第5章 安全かつ快適な交通の確保

2 交通事故事件捜査

(1)交通事故事件の検挙状況

平成27年中の交通事故事件に係る検挙件数は、図表5-35のとおりである。

 
図表5-35 交通事故事件の検挙状況(平成27年)
図表5-35 交通事故事件の検挙状況(平成27年)
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(2)適正かつ緻密な交通事故事件捜査

交通事故事件捜査においては、初動捜査の段階から危険運転致死傷罪の立件も視野に入れた、適正かつ緻密な捜査を推進している。

死亡事故又は重傷事故のうち、ひき逃げ事件に係るもの、危険運転致死傷罪の適用が見込まれるもの、一方の当事者の供述以外に証拠が得られないおそれがあるものなどについては、都道府県警察本部の交通事故事件捜査担当課に配置した交通事故事件捜査統括官等が現場に臨場して捜査を統括するなど、組織的かつ重点的な捜査を推進している。

ひき逃げ事件については、迅速な初動捜査を行うとともに、ミクロカラー測定検索装置(注)等の交通鑑識資機材を効果的に活用し、被疑者の早期検挙に努めている。平成27年中の死亡ひき逃げ事件の検挙率は95.3%であった。

注:ひき逃げ事件現場に遺留された自動車塗膜片から容疑車両の車種を特定する装置

事例

27年8月、普通乗用自動車を運転して、海水浴帰りの歩行者3人をひいて逃走した死亡ひき逃げ事件について、運転者(20)を過失運転致死傷罪及び道路交通法違反(救護義務違反等)で逮捕した。その後、現場痕跡等の採証や同車両の速度鑑定等の捜査を実施した結果、事件当時、運転者が制御困難な高速度で自動車を走行させていたことを立証(同年9月、より罰則の重い危険運転致死傷罪で起訴)した(神奈川)。

 
交通事故現場の鑑識状況
交通事故現場の鑑識状況

(3)交通事故事件捜査の科学化・合理化

緻密で科学的な交通事故事件捜査を推進するべく、衝突実験に基づく事故解析等の専門的研修等により、交通鑑識に係る高度な知識及び技能を有する交通捜査員を養成している。

また、客観的証拠に基づいた事故原因の究明を図るとともに、交通事故当事者の負担を軽減するため、常時録画式交差点カメラや3Dレーザースキャナ(注)を始めとする各種の機器の活用を図るほか、一定の軽微な物件事故について現場見分を省略する制度を活用するなど、捜査の合理化を図っている。

注:レーザー光線を周囲に照射することで、事故現場における道路構造や路面の痕跡、遺留品の散乱状況等を自動的かつ正確に計測し、三次元点群データを作成する機器。同データは、専門のシステムにより、三次元画像処理や図化ができる。
 
3Dレーザースキャナによる測定状況
3Dレーザースキャナによる測定状況
 
事故解析に関する研修の状況
事故解析に関する研修の状況
 
3Dレーザースキャナによる三次元画像
3Dレーザースキャナによる三次元画像

(4)交通事故被害者等の支援

平成28年4月に警察庁が策定した「警察庁犯罪被害者支援基本計画」に基づき、適切な被害者支援が行われるよう、交通事故の被害者及びその家族又は遺族(以下「被害者等」という。)の要望や心情に配意した捜査に努めるとともに、被害者連絡実施要領(注)等に基づき、ひき逃げ事件、危険運転致死傷罪等に該当する事件、交通死亡事故及び全治3か月以上の重傷事故の被害者等に対して、捜査の初期の段階から事案概要や捜査経過、被疑者の検挙状況等を連絡している。

また、被害者連絡制度、刑事手続、補償制度等のほか、事案の特性やニーズに応じた内容を盛り込んだ「被害者の手引」や各種相談窓口等を紹介した「現場配布用リーフレット」を配布している。

さらに、都道府県警察本部の交通事故事件捜査担当課に配置された被害者連絡調整官等を効果的に運用し、組織的かつ適切な被害者支援を推進するとともに、被害者等の心情に配意した適切な対応がなされるよう交通捜査員等に対する教育を強化している。

注:犯罪被害者等に捜査状況等を確実に連絡するため、8年に制定されたもので、連絡対象となる事件、連絡内容等について定めている。
 
「被害者の手引」及び「現場配布用リーフレット」
「被害者の手引」及び「現場配布用リーフレット」


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