第5章 公安の維持と災害対策

第4節 災害等への対処と警備実施

1 自然災害等への対処

(1)自然災害の発生状況と警察活動

平成28年中(注)は、地震、大雨、台風、強風等により、死者・行方不明者92人、負傷者3,267人等の被害が発生した。24年から28年にかけての自然災害による主な被害状況は、図表5-14のとおりである。

注:数値はいずれも29年5月15日現在のもの
 
図表5-14 自然災害による主な被害状況の推移(平成24~28年)
図表5-14 自然災害による主な被害状況の推移(平成24~28年)
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28年4月には熊本県熊本地方を震源とする地震が発生した。また、28年中は、26個の台風が発生し、うち6個が日本に上陸した。同年8月30日、台風第10号の上陸により岩手県と北海道で記録的な大雨となった。

① 平成28年熊本地震(注)

28年4月14日午後9時26分、熊本県熊本地方を震源とするマグニチュード6.5の地震が発生し、同県上益城郡益城町で震度7を観測した。また、その2日後の同月16日午前1時25分、同県熊本地方を震源とするマグニチュード7.3の地震が発生し、同県上益城郡益城町及び阿蘇郡西原村で震度7を、同郡南阿蘇村、菊池市、宇土市、菊池郡大津町、上益城郡嘉島町、宇城市、合志市及び熊本市で震度6強を、それぞれ観測した。その後も地震が続き、震度7を観測した2回の地震も含めて震度5強以上の地震が12回発生した。この一連の地震により、死者50人、負傷者2,767人等の被害が発生した。

警察では、41都府県警察から警察災害派遣隊延べ約2万8,000人及び19都府県警察から警察用航空機(ヘリコプター)延べ150機を熊本県警察及び大分県警察へ派遣し、被災者の避難誘導及び救出救助、行方不明者の捜索、被災状況についての情報収集、交通対策、応急通信対策、被災地における安全安心を確保するための諸活動等の災害警備活動に当たった。

注:数値はいずれも29年5月12日現在のもの
 
土砂崩れ現場における救出救助活動(熊本県)
土砂崩れ現場における救出救助活動(熊本県)
 
避難所での相談対応(熊本県)
避難所での相談対応(熊本県)
② 台風第10号

28年8月30日に岩手県へ上陸した台風第10号の影響により、東北地方から北海道にかけての各地で土砂災害、河川の氾濫等が発生した。特に、岩手県及び北海道において、河川の氾濫により住家や橋が流失するなどして、死者23人、行方不明者4人等の被害が発生した。

警察では、19都府県警察から広域緊急援助隊を中心とする警察災害派遣隊延べ約1,200人及び警察用航空機(ヘリコプター)延べ74機を岩手県警察へ派遣し、被害情報の収集、被災者の救出救助等を実施した。

 
ヘリコプターによる救出救助活動(岩手県)(岩手日報)
ヘリコプターによる救出救助活動(岩手県)(岩手日報)

コラム 東日本大震災への対応(注)

東日本大震災による被害は、死者1万5,894人、行方不明者2,551人等に上っている。

これまでに、岩手県警察、宮城県警察及び福島県警察に対し、全国から延べ約137万人の警察職員を派遣するとともに、震災から6年が経過した現在も、仮設住宅での防犯活動、行方不明者の捜索活動、避難指示区域等における警戒警ら等を継続して行っている。

注:数値はいずれも平成29年5月10日現在のもの
 
行方不明者の捜索状況(福島県)
行方不明者の捜索状況(福島県)

(2)大規模災害への備え

① 危機管理体制の構築

警察では、東日本大震災における反省・教訓を踏まえ、災害に係る危機管理体制を構築するため、組織横断的な取組を行っている。

各都道府県警察においては、災害対処能力の向上や初動態勢の確立のための取組を計画的に進めているほか、南海トラフ地震、首都直下地震等の被害想定や局地的な豪雨による土砂災害等最近における災害の特徴を踏まえつつ、各都道府県の地理的特性に応じた災害対策を推進している。

また、災害対処能力の向上を図るため、初動対処や救出救助訓練、都道府県警察間での合同訓練等を実施しているほか、各種装備資機材の整備を進めている。

 
広域緊急援助隊合同訓練(鳥取県)
広域緊急援助隊合同訓練(鳥取県)
② 災害警備訓練施設の運用

警察庁では、大規模な地震や大雨等による土砂災害等、我が国における災害の特性を踏まえ、より災害現場に即した環境で体系的・段階的な救出救助訓練を実施するための災害警備訓練施設を整備し、平成28年度から運用を開始した。

③ 今後の災害対策の見直し

警察では、今後発生が懸念される南海トラフ地震、首都直下地震等の大規模災害における措置について、政府における各種計画の策定・見直し等を踏まえ、引き続き、部隊派遣計画等の具体的な検討を進めている。



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