第3節 外国治安機関等との連携
1 外国治安機関等との連携
(1)国際的な犯罪に対する外国治安機関等との連携
① ASEAN加盟国、G7各国等との連携
警察庁では、国際テロ対策、サイバーセキュリティ対策等の分野においてASEAN加盟国等の外国治安機関等との協力関係の強化に取り組んでいる。
平成27年9月から10月にかけて、マレーシアにおいて、ASEAN+3国際犯罪閣僚会議(注1)の第7回会議及び日・ASEAN国際犯罪閣僚会議の第2回会議が開催され、我が国からは国家公安委員会委員長が出席した。また、27年8月にはインドネシアにおいて、ASEAN警察長官会合(ASEANAPOL)(注2)の第35回会合が開催され、我が国から警察庁幹部が出席した。そのほか、27年11月にはドイツにおいて、28年3月には東京において、G7ローマ/リヨン・グループ会合が開催され、我が国からは警察庁幹部等が出席し、国際組織犯罪対策やテロ対策について積極的に議論に参加した。
注2:東南アジア地域の警察機関相互の交流促進を目的として昭和56年に結成されたもので、我が国は、中国、韓国等と共に議題提案権を有する「ダイアログ・パートナー」として参加している。
② 二国間等の連携
警察では、国際的な犯罪対策において我が国と関わりの深い国の治安機関との間で協議を行うなどして協力関係を深めている。27年12月には、中国・青島(チンタオ)において、中国公安部との間で第8回日中警察協議を、中国公安部及び韓国警察庁との間で日中韓警察局長級会議を、それぞれ開催した。また、同月、ベトナム・ハノイにおいて、ベトナム公安省との間で第3回日越治安当局次官級協議を開催した。また、国家公安委員会委員長が、マレーシア(27年9月)、シンガポール(同月)、ブルネイ(同月)、英国(同年10月)、米国(同年11月)等各国の治安担当大臣、駐日大使等と会談を行うなど、外国治安機関等との協力関係を強化した。
国家公安委員会委員長と駐日米国大使との会談の様子
(2)治安に関係する国際約束の締結
刑事共助条約(協定)は、捜査共助の実施を条約上の義務とすることで捜査共助の一層確実な実施を期するとともに、捜査共助の実施のための連絡を外交当局間ではなく、条約が指定する中央当局間で直接行うことにより、手続の効率化・迅速化を図るものである。これまでに米国、韓国、中国、香港、EU及びロシアとの間で締結している。また、犯罪人引渡条約は、日本で犯罪を犯し国外に逃亡した犯罪人等を確実に追跡し、逮捕するため、一定の場合を除き、犯罪人の引渡しを相互に義務付けるものであり、これまでに米国及び韓国との間で締結している。そのほか、平成26年2月、PCSC協定(注)が日米両政府間において署名され、引き続き同協定の発効に向けた協議を行っている。
(3)国際協力の推進
① 海外の警察に対する支援
警察庁では、我が国の警察の知見や特質をいかし、外務省やJICAと協力して開発途上国等に専門家を派遣し、交番制度、現場鑑識活動等の分野で海外の警察に対する支援を行っている。平成27年中には、20人の専門家を新たに派遣した。
ア インドネシア国家警察改革支援プログラム
13年以降、インドネシア国家警察改革支援プログラムを実施しており、国家警察長官アドバイザー兼プログラム・マネージャーを含む専門家を派遣している。24年以降、市民警察活動を全国展開させるため、交番制度、現場鑑識活動等に関するこれまでの協力の成果の一層の定着・展開を支援している。
イ 東ティモール国家警察に対する協力
東ティモール政府からの要請に基づき、27年10月から12月にかけて専門家を派遣し、地域警察の現状を視察した上で、助言・指導を行うとともに、インドネシア国家警察と協力しながら、インドネシアにおいて、東ティモールの警察官に対して、交番の視察、巡回連絡の研修等を実施した。
ウ トルコにおけるアフガニスタン女性警察官訓練に対する協力
トルコ警察では、アフガニスタンの治安改善のため、同国警察の能力向上に必要な警察官訓練を実施している。我が国では、 ルコ政府からの要請を受け、27年10月、同国に女性警察官を派遣してアフガニスタン女性警察官に対する訓練を支援した。
トルコでのアフガニスタン女性警察官への講義の様子
エ ブラジルに対する地域警察活動普及支援
ブラジル政府からの要請に基づき、27年1月から専門家をブラジルに派遣するとともに、ブラジルの警察官に対して都道府県警察での実地研修を行い、交番制度を始めとした地域警察活動の更なる質の向上及び全国展開に向けた支援を行っている。
神奈川県警察におけるブラジルの警察官への研修の様子
オ 研修員の受入れ
警察では、知識・技術の移転及び諸外国との情報交換の促進を図るため、都道府県警察における実地研修、警察大学校国際警察センターにおけるセミナー等を行っている。27年中には、14回の研修でブラジル、インドネシア、東ティモール、フィリピン等各国の警察幹部を含む175人の研修員を受け入れた。
② 国際緊急援助活動
我が国は、外国で大規模な災害が発生し、被災国政府又は国際機関の要請があった場合、被災地に国際緊急援助隊を派遣しており、警察も国際緊急援助隊の救助チームの一員として国際緊急援助活動を行っている。27年4月に発生したネパールにおける地震災害では、我が国政府は、警察職員23人及び警備犬4頭を含む国際緊急援助・救助チームを派遣し、同チームは建物倒壊現場での被災者の捜索等に従事した。
警察では、国際緊急援助隊の派遣に関する法律が施行された昭和62年以降、延べ265人の隊員を14の国・地域に派遣し、被災者の捜索・救助等を行った。