トピックス

トピックスIV 高齢者の交通安全に向けた取組

(1)高齢者が関係する交通事故の状況

平成26年中の高齢者の交通事故死者数は2,193人と、交通事故死者数全体の半数以上を占めている。高齢者の死者数を状態別にみると、歩行中が全体の半数近くを占めている。また、交通事故死傷者数を年齢層別・被害程度別にみると、高齢者の割合は、軽傷者では13.5%であるのに対して、重傷者では34.9%、死者では53.3%となっており、被害程度が深刻になるほど高齢者の割合が高くなっている。

 
図表IV-1 年齢層別死傷者の状況(構成率)(平成26年)
図表IV-1 年齢層別死傷者の状況(構成率)(平成26年)
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(2)高齢歩行者・自転車利用者の事故防止対策

平成26年中の高齢者の交通事故死者数のうち、歩行中・自転車乗用中の死者は約6割を占めている(注)が、その約8割は運転免許を保有していなかった。そこで、警察では、運転免許を保有していない高齢者に交通安全教育を受ける機会を提供するため、関係機関・団体等と協力し、家庭訪問による個別指導や医療機関、福祉施設等における広報啓発活動を行うほか、シミュレーター等の各種教育用器材を積極的に活用した参加・体験・実践型の交通安全教育を実施している。また、26年中の高齢者の歩行中の時間帯別死者数をみると、高齢者以外の歩行中の時間帯別死者数に比べ、17時から20時までの時間帯に特に多くなっているという特徴があるため、薄暮時間帯における高齢者の保護・誘導活動、明るい目立つ色の衣服の着用や反射材用品等の普及促進を行っている。

注:144頁参照
 
高齢者宅訪問による交通安全指導
高齢者宅訪問による交通安全指導

(3)交通環境の整備による高齢者の安全確保

警察では、ゾーン30(注1)を始めとする生活道路対策の推進、バリアフリー対応型信号機(注2)の整備等のほか、道路管理者と連携した自転車専用の走行空間の整備により、高齢歩行者・自転車利用者の安全確保を図っている。また、道路標識の高輝度化・大型化、信号灯器のLED化、高齢運転者等専用駐車区間制度(注3)の運用等により、高齢運転者が安全に安心して自動車を運転できる交通環境の整備を推進している。さらに、高齢者の移動手段としての公共交通の重要性が増大していることを踏まえ、地域公共交通の活性化及び再生に向けた取組について、関係機関・団体等との連携を図っている。

注1:158頁参照
注2:158頁参照
注3:道路標識により指定されている場所において、高齢者等が運転し、都道府県公安委員会が交付した専用場所駐車標章を掲示した普通自動車に限り、駐車又は停車をすることができることとする制度
 
図表IV-2 高齢歩行者時間帯別死者数(平成26年)
図表IV-2 高齢歩行者時間帯別死者数(平成26年)
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(4)高齢運転者対策の充実

更新期間が満了する日における年齢が70歳以上の者は、運転免許証を更新する際、高齢者講習の受講が義務付けられている。この講習では、安全運転に必要な知識等に関する講義のほか、自動車等の運転指導や、運転適性検査器材(注)による指導等を通じ、受講者に自らの身体的機能の変化を自覚してもらうとともに、その結果に基づいた安全な運転の方法について、具体的な指導を行っている。平成26年中は229万8,006人が受講した。

また、更新期間が満了する日における年齢が75歳以上の者は、運転免許証の更新期間が満了する日より前の6月以内に、講習予備検査(認知機能検査)を受けることが義務付けられている。この検査は、高齢運転者に対して、自己の記憶力・判断力の状況を自覚してもらい、引き続き安全運転を継続することができるよう支援することなどを目的としており、検査の結果に応じた高齢者講習を行っている。26年中の講習予備検査(認知機能検査)の受検者数は143万8,040人であった。

注:視覚を通じた刺激に対する反応の速度及び正確性を検査する器材、動体視力検査器、夜間視力検査器及び視野検査器
 
高齢者講習における実車指導
高齢者講習における実車指導

コラム 高齢運転者に係る交通事故防止対策のための道路交通法改正

75歳以上の高齢運転者による交通事故件数及び交通死亡事故件数については増加傾向にある。一方、高齢化により、75歳以上の運転免許保有者が増加することから、今後更に高齢運転者による交通事故件数等の増加が見込まれている。そこで、喫緊の課題である高齢運転者に係る交通事故防止対策を推進するため、

① 一定の違反行為をした75歳以上の高齢運転者に対する臨時認知機能検査の導入

② 臨時認知機能検査で認知機能の低下が自動車等の運転に影響を及ぼすおそれがあると判断された者に対する臨時高齢者講習の導入

③ 認知機能検査で認知症のおそれがあると判断された者に対し、その者の違反状況を問わず、臨時適性検査(専門医の診断)を行い、又は医師の診断書の提出を命ずることを可能とする制度の見直し

等を内容とする道路交通法の一部を改正する法律が、平成27年6月、第189回国会において成立した。また、本改正と併せて、70歳以上75歳未満の高齢運転者及び75歳以上の高齢運転者のうち認知機能検査で認知機能が低下しているおそれがないと判断されたものに対する講習を合理化するとともに、認知機能検査で認知機能が低下しているおそれがあると判断された者等に対する講習内容の充実に努めることとしている。

 
図表IV-3 新たな高齢運転者対策
図表IV-3 新たな高齢運転者対策


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