第4章 組織犯罪対策

4 暴力団排除活動の推進

(1)国及び地方公共団体における暴力団排除活動

国及び地方公共団体は、平成21年12月、犯罪対策閣僚会議の下に設置された暴力団取締り等総合対策ワーキングチーム(以下「ワーキングチーム」という。)における申合せ等に基づき、警察と連携して、受注業者の指名基準や契約書に暴力団排除条項(注)(下請契約、再委託契約等に係るものを含む。)を盛り込むほか、受注業者に対して、暴力団員等に不当に介入された場合の警察への通報等を義務付けるなどの取組を推進している。また、民間工事等に関係する業界及び独立行政法人に対しても同様の取組が推進されるよう所要の指導・要請を行っている。

注:法令、規約及び契約書等に設けられている条項であって、許可を取得する者、事務の委託の相手方、契約等の取引の相手方等から暴力団員等の暴力団関係者又は暴力団関係企業を排除する旨を規定する条項

事例

27年5月、六代目山口組傘下組織幹部(75)を弁護士法違反で検挙したところ、その捜査の過程で、建設会社代表取締役が、同幹部に対し、金銭を不当に与えていたことが判明した。そこで、警察から宮崎県及び日南市へ通報し、同年9月までに、宮崎県及び日南市が入札参加資格の停止の措置を講ずるなどした(宮崎)。

(2)各種事業・取引等からの暴力団排除

① 各種事業における暴力団排除

近年、各種事業から暴力団関係企業等を排除するため、法令等において暴力団排除条項の整備が進んでおり、警察では、暴力団の資金源を遮断するため、関係機関・団体と連携して、貸金業、建設業等の各種事業からの暴力団排除を推進している。

② 各種取引における暴力団排除

近年、暴力団の資金獲得活動が巧妙化・不透明化していることから、企業が、取引先が暴力団関係企業等であると気付かずに経済取引を行ってしまうことを防ぐため、「企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針」(平成19年6月、犯罪対策閣僚会議幹事会申合せ)(注)及び22年12月のワーキングチームにおける申合せに基づき、警察では、関係機関・団体と連携を強化し、各種取引における暴力団排除を推進している。

注:企業が反社会的勢力による被害を防止するための基本的な理念や具体的な対応について取りまとめたもの

コラム 2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会関連事業からの暴力団排除の推進

今後、2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会関連事業の本格的な開始が見込まれているところ、同事業には、官民問わず、長期にわたり多額の資金が投入されることから、暴力団等が各種事業に介入して、違法行為を敢行したり、活動資金を獲得したりするおそれがある。

警察では、各種事業への暴力団等の介入を阻止するため、これらの事業の推進状況と暴力団の介入動向を見極めつつ、関係機関・団体と緊密に連携して、受注業者の指名基準や契約書に暴力団排除条項を盛り込むよう働き掛けるなどの取組を推進することとしている。

(3)地域住民等による暴力団排除活動

警察では、暴力追放運動推進センター(以下「暴追センター」という。)及び弁護士会と緊密に連携し、適格暴追センター制度(注)も活用しながら、事務所撤去訴訟等に対する支援を実施するなどして、地域住民等による暴力団排除活動を支援している。

また、暴力団対策法における指定暴力団の代表者等の損害賠償責任に関する規定も効果的に活用しながら、暴力団犯罪に係る損害賠償請求訴訟に対する支援を実施するなどして、暴力団の不当要求による被害の防止、暴力団からの被害の救済等に努めている。

注:国家公安委員会から適格暴追センターとして認定を受けた暴追センターが、暴力団事務所の付近住民から委託を受けて、自己の名をもって事務所使用差止請求を行うことができる制度
 
全国暴力追放運動中央大会
全国暴力追放運動中央大会

(4)地方公共団体における暴力団排除に関する条例の運用

各都道府県は、地方公共団体、住民、事業者等が連携・協力して暴力団排除に取り組む旨を定め、暴力団排除に関する基本的な施策、青少年に対する暴力団からの悪影響排除のための措置、暴力団の利益になるような行為の禁止等を主な内容とする暴力団排除に関する条例の運用に努めている。

条例には、各都道府県の暴力団情勢等に応じて

・ 事業者による暴力団員等に対する利益供与の禁止

・ 暴力団事務所に使用しないことの確認や契約書への暴力団排除条項の導入等不動産の譲渡等をしようとする者の講ずべき措置

・ 学校等の周辺200メートルの区域における暴力団事務所の新規開設・運営の禁止

等の規定が盛り込まれている。

各都道府県では、条例に基づき、暴力団の威力を利用する目的で財産上の利益の供与をしてはならない旨の勧告等を実施しており、平成27年中における実施件数は、勧告が69件、中止命令が5件、検挙が8件となっている。

事例

六代目山口組傘下組織幹部(67)は、暴力団の威力を利用する目的で供与されたことを知りながら、飲食店経営者から現金の供与を受けるなどして、愛知県暴力団排除条例の規定(利益の供与等の禁止)に違反したことにより、愛知県公安委員会から勧告を受けていたが、別の飲食店経営者から同様の利益の供与を受けるなどし、当該勧告に従わなかった。27年6月、愛知県公安委員会は、同条例の規定に基づき、同幹部の氏名等を公表した(愛知)。

(5)暴力団構成員の社会復帰対策の推進

暴力団を壊滅するためには、構成員を一人でも多く暴力団から離脱させ、その社会復帰を促すことが重要であることから、警察では、暴追センター、関係機関・団体等と連携して、全国に社会復帰対策協議会を設立するとともに、暴力団から離脱しようとする者に対して個別に指導・助言を行うなどしている。



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