第4章 組織犯罪対策

3 犯罪収益の剥奪

犯罪収益が、犯罪組織の維持・拡大や将来の犯罪活動への投資等に利用されることを防止するためには、これを剥奪することが重要である。警察では、没収(注1)・追徴(注2)の判決が裁判所により言い渡される前に犯罪収益の隠匿や費消等が行われることのないよう、組織的犯罪処罰法及び麻薬特例法に定める起訴前の没収保全措置を積極的に活用して没収・追徴の実効性を確保している。

注1:物の所有権及び金融債権を剥奪して国庫に帰属させる処分を内容とする財産刑
注2:没収することができる物又は金融債権の全部又は一部を没収することができない場合に、その価額の納付を強制する処分

(1)没収・追徴の状況

第一審裁判所において行われる通常の公判手続における組織的犯罪処罰法及び麻薬特例法の没収・追徴規定の適用状況は、図表4-23のとおりである。

 
図表4-23 組織的犯罪処罰法及び麻薬特例法の没収・追徴規定の適用状況の推移(平成23~27年)
図表4-23 組織的犯罪処罰法及び麻薬特例法の没収・追徴規定の適用状況の推移(平成23~27年)
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(2)起訴前の没収保全

平成28年中における起訴前の没収保全命令は、組織的犯罪処罰法で風営適正化法違反、賭博、入管法違反、売春防止法違反、わいせつ物頒布等に関して183件(前年比37件(16.8%)減少)発出され、麻薬特例法で16件(前年比2件(14.3%)増加)発出されている。

 
図表4-24 起訴前の没収保全命令の発出状況の推移(平成24~28年)
図表4-24 起訴前の没収保全命令の発出状況の推移(平成24~28年)
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事例

会社役員の男(50)らは、24年11月頃から27年10月頃にかけて、不特定多数の顧客を相手にインターネットカジノを営んでいた。28年2月、同男ら3人を常習賭博罪等で逮捕するとともに、同男が保有する現金及び預金債権合計約1億2,700万円に対して、組織的犯罪処罰法の規定に基づく起訴前の没収保全命令が発出された(千葉)。



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