トピックス

トピックスVI 平成28年熊本地震への対応について

(1)被害状況及び警察の体制

① 地震の概要及び被害状況

平成28年4月14日午後9時26分、熊本県熊本地方を震源とするマグニチュード6.5(暫定値)の地震が発生し、熊本県上益城郡益城町で震度7を観測した。また、その2日後の同月16日午前1時25分、熊本県熊本地方を震源とするマグニチュード7.3(暫定値)の地震が発生し、熊本県上益城郡益城町及び阿蘇郡西原村で震度7を、同県阿蘇郡南阿蘇村、菊池市、宇土市、菊池郡大津町、上益城郡嘉島町、宇城市、合志市及び熊本市で震度6強を、それぞれ観測した。その後も余震が続き、5月末までに、震度7を観測した2回の地震も含めて震度5弱以上の地震が計18回発生した。

この地震による人的被害は、死者が49人、負傷者が1,659人であり、物的被害は、全壊又は半壊した住家数が7,366戸、一部損壊した住家数が3万374戸等であった(28年5月13日現在)。

 
阿蘇大橋付近で発生した土砂崩れ
阿蘇大橋付近で発生した土砂崩れ
 
被災地における捜索活動
被災地における捜索活動
② 警察の体制

警察では、熊本県警察において1日当たり最大約2,200人の体制を確立するとともに、41都府県警察から警察災害派遣隊等延べ約2万3,000人及び19都府県警察から警察用航空機(ヘリコプター)延べ150機(28年5月13日現在)を熊本県警察及び大分県警察へ派遣し、被災者の避難誘導及び救出救助、行方不明者の捜索、被災状況についての情報収集、交通対策、応急通信対策、被災地における安全安心を確保するための諸活動等の災害警備活動に当たった。

(2)被災者の救出救助等

全国から派遣された広域緊急援助隊等が、熊本県警察と一体となって被災者の救出救助活動や行方不明者の捜索を実施した。これらの活動により、警察は、約160人の被災者を救出救助した。

事例

28年4月15日午前1時45分頃、九州管区機動隊と福岡県警察の広域緊急援助隊は、「生後8か月の赤ちゃんが生き埋めとなっている」との情報に基づき、熊本県上益城郡益城町内において倒壊した家屋からの救出活動を開始した。現場は、木造2階建て家屋の1階部分が押し潰されており、度重なる余震で更なる倒壊のおそれがある危険な状況であったが、消防と連携した懸命の活動により、1階部分のわずかな隙間に閉じ込められていた乳児を無事救出した。

 
救出した乳児を運び出す警察官
救出した乳児を運び出す警察官

事例

28年4月16日午前2時頃、佐賀県警察の広域緊急援助隊は、熊本県上益城郡益城町内において、倒壊した家屋の前で男性から「家族が生き埋めになっている」と救助を求められたことから、直ちに救出活動を開始した。現場は、木造2階建て家屋の1階部分が崩壊している上、2階部分が大きく傾いているなど危険な状況であったが、懸命の活動により、1階部分のわずかな隙間に閉じ込められていた男女2名を無事救出した。

 
救出活動を行う広域緊急援助隊
救出活動を行う広域緊急援助隊

(3)交通対策

白バイ部隊等により、崩落し通行できない道路の迂回路の検索を実施するとともに、信号機が滅灯(注1)した交差点等に警察官を配置し、交通整理・交通誘導を実施した。

また、被災した高速道路の複数路線等が通行止めとなり、渋滞が生じたことから、緊急物資の輸送等の円滑化を図るため、迂回路に関する広報や渋滞緩和のための信号操作を実施した。

さらに、平成28年熊本地震による災害が、特定非常災害(注2)として指定されたことに伴い、平成28年4月14日以降に運転免許証の有効期間が満了する被災者については、有効期間を延長するなどの措置を講じた。

注1:信号が表示されない状態をいう。
注2:特定非常災害の被害者の権利利益の保全等を図るための特別措置に関する法律第2条第1項に規定される特定非常災害をいう。
 
信号機が滅灯した交差点における交通整理
信号機が滅灯した交差点における交通整理

(4)被災地における安全安心の確保

被災地における空き巣等の犯罪の発生を抑止するとともに、地域の安全安心を確保するため、熊本県警察は、被災地域や避難所周辺の警戒・警ら等の活動を全国から派遣された特別自動車警ら部隊(注)(1日当たり警察官最大116人、パトカー最大36台)と共に行ったほか、被災者に対し、メール、ツイッター等により、被害防止等のための注意喚起を行った。

また、熊本県警察と、全国から派遣された特別生活安全部隊は、避難所を訪問し、被災者に対する防犯指導や相談対応等の活動を行った。

注:地域警察官を隊員とし、被災地等においてパトカーによる警戒・警らや現場広報等の活動を行う部隊

コラム 特別生活安全部隊による避難所の訪問

避難所を訪問した主に女性警察官から成る特別生活安全部隊には、被災者から様々な相談が寄せられ、例えば、「避難して留守となった自宅が不安だ」という旨の相談に対しては住宅地域のパトロールを強化するなど、きめ細やかな対応を講じた。

これらの活動に対し、特に、女性の被災者からは、「女性警察官なので相談しやすい」などの声が寄せられた。

 
女性警察官による活動状況
女性警察官による活動状況


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