第4章 組織犯罪対策

3 国際組織犯罪に対処するための取組

(1)国内関係機関との連携

警察では、事前旅客情報システム(APIS)(注)等を活用して関係機関と連携した水際対策を行っている。法務省入国管理局との間では、被疑者が国外に逃亡するおそれのある場合の手配や、偽装滞在者等に対する合同摘発等の連携を図っている。また、税関との間では、不正輸出入を防止するための合同摘発等の連携を図っている。

注:25頁参照

(2)国外関係機関との連携

複数の国・地域において犯罪を敢行する国際犯罪組織に対処するためには、関係国の捜査機関等との情報交換、捜査協力等が不可欠であり、警察では次のような取組を進めている。

① ICPOを通じた国際協力

ICPOは、各国の警察機関を構成員とし、犯罪の捜査における国際的な協力を目的とした機関であり、平成27年末現在で190の国・地域が加盟している。ICPOでは、国際犯罪に関する情報の収集と交換、犯罪対策のための国際会議の開催や国際手配書の発行等が行われている。警察庁は、捜査協力の実施のほか、ICPOが開催する国際組織犯罪対策に関連する様々な会合への参加、事務総局等への職員の派遣、分担金の拠出等により、ICPOの活動に貢献している。

事例

中国人の男(40)らは、27年1月、宝石店において店員に話し掛け、同店員の注意をそらすなどして、販売価格約2,200万円の指輪1個を窃取した。ICPOを通じて国際手配を行ったところ、フランス国家警察から被疑者と思われる者に関する情報の提供があり、この情報を端緒として、同年8月、中国人窃盗団の構成員の男2名を窃盗罪で逮捕した(警視庁)。

また、フランスに本部を置く事務総局の機能を補完する組織として設置されたシンガポール総局(IGCI)(注)が、27年4月に開所した。

IGCIは、ますます巧妙かつ複雑になるサイバー犯罪に対抗するための研究や訓練を行うことを目的として設立された組織であり、初代総局長に警察庁から派遣された職員が就任している。

IGCIでは、サイバー犯罪対策、サイバーセキュリティ対策、加盟国の警察官やICPO職員の訓練等を行うこととされている。

注:INTERPOL Global Complex for Innovationの略
 
IGCI(cINTERPOL)
IGCI(©INTERPOL)
② 外国捜査機関との捜査協力

警察庁では、ICPOルートのほか、外交ルート、刑事共助条約(協定)(注)を活用して、外国捜査機関に対して捜査協力を要請するなどしている。

また、外国捜査機関との間で開催される二国間協議等に積極的に参加し、連携の強化を図っている。

注:216頁参照

(3)国外逃亡被疑者等の追跡

国外逃亡被疑者等(注1)の数の推移は、図表4-21のとおりである。

警察では、被疑者が国外に逃亡するおそれがある場合には、法務省入国管理局に手配するなどして、出国前の検挙に努めている。また、被疑者が国外に逃亡した場合には、関係国の捜査機関との捜査協力を通じ、被疑者の所在確認等を行っており、所在が確認された場合には、犯罪人引渡条約(注2)等に基づき被疑者の引渡しを受けるなどして、確実な検挙に努めている。

このような取組の結果、平成27年中は、出国直前の外国人被疑者21人のほか、国外逃亡被疑者等59人(うち外国人34人)を検挙した。

このほか、事案に応じ、国外逃亡被疑者等が日本国内で行った犯罪に関する資料等を逃亡先国の捜査機関に提供するなどして、逃亡先国における国外犯処罰規定の適用を促し、犯罪者の「逃げ得」を許さないための取組を進めている。

注1:日本国内で犯罪を行い、国外に逃亡している者及びそのおそれのある者
注2:216頁参照

事例

日本人の男(33)は、26年4月から同年7月までの間、住吉会傘下組織幹部らと共謀の上、営業実態のない会社が発行する公共事業債の購入代金名目で現金をだまし取ろうと企て、高齢の女性に複数回にわたり電話をかけて現金合計8,500万円をだまし取った。同男はタイに国外逃亡したが、27年3月、同男が不法滞在で同国当局に拘束され、退去強制となる旨の情報を同国当局から得たため、同月、同男を詐欺罪で逮捕した(警視庁、静岡、和歌山)。

 
図表4-21 国外逃亡被疑者等の推移(平成18~27年)
図表4-21 国外逃亡被疑者等の推移(平成18~27年)
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