第5章 公安の維持と災害対策

2 極左暴力集団の動向と対策

(1)極左暴力集団の動向

暴力革命による共産主義社会の実現を目指している極左暴力集団は、周囲に警戒心を抱かせないよう、暴力性・党派性を隠しながら大衆運動や労働運動に介入するなどして組織の維持・拡大をもくろんでおり、平成28年中も、憲法改正、沖縄米軍基地、原発再稼働等をめぐる問題を捉えて、反対運動に取り組んだ。また、同年5月の伊勢志摩サミットの開催及びオバマ・米国大統領(当時)の広島訪問に際しても、抗議活動に取り組んだ。

このうち、革マル派(注1)は、全日本鉄道労働組合総連合会(JR総連)及び東日本旅客鉄道労働組合(JR東労組)に相当浸透しているとみられるほか、中核派(党中央)(注2)は、各地で、中核派(党中央)が主導する国鉄動力車労働組合(動労)の傘下に労働組合を結成し、組織の拡大を図っている。

注1:正式名称を日本革命的共産主義者同盟革命的マルクス主義派という。
注2:正式名称を革命的共産主義者同盟全国委員会という。

(2)極左暴力集団対策の推進

警察では、極左暴力集団に対する事件捜査及び非公然アジト発見に向けたマンション、アパート等に対するローラーを推進するとともに、これらの活動に対する国民の理解と協力を得るため、ポスター等の各種広報媒体を活用した広報活動を推進している。その結果、平成28年中は、警察庁指定重要指名手配被疑者である大坂正明が過去に潜伏していたとみられる中核派(党中央)の非公然アジトを含む4か所の非公然アジトを摘発するとともに、極左暴力集団の活動家ら35人を検挙した。

特に、「伊勢志摩サミット爆砕」などと主張していた革労協反主流派(注)の非公然アジト3か所の一斉摘発においては、火薬、時限装置に使用するとみられる集積回路、偽造ナンバープレート等の多数の証拠品を押収した。同アジトは、同派非公然部門の最高幹部らが居住し、武器の研究開発や製造、対立する勢力への調査活動等の拠点として使用していたものとみられる。

注:正式名称を革命的労働者協会(解放派)という。
 
革労協反主流派の非公然アジトにおける押収品
革労協反主流派の非公然アジトにおける押収品

コラム 警察官殺害事件の検挙

警察では、昭和46年に発生した警察官殺害事件(渋谷暴動事件)に関する警察庁指定重要指名手配被疑者である大坂正明が、中核派(党中央)の組織的な支援を受けながら逃亡、潜伏しているものとみて、平成28年11月に同事件を捜査特別報奨金制度の対象事件に指定したほか、同人の検挙に向けた各種対策を推進した。

 
渋谷暴動事件の状況(共同通信社)
渋谷暴動事件の状況(共同通信社)

29年5月に大阪府警察が中核派(党中央)の非公然アジトを摘発した際に公務執行妨害罪で現行犯逮捕した男が、大坂正明であると判明したため、同年6月、警視庁は、同男を殺人罪等で再逮捕した。



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