について考える一助となれば幸いです。



前の項目に戻る     次の項目に進む