特集 国際テロ対策

2 2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会を見据えたテロ対策

オリンピック・パラリンピックは、国際的にも極めて注目度の高い行事であり、過去には、昭和47年のドイツ・ミュンヘンオリンピックにおいてイスラエル選手団襲撃事件が、平成8年の米国・アトランタオリンピックにおいてオリンピック百年記念公園爆弾テロ事件が、それぞれ発生している。

我が国は、開催国としての治安責任を全うするために、万全の警備措置を講じて2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会の安全・安心を確保する必要がある。その一方で、オリンピック・パラリンピック競技大会は、スポーツの祭典であり、その警備に当たっては、選手や観客が楽しめるものとすることも重要である。警察としては、同大会の安全・安心の確保に向けて、こうした点にも配慮しつつ、大会組織委員会等の関係機関とも連携して、次のとおり政府における枠組みに参画することなどにより、テロ対策等を着実に推進し、警備に万全を期す必要がある。

(1)政府における枠組み

政府においては、平成27年11月、「2020年東京オリンピック競技大会・東京パラリンピック競技大会の準備及び運営に関する施策の推進を図るための基本方針」を閣議決定するなど、セキュリティ対策を含め、政府として講ずるべき施策に取り組んでいる。その一例を示すと、テロ対策を始めとするセキュリティ対策を政府一丸となって推進するため、26年10月、内閣危機管理監を座長とし、警察庁次長等を座長代理とするセキュリティ幹事会を設置するとともに、テロ対策、サイバーセキュリティ等の分野別のワーキングチームを設け、各種対策に取り組んでいる。

(2)警察の取組

警察庁では、平成26年1月、2020年オリンピック・パラリンピック東京大会準備室を設置し、同大会における警備諸対策について検討を進めている。また、同大会の警備の計画・運営段階において関係機関を主導する「シニア・セキュリティ・コマンダー」の役割を警察庁次長が担うこととされているほか、29年7月を目途に、同大会に関する情報集約、リスク分析等を行うセキュリティ情報センターが警察庁に設置されることとなっており、必要な検討を進めている。

また、警視庁では、26年1月、警視庁オリンピック・パラリンピック競技大会総合対策本部(以下「対策本部」という。)を発足させるとともに、同年8月、同大会を見据え、犯罪を更に減少させ、首都東京の治安に対する信頼感を醸成するため、犯罪対策の中・長期的な展望を示すものとして、「「世界一安全な都市、東京」実現のための警視庁ビジョン」を策定した。27年11月には、対策本部と同大会に協賛する企業が協力して情報交換や広報活動を行うことにより、同大会の「安全・安心」の実現に寄与することを目的とする「MPD-TOKYO2020 Sponsorship Partnership(P3 TOKYO2020)」が設立された。警視庁は、同大会におけるテロ対策やサイバー攻撃対策等の課題について、大会の成功に向けてP3TOKYO2020に参加する公式パートナー企業と協力して取り組むこととしている。



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