特集 組織犯罪対策の歩みと展望

2 薬物情勢

薬物は、乱用者の精神や身体をむしばむばかりでなく、幻覚、妄想等により、乱用者が殺人、放火等の凶悪な事件や重大な交通事故等を引き起こすこともあるほか、薬物の密売が暴力団等の犯罪組織の資金源となることから、その乱用は、社会の安全を脅かす重大な問題である。

薬物事犯の検挙人員は、近年、減少傾向にあるものの、平成26年中は1万3,121人と、依然として高水準で推移している。また、船舶を利用した覚醒剤の大量密輸入事犯が25年、26年に相次いで検挙されるなど、依然として規制薬物(注1)の国内への流入がうかがわれる。これに加えて、最近では、危険ドラッグ(注2)の影響によるとみられる事件・事故が発生するなど、新たな課題も浮上している。

注1:覚醒剤、大麻、麻薬、向精神薬、あへん及びけしがら
注2:規制薬物又は指定薬物(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(旧・薬事法。以下「医薬品医療機器法」という。)第2条第15項に規定する指定薬物をいう。)に化学構造を似せて作られ、これらと同様の薬理作用を有する物品をいい、規制薬物及び指定薬物を含有しない物品であることを標ぼうしながら規制薬物又は指定薬物を含有する物品を含む。これらの薬物は、これまで「脱法ドラッグ」と呼ばれていたが、「脱法」という呼称が国民に誤解を与えるおそれもあることから、警察庁・厚生労働省では、26年7月、これに代わる新たな呼称を国民から広く募集し、規制の有無を問わず使用することが危ない物質であることを明確に示す呼称として、「危険ドラッグ」を選定した。
 
図表-17 薬物事犯の検挙人員(平成26年)
図表-17 薬物事犯の検挙人員(平成26年)
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(1)薬物事犯の検挙状況と乱用薬物の流通の実態

① 各種薬物事犯の状況

近年の各種薬物事犯の検挙状況は、図表-18のとおりである。

 
図表-18 各種薬物事犯の検挙状況の推移(平成17~26年)
図表-18 各種薬物事犯の検挙状況の推移(平成17~26年)
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ア 覚醒剤事犯

覚醒剤事犯の検挙人員(注)は、近年減少傾向にあるものの、平成26年中は1万958人と、前年より49人(0.4%)増加し、全薬物事犯の検挙人員の83.5%を占めている。また、粉末押収量は487.5キログラムと、前年より344.4キログラム(41.4%)減少したものの、過去10年間で2番目に多い押収量となった。覚醒剤事犯の特徴としては、検挙人員のうち再犯者の占める割合が他の薬物と比べて高く、増加傾向にあることや、検挙人員のうち30歳代以上の年齢層の占める割合が高く、特に40歳代以上の年齢層の占める割合が増加していることが挙げられる。新たな乱用者が減る一方で、覚醒剤が強い依存性を有しており、一旦乱用が開始されてしまうと継続的な乱用に陥る傾向がうかがわれる。

注:国際的な協力の下に規制薬物に係る不正行為を助長する行為等の防止を図るための麻薬及び向精神薬取締法等の特例等に関する法律(以下「麻薬特例法」という。)違反の検挙人員のうち、覚醒剤事犯に係るものを含む。
 
図表-19 覚醒剤事犯の再犯者率及び検挙人員の年齢別構成比の推移(平成17~26年)
図表-19 覚醒剤事犯の再犯者率及び検挙人員の年齢別構成比の推移(平成17~26年)
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イ 大麻事犯

大麻事犯の検挙人員は、近年減少傾向にあるものの、26年中は1,761人と、前年より206人(13.2%)増加した。全薬物事犯の検挙人員の13.4%を占めており、依然として覚醒剤事犯に次ぐ高水準で推移している。大麻事犯の特徴としては、覚醒剤事犯とは異なり、検挙人員のうち初犯者や20歳代以下の若年層の占める割合が高いことが挙げられる。他方、近年では、検挙人員のうち30歳代以上の年齢層の占める割合が増加傾向にあり、乱用者層の拡大が懸念される。

 
図表-20 大麻事犯の初犯者率及び検挙人員の年齢別構成比の推移(平成17~26年)
図表-20 大麻事犯の初犯者率及び検挙人員の年齢別構成比の推移(平成17~26年)
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② 危険ドラッグをめぐる状況
ア 検挙状況

近年、ハーブやバスソルト、アロマ等と称して販売される新たな乱用薬物が次々と出現しており、乱用者本人の健康被害を引き起こすだけでなく、その影響とみられる事件・事故が相次いで発生している。警察では、これらの薬物を危険ドラッグとして位置付け、各種法令を駆使した検挙に努めている。危険ドラッグに係る適用法令別検挙人員の推移は、図表-21のとおりであり、26年中の検挙人員は840人と、前年より664人(377.3%)増加した。

 
図表-21 危険ドラッグに係る適用法令別検挙人員の推移(平成22~26年)
図表-21 危険ドラッグに係る適用法令別検挙人員の推移(平成22~26年)
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危険ドラッグ事犯の特徴としては、26年中に検挙された乱用者のうち薬物犯罪の初犯者が約8割を占めているほか、30歳代以下の年齢層が約7割を占めていることが挙げられる。危険ドラッグは、合法であることを標ぼうして販売されていることに加え、他の規制薬物と比べて比較的安価であり、また、これまで繁華街等で簡単に入手できたことから、初犯者や若年層に乱用が拡大したものと考えられる。26年中の検挙事件における乱用者の危険ドラッグの入手先の割合をみても、街頭店舗が多く(58.0%)を占めている。

一方で、インターネットを利用して入手したとするもの(19.7%)や、密売人から入手したとするもの(5.7%)もみられる。警察や関係機関による取締りの強化を受けて、危険ドラッグの販売・流通ルートの更なる潜在化が懸念されることから、今後、販売実態の把握を徹底する必要がある。

 
危険ドラッグ
危険ドラッグ
 
インターネットを利用して販売される危険ドラッグ
インターネットを利用して販売される危険ドラッグ

コラム 危険ドラッグが乱用される背景

警察庁では、平成26年12月から27年1月にかけて、警視庁及び道府県警察本部の薬物対策部門の情報官(注1)等を対象としたアンケート(注2)を実施し、危険ドラッグが乱用される背景についてどのように思うか質問した。その結果、図表-22のとおりの回答が得られた。27年4月末現在、危険ドラッグの販売店舗数は急減している状況にある(注3)ものの、危険ドラッグの危険性が十分に認識されていないことを指摘する回答も多く(39.7%)、販売・流通ルートの潜在化への対策のほか、乱用の拡大防止に向けた広報啓発活動を強化する必要がある。

注1:10頁参照
注2:総括情報官及びその補助官並びに薬物対策部門の情報官を対象としたアンケート。129人が回答した。
注3:35頁参照
 
図表-22 危険ドラッグが乱用される背景についてどのように思うか(複数回答)
図表-22 危険ドラッグが乱用される背景についてどのように思うか(複数回答)
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イ 輸入・製造の実態

危険ドラッグは、多くの場合、その原料となる物質が海外から輸入されているとみられ、26年中には、これらの原料を基に危険ドラッグを製造・加工していた国内の拠点を摘発した。暴力団構成員等が危険ドラッグの販売に関与していた例もあり、今後、暴力団等の犯罪組織の関与の実態についても注視していく必要がある。

事例

工藤會傘下組織構成員(48)らは、危険ドラッグの販売店舗を経営し、26年7月、業として指定薬物を含有する植物片を販売した。同年9月、同構成員ら2人を薬事法違反(業としての指定薬物の販売)で逮捕した(山口)。

事例

自営業の男(45)らは、中国から原料を輸入した上で危険ドラッグを製造し、宅配便等を利用して都内の販売店舗に卸すなどしていた。26年12月までに、同男ら14人を薬事法違反(指定薬物の授与)等で逮捕するとともに、埼玉県及び都内の製造拠点を摘発した(埼玉)。

 
摘発した都内の製造拠点
摘発した都内の製造拠点
 
製造されていた危険ドラッグ
製造されていた危険ドラッグ

コラム 危険ドラッグの危険性

危険ドラッグは、その薬理作用により幻覚や妄想等の症状を生じさせ、乱用者が事件や事故を引き起こすことがあるほか、場合によっては、死に至ることもある。危険ドラッグの乱用者の取扱事例としては、次のようなものがある。

・ 会社員の男(48)は、「部屋に蛇と竜がいる、殺される」と言い、自宅のアパートの一室で毛布に火をつけた。同棲中の女性は、「男は3年くらい前から危険ドラッグを使用していた。最近は危険ドラッグを使用して幻聴を聞いたり、幻覚を見たりしている様子だった」と話し、同室からは危険ドラッグが発見された(静岡)。

・ 無職の外国人の男(58)は、棒を持って騒いでいたところ、通報を受けて臨場した警察官ともみ合いになり、同警察官の拳銃を奪取し、同警察官に向けて発砲して重傷を負わせた。男の自宅からは危険ドラッグが発見され、男は「危険ドラッグを使用した」旨供述した(愛知)。

・ 駐車中の車両内で、無職の男(39)が死亡していた。一緒にいた女性は、「男と一緒にパイプに葉片を詰めて吸った」と話し、同車両内からは危険ドラッグが発見された(神奈川)。

(2)犯罪組織による薬物の密輸入と不正取引の実態

① 覚醒剤密輸入事犯の状況
ア 覚醒剤密輸入事犯の検挙状況

覚醒剤密輸入事犯の検挙状況の推移は、図表-23のとおりである。平成21年頃に急増した検挙件数は、23年をピークに減少したものの、26年中の検挙件数は150件、検挙人員は176人と、依然として高い水準にある。

我が国に流入する覚醒剤は、航空機の利用者の手荷物への隠匿、船舶コンテナ貨物の利用等の巧妙な手口により密輸入されている。特に、最近では、いわゆる運び屋(注)が携帯する手荷物に覚醒剤を隠匿して密輸入する事例が多くみられ、これらの運び屋が、インターネットを利用して知り合った者からの依頼を受け、報酬を得て、覚醒剤の密輸入を行っている実態も明らかとなっている。こうした事案の背後では、複数の人物が巧妙に連携して覚醒剤の受渡し場所を指示するなどしており、国際的な薬物犯罪組織の関与がうかがわれる。

注:航空機等を利用して薬物を密輸する役割を担う者をいい、薬物犯罪組織とつながりの薄い者がこれに当たることが多い。
 
図表-23 覚醒剤密輸入事犯の検挙状況の推移(平成17~26年)
図表-23 覚醒剤密輸入事犯の検挙状況の推移(平成17~26年)
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事例

タイ人の女(20)は、26年3月、香港から関西国際空港に到着した際、細工したリュックサックの背当て部分に覚醒剤約1.4キログラムを隠匿していたことから、同女を覚せい剤取締法違反(営利目的輸入)で逮捕した。同女は、「知人の女から成功報酬5万バーツで覚醒剤の密輸を請け負った。リュックサックは中国国内でアフリカ系の男性から受け取った」などと供述した(大阪)。

 
覚醒剤の隠匿状況
覚醒剤の隠匿状況
 
隠匿されていた覚醒剤
隠匿されていた覚醒剤

事例

イギリス人の男(33)は、26年10月、ドイツから成田国際空港に到着した際、二重底に細工したスーツケースの内部に覚醒剤約5.8キログラムを隠匿していたことから、同男を覚せい剤取締法違反(営利目的輸入)で逮捕した(千葉)。

 
覚醒剤の隠匿状況
覚醒剤の隠匿状況
イ 覚醒剤密輸入事犯における仕出地の変化

近年、覚醒剤の密輸入事犯における仕出地に多様化の傾向がみられる。過去10年間の覚醒剤の仕出地数の推移をみると、17年には10か国(地域)であった仕出地が、23年には38か国(地域)まで急増し、その後減少に転じたものの、26年においても28か国(地域)に上っている。

従来は中国、マレーシア、フィリピン等のアジアを仕出地とするものが大半を占めていたが、近年、中南米やアフリカ、中近東を仕出地とするものが増加している。特に、最近では、メキシコを仕出地とし、船舶貨物を利用して、一度に大量の覚醒剤を密輸入しようとする例がみられる。25年及び26年には、同国を仕出地とし、押収量が100キログラムを超える覚醒剤の大量密輸入事犯が相次いで検挙されており、同国の薬物犯罪組織が覚醒剤の密輸に深く関与していることがうかがわれる。

他方、26年中は、中国(台湾、香港及びマカオを除く。)を仕出地とする覚醒剤密輸入事犯が45件と最も多く、全体の約30.0%を占めたほか、香港(27件、18.0%)、タイ(19件、12.7%)を仕出地とする覚醒剤密輸入事犯が多数に上っており、依然としてアジアが主要な仕出地となっている。アジアを仕出地とする密輸入事犯は、いわゆる運び屋によるものが多くみられる。

このように、我が国を覚醒剤の主要なマーケットと位置付け、その取引により莫大な収益の獲得を目論む薬物犯罪組織が、様々なルートで密輸出を試みている実態がうかがわれることから、各国の捜査機関等と連携した取組が重要となっている。

 
図表-24 覚醒剤密輸入事犯の仕出地数と地域別検挙件数の推移(平成17~26年)
図表-24 覚醒剤密輸入事犯の仕出地数と地域別検挙件数の推移(平成17~26年)
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事例

メキシコ人の男(39)らは、25年12月から26年1月にかけて、模造石の内部に覚醒剤を隠匿し、メキシコから船舶コンテナで密輸入した。同年3月、同メキシコ人の男、日本人2人及びペルー人2人を覚せい剤取締法違反(営利目的輸入)等で逮捕し、覚醒剤約145キログラムを押収した(神奈川、福岡、宮崎、鹿児島)。

 
模造石の内部に隠匿された覚醒剤
模造石の内部に隠匿された覚醒剤

事例

中国人の男(20)らは、26年6月、電気調理機器及び空気清浄機の内部に覚醒剤を隠匿し、中国から国際スピード郵便で密輸入した。同年7月までに、同男ら3人を覚せい剤取締法違反(営利目的輸入)等で逮捕し、覚醒剤約400グラムを押収した(警視庁)。

② 犯罪組織の資金源としての薬物犯罪

薬物は隠匿・運搬が容易であり、仕入価格と末端価格との差が大きく、大きな収益を上げられるほか、その依存性から安定した需要が生じることから、資金の獲得を目的として暴力団等の犯罪組織が取引に関与している。

薬物の取引価格は、取引量、取引する薬物の種類・質等により異なるものの、これまでの検挙事例からは、国内に流入した薬物が、数段階の流通過程を経て、仕入価格の数倍の値段で末端乱用者に密売されている状況がうかがわれる。

コラム 覚醒剤の取引価格

捜査等の過程で、覚醒剤の密売に関与した被疑者が次のように話している例があり、薬物犯罪組織が覚醒剤の密売によって大きな利益を得ていることがうかがわれる。

・ 仕入先から覚醒剤20グラム(約670回分の使用量に相当(注))を24万円で購入している。インターネットを利用して客を募り、0.2グラム(約7回分の使用量に相当)当たり1万円から1万5,000円で取引している(密売人A)。

・ 小分けされた覚醒剤1袋(0.2グラム)を仕入先から4,000円で購入し、客に1万円で販売する(密売人B)。

注:覚醒剤乱用者の1回当たりの使用量は、通常約0.03グラムである。
③ 薬物犯罪への暴力団の関与

26年中の暴力団構成員等による覚醒剤事犯の検挙人員は6,024人と、前年より72人(1.2%)減少したものの、覚醒剤事犯の検挙人員の55.0%を占めている。暴力団構成員等による覚醒剤事犯の検挙人員の団体別構成比は図表-25のとおりであり、山口組、稲川会及び住吉会の3団体を始め、暴力団が広く覚醒剤事犯に関わっている。

 
図表-25 暴力団構成員等による覚醒剤事犯の検挙人員の団体別構成比(平成26年)
図表-25 暴力団構成員等による覚醒剤事犯の検挙人員の団体別構成比(平成26年)
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暴力団構成員等の団体別の検挙人員に占める覚醒剤事犯の割合は図表-26のとおりである。中小規模の暴力団の中には、特定の地域において覚醒剤の密売を独占的に行うなど、覚醒剤の密売を主要な資金獲得手段としているとみられるものがある。また、大規模な暴力団の傘下組織においても、過去の検挙事例において首領や幹部が営利犯(注)として検挙されている状況等から、覚醒剤の密売に組織的に関わっていることがうかがわれるものがあり、覚醒剤が暴力団の主要な資金源になっているとみられる。

注:営利目的所持、営利目的譲渡し及び営利目的譲受け
 
図表-26 暴力団構成員等の検挙人員に占める覚醒剤事犯(平成26年)
図表-26 暴力団構成員等の検挙人員に占める覚醒剤事犯(平成26年)
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事例

稲川会傘下組織組長(64)らは、携帯電話で注文を受け付けるなどして、組織的に覚醒剤を密売していた。26年2月までに、同組長ら11人を覚せい剤取締法違反(営利目的譲渡)等で逮捕するとともに、同年6月までに、同組長らから覚醒剤を購入した客50人を検挙した(群馬)。

④ 薬物犯罪への国際犯罪組織の関与

26年中の来日外国人による薬物事犯の検挙人員は427人と、前年より16人(3.9%)増加した。このうち、覚醒剤事犯の検挙人員が全薬物事犯の74.0%を占めている。また、26年中の来日外国人による薬物事犯の検挙人員を国籍・地域別でみると、フィリピン、ブラジル及びタイの比率が高く、3か国で全体の34.4%を占めている。

薬物の製造が厳しく規制されている我が国では、国内で乱用されている薬物の大半が海外から密輸入されており、暴力団や来日外国人犯罪組織によって密売されている状況がみられる。国内外の薬物犯罪組織による国際的なネットワークが構築されているものとみられ、特に、最近の来日外国人による覚醒剤の密輸入事犯についてみると、ナイジェリア等のアフリカ系犯罪組織の関与がうかがわれるものが多い。

他方、26年中の来日外国人による覚醒剤事犯の営利犯の検挙人員を国籍・地域別でみると、イラン人が52.9%と最も高くなっている。我が国では、バブル崩壊後、来日イラン人労働者の就労機会が減少し、その一部が不良化したことなどを背景として、イラン人薬物密売組織による覚醒剤の密売が横行した。近年、イラン人による覚醒剤事犯の検挙人員は減少傾向にあるものの、イラン人による覚醒剤の密売ルートが根強く存在していることがうかがわれる。

 
図表-27 来日外国人による覚醒剤事犯(営利犯)の検挙人員に占めるイラン人の推移(平成17~26年)
図表-27 来日外国人による覚醒剤事犯(営利犯)の検挙人員に占めるイラン人の推移(平成17~26年)
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事例

イラン人の男(28)を中心とする密売グループは、関東を中心に広域的に覚醒剤を密売していた。26年5月までに、同グループの密売人9人を麻薬特例法違反(覚醒剤としての譲渡)等で逮捕するとともに、同グループから覚醒剤を購入するなどした客20人を覚せい剤取締法違反(所持)等で逮捕し、同グループの密売ルートを壊滅した(千葉)。

⑤ 薬物犯罪組織の特徴

薬物犯罪組織は、警察による組織の実態や供給ルートの解明を困難にするため、薬物の運搬・保管等の犯行の分業化、指示系統の複雑化、摘発時における供述内容についての組織的な指示等により組織防衛を図っている。

また、暴力団構成員が密輸入した覚醒剤を外国人密売グループに渡していた事例や、暴力団関係者が海外に渡航し、覚醒剤を隠匿した貨物を海外から日本国内に送付した事例もみられ、依然として暴力団と外国人犯罪組織が連携して薬物の密輸・密売を敢行している状況がうかがわれる。

事例

住吉会傘下組織幹部(49)らは、26年10月、中古自動車の運転席及び助手席の床下に覚醒剤を隠匿して密輸入した。また、ナイジェリア人の男(55)らは、同年11月、隠匿された覚醒剤を取り出すため、神奈川県内のヤード(注)に運搬された同車両を解体した。同年12月までに、同幹部ら4人及びナイジェリア人の男ら3人を覚せい剤取締法違反(営利目的輸入)等で逮捕した(神奈川)。

注:75頁参照
 
中古自動車内に隠匿された覚醒剤
中古自動車内に隠匿された覚醒剤


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