第5章 公安の維持と災害対策

5 大衆運動への警察の対応

警察は、公共の安全と秩序の維持に当たるという警察の責務を遂行するため、大衆運動に伴う違法行為や事故を未然に防止するために必要な警備措置を講ずるとともに、違法行為が発生した際には、捜査等の必要な措置を講ずることとしている。

(1)反基地運動

沖縄県の普天間飛行場の名護市辺野古への移設をめぐり、移設に反対する団体等は、移設は新たな米軍基地の建設であるとして、米軍車両への立ち塞がり、道路での座込み等の妨害活動を行った。また、同県の北部訓練場のヘリコプター着陸帯の移設をめぐり、移設に反対する団体等は、移設は基地負担軽減ではなく訓練場の機能強化であるとして、移設先である東村(ひがしそん)、国頭村(くにがみそん)及びその周辺において、道路への飛び出し、駐車車両による道路封鎖等の工事関係車両等の通行に対する妨害活動を行ったほか、移設工事の現場で重機にしがみつくなどの妨害活動を行った。平成28年中、同県内の反基地運動に伴って発生した違法行為に関連して、公務執行妨害罪、傷害罪、器物損壊罪等で20件、延べ27人を検挙した。

(2)原子力政策をめぐる動向

原子力発電所の再稼動等を捉え、毎週金曜日の首相官邸前における抗議行動を始め、全国各地で反対集会、デモ等が行われた。都内では、平成28年3月26日の「原発のない未来へ!3.26全国大集会」に約3万5,000人(主催者発表)が参加し、同年9月22日の「さようなら原発さようなら戦争9・22大集会」には、約9,500人(主催者発表)が参加した。

 
原子力発電所の再稼働等に対する抗議集会(3月、東京)(時事)
原子力発電所の再稼働等に対する抗議集会(3月、東京)(時事)

また、同年8月に愛媛県の伊方原子力発電所が再稼働した際には、同発電所の正門前等で3日間にわたって抗議行動が行われたほか、都内でも、首相官邸や四国電力東京支社の前で抗議行動が行われた。

警察では、これらの原子力政策をめぐる大衆運動に対して必要な警備措置を講じており、28年中、違法行為の検挙や事故の発生はなかった。

(3)我が国の捕鯨をめぐる動向

過激な環境保護団体「シー・シェパード(Sea Shepherd)」は、和歌山県太地町において、イルカ漁の漁期中、同町に活動家を常駐させてイルカ漁に対する抗議活動を行った。

警察では、和歌山県警察において、太地町特別警戒本部を設置し、同町に設置した臨時交番を拠点に警戒活動を推進するとともに、海上保安庁等との合同警備訓練を実施した。また、法務省入国管理局等と連携して水際対策を強化しており、平成28年中、シー・シェパード関係者4人が上陸拒否された。

 
シー・シェパード活動家に職務質問する警察官(10月、和歌山)
シー・シェパード活動家に職務質問する警察官(10月、和歌山)


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