第6章 警察活動の支え

第3節 外国治安機関等との連携

(1)国際的な犯罪に対する外国治安機関等との連携

① ASEAN加盟国、G7各国等との連携

警察庁では、国際テロ対策、サイバーセキュリティ対策等の分野においてASEAN加盟国等の外国治安機関等との協力関係の強化に取り組んでいる。

平成28年(2016年)7月にはマレーシアにおいて、ASEAN警察長官会合(ASEANAPOL)(注)の第36回会合が開催され、我が国から警察庁幹部が出席した。また、平成28年11月には広島において、平成29年(2017年)4月にはイタリアにおいて、G7ローマ/リヨン・グループ会合が開催され、我が国からは警察庁幹部等が出席し、国際組織犯罪対策やテロ対策について積極的に議論に参加した。

注:東南アジア地域の警察機関相互の交流促進を目的として昭和56年に結成されたもので、我が国は、中国、韓国等と共に議決権のない参加資格である「ダイアログ・パートナー」として参加している。
② 二国間等の連携

警察では、国際的な犯罪対策において我が国と関わりの深い国の治安機関との間で協議を行うなどして協力関係を深めている。28年11月には、韓国・仁川(インチョン)において、韓国警察庁との間で第5回日韓警察協議を、中国公安部及び韓国警察庁との間で第2回日中韓警察局長級会議を、それぞれ開催したほか、同年12月、東京において、ベトナム公安省との間で第4回日越治安当局次官級協議を開催した。また、29年1月には、東京において、中国公安部との間で第9回日中警察協議を開催した。さらに、国家公安委員会委員長が、ブラジル(28年3月)、マレーシア(同年5月)、ヨルダン(同年7月)、ウクライナ(同年10月)、ミャンマー(29年4月)等各国の治安担当大臣、駐日大使等と会談を行うなど、外国治安機関等との協力関係を強化した。

 
第4回日越治安当局次官級協議
第4回日越治安当局次官級協議
 
国家公安委員会委員長とミャンマー内務大臣との会談の様子
国家公安委員会委員長とミャンマー内務大臣との会談の様子

(2)治安に関係する国際約束の締結

刑事共助条約(協定)は、捜査共助の実施を条約上の義務とすることで捜査共助の一層確実な実施を期するとともに、捜査共助の実施のための連絡を外交当局間ではなく、条約が指定する中央当局間で直接行うことにより、手続の効率化・迅速化を図るものである。これまでに米国、韓国、中国、香港、EU及びロシアとの間で締結している。また、犯罪人引渡条約は、日本で犯罪を犯し国外に逃亡した犯罪人等を確実に追跡し、逮捕するため、一定の場合を除き、犯罪人の引渡しを相互に義務付けるものであり、これまでに米国及び韓国との間で締結している。このほか、平成26年2月、PCSC協定(注)が日米両政府間において署名され、引き続き同協定の発効に向けた協議を行っている。

注:重大な犯罪を防止し、及びこれと戦う上での協力の強化に関する日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定(Agreement between the Government of Japan and the Government of the United States of America on Enhancing Cooperation in Preventing and Combating Serious Crime)の略称。日米査証免除措置の下で安全な国際的渡航を一層容易にしつつ、日米両国国民の安全を強化するために、重大な犯罪を防止し、及び捜査することを目的として、相互に必要な指紋情報等を交換するための枠組みを定めたもの

(3)国際協力の推進

① 海外の警察に対する支援

警察庁では、我が国の警察の知見や特質をいかし、外務省やJICAと協力して開発途上国等に専門家を派遣し、交番制度、現場鑑識活動等の分野で海外の警察に対する支援を行っている。平成28年中には、12人の専門家を新たに派遣した。

ア インドネシア国家警察改革支援プログラム

13年以降、インドネシア国家警察改革支援プログラムを実施しており、国家警察長官アドバイザー兼プログラム・マネージャーを含む専門家を派遣している。24年以降、市民警察活動を全国展開させるため、交番制度、現場鑑識活動等に関するこれまでの協力の成果の一層の定着・展開を支援している。

イ 東ティモール国家警察に対する協力

東ティモール政府からの要請に基づき、28年8月から10月にかけて専門家を派遣し、地域警察の現状を視察した上で、助言・指導を行うとともに、インドネシア国家警察と協力しながら、インドネシアにおいて、東ティモールの警察官に対して、巡回連絡の研修等を実施した。

ウ ブラジルに対する地域警察活動普及支援

ブラジル政府からの要請に基づき、27年1月から専門家をブラジルに派遣するとともに、ブラジルの警察官に対して都道府県警察での実地研修を行い、交番制度を始めとした地域警察活動の質の向上及び全国展開に向けた支援を行っている。

エ 研修員の受入れ

警察では、知識・技術の移転及び諸外国との情報交換の促進を図るため、都道府県警察における実地研修、警察大学校国際警察センターにおけるセミナー等を行っている。28年中には、16回の研修でトルコ、インドネシア、ブラジル、東ティモール等各国の警察幹部を含む195人の研修員を受け入れた。

 
山梨県警察におけるインドネシアの警察官への研修の様子
山梨県警察におけるインドネシアの警察官への研修の様子
② 国際緊急援助活動

我が国は、外国で大規模な災害が発生し、被災国政府又は国際機関の要請があった場合、被災地に国際緊急援助隊を派遣しており、警察も国際緊急援助隊の救助チームの一員として国際緊急援助活動を行っている。

警察では、国際緊急援助隊の派遣に関する法律が施行された昭和62年以降、延べ265人の隊員を14の国・地域に派遣し、被災者の捜索・救助等を行った。

コラム 訪日外国人等の急増への対応について

観光立国の実現に向けた政府の各種取組等を受け、我が国を訪れる外国人数は急速に増加を続けているほか、政府の日本再興戦略に基づく高度外国人材の活用等により、我が国に滞在する外国人の更なる増加も見込まれる。また、近年の犯罪情勢をみると、刑法犯の認知件数は全体として減少傾向にある一方、外国人が主たる被害者となるものは平成26年以降僅かではあるが3年連続して増加している。

こうした状況を踏まえると、我が国の言語や制度に不慣れな外国人が何らかのトラブルに巻き込まれるケースや、事件・事故の被害に遭うケースの増加が懸念されることから、警察では、訪日外国人等が我が国の良好な治安を体感できるような環境を整備すべく、外国人とのコミュニケーションの円滑化、我が国警察の制度、各種手続等の分かりやすさの確保等訪日外国人等の増加に対応するための施策を推進している(注)

注:33、35、119頁参照


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