トピックス

トピックスI 過酷な自然の中で救助活動を行う警察

(1)山岳遭難救助活動

① 山岳遭難救助隊等の活動

山岳遭難は、近年増加傾向にあり、平成26年中の山岳遭難発生件数は、17年と比較すると911件(65.9%)増加した。都道府県警察では、山岳遭難救助隊等を編成し、山岳遭難事案が発生した際には、迅速な遭難者の捜索や救助活動を行っているほか、山岳遭難事案等の対策拠点となる臨時警備派出所の開設や、山岳パトロールを通じた登山者への声掛けによる登山指導、危険箇所等の実態についての安全調査等を行っている。

 
図表I-1 山岳遭難発生件数(平成17~26年)
図表I-1 山岳遭難発生件数(平成17~26年)
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② 救助用装備資機材と平素の訓練状況

警察では、遭難現場に向かうための山岳救助車や雪上車のほか、遭難者を搬送するためのストレッチャーや救助バンド等の装備資機材を整備しており、山岳遭難救助隊等では、これらを使用して迅速・的確に救助活動を行えるよう、過去の遭難事案を想定した実践的な訓練を実施している。

 
山岳遭難救助隊の訓練状況
山岳遭難救助隊の訓練状況

コラム 登山届

「登山計画書」、「登山者カード」等のいわゆる登山届は、登山の前にあらかじめ登山者の氏名、行程等を記載した書類を自治体、警察等に提出することで、山岳遭難が発生した際に警察等が迅速に対応できるようにするものである。登山届は、自治体、警察等へ直接提出したり、登山口、山小屋等に備え付けられた登山ポスト等に投函したりすることができる。登山届の提出は、登山者にとっても、安全な登山のための自己点検の機会となることから、警察では、関係機関と連携し、登山者に対して登山届の提出を推奨している。また、一部の自治体では、条例により登山届の提出が義務付けられている。

 
登山届の例
登山届の例

(2)水難救助活動

都道府県警察では、主要な港湾、離島、河川等を管轄する警察署等に警察用船舶約160隻を配備し、海上保安庁と連携して水難救助活動を行うとともに、パトロール、犯罪の取締り等の活動を行っている。

 
警察用船舶
警察用船舶

事例

平成26年11月、高知県沿岸において、漁船が横波を受けて転覆し、乗組員(63)ら3人が船から転落したことから、高知海上保安部より救助要請を受けた高知県警察では、警察用船舶「おおとさ」を現場に急行させた。現場海域は海上強風警報が発令されており、波の高さは約2メートルであったが、高知県防災ヘリコプターと連携して、救命浮環等の資機材を活用して同人らを釣り上げ、救助した。

 
警察用船舶による救助活動
警察用船舶による救助活動

(3)大規模災害発生時における部隊活動

① 警察災害派遣隊等の活動

災害発生時には、被災地を管轄する都道府県警察(以下「被災地警察」という。)の機動隊員、警察署員等が災害現場に出動し、被災情報の収集、被災者の救出救助、行方不明者の捜索等の活動に従事することとなる。

また、災害による被害が大きく、被災地警察のみでは対応が困難な場合等に被災地に派遣され、災害現場における災害警備活動を支援する仕組みとして、警察災害派遣隊(注)が設けられている。

注:広域緊急援助隊を中心に編成され、大規模災害発生時に全国から直ちに被災地に派遣される約1万人の即応部隊と、災害対応が長期化する場合に派遣され、被災地の要望を踏まえた幅広い活動に従事する一般部隊から構成されている。

事例

平成26年8月、広島市内において大規模な土砂災害が発生した。広島県警察では、全国から警察災害派遣隊等の派遣を受け、泥水が流れ続け、巨石、樹木等が散乱する過酷な現場において、昼夜を問わず、被災者の救出救助、行方不明者の捜索等の災害警備活動に当たった。

 
警察航空機による救助の状況
警察航空機による救助の状況
② 災害対処能力向上に資する訓練施設の整備

広域緊急援助隊を始めとする各部隊の対処能力を更に向上させるため、拠点的な災害警備訓練施設を整備することが必要となっている。

具体的には、豪雨に伴う土砂災害や、大規模地震といった日本国内で実際に発生が想定される災害の形態に対応し、広域緊急援助隊員に加え、警察署員等も対象とした体系的・段階的な訓練を安全かつ効果的に実施することが必要であることから、警察では、訓練施設の整備を進めている。

 
訓練施設(イメージ)
訓練施設(イメージ)

コラム 御嶽山の噴火と警察活動

平成26年9月、長野県と岐阜県にまたがる御嶽山の噴火により、多数の登山者が被災した。警察では、大量の火山灰が降り積もり、火山性ガスが発生する山頂付近の急峻な斜面等において、警視庁の機動隊等も派遣して、被災者の救出救助等を実施した。長野県警察では、山岳遭難救助隊員等が登頂し、山頂付近に残留していた生存者の救助等を行った。また、岐阜県警察では、山頂付近をパトロール中であった山岳警備隊員が、骨折により歩行ができなくなり山小屋にとどまっていた女性(39)を担架で途中まで搬送し、警察用航空機(ヘリコプター)により救助した。

 
火山性ガス濃度の測定
火山性ガス濃度の測定
 
御嶽山山頂付近での捜索状況
御嶽山山頂付近での捜索状況


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