トピックス

トピックスI 訪日外国人等の急増への対応について

(1)訪日外国人等の現状と課題

観光立国の実現に向けた政府の各種取組等を受け、我が国を訪れる外国人数は、平成25年に史上初めて1,000万人台に達した後、27年には2,000万人に迫るなど、2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会の開催を控え、急速に増加を続けている。また、政府の日本再興戦略に基づく高度外国人材の活用等により、我が国に滞在する外国人の更なる増加も見込まれる。

また、近年の犯罪情勢をみると、刑法犯の認知件数は全体として減少傾向にある一方、外国人が主たる被害者となるものは平成26年以降わずかではあるが2年連続して増加している。

こうした状況を踏まえると、我が国の言語や制度に不慣れな外国人が何らかのトラブルに巻き込まれるケースや、事件・事故の被害に遭うケースの増加が懸念されることから、警察では、訪日外国人等が我が国の良好な治安を体感できるような環境の整備に努めている。

 
図表I-1 訪日外国人数の推移(平成18~27年)
図表I-1 訪日外国人数の推移(平成18~27年)
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図表I-2 刑法犯の認知件数の推移(平成18~27年)
図表I-2 刑法犯の認知件数の推移(平成18~27年)
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(2)警察における取組

① 外国人とのコミュニケーションの円滑化

警察では、日本語を解さない外国人からの急訴や各種届出等に対応するため、交番等において、簡易な絵を指さして意思を伝達することができる会話支援資料や基本的な外国語会話集等の活用を図っているほか、観光地や繁華街・歓楽街を管轄する警察署、交番等に外国語対応が可能な職員を配置するなど体制の整備に努めている。また、外国語による110番通報にも的確に対応できるよう、110番通報者とこれを受理する通信指令室に通訳人を交えた三者で通話を行う三者通話システムの一層の活用を図っている。 

コラム 翻訳機能付きタブレット端末の活用

岡山県警察では、約30か国語に対応する音声翻訳アプリを搭載したタブレット端末を整備し、平成27年8月から、外国人の来訪が多い鉄道警察隊や駅前交番、空港警備派出所等で活用している。

 
翻訳機能付きタブレット端末
翻訳機能付きタブレット端末

コラム 観光地における臨時交番の設置

北海道札幌方面倶知安警察署では、その管内にあるニセコひらふ地区に外国からのスキー客が多く訪れる冬の期間、外国人観光客への対応のため、臨時交番を設置し、英語による対応が可能な警察官を配置するなど体制の整備に努めている。

 
倶知安警察署ニセコひらふ臨時交番における活動
倶知安警察署ニセコひらふ臨時交番における活動
② 我が国警察に係る制度、手続等の分かりやすさの確保

警察では、遺失届・拾得物の受理に係るものを始めとする各種届出関係書類への外国語併記に努めているほか、刑事手続、交通反則通告制度、犯罪被害者支援等の我が国警察に関係する制度、手続等について、外国語による説明資料の整備及び活用を図っている。

また、大規模災害の発生時や大規模雑踏警備の現場において外国語での広報活動を実施するなど、外国語による情報提供に努めている。

さらに、街頭で活動するパトカーや警察官の被服、警察署・交番等の警察施設等について、警察のものであることが外国人にも容易に理解できるよう「POLICE」と表記するなど、外国語併記に配意しているほか、警察庁では、道路標識に外国語を併記することを含め、外国人運転者にも分かりやすい道路標識について検討を進めている。

コラム 警備現場における外国語での現場広報活動

警視庁は、平成28年1月2日、皇居での新年一般参賀警備に当たり、混雑が予想された皇居周辺において参賀者の整理誘導を実施した。本警備においては、参賀者に多くの外国人が見込まれたことから、電光掲示板が備え付けられているサインカーを用いた英語での現場広報活動を実施した。

 
新年一般参賀警備
新年一般参賀警備
③ 基盤整備

警察では、警察大学校国際警察センターにおいて、都道府県警察の通訳需要等に応じて言語別の語学教養を実施するなど部内通訳人(注1)の育成に努めているほか、部外通訳人(注2)の委嘱を拡大するなどして、通訳人の確保に努めている。

また、様々な文化圏から我が国を訪れる外国人との円滑な意思の疎通を図るため、外国の文化、宗教等に関する職場教養を推進している。

このほか、外国人からの要望、相談等に適切に対応するため、平素から関係機関・団体との協力体制の構築や外国人コミュニティとの連携強化等に努めている。

注1:各都道府県警察から通訳人として指定・登録を受けている警察職員
注2:各都道府県警察から委託を受けて通訳に従事する民間の通訳人


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