第4章 組織犯罪対策

2 薬物対策

(1)供給の遮断

我が国で乱用されている薬物の大半が海外から流入していることから、警察では、これを水際で阻止するため、税関、海上保安庁等の関係機関との連携を強化するとともに、捜査員の派遣、国際会議への参加を通じた情報交換等による国際捜査協力を推進している。平成29年2月には、警察庁のODA事業として、31の国・地域及び4国際機関の参加を得て、第22回アジア・太平洋薬物取締会議(ADEC)を東京都で開催し、薬物情勢、捜査手法及び国際協力に関する討議を行った。

また、薬物犯罪組織の壊滅を図るため、通信傍受等の組織犯罪の取締りに有効な捜査手法を積極的に活用し、組織の中枢に迫る捜査を推進している。さらに、薬物犯罪組織に資金面から打撃を与えるため、麻薬特例法の規定に基づき、業として行う密輸・密売等(注1)やマネー・ローンダリング事犯の検挙、薬物犯罪収益の没収・追徴等の対策を推進している。

このほか、インターネットを利用した薬物密売事犯対策として、サイバーパトロールやIHC(注2)からの通報等により薬物密売情報の収集を強化し、密売人の取締りを推進するとともに、インターネットを利用した薬物密売事犯を検挙した場合には、サイト管理者等に対して警告及び再発防止指導を行っている。

注1:通常の密輸・密売等より重く処罰することができ、また、一連の行為を集合犯としてとらえ、その間の薬物犯罪収益総体が没収・追徴の対象となる。
注2:138頁参照

(2)需要の根絶

① 薬物乱用の取締り

薬物乱用は、乱用者自身の精神や身体をむしばむばかりでなく、幻覚、妄想等により、乱用者が殺人、放火等の凶悪な事件や重大な交通事故等を引き起こすこともあるほか、薬物の密売が暴力団等の犯罪組織の資金源となることから、その乱用は、社会の安全を脅かす重大な問題である。警察では、薬物乱用者を厳しく取り締まるとともに、広報啓発活動を行い、社会全体から薬物乱用を排除する気運の醸成を図っている。

 
薬物乱用防止キャンペーン
薬物乱用防止キャンペーン
② 薬物再乱用防止に向けた取組

警察では、薬物事犯で検挙された者やその家族等の希望に応じて、薬物乱用防止のための相談先等を記載した資料を配付するなど、薬物再乱用防止に向けた相談活動の充実を図っている。

(3)危険ドラッグ(注)対策

平成28年中の危険ドラッグ事犯の検挙人員は920人と、5年ぶりに減少した。警察では、医薬品医療機器法を始めとする各種法令を駆使して危険ドラッグ事犯の取締りを徹底するとともに、関係機関との情報共有や乱用の拡大防止に向けた広報啓発活動を強化している。また、危険ドラッグやその原料となる物質の流入を水際で阻止するため、国内外の関係機関との連携を強化している。

注:規制薬物(覚醒剤、大麻、麻薬、向精神薬、あへん及びけしがらをいう。)又は指定薬物(医薬品医療機器法第2条第15項に規定する指定薬物をいう。)に化学構造を似せて作られ、これらと同様の薬理作用を有する物品をいい、規制薬物及び指定薬物を含有しない物品であることを標ぼうしながら規制薬物又は指定薬物を含有する物品を含む。
 
図表4-11 危険ドラッグ事犯の検挙人員の推移(平成24~28年)
図表4-11 危険ドラッグ事犯の検挙人員の推移(平成24~28年)
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